アルバム感想(温)

My Favorite Music

「2021年11月ベストアルバムTOP10」感想

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今年も残すところあと1ヶ月...2021年ありがとう...ってしみじみ思いながら大好きな新譜をまとめてた 笑。来月は"「2020年下半期『月間ベストアルバムTOP10』から漏れてしまったベストアルバムTOP10」感想"も書こうかなと思う。

今月のスーパー大好きな新譜TOP10の感想をランキングで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. Mr Twin Sister - "Al Mundo Azul"

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無敵の幸せオシャレ

 もし私がこの世で最も美しいものは何と聞かれたら、Mr Twin SisterのMr Twin Sister (2014)って答えると思う。私が思う、この世で最も美しい音、最も美しい形をした音楽。冗談抜きで、私が死ぬほど好きなアルバムの1つ。彼らのオルタネイティブロックには、Twin SisterからMr Twin Sisterへ改名後は特に、シティポップやジャズフュージョンに宿る高級感やエレガンスをこれ以上ないほど抽出したみたいな作家性があって、細部の細部まで精製した彫刻品のような、息もできなくなるほど心奪われるものがあった。(彼らの音楽で私が今までに何度窒息死しかけたことか...。)今作Al Mundo Azulは、そんな芸術性・美術性を極めたみたいなMr Twin Sisterの音楽スキルでもって、それらをハイレベルなオシャレのために注力したような、前衛的でとてもアーティスティックなダンストラックになってたと思う。ボーカルAndrea Estellaのメロウで高尚な歌声、艶やかなサウンドのテクスチャ、信じられないほど綺麗な透明感を放つサウンドスケープ...。それらの特性がグルーヴィーなダンスのアレンジによってイメージを変化させ、よりファッショナブルでよりポップな方向へ発展したみたい。美しさのあまり窒息しそうになるMr Twin Sisterの感覚は変わらず、その上で音楽がポジティブなモチベーションを獲得したような感じもする。こちらの作風でも たまらなく贅沢な幸せがあった。。。笑。2曲目のExpressionsとか本当にヤバい。Mr Twin Sisterの艶やかさ・透明感がさっぱりとしたシャイニーさを生み出す瞬間。心が隅々まで浄化するサウンドなのに、ベースのスラップはダイレクトにリスナーを弾ませ、ファンクやディスコのステージみたいに盛り上がっていく。Mr Twin Sisterのパーティーが始まる。あまりの幸福度にため息が漏れる。前作Salt (2018)の1曲目Keep On Mixingでもフロアをバチッバチにアげていくクラブミュージック性があったけど、今作のExpressionsはそれより幸福感が特化な仕上がり。私の中ではNatalie Pressと同じ無敵の幸せオシャレソングで、ほっこり過ごしたい朝とかにリピりまくりたい曲。実はMr Twin Sisterの本作はリリース前に楽しみすぎて夜も眠れなかったのだけど、実際このExpressionsで「ありがとうございます...ありがとうございます...」ってなってた 笑。美的なセンスのハイレベルなオシャレへの応用。6曲目のBallarinoとかもヤバかった。

ポジティブなモチベーションのダンスポップ、全体で見れば今作はMr Twin Sisterのテクニカルなところ(遊び心)が遠慮なく全開のアルバムだったなと思う。Fantasy (M1)ではスパニッシュなテーマとよくマッチする情熱と華のサウンドがしたり、Carmen (M4)はクラシカルなディスコなのにフレーズがやたらセンセーショナルだったり、Polvo (M7)では歌がずっとスペイン語だったり...笑。音の選別、曲単位で多岐に渡るコンセプト、全曲においてどこかに必ず独創性とトリッキーさが見いだせる感じ。Mr Twin Sisterが秘めていたエクスペリメンタルさがもっと吹っ切れたような楽しさ、前衛的でとてもアーティスティックなよさ、これもまた今作の贅沢なところだと思った。10曲目のDespoilとかも、Mr Twin Sisterにしかない至極のクリアネスをトリッキーなダンスポップに使ってて本当にテンション上がる 笑。前作Salt (2018)の延長的なところもあるような、作風の幅がさらに自由に広がったアルバム。ボーカルAndreaが元気そうで嬉しかった。

Mr Twin Sister (2014)ってマジで1ヶ月に1回は必ず聴くくらい、私の超絶ベストアルバムなのだけど、そういう大好きなアーティストの曲の手持ちが今作でまた増えたのめちゃ嬉しい。今回を機にSalt (2018)も聴き返したりして、2曲目のAlien FM神曲すぎるよなーとか改めて思ったり...笑。今作Al Mundo AzulではExpressions (M2)とBallarino (M6)が特にお気に入り。私における無敵の幸せオシャレソングだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Flight Facilities - "FOREVER"

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海外セレブの香水CM曲のような。

 例えばロサンゼルスの仲良しプロデューサー二人組によるClassixxであるとか、実力派DJによる精神的余裕たっぷりなディスコのやつってやっぱり最強のハピネスがあると思う 笑。テクノとかバチバチにクールなクラブミュージックよりも落ち着いたゆったりめのダンス。その気持ちよさに見合うようなポップでカラフルなフロアの演出。Flight Facilitiesの今作も私にとってそういう音楽の位置付けで、余裕たっぷりの最強なハピネスのディスコだと思ったけど、彼らのサウンドから得られるホットなエネルギーには何か病みつきになるような特別なものがあった。特徴的に言えば、都心のリッチな雰囲気のファッションビルとかで流れてそうな、あるいは海外セレブの香水のCMとかで使われてそうな、心地よくもハイレベルにオシャレなエレクトロニカの感じ。ニューウエーヴとかスペースディスコみたいな80sみの強い音楽よりもずっと垢抜けてるけど、洗練されたグルーヴには少し原始的な衝動のようなものを感じさせるし、シンセベースもエレクトロニックピアノもみんなほっかほかに暖まってる 笑。また、ジャケットが提示する砂漠、飛行機のメタリックな外面によって砂の色が反射したゴールドの色味、それらの空間だとかイメージとか、アルバムそのものが特殊なホットネスを体現してる。めちゃめちゃオシャレで気持ちいいだけでなく、アルバムの総合的な力でもって音楽のエモーションが熱を帯びて伝達してくるところが素晴らしいと思う。2曲目のWhat I Wantとか最高。必要最低限のスタイリッシュなまとまり、それが醸し出す安定感や余裕、ホットな感覚に仕上げたFlight Facilitiesのサウンドメイキング、それら諸々の要素を貫くBROODSのボーカルの歌...。ハイレベルなオシャレと熱を帯びたエモーション、私が今作のことが大好きな1番の要因といってもいい。このWhat I Wantはすごくリピートしてた。タイトルトラックのFOREVER (M7)もfeat. BROODSだし、BROODS大活躍の一作だと思う。

イケイケに攻めたハウスでもストリングスでオシャレさが崩れないLights Up (feat. Channel Tres) (M1)、ダンサブルなグルーヴと切ないメロディーが最高な反応を見せるHeavy (feat. Your Smith) (M3)、ダンスフロアの閉じた空間よりももっと果てしない空間が心沁みるAltitude (M5)、情熱的でカッコいい曲調でもハマってるWait & See (feat. BRUX)...。今作は抜かりなく全曲一丁前な完成度なアルバムだと思うけど、feat. Emma LouiseのラストIf Only I Could (M11)は案の定格別だった...。私Emma Louiseマジで超絶に大好きで、2018年のLilac Everythingとかリリース同年現地オーストラリア(パースだけど)で購入するくらいにはむちゃくちゃベストアルバムだったのだけど、Flight FacilitiesといえばEmma Louise~なところはあるし、今作のもう一つの傑作ソングだったと思う...!What I Want (M2)とかで見せていたスタイリッシュな印象よりも、より派手めに豪華にラストを飾った1曲の感じ。コーラスがこれまた華やかだし、それがFlight Facilitiesのホットなサウンドで情熱的なカラーに染まってるところにグッとくる。全体を通じてFlight Facilitiesの今作は余裕感のある自信作だった気がするけど、"FOREVER"というタイトルに込めた彼らの音を、最後この曲で締めるっていうのがすごくいい。MarthaGunnとかと同じ、ビーチで聴きたい曲。夏が恋しい冬に聴いてもいい曲だった。

アーティストが自身のシンボルを大々的にアルバムジャケットにするタイプの作品ってカッコいいと思う。去年だとDisclosureとか興奮してた。今作の場合、砂漠ってモチーフでここまで音楽のオシャレさと適合させるなんて本当にハイセンスだなって思う。その中でも飛行機の存在がとてもでかい。外見的にも内容的にもハマれる作品だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. boys be kko - "Hensa"

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安心感と呪いの二つの支配

 ジャケットは全然好きじゃないし、もしかしたらワーストなのだけど、それでも聴いてみてそんなジャケットでも大好きにさせるような音楽だったのだとしたら、それはほんとに正真正銘に素晴らしいアルバムなのだと思う。まさかこんな、ミステリアスなインパクトで心臓が掴まれそうになるハウスのエレクトロニカだとは思ってなかった...笑。日本の風土を反映したような新鮮な空気感とか、眠りからぼんやり目を覚ましたときのようなぬくい質感のシンセとか、気持ちが落ち着く平和的で穏やかな雰囲気の音楽なのに、いつも霊妙なオーラを纏っていて、音楽の背後に人知を超越した存在があって、穏やかな雰囲気に反するようなシリアスと緊張を含んでる。それは例えるなら、音楽的居心地のよさとしての夢中と、不思議なものに対する興味で他の何も手に着かなくなるような夢中と、安心感と呪いの二つについての支配があるもの。初めてジャケットを見たときは何の期待も浮かばなかったけど、いざ聴いてみたらツボみがすごくすごく深かった...笑。このワールドめちゃめちゃ好き。Chad's Ra (M2)ではそのインパクトに鳥肌が立ちまくる。1曲目のOregelisの朝日が沁みるようなシーンの次で、意識が覚醒するような神秘と出会う曲。曲調的にはRobag Wruhmeっぽい優しいエレクトロニカだけど、シンセの漂流と低音の引力で不気味なフィーリングを作用させながら、途中にものすごく聖なるコーラスを発生させる。しかもダンスフロアを意識した音楽的ピークの設定とも重ねて、それらの不思議・不気味・神秘に対して興奮のニュアンスも付与したり。圧倒的に素晴らしすぎてびっくりした。ジャケットの外観的にはDan Deaconとかみたいな愉快爽快エレクトロニカだと思ってたら、その逆だったし、ていうかもはや逆どころではなかった。ほんと、神経が引きつってゾッとする恐ろしさにすら見舞われる、明るく元気なジャケットの見方が180度変わる。想像を超えるよさとはまさにこのとこだって思う。そういう、自分にとってびっくりするほど素晴らしい曲がMago (M3)、Bias Japan (M7)、Ano Kyo Ku (M9)とたくさんあった。boys be kkoことRyunosuke Hayashiのプロジェクトということで日本作品だけど、ダントツに大好きだった。

5曲目のThwimmyは恐ろしが薄くて聴きやすい曲だけど、こちらも世界観が濃くてすごくツボる。この曲もChad's Ra (M2)にあった聖なる女性ボーカルがあるけど、アルバムが全体的に持ってる神秘的なテーマの中でも、こちらのThwimmyはとても天国的。メロディックなシンセは歓迎のように、ダンスは祝福のように、音楽の神秘的な作用が全部リスナーの幸せに直結していく。Chad's Ra (M2)とは別の質の夢中。この曲も素晴らしくて見逃せなかった。サンプリング含め日本的なアレンジの部分もこれまた美美しい。ほんと、ジャケットの第一印象が全て吹っ飛ぶよさだった...笑(ごめん 泣)

もともとエレクトロニカは非人間的な音楽であるという点で、血の通わないような冷たさであったり、非生命的な死の感覚だったりというものを本質に所持しているものだと思う。boys be kkoの本作は、エレクトロニカのその冷たい(クールな)性質がとても見事に機能してた作品だった気がする。優しくてソフトな感触のシンセをよく起用した癒し系のエレクトロニカなのに、そこに神秘的で非人間的なモチーフがたくさん散りばめられていて、エレクトロニカの味わいがよさが複数に重なる感じ。居心地と興味、安心感と呪い、音楽に対する引力の倍加、強力な夢中。boys be kkoSNS覗いてみたらラーメンの投稿ばっかりだったけど、なんか人間的にも好きになってきたかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Nation of Language - "A Way Forward"

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シンセポップに宿る勇敢な意志

 リスナーに対して80sの感覚を蘇らせる再現系のポストパンク・ニューウェーヴ。それはアーティストが過去への憧憬と敬愛を込めたトリビュートの産物であり、何よりリスナーへ非現実感(非現在感)の喜びを最高に体感させてくれる音楽...。Black MarbleとかChor Boyとかと同様、Nation of Languageもそういった古き良き時代性を完璧に成したニューウェーヴ(シンセポップ)だったと思うけど、シンプルさとかチープさに磨きをかけたようなものすごく本格的な再現系音楽でありながら、80sらしい未来的な可能性のワクワクをしっかり噛み締めていて、何か巨大な希望を力強く掲げるような、シンセポップらしからぬリスナーの心に刺さるような勇敢な姿も持っていたと思う。Across That Fine Line (M2)では、前のめりになった進行力のあるグルーヴでリスナーを半端なくノリノリにさせつつ、タイミングよくギターでロックしたり、The Grey Commute (M5)ではシンプルでチープながらも何かに立ち向かうときのような広大な空間のシーンを見せたり、This Fractured Mind (M6)ではキュートな印象のシンセポップの中でリスナーの心を動かすような威力の高いフレーズを鳴らしたり...。何も飾らない純粋の賜物のようなシンセのサウンドは親しみ深く愛嬌があってこんなにもキュンキュンするのに、曲想的には勇気とか勝利とかそういうニュアンスが含まれていて、可愛いサウンドのイメージらしからぬカッコいい精神を持ってる感じ。特にThis Fractured Mind (M6)は、メロディーの "可愛いのにカッコいい" のそれが本当によすぎてた 笑。The Radio Dept.みたいに、ローファイとかチープさであるとかが ときめきとして最大に作用するようなシンセポップも間違いなく最高だけど、Nation of Languageの場合、そういう音の表情的な部分の可愛さはもちろん、アーティストが意志として持つカッコよさとのギャップ・バランスみたいなのが本当に素晴らしかった。ソウルフルなボーカルの存在感も大貢献してると思う。てかメンバー達の雰囲気がめちゃめちゃ好き...笑。自分でも意外なほどハマる本格派ニューウェーヴだった。

9曲目のA Word & a Waveとかもめちゃめちゃいい。リスナーをハイにさせるようにソフトなシンセが点滅して鳴り響き、点の連続が遠くまで続く1本の線を作っていく。光が道となる。こんなにもピコピコしててかわいいのに、音楽に対する態度は真剣で、その道はとてもホーリーな印象すらも思わせた。ただの再現系ニューウェーヴでは、この道は切り開けない。この尊さは描けない。A Word & a Wave (M9)は私にそんなことを訴えた。楽しいのにシンセポップとは思えないような深みと重み。気軽に摂取したい曲でありながら、じっくりと聴き込みたいような曲。やっぱりNation of Languageはただの再現系ニューウェーヴではなかったと思う。サウンドメインキングも歌もすごく感動してた。

古き良き時代のよさを提唱する80s作品は、ここ10年少しの現代の混沌とした世界の中で、理想であったり、正解であったり、今を生きる人達が求める真実のようなものを見せてくれる世界観があると思う。非現実(非現在)であることの憧憬と喜び。Nation of Languageは、その希望を追い求めたバンドだと思った。ニューウェーヴに対する真剣な態度、そして勇敢な音。This Fractured Mind (M6)とA Word & a Wave (M9)が私の超お気に入り。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Holy Other - "Lieve"

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闇に落ちることで生じるリバースの浮遊感

 Sunn O)))ドゥームメタルによる重低音マッサージであるとか、意図的に過度な音圧のグラビティをかけて実現できる癒しってあると思う。それはノイズでもサイケでもない特殊な快感で、ホットヨガであるとか、加重布団であるとか、あえて負荷をかけることで何倍ものリラックス効果を発揮するような類のもの。その中でもHoly Otherは、その過度な音圧によってブラックホールや深海のような とてつもなくディープでダークなリラックスを創造してるアンビエントダウンテンポだったと思う。一度飲み込まれたら絶対に抵抗できないような圧力と密度、闇に落ちることで生じるリバースの浮遊感、それらの衝撃的な気持ちよさと美しさの精神的ハイ。前作Held (2012)なんかは私の指折りのストレス発散ミュージックだったのだけど、今作Lieveの方は単なるストレス発散に留まらず、1曲1曲が持つ世界のバリエーションが広く、音楽的物語のスケールも大きく、癒しBGM以上にとても音楽的な充実のある作品だった。オリエンタルな弦楽器のメロディーが宗教的な意味合いを所有していくAbsolutes (M3)、癒しのダークに悲壮的なニュアンスも加わったようなHeartrendering (feat. NYX) (M4)、シュレッドされた音の崩壊が痛みの表現にもなるUp Heave (M5)、高速に震える音がディープでダークなリラックスの中で興奮を作るGroundless (feat. NYX) (M7)...。従来通りリスナーを飲み込んで無に帰すような音圧の音楽だけど、そのグラビティによるリスナーへの影響には様々な世界観があって、サウンドメイキングもリズムパターンも多様な表現と演出があって、これまでのHoly Otherのアンビエントダウンテンポとは別のドラマがあった。ジャケットのベッドは寝室ではなく、もっと非現実的な精神世界にも感じられてゾクゾクがヤバくなる。ダークめの音楽の中ではかなり上位の大好きさ...。特にNicolas JaarとかTim Heckerとか、スピリチュアル系のところが猛烈にハマる。あまりにも音圧の体感力がすごいから連続してリピートするようなアルバムではないけど、それに見合った印象に残る深い一発がある作品だと思った。

今作で1番好きだったのが9曲目のShudder。音圧のグラビティによって闇に落ちること、Holy Otherの音楽のことが改めて大好きだと思い知らされた曲。相変わらずディープな低音の闇の世界を繰り広げてるけど、その中で静かにバチバチと音を立ててる。闇の世界で小さな存在が鳴り響く。もうマジでハチャメチャにカッコいい、、、笑。Holy Otherの音楽は私にとってストレス発散的な感覚が強く、今までずっとそういう聴き方しかできていなかったけど、この曲で初めてHoly Otherのカッコよさに気付かされた。闇に落ちること、飲み込まれること、その体験・感覚に含まれる異質な気持ちよさ。快感と解放、アーティストが求める特別な何か。ドラマチックさが濃い今作の作風で、Holy Otherのそのアート性に気付かされた。ものすごく惹かれる。。。闇の要素が連想させる悲しみの感情、絶望、死、眠り、現実逃避、救済...。数々の感情と、数々のシーン、そして数々のドラマ。私にとっては前作Held (2012)以上にアルバム中のワールド数と鑑賞的内容度がとても大きかった。Holy Otherはもう、私の中で単なるストレス発散ミュージックじゃなくなった。今回の新譜すごくよかったと思う。

前作Held (2012)は、会社のお昼寝タイムとかに聴いてた。真っ黒の部屋の中で音に埋め尽くされるような体験、潰されるような音圧で信じ難い解放を得る。重低音エレクトロニカの名作であり、ストレス発散ミュージックとしても傑作。今作もそんな"Holy Other"な音がいっぱいしてて嬉しかった。また彼の音楽が無性に聴きたくなって我慢できなくなったときとかは、イコライザーの設定で低音をアップさせて聴くのもありだって思う 笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. OVLOV - "Buds"

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灼熱のギターの刹那

 (過去作Tru (2018)のリリース当初、気になっていながらも結局スルーしてしまったあのときの私よ......聞こえていますか......それはスルーしたら絶対にいけません......(TT)(TT)笑)。今作Budsで初めてOvlovのことちゃんと鑑賞したのだけど、こんなにもめちゃめちゃに素晴らしいバンドを今まで見逃してたのか、、、ってすごくすごく後悔した。灼熱のギターノイズをクールに鳴らすようなガレージロック・パンク。皮膚が焼けそうになるくらい凄まじく高熱のロックなのに、その炎はどこか儚くて、切なくて、"今この瞬間だけ燃える"というような刹那すら感じさせる。ただ感情を激化させて攻撃的になるようなロックとは違う、燃え上がる中にもメランコリックな心があって、音を鳴らすときに何か大切なものを握りしめていたり、エモーショナルさを体現するための芯がちゃんと通ってるようなロック。2018年当時はまだサブスクをやっておらず、YouTubeでも試聴できなかったTru (2018)はレコードをオンラインショップのカートにまで移動させてたのに...あのとき最終的にポチらなかった自分を必死で呪いたくなる 泣。今作Buds (2021)もそんな灼熱のギターノイズが胸に響きまくるようなアルバムだったけど、爽快に駆け抜けてくドライブや心に沁みるさらりとしたメロディーなど、今作も見所満載な一作であった気がする。3曲目のLand of Steve-Oとか5曲目のStrokesとかとても好き。ギターノイズの炎はエンジンを点火させ、心に沁みるメロディーがドキドキを掻き立てて、推進力のあるグルーヴがリスナーの求める場所へ連れてってくれる。Ovlovのスピリットが行き届いたロックであり、聴くと最高に元気になるようなポップさもあるナンバー。Ovlov本当に最高...。今作でも もっともっと聴きまくりたいって思うような曲がたくさんあったし、ギターソロも格別でめちゃテンション高まる。30分未満と短いけど、見所ポイントが随所に用意されてるようなアルバムだった。

ラストのFeel the Pain (M8)に関してはドラムがマジで最高...!灼熱のギターノイズとしてのパワーだけでなく、手数の多い畳み掛けるようなドラムによるパワーの演出。2曲目のEat Moreにあったようなドラゴンの咆哮みたいなサウンドとはまた別の、ラストスパートまで力を込め続けるような激情がある。先月のGeeseみたいに歯を食いしばるようにして鳴らすドラムってやっぱりどうしようもないくらい心打たれまくるし、こういう曲って本当に素晴らしいと思う。ドラムの存在とコントラストを利かせたような女性ボーカルのしっとりしたメロディーの浮遊感もいい。なんといってもギターが格別なバンドだけど、Feel the Pain (M8)では+αでもう一つ感激させられた。

今作Buds (2021)も大好きだけど、正直なところ過去作Tru (2018)の方が好みかもしれない...。こんな最高な作品をスルーしてたのマジでかなり悔しい...泣。フィジカル超欲しくなって色々見てみたけど、どのショップでも廃盤だった 泣。泣きたくなる気持ちを抑えて、再びBudsを再生する。1曲目から何かが破裂するみたいにギターの灼熱が発生してドライブしていく。私を燃え上がらせる。今作Budsも素晴らしい、短いのがもったない。もっともっと聴きたかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Aurora Dee Raynes - "Invisible Things"

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情熱と充実

 音楽を鳴らすための情熱、そして音楽を鳴らすことの充実。伝えたい思いに熱を込めて、それを解き放つときの美しいフィーリングを忘れない。Aurora Dee Raynesのデビューアルバムの今作は、ジャジーでブルージーなテイストのR&B・ソウルだと思うのだけど、感情豊かな歌とビートのバイタリティと、ムーディーでメロディックな味わい深い陶酔感、それぞれの混合体のような音楽だったと思う。奏者個々のエネルギーが組み合わさるようなファンクチックなアンサンブルの印象もあれば、空間的な演出が高品質なしっとり沁み渡る気持ちよさのくつろぎ系音楽でもある感じ。グルーヴ的な面のよさでもサウンド的な面のよさでも二刀流してるみたいなところが最強だし、一般的なR&B・ソウルにはなさそうなオルタネイティブでエレクトロニックなスタイルもあったり...。私が相当大好きな作品だった 笑。ファンクロック的なパワーとバッキングのクールネスが最高に魅力的に交わるThe Letter (M1)、出だしのスピード感の時点でもう最高が確定しすぎてて笑っちゃうFind My Way (M4)、鍵盤楽器の瑞々しいメロディーがリスナーの心を奪いまくるようなBreak Free (M6)...。このBreak Free (M6)に関しては、美しさを思いっきり強調するようなスウィングの利いた揺らぎのグルーヴとかも本当にヤバい。曲が始まってメロディーが奏でられた瞬間に「やばーー(TT)」ってなる曲が多くて 笑、アルバムがよさを一定に維持し続けてる。さらに私的にはドラムとかパーカッション要素にもずっっっとツボってた 笑。ドラミングが自由なオルタナロックっぽさ、ジャジーな雰囲気の空間、情熱と充実。ジャケットもめちゃんめちゃ好き。

Aurora Dee Raynesの今作のハイライトは3曲目のCrazy That You Loveだったかなと思う。何かにじっと集中する手数の多いドラミング、今にも泣きそうになるような音楽の様相。R&B・ソウルの多感なフィーリングと、ファンキーな熱量と、ジャジーでブルージーな気品、それぞれが影響しあって生まれる、Aurora Dee Raynesのリアル。もうすごくすごく心に残る。アルバムの中でとても目立つような存在の曲で、他の曲よりもドラマチックだった。手数の多いドラムが大好きだけど、"どうして手数が多くなるのか"、"何に一生懸命になっているか"というところが、Aurora Dee Raynesのソウルによってもっとエモーショナルなものになってたと思う。ラスト11曲目のJazz Blanketも同様に傑作。こちらはインストゥルメンタルだけど、Aurora Dee Raynesの技術力とセンスがいかに素晴らしいのかが伺えるような曲。管楽器のメロディーがめちゃめちゃリッチ。。。ほんと、アルバムが最高を維持し続けてる。サウンドとグルーヴと全部大好きだった。

Aurora Dee Raynesってソロではなく6人組のプロジェクトらしい。大体R&B・ソウルのアーティストってグループのイメージがあまり無いのだけど、Aurora Dee Raynesは普通にバンドだった。...それを知るとなんだか好感度がさらに上がる...笑。アーティスト写真を確認してみたらびっくりするくらい私好みの感じ。ジャケットだけでなくメンバーについても惹かれるものがあるという強さ。音楽的にも当然いいわけだし、Aurora Dee Raynesすごく応援したくなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Snail Mail - "Valentine"

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メロディーがずっとずっと幸せ

 Snail Mailを聴くとマジで"🥺"の顔になる 笑。ロックの反抗・自由、ポップスのピュアネス・ロマンス、それらの二つの意志を一つに持った"ロマンチストなロッカー"…もうめちゃめちゃ最高じゃない??笑。弦を力強く掻き鳴らすようなギターヒーローとしての一面もあり、夜の情緒を表現するようなセンチメンタルソングの名手でもあり、それらの多様なエモさを兼ね備えた、本当に魅力満点のSSWだと思う。前作Lush (2018)はどちらかといえばインディーロック主体の作品だったと思うけど、今作はストリングスを大胆に採用した華やかさ最大のシンフォニックバラードとか、ロマンチックさにより着実な80s風インディーポップの強化とか、ヴィンテージ感をプラスするようにしてSnail Mailのポップをもっとグレードアップさせた作品だった気がする。前作で特徴的だったユースフルな愛おしさとかギターロックのスタンスをなくさず、より品良く素敵な方向性へ向かった作品の感じ…。とにかくメロディーが全て幸せすぎてもう。。。笑。グルーヴィーなポップなのが最高にオシャレなBen Franklin (M2)、Snail Mailならではのセンチメンタルなロックが炸裂するHeadlock (M3)、切なすぎて泣きそうになるくらいのラブソングなLight Blue (M4)...。ロックの曲でもずっとキラキラしてるし、アコースティックの弾き語りでも心に刺さりまくるし、夜景を脳内再生させるような最高に綺麗なサウンドスケープを誇ってる。そしてメロディーがずっとずっと幸せ。特に今作で、Snail MailことLindsey Jordanの歌声の素晴らしさを改めて思い知らされた。。。(喉お大事に。。。)ロックのときはちゃんとアグレッシブに歌うのに、そうでないときはどこか可憐な印象を感じさせる。幅広い感情の、とても人間的な魅力を放つ声質。メロディーがもっと幸せに味わえる声質。マジでSnail Mailのこともっともっと大好きになる。ロックにポップ、そしてバラード、彼女のよさがビシビシ伝わってくるような作品だった。

私的に、今作の特別さを決定付ける代表的な曲がやっぱりForever (Sailing) (M5)だったと思う。(この曲マジで大好き。。。笑)。Snail Mailのギターロック、センチメンタルなポップス・バラード、まさしく彼女のスキルが全て表れたようなイチオシの一曲な感じだけど、今作のメインテーマである「Valentine」の上品なスウィートネスが一番堪能できる曲だと思う。ギターの音色はJay SomのEverybody Works (2017)みたいにとてもセンセーショナルな響きをしてるけど、ファンタジックであるというよりかはノスタルジックなものとして機能してる感じで、レトロチックなムードとか、それらのヴィンテージな趣にたっぷり浸れる。Snail Mailが見せる、もう一段階上の幸せ...。Snail Mailのキャラクターはもちろん、オリジナリティとしても目立ったものがある気がする。というか、こういうForever (Sailing) (M5)で表れてるヴィンテージ感、アートワークで表現された「Valentine」のコンセプト、ピンク色のジャケットを着たLindseyの絵面だけで何か完璧に完成されてない?笑。そしてこの服尋常じゃないくらい素敵すぎない??!!泣。そんな彼女のアートワークを見ながら、またForever (Sailing) (M5)を聴いて酔いしれまくる。。。はー大好き。マジで「メロディー幸せかぁ」ってずっとツッコミながら聴いてた 笑。

個人的に今作のSnail Mailは少しシティポップ的にも捉えられたかも。夜の街を散歩してるときとかのBGMとして、自分の中の幸福感をチャージしたいときに聴きたいアルバムの一つ。2019年で言えばAlex G、2020年ならSoccer Mommyとかだったけど、今年におけるその枠はSnail Mailが最有力だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Penelope Isles - "Which Way to Happy"

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ベッドルームで独りきり、望みが全て叶う

 超特大ベッドルームポップによるスペクタル夢の世界。。。笑。Penelope Islesの今作は、ネオサイケデリアとかギターロックとかシューゲイザーとかアンビエントとか、強力なアプローチを駆使したドリーミーなファンタジーの圧倒的体験だったと思う。それは恋心だったり、夜空だったり、願いだったり、何かへの憧れだったり、夢の世界に関連する素敵なこと全て、大迫力にドラマチックに拡張する。胸が締め付けられるようなことも、美しいものも、何もかもが空間的にも感情的にもパワーアップさせて、私に襲い掛かってくる。もう多幸感がやばすぎる。。。エネルギッシュなロックでそれらの夢をパワフルに届けたり、ハイトーンボイスの歌でピュアネスを強烈に触発させたり、ときには洪水のようにドバドバと、ときには激しくガツンガツンと、リスナーにありったけのメロディーを与えていく。アルバムのどこをピックアップしても100%素晴らしいと思うのだけど、例えばMiss Moon (M6)とかめちゃめちゃに名曲。ドリーミー、サイケ、シューゲ、ローファイ、ありとあらゆる"夢"の欲張りセット。壮大でインパクトがあるのにひたすら優しくて、メロディーが流れるたびに心がズキズキする。。。このメロディーの幸福レベルは一体なんだろう、、、笑。恍惚が限界を超えて泣き叫びたくなるほどの壮大さがある。ベッドルームで独りきりでも、この音楽を再生すれば私はたちまち満たされる。この音楽を再生すれば、望みが全て叶うような夢の世界を満喫できる。もう大好きすぎて気絶しそう。夢想的な曲調なのにライブ的なスケール感があるところが最強なんだと思う。メロディーが全部ヤバいくらいキラキラしてた。私にとってはボリューミーで高密度な超大作のベッドルームポップだった。ロック系もバラード系もみんな完璧だった。

Sailing Still (M5)とSudoku (M7)みたいな安眠効果の強いナンバーもたまらない。ロック系の曲にはないディープさと重み、"夢"のメロディーに対するエクスタシーとサッドネスに心打たれて泣きそうになる。それは多幸感で嬉しくて泣きそうになるのか、あまりの美しさに耐えられなくなって泣きそうになるのか、はたまたどちらもなのか、私にはもう分からない。私の中で一体何が起きているのか分からない。もうエモくてエモくて仕方がなかった。パワフルなサウンドだけでなく、しっとりしたサウンドも丁寧に使いこなすダイナミクス的な部分でのエモーショナルさにも優れてる。6曲目のMiss Moonがもうバリバリに素晴らしいのに、5曲目も6曲目も超絶に名ソングで、もう5→6→7の流れが贅沢ウルトラコンボパンチすぎてた、、、笑。それでいて8曲目のHave You Heardもときめき大全開ロック&ポップスでヤバい。なんという最高の連続、、、。そんな中でも、Sailing Still (M5)とSudoku (M7)は特に眠れない夜とか、都会の街で独り寂しく思ってるときとか、そういうときに是非是非聞きたい曲だった。私にとってかけがえのないベッドルームポップ。こういうドリーミー成分が大量含まれてるウェットな曲ってめちゃめちゃ貴重だよなとも思う。

ドリーミー、サイケ、シューゲ、ローファイ、ありとあらゆるドラッグ音楽によるファンタジーというところだとCandy Clawsが神だと思う。彼らのCeres & Calypso in the Deep Time Forever (2013)とか死ぬほど好きなのだけど、私的にPenelope Islesの今作はそれにとても似てる作風だった。これはちょっとヤバい。メロディーというメロディーが本当に素晴らしすぎる。望みが全て叶うような夢の世界を満喫、ドリーミーなファンタジーの圧倒的体験。Terrified (M1)、Rocking At the Bottom (M2)のロックはもちろん、In a Cage (M11)のアンビエントまで、びっくりするくらい最高なアルバムだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Jon Hopkins - "Music for Psychedelic Therapy"

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この美しい概念の一部でありたい

 真の安らぎは永遠に手に入らない。それは「《もう自分は今ここで死んでもいい》」ということを心から認められる状態になることだから。それは自殺とは異なる、平常の状態で死の恐怖を乗り越えるということ。命を絶つときの恐怖を乗り越えるなんて、そんなことは到底不可能だと思う。『人は本当は幸せにはなれない』、欲望がいつまでも叶わないように、理想が常に打ち砕かれるように。そうやって私は、ときどき自分の人生が無価値なものであると感じてしまう。自分の心の傷は一生治せないのだと、そんな絶望を感じてしまう。Jon Hopkinsの今作は、フィールドレコーディングのサンプリングを織り交ぜたヒーリング特化のアンビエントでもって、そんな絶望を感じる私に、幸せになれないと傷だらけになっている私に、「それでも大丈夫だよ」と言ってくれる作品であった気がする。"どうすれば不安は解消されるのか" 、"本当に傷ついてる人を慰めるために音楽で何ができるのか"、それを本気で研究して、救済を必要としている人のために送る作品。環境音楽によるアプローチのTayos Caves, Ecuador (M2~M4)、瞑想によるアプローチのLove Flows over Us in Prismatic Waves~Deep in the Glowing Heart~Ascending, Dawn Sky (M5~M7)、そして"詩"によるアプローチのArriving~Sit Around the Fire (M8,M9)、どのチャプターも威力が異常なものだった。洞窟の中で雨音を感じて、自然の澄み渡った空気を吸って、巨大な重低音で無重力を体感して、照射される光に導かれてゆく。誰も影響が及ばない、私だけの絶対的なリラックス空間の創造と、大気圏を突破して宇宙へ到達するようなマインドのトリップ。Deep in the Glowing Heart (M6)を初めて聴いて、得体のしれない概念の、それでいて究極的に神秘的なあのエネルギーと出会ったとき、「《もう自分は今ここで死んでもいい》」と思える瞬間があった。Sit Around the Fire (M9)を聴いて、自分の人生の価値を思い出して"ありがとう"と心から思える瞬間があった。それは、私が彼の音楽を聴いて感じる、「大丈夫だよ」とか「心配しないでいいよ」というメッセージ。感動がありえないくらいバカでかくて、圧倒されて死にそうになって、満たされて満たされて満たされまくる音楽。もうたまらなく大好きだった。もともとImmunity (2013)のときから彼がリスナーのヒーリングを意識したアーティストだということは把握していたけど、今作ではアーティストというよりもう完全に、まさにセラピストだったなと思う。私にとっては、Floating PointsのPromises (2021)と同様、人知を超えるレベルの影響力を持っているような作品の一つだった。

音楽は時間の芸術で、時間変化、モーション、それらのエネルギーに関する芸術だと思う。Deep in the Glowing Heart (M6)は私にとってそういう曲だった。5曲目Love Flows over Us in Prismatic Wavesで大気圏まで上昇するように召された後、Deep in the Glowing Heart (M6)でとうとう宇宙に到達する。光と闇に挟まれる。マインドの世界の中で重力を克服する。落ちていって、昇っていって、回転する。そこにエネルギーを、得体の知れない何かを感じる。この感情は一体何なのだろうか、今私は本当に生きているのだろうか。私は、自分がこの神秘的な概念の一部であると信じたい。自分の命が絶たれて、この音楽を二度と味わうことができなくなっても、感覚を繋ぐための神経の信号が一生途絶えてても、この美しい概念の一部でありたい。...そんなことを強く願っていたら、涙腺がバグるみたいにしてずっとずっと泣いてしまっていた。私にとって真の安らぎを叶えようとする"幻覚セラピー (Music for Psychedelic Therapy)"。本当に、本当に、嬉しい音だった。導かれるような光の音と、それと逆方向に向かうような闇の音、それぞれがベクトルを持っていて、交わるように動いて、私にエネルギーを感じさせる。音の時間変化がもたらす、決して理解できない、実体を証明できないような存在。そんなエネルギーを感じられるということが、今作にとって最大のセラピーなのだと思った。この作品は本当に価値がある。Emmerald Rushとかフロアを沸かせるようなJon Hopkinsももちろん最高だけど、それとは全く違う内容でポテンシャルを発揮してるみたい。すごすぎる。もう恐ろしい。アーティストとして、人として、そしてセラピストとして、これからもずっと応援したいって、すごくすごく思った。

Sit Around the Fire (M9)ももちろん無視できない。Deep in the Glowing Heart (M6)であんなにもすさまじく素晴らしいことをしておいて、まだやるのって思う。ノマドランドみたいに、広大な土地の黄昏、焚火で暖を取るようなシーンを連想させるような曲。長旅の疲れを癒すように、緊張をほぐすように、そして固まった心をこじ開けるように、彼の渾身の和声を与えていく。そこに外の空気が流れてくるのを感じる。途中、本のページが風でめくれるようなサウンドが出てくるけど、私はそこで理性がぶち壊れるほど泣いてしまった。「あなたのlifeは大切なものだよ」という内容のリリックの曲の中で、その"lifeの大切さ"を表す情景を一発で体現したサウンド。冗談抜きでセンスが頭おかしすぎて狂ってると思う。何をどんなことをすればこんなシーンを生み出せるのか意味が分からない。ラストにこれを持ってくるという重み的な点でも強烈。個人的にはDeep in the Glowing Heart (M6)の次に大好きな曲だった。

泣いた泣いたしか言ってなくて頭悪い感想だけど、実はTayos Caves, Ecuador II(M3)でも思いっきり泣いてた。洞窟の中へ中へ。さっきまで聞こえていた雨の音はもう聞こえない。飲み込まれていく。現実のことを忘れて、誰も何も及ばないようなところで、それを信じて、音楽を聴いていく。それは私にとって一種の宇宙旅行でもあった。この壮絶な体験も、気が付いたらやっぱり涙が零れてた。本当に巨大な一撃の癒しだった。1曲目から9曲目まで、全てのチャプターがそれぞれ素晴らしかった。Deep in the Glowing Heart (M6)のあの感覚は、一生忘れないと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

プレイリスト

Apple Music ↓

温の「2021年11月ベストアルバム(温)」をApple Musicで

 

Spotify

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その他 とてもよかったもの

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Bent Knee - "Frosting"

chloe mk - "All the Same All OK"

Courtney Barnett - "Things Take Time, Take Time"

East Coast Low - "Seas on Fire"

Emma Ruth Rundle - "Engine of Hell"

Land of Talk - "Calming Night Partner - EP"

Mandy, Indiana - "... - EP"

Miłosz Pękala - "8 Pieces in Different Tempos"

Neev - "Currants - EP"

Pariss - "Soaked in Indigo Moonlight"

Sarah La Puerta - "Strange Parade"

Sun Dress - "The Return of Kid Laredo - EP"