アルバム感想(温)

My Favorite Music

「2021年5月ベストアルバムTOP10」感想

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5月のアルバムはランキング選ぶのがウルトラスーパー難しかった、、、泣
2021年5月の大好きな新譜、トップ10の感想をランキングで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. St. Vincent - "Daddy's Home"

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大人の高級感

 今作のSt. Vincent様は、余裕たっぷりの大人なムードや、それらの高級感が目一杯堪能できるアルバムだと思う。この"高級感"がめちゃ本格的な感じで本当に大好きなのだけど、特に2曲目のDown And Out Downtownとか超最高の曲だと思う。今までずっと培ってきた歌メロとギターメロのよさをフルで使った、ジャズ、R&B・ソウルのとっても濃厚な音楽。ヴィンテージな趣やビターな味わいをすごく大切にしたような曲で、大人の贅沢気分が満喫できるような、上物のワインを嗜むような、そういう"大人素敵"な瞬間を最高に楽しめる。エモーションを高めていくような曲の見せ所も設けてあるし、そのタイミングでシタールのような ほどよくスパイシーな弦楽器の音色を魅せるとか、音楽が本当に絶妙...。そこからDaddy's Home (M3)、Live In The Dream (M4)、The Melting Of The Sun (M5)...という風に、それらの大人の高級感を繰り広げまくって...。こちらのSt. Vincent様の作風もめちゃめちゃいいと思った。今までとはまた違うキャラクターのよさ。ジャケットを見たときは正直従来のイメージと全然外れてて「誰だこれは、、、(゜-゜)」ってなってたけど 笑、さすがは女王様だった。

上品でメロディアスな歌と、男性が求めるそれらの"女性らしさ"に対して中指を立てまくるようなバリバリのロック。St. Vincent様は常に自分らしくあることを忘れずにいて、自由でカッコよくて、これまでずっと皆から愛される女性のヒーローであり続けてたんだと思う。今作Daddy's Homeは70年代の古風なアレンジが特徴的だけど、メロディアスな歌要素とロック要素の二刀流の発揮とかではなく、自分らしさのアピール以上にアーティストとしてのワールドの創造に注力した作品なのかなと思った。ソウルミュージック系のコーラスはもちろん、ファンクチックなギタープレイやブラスバンドの活用など、細部まで徹底した世界観作りの感じ。2017年のMasseducationとかもオリジナリティの高いワールドを持っていたと思うけど、今作は高級感のあるムードがより一定に保たれてる感じがする。最初Daddy's HomeのSt. Vincentのアーティスト写真を見たときは、どんなところを目指してるのか掴めなかったけど、中身を開いてみたら納得のできる内容だった。

本音を言ってしまうとですね、実は本家のジャケット↑よりも、VMPが取り扱ってる別ヴァージョンとかのジャケットの方が好きです、、、笑。こっちのレコードが一番欲しい。どうにか再販してくれないか...泣。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Lydia Ainsworth - "Sparkles & Debris"

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エクスペリメンタルでマジカルなインパク

 Lydia Ainsworthのエクスペリメンタルポップ(アートポップ)は、デビュー作のRight from Real (2014)のときから只者ではなかったと思う。エキゾチックな民族音楽系のグルーヴ、現実離れした存在感のめちゃめちゃ神秘的なストリングス、その他これまでに聞いたことのないような実験的なサウンドとメロディー...。Lydia Ainsworthのポップは、それらの強力な数々の魔力を装備した状態のパフォーマンスだということ。言うなれば"めっちゃヤバいAURORA"みたいな 笑。今作Sparkles & Debrisはよりシティポップ・R&B寄りのロマンチックな作風だけど、10曲目のQueen of Darknessがほんとにほんとに素晴らしかった。金属楽器のような響きは宗教音楽のような雰囲気を醸し出しているのに、何かクリスマスソングで用いられる鈴のようなとても素敵な音色も持っているサウンド。Lydia Ainsworthのエクスペリメンタルで魔法的な作家性のセンスが炸裂しまくってる、今作屈指の大名曲だと思う。そんなサウンドのパフォーマンスなわけだから、もう本当にゾクゾクが止まらない。ポップスでこんな音響芸術をできるアーティストは本当に少ないと思う。このQueen of Darknessが1番大好きだった。

Right from Real (2014)はワイルドなのに幻想的で、とても独創的なポップスだったと思う。それ以降はどんどんメインストリームな方向に行ってる中で、今作は「メインストリーム系なのになんかこれヤバくない...?」みたいになる、また新しい境地を見せてくれたと思う 笑。メロドラマのような世界観にエンヤのような超ヘヴンリーなサウンドスケープをミックスさせたようなParade (M1)とかそう。ものすごくロマンチックで素敵なのに間違いはないのだけど、馴染みがあるようで全然聴いたことのないような、異色な雰囲気のあるポップスの感じ。この不思議な味わい、Lydia Ainsworthだからこそのエクスペリメンタルでマジカルなインパクトのポップって最高だと思う。料理で例えるなら、口に入れたときめちゃめちゃ美味しい~!ってなるのに、何のカテゴリーの料理かは分からない!って感じ 笑。バリバリにポピュラーソングな曲調に高潔なハープのサウンドを入れるForever (M2)とかもそう。Right from Realかそれ以上に大好きなアルバムだった。

今作はジャケットもかなり好きだった。アーティスティックなオブジェクト散りばめるというカッコよさ。遊び心も溢れていて楽しい。さすが魔法性の高いアーティスト、ジャケットのセンスも素晴らしいと思う。そういう点だとMVもすごくよかった。(てか渋谷来てたんだ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Colleen - "The Tunnel and the Clearing"

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恐怖と安らぎの信じられないような中間領域

 真っ暗な背景の中に浮かび上がる半円状の光。ザラザラと霞んだサンドアートのようなタッチがあるそのジャケットは、鑑賞者を異次元に誘うような、幻覚をもたらすような、何か心惹き付ける魔法の特性を持っている。それはとても恐ろしく、一方でとても大きな安らぎも感じさせるもの。Colleenのシンセオルガンのアンビエントは、まさしくそういう音楽だと思う。夜空の星をぼーっと眺め、それらに吸い込まれてしまいそうになる錯覚の激しい恐怖と、満天の輝きのこれ以上ないほどの美しさ、それらのどちらも味わうような、とてもとても幻想的な時間。教会音楽のような神聖さ(The Crossing M1)、サイケデリックな瞑想(Revelation (M2), Implosion-Explosion (M3), Hidden in the Current (M7))、シンセオルガンの魅力をとことん突き詰めたような音楽性。今作も大傑作だと思う。魂を解放させるような浮力の発生、願いごとを唱えるようなメロディー、それらがふわっと消えたときの余韻、シンコペーションの反響、もう何もかもが素晴らしい。こういうヘヴンリーな音楽がツボすぎてツボすぎて、、、笑。ヴィオラ・ダ・ガンバのループで奏でるGolden Morning Breaks (2005)とかも超傑作だったと思うけど、エレクトリックなスタンスのこっち系も間違いなしなよさ。妖精と踊るようなGazing at Taurus - Santa Eulalia (M5), Gazing at Taurus - Night Sky Rumba (M6)なんかもすごくよかった。

今作で私的に1番やばいのがタイトルトラックのThe Tunnel and the Clearing (M4)。今作が象徴するようなジャケットの恐怖と安らぎ、それら2つのフィーリングの中間領域を実現したような曲だと思う。もうありえないくらい素晴らしい。人間が到底理解できないような、とにかくものすごくディープなものを与えてくれる。シンセオルガンのサウンドをオクターブ上げて、その存在をさらに強調するところで、もう死にそうになるくらい心奪われた。恐怖と安らぎの中間、そういう概念って音楽化してイメージできるレベルまで完成させられんだって本当に驚いた。今作で私が1番好きなシンセオルガンのサウンド。実際Colleenもめちゃ本気出してる気がする 笑。ジャケットのアート、サウンドメイキング、一種のヒーリングミュージックとしてもトップクラスの品質だと思う。

実は私のLINEのアイコンはColleenのGolden Morning Breaksです 笑。もう4年くらい前からずっとそう。天使、ユニコーン、それらのholyな要素、宗教的な世界観、スピリチュアルなテーマ性、感情、そして祈り...。私がこの世で1番好きなジャケット。(今作のジャケットもめちゃんこハイパー大好き)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Bachelor - "Doomin' Sun"

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深みのあるメランコリー+色鮮やかなノスタルジー

 ほっこりハピネスが摂取できる平和的なシューゲイザー・ドリームポップのやつ。Jay Somの光属性・センシティブさ、Palehoundの熱すぎないクールな温度感、それらのミラクルな作家性。すごく最高なコラボアルバムだと思う。Back of My Hand (M1)、Sand Angel (M2)、Stay in the Car (M3)の3曲とか本当に心に響きまくる。深みのあるブルーな感情のメランコリーと、色鮮やかで暖かい感情のノスタルジーを融合させるような、尋常じゃないくらいエモーショナルなことをしてる曲。まさか二人がここまで最強のよさを生み出すとは思ってなかった...笑。それは例えるなら、ひんやりと冷たいのに心温まるような、寂しいのに満たされるような、私にとって特別でかけがえのないフィーリングスを再現する曲。リラクゼーションが深くて、ものすごく素敵で、私がウルトラハイパー大好きなやつ。Palehoundならではのグルーミーでダークな曲調に、Jay SomのEverybody Works (2017)みたいな鮮やかな色のギターを使ってる感じが本当に美しい。頑張りすぎず落ち着きすぎずでとてもちょうどいいテンション感を維持してるし、リピート性の高い仕上がりなのもよかった。

6曲目のAnything at Allみたいなトーンの明るい曲もすごくいい。ほどよくポップで可愛いらしい雰囲気の中で、ゴージャスな轟音ギターの花を思い切り咲かせるような演出。メランコリックでノスタルジックなエモーショナルさだけでなく、高品質なシューゲイザーとしてのよさも兼ね備えてるということ。こういうノイジーなギタープレイもめちゃめちゃ好き。(もちろんStay in the Carも。)Jay Somの前作Anak Koでも、ギターでよく遊ぶおもしろさがあったと思うけど、ほっこりハピネスの曲調の中でのシューゲイザーとか、今作Palehoundとのコラボでもこれまたエモいギターが聞けたと思う。去年のRoutine (Chastity BeltのAnnie Truscottとのコラボ)も超最高だったし、これからももっともっと私のツボに刺さるロックをやってほしい 笑

私的には、今作は秋に聴きたいなってめっちゃ思った。1曲目から3曲目までのリードトラックとか、7曲目のMoonとか、秋の空気とすごくマッチしてる思う。また、どことなく90年代のYo La Tengoのインディーロックを聴いてるときのような、懐かしいときめきとかもそう。個人的にもともとPalehoundが秋のイメージを持ってるというのもあるけど。そういう意味で今作は聴きすぎず、秋までにとって置くのもありかもって思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Iceage - "Seek Shelter"

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ナイフで切りつけるのではなく、花束を贈るように

 世界に何かを訴えようとするロックンロールの革命。殺意すら感じさせるような怒りを放出したNew Brigade (2011)の頃からIceageは私達を奮い立たせ、胸が高鳴るような喜びを届けてくれたと思う。今作Seek Shelterは、そんな敵意剝き出しの頃とは全然違う、祝福や賛美を込めたような輝かしさと華やかさのあるタイプの作風。1曲目Shelter Songを聴いたとき、思わず「うわぁ、、、泣」ってなった 笑。近寄ってくる人全員にナイフで切りつけるのではなく、花束を渡すような、手を差し伸べるような、リスナーを心温まるフィーリングで満たしまくるようなロックンロール。復讐のようにして反乱を起こすような革命ではなく、誰かを愛するような、そういうもののために起こす革命。ゴスペルの聖歌隊を用意して、従来のIceageの攻撃力に希望とか勝利とかのテーマを寄与させるのが本当に素敵で素晴らしいと思う。もともとPlowing Into The Field Of Love (2014)や、Beyondless (2017)の頃からクラシカルなアメリカンロック、ブルース、モダンロックのスタイルを持ってたと思うけど、特にこのShelter Songのゴスペルの聖歌隊はこれもまた最高のアレンジだなって。ちゃんとIceageなのに、今までのIceageとは思えないくらいの大人の成長がある感じ。New Brigade (2011)から始まって今作Seek Shelter (2021)まで、覚醒に覚醒を重ねるように傑作アルバムを連続アップデートしてるのがすごすぎる、、、。ますますフロントマンEliasの大ファンになったし、Iceageというバンドがもっと大好きになった。

Shelter Song (M1)と並んで、ラストのThe Holding Hand (M9)もめちゃめちゃ名曲だと思う。こちらも輝かしさと華やかさを持ってる作風だけど、Iceageならではの灼熱のロックが繰り広げられてる。相変わらずハチャメチャにカッコいいし、今作がこれまでのIceageのアルバムとは違う方向性を持ってる分、彼らのロックの熱さがまた特別に影響するようなところも最高にグッとくる。ロックを鳴らすための理由は様々だと思うけど、やっぱりこうやって愛とか勝利とかのために革命を起こすようなロックンロールって格別だなと思う。ほんと、Iceageのことがもっと大好きになった。

他にも、5曲目のDrink Rainとかも最高だった。こちらはカフェで流れるようなほっこり系のジャズソングの感じ。意外性があってすごく目立つ印象があるけど、こういうビターでマイルドな曲もすごくIceageに似合ってて素晴らしい。雰囲気の作り方というか、バランスというか、アルバムの中でもいいポジションにある曲だと思う。アクモンのTranquility Base Hotel & Casino (2018)を思い出す...笑(あれ好きなんだよねー)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Sons of Raphael - "Full-Throated Messianic Homage"

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ドラマチックでグッときまくる

 コスミックなシンセサウンドが特徴的なスペースオペラのようなワールド、宗教や神話、それに関連する革命の英雄をモチーフにしたような勇敢で力強さのある曲想、それらの映画音楽的迫力、そしてたまらなくソウルフルな歌...。世界観もメロディーも本当に最強すぎてる...!泣。ジャンル的に言えばクラシカルなサイケポップだと思うのだけど、スケールが大きくて、ドラマチックで、最高にグッときまくるアルバムだと思う。各楽曲に必ずソウルフルなパートが用意されてる感じだけど、レトロチックなラブソングのようなロマンチックさ(On Dreams That Are Sent by God (M4))とかも抜群だし、オーケストレーションで感動をレベルアップさせまくるスキル(Let's All Get Dead Together (M9))とかも半端なくて...。まるでMercury Revのようなスウィートな夢の世界のひと時を提供してくれる。サウンドスケープも最高だけど、特にSons of Raphaelの今作は転調的な感情豊かな旋律を作るのが本当に見事だなと思う。特にLet's All Get Dead Togetherのメロディーはあまりにも素敵で美しくて心奪われまくってた。ほんと、マジでメロディーがヤバすぎる。

Sons of Raphaelの今作で私がもう完璧なまでに大好きになった曲は、なんと言っても1曲目のRevolution。全体的にサイケポップな今作の中でも1番ロックしてる曲だと思うだけど、この曲は最高すぎてどうかしてると思う、、、笑。スペースオペラ的ワールドのドラマチックさ、ソウルフルなメロディー、それらSons of Raphaelの素晴らしさをパワフルなロックンロールでさらに高めるような感じ。そういうパワフルなロックのスケールアップで、何か勇敢な姿を感じさせるようなカッコよさすらも発生させてる。この演出が本当にヤバい。。。笑。MVの世界観でも表現されてるように、"Sons of Raphael"ってバンド名とか、スペースオペラ的サイケポップのクラシカルな作風とか、作品が持ってる各要素が本当にぴったりハマってて、総合的に見るとなおさら魅力が光ってると思う。ライブのバージョンもめちゃ最高。この曲は紛れもなく今年のベストソングだった。

Sons of Raphaelのメロディーは本当にヤバかった。なんだかついつい口ずさみたくなるようなキャッチーなフレーズ。それでいうとSiren Music (M3)とかYeah Yeah Yeah (M6)なんかは、どことなくカラオケ感があったかも 笑。MVもすごくよかった。(Revolutionが1番好き)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Current Joys - "Voyager"

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素敵なものに一生懸命になる人

 Current Joysの今作は、情熱的で美しい冒険の物語で、純粋で真っ直ぐなラブソングで、それらの溢れる想いを詰め込んだ人間味の結晶なのだと思う。クラシカルなアメリカンロック系の力強いハート、正統派バラードのロマンス、そしてネオアコ系のたまらなく開放的で心地よいフィーリング...。Current Joysはきっと、情の厚いロマンチストで、素敵なものに一生懸命になる人で、純粋な人間性を目指した孤高のアーティストなのだろうなと思った。彼の曲を聴くと、まるで心に火が灯るように、自分の中で愛おしいエモのエネルギーが生まれていくをいっぱい感じる。こんなにも最高なのに、それが捨て曲なしのリードトラックだらけのアルバムとして出来上がってて本当に名盤だと思う。熱いビートにとっても華やかなピアノとストリングスをいっぱい広げていくDancer in the Dark (M1)から今作の最高さを決定づけてるけど、そこからのAmerican Honey (M2)とNaked (M3)のダブル傑作ソングコンボとか本当にヤバかった。American Honeyは海辺を1人歩く今作のジャケットのイメージに本当にぴったりな曲。しんみり系のとても切ない雰囲気を持っていて、Current Joysの歌声は今にも泣いてしまいそうな悲しい表情をしてるのに、音楽は夕日のように大きく、優しく、そして暖かくリスナーを抱きしめてくれる。なんというエモーショナルさ。切なさよりも暖かさの方が上回ってて、センチメンタルのダメージを負うことなく何度でも聴けるバランスなのが本当にいい。そこから次のNakedでは、しんみり系とは対極的な激アツのロックを爆裂してる。The War On DrugsのRed Eyesとかと同じ、胸がはちきれそうなほど情熱を込めまくってる曲。何かと激しく闘ってるみたいに、ドラムも歌も凄まじいほど熱量が高いのに、それらのエネルギーが爽快感や気持ちよさとして変換されてる。音楽の熱量が高すぎるから、そのエネルギー変換がめちゃめちゃダイナミックになってて本当にヤバい。あまりにも大好きすぎて泣いちゃう。この曲で、Current Joysが今作で描いてる情景・感情がいかに素敵なものかがよく分かる曲だと思う。バラードとロック、このAmerican HoneyとNakedだけでもうめちゃめちゃベストアルバムだった。

他にも、めちゃカッコいいギターロックのBreaking the Waves (M5)、Arcade Fireみたいなキャラに変身してるRebecca (M8)、ポストパンク感がツボに刺さるMoney Making Machine (M11)、そしてCurrent Joysらしい孤高の冒険ソングのVagabond (M15)などなど、本当に名曲ばかり。そんな中でも、タイトルトラックのVoyager (M12, M16)もとても強かったと思う。インストゥルメンタルのPt 1では、シンガーソングライターっぽい作風とはかけ離れたような、映画のサウンドトラック的印象を持ってる曲。クラシックなテイストで固めたシリアス調の曲だけど、この曲の美しさも段違いに素晴らしい。シンガーソングライターとしてのコンパクトな曲ではなく、もっとアルバムに大きな物語を付加させるように機能してる曲。バラードやロック、それ以上の才能も素晴らしい。

今作はSecret Canadianのメールで知ったアルバム。Stella Donnellyでお馴染みのレーベルだけど、6月はいよいよFaye Websterなんですよね、、、!!(楽しみすぎてヤバい)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Squid - "Bright Green Field"

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友達になれそうな親しみと、関わりたくない狂人のような危なさ 笑

 Squidのポストパンクには、リスナーの調子を破壊しまくる最高の楽しさがあると思う 笑。安定と不安定が混同したような不思議さとクレイジーさ。楽しいのか怒ってるのかを全然教えてくれなかったり(G.S.K. (M2))、油断してるところにいきなりヒステリックに暴走を起こし始めたり、陽気でハッピーなんだけど、メランコリーに沈んだ美しいナンバー(2010 (M7))とかもあって...。ギターの演奏スタイルも、単音を器用に並べるような丁寧なのもあれば、ブラッシングとかのBattlesチックな実験的なのもある感じ。それは、ボロボロな状態で何かと激しく葛藤するCrack Cloudのポストパンクのキャラとも違う、マスロックのように複雑なアンサンブルのテクニカルさで威力を発揮するblack midiのポストパンクのキャラとも違う、もっと友達になれそうな親しみと、関わりたくない狂人みたいな危さのどちらも持ち合わせてるようなキャラ 笑。このキャラもめちゃめちゃ最高だと思う!ハッピーすぎずヤバすぎずのバランスで本当にすごくユニーク。Narrator (M3)とかもう別格で言わずもがなの傑作ソングだと思うけど、私的にはG.S.K (M2)、Paddling (M5)、Pamphlets (M11)あたりがすごくお気に入り。特にG.S.K.のギターリフとかほんとに素晴らしいと思う。バウンドのニュアンスがある特殊なグルーヴ、とても変な形状をしたメロディーで、快感やスリルというだけでなく、リスナーに対する魅惑や催眠性の効果も含んでる感じ。とっても不思議でとってもクレイジー。ここで私はもう完全に調子が狂って「あぁもうSquid大好き...!!泣」ってなった 笑。この曲のギターリフ一つだけでも、Squidのキャラクターがいかに最高なのかがよく表れてると思う。

Pamphlets (M11)とかもやっぱり超素晴らしい。ドライブの強いストレートなロックだけど、Cloud NothingsのWasted Daysの間奏とか、DeerhunterのNothing Ever Happenedのラストとか、ノイズやエフェクトの実験的なサウンドで無限に遊べるパートが用意されてるような曲。こういうパートっていつまでも聞けるし、多様な感情を引き出しSquidの不思議さとクレイジーさを発揮しながらめっちゃロックしてる感じが本当にいいなって思う。ライブがかなり最高なご様子だからやっぱり観たい。(スパソニの無念よ、、、)

今作は『Bright Green Feild』という緑が特徴的なジャケットの作品だったけど、音楽のワールドに対する想像の余地とか、Narrator (M3)のMVで表れてるようなアート的観点もすごくよかったと思う。単純にバンドのアンサンブルのよさというだけでなく、全体がコンセプトを持ったアルバムとして完成されているということ。気持ちいい緑に見えて、どこか心が引っかかるようなミステリアスさとか、少し不気味な雰囲気とか。Narratorの音楽にもあったけど、何か違和感を与える空白を持ってる感じにもすごく惹かれてた。(というかNarratorのMVめちゃめちゃ好き。)Black Country, New Road、Iceage、black midi...。ポストパンクのブレイクがすごい現代のロックシーン、どれもめちゃめちゃ大好きだけど、Squidもかなりのお気に入り。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Theo Alexander - "Sunbathing Through A Glass Screen"

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もっともっと凄まじい幸福に満ちたもの

 それは、和音の豊かな響きに包まれるピアノの二重奏。そしてそれは、精霊を召喚するような鍵盤楽器と低弦のアンサンブル。この世のものとは思えないような、聖なる輝きと透明感。川のせせらぎのように、天から降り注ぐ恵みのように、私を癒し、命を与える音色。Theo Alexanderの今作が私にとって嬉しくてたまらないのは、自分が考えてるよりもずっと、世界は神秘的であるのだということを私に思い知らせるから。自分の理解の範疇を超えるほど、この世界は圧倒的に美しいのだということを私に教えてくれるから。私はこういう音楽に本当に弱くて、やっぱり呼吸ができなくなるくらい泣いてしまった。聖なるメロディーが私に非現実的で魔法的なものをハッキリと信じさせ、私を目覚めさせるように、生きていることの実感を叩きつけるように、私と世界の全てについて祝福してくれるような感覚。まるで、「この世界は何もかもが素晴らしいんだよ」と伝えるように。音楽による感情の体験は、それをリアルに叶えることができる。それこそ、私が芸術の中で1番音楽が好きである理由。ピアノのサウンドで一貫して音楽の世界が作られている本格的なクラシックではあるけれど、非常にシンプルで、力強く、崇高で威厳に満ちた風格すら感じさせる作品だった。

Introduction To Sunbathing (M1)から、もう尋常じゃないほど感動する。それはなんといっても、ピアノのサウンドが所持している光の性質を最大に引き出しているというところ。和音に和音を重ねるような重奏のアレンジで、リスナーを包み込むようにしてその光の音をいっぱいにしてる。そのSunbathing(日光浴)は、単なるバカンスのような ほのぼのとした雰囲気の日向ぼっこなんかでは全然なく、人生で最も幸せな瞬間を想像するような、生きる希望を見出すような、もっともっと凄まじい幸福に満ちたもの。「光とは、こんなにも美しいものだったんだ」と思った。私はこの曲で、生きてる限り自分はずっと幸せなんだということをイメージした。ピアノの光に含まれる何か願いのようなものを受け取って、自分の人生のことを心から愛おしく思った。アルバムのイントロなのに、この1曲だけでもう目ん玉がギタギタになるほど泣いてしまう。ピアノの二重奏が、シンセオルガンが、ここまで強度の高い幸せの光を生み出せるなんて。ピアノって本当に素晴らしい。Theo Alexanderって本当に素晴らしい。

ただでさえ1曲目でもう感動レベルがやばいのに、2曲目のBright-Eyed Hunger (M2)もそれ以上くらいヤバくてもう死ぬかと思った。日光浴らしい1曲目とは雰囲気がガラリと変わった世界。記号のようなメロディーを規則的に並べて描く、幾何学模様のようなアート。そこにチェロとコントラバスの怒りのような低音を作用させて、そのアートはもっと巨大な建造物のような発展を見せていく。本当に、本当にヤバすぎる。その音楽を聴いた私は、究極的な神々しさと、限界を超えるような美しさを目の当たりにして、自分が持っているマインドがぶち壊されるような、とてつもない衝撃的な感動を味わった。想像上で例えるなら、初めて天国や宇宙の世界を目にするときのような体験。7分の曲だけど、現実世界を生きてることが思い出せなくなるくらいの幻想への没頭がある。もうめちゃめちゃぶっ飛ばされた。芸術とは、人間のクリエイティビティとは、こんなにも尊いものなのかと思いながら、やっぱり泣いてしまった。色々なサウンドを使用するのではなく、鍵盤楽器の歌だけで描くという神秘性の高め方が本当に強い。自分はオルタネイティブロックの洋楽が1番好きなのだけど、本格的なクラシックタイプの作品にもこんなにハマるとは思わなかった。自分でも意外でびっくりする。同じ系統で6曲目のAccidental Enlightenmentとかも、頭おかしいくらい素晴らしかった。

"ガラス越しの日光浴(Sunbathing Through A Glass Screen)"と題されたアルバムだけど、日光浴に対するピアノの色々な感情を堪能すること、そのワールドや物語に対する想像を膨らませること、シンプルながらとても中身の濃い素敵な作品だったと思う。特にピアノの二重奏は本当に格別。自分はピアノ全く弾けないのだけど、ラフマニノフの二重奏とかは大好きで、オーケストラをやってた大学生時代にはよく聴いてた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. black midi - "Cavalcade"

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この音楽に呪われたい。。。

 私を支配する、black midiの巨大な帝国。マスロック、ジャズ、プログレなどを足し合わせたような圧倒的なアンサンブルの存在が、まるで暗黒世界の覇者のように君臨している。私がどうあがいても太刀打ちできないような、絶対的な威力を持ったダークネス。あぁもうカッコよすぎる、、、、泣泣。このblack midiの音楽の虜になりたい。この音楽に呪われたい。音量を爆音にして聴きたくなるような激ヤバの興奮に、体中がこれでもかというほど熱くなる。John L (M1)では地震を発生させるような衝撃的な怒りを放ち、Chondromalacia Patella (M3)の後半では殺意をむき出しにして猛スピードで襲い掛かって来たり...。それは、ただ苦しみを抑えきれず発狂して暴れまわるような幼稚なものではなく、抱えてる闇がもっと高度な発達を遂げたような、芸術性のある奇抜さと異様さがある。不協和音のグロテスクな低音の破壊的な迫力も、メタリックな弦楽器の出血を連想させるようなダメージも、過激な表現を技術力のあるアンサンブルとして丁寧にアートに落とし込んで、負の感情を最高に魅力的に見せるように完成させてる。この神のようなスマートさ、、、リアリティの高い怒りと闇を120%発揮するためのアンサンブル力、、、!!もう大好きが限界突破を起こしそうになるくらい好き。Slow (M4)の時点で、大好きすぎるあまり感極まって号泣しそうになってた。私が今作で1番好きな、絶対的な威力のダークネス。純粋なアンサンブルにblack midiの闇の感情を込めまくって、まるで魔物を創造するような気迫を生み出してる。緊張感を煽る特殊なリズムパターン、内なる怒りと闇を全て解放するような聖なるメロディー、それらを休むことなくリスナーに与え続けるとってもスリリングなストーリー性、そしてその果てしないスケール感...。音楽を通じて、まるで化け物に成り果てた人間が神のような姿を見せるような、恐ろしさが芸術の領域に達したときの並外れた素晴らしさを感じさせる。もう本当に凄まじすぎてヤバすぎて、中毒性が半端なくて、身体が言うことを聞かなくなるくらい爆音でずっとリピートしたくなった。何度でも聴きたくなるほどのよさ。長調から短調に無理やり切り替えるような気持ち悪さのテクニックとか、身体が追い付かず吐き気を催しそうになるところもあるのだけど、そういう気持ち悪さからもblack midiの強烈な怒りと闇のリアリティが伝わってくる。本当に素晴らしい。それらのblack midiの絶対的な威力を表現するMVも傑作すぎて、、、笑。特にこの2Dアニメーションのマスコット、本当にめちゃめちゃユニークで、もうここまでくるとblack midiのセンス狂ってるな、、!って思う 笑。ほんと、ヘビロテが止まらない曲だった。

私が今作で何よりも惹かれるのは、暗黒世界の覇者のように君臨しているblack midiの強大なヴィランに、この物語の主人公は絶対に敵わない、というようなことを思わせるところ。例えばラスボスと戦うバトル漫画で、主人公が必殺技を使って勝利するとか、そういうのももちろん最高だと思うのだけど、black midiの今作の場合は、そういう必殺技を使っても到底勝てないような、圧倒的な絶望を与える敵として描かれてる感じがする。そのくらい、black midiが築く帝国が恐ろしい存在であることを想像させるアンサンブル。いかなるものでも抵抗できないような、絶対的な権力、そしてそこに含まれている、作品の造り手側の"反抗心"。私は「この世で一番ロックなものは何だと思う?」と聞かれたら、多分Battlesって即答するけど 笑、ダークサイドを進化させた化け物じみたblack midiもまた、この世で一番ロックなものと捉えられるかもしれない。それほどのパワーが込められた、もっとリアルな激しい怒りと闇のロック。もう世界一カッコいい。。。笑。特にやっぱりSlowのMVの世界観が刺さりまくってた。

今作は全曲通して素晴らしい。メロメロなバラードや、ビタースウィートでムーディーなジャズ要素、それらの幻覚的なユートピア。過激さと穏やかさの緩急があって、アルバムがよりドラマチックな仕上がりになっていたと思う。激しい系だとDethroned (M6)とかもかなり好き。後半パートのグルーヴが超カッコいいし、連符のギターサウンドとか、ドライブするベース、その他全部最高すぎてずっとニヤニヤしちゃう。アルバムがほんとに充実してる。何度聴いても新しい発見ができるところもポイントが高かった。black midiが新譜をリリースするってこんなにも嬉しいんだね。もうblack midi毎週新曲出してほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

プレイリスト

Apple Music

温の「2021年5月ベストアルバム(温)」をApple Musicで

 

Sportify

open.spotify.com

 

その他よかったもの

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Avec Sans - "Succession"

Body Meπa - "The Work Is Slow" 

Erika de Casier - "Sensational" 

India Jordan - "Watch Out! - EP"

Juliana Hatfield - "Blood"

Lucinda Chura - "Antidotes 2 - EP"

N0V3L - "Non Fiction"

Pinky - "Tomorrow's Where I'm At - EP"