アルバム感想(温)

My Favorite Music

「2021年上半期『月間ベストアルバムTOP10』から漏れてしまったベストアルバムTOP10」感想

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毎月新譜のよかったランキングTOP10を作ってるけど、そこから漏れてしまったorよさに遅れて気付いたor見逃してたアルバムに対して、ごめんの気持ちを乗せて感想を書くコーナー。。。だけど選んでみたらこれまた多すぎて...(T_T)(T_T)。なんとか10枚ピックアップしてみた。(どうして10枚なの → きりがよいから。)

 『月間ベストアルバムTOP10』から漏れてしまったベストアルバムTOP10の感想。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. Arab Strap - "As Days Get Dark" (3月)

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尊さすら感じさせるダークネス

 「スコットランドのスローコア・トリップホップのバンド」ってだけでもう大好きが止まらないのだけど、実際クラシック音楽みたいな上品さを兼ね備えた至高のダークネスを持ってて本当にカッコいいなって思った。トリップホップ系のじめじめとしたダウナー感のオーラ、ポストパンク~ニューウェーヴのクールな世界観(Compersion, Pt. 1 (M3), Here Comes Comus! (M7))、さらにはアコースティックギターアルペジオで奏でる北欧感のある風情とか...。ボーカルも色気が隠しきれないほど綺麗なロートーンボイスだし、物語の語り手みたいな感じで少しラップっぽく歌うとか...。アルバムを構成してるパーツの一つ一つがめちゃカッコいいって思う。冒頭の1曲目The Turning of Our Bonesからもう全力で惚れる。闇がとても深いのに、音楽自体は分かりやすいフックを持っててとてもキャッチーな感じ。ピアノ伴奏とかストリングスによる抑揚の装飾とか、尊さすら感じさせるようなダークさに仕上がってると思う。ジャケットのクリスチャンなイメージとかもそんな雰囲気、このダークネスは本当に大好きだった。ジャケットについてはよく見るとゾっとしてしまう怖さがあるけど、作品が持ってる闇を印象強くするアクセントとして利いててすごくいいなと思う。

8曲目のFable of the Urban Foxとかもすごく好き。こちらもピアノとかストリングスが全力でカッコいい感じ。初期のJames Blakeとかそうだけど、この曲みたいに「ゴーンッ...!」って衝撃の余韻を残すピアノのサウンドが本当に大好きで...笑。ストリングスも歌いまくってるけど、曲としては表現力豊かなオルタネイティブロックとして完成されてる。グルーヴとか含めてよさ密度の濃い曲だと思った。

偉大なるMassive Attack様やPortishead様、ダークなトリップホップのバンドってやっぱり超最高だと思うのだけど、Arab Strapのダークなトリップホップには、それらにはない聴きやすさのあるメランコリーが感じれらた。初めてジャケットを見たときはキツめのメタルとか、全く好きでないタイプのヒップホップの作品とかだと勝手に想像してたけど、ごめん全然大好きでした 笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Tala Vala - "Modern Hysteric" (2月)

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音楽が持つ不完全なドラマ

 何度聴いても新しい鑑賞的価値を見出せるようなインストゥルメンタルのエクスペリメンタル。ゆったりめのスペースディスコなクラブミュージック感(Angel Organ (M1))、ギターを重視したインディーロックのテイスト(Beach Tranquiliser (M3))、Cartoon Saloonのアニメみたいなバリバリに民謡な世界観(Reoccurring Weather (M4))、そして厳格で崇高なポストクラシカルの現代音楽(Orbits (M7))...。未来や過去、現実と空想、ワールドとワールドが重なり合う中をぐるぐる巡っていくような、とってもハイな音楽体験がある。インストだけどどの曲もRöyksoppのRöyksopp Foreverみたいにとても分かりやすいドラマが用意されてるから、インパクト大のアドベンチャーに仕上がってて本当にグッとくる。ワールドが多様な分、音楽が持つ感情の幅もすごく広くて、エモーションが次から次へと生成されていく感じも本当にたまらない。タイトルトラックのModern Hysteric (M2)とかめちゃめちゃそう。ヘヴィなドラムを強調したハードロックかと思ったら、Bon Iverのi, iみたいな華やかな歓喜の歌を突然発動させたり。同じ音楽の中で怒りも愛も同時に発生するような、とても揺さぶりの強い曲。骸骨と花の二つのアイコンを象徴したアートワークを完璧に表現してる感じが本当に素晴らしいって思った。生と死、相反しているようで共通性が微妙にあるような絶妙なアートセンス、私はこの部分だけでもうすごく「ベストアルバムーーー!!」ってなる 笑。メロディーも伴奏と主旋律の区別がつかないくらい全部最高だし。最初聴いたときは内容が全然頭に入らなくて困惑してたけど、そういう衝撃的で圧倒される体験も込みでよかったなと思う。

とにかく本作は音楽のストーリーがいくつも用意されてて、アルバムを通して鑑賞するのがとても面白い作品だと思うのだけど、クラシックを重視した終盤のOrbits (M7)は特に感動した。本気を出した弦楽四重奏のパート、憂いのエモーションを感化させまくるようなメロディーに思い切り涙が誘れる。タイトルトラックの2曲目が象徴していたような骸骨と花、生と死のテーマを、また別の視点で捉えた音楽の感じ。2曲目とは印象が全然違うけど、こちらもすごく心奪われた。一つのコンセプトでこんなに色んな発想を入れられるなんて...。

音楽は感情に直接的な芸術だと思うけど、同時に不明瞭で不完全なアートでもあると思う。だからこそ、想像をよく広げることができるし、その世界の中で自分は主人公になって、その物語の中を思う存分に冒険することができる。それでいうと、Tala Valaの今作は映画音楽・ゲームミュージックみたいに音楽のドラマがはっきり確立されてて、そういう冒険がいっぱいできるような作風だったと思う。音楽だからこそ楽しめる不完全なドラマ。(不完全すぎても困るけど...笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Codist - "A Dream Is Just a Big Thought" (1月)

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やるせない気持ちをロックしたい

 Codistのギターロックがたまらなく愛おしいのは、エモに差し掛かりそうなくらい元気でストレートなのに、何か憂いの思いを抱えたような、後悔でため息が漏れるような、やるせない気持ちのセンチメンタルな感情をたくさん所有しているところ。うまくいかないことがあったり、失敗して傷ついたりで気分が落ち込んでるとき、それでも前向きになろうとするようなメロディックなポップさを持ってるロックだということ。私は学生の頃からこういう類のロックでずっと育ってきたわけだし、私の音楽好きの原点みたいな部分に重なるところが多いような、もう100%に大好きなやつ。ガツガツ突き進んでいくような激しさがあるのに豊かなフィーリングスで溢れてるようなMany Clouds (M1)、淡々とギターロックしてる中にエモーショナルなコーラスがとても気持ちよく響くCarrying the Milk Around (M2)、そして悲しみにグッと耐えるような思いを込めて一生懸命にロックするHeaven Handed (M8)...。汗かきそうなくらいアツくロックを奏でてるその姿は無器用でカッコ悪いかもしれないけど、それでも心に素敵に作用するような、メロディックでポップでエモーショナルなものが最高に詰まってる。私はやっぱり、こういうロックは永遠に大好きだなって思う。"A Dream Is Just a Big Thought"というタイトルだけでも今作のよさが滲み出てるし、バンドのキャラクター的に見ても自分がすごく信頼できる感じ。シャキシャキでサクサクのギターサウンドの聴き応えという点でもとてもよくて、単純にギターロックとしてバッチリ。とても大好きだった。

ロック&ポップスというジャンルは実に広大だと思うけど、その中でもCodistの今作で大きく惹かれたところは、Yvonne DeBibble (M3)、Find the Water (M7)、900 Years (M11)のようなメランコリーなナンバーのたまらなく美しい曲たち。Many Clouds (M1)のようなパワーポップ・エモ系も間違いなく大好きなのだけど、これらの3曲のよさはまた一味違うと思った。Yvonne DeBibble (M3)はライトなロックの曲なのに、歌はまるで失恋ソングみたいに悲しく響いてる。とてもとても切ない。それは胸を引き裂くような苦しくて痛いものじゃなくて、Codistの元気なロックだからこそのちょうどいい具合の切なさのやつ。こういう曲で、私は自分の中で捨てられずに溜まったやるせない気持ちとかを発散できると思うのだけど、そういう曲が本当に好き。Find the Water (M7)も素晴らしい。メランコリックだけどリバーブの効いたクランチのトーンのギターの輝きはとてもロマンチックな美しさを放ってる。私の中で去年のJunk Drawerに匹敵するレベルのよさ、今作ではMany Cloudsみたいな曲が中心でリードトラックだと思うけど、こっちの曲もかなり最強だと思う。パワーポップ・エモ系とメランコリックでセンチメンタル系、こんなにも充実してるのに、ラストを飾る900 Years (M11)もこれまた傑作。今までのロックの熱量、胸を締め付けるエモーショナルさ、それらの感動をクライマックスでダイナミックに見せるような大作ソングのやつ。ラブハウスで演奏されるようなロックンロールを越えて、もっと大きな空間で繰り広げるようなスケール感がある。一度聴いたら圧倒されるような曲だと思うのだけど、アルバムの最後の最後までこんな切り札・必殺技みたいな曲を用意してるのが本当にすごい 笑。音楽性、アルバムのテーマ、内容、総合的に1枚のアルバムとしてめちゃ完成されてる作品だって思った。

失恋ソングみたいな歌のYvonne DeBibble (M3)、"And I let nostalgia beat the shit out of me on a daily basis."って歌詞がすごくすごく好き。私もノスタルジックなものに日々打ちのめされてる。何か静かな悲しみを帯びているような、やるせない思いに包まれるような、そういった感覚がたまらなく好きだから。Codistめちゃよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Erika de Casier - "Sensational" (5月)

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テクニカルなエレクトロニカ系センスの次世代R&B

 Erika de CasierのR&B・ソウルが最高に魅力的なのは、今にも消えてしまいそうなくらい儚くて静かな音楽なのに、音を連続的に発生させるテクニカルなエレクトロニカ系のセンスで、音楽が絶えず流れ、儚さが持つ死とは反対のニュアンスを生み出しているところだと思う。分類でいったらヒーリング系の音楽に含まれそうなのに、ビートが細かく刻まれていたり、音数が多かったり、何か動きが大きいアクセントが常に存在してる感じ。なんておもしろくて、綺麗で、そして最高にカッコイイんだろう...!。ボーカルは溶けて無くなっていくみたいにソフトなのに、旋律は華やかに舞うようにいつも踊ってる。それはFKA Twigsのように琴線に触れて感受性を刺激しまくるような儚さとはまた違う、心の中でほんのりと高揚感が残すような特別な美しさ。本当に珍しい音楽だなって思う。特に私的にはエレポップ・シンセポップ味を感じさせるSomeone to Chill With (M7)とか、ハウスミュージックのようなダンスフロアの演出が濃いBetter Than That (M9)やBusy (M12)など、ボーカルのキャラクターがもっとクールなものとして強調されるようなエレクトロニカ要素が濃い曲がめちゃめちゃ大好き...。去年で言えば私的ベストR&BアーティストはぶっちぎりでLianne La Havasなのだけど、彼女のような人懐っこさ全開の人間味ももちろん大好きだけど、こういうエレクトリックなパフォーマンス性を持ってるR&Bアーティストも魅力的だなって。なんならBetter Than That (M13)とか、もうR&Bとか関係なくエレクトロニカのアーティストとして超一流な風格が出てる気がした 笑。

あと私的に今作は5曲目のInsult Meがすごく印象的だった。もともとErika de Casierの今作は、民族音楽系のアレンジとかピアノ大活用のクラシック・ジャズのようなスタイルとか、エレクトロニカ以外の音楽の作り方をたくさんしてるけど、その中でもInsult Meのハープ的な弦楽器のメロディーには、ゼルダの伝説とかファイナルファンタジーみたいな世界観があったと思う 笑。個人的にめちゃめちゃテンションが上がってしまった。一般的なR&B・ソウルやアフリカンミュージックにはないような、何かスピリチュアルなものや超自然的なものを感じさせる気配。それもどちらかというと、和の精神に近い東洋系の世界観のイメージ。伝統的なブラックミュージックを越えて、自然世界からクラブミュージックのようなダンスフロアの空間まで、型にはまらない自由なワールドをいくつも持ってる。改めて本当におもしろいなって思う。彼女が次世代のアーティストと言われても全然納得する。

Erika de Casierは作品だけでなくアーティストとしても見てもかなり好き。ポルトガル生まれデンマーク育ちという個性的なルーツ、学生時代にErykah Baduに夢中になっていたこと、近所迷惑にならないように小さな声で歌うことをマスターしたこと(←ここが特にヤバい。。。)音楽からも彼女の特別感は滲み出てると思うけど、その根幹を担うパーソナリティもめちゃめちゃ特別だということ。改めてもっともっとファンになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Wild Pink - "A Billion Little Lights" (2月)

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安らぎに身を預ける瞬間

 "A Billion Little Lights"(億個の小さな光)というたまらなく素敵なタイトルの今作は、ただ普通にロマンチックな作品なのではなく、カントリー・フォークのほのぼのとした性質の特別な光を持っている作品。それはとても優しくて、純粋で、一つの邪念や疑心なども存在していないようなもの。ゆったりのんびりしてる平和的なグルーヴや、春めいた空気を感じさせるような暖かさがあるドリーミーなサウンドスケープ。親しみを覚えるような、懐かしさが残るような、そういった強力な安心感を持ってる感じ。こういう音楽に身を預ける瞬間がすごく好き。音楽の安心感をもっと強調するようなフォークロック系の曲から、Track Mud (M8)みたいな子守歌・バラードのような曲まで、アルバムが終始ピースフルな幸せで満たされてて、油断してると泣きそうになるくらい癒される。ドリーミー路線を極めたAmalfi (M4)とかも今作において超有力なナンバーだと思うのだけど、中でも私は、ロック力の高いThe Shining But Tropical (M3)とかに特に感動してた。もともとWild Pinkの今作はアルバムのアートワークでも示されてるみたいに、寒さの残る明け方時に朝焼けを感じるような、心に沁みまくるフィーリングスのサウンドのやつをたくさん所有してると思うのだけど、そういうサウンドでダイナミックにロックするって本当にヤバいなって思う。フォークロックだからできる美しさの巨大化。裏打ちビートの躍動感も音楽の快感によく貢献してる。インディー・オルタナロックで光属性の作品って多岐にわたると思うけど、その中でもWild Pinkはやっぱりピースフルさと安らぎ、それらの心地よさがトップクラスなバンドだって思った。

Family Friends (M7)みたいな女性ボーカル採用型の曲も最強だと思う。カントリー・フォークのキャラクターの印象が強いボーカルに対して、それらのほのぼの感にハイトーンな声質のキラキラしたピュアネスをプラスするような演出。ただでさえとてもピースフルなのに、さらに畳み掛けるように幸せの精度が上げる感じ。もう最高に満たされまくるから、思わず天にも昇るような気分になる。。。笑。Wild Pinkの音楽には本当に一切の不純物がない。100%の安らぎ。だからこんなにもピースフルな優しさに包まれるんだって思う。

ロックが色濃い前作Yolk in the Fur (2018)も改めていいなって思った。今作だとラストでお腹にどっしりとくるようにパワフルにロックするDie Outside (M10)とかがそう。ただ今作のカントリー・フォークの性質がある暖かさはめちゃめちゃ春にぴったりな作風の感じで、ちょうど3月手前の一番春が待ち遠しくなる2月のタイミングのリリースが本当に最高だった 笑。Skullcrusherやポタロビに並ぶ私的2021年の春アルバム。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Flock of Dimes - "Head of Roses" (4月)

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こんなに綺麗なロックある???

 儚い風情が漂うアコースティックなインディーフォーク、それとは対称的に情熱的なフィーリングが宿ったノイジーなギターロック、そしてエネルギーがみなぎるような多層的なコーラスのメロディー...。Flock of Dimesの音楽は色々なものが組み合わさって完成された芸術的な魔法のようで、それはそれはもう最高に素晴らしい。1曲目の2 Headsは"女性ボーカル版Bon Iver"みたいなやつの、センシティブなサウンドをふんだんに取り入れたナンバーだけど、この冒頭からよさのインパクトがすごかった。Flock of DimesことJenn Wasnerの歌声は本当に華々しくて、メロディーは暖かみのある優しい色を帯びているけど、2 Heads (M1)はその歌を心に突き刺さすように深くまで届ける音響技術を持ってる曲。音楽が持つ色や感情をもっと魔法的に実体化するみたいな素晴らしさ、もう鳥肌がバリバリに立つし、「こんなの感動しないわけないじゃないですか...!!」ってなった 笑。そんなFlock of Dimesの音楽だけど、2曲目のPrice of Blueでは2 Heads (M1)の魔法性をそのまま引き継ぎつつ思い切りロックするような曲で、私がもっと大好きなやつだった、、、笑。ギターはめちゃめちゃノイジーでアグレッシブなのに、Jenn Wasnerの華やかな歌のキャラの存在が強くて、音楽自体はとても上品なものになってる。ちゃんとロックなのに、ロックだとは認識できないような奥ゆかしさと風情...、こんなに綺麗なロックある???笑。1曲目と同じ多層的なボーカルのエネルギーを利用しながらエモーションをさらにさらに高めていくような展開の部分は今作でもクライマックス級の感動。エモーションを高めるだけでなく、その熱が拡散して広がるような気持ちいい温度変化のフィーリングが本当に見事だし、"Alone with you, the price of blue"って詩の響きもものすごく美しい。歌のパート、ギターソロ、どこを取っても抜群、もう感動せずにはいられない。これらの冒頭2曲が紛れもないベストソングだった。

実は私はWye Oakの音源はCD持ってるのにあんまり聴いてなかったのだけど、Flock of Dimesの今作を通じて改めて聴いてみたら、「Wye Oakめちゃめちゃ最高じゃん!?」ってなった 泣。オルタナロックの自在な表現・音楽の魔法性という点ももちろん別格だけど、特にJenn Wasnerの歌のキャラクターが本当にいいなって改めて思う。今作だとWalking (M5)とかも大好き。歌と一緒に新鮮な香りがこちらまで漂ってくるような感覚。音楽のオーガニックなテイストや、フローラルなイメージのアートワークなどの要素も込み込みで、このJenn Wasnerの豊かでメロウな歌のやつがすごくいい。そういう上品なキャラクターすらも、Flock of Dimesならではのセンスで魔法的にアレンジされてるって、やっぱりどう考えても最高だと思う。Flock of DimesだけでなくWye Oakにも戻り、より一層ハマりました。

前半の1,2曲目が最強すぎてて「他の曲劣るんじゃないか...」ってなっちゃうけど、Two (M3)とかLightning (M6)とかOne More Hour (M7)とかAwake for the Sunrise (M9)とか、いい曲めっちゃいっぱいあった。風情のあるアコースティックなフォーク、パワフルなロック、歌、そして魔法性...。Wye Oakのよさに気づくの遅れてごめんという意も込めた、今年の上半期漏れベストアルバム。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Middle Kids - "Today We're the Greatest" (3月)

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正のフィーリングが溢れて止まらない...!

 Kacy Musgravesみたいに、心の天気がどれだけ悪くても必ず晴れをもたらすみたいな、陽エネルギーや正のフィーリングが100%チャージされてるタイプのロック&ポップス。その中でもMiddle Kidsの音楽が特別なのは、ほのぼのまったり系の陽エネルギーとは違って、悲しみを背負いながらそれでも何かを信じるような、絶望に立ち向かうような、そんな力強い希望が込められた陽エネルギーがあるところ。映画でも小説でもなんでもそうだけど、やっぱりこういう風に鑑賞者の信じる気持ちを増強させる作品って本当に身体にいい。Cellophane (Brain) (M2) → R U 4 Me? (M3) → Questions (M4)って流れで、純粋な正のフィーリングをもっとパワフルに、もっと熱く、もっとエモーショナルにロックしていく。そこには、負の感情に屈することなく、解放的な気分に浸るような、それらの喜びを嚙み締めるような、そんな幸せな姿がある。特にQuestions (M4)なんかはそれらの喜びに対して、何か苦しみや痛みにも耐えて泣きそうになりながら歌うところがあるのが本当にヤバい。それはまるで、一生懸命になりながら喜びのことを力強く願うようなメロディー。祝福や歓喜を象徴するブラス隊の効果も合わさって、音楽がもっと大きく輝いていく。なんて感動的なんだろう。自分のことを信じられなくなるようなネガティブなもの全てに対して、それらに絶対負けないMiddle Kidsの音楽の愛を感じたとき、自分の中の正のフィーリングが増幅されて、この上ないほど満たされて幸せになれる。"Today We're the Greatest"、タイトル、アートワーク、そして音楽...。正のフィーリングが溢れて止まらない、そんな作品だった。

10曲目のI Don't Careのイントロとかでも思いっきり泣きそうになる。私がイントロ大好き選手権を開催したら上位はDeloreanとかMarnie Sternとかになると思うけど、このI Don't Careも最高に最高のイントロ。Middle Kidsらしい力強い希望の陽エネルギーがあるのに、胸が裂けそうになるくらい切ない。エモーショナルさの密度がとんでもないレベルで、どうしてこんなに素晴らしいの?って感じ。サウンドとかメロディー、抜け目なく全てが好き。即効性があるから「Middle Kidsのフィーリングを速攻チャージしたい」ってときにはすかさず聴きたくなる 笑。R U 4 Me? (M3)やQuestions (M4)も超名曲だと思うけど、こちらのI Don't Care (M10)も最高に大好きだった。

2017年に来フジしたReal Estate、2018年に来フジしたKacy Musgraves、願わくば私はMiddle Kidsも小雨がふる朝のホワイトステージとかで観たい。心が晴れ渡るような気持ちいサウンド、ネガティブなものが全て消滅するような純粋たる正のフィーリング、フジロックの朝ホワイト(プリキュアみたいに言うな 笑)に本当にぴったりだと思う。てかまずフジロック行きたすぎる。( 定 期 )

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Paul Jacobs - "Pink Dogs on the Green Grass" (4月)

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ドラムがいいお仕事をしてる

 Ariel Pinkみたいなローファイ・サイケ系のインディーロックによる"古き良きロック"の再建。私はLou ReedとかThe Velvet Undergroundみたいなクラシカルなやつって、名曲をつまみ食いする程度にしか聴かないのだけど、それらを現代版として復興させたようなPaul Jacobsのロックに関しては猛烈にハマりました...!!のんびり気ままに過ごすような安心感のあるレトロな趣、ギターのストローク感含めこだわりぬいた至高のグルーヴ、そして気分がふわふわになるようなめっちゃ楽しいメロディーの数々...。トラディショナルな王道ロックンロールだけど、音楽が丁寧に上手にまとまってて、13曲全てがハイレベルのよさの感じ。特に私的にはHalf Rich Loner (M3)とかYour Last Words (M11)みたいにドラムがいいお仕事してる曲がマジで大好きで...笑。Half Rich Lonerに関してはDancing with the Devil (M8)と同じでロックンロール・ブルースのリズムを持ってる曲だと思うけど、こういう腰の入ってるグルーヴってこんなにも最高なんだって実感した。テキトー感がよく出てるローファイの愉快な精神状態もプラス、ノリノリがエスカレートするあまりニヤニヤを我慢できない...笑。Your Last Words (M11)の方はパンチの効いた重たさを持ってるタイプのドラム。スピーディーな中でスネアとかシンバルが爽快にハマっていく感じがすごくアがる!結構激しめなのに、ローファイ・サイケのダラダラのんびり感は健在で、ロックンロールだけど和む部分も残ってる。本当に楽しいロックだなって思う 笑。今作は4月末にリリースされた作品だったけど、他の作品に気を取られていて月間ベストアルバムに入れられなかった...。ほんと、めちゃ傑作の作品。

もう一つ、今作では9曲目のGlory Days, Yesterdayでも唸された。古き良きロックの再建・復興って感じの今作の作風の中でも、この曲だけ現代風のテクスチャを思わせるシンセサウンドが混じってる曲。透明感があってとても綺麗なサウンドなのだけど、"Glory Days, Yesterday"って名前の曲でそういうサウンドを発揮するこの感じがもうめちゃめちゃハイセンス~!って思った 笑。同じ感じでいうとKathy's Bible (M10)とかもそう。もともとサイケデリックな音とかもとても本格的な品質だけど、それらから派生したドリーミー透明感というところもすごくいいサウンド。改めてPaul Jacobsめちゃめちゃ最高じゃん!ってなる 笑。ほんと、ベストアルバムから漏れてごめんなさいです。

ドラムじゃなくてギターという観点だったらUnderneath the Roses (M7)とか特に大好きだった。中盤以降に出てくるメロディーのフックがとにかく印象に残る。"the オールドロック"って感じのムードたっぷりの粋なリフ、こういうところからも古き良きロックの再現が徹底っぷりが窺えると思う。クラシカルなロックに対してそこまで関心を持ってなかった私を黙らせるくらいのレベル、Paul Jacobsほんとにほんとによかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. King Gizzard & The Lizard Wizard - "L.W." (2月)

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テンション爆上がりソングばっかり

 耳にこびりつくような悪魔的なメロディーと、誰にも止められない最強のツインドラム...。『K.G.L.W』という大ボリュームのセルフタイルは、Gang Gang Danceの作風を継ぐようなインディアンでアラビアンなサイケロックの作風、マジで無敵の楽しさを誇ってると思う...!笑。呪文を唱えるような怪しげなギターのメロディーがドラゴンのように舞って浮遊し、音楽の中を駆け抜けていくようにドライブする。グルーヴはとても流動的で、込めた力がスムーズに伝達するような気持ちよさ。ゾクゾクするような世界観で、サイケデリックな陶酔を味わいながら、それらの中毒性のヤバすぎるメロディーとグルーヴにありったけ魅了されていく、、、。もう!本当に!たまりません!!泣泣。これより一つ前のK.G. (2020)も、なんで私ベストアルバムに入れなかったんだろうって超後悔してるくらい本当に素晴らしい作品。今年6月にリリースされたButterfly 3000のときから私の中でキンギザブームがなお加速して、今ではもうめちゃめちゃ夢中になってる 笑。K.G.の方だとOddlifeとか超絶名曲だと思うのだけど、L.W.の今作の方もPleura (M3)、Supreme Ascendancy (M4)、Static Electricity (M5)、See Me (M8)などなど、こちらも劣らずテンション爆上がりソングばっかり。Pleura (M3)とかに関しては一つ前のO.N.E (M2)とのつながりから場面転換のようにして雰囲気が変わるけど、これから何かが起きることを予感させるような強力なドキドキとゾクゾク感がある。そこからキンギザロックが始まったときはやっぱり全力でアがる 笑。彼ら自身も随所で「Whoooo!!」って叫んでるけど、分かるよ、分かるよその気持ち。。。笑。そこから興奮が冷めない状態でSupreme Ascendancy (M4)に移行にしたとき、今度はミニハープのようなとても美しいサウンドがリスナーをお迎えしてくれる。この曲のロックもめちゃめちゃカッコいい。そこからのStatic Electricity (M5)も今作屈指のスーパーリードトラックな感じ、マジでずっとずっと最高...!今作L.W.は中毒性の超高いフレーズだらけだけど、私的にはこのStatic Electricity (M5)が一番中毒性を感じてた 笑。中盤以降で歌とギターが並行するメロディーのところが本当に没頭性が半端ない。テクニカルなツインドラムのグルーヴも「いいぞーもっとやれーー!!」ってなる 笑。1曲目から始まりこの5曲目までのアルバム前半、休憩するところが存在しないくらい終始最高が持続してて素晴らしい。ちなみに6曲目East West Link (M6)もよかった。

See Me (M8)とK.G.L.W. (M9)のラストも、前半と同じかそれ以上の最高さ。See Meは滴るように流れていくメロディー・フレーズもめちゃ魅力的なのだけど、その中でここぞとばかりにツインドラムが無双しまくってる 笑。こういうアップテンポのキンギザのドラムのよさって本当に抜群のよさ、後半でビートの刻みが倍になったときは異常なほど楽しくて「うわーー!」ってなりながら爆笑しちゃう 笑。こういうドラムにもキンギザの音楽の素晴らしさが詰まってると思う。

その後のK.G.L.W. (M9)はモンスター的ハードロックソング、まるで悪魔でも召喚するのかというような邪悪な気配が立ち込めてる。今までのサイケロックとは桁違いな迫力、ワウワウ言いながら暴走するギターに呪いのようなダークなパワーが宿ってる。こっちもめちゃめちゃにカッコいい~~~泣。ロック、ロック、そしてハードロック、あぁ楽しい。。。キンギザもう超絶に大好き!またライブ観たい!

さっきも言ったけど、一つ前のK.G. (2020)をベストアルバムに入れられなかったのめちゃ悔やまれる。何か今作L.W.もセットで、キンギザをベストアルバム扱いできる機会はないだろうか...。もし2020年代のベストアルバムを作るってなったら、上位200位までにはなんとしてでも入れたい!笑

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Lost Girls - "Menneskekollektivet" (3月)

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ミステリアスなものに恋をする感覚か、ダークサイドへ堕ちる死の感覚か

 不気味なものはしばしば、それと出会った人を闇へと突き落とすような危険な感覚を持っている気がする。Lost Girlsのダンスミュージックは、宇宙ないしはブラックホールの無限の暗黒を秘めている音楽で、リスナーが二度と戻れなくなるような、抜け出せなくなるような、そんな強力な重力のダークネスを所持した作品。それはミステリアスなものに恋をするような感覚か、ダークサイドへ堕ちる死のような感覚か、あるいはその両方かもしれない。なんて魅惑的で、美しくカッコよく、そして素晴らしいんだろうって思う。感情を失ったような冷たさのあるエレクトロニカの性質、感覚を研ぎ澄まして集中するクラブミュージックの性質、Jenny Hvalの存在はそれらの特性を所有しているのに、不思議とどこか神々しくて神聖なオーラすら放っている。それらの歌が淡々と響くさまに私はどこまでも虜になる。本当に永遠にカッコいい。今年で言えばSofia KourtesisのEPとか、私はただただひたすらに美しいものへ没頭するようなダンスミュージックのやつがめちゃめちゃ大好きなんだって思ったけど、Lost Girlsのダンスミュージックのやつも今年最上クラスの大好きさ。10分越えの長尺トラックもあっという間に終わってしまう、そのくらい夢中になれる作品だった。

Andy Stottみたいな工場的なサウンドワークが病みつきになるMenneskekollektivet (M1)、ポストパンク・ニューウェーヴみたいなアングラの世界で聖なる歌が絶大な美しさを生み出すLosing Something (M2)、そしてディスコ系の音楽ですらもダークな重力を発生させるCarried by Invisible Bodies (M3)...。どの曲も最高だけど、私的にはLove, Lovers (M4)が1番好き。音楽の緊張感を掻き立てるようなハイテンポなビート、Lost Girlsのダークな音楽性とも相まって、まるで息苦しさすら催すような感覚にまでなってしまう。この高揚感が本当にたまらない。そんな高揚感に包まれた音楽なのに、中盤になると今度はドラマチックな場面が出現してくるも本当にヤバい。誰かを思って呼びかけるように、Jenny Hvalの歌が遠くまで伸びるように響いていく。尊くて、愛おしくて、たまらなく美しいメロディー。緊張や高揚感やダークネスだけでなく、それらからは予想もできないような綺麗な華を持っているということ。15分の曲だけど、本当に素晴らしいストーリー性があった。マジでめちゃんこに大好き。

ノルウェー語で『人間集合体』というタイトル(Menneskekollektivet)のコンセプトも素晴らしいセンスだと思う。不気味で怖いのに、ミステリアス性を十分に持っていて近づきたくなるような鑑賞的価値の余白がある感じ。Arab Strapもそうだけど、やっぱりこういう尊さを持ってるダークネスってすごくツボだなって思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

プレイリスト

Apple Music↓

温の「2021年上半期の漏れ&逃しのベストアルバム(温)」をApple Musicで

 

Spotify

open.spotify.com

 

※「月間ベストアルバムから漏れてしまったベストアルバム」...から漏れてしまったベストアルバムもあります 泣。

(今回だとSG LewisとかElori SaxlとかDry Cleaningがそう)