アルバム感想(温)

My Favorite Music

「2021年下半期『月間ベストアルバムTOP10』から漏れてしまったベストアルバムTOP10」感想

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いつも毎月選んでるベスト10のアルバム、ここではそこから漏れてしまった、または見逃していた、またはあとあとよさに気付いた作品たちについて回収するコーナー、、、泣。(2021年下半期編)

本当は今の時点で上半期下半期関係なく、あとあとよさに気付いた作品は全部カバーしたいと思ってるのだけど、2021年下半期に絞って10枚というきりのよさで厳選した...。

『月間ベストアルバムTOP10』から漏れてしまったベストアルバムTOP10の感想

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. Former Hero - "Footpaths" (8月)

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スウィートでセンチメンタルな想いの増幅

 私はリスナーのピュアネスを激しくバーストさせるようなスウィートなエレクトロニカが大好物なのだけど、Former Heroもそういった特質を持つアーティストの一人だった。ハイテンションでコテコテの王道EDMというよりも、MadeonとかPorter Robinsonとかと同系統のクリーンで華やかなニュアンスが強いポストEDM的エレクトロニカ。でもFormer Heroの場合、一般的なEDMのハジけるフロアのイメージを持ちつつ、それとはかけ離れたようなエレガントで儚さのある詩的な印象も持っていた。ビートは熱狂を生み出すエネルギーの塊のようで、ギターノイズはハードコアみたいに激烈で、でも総合的なサウンドスケープはそれらと反するように自然的な感触で、クリアで透明感に溢れていて、メロディーは甘酸っぱくて、恋焦がれる気持ちが止まらなくなるEDM。MadeonPorter Robinsonよりも、恋しさ故に我を忘れてしまうような、思い馳せるようにずっと何かに惹きつけられるときの感覚がある。彼はエレクトロニックの技術で、自身が歌いたいそのスウィートでセンチメンタルな想いを増幅させた。ピュアネスの表現をもっと発達させた。これも私がツボすぎてヤバい音楽の一種。2曲目のSurround Meでもう彼のセンスがフルで発揮されてると思う。ジャケットで描かれた朝と春のコンセプトを完璧にカバーしたような今作の代表曲。世界が目覚めるように優しく音楽が始まり、空間は隅々まで澄み渡り、エレクトロニックの音が儚く舞っていく。それなのに、ビートは身体を突き動かすようにエネルギッシュで力強く、ピンク色よりももっと熱い色をしてる。Former Heroのエレガントな情緒と詩的なフィーリングが激しく強調されるとき。エレクトロニックによるピュアネスの巨大な誘起。やっぱりあまりにもツボすぎてた。指(fingertip)をテーマにした曲のアイディア的なところも超素敵。B面に関してもHelvellyn (M6)とかも本当にヤバい。こちらはFormer Heroのスウィートでセンチメンタルなフィーリングを加速させていくようなアップテンポさが際立ってる曲。心沁みる、思い馳せる朝と春の自然的な世界と、パーティー的な盛り上がりを見せる絶頂のダンスフロアと、それらを一つのストーリーに入れた一曲、もう私にとって理想的なものが目一杯凝縮されてるみたい。。。笑。この世界観には本当に病みつきになってた。あまりにもよすぎて泣いてしまいそうになる。他にも、Madeon的エレクトロニックに身体が無意識に反応するBirkham (M3)、ストーリー重視で充実してるSwims Best (M4)、とことん踊り倒すFoxgloves (M5), Gone Dream (M8)、どの曲も間違いなしなよさ。自分にとって作風がめちゃめちゃツボだった。EDM系なのに孤独感とか寂しさとかを引き出すような仕様なのがやっぱり私的にとてもくる。

今作で桁違いにヤバいのが、なんといっても7曲目のEndseekerだと思う。この曲は例えうなら、Former Heroのジャケットの朝や春の世界の美しさが破壊的な威力を得たような曲。それは私に痛みを引き起こしていた。綺麗すぎて、恋しくてたまらなくて、もうこの曲に殺されそうになっていた。冗談抜きで本当にやばい曲だと思う。誰かへの愛とか、感謝とか、幸せとか、そういったもの過剰なほどハードコア的に描いて実現するバケモノ級の美しさ。こんなにも猛烈に激しいシーンなのに、描こうとしてるものはFormer Heroの優しさだというところが本当にありえない。音楽に感動して死にそうになることは多々あるけど、ここまで直接的に殺されそうになったことは極めて少なかった。マジで、今作で絶対に無視できない一曲だと思う。

「日本人アーティストで誰が好きなの?」といきなり聞かれたら、私は"DE DE MOUSE"って反射で速答すると思う。シンキングタイムがあればいくらでも答えるけど、DE DE MOUSEは私の中で大好きさが殿堂入りしてる日本人アーティストのトップの人。そういうピュアネス増強エレクトロニカ、実はKawaii系のEDMもすごく大好きなんです、、、笑。だからPerfumeとかきゃりぱとかもどちらかといえば好きな方。ただFormer Heroの恋心的な没頭性には他にはない至高なひと時が感じられた。7曲目が本当にやばい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Ducks Ltd. - "Modern Fiction" (10月)

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スーパーシャイニー

 私の中ではRolling Blackouts Coastal Feverの親戚のような位置付けの、燦々とした爽やかなフィーリングをかっ飛ばして行くみたいな光と風のハイスピードロックンロールなのだけど…そんなの最高にならないわけなくない??笑。バリバリのインディーロックをベースにネオアコ的なドリーミーさがいっぱい溢れてて、そこに80sのインディーポップの眩しさも含んだような感じ。古風でありながら現代風でもあるような素敵な作風、インディーズのコアみたいなものも所持してるし、私にものすごく刺さるやつだった。何より、RBCFとかReal Estateとかと同じギターサウンドの属性なのが私の"大好き"を決定づけてる...笑。アコースティックとエレキのブレンドで魅せるスーパーシャイニー、それがスピードにのって綺麗に散っていくような最高の気持ちよさ。ときにジャキジャキ掻き鳴らしたり、ときにメロディーを作って喜びを歌ったりする。まるで青空の下、陽の光の解放を感じながらサイクリングしたりドライブしたりするみたい。こういうの聴くとすごく無敵な気分になる。。。笑。アルバム全曲が1つの大きな曲になってるみたいにどこをとっても間違いない安定感だけど、例を挙げると18 Cigarettes (M3)とかDucks Ltd.の今作のよさが高密度で詰まってたかも。燦燦としていて爽やかで駆け抜けてくロックンロールで、盛り上がりのパートまでそれらの快感のエモーションがどんどん高まっていく曲。アコースティックとエレキでツインになったギターのサウンドで、Ducks Ltd.のハイテンションと気持ちよさの正の相関を表していく。これは大好きすぎる...もうとにかく燦っっっ燦、、、!笑。春夏秋冬オールシーズン、自分のマインド上にお日様を生成したいときに聴きたい音楽。他にも、ロックンロールの中で80sインディーポップスのエッセンスもこってり堪能できるHow Lonely Are You? (M1)、ベースとかギターリフとか楽器パートが何もかもいいAlways There (M7)、ストリングスが満ちたりまくるのがヤバいSullen Leering Hope (M8)・Twere Ever Thus (M9)など...。彼らのスーパーシャイニーの解放が全開。特にアルバム後半のストリングス濃度のヤバさには本当にびっくりした。

私が今作で一番感動しまくりだったのはUnder the Rolling Moon (M4)。ハイスピードに進行していく一曲だけど、こちらはギラギラ眩しい中にも落ち着いたシャイニーさが沁みるようなDucks Ltd.。私の中でかなりRBCFに近いイメージなのだけど、楽曲が持つ世界観と自分が憧れで抱いてるオーストラリアの景観がリンクするような、自分にとって特別なエモさをもたらすものがある(Ducks Ltd.はカナダだけど)。オーストラリア特有のあのサンシャインのことがもう猛烈に好きなのだけど、Ducks Ltd.のスーパーシャイニーがそこの感覚と繋がると思わず泣きそうになってしまう。そういったRBCF特性でいっても、私にとって思い切りツボなバンドであるということ。オーストラリア行きたい、RBCFのライブ観たい、そしてDucks Ltd.もまたツアーとかで同伴してくれたら絶対観たいって思う。

Ducks Ltd.の今作は、ロックのこと大好きなのでお馴染みな、絶大な信頼があるStereogumの情報で知った 笑。メンバー写真、ジャケット、聴く前から大好きすぎてやばそうって思ってたけど、案の定めちゃツボだった。最初はDucktailsの別プロジェクトなのかなとかも思ってた(普通に違った)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Steve Gunn - "Other You" (8月)

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現実の受け入れ方

 荒野みたいな人生をたった一人で冒険するとき、彼の今作はその旅のお供にしたくなるようなカントリー・フォークの曲だった。何かと立ち向かう強さを得るような音楽や、気持ちを高めるようにエネルギーをチャージする音楽などではなく、流れていく時間に身を任せて、現実、自分、今この時、ありのままを受け入れていく脱力系の優しい音楽。でもSteve Gunnはその中で、それらの"ありのまま"をとてもとても特殊に表していた。それはまるで鏡の向こう側に在るパラレルワールドのようで、水面に映って見える幻想的な現実のようで、その他自分が意識していないところで眠っている美しいものの数々、気が付いたら傍にあったサンセットの感動的な景色のようでもあった。アコースティックの音色は暖かく溶けていて、多様なメロディーとサウンドブレンドされていて、馴染みあるはずのフォーキーな曲の存在が、自分が今まで知らないほど不思議に満ちた深いものになっていた。この音楽にどこまでも身を任せたくなる。現実のこと、自分のこと、世界のこと、この音楽を通じて受け入れたくなる。人生の旅のお供にしたくなるこの感覚はそう意味だった。もうめちゃめちゃに最高だと思う。Other You (M1)の解放、Fulton (M2)の安心感、Morning River (M3)の天然、Good Wind (M4)の夢想、Circuit Rider (M5)の好調、On the Way (M6)のワイルドネス、Protection (M7)の安定、The Painter (M8)のマイルド、Ever Feel That Way (M10)の回復......最高さが常に一貫してる。中でも9曲目のReflectionのメロディーとかは特にツボが激しかったかも。コーラスの方法で色数を増やすように飾られたシンプルなフレーズ、ビターで濃密な味わい、それらをスローテンポでじっくりと与えてくれる曲。とてもとてもエモーショナルだと思った。初めてOther You (M1)を聴いたときはこの作品何か違うなって感じさせていたけど、改めて最後まで聴いたらめちゃめちゃ大好きだった。

そんなSteve Gunnのアルバムでもうゾクゾクがヤバかったのが10曲目のSugar Kiss。インディーフォーク主体ながらオルタネイティブな自在性があった今作の中で、まさかのアンビエント系のエクスペリメンタルを炸裂させた曲。参加してるアーティストがMary Lattimoreなのがインパクトすごすぎる、、、笑。今作が持っている不思議で未知なるものを反映したSteveの現実の描写に対して、Maryの作家性がそのコンセプトを驚異的に拡張させてるような感じ。神秘と美しさが止まらない。Steve GunnがまさかこんなThurston Mooreみたいな実験的なギタープレイをする人だとは思ってなかったし、Maryのハープとのシンクロ率もとてもやばい...。作風的に私の好みすぎて頭おかしくなりそうだった 笑。ほんと、この曲のエクスペリメンタルっぷりには相当びっくりする。

実を言うと今まで私はSteve Gunnの過去作にはずっとピンと来てなかったんです、、、でも今作は想像を遥かに超えるくらい大好きだった。Sandro Peri、Kurt Vile、Andy Shauf、自分のお気に入りのアーティストとの作風的接点が実は多いようなSSWだったって知った。評判も高かったし、今作はやっぱり別格なのかもとも思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Hand Habits - "Fun House" (10月)

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秋風

 Hand Habitsの音楽には秋の気配がした。時間が経過して熟した紅葉のような褐色、山地にある年季の入った山小屋のような居場所、その中でどことなく漂うスモーキーな香り、それらの心落ち着く懐かしさのようなものも。クラシカルで大人びていて、フォーキーで自然的で、恋しくも心温まるような秋色の感覚だった。ニューウェーヴのようなシンセポップもノスタルジックな印象が強く、インディーロックでもサウンドスケープが豊かに広がっていて、歌の存在が強調されたフォークソングではリスナーに格別な時間を提供してくれる。音楽に込められた、音楽が所持していた、それらの素敵なものが本当に深かった。とても最高だと思う。Aquamarine (M2)からそういった深みのある素敵なフィーリングに思いきり駆られる。ミニマルなメロディーがピースになった、不思議で特殊な存在のシンセポップ。メロウで僅かにフォーキーな音もしてたり、ソフトで愛らしいのにドリーミーで儚かったり、私がHand Habitsに対して感じる、恋しくも心温まる色のそれが感じられる。オルタネイティブの自由な表現のトリッキーさなどもあって、聴いた後も味わいがしばらく残るような、他のポップスにはない威力の高い魔法もあったり。今作における一つの大きなリードトラックだって思った。Jessica PrattやGrizzly Bearなどと同様、曲を聴いたとき雪山のような場所へトリップする空間的創造などもあると思うのだけど、この空気感、この匂いもほんとにほんとに大好きだった。シンセポップというところだとMore Than Love (M1)も超素晴らしい。こちらはどちらかといえばアーバンな感じするけど、ノスタルジックな雰囲気が半端なくて泣きそうになってしまう。じっくりソウルフルなフォークソングに限らず、センチメンタルなポップ系の曲でもMeg Duffyのボーカルがよすぎてる。前作Placeholder (2019)とかは認知だけしてるレベルで未鑑賞だったのだけど、未鑑賞なのもったいないSSWだった。

feat. Perfume GeniusのJust to Hear You (M3)とかも名曲だと思うけど、個人的にはアルバム後半以降のインディーロックコースもまたツボだった。音楽が風の当たる場所へ連れてってくれるFalse Start (M6)、気持ちよさがダイナミックでたまらないConcrete & Feathers (M8)、メロウを超えてビターにダークに変わってるのがめちゃめちゃカッコイイGold/Rust (M10)...。明るい曲からゾクゾクしてしまうような曲まで、Hand Habitsの作家性を様々に発揮してる。特にFalse Start (M6)とConcrete & Feathers (M8)の躍動感のあるロックについては、私がHand Habitsに対して思う秋の色と、Pinegroveのような通気性のあるギターによる風の発生とが連動した"秋風"というのを全身で感じるのだけど、これがすごくすごく好きだった。曲を聴いて思い浮かべる風景というか、匂いというか、そこに行きたいと私の中で憧れが喚起される。本当にいいなーって思う。前半から後半まで幅広く最高だった。

フォークでいえば7曲目のClean Airもすごかった。曲が再生された瞬間、自分の中の不安が解消されるようなナンバー。私が考える"フォーク=癒し"の方程式を実感するような、Hand Habitsのセンスがフルで活きた曲の一つ。やはりMeg Duffyはどちらかといえばフォークの曲の方が抜群なのだろうか...。ボーカルもストリングスもコーラスもエモーショナルだしで感動的だしで本当に沁みる。恋しくも心温まるような秋色の感覚。(もちろん冬でも聴ける。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. quickly, quickly - "The Long and Short of It" (8月)

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マルチジャンルのタレンティッドなクロスオーバー

 quickly, quicklyはトラックメイカーであるということが信じられない...。彼が構築したサウンドワークのそれを知って、quickly, quicklyは私が今まで認知していたトラックメイカー・ビートメイカーとは別の何かじゃないかって思ってしまった 笑。エレクトロニックなことをしてるし、ビートが身体を打つダンサブルでクラブミュージックの種類だとは思うけど、それは驚くほどヒップホップで、ジャズで、打ち込みとは思えないようなタッチのドラムがあって、グループで奏でてるような重厚的な印象を感じさせるような、たまらなくリッチなところがあった。ブラックミュージックによるカッコよさと気品、またローファイ・チル・サイケのテイストによる聴き心地と癒し、それらマルチジャンルのタレンティッドなクロスオーバーでダンスフロアを彩って、メロディーをこの上ないほど豊かに広げていく...。「もう何人分の才能だよ!(?)」という変なツッコミをしてしまった 笑。センスとセンスの合体によるフレッシュで新しいダンストラック、そして新しいヒップホップ。1曲目Phases (ft. Sharrif Simmons)とかあまりの名曲さに私のテンションが狂っていく。quickly, quicklyだけの"ヒップホップ×ジャズ×クラブミュージック"。拍と拍を縫うように進んでいくドラムのテクニカルなグルーヴの中で、様々なサウンド達が華麗に、そして嬉しそうに鳴らされていく。こんなにもダンサブルでカッコいいのに、突き抜けていくように気持ちよくて幸せで、マジでどこまでも無限に惚れる。。。エレキギターとベースとドラムでセッションが本当に充実しまくってて、トラックメイカーによるエレクトロニカっていうイメージを超えたものを感じてた。同じような感じでFeel (M7)とかも本当にヤバい。裏打ち系のビートでもスウィングが強くて、リズム隊だけでかなり強力なフックを持っていて、とてもエネルギッシュなバイブスが伝わってくるのだけど、この曲でも強烈的なまでにエクスタシーを得る。。。ベースの存在感とかもめちゃめちゃよすぎてて、脳みそから何かが分泌されそうになった 笑。ほんと、3分以下という短さなの全然足りない。この作風、Mura Masaとかとは違う今後の新しいトレンドを予感させる作品でもあったかもって思う。

No Romeみたいな雰囲気にハイトーンのボーカルがめちゃオシャレなShee (M4)、エレクトロニックからアンプラグドまで彩りが豊かすぎて圧倒されまくるLeave It (M5)、後半の発展パートのオーケストラの光景で思わず息を呑むI Am Close to the River (M6)…。quickly, quicklyの素晴らしさが満点のコレクションの中で、Everything is Different (To Me) (M9)も本当にイチオシな曲だと思った。一曲の中に多様なカラーを所有したような、センチメンタルでエモーショナルでたまらなくなるやつ。1曲目のPhasesみたいに全速していく感じではなく、もっとスムースでほろ甘い味わいを強調したしっとり系の曲だと思うのだけど、もう身体溶けそうなくらいうっとりして。。。笑。quickly, quickly独自のチルってこんなにもヤバい。Phasesの興奮とはまた違う方向性で私のこと最高の気分にしてくれた。バッキングからソロワークまで、ギターというギターも全部好き。改めて、一般的なトラックメイカーを超えた何かがあるって、やっぱり思う。

ジャンルレスなセンスの融合、これが弱冠20歳の所業だというところがとても驚き…笑。一つ一つの音がヤバいし、組み合わせ方もヤバいし、めちゃめちゃ器用だなって思う。8曲目とかも感動しすぎて白目剥いてた(嘘)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. The World Is A Beautiful Place & I Am No Longer Afraid To Die - "Illusory Walls" (10月)

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「一緒に行こう」と私を誘ってくれる

 TWIABPの今作に私がどこまでも惹かれるのは、エモでポストロックである上にアドベンチャーでファンタジーだから。前作Always Foreign (2017)でもグッときまくって泣きそうになってたけど、今作は抒情的なテーマよりも物語的なテーマの方が色濃く感じられる作品で、加速したり熱くなっていく従来のTWIABPらしさだけでなく、アルバムの中で色々な場面を持っているような多様性であるとか、スケール感とか、それらのドラマチックなエモーションを展開してくれた。この物語に登場する人物は誰だろう。この場所はどこだろう。これから何が始まるのだろう。一体何が待ち受けているのだろう...。音楽の多様な場面が、そのスケールが、エモーションが、私に多くの想像を与えていく。そしてそのアドベンチャーとファンタジーの物語に、私は勇気をもらう。胸が高鳴るようなワクワク、何かとバトルするときのような興奮、心惹かれるときめき、美しさ、超大作のドラマに適うありったけの感動をもらう。間奏曲から20分クラスの長い曲まで、一曲一曲のことが大好きだった。2曲目のQueen Sophie for Presidentからもう最高すぎてヤバすぎる。シンセとボーカルの可愛いフィーリング、ギターロックからマスロックまでカバーしたようなアグレッシブなパフォーマンス、ワクワクと興奮が一つになった、TWIABPのドラマチックなエモーション。その音楽が走り出す。これから始まる物語に期待を寄せるように、またどんなことが起きても立ち向かう覚悟を決めるように、物語のその先へ向かっていく。私はこの曲がくれる勇気のことが耐えられないくらい嬉しかった。自分の人生が退屈でも、しんどいことがあっても、音楽が「一緒に行こう」と私のことを誘ってくれる。アドベンチャーとファンタジーの中へ私を連れていってくれる。この曲を聴けば、私は自分自身に「行け、頑張れ」と応援することができた。もうめちゃめちゃに大好きだった。2曲目以降も、燃え盛るようなダークネスの壮絶な光景を描いたようなInvading the World of the Guilty as a Spirit of Vengeance (M3)、迷いや不安を振り切るようにダッシュしていくDied in the Prison of the Holy Office (M6)、物語の核心に迫るような壮大な世界観のYour Brain Is a Rubbermaid (M7)など、泣きそうになるみたいに感動する曲ばかり。パンデミック下のリモート制作、メンバーの脱退、色々な変化があっての今作だけど、TWIABP史上1番好きだったかもしれなかった。

アルバム後半のTrouble (M9)も奮い立つような感動の曲だった。サウンドは花火みたいに大きく爆発して咲いて、歓喜や祝福のようなフィーリングを訴えていく曲。ギターはそれまでになかったほど轟音だし、派手さをプラスするようなバッキングでのストリングスの加勢もあったり。それはまるで、アルバムの中の色々なステージを経た後の、今作Illusory Wallsの物語を答えに辿り着くようなイメージだった。音楽の物語と私とを同期させて、物語の主人公に感情移入するようにその曲の世界を堪能する。この曲の感動も本当に大きかった。このTroubleに来て一番音量がでかくなる感じがクライマックス的演出としてすごくいい。厳密に言えば9曲目の後にも30分くらい続くけど、私にとって今作における起承転結の結のピークで、このダイナミックなラストに思い切り乗っかってた。今作の指折りの大好きソングの一つだった。

9曲目をラストだと設定してしまうと、10曲目と11曲目の特大ボーナストラックのこれはなんなんだ、、、ってなる 笑。で実際聴いてみるすごくすごくよくて。もうアルバムのボリュームがバグってるように感じてしまった 笑。個人的にはFewer Afraid (M11)の方がやっぱり大好き。エモ・ポストロックとしての熱量も高く所有していながら、とてもメロディックでファンタジックで心奪われる。約20分だし、この曲だけを収録したEP(シングル)だったとしても十分に最高だったよ?って言いたくなる 笑。リリース前から超楽しみにしてたけど、申し分なく素晴らしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Dear Laika - "Pluperfect Mind" (10月)

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雷のアート

 私にとって、音楽はときにとても天候的なことがある。Kacey Musgravesが一点の曇りもなく心を100%晴天化させたり、Emma Ruth Rundleが枯れ果てたメランコリーで曇天の情景を見せたり。音楽による天候的な感覚。それでいうとDear Laikaの作品は、聖なる雨と、悲しみの吹雪と、またそれらの神々しさと激情にまつわる雷についてのアートだったと思う。ピアノが音楽をみずみずしくブルーに染めて、ときに壮絶な悲しみを引き起こすように金属的な冷たい音が吹き荒れ、そして空間がバリバリに割れるようなサンダーボルトを落下させる。エクスペリメンタルの性質的に言えばDevi McCallion & Katie Deyっぽい不安定状態のハードコアがあって、ピアノのキャラクターはKelly Moran(John Cage)同様の死の響きのプリペアドピアノで、だけどメインは驚異的なほど現実離れしたホーリーを誇るクラシックと聖歌の教会音楽で成り立ってる。様々な音楽的天候の創造、作品への神秘性・魔法性の追求、それらが過剰に行き過ぎてしまうような異常じみた危険性だとか、壮絶さと悲痛を抱えた表現の音楽なのに、ステンドグラスから光が差し込むときのような巨大な尊さに導かれる瞬間がある。音楽の特別な祈りがもたらす、破壊的で限界的な美しさの存在。もうこんなの素晴らしくないわけがないって思う。自然と幻が混在するような異世界的描写であったり、アーティスト自身の精神的苦痛や葛藤を超越した姿であるとか、音楽の形態、モチーフ、そういった何もかもが大好き。1曲目のLilac Moon, Reflected Sunたった一つで、その壮絶と超越の美しさを思い知る。神の制裁の如く鳴り渡る雷鳴、何かを失い彷徨い続ける感覚の濃霧、そして狂気じみた激しい混沌…。それは怒りに満ちていて、ボロボロに傷ついていて、どこか残酷的でもあるのだけど、彼女のクラシックと聖歌がずっとそこに反映されてる。怒りも傷も狂気も残酷性も、全てが教会音楽としての祈りとの関連性を持っている。世の中にはこんなに素晴らしいアートがあるのかって思う。私はこの曲を通じて、まるで美しいバケモノと対峙するときのようなイメージを得た。感情表現が現実を凌駕して、何か信じ難い神秘性に到達していくのを覚えた。私にとってDear Laikaの雷はそういうもの。破壊的で限界的な美しさを表した偉大なるアート。もう好きすぎる。そういう内容の曲が、Guinefort's Grave (M2)、Ubi Sunt (M3)、Phlebotomy (M4)、Pluperfect Mind (M9)と他にもたくさんあった。

私的今作のベストトラックは6曲目Black Moon, Lilith。彼女の卓越したアートがリスナーにとって最も満たされる方向に感動を得ていく曲。実験的なカオスの描写がある曲よりももっとシンプルなピアノバラードに仕上がっていて、なんならソウルミュージックに近い性質が感じられる。1曲目のLilac Moon, Reflected Sunで訴えていた痛みや怒りの雷はなく、そこにはどれだけ残酷な現実でも受け入れようとする解放や、何かを大切なものを一生懸命に享受するようなシーンがある。一生懸命になって愛を噛みしめようとする姿がある。彼女の聖歌が、教会音楽が所有する凄まじいホーリーが、それらの全てのメロディーが、愛のために奏でられる。どれだけ痛くても、傷ついていても、一瞬だけでもいいから望むものを手に入れたいという風に。私はこの曲で眼球が終わりそうになるほど泣いた。とてつもない名曲だと思う。Lilac Moon, Reflected Sun (M1)で見せていたような絶望的な負のフィーリングがあったからこそ、そこから一気に反動を起こすようなプラスの作用がある。ラストでDear Laikaのエクスペリメンタルのハードコアの一撃が放たれるとき、その雷が彼女の祈りであるということが本当に信じられなかった。芸術による表現には限界があるけど、それでも彼女は"限界"を表現していた。もうこれ以上ないくらい素晴らしいと思う。6曲目までエクスペリメンタル路線だったのに突然フックを持つように変異したりとか、アルバムの展開的にもヤバいところがある。何度聴いても顔面がぐしゃぐしゃになるような曲。Dear Laika本当に好きすぎてた。

プリペアドピアノの音色を聞いたとき、Kelly Moranとのコラボを疑ってしまった 笑。私の中では "プリペアドピアノ=Kelly Moran"という等式が頭にこびりついてるから。聖歌であるとか、そういうKelly Moran要素であるとか、やっぱり私にとって絶対避けられないような作品だった。教会音楽のエクスペリメンタル的改造、それによる破壊的で限界的な美しさの創造。ArcaみがコテコテなQuinta del Sordo (M8)とかも大好きだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Indigo De Souza - "Any Shape You Take" (8月)

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「あなたが泣くのを見るくらいなら死んだ方がマシ」

 私がIndigo De Souzaの今作が大好きなのは、飾り気のないとても素直なインディーポップで、まだあどけなさの残るような純粋な音楽でありながら、そこに痛みや死についての感覚を持っていて、拭うことができないような巨大な悲しみを抱えていて、"純粋であるが故の傷つきやすさ"というものをすごく感じさせたところ。一見するとポジティブなフィーリングのロック&ポップスなのに、実はすごく冷たかったり、本当は寂しいのを隠してたり、音楽に投影された彼女のハートはとてもセンシティブな気がして、私に何か耐えがたい感情をもたらすような影響があった。「あなたが泣くのを見るくらいなら死んだ方がマシ (I'd rather die than see you cry)」、Die/Cry (M3)に見られた歌とかがまさにそう。通勤時とかになんとなく摂取するようなスウィートなメロディーのキャッチーなポップチューンでありながら、一般的なインディーポップの曲とは比べ物にならないような激しい影響を与える曲。ハツラツとしててハッピーなのに、どうしても満たされないような負の感情を背負っている気配がする。それは例えるなら、多人数の中にいるのになぜか孤独感に苛まれるような感覚だとか、うまくいってるはずなのに何か失恋したような気になってしまう感覚だとか、思いがけずふと虚しく思ったり、儚く思ったり、そういった類の瞬間。私が彼女の音楽に対して思う、"純粋であるが故の傷つきやすさ"。ものすごく大好きだった。1曲目の17から2曲目のDarker Than Deathへの流れとかもそう。17 (M1)はフローラルな色のシンセポップで鮮やかな色を帯びているのに、Darker Than Death (M2)に入ると寒色系の色をしたものすごくセンチメンタルなイントロに繋がる。彼女はそういった、微妙な心情の、とてもとても正直な人間味を見せる。他のポップチューンでは得られないような私にとって深い共感を覚えるのだけど、本当に愛おしい音楽だって思った。キャラクターがめちゃめちゃ好き。最初はNilüfer YanyaみたいなR&B・ソウル属性のオルタナロックなアーティストかと思ってたけど、それより遥かに正統派の、そして何より純粋無垢のインディーポップだった。インディーポップの曲だけでなく、リスナーをモチベートするエネルギッシュなインディーロック系もすごくよかった。

Real Pain (M5)も言わずもがなの最高ソングだと思う。Darker Than Death (M2)と同じセンチメンタルな導入パート、中盤のいたたまれないような地獄的シャウトのコーラスパート、そしてエモーションを込めて胸いっぱいになるように締めくくるロックのラストパート...。Indigo De Souzaの愛と痛み、4分強の中で彼女の思いをさらけ出す。「叫びたい (I wanna kick, wanna scream)」、メロディーもリリックも突き刺さりまくるような、心に強く残る格別の1曲だと思う。インディーズ界隈でSSWってそれはそれはもうたくさんいるけど、Real Painを聴くとIndigo De Souzaには他のアーティスト達に埋もれない、何か飛び抜けてるセンスの作家性があるんだって信じさせられる。私にとって特別なキャラクター性を持ったアーティスト。Hold U (M8)やKill Me (M10)も超名曲だと思った。

Indigo De Souzaを聴いたとき、インディーポップの醍醐味は純粋性にあるのだと再認識させられた。素敵さであるとかときめきであるとか、そういうものに加え、素直でありのままの、正直な心の姿とか。それは綺麗なものだし、また誰かを勇気付けるような力も秘めているかもしれない。Hold U (M8)のMVで確認できる彼女の姿には、そういった純粋性があった。私が本当に大好きなアーティスト。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Ada Lea - "one hand on the steering wheel the other sewing a garden" (9月)

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私もこの歌で自分のことを救いたい。

 音楽の感覚は心臓に残る。それは耳を使わない他の芸術とは違う、より感覚的なものとなって直接身体に記憶される。Ada Leaの今作のdamn (M1)は、私にとってそんな心臓に残る御守りの曲だった。ポツポツと丸みを帯びたギターの雫。澄んだ色をした、空間に綺麗に溶けていくメロディー。"damn the work, damn the music, damn the fun that's missing"、"damn the drugs, damn the friends damn the phone that’s ringing"...。その歌は、仕事にも音楽にも友達にも、この世の全てにうんざりすると、何をどうしても満たされないと歌ったもの。寂しさを覚えるような水色の感情。でもメロディーは、その行き場のない、どうしようもない感情を救ってくれる。音楽が感情の解放の助けになる。このdamn (M1)という曲では、そういう風にしてAda Leaが自分自身のことを救おうとしていたような気がした。どうしても寂しさがなくならないとき、全てが嫌になるようなとき、この歌が傍にいてくれたらどれだけ心強いことだろうか。この曲をずっと心に留めたい。私もこの歌で自分自身のことを救いたい。"damn the mood, damn the people damn the door that’s closing"、終盤でAda Leaの思いが高まっていく。歌に強く強くエモーションを込めて、水色だった感情の歌がブラッディーな美しい赤色を見せていく。このメロディーを、この色を感じることが本当に嬉しくて嬉しくてたまらない。なんて素晴らしい曲なのだろう。もう4分という長さが短すぎる。いつまでもこの詩を口ずさみたい。damn (M1)は私にとってそういう曲だった。

私が思うこのアルバムのめちゃめちゃすごいところは、そんな1曲目damnだけででなく他の曲達も漏れなくめちゃめちゃ最高だというところ。ロックだけど80sなエレポップのカラフルみが楽しいcan't stop me from dying (M2)、ぽこぽこ鳴るギターでほっこり気持ちよくなるoranges (M3)、広大でディープな残響に終始感動するpartner (M4)、フレンチっぽいオシャレフォーク1本でも最強なsaltspring (M5)、ユニークな遊び心がとてもスキルフルなbackyard (M8)、メロディーの咲き方が心奪われるほど綺麗なwriter in ny (M9)、St. Vincentみたいなギターソロの見せ場に思わずめちゃびっくりするviolence (M10)、そして春めいた世界が芽吹くようにAda Leaの温もりをいっぱいくれるhurt (M11)...。フォーク、インディーロック、ドリームポップ、ローファイ、アートポップ、兼ね備えてるものが本当に多い。damn (M1)がナンバーワンソングだとして、ナンバーツーはmy love 4 u is real (M7)だったかも。こちらは臨場感の強い大きな見せ場を持っている、とてもとてもエモーショナルな曲。Angel Olsenみたいなメロウなロックだけど、ノイズの海に思い切りダイブするようなシューゲイザー系の見せ場がある。シンプルなフォークであれだけ強くて、しっかりロックもこなして、メロディックで切ないポップとしてもめちゃ最高なアーティストなのに、それらAda Leamの作家性・センスが、このmy love 4 u is real (M7)一度に堪能できてしまうようなところがある気がする。もうほんと、彼女のよさというよさが詰まりまくってる感じ。そして「Ada Leaってこんなにも素晴らしいSSWなの...??」って思う 笑。damn (M1)以外にも、それに劣らないくらいの大作ソングがちゃんと用意されてた。前作what we say in private (2019)を聴いたときは普通くらいだったのだけど、そこから比べたら今作は私の限界を突破しそうなくらい好きだった。

2021年の"ベスト口ずさみたくなるソング" はSufjan Stevens & Angelo De AugustineのBack to Ozとかかなと思うけど、 Ada Leaのdamn (M1)もかなり好きな詩だった。最初から最後まで歌詞を覚えて心の中でずっとリピートしていたいような曲。要素のピックアップとかニュアンスとか、内容についてもとてもとてもハイセンス。こういう、歌詞が頭の中でリフレインするだけで暇が潰せるような、素敵な時間を過ごせるような曲があるって ものすごく最高だと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Water From Your Eyes - "Structure" (8月)

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これほどまでの魔力を体感する

 "Structure"、それは一般的には規則的なピースの連続であるとか、物質と物質の結合、またはそれらの合体の意味なのかもしれない。でも私にとって、Water From Your Eyesの今作が指すその"Structure"とは、何かの世界と世界についての合体の、不気味で複雑な成り立ちを剝き出しにした、驚異的で奇抜な創造物のことだった。そこにある世界、それは日常的な風景、知らない道、曇り空、吸い込まれそうな洞窟、廃墟、非現実的な混沌、未来都市、またはそういった諸々を想起させる精神的な領域...。懐かしく心地よいフィーリングと、押し潰されそうな憂鬱の感覚と、崩壊が持つ死のイメージと、何かを超越したような神々しい存在と、彼らの"Structure"を通じて、私は幾つもの概念と出会っていく。圧倒的な魅力と、圧倒的な感動の芸術だと思う。ニューウェーヴやポストパンクをルーツに、和みまくるクラシカルなバラード(When You're Around (M1))や、不穏なムードのノイズエクスペリメンタル(My Love's (M2))、バラバラに壊れながら狂うポストハードコア(Quotations (M4))、記憶の中で蘇るようなシンセポップ~ディスコパンク(Track Five (M6))が用意されていた。どこのページを切り取っても猛烈に感動するのに、それらの集合体を"Structure"という一つに奇抜なアートで完成させていた。あまりにも素晴らしすぎるって思う。表面的でない、内に秘めた巨大な美しさを持っているようなところが本当に大好きでたまらない。Quotations (M4)とか近づきがたい威厳すら感じられる恐ろしい曲だけど、そういう曲ですら強く強く惹かれていた。暴力的で破壊的なまでに激しいのに、無感覚で命が止まったような冷たさも描いた音楽。この内省的な創造、このインスピレーションの凄まじさは一体なんなのだろう。この恐ろしさの中には、誰も敵わないような絶対的な美の概念がある気がした。それが、Water From Your Eyesの"Structure"の一部だった。アルバムのコンセプトとその構成要素の楽曲単体を両方を捉えて見て、本当に圧倒されまくる。私をめちゃめちゃ夢中にさせる作品だった。

こんなにも素晴らしすぎてるのに、アルバムの中で楽曲がまたがってストーリーを構築するようなQuotations (M4)と"Quotations" (M8)のところにはもう死にそうになってた。暴力的で破壊的なものに隠された、Water From Your Eyesの秘密が暴かれる瞬間。私にはこれが、痛みを感じていた肉体の中にあった魂が転生して、物語の主人公が神にまで至るようなシーンのように感じられる。宗教的なフレーズのメロディーはリスナーのマインドをコントロールするように何度も何度もリフレインされる。鳥肌が止まらない。止まるわけがない。たった一つの音楽で、私はこれほどまでの魔力を体感する。Quotations (M4)のメロディーの改造というか発展というか、原曲に対するアレンジの面で本当に驚愕してた。Quotationsというタイトルと、リリックの内容と、全てにおいて、あまりにも大好きすぎてる。こんな異種のニューウェーブのバンドもいたんだ...。

ストパンク勢、Black Country, New Road、Squid、black midi、本当にいっぱいいるけど、Water From Your Eyesは音楽のカルチャーを特定できないような感じがどことなくCrack Cloudっぽかったかも。ただWater From Your Eyesの場合大人数バンドではなく二人組のユニットで、これもまた特別なオーラが出てるなって思った。アーティスト写真の雰囲気的にいっても私が壮絶に大好きなグループ。(フェイスブックにあるNYラブのTシャツを着たショットがお気に入り)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

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