アルバム感想(温)

My Favorite Music

「2021年2月ベストアルバムTOP10」感想

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今月は神作のラッシュすぎて、、、笑。"2月の作品だけで年間ベストアルバムを選ばなければ死ぬ" という呪いにかかっても全然大丈夫だった。(何が????)

2021年がまだ続くとは思えないくらい、私にとっての名盤が凝縮されたような1ヶ月。毎月ベスト10を選んでるけど、今月は10枚に収めることが無理すぎてた...(TT)。

2021年2月ベストアルバム、超超超最高な作品のTOP10の感想をランキングで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. Puma Blue - "In Praise of Shadows"

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ビタースウィートなイケメン

 Nick HakimRiver Tiberみたいに陶酔が半端ないネオソウル。2018年のMoon Undah Waterのころから才能が本当にやばくて、デビューALがめちゃめちゃ待ち遠しかったアーティストの一人だったけど、やっぱりすごくすごく最高だった。ビタースウィートを極めまくった とことんディープなベッドルームのVelvet Leaves (M3)、ゆらゆら揺れるジャジーなグルーヴでメロメロが止まらなくなるAlready Falling (M5)、そして持ち前のローファイにストリングスをプラスさせてしまうオリジナル性のレベルアップ(Sheets (M6))とか、美しさをさらに最強にしてしまうミニハープの装備(Is It Because (M10))とかまで...。ディープなエクスタシーをもっともっと追求したような最高の傑作、夜の静かな時間に飲むお酒のおつまみにぴったりすぎる...笑。RhyeとかMr Twin Sisterみたいに、シティ属性がめちゃ高いシックでモダンなボーカルを持ってるところが特にヤバいなって思う。Sweet Dreams (M1)、Cherish (Furs) (M2)、アルバム序盤からもう私の中の大好きがヒートアップする。2/5リリースの新譜のよかったランキングで5位にしてたけど...ごめんさい、もうちょっと上でした...笑。

ローファイでチルでジャジーでソウルなPuma Blue。中でも私は、打ち込み系のドラムで仕上げたベッドルームポップ的な部分がでかいなって思う。2曲目のCherish (Furs)とかがそう。作品がすごくコンパクトに感じるような印象になってると思うのだけど、このサイズ感がまたすごくすごくオシャレだなって。プレイリスト等で音楽を持ち歩くようになった今の時代によくマッチしてる。夜の静かな時間に聴くのもぴったりだけど、夜の街を徘徊するときのBGMにもぴったりそう。(最高の気分になれるのがよく想像できる 笑)

そして!Puma BlueがNick HakimやRiver Tiberの他のネオソウルと異なるところは!イケメンだというところ!!(爆)。Oil Slick (M8)のロックみたいなやつも明らかにイケメンだけど、Opiate (M11)とかBath House (M13)とかもイケメンだと思う。華やかなのにサウンドが悲しみの色を帯びてるような、とても綺麗でディープなサウンド。本当にカッコいい。歌がめっちゃ上手なのにギターもこんなに弾きこなして、、、打ち込み系のドラムのグルーヴもやっぱり超クール。めちゃめちゃ惚れる。ギターはソロプレイよりかはバッキングがメインだけど、個人的にはTash Sultanaのギターサウンドより好みだった。

Puma Blueさん、ローファイサウンドの達人なのに、今作はSuper Soft (M14)とかアコースティックスタイルになっても最強だった。もともとの素質が素晴らしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Blanck Mass - "In Ferneaux"

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ノイズハードコアのその先にあるもの

 2017年のWorld Eaterは、オペラの合唱のサンプリングを駆使したり、ハードコアの音楽が所有する痛みの感情を聖なるものとして捉えるような作家性があったと思う。激しいノイズのエネルギーにも神々しい美しさをプラスするようなサウンドメイキング。PharmakonやDeli Girlsとかみたいに、人間の負のエモーションを徹底的に描いたような芸術も素晴らしいと思うけど、個人的にはハードコアの好きな作品ならもうBlank Mass (Fuck Buttons)の右に出るものはありません...笑。心や感情、神秘的なもの、今作のBlanck Massもハードコアの中に聖なる世界をいっぱい持っていて私のツボに刺さりまくってた。Phase Iの序盤からエレクトロニックのバチバチな興奮を駆り立てていく。エネルギーが高密度に凝縮されたような激しさを持ってるのに、心に沁みるような丁寧な輝き。それらのメロディーが分裂し、光線となって二重螺旋のように絡み合うフレーズにはもう完全に心奪れる...。サウンドによるエネルギーの描写が本当にカッコよすぎると思う。そこから心臓に直接届くような灼熱のビートを叩きつけて、命が燃えたぎるような壮絶な刺激を与えていく...。まるで封印を解いて巨大な魔物を召喚するようなとてつもない魔法の瞬間。めちゃめちゃたまらない。アルバムの中にほんの少しでもこういうシーンを用意してくれただけで「ありがとう!!!泣」ってなる 笑。2017年のホステスのときみたいに夜中3時やるスタイルでも全然いいから、もう一回ライブを観たいって思った。

Phase IIも素晴らしい。耳の中が嵐に包まれるような強力なノイズアンビエントがある曲。音楽の物語が進むにつれ、そのノイズアンビエントの先にあるものが見えてくる。それは、Phase Iの序盤から繰り広げていたようなハードコアの世界とは正反対な平穏。過激なノイズをマイナスして、Blanck Massの特別な神々しさをもっともっと引き立てるようなアルバムの演出。1曲目に負けないくらいめちゃ最高だと思う。まるで天候が目まぐるしく変動するような大スケールの世界観。楽曲終盤のピアノのパートとか、私的には戦争が終結するような果てしないストーリーを感じて、もうめちゃめちゃに感動した...。非ハードコアな音楽性にも磨きをかけまくったような傑作。レベルアップしてたなと思う。

ジャケットの稲妻(?)のイメージもよかった。今作はPhase IIとかで、より音響的にもこだわったセンセーショナルさがあったと思うけど、そういう部分とぴったりマッチしてる。(前作みたいに血ついてるジャケとかあんまり好きじゃなかった...笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Smerz - "Believer"

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"Massive Attack女子"

 衝撃的なほどカッコいいダーク・エクスペリメンタルなエレクトロニカのやつ...!身体が麻痺するようなトランス系のハイなサウンド、クラシックバイオリンで引き出す負の感情、Andy Stottのような死の世界、そしてなんといっても "ザ・Massive Attack" な音楽のキャラクター...!自分がめっちゃ大好きな作風のやつだった 笑。タイトルトラックのBeliever (M3)とかほんとにヤバい。まさしくMassive Attack(クワガタ虫)そのままなグラビティの強い暗黒。少しグロテスクで怖いフレーズも持ってるのに、そこに民謡チックなバイオリンの綺麗なイメージを取り入れたり。不穏で不気味な雰囲気なのにとても美しくて、調和が破壊されるような特別な緊張感がある。本当にすごくすごく傑作。"Massive Attack女子"って雰囲気も猛烈にカッコいい 笑。Laurel Haloとかもそうだけど、ダークなのにどこか悲しみの美しい感情を抱えてるようなエレクトロニカってやっぱりめちゃ最高だなと思う。前作Have fun (2018)とか聴いたことなかったけど、Smerzのアルバムめちゃめちゃよかった。

Smerzの今作は、I don't talk about that much (M15)みたいにただ単純にダークな迫力があるだけじゃなく、攻めのスタイルから1歩引いたようなしっとり系の表現力もあるのがいいなって思う。5曲目のRainとかがそう。大枠はグルーヴィーなヒップホップ調の曲なのに、音楽を落ち着かせるようなストリングスの効果で音楽が異様な空気に仕上がってる。本当におもしろい。静と動のエモーショナルな抑揚、2曲目のMax (M2)とかもそうかなと思う。Oneohtrix Point Neverのような音圧の高いサウンドを出したと思えば、それがフワッと消えるような瞬間を大切に扱う感じ。前衛的だけど一貫して聴き心地のよさが保たれてる。そういうところも魅力的だと思った。

Smerz、去年でいうZora Jonesっぽかった。Zora Jonesよりも何倍も聴きやすかったけど 笑。(Zora Jonesの作品に対するコメント

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Cloud Nothings - "The Shadow I Remember"

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Attack On Memoryにかなり近い音(最高だー!笑)

 クラナシは、メロディー感とエモーショナルさでいえばやっぱりAttack On Memory (2012)Here And Nowhere Else (2014)かなと思ってる。ローファイが可愛い初期のTurning On (2010)とかも好きだし、Life Without Sound (2017)やLast Building Burning (2018)も刺さる曲があって好きだけど、私的はそのAttack On MemoryとHere And Nowhere Elseの二強が1番。今作のクラナシは!!そことかなり近い音がしてる!!!熱量の高いロックでありながら、Fall InやStay Useless (Attack On Memory)のときみたいな派手に盛らないプレーンな音作り、そして胸がいっぱいになる愛おしいメロディー...。Open Rain (M6)やAm I Something (M8)みたいな手数の多いハチャメチャなドラムとかもそう。BadcampリリースのThe Black Hole Understands (2020)では通気性の高いフレッシュなバンドサウンドを磨いていたけど、その実験的な経験がここに来て初期の頃の原点回帰に至ったみたいな。結果的にめちゃめちゃ大好きなクラナシになってた!笑。11曲目のThe Room It Wasとか最高すぎる。The Black Hole Understandsで培った切ないフィーリングがよく反映されてる感じ。こんなに激アツなロックなのに、メロディーに心をかき乱されて思わず泣きそうになってしまう。この人のロックは本当にピュアだなと思う。改めてクラナシ大好きだなって思わせてくれるような曲。「すごく最高だー!」って言いたい 笑。

The Room It Was (M11)もそうだけど、ネクストステージ要素でいうとやっぱりピアノ要素がとても大きいよなと思う。リードトラックのNothing Without You (M2)とか、今作最大のハイライトの感じ。結構大胆にピアノが入ってるのに、違和感がなさすぎてめちゃめちゃびっくりする。Macie Stewartのボーカルも本当にクラナシにぴったりハマってる。Psychic TraumaやI'm Not Part Of Me(Here And Nowhere Else)みたいに心が浄化されるようなエモさがあった。やっぱりとても傑作。声を大にして「最高だー!」って言いたい 笑。

私がクラナシに出会ったのは大学1年生の春(2014年)、Attack On Memoryが最初。Stay UselessとかI'm Not Part Of Meをめちゃリピートしてたのだけど、今作のThe Shadow I Rememberを聴いたときは、その頃の感覚にとても近いものがあった。2021年なのに、すごく懐かしい気分を味わったみたいに。...ということはやっぱり傑作であるということ!笑。去年のThe Black Hole Understandsより好きだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Mogwai - "As the Love Continues"

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失神するほどの爆音の演出

 空間が破壊されそうになるくらいアンプから爆音を出して、身体が宙に浮きそうになるくらい大量の音を埋めるライブ。そこには、理性をギリギリ保つか保たないかみたいな危ないところまでランナーズハイ的になるエクスタシーとか、自らに強烈なダメージを与えて実現するハードコアの瞑想みたいなところがあると思う 笑。The Armedなど、そのエクスタシーを強く求めるあまり失神しそうになるほど爆音を鳴らしたり、そういうポストロック・ハードコアってやっぱり本当に圧倒的...。でもMogwaiの今作みたいな爆音は、鼓膜へのダメージはあったとしても、The Armedとかみたいに耳に圧をかけるような窮屈な轟音とは違って、天にまで手が届くような美しいアップライズがあると思う。これが壮絶に綺麗でたまらない...。エレクトロニックな音の拡張(Ritchie Sacramento (M4))、プラネタリウム的音響(Dry Fantasy (M3), Fuck Off Money (M6))、さらにはストリングスを取り入れたオーケストラのステージ感(Flit (M8))...。ただガムシャラに爆音を発動させるのではなく、M83のようなニューゲイザー的演出があって、音楽一つ一つに感動のストーリーを持たせてるみたい。理性を失いそうになるくらいの激しい爆音が、その熱が、それらの感動をこれ以上ないくらい巨大に倍増させるという...。もうよすぎて泣きそうになる、、、笑。1曲目のTo the Bin My Friend,...からそう。「ようこそ、爆音の世界へ!(ドカーン!!)」みたいにスタートして、一気に持っていかれて、そこからストレートにカッコいいRide的シューゲイザーのパフォーマンスを繰り広げまくったり、フィナーレレベルの超大作ソングを連発したり...。もうたまらなくシビれる。臨場感が強いから尚更やばかった。

クールな印象とは打って変わってピュアなワクワク感があるSupposedly, We Were Nightmares (M10)とかも本当に大好きなのだけど、1番ツボったのは5曲目のDrive the Nailかなと思う。Mogwaiはベースも魅力的だけど、この曲に関してはドラムがすごく大活躍してる。曲の盛り上がりパートにおけるギターのダウンストロークとドラムのパンチのコンビネーション。リズム隊というバッキングの扱いではなく、完全にドラムの見せ場として用意されてる感じ、特別なパフォーマンス感があってすごくカッコいいなと思う。(というかほんと、全曲が最高のパフォーマンスだった)

ライブがよくイメージできる今作の臨場感は鳥肌がやばかった...。「いつかまたライブが観たい!」という希望を与えてくれる作品だったなと思う。なにより"ロック"がとっても輝いてた(≪大好き≫)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Katy Kirby - "Cool Dry Place"

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毎日のことを大切に思う

 Katy Kirbyの今作の大好きで大好きでたまらないところは、特別なことが起きないようなノーマルの日常ベースで音楽の物語が描かれているところ。それでありながら、それらのノーマルな日常のことを愛おしく大切に思うような観点を常に持っているところ。Juniper (M2)みたいにほっこり落ち着いてるムードの中で穏やかに踊ったり、Traffic! (M4)みたいに退屈な日々の中でもドラマを見出すようにして楽しんだり、Portals (M7)みたいに寂しい気持ちもロマンチックに消化してじっくり味わったり。休日の朝のコーヒータイムとか、お散歩の時間みたいにまったりしたリズム進行なのだけど、それらの一つ一つが多幸感に包まれるように満たされてる。それはまるで、ありきたりで一定の毎日の中にも感情を揺さぶるような刺激を生み出す魔法、人生のどの瞬間も肯定的に捉えるようなこれ以上ない幸せ。もうあまりにも大好きすぎてる。今日も明日も明後日も、これからの人生の全ての時間を大好きにさせてくれるような作品。感傷的なよさをたっぷり持ってる作品だと思うけど、去年のLomeldaとかよりも感傷レベルがキツすぎないバランスだから連続して聴いても全然大丈夫 笑。そういうところでもリピート性が高くて、確実に確実にベストアルバムだった。

余すことなく全曲好きだけど、1番好きかなと思うのが6曲目のSecret Language。ほっこり落ち着いてるムードの日常的音楽から、思い切りドラマチックにジャンプするような展開を持ってるナンバー。人生の日々を愛おしく大切に思うような今作のテーマをよりダイナミックに描いてる感じ。感動がとてつもなくてやばい。Juniper (M2)とかTraffic! (M4)とかのリードトラックのエモーションを積み重ねてくる流れになってたから、もう問答無用に号泣してしまう。短い曲だけど、この曲だけでもリピートしまくりたくなる。本当に素敵な歌。その後に来るCool Dry Placeもメロディーが完成されててやばかった。ラストスパートまでずっとずっと最高。めちゃめちゃ名盤だと思う。

自分の人生を退屈に思うことがたまにある。生きてることに満足感を得られなくて心が死んでしまうことがたまにある。それでも、Katy Kirbyのこの音楽みたいに、絶えず流れる日々のことをできればずっと愛おしく感じていたい。表面的でも別にいいから、ワクワクしたり、心をときめかしたり、いっぱい泣いたり笑ったり、人生のどの瞬間も大切に感じていたい。そういうことを実現してくれたKaty Kirbyは、私の永遠の憧れかなと思う。映画でいうところのアメリとかの感じ。ありきたりな毎日も特別になるような魔法。本当によすぎてびっくりした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Black Country, New Road - "For the First Time"

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奇跡のカオス

 バンドによる音楽の魅力は、メンバー達がオンタイムで同一の時間を共有し、それぞれが一体となって一つのアートを作るというところにあると思う。メロディーが感情を形取り、それらが伝達し合うネットワークが生まれ、その中で共鳴・増幅を起こし、一人では絶対に辿り着くことができない領域に至っていく...。私がBlack Country, New Roadのことが大好きで大好きでたまらないのは、そういったバンド演奏の特別感・バンド演奏の喜びがもう目一杯堪能できるところ!サックス、ストリングス、鍵盤...、フリーセッションスキルだけでなく不協和音など変則的な表現も体得した熟練のアンサンブル。Instrumental (M1)やOpus (M6)の呪文を唱えるような旋律、Athens, France (M2)の温かい光、Science Fair (M3)の衝撃的な恐ろしさ、そしてSunglasses (M4)のソウルフルな幸福...。それぞれのパートが交錯しながらメロディーが美しい反応を見せていく。エモーションのダイナミクスがより多様で、より多彩で、音楽性のバリエーションも豊かで、展開も本当におもしろくて...そして何よりめちゃめちゃカオス!笑。まるで神々しさを放つような未知の魔法性を秘めてるところもあったり。そういうスキルフルなアンサンブルを仲良し感MAXな若者7人が無限に楽しそうに演奏してしまうという...もう本当に泣けてくる、、、笑。素敵だし天才的だしカッコいいしで魅力が止まらない。技術を結集したアートとしてはもちろん、仲良し感が出てるバンドの人間味としても憧れを感じる一面がある。フロントマンIsaac Woodによる歌要素のバケモノ感もやばい(←ウルトラスーパー褒めてる)。ほんと、素晴らしいメンツだった。

Black Country, New Roadは洋楽ファンを虜にする特徴をいくつも持っていたと思う。Shellacのような古きよきロックのスタンス、black midiやBattlesのようなエキセントリックな刺激、90sポストロックのようなダークネス、GY!BEのようなスケールの大きい気迫、そして大まかな構成の中で各パートが自由にやり取りするようなジャズ的なお楽しみまで...。アルバムを通して聴いていくと色んなよさが見えてきて、色んな作品を連想して、結果的に色んな音楽の"好き"が再発していく。そしてそれらの音楽をまた聴き返して、またBC,NRに戻ってきて...。個人的には、ベース担当のTyler HydeUnderworldHydeの娘さんだというのを知ってからUnderworldばかり聴いてる 笑(そっち??笑)。ほんと、洋楽ファンの色んな"好き"にコネクトするような珠玉の作品だと思った。Bandcampのライブもめちゃ楽しかった。

私は高校の頃は弦楽部(ヴァイオリン・ビオラ・チェロ・コントラバスの編成で演奏する部活)に所属していたのだけど、そこには学校屈指の音楽のスペシャリストが集結していた。重度のクラシックオタク、作曲・編曲をこなすような音楽マニア、触ったことない楽器も数十分でマスターしてしまうようなテクニシャン、そしてどんなメロディーも一瞬でコピーしてしまうような天才中の天才...。彼らは楽器があればどこでも自由にセッションしてしまうような才能を持っていて、本当にいつも楽しそうで素敵だった。(私も鍛えられた)。BC.NRは、そんな音楽マニアによる素敵なセッションで終始成り立ってるような感じがする。あぁ...羨ましい。。。まるでとても運命的な出会いを果たした選ばれしグループみたい。そういうところも込み込みで本当に大好きだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. The Weather Station - "Ignorance"

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私を世界最高に幸せにするメロディー

 映画のような心に残るシーンをいくつも持ってるSharon Van Ettenの超絶名作Are We There (2014)と同じタイプのインディーフォーク。ウィスパーボイスやファルセットが特徴的な歌、そしてオーケストレーションやピアノをメインにした編成、ステータスで表すのなら、不純物0、天然成分100、透明感100、浸透性100、それらのエレガントでメロウな優しさ999,999,999...みたいな感じかなと思う 笑。そんな風なめちゃめちゃ高尚な音楽性でもう十分最高なのに、上品なアレンジでポピュラーソングを大人風にモデルチェンジしてみせたり(Tried to Tell You (M3), Separated (M6))、音楽にストーリー・ドラマを存分に与えて楽曲の密度や作品のインパクトを高めたり(Robber (M1), Wear (M7))...、もうやってることがとにかく全部本当に素晴らしぎてる、、、笑。それはまるで、音楽から得られる美しさやロマンスなど、私達が愛してるそれらの喜びを、もっと愛おしくかけがえのないものにグレードアップさせるような最強のテクニック。エレガントでメロウで超ハイレベルに美しい音楽なのに、それらの音楽体験をもっと特別なものに仕上げるとか...泣。Sufjan Stevensとかのインディーフォークもそうだけど、そういう音楽鑑賞の特別な工夫を意識してるアーティストのことが1番好き。前評判が高すぎて作品鑑賞前から身構えてしまっていたけど、それらのハードルも吹っ飛ぶくらいの傑作。すごくすごく素晴らしかった。

モダンジャズ系の豊かなサックス、シャイニーなピアノ、ふわふわのクラリネット、そしてエクスタシーがやばすぎるファルセット...、サウンド1つ1つがとにかく素晴らしいなって思う。まるで風に乗って飛んでいくような美しい開放感を持ってる感じ。本当に本当に癒し的で、メロディーが心に届くだけで簡単に泣いてしまう。それって本当にすさまじいことだと思う。全体を通じてすごく大人びてる作風だけど、音楽を暗くしすぎないダンサブルなドラムワークとかもすごく最高。音楽を優しくライトアップしててたまらない、オルタネイティブロックっぽいニュアンスもやっぱりとてもツボった。

今作で1番感動しすぎて死にそうになったのが、10曲目のSubdivisions。今作の上品で高尚なフォークの作風の中でも、祈りや願い、それらの聖なる感情がもっともっと強く込められてるようなナンバー。The Weather Stationのエレガントでメロウな至高の音楽が、迷いや不安、精神的な苦悩を解放するために思い切り作用するようなところがあって、目ん玉の神経がイカれるくらい泣いてしまう。本当にありえない。それはまるで、自分自身が感じている罪だとか、自分に自信を持てないところとか、そういうものが全て許される瞬間を味わうみたい。ピアノの輝き、ファルセットのエクスタシー、このメロディーで私は世界最高に幸せになれる。ものすっっっごく名曲。音楽の高らかなエモーションをさらに倍加させるような歌詞もやばすぎてた。

Fleet foxes、Feist、War On The Drugみたいなのカントリー・フォーク要素、それプラスでバロックポップ、ジャズの雰囲気とかも。The Weather Stationの今作は本当に猛烈に大好きだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Julien Baker - "Little Oblivions"

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生命力を与える音楽の光

 Julien Bakerといえば、暗闇の世界に光を灯すようにして、音楽に込めた思いを力いっぱい咲き誇らせるようなアーティスト。その光は儚くて、エモーショナルで、とても生命力に満ちてると思う。エレキギターの弾き語りスタイルでも100点満点に素晴らしいのに、今作Little Oblivionは充実感の半端ないバンドの形態...。光属性の性質をそのまま、もっとロックに、もっとパワフルに、もっとカッコよくなっててもう。。。笑。マジでめちゃめちゃ大好き。シューゲイザーな轟音があるHardline (M1)、心が躍るような最高のグルーヴのBloodshot (M6)、ライブ映えがヤバそうなRepeat (M10)...。スケールが大きくてワクワクが止まらないような作風だし、暗闇の中で光を灯すような歌やギターのそのメロディーを、もっともっと力強く掲げてる感じが本当にグッとくる。その力強さはまるで、傷ついた状態から立ち上がって希望を噛みしめるような精神的な強さ。このアルバムを聴くだけで、それらの正のエネルギーを満タンにチャージできる。バンドになったことでThe NationalやLocal Nativesのような自然派ロックの音像を持ち始めてきたところもツボすぎた。先行曲を一切聞かず、リリースの日までめっちゃドキドキしながらスタンバってたけど、期待を全く裏切らない最高の作品。本当によかった。

バンド形態が特徴的だったJulien Bakerの今作、Song in E (M)のようなバラードも神だった。バッキングにピアノを採用した従来の弾き語りスタイル。アルバムがワクワク感の強いポジティブな作風なのも相まって、音楽の光が自分に生命力を与えるように作用するのが本当にやばい。自分の心にダイレクトに響きまくるようなその光を感じてたまらない気持ちになる。ライブだと一体どうなってしまうんだろう。想像しただけで泣きそうになってしまった。

私の数少ない自慢の一つに、「Julien Bakerと同い年」というのがある 笑。こんなスーパー最高なSSWと同い年とか、もうなんか光栄すぎてすごく元気が出てくる。注文したレコードが届いてテンションが爆上がりになってた 笑。(いっぱい聴きますね。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Cassandra Jenkins - "An Overview on Phenomenal Nature"

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「目を閉じて。3つ数えるね。深呼吸して...」

 心や感情のことを深く愛してる。怒りや憎しみ、希望や愛とかも、自分が持っている "感覚"のことを深く深く愛している。なぜならば、それは自分が生きていることを確立してくれるもので、私自身そのものでもあるから。ものに手を触れると、その"もの"は私に触覚の反応を返してくれる。目には光が、耳からは様々なlifeが、私に生きてることのリアリティをくれる。自分の存在が理解不可能な漠然とした何かに承認されるような、これ以上ないほどの絶対的な安心感。それは、私が思う喜びや幸せの本質な部分、自己肯定感の究極的なものだと思う。Cassandra Jenkinsの今作は、音楽のイマジネーションの世界の中で、私が愛しているその"感覚"を、それらの究極的な喜びを私にたくさんくれた。音楽性のキャラクターは例えるなら、「Destroyer + Sandro Perri (In Another Life)」みたいな状態に映画音楽系の充実性も取り入れたような感じ。音のテクスチャはとてもクリアで、メロディーはとてもメロウで、それでありがら和やかな表情を持っていて、ピュアで、とてもとてもあったかくて。インストゥルメンタル形式の環境音楽的アプローチ、オーケストレーションからエレクトロニカまで自在な引き出し、音楽の豊かさを最大限まで引き出すような表現力も神がかってたり。それらの音楽性は総合的に、私が最も親しみを感じる自然的なイメージとなって表れた。澄み渡った空のイメージ、流れ渡る風のイメージ、広大で力強い大地のイメージ、そして温もりを感じる日の光のイメージ...。風、空気、匂い、体温、ジャケットの神秘的なPurple Noonの瞬間の世界観ももちろんプラスで、それらのイメージが一つになって、私に"感覚"をくれた。もう3曲目のHard Driveでボロボロになるまで泣いた。涙が本当に止まらなくなってた。メロディーが遠くに伸びていくのに、リスナーの傍に寄り添ってくれるような距離の近さも感じさせる超絶的なニュアンス。「目を閉じて。3つ数えるね。深呼吸して...」「one, two, theree...」...もう頭がおかしくなるくらい美しい。"The mind is just hard drive."、センスがあまりにも、あまりにも神すぎてる。本当に死ぬほど尊い。この曲を聴いてずっとずっと泣いてしまったのだけど、私の心は気づかないうちに疲弊していたのかもしれない。人との出会いが制限されるような状況の中で、無意識に無理をして、知らぬ間にストレスをため込んでいたのかもしれない。この作品を鑑賞して、正直な自分と向き合った。溜め込んでいた苦しみが一気に消し飛ぶような、圧倒的な幸せを得た。『心に沁みる』、これに尽きるかなと思う。死ぬほどツボにハマる作品。外に出ることが十分にできていなかった昨今、外の世界の感覚をリアルに見せてくれた部分がめちゃめちゃ大きかったなって思う。死んだ心を蘇らせるような作品、Cassandra Jenkins本当にありがとう。

今月はThe Weather StationやKaty Kirby、私にとっての年間ベスト1位クラスの作品が何枚もリリースされててめちゃめちゃヤバかったけど、Cassandra Jenkinsの今作はそれらを包含してしまった...笑。これはちょっとやばすぎる。1曲目のMichelangeloとかそう。声質の柔らかいメロウな歌、日常に浸透していくような愛おしいビジョン...。The Weather Stationのよさ、Katy Kirbyのよさ、それぞれが持っていたよさをこの1曲目だけでゲットできてしまうなんて...笑。夕日の景観が目に映るような、ロマンチックでドラマチックなフィーリングをいっぱい堪能できて、この1曲目だけでも素晴らしかった。

5曲目のAmbiguous Norway (M5)とかも本当に本当に素晴らしい。感情に直接作用する音楽のエネルギーをより神秘的に魔法的にデザインしたような曲。Hard Driveとかそれまでの曲で感じていたアルバムの世界観・イメージに対する愛がもっともっと確固たるものにレベルアップする。Destroyer + Sandro Perriな究極的にメロウな音楽性、日常を飾る人生のサントラ的音楽性、それらにもっと神秘的に魔法的に印象付けるとか...、もう本当に好きすぎて失神しそうになる。とてつもなく素晴らしい。この世界で私が愛してるありとあらゆるものが詰め込まれてるような感じ。どう考えてもベストアルバムにならないわけがなかった。

ラストのThe Ramble (M7)も最最最高。ヘブンリーな余韻をこれでもかと言うくらいリスナーに届けてくれるフィナーレ。Hard DriveやAmbiguous Norwayで目ん玉がギタギタになっている状態で、さらにワンランク上の癒しを受け取るという。鳥達と一緒に空を飛行するサックスのメロディーが神々しく輝いてる。ほんと、Cassandra Jenkinsどこまでも素晴らしかった。

音楽が好き、というかは芸術が好き。というか、何かを鑑賞することが好き。それはすなわち、この世のありとあらゆるものに価値を見出そうとすること、人生を最高に楽しもうとすること。人間の持つ感覚は、そういった行為の原点にあたるものだと思う。私が心から憧れてるそれを、愛して止まないその感覚を、そのマインドを、Cassandra Jenkinsは「just hard drive」と呼ぶ。そう、それはただのハードドライブ...。そんな"ただのハードドライブ"のことを、私は死ぬほど愛してる。死ぬまで一生愛してる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

プレイリスト

Apple Music ↓

温の「2021年2月ベストアルバム(温)」をApple Musicで

Sportify ↓

open.spotify.com

 

 

 

その他とてもよかったもの

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Balthazar - "Sand"

Camera - "Prosthuman"

Claud - "Super Monster"

Django Django - "Glowing in the Dark"

King Gizzard & The Lizard Wizard - "L.W."

Lost Horizons - "In Quiet Moment"

Miss Grit - "Imposter - EP"

Mouse On Mars - "AAI"

Roosevelt - "Polydans"

SG Lewis - "times"

Tala Vala - "Modern Hysteric"

TV Priest - "Uppers"