アルバム感想(温)

My Favorite Music

「2021年12月ベストアルバムTOP10」感想

f:id:Worried10Fire:20211218150138j:plain

12月の音楽ベスト10を作った...12月まだ終わってないけど...!笑

一つ心残りなのがModern Natureの新譜、フィジカル限定リリースっぽくて(?)サブスクでまだ聴けないのが残念...。(それ抜きにしても最高なアルバムばかりだったけど)

12月17日までのリリースで私的ベストアルバムTOP10、感想をランキングで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. Quebec Echo - "Not the Lark"

f:id:Worried10Fire:20211209222523j:plain

オシャレなロックって最高...!

 ググっても情報が全然載ってないし、普通にインディーズだよなーって思っていざ聴いてみたらインディーズとは思えないくらいめちゃめちゃ完成されてて笑っちゃった 笑。ピアノを基調としたジャジーでクラシカルなポップスだけど、格式ばったような固さは全くのゼロで、むしろ緊張感など微塵も存在しないような和やかでフレンドリーなタイプのやつ。気品が感じられるようなアンプラグドの丁寧な雰囲気なのに、メロディーはいつも弾んでて楽しそう。そういった古典的でトラディショナルなスタイルをメインとしつつも、チルアウト系からノイズバリバリのロックまでも実は幅広く対応してたりも。メロディーに関してはキャッチーなのに品性が高いからすごく最強の満たされ方をする...笑。安定感とか幸福度とかがトップクラスなのに、大人びた美しさも子供みたいな可愛さも両方兼ね備えた、オルタネイティブな聴きやすさでいっても抜群。もうかなり無敵な作品だった 笑。代表的なところでいえばStop the Presses! (M5)とか。Jens Lekmanっぽさのあるクラシカルなポップスの曲だけど、透明感のあるサウンドスケープとハッピーなフィーリングの二つが相互的に反応するみたいなところがある。ムーディーでグルーヴィーというか、メロウでピュアというか、音楽が持ってるフィーリングの幸せクオリティが半端ない 笑。思えばベルセバとかVeronica FallsとかThe 1900sとか、そういうクラシカルなポップスというのは漏れなく皆最高なのかもしれないけど、Quebec Echoの場合はフィーリングの安定感とか一曲一曲の聴きやすさが特に格別だった。ジャズをベースに音楽をエモーショナルに発展させていくWhen My Baby's Mine (M1)、リラクゼーション特化のAround You (M4)、フュージョンジャズみたいなクリアネスがヤバいFor Someone Else (M6)、トリッキーな遊び心も遠慮ないLabour Day (M8)...。そうやって1曲1曲が強かった。

私的にQuebec Echoの今作のベストトラックはAnother Kind (M7)やResolution (M10)のロック系のナンバー。ここに私が思うQuebec Echoのオルタナ要素の核心があって、Quebec Echoのよさが唯一無二であることを決定してたような気がする。Another Kind (M7)はQuebec Echoのクラシカルなセンスを残しつつ、そこに推進力をプラスしたようなイケイケの曲だけど、私的にいうなれば"オシャレなロック"という感じだった。......オシャレなロックってめちゃよくない??笑。私こういうの本当に大好きです。もともとQuebec Echoの持ってる "大人びた美しさ&子供みたいな可愛さ"っていうギャップが、ロック系のアレンジによってもっとハッキリ表れてる。括り的にいえばTahichi 80であるとかPhoenixみたいなフレンチロックと一緒(Quebec Echoは南オーストラリアだけど)。こういうロックはもっと演ってほしいって思った。そして、Resolution (M10)のフィナーレに相応しい最高にグッとくるロックのやつも素晴らしい。こちらはQuebec Echoの幸福感のエモーショナルさがロックでパワーアップするようなやつ。そんなのどう考えても大好きなんだけど。。。笑。それまでの穏やかさが吹き飛ぶみたいにアツくなってロックしていく。最後まで品よく美しいのに、この曲はそれかつカッコいい。Quebec Echoの基本となっているキャラそのものが最高だけど、それにしても彼(彼ら)のオルタナロックは一段階さらによかった。

シャイニーで爽やかでふわふわなQuebec Echoのクラシカルなポップス、聴くと心が真っ白になるみたいだったし、とても朝型の音楽だったと思う。南オーストラリアのバンドだけど、オーストラリアでの12月リリース→春~夏のシーズンということでめちゃめちゃ羨ましかった。私も春~夏のシーズンにQuebec Echo聴きたい。Another Kind (M7)でテンション上げていきたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Teen Daze - "Interior"

f:id:Worried10Fire:20211217222146j:plain

永遠の夢を受け取る

 いくつ年を重ねても、10代の頃に抱いた憧れは永遠に続く。夢中になったときの感覚が自己を形成する根本的な部分にまで残るように、大人になってもそのときの夢のことをずっと覚え続ける。Teen Dazeの曲を聴いて泣きそうになるのは、彼がそうやって過去に抱いた夢のことをずっと覚え続けているのがすごく伝わるから。自分のことを虜にした80s初頭のシンセポップ・ディスコのハウスミュージックに対する憧れに馳せるように、その感覚のことを永遠にするようなロマンチックな夢のダンストラックを繰り広げる。この先もそれをずっと大好きでいるために、アンビエント作家としての本気の幻想も込めて大切に描く。もうときめきを通り越して胸がじんじんなるみたいに熱く感動した。全力で踊って楽しむようなクラブミュージックには絶対ない恍惚や愛慕のような感情を覚える。スペーシーでドリーミーだったり、フレンチでアーバンだったり、80s初期のハウスミュージックのビジョンをリアルに見せてくれるけど、その中でもTeen Dazeのアンビエントスキルにはやっぱり脱帽だった。冒頭feat. Joseph ShabasonのLast Time In This Place (M1)から本当に驚くほど引き込まれていく。これから80sのときめきいっぱいなダンスフロアに向かうとは思えないような壮絶かつ果てしない世界観。スペースディスコの"スペース"の部分をむちゃくちゃ誇張したようにも捉えられると思うけど、本当に至高の仕上がりのアンビエントだった。そこから次のSwimming (M2)で、華やかで優しい色をしたエレクトロニックのダンスが始まってゆく。Last Time In This Place (M1)の圧倒的な体験を経て、Teen Dazeの永遠の夢を受け取っていく。すごくすごく最高。この感動は1曲目の最強のアンビエントが利いてるからこそだと思う。それ以降も、80sハウスをトリッキーにアレンジして遊び尽くしたようなNite Run (M3)、大スケールのストーリーの中でTeen Dazeの最強の魔法を堪能するNowhere (M4)、広大な音の海にダイブするような恐ろしくも美しいStill Wandering (M6)などなど、終始素晴らしいアルバムだった。

そんなTeen Dazeのロマンチックな夢のダンスフロアで、私がたまらないほど幸せだった曲が表題曲のInterior (M5)。私が思う、今作で一番ダンサブルなナンバー。80sに対する憧れを表現するような遠く切なく響くサウンドなのに、曲自体はエネルギーを握りしめたような躍動を持ってる。まるでTeen Dazeの憧れに対して情熱が宿ったようなロマンチックさのエモーショナル化。こんなの絶対に素晴らしいって思う。ただでさえダンストラックとしてのグルーヴ的クオリティとかカッコよさとかがハイレベルなのに、Teen Dazeの今作におけるコンセプト的なよさのプラスもすごい。このInterior (M5)もかなり大好きだった。

Teen DazeのThemes For Dying Earth (2017)は私の2017年の年間ベスト音楽に余裕でランクインするほど好きなやつ。今作はアンビエントというより、Teen Dazeなりの80sハウスというダンスにしっかり着実な作品だったって思うけど、コテコテの80sなNeon Indianっぽさ、とてもモダンなエレクトロニカ~EDMのマデオン・ポタロビ系サウンド、サンプリングの風景描写、アンビエント以外に本当に色々持ってたなって思う。ジャケット含め、アルバムを通じて描きたかったこと、伝えたかったことが明確なコンセプトがよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. You Said Strange - "Thousand Shadows Vol.1"

f:id:Worried10Fire:20211210011437j:plain

ハイスペックなロックンロール

 ロックンロールは反抗の表現だとして、"何に対する反抗か"というところはバンドによって個性があると思う。例えばイギリスの労働階級の人たちによる不満発散型のポストパンクだったり、逆に不満やその他負の感情と対抗するようにして自身のハピネスを求めた元気モチベート型のロックンロールだったり...。You Said Strangeは、その不満発散と元気モチベートの色をどちらも併せ持ってるようなロックで、一つのアルバムに込められた意志が濃い、とても存在感の強い作品だったと思う。闇に覆われたような雰囲気のアングラ感、ヘイトフルな思いを抱えたような危険じみた興奮、だけどフランツの腰の入ったダンスのディスコパンクっぽさだったり、テンションを高めるようなアッパーなフィーリングもよく感じさせる。ジャケットで示された黒と赤のカラーのことがよく理解できるような音楽だと思うけど、芯の強い本格的なロックの意志を持ってるところが超カッコいいし、何より魅力的な要素を複数持ってるようなバンドとしてキャラクターがもうすごくすごく大好きだった 笑。メンバーの写真覗いただけもうよすぎてて惚れ惚れするのだけど、1曲目のMourning Colorsから案の定アタリだった。アングラでめちゃめちゃクールな曲なのに、途中サックスで洒落たバイブスの空間が演出されていく。You Said Strangeならではの不満発散と元気モチベートのダブル。ギターもドラムもボーカルも何もかもが本格的なポストパンクのそれ~!って感じだし 笑、ダークなのにアゲアゲな楽しさもよく堪能できるという。ほんと、バンドとして持つ作家性がハイスペック。今作のハイライトになるような完成度のMediterranean (M4)、短い曲の中で彼らの技術やセンスがいかに優れてるかが表れてるようなTalking To The Rats (M5)、8分と長くても最後まで安定して素晴らしいLanded (M8)...、どのトラックも傑作。曲によってはアクモンみたいな鮮烈のUK的ロックンロールに似た印象があったりもする。2021が特別な年なのか、私の音楽鑑賞の感度が変になってしまったのか、またはただの運なのか全然分からないけど、「またまた最高なバンド見つかったよ、、、」ってなった 笑。

You Said Strangeの今作はギターのよさも頭一つ飛び出てる気がした。代表的なところだとやっぱり3曲目のThousand Shadows...。こちもYou Said Strangeの本格的なロックンロールのナンバーだけど、楽曲後半に出てくる長尺ギターソロのクオリティが...!!笑。Tame ImpalaのCurrents (2015)とかみたいに特殊でない限り、最近だとオーディエンスを惹きつけるようなギターの見せ場というのは数的に少なくなってるのかなという気がしなくもないけど、You Said Strangeのこの曲はギターでちゃんと勝負できるような曲だと思う。シンプルながらもテクニカルですごく熱の籠ったフレーズ。You Said Strangeがロックにできること、ロックでやりたいことを100%成してるような大きなシーン。カッコよすぎてヤバい!!笑。演奏してるときのモーションとか汗とかが伝わってくるような臨場感がさらに興奮を掻き立てる。You Said Strangeの今作における、私の紛れもないベストトラックだった。

エレクトロニックとかの飾り付けなしのシンプル・オブ・大好きロックンロール。You Said Strangeを聴いたとき、「結局こういうロックが1番最高なのではないか…?!泣」みたいなことを思ってた 笑。フランスのグループということだけど、メンバーが兄弟や幼馴染で構成されてたり、仲良そうなところもめちゃめちゃ萌える...笑。私にとって無視できないようなバンドだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Worst Party Ever - "Dartland"

f:id:Worried10Fire:20211218003818j:plain

走りながら解放的に演奏する

 なんとなく寂しかったりつらかったりしても、足を運ぶように前へ前へパンクする。特に目的地もないけど、どこかへ駆け出していくように音を奏でる。Worst Party Everは、その走ってる瞬間の解放ことを抱きしめるようなエモのバンドなのだと思った。テイストはCamp Copeみたいな甘酸っぱくて切ないインディーロックにも似てて、ときにアメフトみたいに雪のようなサウンドクリーントーンを放って、曲によってはTouché AmoréのStage Four (2016)みたいに春一番の強い風を発生させるように疾走していく。私の中で景色が移り変わるように音楽が動いていく。それは彼らなりの負の感情に対する反抗で、冒険的でドラマチックで、心満たされるような喜びについての音楽なのだと思った。もうめちゃめちゃ大好き。私的インディーロック・パンクの好みのストライクゾーンに余裕で収まってる感じだし、感情をありったけ発散するようなパンクなのにとてもとても美しい。バンド名とかメンバーの人間的なキャラでいえばPUPのような精神面も感じさせていたけど、それは後悔だとかやるせないような気持ちが激化するようなエモではなく、何かに思い馳せるような、心奪われる没頭があるというエモ。8曲目のAwlydとかマジでそう。エモはエモでも花が満開に咲き誇るような春型のエモ。ドリーミーで柔らかいサウンドスケープ、出会いや別れのことを連想させるフィーリング、そういった世界とドラマ。それらを加速させるように走りながら解放的に演奏していくということ。Worst Party Ever本当に素晴らしいって思った。Horse Showもそうだけど、12月になって春のことをめちゃめちゃ恋しくさせる作品にこんなにも出会うのはなんでだ 泣。そういうWorst Party Everの素晴らしいエモが、Prism on a Window (M1)、Where’s Jack? (M4)、Talk (M6)、New God (M10)、Natural (M11)とあった。どこかへ走るように音を鳴らして、その解放に満たされていた。Talk (M6)に関しては超最高なのに曲が短すぎて置いてけぼりにされた。

ラストのInto the PÜR (M12)はさらに感動的。全体的に春っぽいWorst Party Everの曲の中で、この曲は唯一センチメンタルに心惹かれるクリスマス的イメージがある曲だと思う 笑。それまでではエモとしてのエネルギーがスピードやモーションに対して働いたけど、こちらは楽曲のスケールに対するエネルギーの働きがあるタイプ。甘酸っぱいフィーリングも、雪のようなサウンドも、空間的に拡張するようにダイナミックになっていく。音を鳴らす解放のことをもう一段階大きく見せる。2分しかないのにめちゃめちゃ満たされてた。メロディーがフックを持ってるのがすごくすごく効いてて、もはや私のことを泣かせに来てる。まさしくラストにもってこいな一曲だった。

Worst Party Everの今作、12曲も収録してて25分以下......いやもっと演っていいよ??笑。PinkPantheressみたいにTikTokやサブスクの発達故にコンパクト化した作品もあると思うけど、でもWorst Party Everのエモの短さはそういうのじゃなかった気がする 笑。そういう観点でいえば、Provenance (M3)やIn Chamber (M5)の比較的長いやつが嬉しかった。そう、In Chamber (M5)もインディーロック系で最高の名曲だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Horse Show - "Falsterbo - EP"

f:id:Worried10Fire:20211211184611j:plain

"ネオアコ×ポストパンク"

 ロックは感情の強化だと思う。喜怒哀楽、希望や絶望のフィーリング、憎しみであったり、誰かへの愛の感覚も。Horse Showがロックで強化した感情とは、まだ涼しさの残る、それでいてオーガニックで暖かい、春みたいなフィーリングのたまらなく素敵なものだった。音楽的特徴でいえばまさに"ネオアコ×ポストパンク"。ギターのテクスチャであったり、コンパクトなドラムの感じであったり、音の存在感とかタフネスとか、音楽的スタンスはポストパンクらしくあるのに、その上でサウンドが半透明化して、儚さを帯びて、もっともっと胸を締め付けるようなフィーリングを獲得したようなイメージ。ロックとしての熱エネルギーが全部ドリーミーなものに変換されるタイプのやつ。もうそんなの絶対に最高だから、、、笑。DIIV、Wild Nothing、Beach Fossils、心奪われるような幻想性を持ってるロックのそれらと同じ。特にHorse Showの場合、ネオアコ的空気感のグレードの高さとかはもちろん、そういう類の中でもポストパンクとしてのカッコよさがピカイチなバンドだったって思う。1曲目のUsed Toから傑作すぎ。前のめりになって行きながら美しくロックする曲で、回転力・推進力を大きく生み出すドラミングにギターが熱く反応していってる。フレーズもキャッチーでかつ心地よく、ロックが持つ熱エネルギーのドリーミー変換が最大にまで効いてる感じ...。どう考えても大好きにならざるを得ない。。。笑。しかもジャケットの春めいてる光景であったり、スウェーデン出身(アルバムのコンセプトもファルステルボってスウェーデンの町)であったり、音楽以外のところでいっても憧れをさらに喚起させるような畳み掛ける大好き要素があった 笑。ドリーミーな音楽って2010年代からもうずっと飽和してて、似たような作風のバンドは私の知らないところでも数多にいると思うのだけど、それにしてもHorse Showのポストパンクはマジで最高だなって思う。

4曲目のShameなんかもとてもよかった。自然をモチーフにしたジャケットで、ネオアコ的透明感も豊かな作風なのに、ポストパンクらしいダークネスも垣間見えるような曲。まるで一曲の中に光が当たってる場所と影になってる場所がそれぞれ混在しているような、一筋縄ではいかない異質な世界観。感情的に言っても何か泣けてくるようなサッドネスもある。こういうところもDIIVやWild Nothingにはなさそう。まさしく私の中の"ネオアコ×ポストパンク"っていう感じだった。やっぱりどう考えても最高。それは他のドリーミー音楽とは一緒に扱えない、私にとって新しいロックだった。

今年11月にデビューEPをリリースしたMandy, Indianaとかもそうだけど、Horse Showの今作を聴いて「EPじゃなくてフルレングスを出して~!泣」ってほんとにほんとに思った 笑。このクオリティで5曲収録はもったいない(?)気がする。情報チェックしてみたところ、もともとメンバーそれぞれが別のグループで活動してて、Horse Showが今作で初めての音源化らしい。ということはスーパーバンド的なところでいってもスペシャル。何より、私的に春のセンスがとても強い作品で、もうクリスマスとかどうでもいいって思いながら、暖かい季節のそれに思い馳せるようにしてひたすらエモくなってた...笑。春が来るまではファルステルボの町を画像検索しながら聴く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Dead Best - "Dead Best"

f:id:Worried10Fire:20211211104130j:plain

最高にいい意味でいい加減

 とあるアマオケのフルート奏者が「カッコイイとダサいは表裏一体」ということを言っていた。結局表現を感じ取るのは個人の主観100%なのはもちろんだけど、確かにカッコイイとダサいは相反するようで密接な関係を持ってると思う。でもダサいには、ただのカッコイイでは到達できない楽しさがある。私にとってDead Bestは例えるなら、そんなカッコイイとダサいの楽しさを両方兼ね備えたような、笑いが止まらなくなるくらい最高なガレージロック・パンクだった 笑。こんなにゲラゲラ笑うほどテンション上がる作品もなかなか珍しい気がする 笑。それは先月のOvlovみたいな、ガレージロックの生々しいギターノイズが感情描写として感動的なものになるようなやつとは違う、何事について もっとどうでもよさそうな、シンプルにガンガンに攻めていく、最高にいい意味でいい加減なパンク 笑。曲が短すぎて1曲ループに設定して聴くのだけど、例えばDeaf, Dumb, And Blind (M3)とかすごく最高。コードのパターンが二つくらいしかなさそうなテキトーのロックンロール。テンポ感は高速だけど、何かを目指すようにして真っ直ぐ進むようなものではなく、「あーはいはい...」ってやる気の無さゆえのテンポの高速化という感じ 笑、マジでめちゃめちゃ楽しい!!ローファイ的処理でゴミゴミわちゃわちゃしてるボーカルなども合わせてそう。けどギターに関してはしっかりロックンロールでちゃんとカッコいい。そういう精神がジャケットの時点で抜け目なく表れてた。精密なビートで激しくダンスするようなエレクトロニカ類では出せない、もっと人間らしいダルさとかテキトーさの性格...。ハードコアっぽいドスが利いてるThe Lure (M8)、ドラムがメタルみたいになってて忙しそうなHaunt You (M11)笑、いちいち「曲短っ!」ってなるけど 笑、それでも私の中でめちゃめちゃよすぎてるハイテンションパンクだった。

今作とっておきの一曲はやはりなんといっても4曲目のZombies of Love...!、この曲の神っぷりといったらもう、、、笑。ドコドコドコドコ...♪って超絶に楽しいドラムのグルーヴ、そこに軽快に音をハメていくギターのコンビネーション...。ダサいとかダサいとか どうでもいいとか、ガレージ系音楽の基本的な本質を体現したような、ハピネス量が凄まじいやつ。そこに今作一メロディックな旨味をのっけるというこの完璧っぷりよ......マジで大好きで発狂しそうになる 笑。もともとDead BestのギターはQOTSAとかみたいな低音の太いハードロック系の音がしてたけど、そういうギターの重厚感みたいなところもこのZombies of Love (M4)ではよさに大貢献してる。この曲の2分半のたった一つだけでも十分にベストアルバムだった。時間的ボリュームはないけど内容的な密度でいったらとてもヘヴィ。Zombies of Loveは気分上げていきたいときに是非もってこいな曲だし、しばらく何回も聴くと思う。

Dead Best、何かに似てそうだなと思ってたのだけど、私的にはDope Bodyなんかを連想した。ノイズロックからポストハードコアにも少し寄ってそうな作風のやつ。自分が今年(最近)聴いてきた音楽の中でも、ここまでストレートでハードなロックは久しぶりだったかも。QOTSAとか、またそっち方面も少し聴きたくなってきた。(って思って振り返ってみてたらModest Mouseの新譜とか聴きたくなってきた)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Mario Batkovic - "INTROSPECTIO"

f:id:Worried10Fire:20211204150245j:plain

一生懸命になって闇を奏でる

 例えば架空の映画のためのサウンドトラック。The Cinematic OrchestraのMa Fleur (2007)や、最近であれば青葉市子のアダンの風 (2020)。音楽の物語を堪能することは、ときに漫画やその他映像作品と同等の鑑賞になり得る。Mario Batkovicの今作も私にとってそういう類の作品だった。クラシックから電子音楽までカバーした映画音楽的作曲性の濃いインストゥルメンタルのエクスペリメンタルの、この上なく魅力的な闇の概念の芸術化。教会での神格的な儀式、革命のような戦争、地獄と宇宙、そして黒魔術...。アコーディオンを主体とした高貴な印象が強いけど、憂鬱や恐怖、または激高や狂気、それらの混沌、闇というものが所有するあらゆる負の要素が音楽に繋がってる。そしてそれらをドラマチックに、威厳を作るように、悲壮の思いを込めて表現する。闇の概念を物語化し、リスナーの中で世界を与え、音楽が感情的な作用以上のものをもたらすということ。それはまるで、自身の闇の力を解き放つための音楽で、同時に人間が持つ闇のことを愛するためのような音楽。なんて素晴らしいんだろう。神殿の扉が開かれるようなオペラの1曲目SANATIO (feat. Cantus Domus Choir)でアルバムが幕を開け、2曲目のREPERTIO (feat. Clive Deamer & Mxlx)でMario Batkovicのアコーディオンが呪文を唱え始める。ドラムが火花を散らすように燃えるその様子はどことなく地獄的かもしれないけど、アコーディオンの呪文は何か尊いものを秘めている。怒りのフィーリングの裏に物語が抱えたもう一つのリアルがある。混沌というものにこれほどまで惹かれていく自分のことが信じられない。生理的嫌悪感とかを狙ったエクストリームなハードコアなど、人間の闇を思う存分吐き出すような作品はこの世にいくつもあると思うけど、Mario Batkovicの今作は全くそういう類のものではない。もっと解釈できない、近づくことのできない美しい複雑性を持った芸術。そして何より、人間の闇の存在を大切に見せるような作品。建造物のようなジャケットの中に入りこんで、自分だけが思い描く壮絶な物語を体験する。とても大好きなタイプの作品だった。2曲目、3曲目、4曲目、世界観が様々なところもすごく秀逸。

中でもfeat. Colin StetsonのQUIS EST QUIS (M4)の凄まじさは、私の理解を遥かに超えたものがあった。それはMario BatkovicのアコーディオンとColin Stetsonのサックスを激しく交錯させて描く黒魔術。音楽の魔法を信じて、自分達の力を注ぎ込んで、まるで何か生贄を捧げるように、一心不乱になって闇を奏でる。闇を必要として、闇に憧れて、闇のことを一生懸命に愛そうとする。どうしてそんなことができるのだろう。私はこの光景を、この現実を、到底信じることができない。それはまるで、グロテスクであるとか、死であるとか、殺意であるとか、闇というものに関連する全ての事柄を肯定するような姿。循環呼吸の奏法で無限に音を並べ、命を懸けるように必死で闇を描いていく。この祈りは一体何なのだろう、そしてこの音楽の物語が秘めた概念とは一体何なのだろう。闇についてこんなにも惹かれたことはない。闇のことをこんなにも大好きになったことはない。MarioとColinの二人の黒魔術のシーンは、私にとってそういうものだった。私にとって未だかつてないほど、そういうものであった。真っ黒な邪気が辺りに立ち込めるようなバスサックスの響き、楽器の音色なのか声音なのか認識できないような魔物の呻き、Mario Batkovicのアコーディオンによる教会的で神殿的な世界も印象強いけど、感触的に言えばほぼColin Stetsonの曲だった気がする。彼の新曲を聴けたみたいで嬉しかったのはもちろん、まさか二人のコラボレーションがここまで驚異的なものだなんて本当に知らなかった。

闇を愛するということ、似たもので言えばThe KnifeのShaking the Habitual (2013)とかそうだったかもしれない。薬物を過剰摂取して狂っていくようなフィーリングですら美しいと思えてしまうようなもの。芸術にはそれができる。芸術がリアルであればあるほど、芸術が描く理想は力を持つのだと思う。Mario Batkovicの奏でる闇は本当に素晴らしかった。他のコラボアーティストも見事だった。でも何より、Colin Stetsonの曲がほんとに嬉しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Various Artists - "The Way We Descend"

f:id:Worried10Fire:20211218111046j:plain

イメージをこの手に

 "The Way We Descend"、ドイツのレーベル(arch)がプロデュースしたアーティスト9組によるコンピレーションアルバムの本作は、彼らが音楽の神秘的な創造にどうして夢中になるのか、音楽でしか叶えられない現実逃避が彼らにとってどんな意味を持つのか、そういったものを体現した作品だったと思う。アンビエントIDM、エレクトロアコースティック、数々の非現実について保存したエクスペリメンタルのコレクション。Paule Perrierは神話のような宗教音楽で魂の存在について表現するように(M1)、Samu Gokuは秘境の地で見つけた幻の景色を描くように(M2)、John Gürtlerは極限や無についての精神世界を極めるように(M3)、Toxido Maskは宇宙や永遠の概念と深々と向き合うように(M4)、P. Lopezは音と心の共鳴によるエネルギーと命のことを崇めるように(M5)、Flaminiaは地底に奥に眠る地獄的な力を獲得するように(M6)、BnjmnとMandingoは音楽によって瞑想の集中力を深化させるように(M7, M8)、そしてR. Kittは秩序と混沌の不可分の関係を愛して世界を受け入れるように(M9)...。それは紛れもなく、とてつもない喜びであった。誰も手が届かないような、自分だけのかけがえのない理想に接近するということ。例えどれだけ非現実的な観念であったとしても、音楽の実体化によってそのイメージを自分のものにするということ。それが彼らの、"The Way We Descend"であったのだと分かった。もう半端ないくらい好きだった。その喜びは、非現実的なものを通じた自分と現実についての享受であるとか、自己を再発見するような記憶とマインドのトリップであるとか、あるいはそういった人間の内向性の価値に気付くことの音楽でもあったと思う。そういった理想や芸術的なものの数々が、アーティストそれぞれの力強い9曲に落とし込まれてる。カセットテープのカバーを正方形に逆トリミングしたエメラルド色のジャケットは、神秘的なものの象徴以上にそれらのアートの創造の偉大さと恐ろしさも物語っていたかもしれない。ものすごく素晴らしかった。参加してるアーティストみんな全然知らなかったけど、電子音楽の崇高な傑作の一つだって思った。

3曲目Evol Si Elpmisから5曲目Klrまでのコンボがとりわけ素晴らしい。もう好きすぎてどうにかなってしまうかと思った。Evol Si Elpmis (M3)は映画音楽家のJohn Gürtlerによる音響エレクトロニカ的な一曲で、繊細で多感なサウンドがリスナーの奥底まで影響していくような曲。放心してしまいそうになるほど音楽が持つミステリーと引力が大きいのだけど、その中でずっと伸びるように響く音の存在がたまらなく美しい。続いてのToxido MaskのArtemidorus (M4)は、それまで多感だったサウンドがさらに巨大化したような曲で、リスナーを飲み込むようなスケールのホールを発生させる。この浮力の威力は本当に凄まじいと思う。"The Way We Descend"の恐ろしさがこの曲でもっと高まっていた。そこから次のP. LopezのKlr (M5)では、あまりの素晴らしさにもう意識が飛びそうになってた。繊細さも幻想性も何もかもが激しく重く大きくなる。それまでになかったエネルギーの共鳴が生まれていく。もう鳥肌が止まらない。空間的な創造、感情的な影響、これこそ、他の芸術では成し得ない、音楽だけでしか叶えられない現実逃避であると思った。P. Lopezが愛した音楽による理想のアクセス。私的にはJon HopkinsのMusic For Psychedelic Therapyの6曲目とほぼ同値。アーティスト達の"The Way We Descend"が、私にこの上なく伝わった。もう大好きで大好きでたまらなかった。このP. Lopezは別名Ariel Me llamoというアーティストらしいけど、もしこの人が別に作品を制作したら絶対聴きたい。他の曲も最高だったけど、やっぱりこの3曲目~5曲目はもうめちゃめちゃに格別だった。

今作はもともとカセットテープ媒体のリリースだったみたいだけど、サブスクのジャケットにするときそれのカバーを開く形で正方形化にしたのもすごく好きだった。カセットテープはカセットテープでまたいいし、正方形型のアートワークもユニークで最高に魅力的だと思う。また今作はV.A.のコンピレーションというところも言わずもがな特徴的だけど、知らなかった個性的なアーティストを知る上でもとても有益な作品。私的にはJohn Gürtlerとか今回知れてよかった。Ariel Me llamo (P. Lopez)に関しては今後も音源絶対追っていきたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Father Figuer - "Jack of All Fruits"

f:id:Worried10Fire:20211211113218j:plain

真理

 Father Figueの音楽は、流動や揺らぎについてのスロウコアで、水の感覚のシューゲイザーで、メランコリーの中を漂流するファンタジアであったと思う。メロディーが液体状に溶けるようにして浸透していくとき、自分の中の水の感情を知る。飲み込まれていくような、沈んでいくようなフィーリングスを、逆らうことができない恐怖と安らぎを、それらの神秘と恵みのことを知る。それは私にとって、自分の中にある悲しみの存在を見つけることであった。自分自身の愛することができない部分、消すことができないような憂い、自分の中にある悲しみのことを見つめることであった。Father Figueの音楽は、そこにある真理を見せる。自分が水の感情を所有していることを、ありのままであることの尊さを、自分の魂が無罪であることを教える。この音楽は、一人の人間の魂を救うような芸術であると思う。私は彼らの曲を聴いて、私がこの世で1番尊敬してる、この世で1番憧れてるEmily Crossと同一の信念を感じた。ホーリーなもの、スピリチュアルなもの、自分よりもっと大きな存在のことを信じる、安らぎというものを永遠に追い求めるような生き方。改めて鑑賞したら、死んでしまいそうになるくらい自分が好きな作家性のアーティストであった。水の感覚が流れていくとき、神秘や恵みの音が奏でられるとき、Father Figueの音楽が私にその真理を見せる。Apathy (M8)とか尋常じゃない。水面に映る波紋を描くようなメロディー、零れるような三拍子。メランコリーの中で振動する音の余韻が、自分に水の感情を持っていることを実感させ、自分の感情との反応を起こしていく。ありのままの尊さを呈する芸術。絶えず、絶えず美しい。悲しみにここまで夢中になれるとは思わなかった。自分の悲しみのこと、こんなにも愛することができるなんて思わなかった。その事実が何より嬉しいと思う。この音楽がここに在ることが、本当に本当に嬉しい。聴けば聴くほど好きになる作品だった。もう抜け出せないほどハマってしまった。

水についての音楽アートといえば、今年であればDolphin MidwivesのBody of Waterとか絶対に無視できない。でも、Father Figueが奏でていた水の概念は、エクスペリメンタルやアンビエントであるよりずっとロックだった。それには人間の情熱が宿っていて、音にわずかに血液が流れているようで、生々しい感覚のとてもエモーショナルなものがあったように思える。Sink (M3)、Ghost (M5)、Rerto (M6)、そういったロック的要素をふんだんに含んだナンバーも素晴らしい。中でも特に、アルバムリリース前からシングルカットされていたGarden (M7)については別格だったと思う。1曲目ChokeやApathy (M8)のようなリードトラックとはまた別方面でよさを確立した、シューゲイザー・ギターロック系の一曲。音楽が大きく動くようなシーンがとてつもなく感動的なのだけど、ギターが放った音が空間に残るようなその様子は目を疑うほどの絶景だった。心臓を鷲掴みするような、驚異的な美しさの瞬間があった。今まで見せていた水の幻想が姿形を変えるとき。こんな感動ありえないって思う。思い出しただけで胸の奥がギュッとなって泣きそうになる。聴けば聴くほど好きになる作品だったけど、まさかここまで素晴らしかったとは最初気付けなかった。Garden (M7)→Apathy (M8)の連続が本当に大好きすぎてヤバすぎる。

『鏡がひび割れたり、覆われたり、ねじれたり、失われたりすることがあっても、重要なのは見続けること。自分のことを100万回見つけることは、100万回の人生を生きることである』。Father Figueのコメントの内容を解釈したとき、自分の中で何かが爆発しそうになった。あまりにも大好きで気絶しそうだった。『好奇心は己を潰す』ってどこかの偉人が言ってた気がするけど、「大好きなものが大好きすぎると死んでしまう」ということには深く共感する。私的にFather Figueの音楽ではそういう状態に陥っていた。音楽の内容、作家性、作り手の想いと願い...。ジャケットの「果物が地面に転がっている」という絵的な説明一つ取ってもとてもとても芸術的。もともとVondelparkであったり、"水の音"というものが個人的に大好きであったのだけど、Father Figueはその大好きの塊のような音楽だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Aeon Station - "Observatory"

f:id:Worried10Fire:20211211083355j:plain

痛いほど伝わる

 何かを表現するのは、芸術を創るのは、音楽を鳴らすのは、誰かに伝えたいことがあるから。信じたいこと、信じてほしいことがあるから。それは不特定多数の人に対する単なる自己顕示かもしれない。また、誰かに分かってもらえるように表現することで、自分の中の思いを巨大化させたりするのかもしれない。14年かけて制作したAeon Stationの本作は、Bruce Springsteenと似た性質のアメリカンなロックで、同時にBroken Social Sceneみたいに音楽的スケールと充実性に富んだオルタネイティブのロックだった。アートワークのように開放的なスカイブルー色をしていて、遠くまで広がっていて、どこか懐かしくて、切なくて、それでいて自分にとってかけがえない思い出を握りしめるみたいに、自分のことを強く信じるような、そんなような音だった。追憶的バラード、願いを込めたフォークソング、そして心が震えて止まらなくなる激情のギターロック。Aeon StationことKevin Whelanの伝えたいことは、それらによって実感できる満たされる感覚のこと、悦びのこと、それらの心の存在のことだったと思う。どうしてもそれを伝えたいのだと思った。例えそれが、届けたい人に届かなくても、感じてもらえなくても、一生懸命にガムシャラになって、心のことを伝えようとしていた。だから、痛いほど伝わる。閉ざされた心を呼び覚ますように、止まっていた感情を動かすように、「これでもか、これでもか」と悔しさも込めながら、私に精一杯ぶつけるようにロックを鳴らす。きっとこれは、Kevin Whelanの悲しみでもあると思う。何かを願うこと、祈りを捧げることは、一種の悲しみの表現だから。その悲しみの共感が、私のことを癒すように作用した。私が心に負った傷に対して、「これでもか、これでもか」と、力いっぱい癒すように影響した。初めて8曲目のAirを聴いたとき、鑑賞後も絶えず涙が止まらなかった。まるで私が共感を感じて受けとめるための感覚器官の機能が限界に達するような体験で、壊れそうなほど感動した。私がこの世で1番好きなロックは例えばBroken Social Sceneの7/4 (Shoreline)とかなのだけど、どれだけ自分の人生が不完全であっても、それでも自分の人生が最高だって、ありがとうの気持ちでいっぱいになるように満たされる瞬間を刻むロックのこと、私はこの世界で一番愛してるって思う。そういう曲を死ぬまでずっと聴いていたい。私にとってAeon Stationの今作のAir (M8)もそんな曲だった。それも、その満たされる感覚のことを一生懸命に伝えようとするロック。もう命尽きそうなほど好き。この世で一番ロックなものは何かと聞かれたら話は別だけど、私がこの世で一番好きなタイプのロックの曲だった。

Observatory (天文台)というアルバムのテーマは、Kevin Whelanと彼の自閉症の息子との関係から着想を得たという。制作の14年分の人生、息子に対して伝えたい想いが募りに募ってアルバムになったのだと、楽曲の感情からそういう事実が伺える。私にとって、このテーマはとても普遍的なことだと思った。例えば自分の大切な人が亡くなってしまったとき、それでも自分の想いをどうにかして届けたいと願ったり、亡くなっていないとしても、別れてもう二度と会えないかもしれないという人とかに対してもそう。対象は誰であれ、「どうしても伝えたいこと伝えようとする」という作品。このアルバムは、全ての曲にそういうドラマを持っていた気がした。2曲目のLeavesも私の胸を深く打つ。隠れているもの、見えているもの、私とあなたとの間にある全て(And it’s all the in-between-us from what we hide to what we seem)、じっくりと時間をかけるように、エモーショナルなエネルギーの花が咲く。離れ離れでいても想うことを絶対に止めない。彼がロックを鳴らす理由が分かった。彼の信じたいことが何か分かった。だから、痛いほど響く。身体が割れそうになる。私にとって、とても強い音楽だった。強烈なロックだった。Fade (M3)であるとかQueens (M6)であるとか、他の曲でもやっぱり泣いてしまった。とてつもなく傑作のアルバムだと思う。

The Wrensの2003年作を聴いたときはまぁまぁいいなーぐらいの好みレベルだったのだけど、今作のKevin Whelanのソロの方はそこからするともうありえないくらい素晴らしかった気がする。The War on Drugsといい、2020年代でもホープフルなアメリカンロックが引けを取らない。特にAeon Stationの今作は、本当に泣きすぎて眼球がズキズキと痛かった。本当に本当に大好きだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

プレイリスト 

Apple Music ↓

温の「2021年12月ベストアルバム(温)」をApple Musicで

 

Spotify

open.spotify.com