アルバム感想(温)

My Favorite Music

「2021年7月ベストアルバムTOP10」感想

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リリースが延期になったDrug Store Romeos、期待大すぎてドキドキが止まらなかったClairo...。今月の新譜もランキング作るのムズすぎてて、もうabc順にしようかなって思った 笑。(でもやっぱりランキングにする)

今月の最高すぎる新譜TOP10の感想

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. Moin - "Moot!"

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天下一品のギターノイズ

 前にも言ったけど、例えば血みどろになるみたいにしてダークサイドへ堕ちるようなZombyのReflectionとか、自分の中の邪悪な心を容赦なく引き出して完璧に狂っていくようなORTIESのPlus putes que toutes les putesとか、心の内に秘めた闇を解放する類の音楽には、マジでマジでカッコいい作品ってやっぱりあると思う!笑。ただMoinの場合は、ノイジーなギターロックとポストロックとしてのカッコよさが抜群な、とてもユニークなダークネスを持ってる作品の感じで、音作りからフレーズまで細部の細部まで高い芸術性がある...!black midiみたいなテクニカルな芸術性のやつではなく、もっとシンプルに洗練されたセンス、これがもうめちゃめちゃヤバい...笑。2曲目のCrappy Dreams Countから、その音作りとフレーズのハイレベルなよさに圧倒されてしまう。暗く湿ったような低い音域の、ボロボロになって汚れてるみたいなノイズを持ってるギターロック。そのメロディーには何か怒りや悲しみのような負の感情が宿ってる。ただ鬱憤を晴らすようにアグレッシブに鳴らされてるのではなく、もっとメランコリックで冷たい響きの印象。もうめちゃめちゃカッコよすぎる。。。笑。このギターは猛烈に惚れまくる。カッコいいだけでじゃなくて、たった一つのシンプルなギターリフの中に鑑賞的魅力を多く含んでるというよさ。ギターだけでなくポストロック的アプローチのドラムも素晴らしい。そういうセンスがアルバムの随所にあった。

5曲目のLungも超超超カッコいい...。こちらのギターはもっと太くパワフルなサウンド。ノイズのテクスチャもギターの低弦の音を最高に魅力的に聴かせるようにベストにイコライジングされてる感じで、メロディー・サウンドメイキング共にとても高精度な出来栄え。本当に芸術性の高い完成度だと思う 笑。ドラムとのアンサンブル効果によるフレーズの見せ方とかも最っっっ高。あまりにカッコよすぎから発狂しちゃいそうになるんだけど...笑。

高い芸術性、他にもピアノの1番低い音域だけ利用するNo to Gods, No to Sunsets (M1)とかもセンス素晴らしいって思う。Haxan Cloakみたいにリスナーを地獄の底まで突き落とすような低音...。ただやっぱり、Moinはギターノイズのよさが天下一品。アートワークのダーティーなイメージもめちゃ好きだった。(てか洗濯物こんなになったらマジで最悪だよね 笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Dolphin Midwives - "Body of Water"

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天国の世界と滅びの世界

 ハープ奏者兼エレクトロニカサウンドアーティストによる水をテーマにした音楽アート。BullyとかSiv Jacobsenのような冷たくて気持ちいい感触が最高なジャケットの本作は、猛暑でヘトヘトになる夏真っ盛りなシーズンのしんどさを軽減するようなヒーリングのみならず、もっと私に壮絶な感動を呼び起こしていた。その音楽は例えるなら、Mary Lattimoreの天国とK Á R Y Y Nの滅びの世界を一体にして描いたもの。何より素晴らしいのは、水という観念が持つ流動的な性質や、それらの時間的なイメージによる生と死のコンセプトが、それらの世界観と完璧に適合していたところ。とてもとても素晴らしい世界観だと思う。滴るように零れる鍵盤楽器やエレクトロニックの音色の高い表現力、原始的な民族音楽のようなグルーヴによる音楽の神秘性の強調...。生々しく人間的な感情で溢れた歌は、モジュレーター系のエフェクトのプロセスでもっとカオスに、もっと魔法的なものへと変化してる。3曲目のBloomとか本当に素晴らしすぎる。歌唱力の高いDolphin MidwivesことSage Fisherのボーカルはとても か細いのに、リスナーの心に力強く訴えかけるようなエネルギーがある。それが水辺の環境音楽のような透明感のあるサウンドの中で響いていく様子の美しさといったらもう、、、。ただでさえ歌がものすごく上手いのに、世界観とかにもこだわりまくってもっと人間離れしたものを創造するのってやっぱりずるい...泣。静と動のコントラスト、魔法的でありながら同時に普遍的な部分もあって、どこか瞑想的な安らぎのようなものも感じられた。水をコンセプトにこんなに魅力的なアートを作れるってすごい。今作はパンデミック時に制作されたアルバムということだけど、それは単なるヒーリングを目指したものではなく、もっと果てしなく広大なワールドの魅力と、奥の深い感情を与えるものだった。改めて、本当に大好きだなって思う。

ハープのインストゥルメンタルパートの曲もそれぞれ違う表情を持っててすごくいい。華々しい音色 (Idyll (M9))、懐かしさを感じさせる音色 (Sunbathing (M12))、それらによるMary Lattimoreみたいな楽園への導き。その中でもFountain (M4)が1番好き。とても滑らかに流れるワルツのリズムに沿って、ハープの音粒が綺麗に揺らいでいくのを感じる。それらはまさしく今作のテーマになっている水のイメージそのもので、ジャケットのようにキラキラ反射する水面の揺らぎのよう。「ハープの音から水を感じる」っていうのが本当にたまらない。歌がめちゃ上手くて、サウンドアーティストとしても優秀なのに、ハープ奏者としてもかなりの腕も見せつけるようなハイスペックさ。今作はグラミー賞ノミネートの名プロデューサーTucker Martineと組んだアルバムらしいけど、この内容なら確かに納得できるなって思った。

「私の身体は水で成り立ってる」(Body of Water)、彼女の歌に込められたメッセージを想像しながら楽曲を聴く、生と死、安らぎと混沌、人間的なものと魔法的なものの共鳴、それらの象徴として与えられる"水"...。凄腕アーティストによる私的にとてもツボな内容の作品だった。(水ジャケも最高...!笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Lump - "Animal"

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人間的であることの祝福

 「このアルバムには快楽主義、欲望の暴走というテーマが少しだけある」、LumpのメンバーのMike Lindsayが言うように、フレットレスベースのワイルドなサウンドとか、気迫のあるダンサブルな衝動を持ってるシンセポップの今作「Animal」は、"内面に抱えた野性的な本能を晒す"というような意味合いのコンセプトを持ってる作品なのかなと思ってた。でも、それなのにLaura Marlingの歌は本当に優雅で、シンセが構築する世界観は宇宙的で神々しくて、それらの心惹かれるような尊さに溢れていた。私がLumpの今作が本当に大好きなのは、そういった音楽の尊さと「Animal」という野性的なコンセプトの組み合わせのところに、一種の"人間的であることの祝福"みたいなものを感じ取ったから。唯一無二で前衛的な迫力もありながら、人間らしさを肯定する喜びにも満ちてるということ。めちゃめちゃ素晴らしいアルバムだと思う。ワイルドでありながら音楽をアートポップ風に仕上げたり(Bloom At Night (M1))、Lauraの綺麗な歌をもっとパワフルに印象強く見せたり(Gamma Ray (M2))、ダンサブルな衝動の欲望にもっと順応して快感を得たり(Animal (M3), Climb Every Wall (M4))...。1曲目~4曲目の4コンボだけでもう決定的に傑作の感じ。そもそも"Laura Marlingがポップを演る"というだけでもうめちゃ最高だったのだけど 笑、音楽的な性質やコンセプト、それらのオリジナリティ的な部分でも本当に魅力的な作品だった。

あと今作は、やっぱりLaura Marlingの歌が超最強だって思う。Bloom At Night (M1)とかGamma Ray (M2)とか、エモーションを込めながら高らかに昇っていくようなメロディーがそう。とても気持ちよさそうで、想いが詰まってて、さっき述べたような祝福的なものも感じさせたり。この歌には本当に満たされまくる。。。Red Snakes (M5)みたいなしんみり系のメロディーも激ヤバのよさ。音楽の宇宙的な空間の世界観と相まって、Lauraの上品な歌の持つ儚さとか悲しみとか、胸を締め付けるようなフィーリングがとても強調されてる。本当に心を打つ深い感動がある。去年のSogs For Our DaughterみたいなLaura単体の純正フォークには出せない、オルタネイティブの自由な表現ならではのアレンジ。Laura Marlingというボーカルのキャラクターが最強に活きてて素晴らしいと思う。Animal (M3)の歌に関しては、"Dance, dance. This is your last chance"とかリリック的な面で好きだった。

他にも、めちゃめちゃポップなのがよすぎるWe Cannot Resist (M8)とか、メロウなのにピュアで愛おしいPhantom Limb (M10)とかも最高。総合的に見て本当に大好きなアルバム。(さっきも言ったけど"Laura Marlingのロック&ポップス"ってだけで良い◎◎◎笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Skirts - "Great Big Wild Oak"

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身体がバグる美しさ

 のんびり春めいた空気と穏やかなメランコリックさが入り混じった不思議で特殊な感覚のインディーロック。私的に例えるなら「Jay SomLomeldaの合体」って感じなのだけど、これは大好きすぎるやつだ...!!って思った 笑。今年1月に新譜がリリースされたThe Big Netとか、ヨラテンゴ系統の優しいインディーロックのやつってほぼ漏れなく大好きだけど、その中でもSkirtshaの場合、生き生きとしたフレッシュなドリームポップと、憂いを秘めたグルーミーなインディーフォークを二つを使いこなしてる感じ。優しいフィーリングだけでなく、そこにミステリアスな魅惑も含んでて本当にめちゃめちゃ引き込まれる。イントロ後のAlways (M2)から超素晴らしい。ローファイ系の音処理で雰囲気的には湿ってる感じなのに、そこからギターの明るいメロディーで音楽をドリームポップ化していくのだけど、マジでセンス超最高だと思う。馴染みがなさすぎて身体がバグるような意味わからなさすら感じるほど、不思議で魅惑的で全力で美しい。3曲目のEasyも、温度感的に言えばダークっぽいのに、そこに揺らぐように生まれるシンコペーションのメロディーはのんびりほっこりしててこんなにも暖かい。初めに聴いたときは「なんじゃこりゃ」「すご」「でも最高。。。」って感じだった 笑。まるで一つの音楽の中に春と秋の景観を両方持ってるみたい。あまりにも不思議で、ジャケットの世界もこの世のものじゃなく見えてくる。

優しいインディーロックを奏でるバンドは精神状態にすごく好き。Skirtsの今作でいうと7曲目のTrueとかそう。相変わらず曲調は明るいのにメランコリックって不思議な感じだけど、グルーヴはゆったり気ままな感じで流れてる。特殊な感覚のインディーロックだけど、音楽は全て気持ちよさを目指しているんだなっていうのが伝わる。やっぱり大好き。トロピカルなSwim (M6)、カントリーっぽさが可愛らしいSapling (M9)もそんなような意思が伺える。「また超絶大好きなインディーロックのアーティスト見つけた...!!」って思った 笑。

Skirtsが所属してるDouble Double Whammy、LomeldaだけでなくFrankie Cosmos、Florist、Sean Henryとかと同じレーベルだった。やっぱり春とか秋に聴きたくなる曲。ただ湖の涼しげなジャケに関してはめっちゃ夏っぽい(←めちゃ大好き)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Anna Meredith - "Bumps Per Minute (18 Studies for Dodgems)"

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遊びに行けない今のご時世だからこそ!

 ユーモアに富んだ天才アーティストによる奇想天外のアトラクション型エクスぺリメンタル…!!マルチジャンルとか変拍子とかのエキセントリックなテクニックを駆使しまくるAnna Meredithの音楽には、リスナーのことをぶっ飛ばしていくような激しい楽しさがあると思う 笑。前作Fibs (2019)のParamourとか、2010年代における私屈指の大大大好きソング(大大大好きMV)なのだけど、今作はそんな彼女らしさ全開でもってアミューズメントパークのバンプカーをコンセプトにした作品...。リスナーをぶっ飛ばすエキセントリックさがあるAnna Meredithのキャラと、思いっきりはしゃぎたくなるような遊園地の世界観、それぞれの連動によって音楽の楽しさがさらにハイレベルなものに、、、このコンセプトはほんとにAnna Meredithと相性抜群すぎると思う!!(ToT)笑。バンプカーのアトラクションにぴったりなトランス系のシンセを用いながら、レースの緊張感、目眩が起きそうなスピード感、加速したりドリフトしたり飛び跳ねたり、バンプカーのレースと同じ質のワクワクを的確に演出できてる。BPMで始まる18の楽曲はそれぞれがコースのステージみたいだし、その中でAnna Meredithのテクニカルな作家性がアトラクションの特殊ギミックみたいになってて尚おもしろい。彼女のポテンシャルの発揮とゲーム性の再現が相乗的なよさになった とってもスペシャルな一枚。すっごく楽しかった...!笑

Varmints (2016)やFibs (2019)のようなクラシックからハードロックまで融合させる従来の異次元スタイルと比べると、今作はシンセを主軸としたエクスペリメンタルポップな感じがする。1曲1曲が劇的な作曲性を持ってるというよりかは、数多くのアイディアがミニトラックとして集合して成り立ってるアルバムだけど、その中でも11曲目のBPM72 (M11)がものすごく強烈だった...!レースの緊張感やスピード感もそうだけど、この曲だけ何かバトル時のBGMのようなめちゃめちゃカッコいい曲調の興奮がある 笑。テーマパークのアトラクションのハッピーな雰囲気とはまた違う、もっと本気になって勝負に挑むような情熱と集中力。トランス系のシンセがシグナルを点灯させるように鳴りながら、緊張感やスピード感をどんどん煽っていく...。これは本当にアツい!そしてもうバンプカーじゃない!笑。でもきっと、Anna Meredithはこの曲も爆笑しながら作ってたんだと思う 笑。ほんと、彼女の音楽はめちゃめちゃ楽しい。リスナーをぶっ飛ばす激しい楽しさといえばDan Deaconとかもそうだと思うけど、彼女の場合は例えばBPM 124 (M7)とか、背筋が凍るようなホラー系とか、エクスペリメンタル作家ならではの幅広い表現の楽しさがある。そういう怖さも、BPM 62 (M6)とか子供みたいに陽気な可愛い曲を交えがら繰り出したり...。(チューバのBPM 194 (M17)は怖さと可愛さが半々。)Ann Meredithのそんなハッピーな人間性がとてもとても大好きなんです。。。笑(Varmints (2016)とかマジで神アルバムだと思う。)

夏といえば海、花火、そして夏休み。。。去年も今年も遊びという遊びは全て死んでしまったけど、Anna Meredithによる遊園地の音楽化は、そんな遊びに行けない今のご時世だからこそより刺さる仕様になっていたかもって思う。友達とどこかに行って遊ぶ、遊園地はそんなアウトドア系の喜びの一つの象徴的なもので、Anna Meredithによるその感覚の再現は、間接的にアウトドアの喜びの再現になり得たということ。私は別に定期的にディズニーに行くようなパリピ(私「おいそれはパリピを誤解してるぞ」)ではないのだけど、それでも友達とテーマパーク行くときのワクワクってめちゃパワフルだって思う。Anna Meredithは、そんな恋しいパワフルなワクワクのイメージを届けてくれた。サプライズリリースでこのクオリティ、大満足。ありがとうございます(((^_^)))笑

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Emma-Jean Thackray - "Yellow"

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『第三の目を開眼せよ』

 Hiatus Kaiyoteみたいに綺麗な色彩を放つジャズでありながら、Kamasi Washingtonみたいに宇宙を創造するような壮大なジャズでもあるという凄まじさ。ド派手なアンサンブルにたくさんの愛を込めたようなその音楽は、驚きと興奮に包まれた祭典のよう。楽器のキャラクターも多種にわたって豪華だし、曲のストーリー性も充実してるし、何よりそれらが組み合わさって完成されるような高いインパクトがある。こんなにも大作なアルバムってなかなか出会えない気がする...。2曲目のSay Somethingでその偉大さを思い知った。ドラムがバチバチに攻めながらメロディーとメロディーが交錯していく自在なアンサンブル。フロアを盛り上げるようなディスコのグルーヴでリスナーのハートを鷲掴みした後、歌のコーラスとフルートのダブルによる魔法のようなパッセージを放っていく...。花を一気に満開まで咲かせるような威力の高い華々しさ、生命エネルギーの強い躍動、それらのニュージャズならではの多彩な迫力…。綺麗だしゾクゾクするしカッコいいしで、最初聴いたときは「ヤバ...」って思った 笑。そういった傑作ソングがVenus (M4)、Third Eye (M6)、Sun (M8)などなど、1曲に留まらず並立してる。ジャズトロニカとかでもない限り、私は本格的なジャズってKneedelusくらいしか聴かないのだけれど、そんな私でもビビッとくるくらい、Emma-Jean Thackrayの今作は前衛的で衝撃的な作品だった。とても聴きやすかった。

6曲目のThird Eye (M6)とかも本当に凄まじい。ファンクとかのワイルドな特性を持ってるEmma-Jeanの音楽の中でも、この曲は鬼気迫るようなゾッとする迫力がある。神経が高ぶるようなヒステリックな興奮すら感じさせるのだけど、そういう音楽の中で「第三の目を開眼せよ」みたいなこと歌ってるのがマジでめちゃめちゃヤバい、、、。それまでの多彩な迫力とはまた一味違ってて、black midiみたいなバケモノ感にも通じるものがあった。Emma-Jeanはこういう曲調の曲も傑作。意味深いスピリチュアルなコンセプトを持ってるジャケットの世界観とか、そういうアート性の部分もツボだった。

あとEmma-Jeanの最高の魅力は手数が多いドラムもそう 笑。パフォーマンスのカッコよさというのはもちろん、音が次々と高速で繰り出される気持ちよさなんかも。ドラミングのよさってメロディーでは決して表わせない要素だと思う。Our People (M13)とかめっちゃよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Low Roar - "maybe tomorrow..."

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私にドストライクなアイスランド音楽成分

 Low Roarの今作は、澄み渡るようにクリーンで、叙情的で、飲み込まれるように深く、そしてとてもドラマチックなものだと思う。その世界観は彼が拠点にしているアイスランド大自然が映し出されたみたいに尊くて果てしなくて、心揺さぶるような激しい美しさがある。現実にこっそりファンタジーを添えるようなアクセントがたまらなく綺麗なDavid (M1)、ドリーミーな温もりに包み込まれる感覚が愛おしいHummingbird (M4)、エレクトロニックや金管の多様な音色で優しさを目一杯表現するEverything To Lose (M12)...。どの曲もアイスランド音楽の成分が確かに感じられる 笑、洗練されたサウンドスケープも音楽のドラマ性もすごく大好きなやつで、心ゆくまでどっぷりと浸かりたくなる。その中でも9分の超大作ソングのFucked Up (M3)とか本当にヤバい。飲み込まれるように深さがあるLow Roarの音楽の中でも、こちらは夜空や海の世界に潜り込んでいくような壮絶な感覚の恐ろしさがある曲。それでも琴線に触れるような煌びやかなピアノに満ちていて、恐ろしさが持つ絶大なパワーが全部美しさとして影響するような構造を持っている。本当に、凄まじい感動。この恐ろしさと美しさが両立した感覚はColleenのThe Tunnel and the Clearing (2021)とかに似てるかもしれないけど、Low Roarのこちらはもっと大規模なストーリー性としての感動がある。音楽のピタッと止める静寂の利用とかも とてもとても見事。1時間越えのアルバムだけど、それに見合う巨大なよさを持ってる作品だった。

私は友達とかに「普段何聴くの?」って言われたら「Sigur Rós、Bon Iver、Sufjan Stevensとか、そういうやつ」って答えてるのだけど、そんな私の好みのド直球ストライクな感じの曲が今作9曲目のCaptain。これはもうめちゃめちゃ大好きな曲だった。鉄琴系のサウンドで流れ星のような景色を見せながら、豪華なオーケストレーションとダイナミズムを作る音響系のアプローチを使って、音楽の世界をこれでもかというほどに美しいものに高めていく。私が1番好きと言っても過言じゃない 笑。素敵なメロディー、音響的臨場感、ドラマチックさ、神秘性、それらの優しさや温もりの感覚...。私の大好きなものの塊みたいなのに、それらがジャケットのブルーのイメージみたいに深化しながら私に与えられていく。。。これは素晴らしすぎるって思った。3曲目も相当な名曲だけど、それ以上にハマるナンバー。Sigur Rós、Bon Iver、Sufjan Stevensとかが大好きな私の好みを確実に具現化してる感じの曲だった。

今作はピアノが主体のエレガントで大人びてる部分が印象的だったと思うけど、このピアノが音楽のドラマをもっと濃いものに仕上げていたと思う。まるでSamphaの(No One Knows Me) Like The Pianoのような、誰もいない部屋の中で響くようなピアノ。何か思い馳せたり、切なくて胸にジーンと来たり、そんなフィーリングがよく表れてた。そういうしんみり系の性質も、ジャケットのブルーのイメージとぴったりだったと思う。アコースティックな作風のLow Roarよりもより一層好きな作風。1曲目、4曲目、9曲目が特に大好き。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Drug Store Romeos  - "The world within our bedrooms"

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"私には秘密の計画があるの"

 Drug Store Romeosのベッドルームポップは、夢現な感覚と、音楽のファンタジーが持つ想像性、そういったものへの憧れが目一杯詰まってる作品だと思う。ボーカルのSarahが7歳のときに祖母から授かったペンダントのアートワーク、そのイメージと完璧に一致するような紫色の魅惑を持ったドリーミーなシンセ、そういった世界観の中で奏でられるSarahの尋常じゃないほど可憐な魅力を持ったボーカル...。それはまさしく、アルバムタイトルの"私達のベッドルームの中の世界(The world within our bedrooms)"へ連れて行かれる体験で、まるでファンタジーの夢を見るような、またはラビットホールへ迷い込むような、ワクワクとドキドキが入り混じった最高に素敵な体験だった。もう無限にうっとりする。。。笑。「私には秘密の計画があるの (Secret Plan (M2))」、「あなたは何を考えてる?(What' On Your Mind (M8))」、音楽以上にアルバムとして持ってるセンスの一つ一つが素晴らしいし、ベッドルームポップからダンサブルなシンセポップ、さらには幼くてキュートなチルドレンミュージック系の作風まで、Sarahの激ヤバ級に素敵なボーカルが発揮されてる。マジで大好きな曲ばっかりだった。

1番心奪われた曲は8曲目のWhat' On Your Mindかも。今作におけるシンセの音色はもれなく全て最高だけど、夢現な感覚や音楽のファンタジー、それらの深みというところに関してはこの曲のシンセが最もハイクオリティに感じる。Sarahの歌声、アートワークのとろけるような紫色、彼女達のベッドルームの世界...。こんなにも幸せな気分になれるのに、そこからそれらの喜びをもっと高めるように音楽がテンポアップしていくのがこの曲の見事すぎるところ。なんて嬉しいサービスなんでしょう...笑。Frame Of Reference (M6)やNo Placing (M9)に特徴的だったダンサブルなハピネスすらも、このWhat' On Your Mind (M8)でゲットできるという贅沢さ。Secret Plan (M2)も超超超名曲だと思うけど、それと同じかそれ以上に好きな曲だった。

あとPut Me On The Finish Line (M13)とかも大好き。あどけなさが感じられるような可愛らしいワルツのグルーヴ。Drug Store Romeosのベッドルームポップはこういう作風の曲もめちゃめちゃ似合ってると思う。私はMamalarkyとかピュアネスが激しい曲が超好きなので、この曲にもノックアウトされまくってた 笑。なんといってもやっぱりSarahのボーカルがずっと最強の素敵さを誇ってる、、、5曲目のWalking Talking Marathonとか声の響き方もうGregory and the Hawkメレディス・ゴドルーやん...って思ってた。(←メレディスは私の好きなボーカリストランキング2位くらい。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Clairo - "Sling"

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風情や情緒を抱きしめて、ありったけの温もりを受け取る

 今まで私が持っていたClairoのイメージは、"クールなのに優しくてありえないくらい素敵なローファイ・チルアウトの宅録系ベッドルームポップ" だった。もしもそんなClairoの音楽が、自分のワールド内に閉じこもるようなベッドルームの空間から、風情ある街並みや雄大な自然、それらの外の世界へと出会うように音楽のワールドを広げたら一体どうなるのか...。情緒溢れるクラシカルなフォークポップのスタイルが印象的な今作Slingは私にとってそんなアルバムで、奥深いフィーリングの特別な美しさを提供してくれた。ディープでエモーショナルなメロディーを心ゆくまで堪能できるBambi (M1)、従来のポップの作風を大人びたアレンジで進化させたAmoeba (M2)、Clairoの至高のピアノバラードをフォークでもっとメロウにしてるHarbor (M7)、そしてシンプルなアコースティックの響きが泣きそうになるほど暖かいJust For Today (M8)...。彼女の以前までのポップにはなかったような、心奪われるような重みのある感動がある。世界観も宅録系ドリームポップのような音楽が持っている景色とは違う、ジャケットの雪景色のようなもっと実世界の澄み渡った空気が感じられたり。聴けば聴くほどその素晴らしさにどんどん虜になる。個人的には、音楽からどこかオールドムービーのような大人のロマンスが感じられるようなところが本当にめちゃめちゃ大好きで、こちらのClairoの作風も最高なんだなって思った。ポップやロックを取り入れてある前半パート、涙が誘われるようなバラード色の強い後半パート、どの曲もめちゃめちゃいい。

私的Clairoの神神神ソングのBagsのイメージが脳内に思いっきりこびりついてたせいで、今作をリリース初日に聴いたときはそれと同じ系統のポップさを持ってる2曲目のAmoebaにめちゃんこ夢中になってた 笑。私が大好きでたまらないClairoの綺麗なピアノ、心が弾むようなグルーヴ、そしてクールなのに優しいClairoのあのメロディー...、Bagsに通じる私的Clairoのツボ要素をしっかりと抑えつつ、このAmoeba (M2)にはなんとフルートがある、、、!!これ、Clairoの音楽にフルートってマジでぴったりすぎると思う 泣。木管楽器大好き人間の私にとって、クラシカルなフォークのテイストがとても大きなツボになった瞬間。このAmoeba (M2)があっただけでもうClairo万々歳、ありがとうありがとう...って気持ちでいっぱいになってた 笑。そこからのPartridge (M3)やZinnias (M4)みたいなドラムがロックしてる曲も大好き。アルバム前半だけでもかなり最高の内容だったと思う。

繰り返し聴いてる内に、アルバム後半の曲の素晴らしさにどんどん気づいていった。特にHarbor (M7)とJust For Today (M8)とReaper (M10)の3曲は本当に泣ける。。。Clairoのウィスパーな歌声の魅力が最大限に表れてるようなバラード。音楽から溢れてる風情や情緒を抱きしめるように感じながら、ときめきや切なさ、それらのありったけの温もりを胸いっぱいに受け取っていく。バラードの方向性でもClairoは本当に最強だって実感するようなナンバー。Bagsとかとはまた違う新しいよさを確立できてた。これはめちゃめちゃレコードで聴きたくなる。

私はクソバカなので分からないのだけど、ジャケットの動物はネコ?ワンコ?動物のカテゴリーすら認識できてないのに、足だけでもこんなにも可愛いのはなぜ??笑(※あとあと判明しましたがこれは激カワのワンコでした。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Hollie Kenniff - "The Quiet Drift"

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「死にたい」という苦しみとは絶対的に対極なもの

 私が"安心"というものの喜びを心から信じているのは、それが幸せのクオリティを決定する重要なパラメータだと思っているから。自分自身への禁止や拒絶が心の余裕を奪うように、自己否定による「死にたい」という苦しみは、"緊張"や"不安"と密接な関連を持っていると思う。だから、視野の狭い単純でストレートな考えでいけば、緊張や不安の逆の概念である"安心"こそが、ありとあらゆる"幸せ"の本質的な部分なのだと、そんな風なことを信じている。Hollie Kenniffの聖なるアンビエントがもたらす感情的な作用は、そういった安心を実感する上でとても有効な手段なのだと思うのだけど、それは想像を遥かに超える、とても巨大な作用だった。リズムや旋律のない半透明な色をしたサウンドは、不明瞭で、不完全で、まるで実体を持たない幻のよう。その幻のようなサウンドの中で、確かに存在しているものがある。ゆっくり、ゆっくりと動いているものがある。それはまるで、静かに呼吸をする生物のようで、または遠い記憶の中でかろうじて生きている過去の感情のようで、あるいは何かの魂そのものなのかもしれない。その存在の確認は、私が生きていることを実感すること。そして、私が私自身のことを許して、認めて、どれだけダメダメな人間でも、「私が私のことを愛する」というかけがえのない行為。実は私は、あまりに大きな感動のショックを味わうと手足が麻痺してしまう過呼吸症候群の症状が現れてしまうのだけど、Hollie Kenniffのアンビエントを聴いたときにそれが起きてしまった。あまりにも嬉しくて、涙が止まらなくなって、気絶しそうになるほど感動した。2曲目のQuellでもう涙腺がいかれてしまう。アートワークの世界で示された青空のように、音がどこまでも果てしなく伸びていく中で、人間的な生々しい温もりがあるストリングスの感覚をじっくりと発生させる。こんなにも非現実的な音楽なのに、夢のような世界なのに、それらの音の愛が現実味を持って、確かに私の中に存在している。これ以上に嬉しいことがあるのだろうか、そしてこれ以上に美しいことがあるのだろうか。私は、これこそ安心というものの真の姿なのだと思った。リアルを定義付ける"存在"というものこそが、安心の正体なのだと思った。「私は、今、ここにいる」、何千万年も太古の昔から、大地があり、空があり、木々があるのと同じように。私が芸術に抱いている憧れは、人生のほとんどをそれに捧げたいと思うほど夢中になるのは、芸術の特別な表現による"存在"を手に入れたいと願うからなんだと思う。Hollie Kenniffの今作は、それらを叶える作品だった。それは、自分が自分の大切な人に愛される感覚と等価である。あまりにも衝撃的な感動を、何度も何度も味わった。

安心、その他ヒーリングをもたらすアンビエントの音楽について、似たような作風の、似たような構造の、似たようなコンセプトの作品なら幾つものあったと思う。それでもHollie Kenniffの今作がそれらのどの作品とも異なっていたのは、アートワークが持つ強力なリアリティズムにあったと思う。同じ作風のアンビエントでももう比べ物にならないほど、私が死ぬほど好きなアートワーク。遊園地の空間、コーヒーカップの質感、アンビエントが所有する幻夢やファンタジーの非現実的な要素に対して、とても現実的に影響している力がある。そしてアートワークの中にいる背中を向けた人物に興味を抱くことが、アンビエントの非現実的な世界への引力にもなる。音楽とアートワークの相互作用がある作品の中で、ここまで強力な素晴らしさを持ってる作品は出会ったことがないって思う。快晴の青空、遊園地、そして女性が一人...音楽の物語への想像性という点でも最高の充実性。本当に魅力が止まらないアートワーク。これはレコードを手に入れないと気が済まない作品。

3曲目のSome Day if Some Day Comesも強烈に素晴らしい。こちらはもっと聖なるオーラが色濃く表れてる曲。深い眠りに落ちて黄泉の国へ導かれるような音楽なのに、音が僅かに、僅かにして燃えている。魂が解放されたような世界の中で、まだ僅かにエネルギーが残っている。なんて凄まじい描写なのだろう。これもまた、私が手に入れたいと望む"存在"の概念そのものだった。それを感じていったとき、私の中で安心が生成される。緊張や不安などといった、「死にたい」という苦しみとは絶対的に対極な、この上なく尊い喜びを実感していく。それは、「この感覚を永遠に忘れないでいたい」と思う瞬間だった。

....私のようなちっぽけな人間が何かを分かったように偉そうに話すのは大変おこがましいけど、それでも、とにかく、Hollie Kenniffのこの作品が大好きだった。大好きでたまらなかった。改めて、自分がどういったものに憧れを抱いていたのかを再認識できた作品。Goldmundとのフィーチャリング、Mint Julep的シューゲイザー・ドリームポップ要素があるStill Falling Snow (M7)などもよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

0. Various Artists - "「竜とそばかすの姫」Original Soundtrack"

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※ランキング関係ないけど大好きすぎるので追加

 私のオールタイムベスト映画は『おおかみこどもの雨と雪』『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』『シング・ストリート』とかなのだけど、『竜とそばかすの姫』もそこに並ぶ私にとっての神映画。もともと『おおかみこどもの雨と雪』における高木正勝さんのオヨステ・アイナとか、スタジオ地図のサントラって死ぬほどの名曲があると思うのだけど、『竜とそばかすの姫』のサントラでも遠い音色 (M4)とか儚い日常 (M7)とか、それと同クラスの名曲が複数あった。こういうの聴くと、自分の人生がいかに かけがえのないものかを思い知らされるみたいで、もう目ん玉がギタギタになるまで泣く。本当に泣きまくる。特に 遠い音色 (M4)は物語的にはなればなれの君へ(M26)の伏線的な役割を持ってるのが音楽的にありえないくらいヤバい。何度聴いても死にそうになる。もちろん、作中で大きな見どころになっているBelleの曲も言わずもがなのヤバさ。細田監督が作詞ということもあり、映画を通じてメッセージ性がストレートで分かりやすく本当によく刺さる。はなればなれの君へ(M26)は、分割することなく8分間丸々一曲にしてくれてありがとうって感じ。『竜とそばかすの姫』は7月末の時点でIMAXで8回鑑賞したのもあってか、サントラの再生による映画館の感覚の再現性も強い...。シング・ストリートのサントラも超超超名盤だと思うけど、それ以上に愛してるかもしれない。。。

サウンドトラックのアルバムって好きな曲が数曲しかない場合が多いかもしれないけど、それでも大好きでついついCD買ってしまう。本作品の音楽は神コンポーザーの高木正勝さんではないけど、本作品のテーマとなるインターネットの多様性に沿った複数の作曲家の参加ということでこれまた素晴らしかった。通常の音楽作品と映画音楽を並べてよさを比較するのはちょっとムズすぎるけど、それでも『竜とそばかすの姫』のサントラはちょっとヤバかった。。。(映画の感想もどこかで発信できたらいいな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

プレイリスト

Apple Music ↓

温の「2021年7月ベストアルバム(温)」をApple Musicで

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その他 よかったもの

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Alphabet Holds Hostage - "Motherblossom - EP"

andrea_andrea & Kazuma Matsui - "GIRLS"

Darkside - "Spiral"

The Go! Team - "Get Up Sequences, Pt. 1"

Half Waif - "Mythopoetics"

Jodi - "Blue Heron"

K.D.A.P. - "Influences"

Leslie Winer - "When I Hit You —You'll Feel It"

MARK BLOOM - "Fünfzig"

Mega Bog - "Life, And Another"

Museum Of Love - "Life of Mammals"

Tangents - "Timeslips & Chimeras"

Twin Shadow - "Twin Shadow"

Various Artists - "Red Hot + Free"

Yves Tumor - "The Asymptotical World - EP"