アルバム感想(温)

My Favorite Music

「2021年10月ベストアルバムTOP10」感想

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今月のベストアルバムは迷いに迷って、結局のところ決まりませんでした...(T_T)(T_T)(いや決まらなかったのかよ)。最後のあとがきの所に「その他 とてもよかったもの」って載せてるけど、そこにあるやつ全部ベストアルバム。...と言いつつ、今月も断腸の思いで10枚を選び抜いた、、、(なんでこんなに最高な新譜ばかりなのだろう)

今月の最高すぎてヤバすぎる新譜のTOP10、感想をランキングで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. Coco - "Coco"

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しっとりマイルドのバロックポップ風味

 私の好きな女性ボーカリストランキングの5本指には入るであろうMaia Friedmanのもう一つのプロジェクト。Dirty Projectorsではコーラス部隊の一人としての活躍だったけど、Cocoの本作は、Dirty Projectorsでは隠されていた彼女固有の作家性を存分に解き放ったような作品......Maiaのファンである私にとってめちゃめちゃ嬉しいやつ。。。笑。作風はメロウなインディーロック〜フォークのオルタナの感じで、Angel OlsenとかJulia Holterとかみたいな、大人びた気品やバロックポップの風味が特徴的なとても優美な音楽。でもそれに反して、大人っぽくないピュアな表情を見せたり、スティールギターやチェンバロなどの特殊なサウンドを取り入れた、固定観念に縛られないオリジナリティや新しさなんかにも恵まれてる。古すぎず今風すぎずのバランス、渋すぎず厳格すぎずで丁度いい品格、高潔すぎない馴染みやすさ、それらのしっとりとした印象の心地よさがすごくすごく素晴らしいなと思うのだけど、それをあのMaia Friedmanが演奏してるというのが本当にたまらなくて、、、笑。高音域と中音域の間における耳への調和性・リラックス特性だとか、サスティーンの丁寧なディテールとか、フィーリングの微妙な起伏と力加減とか、声質的にも歌唱的にも安定感が抜群な歌、私が本当に大好きなボーカル。ゆったりバラードの中でマイルドな深みをグッと引き出したEmpty Beach (M1)、バロックポップやBeach Houseの高貴なドリームポップを彷彿させるKnots (M2)、インディーロックでも美しさが止まらないOne Time Villain (M6)、ボサノバっぽいトロピカルさが最高にポカポカのOver the Houses (M7)......。どの曲においても、Maia Friedmanのキャラクターが最高にハマってると思う。中でもCome Along (M4)とかはMaia Friedmanの歌要素だけでなく、ストリングスとギターの華麗に舞う旋律のところでも素晴らしかったり。正直に言ってしまえば、ジャケットの時点で大好きなのが決定的だったのだけど、実際まったりしすぎないちょうどいいフックがある、飽きっぽくない作品でめちゃめちゃよかったと思う。

メロディーのフックというところだと、もうなんといってもLast of the Loving (M3)の神曲っぷりがすごい。。。笑。しっとりマイルドなバロックポップ風味の今作の中でも、最もモーションが大きいフォークポップ。丁寧さ重視の歌であることは変わらず、その中で可能な限りエモーションを広げるような躍動感...。このキャッチーなフレーズ、ノリノリのグルーヴ、Maiaが本当に気持ちよさそうに喜びながら歌ってる感じが伝わってきて、楽曲に対する好感度がさらにバカ上がりする、、、笑。3分未満の短い曲であっさりしてるけど、幸福感が体内に残るパワフルな存在の1曲だと思う。こちらも攻めすぎず守りすぎずな絶妙のアクセントを持っていて、Cocoの今作のことをもっと大好きにさせる1曲だった。

男性ボーカルの方も活躍する、Eleanor (M9)、Anybody’s Guess (M10)のロマンチックな曲もやっぱり素晴らしい。メロウだけどポップ、クラシカルだけどモダン、硬すぎず柔らかすぎずで、本当に器用なグループだなって思う。Anybody’s Guess (M10)は改めて聴くとMaia Friedmanのパートのメロディーが素敵すぎてギュンギュンなる...笑。Maia Friedmanマジで大好き。Cassandra Jenknisとも親交があるみたいだけど、なんて私得な関係なんだろう。。。笑

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Eris Drew - "Quivering in Time"

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カッコいい路線で突き進まない遊び心豊かな寄り道

 私の中の"大好き"が持続しすぎて、体力が削り取られまくるようなハウス・ブレイクのダンストラック、、、笑。ディスコほどゆったりでもなく、テクノほど攻撃的でもなく、ダンスに対する欲求が過不足なく消費されるようなやつ。少しノイジーなハットの裏打ちとかが特徴的で、ほどよくホットで、スタイリッシュながらもファンキーで、アシッドなピリ辛のスパイシーさもあるようなダンスのコレクションだと思うのだけど、カッコよさ重視というよりかはハピネス重視というか、ピコピコサウンドを始めとする適度な可愛さを持ってるようなところが最高にお気に入りだった 笑。Pick 'em Up (M2)とか置いてきぼりになるくらい最高がずっと止まらなくて大爆笑する 笑。ハウスにしてはややハードコアめな 手数の多い刺激のある曲。リズムパターンとかトラックメイキング的な点で見ればすごくイケイケな曲だと思うけど、小動物みたいなミニサイズ感のあるカットボイスであったり、やたらミステリアスチックなシンセのフレーズだったり、カッコいい路線で突き進まない遊び心豊かな寄り道がたくさんある感じがする。そういうスタンスでもって7分強の中でいくつもシーン展開していくのだけど、ほんとに驚異的に楽しい曲だった 笑。初めて聴いたときはその引き出しの多さにめちゃめちゃびっくりする。それ以降の曲、プリミティブな電子音のLoving Clav (M3)とか、ちょっとクールダウンするみたいに落着きを取り戻すA Howling Wind (M4)なんかもかわいい。ダンスとしてのクオリティはもちろん、スタイル的な面でよりハマる作品だった。

ビートのパンチが最大に効いてるようなラストのQuivering in Time (M9)なんかもやっぱりよかった。こちらもブレイクやレイヴなどのクラブミュージック特有の熱気を持ってると思うけど、ムード的に明るくて、曲調的にもハッピーで、それまでのEris Drewの楽しい作家性をこちらでも根強く持ってる気がする。ダンスにものすごく着実なアルバムだけど、その中で最後の最後までフロアを盛り上げようとしてるところがすごくいいなって思う。コンポーザーとして一流という以上に、DJとして最高にプロフェッショナルだということ。Ela MinusLaurel Haloみたいな超クールな女性エレクトロニカアーティストとはまた違う人柄のよさ。Pick 'em Up (M2)は何度でも聴きたい。

直近のクラブミュージックだと、例えば今年8月のShire TのTomorrow’s People (2021)なんか傑作だったなと思うけど、Eris Drewの本作は、とりわけダンス密度的なところのパワーがすごかった 笑。53分みっちりダンス。私はクラブミュージックはよく料理中に鑑賞するのだけど、寒くなってくるとシチューとか作るし、煮込みに時間がかかる系の料理のクッキングタイムBGMとして活用したいアルバムだって思った 笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Sassy 009 - "Heart Ego" 

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テクノのクールネスがポップスのキラキラに適合するとき

 退屈をワクワクに変えるような、心のエネルギーを感化させるような、キラキラしたフィーリングをいっぱい届けてくれるポップスの恵み。もしそのワクワクの喜びがもっとハイなものになったら、もしその心内エネルギーの感化がもっと刺激的になったら、一体どうなってしまうのだろう...。Sassy 009の今作は、そういったポップスの喜びの過激化を実現した作品だと思う...!笑。可憐で綺麗で純粋無垢のウィスパーボイス、歌だけで捉えればドリームポップの雰囲気が強い感じもするけど、藍色の光を放つような90sクラブミュージック特性であったり、意識がフラッシュするようなセンシティブな音響エレクトロニカ、あとは生気が取り除かれるようなゴーストリーなアンビエントとか、音楽がめちゃめちゃクールな要素ばっかりで構成されてる。メインの印象はエレポップなのに、ときに思いっきりハウス・テクノで、ときに思いっきりアングラで、クールでありながらとても高い熱量の興奮を持ってる感じ。あぁ本当にカッコいい、、、笑。オープニングのForever Seventeen (M1)の段階であまりにクールでびっくりするけど、その第一印象のギャップを最大に活かすようなBlue Racecar (M2)でマジでむちゃくちゃテンション上がる!笑。夜のハイウェイを駆け抜けるような高速回転ビートのテクノポップ。こんなにもエネルギッシュなのに、ハイなのに、それに相関するようにメロディーがもっとキャッチーにもっとキラキラに進化してる。クールネスがポップスのキラキラにぴったり適合するこの感じ...本当にお見事だと思う。私が思う90sテクノの温度感だったり、ポップにしては少しアブノーマルなキャラクターの部分でいっても魅力的。Bicepみたいな幻想シンセが際立ってるEgo Heart Ego (M8)なんかも超素晴らしい。ここまでテクノ性が極められてると、あまりの興奮にアドレナリンが止まらなくなる...笑。サウンドもいい、メロディーもいい、最高にカッコいいエレポップだった。

Sassy 009の今作を機に初めてハイパーポップというものをちゃんと意識したのだけど、確かにこれは大きなムーヴメントになりそうだなって私も思った。王道的なところで言えばCharli XCXとかかなと思うのだけど、プロミシング・ヤング・ウーマンの劇中挿入歌のBoys (Droeloe Remix)とか、そういやつは私も大のお気に入り。次世代的というかハイファイというか、"ハイパー"って表現を使うのがすごく納得なのだけど、Sassy 009の場合は、そういうハイパーポップとしてのよさだけでなく、冷たい温度感の90sテクノ・IDM感みたいなところが特にツボってた。Aphex TwinAutechreUnderworld......サイバネティック性の濃いエレクトロニカのそれ。去年のHappynessとか、インディーロックの分野でも90sチックな作風って私的に激アツだったし、2020年代における90sのリバイバルってなかなかいいかもしれない...笑。というか、流行の周期的に考えて80sのリバイバルの次なるステップにそういう90sブームが来るのが全然想像できる。Sassy 009の今作は、そんな90sのリバイバルの先駆け的なアルバムだったかもしれないって思った。音楽の内容的なところのワクワクだけでなく、作品の位置づけ的にもそういう何か今後楽しそうな予感を感じさせてくれた。

2曲目のBlue Racecarを聴いたときに思い浮かんだ夜のハイウェイのイメージ、なんだかChouchouの1619kHzなんかも思い出した 笑。クールな音感のエレクトロニカ、こういう夜に似合う音楽もやっぱり最高だよなって思う。特にSassy 009のBlue Racecarの場合はスピード感の興奮が本当に抜群。心地よさもカッコよさもスペシャルで、私的にかなりのベストソングだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Xenia Rubinos - "Una Rosa"

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深海のように深い深いブルー

 自身のルーツになってるカリブ音楽の原始的な衝動、R&B・ソウルのレンジの広いエモーション、ファンクロックのトリッキーでテクニカルなコンポージング...。Xenia Rubinosは、音楽の伝統と命を引き継ぐ継承者で、力強い表現者で、そして卓越した音楽アーティストの一人なのだと思う。2019年の夏、私が大学院1年生のとき、研究室でHair Recedingを聴いたのが彼女の音楽との初めて出会いなのだけど、そのときは周りがドン引きするレベルで号泣してしまったのを今でも覚えてる。その感情は例えるなら、どうしても悲しいのに無理やり笑うような、それでもやっぱり悲しくてボロボロになりながら一生懸命耐えるような、正と負のフィーリングが心の中で激しく暴走する曲だった。Xenia Rubinosのソウルミュージック・ファンクロックだからこそ成せたような表現。今作「Ura Rosa」も、そういう特別な感情を実現した作品で、なおかつ劇的な迫力も感じさせる、凄みの増したアルバムだったなと思う。Ice Princess (M1)、Una Rosa (M2)では、ケースに保管された花のアートワークが象徴する、美しいものに手の届かないときの胸を締め付ける感情をドラマチックに体現してるみたい。Xenia Rubinosのメインのファンクロックに到達する前から、フルートの独奏曲だけでこの美しさ...。その後に来るWorking All the Time (M4)、Sacude (M5)、Who Shot Ya? (M6)の3連続最高ソングで、私の欲望はとことん満たされた。。。笑。カリブ音楽のトロピカルな情熱、一打一打がパワフルなファンクロックのモチベーション、それらのビビットなソウル...。中でもSacude (M5)は、明るいXeniaの音楽とは裏腹に、背筋の凍るような狂気のインパクトなどもあったり。Who Shot Ya? (M6)に関しては、あまりのエキセントリックなカットボイスのメロディーに恐怖すら感じてしまう。正と負の感情が激しく暴走して、芸術的な爆発を起こして、私にみなぎるほどのソウルを与えていく。やっぱりとても好き。1作目のMagic Trix (2013)のときから、叩きつけて鳴らすようなシンセであったり、自分の内に秘めた思いを剝き出しに表現するのが達者なアーティストであったと思うけど、今作はよりエレクトロニックでエクスペリメンタルな部分が濃かったし、アルバムのストーリー的なところでも表現力が磨かれていた感じがする。新譜のアナウンス時から密かに楽しみにしてたけど、予想通り満足感のある一作だった 笑。

Working All the Time (M4)、Sacude (M5)、Who Shot Ya? (M6)の3連続が最高だと唱えつつ、1番傑作なのは9曲目のDon't Put Me in Redかなと思う。深海のような世界の中で深い深いブルー色に染まった曲。一つ一つ打点の強かった従来のファンクロックとは一味違う、ずっとずっと遠くに伸びていく歌がある。Ice Princess (M1)やアートワークの花(Una Rosa)で提示していた、胸を締め付ける切ないコンセプトに帰還したみたいで、今作の肝となる、最もメッセージ性の強力なリードトラックなのだと思う。「Don't put me in red」、「I hate it」、彼女の中からポロポロ零れるその思いを、全部受け止めたくなる。自分の悲しみと深いシンパシーを呼び起こして、どうしようもなくなるみたいに泣いてしまう。「Don't, don't」、「No」、Xeniaの全身で訴えるようなMVを見てさらに泣く。それは、Hair Receding以来のXeniaの感動だった。

前作Black Terry Cat (2016)なんかも鑑賞してみると、改めてXenia Rubinosってテクニカルでトリッキーなアーテイストだなと思う。畑違いではあると思うけど、私的にはAnna Meredithなんかにも共通した個性を感じる。特にやっぱりエモーションであるとか、ソウルであるとか、そういう部分には何物に代えられない、彼女固有の自由と表現力があると思った。Si Llego (M12)でメランコリックに下げて、What Is This Voice? (M13)でまたトーンを明るく調整して、最後のFin (M14)で魔法的に締める、12曲目~14曲目のクロージングの流れも素晴らしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Pond - "9"

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「いいぞ~いけいけー!」ってなるサイケパーティー

 Pondといえば、オーストラリアが誇るもう一つのインパラであり、現代のサイケロックシーンを担うバンドの中でも私にとってイチオシのバンド。前作Tasmania (2019)では、サイケポップのユートピアを大迫力で繰り広げたような かなりの大作だったと思うけど、今作「9」は、またさらに彼らのライブ感とステージ感の迫力を音源化したような、ボルテージとエンターテイメント性の強い熱狂的なサイケロック作品だったと思う...!笑。グラムロックにディスコパンク、サイケデリアが生み出す幻覚的なヴィジョンだけでなく、より派手やかにハジけるようなエネルギーが上乗せされてる作風。力強いビートによって音楽のカラーが激しく転換していくようなHuman Touch (M2)、Pondのムードとかバイブスとかをたっぷり堪能できるAmerica's Cup (M3)、ソウルフルなグルーヴの中でソウルフルなフレーズを次々と決めていくTake Me Avalon I'm Young (M4)、まだまだ興奮を止めない超ダンサブルなPink Lunettes (M5)、哀愁を込めた最高にグッとくるナンバーのGold Cup / Plastic Sole (M8)、そしてそれまでの熱狂の体験に愛情と多幸感を添えてフィナーレを飾るToast (M10)...。もう最高のパーティーアルバムだと思う 笑。低音のブーミング、ギターのエネルギッシュな刺激、シンセのピッカピカの発光...、脳内麻薬が分泌されていくサイケとしての質はもちろん、アルバム1枚の中にライブ的な興奮のそれが高密度に詰まってるイメージ。あまりの楽しさに2曲目のHuman Touchとか「いいぞ~いけいけー!」ってなる 笑。1度聴いたらニヤニヤが止まらなくなるような作品だった。

今作においてとりわけ最高だなと思うところが、Song For Agnes (M1)とRambo (M7)の後半部分の展開。音楽が一段階高まるようなヒートアップするパッセージを持ってるやつ。Rambo (M7)に関してはメロディーが転調的に変形するけど、ライブ的な興奮の中でこういうことされると本当に感動する、、、笑。思わず踊りたくなるハッピーなグルーヴ、ネオサイケデリア系の幸福感、音楽がピークに達するまでのシーケンスのところも最高。1曲目からずっと大好きだけど、Rambo (M7)は特に唸らされてた。また1曲目のSong For Agnesは、フレンチポップのHalo Maudとのコラボ曲ということで、一般的なサイケロックよりも品のあるゴージャスな覇気を持ってるというのもあり、こちらもまた楽曲後半の展開がアツい...!アルバムの一発目の掴みとしては本当に申し分のない1曲だなと思う。1曲1曲という以上に、1枚のアルバムとして大好きだった。

私がPondが好きになったのは実は遅くて、確か2019年入ってから。3年前大学院1年生の頃、教授やその他学生の付き添いなしに、たった一人でオーストラリア(パース)の国際学会に参加したことがあったのだけど、そこで出会ったレコード屋の店員さんにPondのThe Weather (2017)を猛プッシュされたのがきっかけ。「ねぇPond知ってる?」「これマジで最高でしょ。なんで聴かないの??」みたいに 笑。実際、The Weatherの1曲目の30000 Megatonsとかほんとにほんとに名曲だった。今でもふとオーストラリアの死ぬほど幸せだった当時の思い出と、Pondの大ファンなその店員さんのことを思い出す...。(Taylor Knoxっぽい人だった。)今作「9」も大変素晴らしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Geese - "Projector"

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不滅のロック作品だって疑わない...!泣

 全然ノーマークのところからマジでとんでもなく大好きなバンドと巡り合った。。。泣。苛立ちと反抗、自由の追求、ロックンロールが叶えてくれる喜びを心から愛したような、いびつで不思議で混沌とした、命溢れるインディーロック・ポストパンクのやつ。Sports TeamやParquet Courtsとかと同様、お調子者感のある陽気なディスコパンクとか、突破力の高いガレージロックなどが基本フォームな感じだけど、楽しそうな人達だと思って安心してたら一気にアンダーグラウンドになって冷酷にダークに豹変したり、ハッピーだったのが思い出せなくなるくらい心奪われるメランコリーの情景を映し出したりする。一貫性の見出せないようなスリリングな危なさ、その熱量と複雑性、誰にも支配されず、ロックンロールに無我夢中になって全力で生きるということ。3曲目のFantasies / Survivalとか、私の音楽鑑賞能力のキャパがオーバーするみたいに感動しまくって、本気で気絶するかと思った。思わず涙が零れてしまった。前半だけを聴けば のびのびとしたインディーロックだけど、中盤以降は何かが吹っ切れたみたいに、加速して加速して猛烈にダッシュしていく。もう誰にも止められなくなる。ギターは光をビカビカ放射し、ドラムは制御が解除されたように猛ってオーディエンスの理性を吹き飛ばし、それらのアンサンブル全てでもって、ロックンロールの幸せを全力で謳っていく。ロックで命を燃焼させるような感覚をここまで味わったのは久々かも...。Geeseはその感覚を思い出させてくれた。私の生命力をフルチャージしてくれた。マジでマジで素晴らしい、、、!これは不滅のロック作品だって疑わない、、、!泣。Twitterでさりげなく知ったのだけど、想像をありえないくらい上回るくらい新鋭のバンドだった...笑。

6分強の曲の中でGeeseの変化球が存分に楽しめるDisco (M5)、滲み出るアングラのムードがGeeseの本物感を証明するようなProjector (M6)笑、曲を再生した瞬間によさというよさがグワーッと広がっていくExploding House (M7)、インディーロックのインディー成分のエッセンスだけで作られてる感じがもう最高すぎて笑っちゃうBottle (M8)......1曲目から最後まで、もう嘘みたいに全曲素晴らしいと思うけど、エンディングのOpportunity is Knocking (M9)もまた今作最強の1曲だと思った。絶対無敵のグルーヴのノリ、ギターの気持ちいいサクサク、鍵盤楽器の沁み渡る幻想...ありとあらゆるバイブス・サウンド・メロディーが、私の中に届いていく。私を最高に満たしてくれる。Geeseは一見すると一貫性のない混沌としたロックだけど、それでもどうして彼らがロックを演ってるのかという理由の部分については、もう十分すぎるほど理解できると思う。反抗、発散、快感、Fantasies / Survival (M3)やOpportunity is Knocking (M9)を聴いて、ロックンロールのことが本当に大好きなんだということが痛いほど伝わる。ほんと、私にとって好感度が果てしないグループだった 笑。

Geeseはブルックリンのバンドということだけど、その界隈で最近はルーキーがドバドバとデビューしてる気がするし、私の感性がおかしいのか分からないけど、「一体どれだけ最高なグループ出現するんだよ、、、泣」ってツッコミ入れたくなってしまう 笑。まだまだGeeseクラスのバンドが大量に眠っているのだろうか...。それにしても、Geeseの3曲目のFantasies / Survivalのよさは本当に尋常じゃなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Sóley - "Mother Melancholia"

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聖なる想い

 死の世界を通じて描きたいもの。この世に対する虚無、暴力や破壊への怒りと悲しみ、残酷なもの、恨み、あるいはそういったものの無念...。Sóleyの今作は、ポストクラシカルとアートポップのアイスランド音楽による死の世界のダークファンタジーであり、心の傷や絶望についての作品で、同時に何かSóleyにとって重要なものを訴える、彼女の聖なる想いを可能な限り反映させたアルバムだったと思う。霊魂の漂流を表すようなオルガンとストリングス、地獄を連想させるような低音の闇の響き、冷たい温度感を持った幽玄的なサウンドスケープ、そして宗教的で心霊的なキャラクターを持った歌...。それはまさしく、安らぎを得るための死者の弔い。そして、Sóleyの全身全霊をかけた冥福の祈り。偽りのない真実の愛で、誰かのことを本気で想うということ。傷を癒したいという切実に願うこと。もう私の大好きメーターが狂ってぶち壊れそうになる。アイスランド音楽が持つイメージ的な部分での尊さと、死の世界を通じて描く聖なる想いという内容的な部分での尊さ、美しさのレベルが本当に尋常じゃない。1曲目のSunrise Skullsから抜群に神曲だと思う。重力の作用をもたらすようにリスナーを暗黒へ墜としながら、弦楽器のピッチカートによって魂の灯火を与え、ピアノのメロディーで精霊を呼び覚ましていく。悲しみと命、それらの光と闇について芸術。ストリングスの重奏は、Sóleyの切実なる祈りに威厳を創り出すよう。とてつもなく、とてつもなく素晴らしい。アイスランド音楽によるダークファンタジーだからこそ描ける心霊的な表現の魔法。Tim HeckerのKonoyo (2018)・Anoyo (2019)とかと同様、死の世界、黄泉の国の体験型の芸術でありながら、心の傷や人間の感情について着実なコンセプトだったり、魂の浄化と解放の必要性を提示するような部分であったり、人々に対するメッセージ性を強く持っていた。Sóleyが死の世界を通じて描きたかったものは、そういうことなのだと分かった。ただただ表面的に幻想的というのでは決してない。丁度1ヶ月前くらいにSóleyの2011年作のフィジカルを買ったりしてたのだけど、今作は今までの作品の中でもダントツに好きかもしれない。死神みたいなジャケットが持つインパクトも素晴らしかった。

6曲目のDesertとか今作屈指の名曲だと思う。悪魔のビートと天使の歌声、一つの音楽の中で生と死の両サイドをどちらも所持している曲。こんな曲今までに聴いたことがない。幻想性も、心霊的な魔法も、聖なる想いも、Sóleyの創造をドラマチックに壮絶に見せていく。彼女が秘めた祈りの存在をさらに強調する。本当にグッと引き込まれる曲だと思う。トリップホップというか、スロウコアというか、そういう音楽のキャラクター的なところでいってもカッコいい。闇が深いあまり聴いててしんどくなるくらいの4曲目と5曲目からのシーケンスからだと尚味わい深い。どう考えても大好きだった。

Sigur RósだとかÓlafur Arnaldsだとか、アイスランド音楽ってだけでもう相当のよさを持ってるのに、Sóleyの今作は一層宗教性が濃く、より神秘的でより尊くて、本当に格別の作品だったなと思う。北欧の純粋な自然とか、文化であるとか、そういったものとダークファンタジーというテーマの相性が最高の形で発揮された作品。私のツボの奥の奥まで刺激する、私の大好きでたまらないもののてんこ盛りセットの感じ。集団自殺にインスパイアされたというところがよく伺えるCircles (M2)とか、死の世界観がメインの中で最も天国的な癒しをくれるIn Heaven (M7)とか、アルバムとして本当に素晴らしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Hovvdy - "True Love"

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フォークロックの花、Hovvdyの本領の開花

 Hovvdyのフォークロック、それはくすんだ色の鉛筆画のようなとても繊細なサウンドスケープ。Cranberry (2018)で提示していたように、モノトーンのような色味を感じさせるざらついたアコースティックのその響きは、純粋であることの美しさだとか、素朴であることの優しさとか、フォーキーな音楽に心惹かれる要因の本質的なものを体現していたと思う。今作「True Love」は、そんなモノトーンで描かれていたようなCranberryとかのフォークロックの作風に対して、色数を追加し、明るいフィーリングを強め、まるで花を咲かすように音楽の命を芽生えさせたフォークロックの作品。それまでのHovvdyの作風で所有していた、フォークであることの儚さやセンセーショナルな部分を保持しつつも、暖かみをもっと豊かに彩色したメロディー。なんかもう、私にとっても、そして彼らにとっても、これが1番ベストなHovvdyの作風なのではと疑うほど、これ以上ないくらいの出来の一作だと思う。感動量が本当に凄まじい。オープニングのSometimes (M1)で、その暖かみのある印象に一発で虜になった後、2曲目のタイトルトラックTrue Loveでもう心から満たされてた。気持ちが弾むような高揚を含んだとてもシャイニーなフィーリングがある曲だけど、心をくすぐるような性質のあるハスキーボイスとアコースティックのザラザラしたテクスチャが、高揚の感情に対してもっと繊細な影響を及ぼすように作用する。Cranberry (2018)で特徴的だった感傷的な感情、それとは異なる安らぎや温もりの感覚を持った音楽の存在、色々なものが組み合わさって、不思議な反応を生成して、深みを生み出して、私の心をじんじんと活性化させていく...。なんて音楽なんだろう。。。1度聴いたら決してスルーすることができない、私のコアの部分にしっかり届くような、絶対的な大好きさを誇る作品。これまでにWhitneyやHop Alongなど、フォークロックでトップクラスに大好きなバンドって色々出会ってきたけど、このアルバムでHovvdyもそこに仲間入りした。仲間入りせざるを得なかった。私的フォークロックの最高峰な名盤。Cranberryとかとはまた違う方向性での傑作だった。

True Love (M2)からの流れで丁度いい感じにしんみり系へ着地するLake June (M3)、そこからもっとハッピーに楽しくなるGSM (M4)、あとはAlex Gみたいなキラキラのフォークポップっぽさも感じさせるHope (M6)、暖かみよりも切なさが勝るタイプでもやっぱり素晴らしいHue (M10)、そしてインディーロック感も最高に似合っててテンション高まるJunior Day League (M11)...。今作はアルバムとして実に強力な1枚だなと思うけど、その中でも7曲目のJoyには何度でもコテンパンにされてしまった。True Love (M2)と似た系統の、高揚感を含んだシャイニーで花いっぱいのフォークロックで、Hovvdyのありったけの思いを詰め込んだような曲。"We could get back together"(また一緒に暮らそうよ)、" Hang out, in joy"(喜びの中で一緒に過ごそう)、それはまるで、好きな人へ送る愛の告白のようなもので、「True Love」の華々しさが最も暖かみを帯びる瞬間。もうあまりによすぎてて怖い。ただでさえこの上なく心沁みるフォークロックなのに、そういう表現の中で「大好き」とか「ありがとう」を一生懸命になって伝えるとか、そんなの受け取ってしまったらもう耐えられなくなってしまう。満たされるのと同時に、嬉しくて嬉しくて泣いてしまう。Hovvdyの中でも指折りのとてつもない名曲。私が絶対的に大好きなそれだった。

ピアノのアルペジオの光がほとばしるBlindsided (M9)も本当に美しい。True Love (M2)とJoy (M7)にあった、春めいた空気や秋晴れのような涼しい温度感のロックだけでなく、夜に似合うようなメランコリックでブルーな色をしたフォークの作風でも最高だということ。情景描写もそうだし、その中で生まれる皮膚感覚的なセンセーショナルさみたいなものであるとか、Hovvdy本当に素晴らしいと思う。もう異常なほど大好き。似た性質のフォークであれば直近だとSkullcrusherのEPとか思い出すけど、今作はそれと同率レベルの神作だったと思う。フォークロックの花が咲く、Hovvdyの本領が開花する。人肌が恋しいようなタイミングでは特にぴったりな1枚かなと思う。(秋・冬のシーズンはまさにそう。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Magdalena Bay - "Mercurial World"

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ジャンボパフェ

 Magdalana Bayを構成しているもの、スペーシーなシンセポップ、カラフルなディスコ、ダンスオリエンテッドなハウス、シックなシティポップ、ドリーミーなニューゲイザー、シンフォニックなR&B・ソウル、ノイジーなハードコア、マッシブなポストEDM...。私の中で何かがひっくり返るくらいの、ワールドとワールドと驚きの融合。そしてそれに適う桁違いの楽しさ、、、笑。フレッシュなアイディアが溢れて止まらない、革新的な素晴らしさのエレポップ作品だと思う...!!とにかく素材数が膨大で、音楽を描くためのパレットが大きくて、一つ一つに楽曲に含まれるカラーがとても濃厚なイメージだけど、ときめきやハピネスにインパクトを付加して、エレポップの味わいをもっと贅沢にしてる感じがする。3曲目〜4曲目のDrawing of the Season, Secrets (Your Fire)のコンボとかほんとに無敵すぎて…笑。手数の多いパーカッション、切れ味の効いたファンキーなベース、通常のシンセポップでは見られないようなワイルドシックなサウンドのメイクアップ。それだけでなく、1回聴いただけじゃ情報処理できないくらい細かい装飾を多量に施してたり…。すごく攻めてるポップ、まるでありとあらゆるスイーツとデザートを豪快に投入したジャンボパフェみたい 笑。特に4曲目のSecrets (Your Fire)は、楽曲の見せ場のパートで音圧の高い多楽器ブレンドサウンドを決めるみたいな演出のところがマジでヤバい...!泣。もう心がときめく~どころじゃない 笑、心を震わすような力強い感動がある。もうエレポップでこんなに圧倒されて興奮することなんてないと思う。とても攻めた、贅沢で濃厚で、とってもインパクトが高い幸せ。全曲通じてトラックメイキング的な部分がずっと天才的で、めちゃめちゃテクニカルなところにも唸らされる。3曲目〜4曲目のDrawing of the Season, Secrets (Your Fire)に留まらず、多幸感で胸がいっぱいになって昇天しそうになるパーティーチューン的なHysterical Us (M9)とか、楽しすぎて笑いが止まらなくなる今作一ダンストラックなDreamcatching (M13)とか、持ってる作風のレパートリーの全部が本当に素晴らしかった。

あまりの迫力に意識が飛びかけるChaeri (M7)とかもマジで最高...!私はColdplayとか、M83の『Hurry Up, We're Dreaming』とか、巨大なスケールで描く"エレクトロニック・幻想"の体験のそれが本気で大好きなのだけど、Chaeriはまさにそんな感じ。音楽が頂点に辿り着いたとき、耳が割れそうになるほどの凄まじい轟音で、エレポップのカラフルなサウンドスケープの絶景をリスナーに届けていく。満天の星を発生させるみたいに、美しいものを空間上に果てしなく広げていく...。圧巻のライブクオリティ音源。。。それは例えるなら、私にとっての幸せの起爆剤のようなもの。ひとたびそれが再生されれば、私は人生の中でも最大クラスの喜びをこんなにも容易く手に入られてしまう...。こういう類の曲ってもう絶対に素晴らしいと思う。このChaeriも今作で1位2位を争う大好きさだった。Secrets (Your Fire)の時点で迫力の表現力は腕っぷしだと分かっていたけど、まさかこんな、心臓が突き破れそうなほどのパワフルさも持ってるなんて...笑。ポップとしてのメロディー力も、センスもスキルも全てが一丁前。Magdalana Bayほんとに無敵だなって思う。

膨大な素材によって成り立ったMagdalana Bayのエレポップ、一歩間違えれば支離滅裂で気持ち悪いものになってしまいそうな気もしたけど、個人的にMagdalana Bayの今作は、Grimesとかによって開拓されたアバンギャルドな10sポップカルチャーであったり、TikiTok、ハイパーポップなど、現在のトレンドの発展系の一部として捉えられるような、ルーツ的に見て一貫性を見出せるものだった。ワールドとワールドが滅茶苦茶に混雑してるような不統一なものというよりかは、これまでのエレポップを継承した上で到達した、ある種の新境地的な音楽として印象...。異質な存在感、未体験性、オリジナリティの点で本当に魅了されるし、何よりドキドキとワクワクが強烈で、ほんっっとに楽しい。新しい音楽を発掘するモチベーションの根源はこういうところにある気がする。自分の命が蘇るような喜びとの出会い。マンガ・アニメ・小説・映画・美術...一度きりの人生の中で、私が自分の命を消費したいと願うもの。私の中でキングオブエレポップといえば無論CHVRCHESなのだけど、2020年代という区分でいえばMagdalana Bayは最有力候補かもしれない。ほんと、めちゃんこウルトラハイパー大好きだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. The War on Drugs - "I Don't Live Here Anymore"

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もっと高鳴りを。もっと情熱を。

 The War on Drugs、それは美しい冒険。彼らのハートランドロック・クラシックロックには、広大な空間を舞台にしたドラマと、悲しみを乗り越えるような主人公の姿があると思う。サウンドスケープは人生を反映するように壮大で、故郷、旅立ち、迷いや不安、葛藤、勇気、そして勝利などについて示されているみたい。その冒険は、私を特別な場所へ連れてってくれる。雪が降るように、星の光が瞬くようにピアノが流れ、閉ざされた心を開くように歌と詩が琴線に触れ、何かを信じるように力強くギターを奏でていく。私に果てしない景色を見せて、溢れるほどの感情を与えて、心を震わせ、奮い立たせる。「もっと高鳴りを、もっと情熱を」、身体が全力でそれを求めてる。もっと彼らの音楽に導かれたい。私もこの物語の主人公のように悲しみを乗り越えたい。希望を強く噛みしめたい。もう絶叫したくなってしまう。ライブを想像したとき、失神寸前まで泣き叫ぶ自分の姿が目に浮かぶ。今作はA Deeper Understanding (2017)と同じ、ハートランドロックのアメリカンなクセがきつすぎない、ストレートでトラディショナルながらもとても現代に響くロックの作風だったと思うけど、アルバムの導入パートのLiving Proof (M1)から顔面がぐしゃぐしゃになるみたいに感動した。雪ジャケの世界と深くシンクロするような、心に刺さるアコースティックと鍵盤打楽器の煌めき。それはとてもクリアで、純粋で、同時に雪解けのように甘く、とてもとても暖かい。そういったものがThe War on Drugsのロックンロールによって生まれ、それらが所有する景観と物語の諸々を私に胸いっぱいくれる。今作もまた格別に素晴らしいと思う。10曲あるうちの1曲目の段階でここまで泣かされたら後半ヤバいぞと心配しつつ、案の定2曲目のHarmonia's Dreamで体中のエネルギーがフル稼働するみたいに心揺さぶられた。彼らの代名詞的なホープフルなロックンロール、行く先を眩しく照らすようなシンセとギターのメロディーは、私にとって核心に触れる何かの真実や答えを教えてくれるみたいだった。本当にどこまでも感動する。2曲目以降に展開されるギターロックコースずっと最高。従来通りの彼ららしい作風に、音楽の景観を豊かにするための適確なサウンドメイキング、シーズン的にもぴったりな雪ジャケの風情、そしてそれらの連動...。これまでのアルバムでも名曲という名曲がいくつもあったと思うけど、今作もアルバムとして総合的にハイレベルの感じ。本当に最高のThe War on Drugsだった。

1曲目のLiving Proofでもう今作のハイライトに十分なり得ると思うけど、8曲目のWastedも相当ヤバかったと思う。The War on Drugの代表曲であろうRed Eyesと同じ、命を刻むような激アツのビートが特徴的な1曲。音楽の思いが天にも届くくらい、とにかくアッパーなロックンロールで、世界が晴れ渡るような、心に虹が差し込むような、そんな開放で満たされてる。本当にありがとうって思った。楽曲中盤以降、そのシャイニーな開放が畳み掛けるように激化していくところが本当にヤバい。前作A Deeper Understanding (2017)でいう4曲目Strangest Thingみたいな、ディープでヘヴィな一撃がある曲も大大大好きだけど、The War on DrugsはやっぱりこっちのRed Eyesタイプの曲も捨て難い...。MIDI打ち込みのコンピュータミュージックがいくら栄えようとも、一切ブレずにロックンロールをし続ける。どれだけ時代が変わろうとも、不変のよさを提供し続けてくれる。本当に偉大なバンドだと思う。

70s~80sのクリスマス感というところもすごくよかった。実はちょうどこの前Alex CameronのForced Witness (2017)を聴いてて、私の中でそこらへんのブームが形成されてたところ...笑。ハロウィンが過ぎればクリスマス一直線だし、また最高にロマンチックな季節がやってくる。年末とか今作のOccasional Rain (M10)を聴いてエモくなりたい。その冒険で、その情熱で、私を特別な世界に連れて行ってほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

プレイリスト

Apple Music↓

温の「2021年10月ベストアルバム(温)」をApple Musicで

 

Sportify↓

open.spotify.com

 

 

 

その他 とてもよかったもの

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Black Marble - "Fast Idol"

Boy Scouts - "Wayfinder"

Charlotte Cornfield - "Highs in the Minuses"

Cid Rim - "Songs Of Vienna"

Coldplay - "Music of the Spheres"

Ducks Ltd. - "Modern Fiction"

illuminati hotties - "Let Me Do One More"

James Blake - "Friends That Break Your Heart"

Kedr Livanskiy - "Liminal Soul"

Lapcat - "Till We Meet Again"

Lily Konigsberg - "Lily We Need to Talk Now"

Marissa Nadler - "The Path of the Clouds"

Mathew Herbert - "Musca"

Moaning Lisa - "Something Like This But Not This"

PinkPanther - "to hell with it"

Porches - "All Day Gentle Hold !"

Ross From Friends - "Tread"

Sigur Rós - "Obsidian"

sir Was - "Let the Morning Come"

Tirzah - "Colourgrade"

Wave Racer - "To Stop From Falling Off the Earth"

Wet - "Letter Blue"

The World Is a Beautiful Place & I Am No Longer Afraid To Die - "Illusory Walls"

Yoru - "Yeah. Yeah? Yeah! - EP"