アルバム感想(温)

My Favorite Music

「2021年6月ベストアルバムTOP10」感想

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今月はFaye Websterが待ち遠しすぎて過去作を毎日リピートしてた。リリースされた今はもう無敵。。。他にもFaye様以外にもチルアウトや爽やかインディーロックなど、夏の準備が万全になった月だったと思う。

今月の大好きof大好きの新譜トップ10の感想をランキングで
(1位レベルの作品が渋滞してた)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. Modest Mouse - "The Golden Casket"

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グルーヴィーでダンサブルなよさに特化

 「Modest Mouseのハッピーなディスコパンクってこんなに楽しいんだ...!」ってすごく感動した。自分が今まで聴いてたThe Lonesome Crowded West (1997)やThe Moon And Antarctica (2000)にはない、グルーヴィーでダンサブルなよさに特化したリードトラックがとても最強に完成されてる感じ。それらと相乗的なよさのメロディーやギターパートの出来上がりもすごい。アニコレやChk Chk Chk (!!!)みたいなハジけたおもしろさはもちろんだけど、私にとってもっとテンション上がるModest Mouseになってた。Fuck Your Acid Trip (M1)の進行力の高いグルーヴのやつから全力で大好き。Battlesみたいなトリッキーなサウンドとか、演奏から楽しさが滲み出てて思わずニヤニヤしちゃうのだけど 笑、そこに浸透性のあるセンチメンタルなエモを混ぜるというずるさ...。こういう不意打ちメロディック攻撃って絶対泣きそうになっちゃう。メロディーというよりギターの活躍のよさという点だと、4曲目のWalking And Runningもまた素晴らしい。ノイジーで切れ味抜群なサウンドでめちゃめちゃロックしまくるやつ。ただでさえ激アツなのに、後半で火に油を注ぐみたいにドラムがヒートアップしていくところが本当にむちゃくちゃカッコよくて、、、Modest Mouseでこんな内臓が突き破れそうになる興奮を味わったことなんてなかった 笑。他にも「いやもうLCD Soundsystemやん」ってツッコミたくなるWe Are Between (M2)とかも楽しい。アルバム前半だけでもかなりの満足感だった。

後半なら11曲目のJapanese Treesが最高だと思う。Modest Mouseらしくハッピーにハジけてるのに、温度感が変化して音楽が急にメランコリックになるのがとても美しい。The Moon And Antarctica (2000)でもGravity Rides Everythingとか切ない曲すごく好きだったけど、Japanese Treesのこっちはグルーヴィーでダンサブルなよさも合わせて堪能できる。エモさたっぷりでグッとくるナンバーだったと思う。

私の今年の抱負は「マイ1990年代ベストアルバムを作る」なのだけど、Modest Mouseもこの前The Lonesome Crowded West (1997)のCD買った。あの時代のパンキッシュなインパクトの感じのやつってやっぱりいいなーって思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Wolf Alice - "Blue Weekend"

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心臓が持ってかれそうなくらい興奮するライブ

 今作のWolf Aliceのロック&ポップスは、臨場感とかダイナミックさのヤバさがすごく印象的だったと思う 笑。宇宙を繰り広げるようなシューゲイザー、素敵な多幸感に包まれる80sポップ、そしてバチバチにカッコいい白熱のロックンロール・パンク...。どのスタイルもオーディエンスを魅了しまくるような最高のライブが感じられる演奏。1曲目The Beachからもう鳥肌がバーストしそうになってた 笑。エモーションを最高潮まで高めて噴火させるようなロックで、初見だと心臓が持ってかれそうなくらい興奮する曲。私は今作Blue Weekendは、雰囲気のあるメンバージャケを見たときから「さぞ名盤だろうな...!」って思ってたのだけど、このThe Beachの興奮でそれを確信できたと思う。感動しまくってもう泣きそうなってしまうライブのそれだし、アルバムの1曲目の掴みとしても完璧な感じ。そこからのDelicious Things (M2)、Lipstick On The Glass (M3)、Smile (M4)...と連続されるリードトラックも力作。特に私的には、今作で一番テンションが爆発するHow Can I Make It OK? (M6)から、パンキッシュにハジけまくるPlay The Greatest Hits (M7)の流れで完全に虜になってた。

Wolf Aliceの今作で一番好きなのは、ジャケットが与えるダークなイメージのように、エリー・ロウゼルのソウルフルなボーカルが、暗闇の中で光を放つような存在感を発揮しているところ。こういうところが本当にカッコよすぎると思う。Delicious Things (M2)、Lipstick On The Glass (M3)のリードトラックとかがそう。もともとシューゲイザーとしてもレベル高いバンドだし、ボーカルのパフォーマンス性のよさは前作からそうだったと思うけど、それでも今作は臨場感・ダイナミックさにさらに磨きがかかってて、ソウルフルで綺麗な歌の存在感、そこに付随するカッコよさがより強調された作風だったなって。そういった意味で、今作はエリー・ロウゼルというキャラクターの魅力をもっと実感できるアルバムだと思った。やっぱり名盤な感じする。暗めのシューゲイザーだけでなく、もちろん80sポップテイストの明るいワールドも好きだけど。

実は今作がリリースされた6/4の翌日の土日は京都に行ってて、このアルバムも新幹線に乗ってたときに聴いてた 笑。新幹線とか京都とかマジで小中学生以来だったしめちゃワクワクしてたのだけど、Wolf Aliceの今作は見事その思い出たちと結合したよね 笑。(音楽思い出効果。)Wolf Alice、2017年で話題になったときは着いていけてなかったのだけど、改めて過去作聴いたらめちゃよくて、今になってみると当時ハマれなかったの惜しいなって思う 泣(なぜハマらなかった)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. King Gizzard & The Lizard Wizard - "Butterfly 3000"

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ぽわぽわサイケサウンド

 今作のキンギザがとても新しのは、DTMの打ち込みスタイルで制作されたエレポップ系の作風だというところ!フジロックで見せた熱量の半端ないハードロック・メタルのアクト然り、ガレージ・サイケロックの王者的なバンドである彼らが、今度は持ち前のサイケスキルをもっとポップ路線で活用させてる感じ。もともとFishing for Fishies (2019)のときからメロディックなポップでも全く劣らず良いのは認知してたけど、今作のサイケサウンドのぽわぽわのメロディーはとりわけめちゃめちゃ最高だと思う 笑。グルーヴィーなモチベーションが音楽のハピネスに拍車をかけまくるYours (M1)、ぽわぽわのサウンドに奥ゆかしさのある品性までプラスしてるのがヤバすぎてるShanghai (M2)、そしてダンサブルなエレポップでもキンギザは最強なんだと決定づけたButterfly 3000 (M10)...。もうめちゃめちゃ素敵。メタル系のInfest the Rats' Nest (2019)より私が何倍にもツボに刺さる作風 笑。特に2曲目のShanghaiのメロディーのセンスとかどこまでも素晴らしいと思う。どこかオリエンタルな風情を感じさせるような美しさがあるけど、それらを愛らしいぽわぽわのサウンドに落とし込むなんて、やってることがとても天才だと思う。1曲目のYoursからのセットで尚お得。他にも、Dreams (M3)、Interior People (M5)、Catching Smoke (M6)、2.02 Killer Year (M7)、Ya Love (M9)などなど、他の曲もめちゃよかった。(もう全部じゃん)

こんなにも魅力的なサイケサウンドの音楽性を確立してるけど、そこに合わせてButterflyをシンボライズしたアルバムのコンセプトワークの部分もとても大きいと思う。アルバム一つで大きな一曲になってるような構成で、ぽわぽわサイケサウンドが作中ずっと奏でられてる中、それらのサイケのぽわぽわが、蝶々が美しく舞うような描写として特徴付けられてるイメージ。コンセプトワークがめちゃめちゃ素晴らしい。そういったことを意識して改めて2曲目のShanghaiとか聴いたりすると、もう心奪われるような圧倒的な感動さえ覚える。フジロックで観たハードロック・メタルのよさとは全く別次元のセンス。持ち前のサイケサウンドを応用しながら、こんなにもユニークなアートも作れるなんて...って思った。今作のキンギザもめちゃめちゃ最高だと思う。

キンギザのK.W.とL.W.の二作の音源がめちゃ欲しくて、2月にCD予約したのだけど、L.W.だけ販売終了になって、K.W.だけ手元に届いた、、、泣。でもディスクユニオンで売ってたんだね、全然知らなかった。(今はアマゾネスで注文した方を待ってる。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Lightning Bug - "A Color of the Sky"

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幻想的なサウンドをもっと本気出したとき

 Lightning Bugの上品なドリームポップ・シューゲイザーには、オールドムービーのようなロマンス、そして物思いにふけるような美しい時間を過ごしたくなる世界観があると思う。Land of Talkのようなじんわり暖かいソフトなシューゲイザーのThe Right Thing Is Hard To Do (M2)、ローファイの少し錆びついたような淡い音色のSeptember Song, pt. ii (M3)、中には激しい轟音で絶景を見せるようなI Lie Awake (M7)まで。音を可能な限り綺麗に見せるような反響とか、ドリーミーなサウンドの豊かさについて徹底的にこだわったような出来栄え。今作のLightning Bugの音楽が持つ情景も本当に素晴らしいと思う。特に私的にはWings of Desire (M4)みたいな静かなタイプの曲がとてつもなく大好き。ギターのアルペジオのドリーミーな音粒、今にも消えそうなくらい儚いAudrey Kangの歌。このとき、夕焼けと虹が重なったジャケットのビジュアルが機能して、私の中で音楽の世界がもっと完璧に完成された。まるでLightning Bugが奏でる全ての音の美しさがグレードアップするみたいなジャケットの効果が表れて、感動がめちゃめちゃ巨大になる感じ。もう全力で恋をするみたいに惹かれていく。途中で現れるエレクトロニックなサウンドも驚異的に綺麗。前作October Song (2019)の水平線の月が輝くジャケットのやつも言わずもがな大好きだったけど、今作のジャケットの方も予想以上の素晴らしさ。音楽の存在でジャケットがここまで特別に見えるとは思わなかった。

そういう音楽に対してのジャケットの機能という点でもそうだけど、今作で一番ヤバいのがタイトルトラックのA Color of the Sky (M9)だと思う。この曲は映画のサウンドトラックのようなインストルメンタルの特性を持った曲。October Song (2019)のときもでも幻想的なサウンドというところはLightning Bugは最強だったけど、この曲はもっと本気出してる。後半で長い長いあのフレーズが出てきたところで、死にそうになるくらい感動した。序盤のThe Right Thing Is Hard To Doとかからは考えられないくらいの深さと重さ。呼吸が止まるようなフレーズでサウンドや世界観のことをもっともっと素敵に見せていて、泣きそうになるくらい愛おしい気持ちでいっぱいになった。Lightning Bugやっぱり素晴らしい。 

October Song (2019)が秋のアルバムなのはそうとして、今作A Color of the Skyはジャケットの温度感的にも夏感のあるのアルバムだと思う。Floters (2015)などもあるけれど、これからまだ季節感をコンセプトとして持った作品を期待できるだろうか。妄想しただけでめちゃドキドキする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Lucy Dacus - "Home Video"

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躍動感溢れるパワーポップ

 クラシカルでノスタルジックな趣、大人びた包容力、それらの性質が詰まったLucy Dacusの至高の歌声...。彼女の音楽が唯一無二なのは、そういった上品で豊かな歌のキャラクターをロックとして活かしてる部分にあると思う。今までの音源だと私的にはYours & Mineとか、Lucyの歌の性質を高めるような丁度いいインディーロックのそれが泣きそうになるくらい大好きなのだけど、今作Home Videoのパワフルで存在感のあるロックのやつも大当たりだって思った。3曲目のFirst Timeとかめちゃめちゃよすぎてる。Lucyのエレガントな歌のキャラを保ったまま、ノイズをガンガン鳴らすギターとグルーヴィーなドラムを採用したパワーポップ型のやつ。(想像しただけで鳥肌。)とても透き通っていて、光り輝いてて、もっと生き生きとした躍動感が溢れてる。今までのAngel Olsenのようなメロウで濃厚な歌のイメージに反したフレッシュさがある新しさ。これはすごく名曲だと思う。まるでOso OsoのLucy Dacusバージョンみたい。イントロのギターのダウンストロークの感じだけでテンションがマックスになる。他にも、Hot & Heavy (M1)、Partner in Crime (M8)、Brando (M9)、Triple Dog Dare (M11)、パワフルなロック要素がある曲は全部ツボだった。特にBrandoのビートのノリノリなやつとか本当に楽しい。もちろんPhoebe Bridgers的ピアノが光ったバラードタイプもよかった。

ロック以外でいうとGoing Going Gone (M7)の存在がやっぱりとても目立ってたなと思う。Lucy DacusだけでなくJulien BakerやMitsukiがコーラスに参加した贅沢コラボ。こういうシンプルなアコースティックのLucy Dacusも本当に強い。とても繊細で、音がフェードアウトしていく余韻の細部まで心沁みる感じ。見事ワンテイクで仕上げて、レコーディングが終わったあとみんなで「わーい(^^)」ってやるのもめちゃかわいくて...笑。改めてこの界隈のSSW勢は全員大好きだなって思う。

Phoebe BridgersのPunisher (2020)、Julien BakerのLittle Oblivion (2021)、うまいことまたboygeniusの活動しないかなって思う。奇跡のようなスーパーバンドだから絶対観るの難しいけど、「それでもフェスとかで一斉に来日すれば...」って可能性を捨てきれてない。。。。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Allesandro Cortini - "SCURO CHIANO"

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ただただ果てしなさが存在している

 音楽鑑賞には孤独を楽しむという要素があると思う。自分の中だけのマイワールドを築き、イマジネーションを膨らませて、世界や人生の様々なことについて思いを巡らせていくようなかけがえのない時間。アナログシンセで構築するAlssandro CortiniのSF的アンビエントには、それらの"孤独の時間"をもっと壮絶に大スケールで与えるような素晴らしさがあると思う。今作CHIAROSCUROの体験も本当に凄まじい。集中力を研ぎ澄ますようなホワイトノイズのECCO (M1)からリスナーを現実からシャットダウンし、メイントラックであるCHIAROSCURO (M2)から彼の音楽の宇宙に導かれていく。その世界にはワクワクや高揚感があるわけではなく、恐怖があるわけでもなく、ただただ果てしなさが存在している。私はこれを聴くと、宇宙船に最後一人取り残された物語の主人公が、自分のことも誰だか分からなくなっていくように死んでいく様子とかを想像するのだけど、そんな世界観だからこそ描ける壮絶さがここにある。本当にとてつもない感動。静かに眠りにつくようなサウンドダイナミクス、ステレオの反響、細部まで「シンセサイザーの音をいかに美しく表現できるか」というところに注力していて、世界観の完成度が本当に高い。中盤でビリビリしたノイズの密度が増していくところも、なんて美しいんだろうって思った。すべてが無に感じられるような果てしない世界だからこそ、その中に何かエネルギーのようなものや生命の存在を感じられたとき、その神秘にとても心惹かれるのだと思う。同じタイプだとミステリアスな引力が魅力的なVERDE (M6)とかもそう。Alessandro Cortini大好きなのだけど、今作は特にお気に入りだった。

今作のネクストステージ的な部分だと、やっぱり7曲目のNESSUNOかなと思う。彼はゆっくり時間をかけて音楽を大きく重くしていくスキルに長けてると思うけど、この曲に関してはCHIAROSCURO (M2)やVERDE (M6)とは違うスピード感がある。今までにはなかったようなもっと緊迫感のある迫力の質。重たいシンセのエネルギーを高速で伝達させていくような描写がすさまじくカッコイイし、そこから得るゾクゾク感もこれまた最高....。なんなら、CHIAROSCURO (M2)よりも今作のメインな曲かもしれないって思うくらい。思わず音量を大にして、夢中になってヘッドホンの中をその音で埋め尽くしてた。

他にも、人間味が消滅したようなメカニカルな世界のCORRI (M4)とか、背筋が凍るようなTim HeckerのKonoyo的サウンドのSEMPRE (M5)とかもよかった。アナログシンセだけで構築するダークでシリアスなSF的ワールド、やっぱりAlessandro Cortiniのアンビエントはめちゃめちゃカッコいい。(6月11日新譜のランキング低くてごめん(__))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Japanese Break - "Jubilee"

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上品な甘さの完璧な味付け

 Japanese Breakfastのメロディックなドリームポップのデザート。柿のジャケットのオレンジのイメージ、ディスコが効いたハッピーなグルーヴ、そしてとってもピュアでスウィートなメロディー...。一見すると甘ったるい感じのポップスだけど、Japanese Breakfastの今作は、音楽をこってりすぎないようにエレクトリックの味付けは控えめに調整されてるし、ブラスやストリングスといった生楽器の自然素材を活かしたり、ファンク系のギターのパリッとしたテクスチャなども添付したりしていて、スウィートながらもとてもフレッシュに作られてる。この加減・バランスがとても素晴らしいと思う。"心にキュンと来るようなときめき"+"爽やかな心地よさ"のダブルな性質の素敵さ。1曲目のPaprikaからその素敵なフィーリングがもう止まらなくなる。可愛らしい行進曲のようなリズムワークはチルドレンミュージックのようなピュアな世界観を見せてるけど、対するオーケストレーションのバッキングはとてもエレガントで、心の中にそよ風を発生させるような清々しさを生み出してる。ものすごいワクワクとときめき量。ジャケットから作品がフルーツのコンセプトを持ってるということは事前に予想できてたけど、まさかこんなにも上品な甘さを持っていたなんて...。ディスコファンクのキラキラしたカラフルさをいっぱい出すBe Sweet (M2)とかも、アコースティックのさっぱり感とトロピカルな甘さを最高にミックスさせたKokomo, IN (M3)とかも、どの曲もすごくいい。後半でいうと、心温まるホットな甘さのIn Hell (M8)とか、胸を締め付けるような少しウェットな仕上がりのPosing For Cars (M10)とかも。正直に言ってしまうと、インディーロックな音楽性が目立ってた前作Soft Sounds From Another Planet (2017)は、発売当初にCDを買ったのにそこまでハマらなくて...。だけど今作は、ポップソングのデザートのフルコースみたいに自分にツボっててめちゃ大好きだった。

今作で特に最高すぎてたのが4曲目のSlide Tackle、この曲のよさはもう尋常じゃないって思う。ディスコファンクの1番調子いい感じにノってる最高にハッピーなグルーヴ。その中でエレクトリックのほどよいドリーミーさとカッティングギターのパリパリ感をブレンドさせてるのが本当に素晴らしすぎて、、、。まるで素敵なものに素敵なものを上乗せするみたいなサウンドのハマり方。そこからさらに畳み掛けるように、グッときまくるブラスのド派手な演出を用意してるとか、もう泣いちゃいそうになるんだけど...笑。まるで自分の心が晴れ渡るような、とても開放的なフィーリングスを与えてくれるメロディー。ダンサブルさ、ドリーミー要素、ギターの楽しさ、曲の展開のおもしろさ、それらのエモーショナルなメロディーの数々...こうやって書くとよさの詰め込み方がなかなかにハード。"上品でフレッシュなスウィートさ"という点でも今作を象徴してるリードトラックだと思った。

ロック的な観点だと、Sit (M6)みたいなシューゲイザー系も好きだった。あと今作でビビったのがPosing In Bondage (M5)の音響エレクトロニカ要素...。前作Soft Sounds From Another Planet (2017)でも今まで聴いたことないようなユニークなサウンドはあったかと思ったけど、このPosing In Bondageのサウンドは息を飲むほど美しいと思った。まるでジブリ映画のような世界観のニュアンス。ただでさえスウィートなドリームポップとしてのよさのレベルが高いのに、それだけでなく彼女はサウンドアーティストとしても一流なんだなと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Sault - "Nine"

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"光は手の中にある"

 ボロボロになって傷ついて自分自身のことを大切にできなくなったとき、それでも傍に寄り添って私のフィーリングに共感して、「大丈夫だよ」と言ってくれる音楽の存在のことが一体どれだけ有り難いことか。Untitled (Black Is)のEternal LifeやUntitled (Rise)のSon ShineといったSaultの音楽は私にとってそういう存在であり、それは私が自分自身を愛するために必要な一つの重要なパーツなのだと思う。今作Nineには、そういったEternal LifeやSon Shineに匹敵する曲としてLight's in Your Hands (M10)が用意されていて、もう心がギタギタされるみたいにありえないくらい泣きまくってしまった。涙が本当に止まらなくなる曲。暗闇を照らすようなピアノの響きは、自分がどれだけダメダメな存在でも歓迎してくれるような、祝福してくれるような、そういった類のものを含んでいる。"決して自分を見失わないで"、"いつでもやり直せるよ"、リスナーにこんなにも愛を届けることできること、そういったメロディーを作れること、本当に本当に素晴らしい。Saultの音楽はリスナーの心の傷を治癒する能力がズバ抜けてる。R&B・ソウルの愛は本当に強力。今作Nineもぶっちぎりのベストアルバムだった。

Light's in Your Hands (M10)以外でいっても もちろん素晴らしい。London Gangs (M2)やTrap Life (M3)のエキゾチックなカッコイイ系も最高なのだけど、私的には今作ではアルバム後半のムーディなトラックが特に刺さってた。ストリングスで美しいロマンスをいっぱいに与えるBitter Streets (M6)、スモーキーでメロウな甘さが本当にたまらないAlcohol (M7)、心がほっこり暖まるような癒しをくれる9 (M9)....。あまりに素晴らしいムードだから、スピーカーで流して部屋の中をそのムードで満たして最高の空間にしたくなる。極めつけはLittle SimzのフィーチャリングしたYou from London (M8)。ローファイのチルなビートトラックのフィーメルラップ。私はHip HopはAzealia BanksとかKreayshawn(あとはKero Kero Bonito)とかしか聴かないのだけど、Little Simzも本当に大好きで、You from Londonもすごくお気に入りだった。ムーディーなアルバムの中で聴くと尚大好きな味わい。

99日間限定の解禁、Bandcampでデジタルアルバムがフリーなのはどう考えてもダウンロードするでしょって思う 笑。てかLight's in Your Hands (M10)とか聴くと、「これが二度と聴けない」とか本当にありえないなって思うし。そんなのは絶対無理すぎるので、電光石火でダウンロードした。https://saultglobal.bandcamp.com/

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Faye Webster - "I Know I'm Funny haha"

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酒だ!酒を持ってきてください!!泣

 ~2021年上半期 私が選ぶ「最もお酒のおつまみにしたいアルバム賞」の金賞を受賞~。インディーフォーク・カントリーの"ロマンチックな脱力感"において、もうFaye Websterの右に出るものはいないよなって思う。空間をじんわり染めていくようなトロピカルなスライドギターの温もりの与え方、ほろ苦くて甘酸っぱい感情がギュッと保存されてるような音楽のムード...。特に今作は、去年からシングルカットされていたBetter Distractions (M1)やIn a Good Way (M4)の最強っぷりだけでなく、コーラスのきらめきを持った癒し(Cheers (M6))、スペースディスコのシンセようなコスミックな美しさ(A Dream With a Baseball Player (M9))など、フォーク・カントリー以外のニュースタイルも見られたり。今作も相変わらず、私の中でメロメロが爆発するようなサウンド・メロディーの宝庫みたいになってた。アルバムリリース前からよく聴いていたとはいえ、やっぱりIn a Good Wayの破壊力が強烈だなって思う。Faye Websterのロマンチックでメロメロな脱力の歌が、音楽の儚さを強調するような美しいブルーの色を帯びてる曲。Faye Websterというアーティストの感性・作家性が120%出てる私的今作ナンバーワンのトラック。こんなにも素敵な安らぎに溢れていて、こんなにも満たされるのに、メロディーがずっとずっと泣いているという凄まじさ。つられて私も泣きそうになる。"良い意味で泣けてくるね (you make me wanna cry in a good way)"の印象的な歌のフレーズ、それらをストリングスとハーモニーさせるエモーショナルさ、本当に全てが心に残りまくる。今作I Know I'm Funny hahaは、このIn a Good Wayが入っているというだけで私の中で大勝利が保証されてた。そしてシングルで聴くよりアルバムの中で聴く方がずっとよさを発揮していた。

Cheers (M6)も本当に素晴らしい。イントロのギターサウンドがJack Whiteみたいで自分でもびっくりするくらい興奮した 笑。まさかFaye Websterがこんなクールにロックするとは...!それでもFaye Websterのメロメロな癒し性は完全に失っておらず、また別の感じでアップデートされてる感じ。そのニュースタイルをバギーやバイクといったアイコンで特徴付けたMVもハイセンスすぎる。音楽性だけでなくアーティストとしての魅力が全開だということ。もうマジで大好きにならざるを得ないです。

Faye Websterの音楽には、キャッチーでメロディックな要素とか、楽曲の山場の部分(サビ)とか、そういうものを超えたよさを持ってると思う。それは言うなれば、"ロマンチックな脱力感の概念が音楽上にずっと存在している"というところ。"聴く"よりは"聞く"という音楽の感じ方。Better Distractions (M1)とかKind Of (M5)とか特にそれを味わってた。意識をぼーっとさせ、回転する円盤を眺めながら、音の余韻にただただ浸るというあの感じ...。そんなひと時だからこそ、レコードがウルトラハイパーぴったりな作品だと思うし、「酒だ!酒を持ってきてください!!泣」ってなる 笑。今作も全曲最高。中でもmei eharaとのコラボのOverslept (M10)はめちゃめちゃに衝撃的だった。(私の邦楽友達が大好きで自分も好きなアーティスト)。Faye Webster、早くレコード届いてほしい。(切実に)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Good Morning TV - "Small Talk"

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永遠にダラダラと過ごすキラキラした夏休みのあの感じ

 喫茶店で食べる素朴なナポリタンが、どの高級イタリアンのスパゲティよりも美味しく感じられるときがあるように、"特別でないものが何よりも特別に感じられる瞬間"というのがあると思う。何か小さなもので満たされるような、本当にちょっとしたことで「私の人生最高に幸せだ」って思えるような、嬉しさで胸がいっぱいになるやつ。私にとってGood Morning TVの今作がもうありえないくらいやばいのは、インディーポップの最高にチルってる音楽が、私の中でその"特別でないものの特別感"という最上級の幸せに達するから。表面的で雰囲気だけのチルアウトミュージックとは違う、もっと自分の人生における喜びの核心に触れるようなヤバさ。マジで私の中の"大好き"が無限に止まらなくて、今月脳みそがおかしくなるくらいリピってた。ドリーミーでサイケデリックな温熱、キラキラしててソフトなボーカルの響き。テロテロになってじんわり溶けていくような微ノイズと、清涼感や透明感に満ちたメロディーが合わさった史上最強レベルの素敵な心地よさ。そしてそれらを誰にも邪魔されず淡々と続けていくような絶対無敵の安らぎ・のんびり感。それはまるで、何の予定もなく永遠にダラダラと過ごすキラキラした夏休みのあの感覚にとても近い気がする。特にドラマチックなことが起きるわけじゃない、でもそれらの平凡な時間に一番満たされてるときのあの状態。青々とした空に浮かぶ夏雲と自分の存在がシンクロするようにして、ボーカルBérénice Deloireのたまらなく綺麗な浮遊感を得ていくのだけど、何か私の中で憧れているものがメーター吹っ切れてぶち壊れそうになるような、そんな感覚になった。ポカポカでふわふわでキラキラしたもの、そこから漂う夏の匂い、この上なく素敵なチルアウトの魔法。Good Morning TVはそういったものを届けてくれたわけだから、もうとことんコテンパンにぶっ飛ばされてた。Faye Websterとはまた全然違う、Bérénice Deloireの素敵な脱力感のボーカルがどこまでも最高すぎてるし、何より表現を大袈裟に盛るようなメインストリームのポップには絶対に出せないような、インディーだからこその"非特別な特別感"の部分が本当に素晴らしいって思った。全曲がめちゃめちゃに好き。冗談抜きでもう最高すぎて困るレベル。

アルバムのスタートのInsomniac (M1)から半端なくヤバい。オルゴール系のひんやりとしたエレクトリックピアノが耳の中をコロコロするようなイントロだけでぶっちぎりの素敵さ。。。そこから流れる最高にトロトロしたギターフレーズ...。初めて聴いたときから「これもう100%最高なやつじゃん、、、」って確信してたところに、案の定Bérénice Deloireのあのキャラクターが炸裂したから、あばばばって理性もげてた 笑(そんなことある??笑)そこからほんのり優しくテンションを高めるようなエレポップ・シューゲイザーポップ要素も展開してくるという最強さ。そんな1曲目で完全にノックアウトされたのに、そこから続く本作屈指の2曲目Lethargic Wayもさらにヤバくて、、、泣。Good Morning TVのチルアウトの素敵成分・美味しさを凝縮したような、病みつきになるほどリピート性の高いあのメロディー。音楽性も歌要素もそれぞれのよさが100%+100%な感じ。もう意味分かんないくらい大好きで泣きそうになる。ムードを味わうチルアウトミュージックでここまでフックの利いたメロディーを発動すると、こんなにも反則レベルのよさになるなんて知らなかった。そんな調子でHuman Comedy (M3)、Entertainment (M4)、Tourism Business (M5,M6).....ってずっっっと素晴らしくて。アルバム通して聴いてると「一体どれだけ素敵なことをしたら気が済むんですか、、、????泣」ってなる 笑。特にEntertainment (M4)に関しては、音楽がとってもシャイニーなフィーリングスを持っててハピネス量が尋常じゃない。ねぇ、もう最高すぎて困るんだけど!!!!(ブチギレ)

これは個人的な話だけど、今作のヤバさについて改めて思ったのが、Good Morning TVのインディー感というものを感じて、私が洋楽好きの原点を思い出したということ。私は大学2年終わりの春にオーケストラを辞めて、何か新しい音楽が聴きたくなったときに出会ったHundred Watersが、今みたいに洋楽にのめり込むようにハマった最初のきっかけなのだけど、そのときから"インディーズ・オルタナロックの洋楽"という作品群に猛烈な憧れを抱くようになった。ヒットチャートでランキング何位とか、トレンドとか、そういうものから外れたところにある、アーティスト固有の"そこだけにしかない世界"。そういう世界があるんだって知った当時のあの強烈なワクワクの感覚に対して、Good Morning TVの音楽が持つインディー感が不思議とすごく結びついた。多分私の潜在意識的なところに、Good Morning TVを聴いたときの特別な幸せが影響してして、当時の記憶がよく蘇ったのだと思う。懐かしみを感じさせるだけでなく、社会人になって2年目の私の身体がちょーーーど欲していたようなもの。すごくすごく嬉しい。私はまだまだ音楽を好きでいられる、まだまだ音楽に感動できる。Good Morning TV本当にありがとうって心から思う。

「逆さまになって寝っ転がったせいでへんてこりんに曲がってる、青いベンチのブロンドのポニーテール」。ジャケットのよさもハイレベルだったと思う。透明感のあるチルアウトな音楽性で、青が持つ夏のイメージとか、ブロンドが持つキラキラのイメージ、作品にめちゃめちゃぴったりなコンセプトのアートワークの感じ。(特に夏感というところ...!)写真を逆さまで採用するというアイディアの素晴らしさもそうだし、ポニーテールがクネって曲がってる感じの可愛さとかもポイント高い。そしてこういう部分にも、私が大好きな"非特別な特別感"というのがある気がした。これはもう超超超ベストアルバムだって思う。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

プレイリスト

Apple Music

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open.spotify.com

 

 

その他とてもよかったもの

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Andrew Hung - "Devastations"

Dean Blunt - "Black Metal 2"

Dizzy - "Separate Places - EP"

Hildegard - "Hildegard"

Hiatus Kaiyote - "Mood Valiant"

Ilis - "love and other disasters"

Justin Jay & Claude Vonstroke - "Oh - EP"

Kovonaut - "sleepaway"

Throwing Snow - "Dragons"

TWO LANES - "Reflections"

 

 

 

7月はClairoだ、、、、、

(あとDrug Store Romeos)