アルバム感想(温)

My Favorite Music

「2021年8月ベストアルバムTOP10」感想

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私が洋楽にハマり始めたのは2016年3月に聴いたHundred Watersがきっかけなのだけど、それと同時期にのめり込むように夢中になってたCHVRCHES、Deafheaven、Bon Iver (Big Red Machine)など、今月は私にとって嬉しいバンドの新譜が目白押しな月だった。。。「これは3位くらいかな~(^^)」って思ってたアルバムも、ランキングにしてみたら9位とかになっちゃった 笑。

今月の素晴らしいアルバムたちTOP10の感想をランキングで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. Sun Starter - "Summer of Bugs - EP"

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ギラギラした夏の世界で出会う、胸を引き裂くセンチメンタル

 夏が来たら、私は必ずOso OsoBeach Slangなどのパワフルでフレッシュなロックを聴く。またはReal Estateなど蜃気楼に溶け込んでくような優しいインディーロックのやつも聴く。夏のことをもっと大好きにさせてくれる、私にとって珠玉のサマーチューンたち。Sun Starerの『Summer of Bugs』もそれら同様、私の夏を最高にさせてくれる、私にとって特別なEPなのだけど、それは私が今までに聴いていたものと少し違っていた。私にとって2021年の夏は、一味違うものになった。クリーントーンのギターサウンドはとても眩しくて、皮膚に紫外線が当たるようなギラギラした熱の感覚を帯びている。ドラムもアタックのあるアクティブなノリが表れてるし、ロックとしてのモチベーションをしっかり持ってるイメージ。それなのにSun Starerは、そんな夏らしいギラギラした暑さの中にも何か優しいものが存在しているということを教えてくれた。夏の世界の中で、胸が引き裂かれるような強烈なセンチメンタルと出会えた。ポジティブなエネルギーをチャージできるサマーチューンでありながら、情緒豊かな風景画のように奥が深い。もうすっとずっと感動しまくる。2曲目のTrippingは、今年の夏を決定付けた私にとってかけがえのない思い出の曲。日差しが優しく照り付けるような感覚を与える微ノイズのソフトシューゲイザー。満たされるようにメロディックな温もりが、曲が持つ解放的でシャイニーな心地よさに寄与していく。エネルギッシュな夏のことを、こんなにもは儚く思ったことはなかった。ギラギラした夏の世界の中に、こんなにも風情溢れる美しさがあることに気が付かなかった。それは、コロナ禍で一人の時間が必然的に増えた、自分が無意識にため込んだ寂しさのフィーリングとも強いシンクロを発生させる。私にとって特別な2021年の夏、それを象徴付けるアートワークの小さな虫、『Summer of Bugs』。もう素晴らしすぎるって思う。Oso Osoみたいにフレッシュ&パワフルなロックも最高だけど、Sun Starerのこちらも何度もリピートしたくなった。コンセプト的にもEPでミニサイズなのがぴったりだったかもしれない。

1曲目のMonth of Sundaysも超名曲。煌めくクリーントーンが揺れる生粋のインディーロックソング。ギターのちょうどいいザクザク・シャキシャキ感といい、とても夏に似合うサウンドがしてるけど、それらが少しメランコリックな温度感の中で鳴らしてる感じがほんとに大好きだった。この冒頭だけでとことん惹かれる。不純物のない洗練された仕上がりの感じだし、インディーロックファンにはたまらない曲じゃないかなって思う。

情緒豊かな風景画のような音楽、例えていえば"夏版Pinegrove"って雰囲気も私的にはあったかも。(私の中ではPingroveは完全に春の音楽。)アクティビティのあるノイズロックで、切ない風情が濃いロックでもあるということ。収録されてる5曲全曲が最高、テーマもツボ、身の周りの友達におすすめしまくりたい作品だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Foxing - "Draw Down the Moon"

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「初めて生きていることを実感した」

 エモ、それは一般的なロックの感情放出よりもう一段階レベルの高い感情の放出で、生きてる喜びをさらに全力で体現するみたいな音楽。前作Nearer My God (2018)の衝撃的なよさが記憶に新しいFoxingは、パンク系The Hotelierやポストロック系TWIABP&IANLATDなどのエモとは違って、もっと苦悩などの暗いフィーリングを抱えた雰囲気と、それらに打ち勝つような華々しさとドラマチックさを持ってるタイプのエモを確立してたと思う。今作Draw Down the Moonは、それらのFoxingの特性を残しつつも、もう少しウェットに沁みるような、音楽のトーンが明るく、温かみも強く、メロディックでポップなよさの部分がより光ったような作品。2曲目のGo Down Togetherとかとても新しい...。まるで泣いてるのかって思うくらい表現力の高いConor Murphyの歌が、ディスコパンク~ダンスポップの音楽上でノッてるみたいな曲。彼ら特有の暗いフィーリングの影とか、華々しさ・ドラマチックさだけでなく、エレポップ性を感じさせるもっとキャッチーなフレーズを持っていたり。今までのFoxingにはなかったカラフルなエモーションが強くて、不覚にもキュンキュンしてしまった...笑。思えばNearer My God (2018)でもTrapped in Dillard'sとか可愛い系のフレーズは持ってたけど、こちらの方がもっとダンサブルで明るくハッピーな印象がある。今まで自分が持っていたFoxingのカッコいいイメージが少し崩れるようなバランスのおもしろさ、こちらもすごくすごく最高だって思った。それらと同じ系統で、Cold Blooded (M8)やIf I Believed In Love (M9)なんかも聴きやすい。アルバム単位で言ったら、どんよりと暗い初期の頃の作品よりも私はこっちの作風の方が気に入ってるかも 笑。

私的に、今作のよさにウルトラハイパー貢献してるのが、やっぱり間違いなしで3曲目のBeaconsではないかと思う。「私8月入ってからこの曲しか聴いてなくない?」って錯覚するくらい、マジでいつまでもリピートしてる曲 笑。暗黒を切り裂く光と華、ドラマチックなストーリー性、それらの爆発的な興奮...。Beaconsのメロディーは、それらのFoxingの美点を100%, 120%引き出すみたいに完成されてる。これはすごくヤバい。。。今作におけるメロディックでポップな部分が1番発揮されてる感じ。これを聴くと、自分の喜びも悲しみも全部いっぺんに溢れ出るような、感情がぐちゃぐちゃになるような、そんな凄まじいことが私の中で起きる。サブスクで気軽に摂取できるような4分未満のトラック1つで、こんなも心が揺さぶられるなんて...。「残してきた恥の烽火、初めて生きていることを実感した (Beacons of that shame, left behind, For the first time I feel alive)」とか、リリックのインパクトも強烈。個人的にはこういうセンスほんとに大好きすぎてます,,,笑(とてもとてもカッコいいって思う。)メロディーが上質なのが特に素晴らしかった。

楽曲後半で火を吹くみたいに音楽が激化して「うおー!」「待ってましたー!」ってなる1曲目の737とか、今作のタイトルトラックであるDraw Down the Moon (M4)ももちろんよかった。やっぱり、今にも泣き出してしまいそうなConor Murphyの歌のあの感じがすごくいいなって思う。聴いてるこちらまで泣き叫びたくなってしまう。何よりめちゃんこカッコいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Deafheaven - "Infinite Granite"

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この作風にしか描けない、胸が締め付けられるDeafheavenがある

 『怒りとは、ある現実を拒絶するときの感情』、ポストブラックメタルのDeafheavenが過去3つのアルバムにおいて提示してた泣き叫ぶような怒りは、何か美しくて大切なものや、それらに対する嬉しい気持ちに耐えられなくなったときに生まれるような感情として捉えられたと思う。つまりそれは、『あまりにも美しくて、嬉しくて、私はその現実を受け入れられない』という怒り。壮絶で、強烈で、もはや想像することも不可能なエモーショナルさ。Deafheavenというバンドが持っている視点や、彼らが表現したいと思っているもの全てたまらなく大好き。そんなDeafhevenの最新作は、嵐のような悪天候の雨の轟音とは少し違う、天からのお贈り物として享受したくなるような尊い雨の轟音が終始降り注ぐ、神聖で、解放的で、最高に最高に気持ちいいシューゲイザーの作風だった。従来の諸作品が持っていた"激"と"激"の間の癒し的なシーケンスのパートをもっと抽出して構築したようなイメージ。繊細な描写重視の大迫力な音楽であることは変わらず、メタル~ハードロックらしからぬ健康的な印象が強いし、なにより音楽が身体にスムーズに浸透するような気持ちよさに特化してる。序盤のShellstar (M1)からため息が漏れるくらいウットリしてた。。。アルバムの最初なのに、突然雨上がりの虹のような景色のシーンで始まって、驚くほど幸福感の高い爆音シューゲイザーが鳴らされる感じ。シャウトを封印した自由な歌声には痛みが一切なくて、おしとやかな気品がひと際目立ってる。これまでのDeafheavenとは方向性が大きく変わった感動だけど、Lantlôsmみたいにありったけの轟音を聖なるものとして扱うようなシューゲイザーで、自分的にはすごくすごくツボだった、、、えぐさ抑えめ、ノリも出てて、音楽の喜びがもっと前面に表れてる。私としてはDeafheaven史上歴代2番目に好きだった。(1位はぶっちぎりでNew Bermuda (2015)

そんな1曲目に心惹かれまくってる状態から、2曲目のIn Blurでもう「あぁ、、、泣」ってなった 笑。一発目から鳴るあのギターの音、ほんとにほんとになんて素晴らしいサウンドなんだろう。。。雨というよりかは雪、もっと言えば宝石が散りばめられるような、リスナーの目を釘付けにする圧倒的な絶景...。この光、この輝き、そしてそれらをサウンドとして鼓膜で受け取っていくときの眼福的な聴き心地のよさ...。そういったものがもたらす絶景の世界が、轟音でもっと強調されて大規模に発展していくわけだから、もう素晴らしすぎるって思う。感動による鳥肌よりかは、音楽の気持ちよさに対する衝撃というところでも鳥肌が立つ。過激な怒りの感情でエモーショナルに訴えかけずとも、Deafheavenはそれに匹敵するほど激しい美しさが描けるんだって思った。むしろ、この作風にしか描けない、胸が締め付けられる儚くて切ないDeafheavenがある。これはぜひとも冬とかに聴きたい。てか早く冬来てほしい。

もちろん、Lament for Wasps (M5)やVillain (M6)のツーバスやシャウトを容赦なく炸裂させるDeafheavenらしいパートの部分も絶対的なよさ。今作は特に、一瞬に咲き誇るみたいに「ここぞ!」という限定したタイミングで効果的に見せ場を発揮できていたと思う。Mombasa (M9)みたいなブラストビートの攻めまくるパートのやつもほんとに最高...。ドラムで泣かせにくるのはもうDeafheavenとGY!BEくらいしかいないって思う 笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. alexalone - "ALEXALONEWORLD"

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光も闇も徹底的に描く

 ヘヴンリーで涼しく快適なネオアコ・ドリームポップから、死の世界へ通じるような地獄的なハードロック・ガレージロックまで、光と闇の二面性を徹底的に描いた2021年におけるエクスペリメンタル・ロックの革命的な傑作の感じ、、、これはすごい!てかマジでめちゃめちゃカッコいいーー!!笑。ポストパンクのシーンとかでも化け物級のバンドって最近はドシドシ出現してると思うけど、その中でもまた違うタイプの化け物感。Electric Sickness (M1)でYo La Tengo系の心沁みる90sシューゲイザーを奏でたと思ったら、Where in the World (M2)でSwansのような闇の深いポストロックに転換したり、Can't Sleep (M4)で背筋の凍る悪魔的な迫力の爆音ギターを繰り出したと思えば、Let it Go (M5)で天へ召されそうになるほど綺麗で尊いフレーズを差し出したり...。とにかく"光"と"闇"の二極がどちらもしっかり確立されていて、音楽の持つカオスのクオリティや、人間の内面の複雑性であったり、芸術が持つ想像・ファンタジーをレベルの高いものに完成させてる感じがする。ほんと、alexaloneってめちゃめちゃすごい。alexaloneのAlexはHovvdyやLomeldaのサポートバンドを務めていた人らしいけど、これほどまでの想像力と表現力を持った音楽家が眠ってたんだって思った。余程クリエイティビティが豊かで、内向的(alone)で、音楽にずっと夢中なアーティストなんだろうって思う。

音楽のカオスのクオリティ、そこに秘められた人間の内面の複雑性って部分にとても惹かれたのだけど、それに伴う形でギタープレイも魅力満点ですっごく最高...!代表的なところだと私的にはUnpacking my Feelings (M3)とか。光と闇に挟まれたようなalexalone特有の世界観の中で鳴らす、スタイリッシュでパワフルなフレーズのやつ。短いパートだけど半端なくカッコいい、、、70sロックンロールを引用したみたいなスモーキーな味わいを持ってるサウンドなのがこれまたいいし、興奮を煽るようなドラムとのコンビネーションとかも抜群。作品が持つワールドの鑑賞以上に、ライブ的な演奏そのものの魅力があった。あとはドラゴンの咆哮みたいなノイズのEavesdropper (M8)のギターもヤバい...。とても臨場感のあるサウンドで、音に込めた怒りの感情とその熱量がもっと強力に伝わってくる感じ。純粋にサウンドメイキング的な点でも天才だって思った。アルバムのコンセプト的にも大好きだし、ギタリストとしても好き。めちゃめちゃハイセンス。

暗黒色をした目を引くジャケットもすごくお気に入りなやつ。光と闇のカオス、"ALEXALONEWORLD"って本作のコンセプトも忠実に表現できてるアートワークだと思う。私は今作はPolyvinyl Recordのメーリングリストで知ったのだけど、ドリームポップ系が王道のレーベルで、こんな闇の深い作品が出るのっておもしろいなって思った 笑。もちろん、光の面も最高品質のサウンドスケープ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Cleo Sol - "Mother"

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「天国から直接天使を送ってくれてありがとう」

 つい数日前にTwitterで知ったのだけど、聴き逃してたのを思いっきり後悔するような傑作のジャズソウルだった、、、泣。系統的に言えば高級感のある癒しのフィーリングが強いNora Jones的なジャズの作風だと思うのだけど、Cleoが抱えた思いをより強調するようなピアノの弾き語り系のバラードであったり、Saultのようなスモーキーで濃厚なブラックミュージックのムードであったり、それらを心ゆくまでたっぷり堪能するような長尺トラックで構成されてるアルバムで、ソウルミュージックやバラードが持つ愛情の質が桁違いに感じられた。1時間のアルバムの中で、もはや最高じゃない曲が1曲もないのだけど、3曲目のHeart Full of Loveに関してはめちゃくちゃヤバくて泣いてしまった。「天国から直接天使を送ってくれてありがとう (Thank you for sending me an angel straight from Heaven)」、「愛に満ちた心で、天から祝福された (Blessed from above with a heart full of love)」、子を授かって母親となったCleoが自身の心情を綴った歌。スモーキーで色気のあるムードに包まれたそのメロディーが、自分の子どもに対する愛情を実体化したものだ分かったとき、本当に本当に嬉しくてたまらなくなってた。心の底から羨ましいって思った。内に秘めた誰かへの愛を音楽化して形にすることには、何ものにも代え難い価値があると思う。これを聴いたCleoの子どもは一体何を思うだろうか。そして私の母親も、かつてはCleoと同じように私のことを思ってくれてたのだろうか。Cleoの歌を聴きながらそんなことを想像してたら、本当に涙が止まらなくなる。これはちょっと私にとってツボすぎてた。今年SaultがリリースNineのLight's In Your Handsと同じくらいの神ソング。そういう曲がいくつもあった。

ムーディーでバラードな曲がほとんどの中、動きが活発なDon't Let It Go to Your Head (M7)も超最高だった。こちらはKhuruanginみたいなエスニックなソフトロックで、ドラムやギターなどのアンサンブルがよく発揮されてる曲。高級感のある癒しやCleoの愛情のクオリティはそのまま、他のしんみり系のバラードにはない元気な明るさを放っていて、アルバムのいいアクセントになってる。何よりギターのリフがすごくユニーク...!We Need You (M6)でもギターソロがハチャメチャに上手な感じしたけど、そういう上手さ込みで唯一無二な仕上がりになってるリフだった。Cleo自身の人柄のよさというだけでなく、音楽の表現力も高いということ。やっぱりめちゃ傑作だと思う。

今作はジャズソウルのバラードを一定に維持してるところがあって、何か作業用BGMとかに向いてるところもあったかも。コロナ禍で在宅密度が増えたのだけど、これも自宅でたくさん流したくなるアルバムだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Big Red Machine - "How Long Do You Think It's Gonna Last?"

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"大好きの塊"

 Big Red Machineの今作を聴いたとき、スピーカーの向こう側に恵み豊かな大自然が広がってるのかって思った。細部の細部までオーガニックな素材で作られたようなカントリー・フォーク仕立てのオルタナで、エレクトロニックを多用する表現では到達できないリアルな安らぎを叶えるような作品。リスナーの心に突き刺さるようなセンシティビティを創造するBon Iver(Justin Vernon)のアート性、クリーントーンの鮮度を極限まで引き出すようなAaron Dessnerのアプローチ、まさにBig Red Machineならではプロダクションという感じだし、Taylor Swiftがガッツリ入ったfolklore (2020)の拡張版的な一作でもある...。「あぁもうほんとに大好き、、、」って思った 笑。Bon IverのBon Iver, Bon Iver (2011)的な心温まる幻想世界をBig Red Machine的に仕上げたReese (M2)、沈んでいくような重みのあるピアノが至福のリラクゼーションとエモーショナルさを作り出すBirch (M4)、朗らかなカントリーと女性ボーカル(Ilsey)の歌がどこまでもハートウォーミングなMimi (M8)......。どの曲も綺麗な音作りが本当に徹底されていて、リスナーの心を浄化しようとする魔法が込められていて、この世の美しいものを全て愛したくなるような瞬間をいくつも所持してる。一般的な音楽とはもう空間が全然違う。ただでさえ"Justin Vernon×Aaron Dessner"っていう組み合わせがもうチートみたいなのに、Fleet FoxesやSharon Van Ettenらが参加してるのもヤバい...。実際Phoenix (M3)とか、「Fleet Foxesの別格なカントリーをBon Iverが演る」みたいな曲の感じで、よすぎるし豪華すぎるしで「はぁ~~?!泣」ってなってた 笑。まさに私の"大好きの塊"みたいな作品。Anaïs Mitchellの絶大な貢献ももちろん、前作以上にエモいアルバムだった。

今作で自分的にすごくハマってたのが、feat. Taylor SwiftのRenegade (M5)。去年のfolklore・evermore然り、私が1番好きなTaylor Swiftの音楽。Big Red Machineの研ぎ澄まされた純粋なフォークの綺麗な世界の中で、Taylorポップが全力で炸裂していく感じ、もうすごくすごく楽しい!笑。フォーキーな気持ちよさとポップのハピネスが相乗してどんどん増幅されていくのが本当に良い。メンバーの仲良しげな雰囲気が伝わってくるところも最高に萌えるし、アコギのテロテロテリンッみたいなメロディーがめちゃめちゃクセになる 笑。Reese (M2)とかBirch (M4)とかも超名曲だと思うけど、この5曲目はより一層気に入ってた。

Justin Vernon×Aaron Dessnerのアーティスティックな部分も素晴らしかったなって思う。上品なピアノのキャラをアップテンポな曲の中で活かすようなMagnolia (M12)とか意外性があってとても魅了されたし、Hoping Then (M7)なんかは私的00年代ベストサウンドアーティストのThe Booksみたいな弦楽器の音感があってびっくりした。インディーフォークのテイストではあるけど、やっぱり自由なアイディアで美しさを追求したオルタナロックなんだなって思う。いつかフェスとかでライブ観れたらどれだけ幸せだろうか。。。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Shire T - "Tomorrow's People"

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私の情緒を崩壊させる90sテクノのリメイク

 ある意味アーティストのクリエイティビティを活発化させるコロナ禍のパンデミック、Shire TことChris Davidsの場合、テクノシーンが花めいた90sクラブミュージックの傑作リメイクを生み出した...!!泣。アシッドでバリバリにエネルギーがみなぎってるレイヴをベースに、The xxやBonoboのような清楚で美的な音響エレクトロニカも取り入れたような、現代における最新のハウス・テクノのやつ。興奮がヒートアップしまくるエレクトロロック~ドラムンベース(Blue Kiss(M3))から、ハピネス栄養価の高いディスコ~フレンチタッチ(Burnin’ Jungle (M6))、さらにはJon Hopkinsタイプな叙情的ピアノのポストクラシカル要素(London. Paris. Berlin. (M7))まで...。実に多彩で多才なアルバムだと思うけど、もう本当に神曲ばっかりで...笑。そこには、音割れが生じるような昔ながらのサウンド感だったり、当時のダンスフロアへのトリップ性のワクワクもあれば、同時にモダンなエレクトロニカの豊かなサウンドメイキングを堪能するワクワクも混じってる。まるでShire Tが影響を受けたダンスミュージックに対して恩返しでもするかの如く、彼が自身の"大好きを改めて再開発して作り上げたような作品。...めちゃめちゃ大正解だと思いますーー!!笑。私的には特に、Blue Kiss(M3)、Over You (M5)、London. Paris. Berlin. (M7)の奇数番目トラックがほんとにヤバかった。先行リードトラックだったBlue Kiss (M3)なんかは、あまりにツボに刺さりすぎて発狂しちゃいそうになるのが大変で...笑。ゾーンにのめり込んでいくみたいにリスナーを凄まじくハイにさせるアグレッシブなドラムが繰り出される中、豊富なアイディアでダンスフロアをアンダーグラウンドからコスモスまで自在にデザインしていく。レイヴ・トランス系の刺激的なシンセを浴びつつ、次から次へと生じる多様なサウンドにどんどん魅了されていく感じ...。そういうのを超超超カッコいいドラミングのグルーヴで展開していくわけだから、やっぱり発狂しそうになる 笑。CFCFもそうだったけど、もしかしたら私はこういうドラムンベースの曲にめっぽう弱いのかもしれない。私が思う"カッコイイ"のマイブーム。

Over You (M5)に関しては、発狂というよりかは「うぅ...」って泣きそうになってた、、、笑。興奮を搔き立てて攻撃的に攻めていくBlue Kiss (M3)とは違う、もっと多幸感に包まれる安らぎのフィーリングを含んだハウスの感じ。ここでもShire T特有の多様で自在なアプローチがよく発揮されてるけど、Over You (M5)ではそれらの豊かさがサンプリングされてるディスコ風のカラフルなときめきに対して作用するような構造がある。泣きそうになるほど強力なハピネス、この曲もほんとに大好きすぎる。単純にハッピーなだけでなく、鳥ジャケのシックなイメージとも重なるオシャレな素敵さを持ってる。Maribou Stateの片割れである彼ならではの、現代におけるクラシカルなクラブミュージックの美的なセンスのリメイク。これはもう大傑作だって思う...!この曲も相変わらずグルーヴがヤバいけど、特に中盤で出てくる裏打ちビートのやつはテンション上がりすぎて大爆笑してた 笑。私の情緒を崩壊させるほどの傑作だということ。これは日常でもリピートしまくると思う。Shire Tほんとにありがとう。。。

London. Paris. Berlin. (M7)~Mind Game (M8)の一連も負けず劣らず素晴らしい。滴るようなピアノとソフトな金管楽器系のシンセ、そしてソウル・ゴスペル風のハートウォーミングなコーラス...。それらの幸せなフィーリングを、ダンサブルなグルーヴにのせてリスナーに胸いっぱい届けていく...。「めちゃめちゃ最高じゃん!」って思う。Blue Kiss (M3)、Over You (M5)があれだけ名曲なのに、「まだあるの?!?!泣」って感じ。ラストスパートなMind Game (M8)も最高にアがる。まさにレイヴと美的エレクトロニカのハイブリットなナンバー。ほんと、すっごい充実してるアルバムだった。あと私、鳥がものすごく好きなのだけど、この鳥ジャケも今年ベスト級に大好き。(鳥ジャケ×エレクトロニカだとLeon Vynehallとかあるよね、ありより好きかも)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Walt McClements - "A Hole in the Fence"

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アコーディオンのあのオーロラの光景を見て、私よく生きていられたな

 アコーディオンという楽器が持つ音色が、これほどまでに尊いものだと今までに考えることができただろうか。ジャバラの開閉による膨張と収縮の命の呼吸、サウンドが広範囲に広がっていくようなその拡張性、リスナー包み込むような包容力...。さらにはドローン的な音の特性によるサイケデリックな没入感まで。Walt McClementsの今作は、そのアコーディオンを多重的に構築した幻影的なアンビエントで、この世のものとは思えないくらいの神秘的な現実を目の当たりにするときのような、または脳が侵食されるほどの強烈なノスタルジーを喰らうときのような、あるいはそういった体験を超越した、誰も知らない秘密の世界を創造するもの。初めて2曲目のThresholds (Through a Hole in the Fence)を聴いたときは、あまりの幸せに耐えられず、もう死にたいとすら思ってしまった。気鳴楽器特有の震えるような高音の灯は、ただ音色的に綺麗というだけでなく、もっと生々しくて儚い生命的な存在感の美しさを感じさせる。さらにアコーディオンの場合はもっとクラシカルな趣を持ったキャラクターとしての上品さも強かったり。ずっと昔の頃に聞いたことがあるように懐かしくて、この上ないほど暖かくて、信じられないほど優しいサウンド。そういったものを用いながら、まるで無地のキャンパスに色を加えていくようにして、音楽のイマジネーションを私に一つずつ大切に与えていく...。なんて、なんて素晴らしいんだろう。それは、これまでに出会ったことがないほどメロディックなドローン。そしてアコーディオンによる超大作の幻想曲。初めてこのThresholds (Through a Hole in the Fence) (M2)における和音のオーロラの光景に出会ったときの感覚を振り返ってみると、あのときはよく生きていられたなと思うくらい爆発的な感動を味わったと思う。質は違うけど、レベル的に言えばPorter RobinsonのGet Your Wishのときとかと同じくらい。限界を超えるくらいの美しさ、それらの究極的な素晴らしさ。音楽の特徴的に捉えても、私の人生ベストアーティスト1位のSigur Rósに近い楽器の音を所有している。私が本当に大好きなタイプの作品だった。

ラスト6曲目のRinse (Repeat Repeat)でも、この上なく尊いアコーディオンが奏でられてた。こちらは大きく息を吸い込むようなダイナミクスとは違って、ジャバラの開閉が細かく一定に動いているニュアンスのダイナミクス。教会のパイプオルガンのような神々しさを放ちながらも、何色もの色を含んで時間変化する夕焼けみたいにとても丁寧なサウンドスケープを描いていく。それらの情景を受け取ったとき、心の奥が熱を帯びるような特別な暖かさを覚えた。まるで、私が信じたいと願う自分自身の愛を増幅させたみたいに。やっぱりとてつもなく素晴らしい。アコーディオンという楽器の音色が、まさかそういった概念にここまで直接的な影響力を持ってるとは知らなかった。ここまで暖かくて美しいものとは知らなかった。それはWalt McClementsによるアコーディオンの祈りそのもので、この世界のありとあらゆるものに感謝するような、喜びも悲しみも全ての思いを抱きしめるような、偽りのない真の祝福。アコーディオンのポテンシャルを限りなく引き出した作品、同時にアコーディオンという楽器のことがもっと大好きになる作品だって思う。

......どうしよう、Theo Alexander、Hollie Kenniff、2021年入ってから月間ベストアルバムが少し重たい感じに偏ってしまってる...笑。やっぱり、私はいつも聖なる音楽ばかり求めてるのだと思った。Rinse (Repeat Repeat) (M6)以外にもClimb (Two Times Past the Same Point in Two Hours) (M4)とかも大好きだったけど、今作においてはとにかく2曲目のThresholds (Through a Hole in the Fence)がほんとにほんとにヤバすぎる。自分でも意外なほどアコーディオンに興味が湧いたのだけど、アマゾンでチェックしてみたら約10万円だった........大富豪になったら買う 笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Phoebe Rings - "Phoebe Rings - EP"

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自分の心が美しいもので構成されていく感覚

 音楽は他の芸術と少し違って、日常の中でサクッと摂取するような形で鑑賞して、何か自分の気分を気軽にコーディネートするアイテム的な側面を持ってると思う。中でもドリームポップ・チルアウトの類は、自分の中の喜びのフィーリングがもっと活性化するような、ありったけの夢心地の気持ちよさを手に入れられる最高に最高の音楽。そんな風に、ただでさえドリームポップってだけでもう格別に素敵な音楽なのに、Phoebe Ringsはそれらのよさを覚醒させるかの如く、ドリームポップを驚異的なまでにリッチな幸福感があるものとしてグレードアップさせてる。自分の気分を素敵なものにコーディネートするという以上に、自分の心そのものがもっともっと美しいもので構成されていくような感覚...。もう嘘みたいに幸せなんだけど。。。泣。エレクトロニックピアノのふわふわした響き、オルゴール系のクリアな光沢を放つ響き、あどけなさが残るピュアで愛らしいポップなのに、ストリングスを採用したバロックポップ~クラシック的なエレガンスであったり、ジャジーR&Bの大人びたビタースウィートの味わいだったり、ポップでありながらものすごくメロウなものとして完成されてる。ボーカルCrystal Choiの歌の浮遊感・透明感も果てしない。これは本当にドリームポップ~インディーポップの神作EPだと思う。朝仕事が始まる前のちょっとした隙間時間にJanuary Blues (M2)を聴いたら、幸せの余韻の威力が半端なさすぎて業務中ずっと上の空状態になっちゃった。。。笑。精神的安定を確実にもたらすような、天国レベルの和みを叶える曲。南国リゾートみたいに最高にチルいのに、満天の星のような心に沁みまくるサウンドスケープも持ってる。一見するとヒーリングミュージックみたいになのに、ボサノバやジャズアンサンブルの楽しそうなセッションの雰囲気も醸し出していたり。それらの諸々が、私に心の余裕を最大にまで与えて、私のことを最大に満たしてくれた。もう幸せすぎて何も手に付かなくなる。それは、特に予定のないオフの日をのんびりオシャレに過ごす私の最も理想的な休日のイメージでもあるのだけど、言い換えればそれを聴けばいつでも、自分の気分を最も理想的な状態にできるということ 笑。実際、聴けば聴くほどフィーリングが無敵レベルで素敵なものになっていくのを感じてる。特に慌ただしい朝とかは、落着きのある健康的で平和的なフィーリングを強力に得られるから相性が尚ヤバい 笑。ほんと、業務のスタート前とかはすかさず再生してたと思う。

音楽のリッチな幸福感、4曲目のSpisskyもむちゃくちゃ素晴らしい。。。80s属性のシンセで特徴付けられるようなカラフルな色のフィーリングを、もっと大人びたバラードとして応用させたようなナンバー。それまで軽やかめだった印象より少し重みがあって、リッチな幸福感ももっとディープなものにレベルアップしてるみたい。もう素敵すぎて泣きそうになってしまう。後半にかけて音楽が音響的に拡大して、リスナーをさらに包み込むニュアンスが出てくるのがヤバい。天国というだけでなく、80sシンセのSFっぽいキャラの宇宙的な世界観も素晴らしいし、やっぱりオルゴールというアイディアが神がかってるなって思う。これまでに聴いてきた一般的なドリームポップより、素敵なフィーリングが何倍にも何十倍にも高密度になって詰まってる感じ。Phoebe Rings恐るべし...てかEPなのもったいなくないですか 泣(Scullcrusherと同じパターンだ)

Alvveys、Beach House、School of Seven Bells...。ドリームポップって色々あると思うけど、Phoebe Ringsの今作はタイプで言えばMr Twin Sisterとかかなって思った。考えてみると、1970年代のPat Methenyとか、40年も昔の音楽なのに想像を絶すほどる美しくて驚愕する...。きっと、Mr Twin SisterもPhoebe Ringsも、何年、何十年経とうが、決して色褪せることなく美しさを維持し続けるんだろうなって思った。...それって本当に素晴らしすぎる。(てかPat Methenyがヤバい)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. CHVRCHES - "Screen Violence"

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メインストリームのパワーを吸収しながらインディーズにも帰還する

 CHVRCHESといえば、80sリバイバルやEDMが流行する現代のエレクトロニカシーンの中で、80sリバイバルにもEDMにも属さない独自路線のエレクトロニカを開拓した奇跡的なシンセポップ。。。80sシンセのサウンドを今の時代で生きたものとして蘇らせながら、ポストEDM的な威力の高いポップスを実現したその音楽は、迫力と丁寧性の相反するような2つを見事に両立させてる。前作Love Is Dead (2018)は、インディーズからメインストリームへと躍進したことを確定させたような作風で、Never Say Dieとかマジで人生ベスト級に好きだったのだけど、今作はそれらで培ったようなド派手なメインストリーム的ポップ力を発揮しつつ、初期の頃を思い出させるインディーポップ的CHVERCHESにも帰還してるような作品、、、とてもとても傑作だと思います!!!!泣。私の人生を作ったと言っても過言ではないThe Bones Of What You Believe (2013)的なあのドキドキ感を、Love Is Dead (2018)のパワーで繰り広げるみたいなイメージ。1曲目からもうバリバリにCHVRCHESシンセが鳴りまくってて幸せすぎる...笑。ピリっと刺激的でありながら心のときめきに直接的な素敵シンセ。タイプ的にはEvery Open Eye (2015)のClearest Blueみたいに着実にダンサブルなトラックだけど、音圧もハピネスもとにかくレベルが高い...。「あ、、私は今からCHVRCHESの新作を聴くんだ」、「私は今から、CHVRCHESの新しいワールドに飛び込むんだ」ってワクワクが思いっきり触発される。もう!幸せすぎます!!笑。そこからのHe Said She Said (M2)も続けてヤバい。会場を揺さぶるような臨場感の強力なエレポップ。Lauren Mayberryのボーカルもシンセもピュアネスの塊みたいに可愛いのに、それらが迫力のある力強いサウンドとして鳴らされてる。そしてときめきが最強な上に、通常のエレポップでは考えられないようなカッコよさもある 笑。すごい、CHVRCHESすごい!何より初期の頃に近いシンセのサウンドをこうやってむちゃくちゃパワフルに聴けるのが嬉しい...!もともと大大大好きだけど、またCHVRCHES愛が再熱してきた。もうめっっっちゃ大好き、ありがとう(TT)(TT)笑。

「これはロックか、、、??」って錯覚するくらいめちゃくちゃにカッコイイViolent Delights (M4)、メロディーとシンセのコンビネーションが刺さりすぎてヤバすぎるGood Girls (M7)、ドラムのビートや音楽の感動がステージの外まで響くみたいに尋常じゃないほどグッとくるLullabies (M8)......。今作は本当に曲が最強すぎてる。なかでも個人的に1番最強だって思ったのが3曲目のCalifornia。空間を優しく染めるような透き通ったサウンドスケープが利用されてる曲。Lauren Mayberryの歌が、メロディーが、音楽のときめきが、私の中に澄み渡っていくように伝達していく。CHVRCHESの音楽のワクワクが、何かロマンチックで綺麗なフィーリングにも影響を及ぼしていくみたい。これ私ライヴで観たら目ん玉がいかれるくらい号泣すると思う。1曲目、2曲目の流れも込みで、最初聴いたときは、「ちょ、、、待って、、、、、泣泣」ってなった 笑。こんなにも心沁みる感動を持ってるのに、それらをよりメインストリーム的ポップ力でダイナミックに巨大化するからたまったもんじゃない。私の身体に感動が追い付かなくなる、今作史上最強に大好きな曲だった。夜のフェスで聴きたい...!てかCHVRCHESのライブまた観たい...!!

CHVERCHESは各アルバムでそれぞれ固有のよさを持ってると思うけど、それぞれのよさを持ち合わせたような今作は本当に贅沢な作品だなって思った。そしてロックっぽい部分も強くて、さらにカッコいいCHVRCHESの面もいっぱい堪能できたと思う。ロバスミとのコラボも◎。色々な思いが巡って、初めてThe Bones Of What You Believe (2013)を聴いたときの人生が変わるようなワクワクを思い出した。やっぱりCHVRCHES最高すぎる、大好きすぎる。またライブ観れるのをめちゃ楽しみにしてる。(応援する。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

プレイリスト

Apple Music ↓

温の「2021年8月ベストアルバム(温)」をApple Musicで

 

Spotify

open.spotify.com

 

その他 とてもよかったもの

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Bnny - "Everything"

Chorusing - "Half Mirror"

Ffred Vel Vett - "People Pleaser"

Formor Hero - "Footpaths"

Joy Orbison - "still slipping vol. 1"

Jungle - "Loving In Stereo"

Laura Stevenson - "Laura Stevenson"

Men I Trust - "Untourable Album"

quickly, quickly - "The Long and Short of It"

Skydeck - "Coupon"

Steve Gunn - "Other You"

Villagers - "Fever Dreams"

V.RI - "A Time To Live"

Water From Your Eyes - "Structure"

Wednesday - "Twin Plagues"

 

 

 

「2021年7月ベストアルバムTOP10」感想

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リリースが延期になったDrug Store Romeos、期待大すぎてドキドキが止まらなかったClairo...。今月の新譜もランキング作るのムズすぎてて、もうabc順にしようかなって思った 笑。(でもやっぱりランキングにする)

今月の最高すぎる新譜TOP10の感想

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. Moin - "Moot!"

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天下一品のギターノイズ

 前にも言ったけど、例えば血みどろになるみたいにしてダークサイドへ堕ちるようなZombyのReflectionとか、自分の中の邪悪な心を容赦なく引き出して完璧に狂っていくようなORTIESのPlus putes que toutes les putesとか、心の内に秘めた闇を解放する類の音楽には、マジでマジでカッコいい作品ってやっぱりあると思う!笑。ただMoinの場合は、ノイジーなギターロックとポストロックとしてのカッコよさが抜群な、とてもユニークなダークネスを持ってる作品の感じで、音作りからフレーズまで細部の細部まで高い芸術性がある...!black midiみたいなテクニカルな芸術性のやつではなく、もっとシンプルに洗練されたセンス、これがもうめちゃめちゃヤバい...笑。2曲目のCrappy Dreams Countから、その音作りとフレーズのハイレベルなよさに圧倒されてしまう。暗く湿ったような低い音域の、ボロボロになって汚れてるみたいなノイズを持ってるギターロック。そのメロディーには何か怒りや悲しみのような負の感情が宿ってる。ただ鬱憤を晴らすようにアグレッシブに鳴らされてるのではなく、もっとメランコリックで冷たい響きの印象。もうめちゃめちゃカッコよすぎる。。。笑。このギターは猛烈に惚れまくる。カッコいいだけでじゃなくて、たった一つのシンプルなギターリフの中に鑑賞的魅力を多く含んでるというよさ。ギターだけでなくポストロック的アプローチのドラムも素晴らしい。そういうセンスがアルバムの随所にあった。

5曲目のLungも超超超カッコいい...。こちらのギターはもっと太くパワフルなサウンド。ノイズのテクスチャもギターの低弦の音を最高に魅力的に聴かせるようにベストにイコライジングされてる感じで、メロディー・サウンドメイキング共にとても高精度な出来栄え。本当に芸術性の高い完成度だと思う 笑。ドラムとのアンサンブル効果によるフレーズの見せ方とかも最っっっ高。あまりにカッコよすぎから発狂しちゃいそうになるんだけど...笑。

高い芸術性、他にもピアノの1番低い音域だけ利用するNo to Gods, No to Sunsets (M1)とかもセンス素晴らしいって思う。Haxan Cloakみたいにリスナーを地獄の底まで突き落とすような低音...。ただやっぱり、Moinはギターノイズのよさが天下一品。アートワークのダーティーなイメージもめちゃ好きだった。(てか洗濯物こんなになったらマジで最悪だよね 笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Dolphin Midwives - "Body of Water"

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天国の世界と滅びの世界

 ハープ奏者兼エレクトロニカサウンドアーティストによる水をテーマにした音楽アート。BullyとかSiv Jacobsenのような冷たくて気持ちいい感触が最高なジャケットの本作は、猛暑でヘトヘトになる夏真っ盛りなシーズンのしんどさを軽減するようなヒーリングのみならず、もっと私に壮絶な感動を呼び起こしていた。その音楽は例えるなら、Mary Lattimoreの天国とK Á R Y Y Nの滅びの世界を一体にして描いたもの。何より素晴らしいのは、水という観念が持つ流動的な性質や、それらの時間的なイメージによる生と死のコンセプトが、それらの世界観と完璧に適合していたところ。とてもとても素晴らしい世界観だと思う。滴るように零れる鍵盤楽器やエレクトロニックの音色の高い表現力、原始的な民族音楽のようなグルーヴによる音楽の神秘性の強調...。生々しく人間的な感情で溢れた歌は、モジュレーター系のエフェクトのプロセスでもっとカオスに、もっと魔法的なものへと変化してる。3曲目のBloomとか本当に素晴らしすぎる。歌唱力の高いDolphin MidwivesことSage Fisherのボーカルはとても か細いのに、リスナーの心に力強く訴えかけるようなエネルギーがある。それが水辺の環境音楽のような透明感のあるサウンドの中で響いていく様子の美しさといったらもう、、、。ただでさえ歌がものすごく上手いのに、世界観とかにもこだわりまくってもっと人間離れしたものを創造するのってやっぱりずるい...泣。静と動のコントラスト、魔法的でありながら同時に普遍的な部分もあって、どこか瞑想的な安らぎのようなものも感じられた。水をコンセプトにこんなに魅力的なアートを作れるってすごい。今作はパンデミック時に制作されたアルバムということだけど、それは単なるヒーリングを目指したものではなく、もっと果てしなく広大なワールドの魅力と、奥の深い感情を与えるものだった。改めて、本当に大好きだなって思う。

ハープのインストゥルメンタルパートの曲もそれぞれ違う表情を持っててすごくいい。華々しい音色 (Idyll (M9))、懐かしさを感じさせる音色 (Sunbathing (M12))、それらによるMary Lattimoreみたいな楽園への導き。その中でもFountain (M4)が1番好き。とても滑らかに流れるワルツのリズムに沿って、ハープの音粒が綺麗に揺らいでいくのを感じる。それらはまさしく今作のテーマになっている水のイメージそのもので、ジャケットのようにキラキラ反射する水面の揺らぎのよう。「ハープの音から水を感じる」っていうのが本当にたまらない。歌がめちゃ上手くて、サウンドアーティストとしても優秀なのに、ハープ奏者としてもかなりの腕も見せつけるようなハイスペックさ。今作はグラミー賞ノミネートの名プロデューサーTucker Martineと組んだアルバムらしいけど、この内容なら確かに納得できるなって思った。

「私の身体は水で成り立ってる」(Body of Water)、彼女の歌に込められたメッセージを想像しながら楽曲を聴く、生と死、安らぎと混沌、人間的なものと魔法的なものの共鳴、それらの象徴として与えられる"水"...。凄腕アーティストによる私的にとてもツボな内容の作品だった。(水ジャケも最高...!笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Lump - "Animal"

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人間的であることの祝福

 「このアルバムには快楽主義、欲望の暴走というテーマが少しだけある」、LumpのメンバーのMike Lindsayが言うように、フレットレスベースのワイルドなサウンドとか、気迫のあるダンサブルな衝動を持ってるシンセポップの今作「Animal」は、"内面に抱えた野性的な本能を晒す"というような意味合いのコンセプトを持ってる作品なのかなと思ってた。でも、それなのにLaura Marlingの歌は本当に優雅で、シンセが構築する世界観は宇宙的で神々しくて、それらの心惹かれるような尊さに溢れていた。私がLumpの今作が本当に大好きなのは、そういった音楽の尊さと「Animal」という野性的なコンセプトの組み合わせのところに、一種の"人間的であることの祝福"みたいなものを感じ取ったから。唯一無二で前衛的な迫力もありながら、人間らしさを肯定する喜びにも満ちてるということ。めちゃめちゃ素晴らしいアルバムだと思う。ワイルドでありながら音楽をアートポップ風に仕上げたり(Bloom At Night (M1))、Lauraの綺麗な歌をもっとパワフルに印象強く見せたり(Gamma Ray (M2))、ダンサブルな衝動の欲望にもっと順応して快感を得たり(Animal (M3), Climb Every Wall (M4))...。1曲目~4曲目の4コンボだけでもう決定的に傑作の感じ。そもそも"Laura Marlingがポップを演る"というだけでもうめちゃ最高だったのだけど 笑、音楽的な性質やコンセプト、それらのオリジナリティ的な部分でも本当に魅力的な作品だった。

あと今作は、やっぱりLaura Marlingの歌が超最強だって思う。Bloom At Night (M1)とかGamma Ray (M2)とか、エモーションを込めながら高らかに昇っていくようなメロディーがそう。とても気持ちよさそうで、想いが詰まってて、さっき述べたような祝福的なものも感じさせたり。この歌には本当に満たされまくる。。。Red Snakes (M5)みたいなしんみり系のメロディーも激ヤバのよさ。音楽の宇宙的な空間の世界観と相まって、Lauraの上品な歌の持つ儚さとか悲しみとか、胸を締め付けるようなフィーリングがとても強調されてる。本当に心を打つ深い感動がある。去年のSogs For Our DaughterみたいなLaura単体の純正フォークには出せない、オルタネイティブの自由な表現ならではのアレンジ。Laura Marlingというボーカルのキャラクターが最強に活きてて素晴らしいと思う。Animal (M3)の歌に関しては、"Dance, dance. This is your last chance"とかリリック的な面で好きだった。

他にも、めちゃめちゃポップなのがよすぎるWe Cannot Resist (M8)とか、メロウなのにピュアで愛おしいPhantom Limb (M10)とかも最高。総合的に見て本当に大好きなアルバム。(さっきも言ったけど"Laura Marlingのロック&ポップス"ってだけで良い◎◎◎笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Skirts - "Great Big Wild Oak"

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身体がバグる美しさ

 のんびり春めいた空気と穏やかなメランコリックさが入り混じった不思議で特殊な感覚のインディーロック。私的に例えるなら「Jay SomLomeldaの合体」って感じなのだけど、これは大好きすぎるやつだ...!!って思った 笑。今年1月に新譜がリリースされたThe Big Netとか、ヨラテンゴ系統の優しいインディーロックのやつってほぼ漏れなく大好きだけど、その中でもSkirtshaの場合、生き生きとしたフレッシュなドリームポップと、憂いを秘めたグルーミーなインディーフォークを二つを使いこなしてる感じ。優しいフィーリングだけでなく、そこにミステリアスな魅惑も含んでて本当にめちゃめちゃ引き込まれる。イントロ後のAlways (M2)から超素晴らしい。ローファイ系の音処理で雰囲気的には湿ってる感じなのに、そこからギターの明るいメロディーで音楽をドリームポップ化していくのだけど、マジでセンス超最高だと思う。馴染みがなさすぎて身体がバグるような意味わからなさすら感じるほど、不思議で魅惑的で全力で美しい。3曲目のEasyも、温度感的に言えばダークっぽいのに、そこに揺らぐように生まれるシンコペーションのメロディーはのんびりほっこりしててこんなにも暖かい。初めに聴いたときは「なんじゃこりゃ」「すご」「でも最高。。。」って感じだった 笑。まるで一つの音楽の中に春と秋の景観を両方持ってるみたい。あまりにも不思議で、ジャケットの世界もこの世のものじゃなく見えてくる。

優しいインディーロックを奏でるバンドは精神状態にすごく好き。Skirtsの今作でいうと7曲目のTrueとかそう。相変わらず曲調は明るいのにメランコリックって不思議な感じだけど、グルーヴはゆったり気ままな感じで流れてる。特殊な感覚のインディーロックだけど、音楽は全て気持ちよさを目指しているんだなっていうのが伝わる。やっぱり大好き。トロピカルなSwim (M6)、カントリーっぽさが可愛らしいSapling (M9)もそんなような意思が伺える。「また超絶大好きなインディーロックのアーティスト見つけた...!!」って思った 笑。

Skirtsが所属してるDouble Double Whammy、LomeldaだけでなくFrankie Cosmos、Florist、Sean Henryとかと同じレーベルだった。やっぱり春とか秋に聴きたくなる曲。ただ湖の涼しげなジャケに関してはめっちゃ夏っぽい(←めちゃ大好き)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Anna Meredith - "Bumps Per Minute (18 Studies for Dodgems)"

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遊びに行けない今のご時世だからこそ!

 ユーモアに富んだ天才アーティストによる奇想天外のアトラクション型エクスぺリメンタル…!!マルチジャンルとか変拍子とかのエキセントリックなテクニックを駆使しまくるAnna Meredithの音楽には、リスナーのことをぶっ飛ばしていくような激しい楽しさがあると思う 笑。前作Fibs (2019)のParamourとか、2010年代における私屈指の大大大好きソング(大大大好きMV)なのだけど、今作はそんな彼女らしさ全開でもってアミューズメントパークのバンプカーをコンセプトにした作品...。リスナーをぶっ飛ばすエキセントリックさがあるAnna Meredithのキャラと、思いっきりはしゃぎたくなるような遊園地の世界観、それぞれの連動によって音楽の楽しさがさらにハイレベルなものに、、、このコンセプトはほんとにAnna Meredithと相性抜群すぎると思う!!(ToT)笑。バンプカーのアトラクションにぴったりなトランス系のシンセを用いながら、レースの緊張感、目眩が起きそうなスピード感、加速したりドリフトしたり飛び跳ねたり、バンプカーのレースと同じ質のワクワクを的確に演出できてる。BPMで始まる18の楽曲はそれぞれがコースのステージみたいだし、その中でAnna Meredithのテクニカルな作家性がアトラクションの特殊ギミックみたいになってて尚おもしろい。彼女のポテンシャルの発揮とゲーム性の再現が相乗的なよさになった とってもスペシャルな一枚。すっごく楽しかった...!笑

Varmints (2016)やFibs (2019)のようなクラシックからハードロックまで融合させる従来の異次元スタイルと比べると、今作はシンセを主軸としたエクスペリメンタルポップな感じがする。1曲1曲が劇的な作曲性を持ってるというよりかは、数多くのアイディアがミニトラックとして集合して成り立ってるアルバムだけど、その中でも11曲目のBPM72 (M11)がものすごく強烈だった...!レースの緊張感やスピード感もそうだけど、この曲だけ何かバトル時のBGMのようなめちゃめちゃカッコいい曲調の興奮がある 笑。テーマパークのアトラクションのハッピーな雰囲気とはまた違う、もっと本気になって勝負に挑むような情熱と集中力。トランス系のシンセがシグナルを点灯させるように鳴りながら、緊張感やスピード感をどんどん煽っていく...。これは本当にアツい!そしてもうバンプカーじゃない!笑。でもきっと、Anna Meredithはこの曲も爆笑しながら作ってたんだと思う 笑。ほんと、彼女の音楽はめちゃめちゃ楽しい。リスナーをぶっ飛ばす激しい楽しさといえばDan Deaconとかもそうだと思うけど、彼女の場合は例えばBPM 124 (M7)とか、背筋が凍るようなホラー系とか、エクスペリメンタル作家ならではの幅広い表現の楽しさがある。そういう怖さも、BPM 62 (M6)とか子供みたいに陽気な可愛い曲を交えがら繰り出したり...。(チューバのBPM 194 (M17)は怖さと可愛さが半々。)Ann Meredithのそんなハッピーな人間性がとてもとても大好きなんです。。。笑(Varmints (2016)とかマジで神アルバムだと思う。)

夏といえば海、花火、そして夏休み。。。去年も今年も遊びという遊びは全て死んでしまったけど、Anna Meredithによる遊園地の音楽化は、そんな遊びに行けない今のご時世だからこそより刺さる仕様になっていたかもって思う。友達とどこかに行って遊ぶ、遊園地はそんなアウトドア系の喜びの一つの象徴的なもので、Anna Meredithによるその感覚の再現は、間接的にアウトドアの喜びの再現になり得たということ。私は別に定期的にディズニーに行くようなパリピ(私「おいそれはパリピを誤解してるぞ」)ではないのだけど、それでも友達とテーマパーク行くときのワクワクってめちゃパワフルだって思う。Anna Meredithは、そんな恋しいパワフルなワクワクのイメージを届けてくれた。サプライズリリースでこのクオリティ、大満足。ありがとうございます(((^_^)))笑

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Emma-Jean Thackray - "Yellow"

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『第三の目を開眼せよ』

 Hiatus Kaiyoteみたいに綺麗な色彩を放つジャズでありながら、Kamasi Washingtonみたいに宇宙を創造するような壮大なジャズでもあるという凄まじさ。ド派手なアンサンブルにたくさんの愛を込めたようなその音楽は、驚きと興奮に包まれた祭典のよう。楽器のキャラクターも多種にわたって豪華だし、曲のストーリー性も充実してるし、何よりそれらが組み合わさって完成されるような高いインパクトがある。こんなにも大作なアルバムってなかなか出会えない気がする...。2曲目のSay Somethingでその偉大さを思い知った。ドラムがバチバチに攻めながらメロディーとメロディーが交錯していく自在なアンサンブル。フロアを盛り上げるようなディスコのグルーヴでリスナーのハートを鷲掴みした後、歌のコーラスとフルートのダブルによる魔法のようなパッセージを放っていく...。花を一気に満開まで咲かせるような威力の高い華々しさ、生命エネルギーの強い躍動、それらのニュージャズならではの多彩な迫力…。綺麗だしゾクゾクするしカッコいいしで、最初聴いたときは「ヤバ...」って思った 笑。そういった傑作ソングがVenus (M4)、Third Eye (M6)、Sun (M8)などなど、1曲に留まらず並立してる。ジャズトロニカとかでもない限り、私は本格的なジャズってKneedelusくらいしか聴かないのだけれど、そんな私でもビビッとくるくらい、Emma-Jean Thackrayの今作は前衛的で衝撃的な作品だった。とても聴きやすかった。

6曲目のThird Eye (M6)とかも本当に凄まじい。ファンクとかのワイルドな特性を持ってるEmma-Jeanの音楽の中でも、この曲は鬼気迫るようなゾッとする迫力がある。神経が高ぶるようなヒステリックな興奮すら感じさせるのだけど、そういう音楽の中で「第三の目を開眼せよ」みたいなこと歌ってるのがマジでめちゃめちゃヤバい、、、。それまでの多彩な迫力とはまた一味違ってて、black midiみたいなバケモノ感にも通じるものがあった。Emma-Jeanはこういう曲調の曲も傑作。意味深いスピリチュアルなコンセプトを持ってるジャケットの世界観とか、そういうアート性の部分もツボだった。

あとEmma-Jeanの最高の魅力は手数が多いドラムもそう 笑。パフォーマンスのカッコよさというのはもちろん、音が次々と高速で繰り出される気持ちよさなんかも。ドラミングのよさってメロディーでは決して表わせない要素だと思う。Our People (M13)とかめっちゃよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Low Roar - "maybe tomorrow..."

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私にドストライクなアイスランド音楽成分

 Low Roarの今作は、澄み渡るようにクリーンで、叙情的で、飲み込まれるように深く、そしてとてもドラマチックなものだと思う。その世界観は彼が拠点にしているアイスランド大自然が映し出されたみたいに尊くて果てしなくて、心揺さぶるような激しい美しさがある。現実にこっそりファンタジーを添えるようなアクセントがたまらなく綺麗なDavid (M1)、ドリーミーな温もりに包み込まれる感覚が愛おしいHummingbird (M4)、エレクトロニックや金管の多様な音色で優しさを目一杯表現するEverything To Lose (M12)...。どの曲もアイスランド音楽の成分が確かに感じられる 笑、洗練されたサウンドスケープも音楽のドラマ性もすごく大好きなやつで、心ゆくまでどっぷりと浸かりたくなる。その中でも9分の超大作ソングのFucked Up (M3)とか本当にヤバい。飲み込まれるように深さがあるLow Roarの音楽の中でも、こちらは夜空や海の世界に潜り込んでいくような壮絶な感覚の恐ろしさがある曲。それでも琴線に触れるような煌びやかなピアノに満ちていて、恐ろしさが持つ絶大なパワーが全部美しさとして影響するような構造を持っている。本当に、凄まじい感動。この恐ろしさと美しさが両立した感覚はColleenのThe Tunnel and the Clearing (2021)とかに似てるかもしれないけど、Low Roarのこちらはもっと大規模なストーリー性としての感動がある。音楽のピタッと止める静寂の利用とかも とてもとても見事。1時間越えのアルバムだけど、それに見合う巨大なよさを持ってる作品だった。

私は友達とかに「普段何聴くの?」って言われたら「Sigur Rós、Bon Iver、Sufjan Stevensとか、そういうやつ」って答えてるのだけど、そんな私の好みのド直球ストライクな感じの曲が今作9曲目のCaptain。これはもうめちゃめちゃ大好きな曲だった。鉄琴系のサウンドで流れ星のような景色を見せながら、豪華なオーケストレーションとダイナミズムを作る音響系のアプローチを使って、音楽の世界をこれでもかというほどに美しいものに高めていく。私が1番好きと言っても過言じゃない 笑。素敵なメロディー、音響的臨場感、ドラマチックさ、神秘性、それらの優しさや温もりの感覚...。私の大好きなものの塊みたいなのに、それらがジャケットのブルーのイメージみたいに深化しながら私に与えられていく。。。これは素晴らしすぎるって思った。3曲目も相当な名曲だけど、それ以上にハマるナンバー。Sigur Rós、Bon Iver、Sufjan Stevensとかが大好きな私の好みを確実に具現化してる感じの曲だった。

今作はピアノが主体のエレガントで大人びてる部分が印象的だったと思うけど、このピアノが音楽のドラマをもっと濃いものに仕上げていたと思う。まるでSamphaの(No One Knows Me) Like The Pianoのような、誰もいない部屋の中で響くようなピアノ。何か思い馳せたり、切なくて胸にジーンと来たり、そんなフィーリングがよく表れてた。そういうしんみり系の性質も、ジャケットのブルーのイメージとぴったりだったと思う。アコースティックな作風のLow Roarよりもより一層好きな作風。1曲目、4曲目、9曲目が特に大好き。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Drug Store Romeos  - "The world within our bedrooms"

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"私には秘密の計画があるの"

 Drug Store Romeosのベッドルームポップは、夢現な感覚と、音楽のファンタジーが持つ想像性、そういったものへの憧れが目一杯詰まってる作品だと思う。ボーカルのSarahが7歳のときに祖母から授かったペンダントのアートワーク、そのイメージと完璧に一致するような紫色の魅惑を持ったドリーミーなシンセ、そういった世界観の中で奏でられるSarahの尋常じゃないほど可憐な魅力を持ったボーカル...。それはまさしく、アルバムタイトルの"私達のベッドルームの中の世界(The world within our bedrooms)"へ連れて行かれる体験で、まるでファンタジーの夢を見るような、またはラビットホールへ迷い込むような、ワクワクとドキドキが入り混じった最高に素敵な体験だった。もう無限にうっとりする。。。笑。「私には秘密の計画があるの (Secret Plan (M2))」、「あなたは何を考えてる?(What' On Your Mind (M8))」、音楽以上にアルバムとして持ってるセンスの一つ一つが素晴らしいし、ベッドルームポップからダンサブルなシンセポップ、さらには幼くてキュートなチルドレンミュージック系の作風まで、Sarahの激ヤバ級に素敵なボーカルが発揮されてる。マジで大好きな曲ばっかりだった。

1番心奪われた曲は8曲目のWhat' On Your Mindかも。今作におけるシンセの音色はもれなく全て最高だけど、夢現な感覚や音楽のファンタジー、それらの深みというところに関してはこの曲のシンセが最もハイクオリティに感じる。Sarahの歌声、アートワークのとろけるような紫色、彼女達のベッドルームの世界...。こんなにも幸せな気分になれるのに、そこからそれらの喜びをもっと高めるように音楽がテンポアップしていくのがこの曲の見事すぎるところ。なんて嬉しいサービスなんでしょう...笑。Frame Of Reference (M6)やNo Placing (M9)に特徴的だったダンサブルなハピネスすらも、このWhat' On Your Mind (M8)でゲットできるという贅沢さ。Secret Plan (M2)も超超超名曲だと思うけど、それと同じかそれ以上に好きな曲だった。

あとPut Me On The Finish Line (M13)とかも大好き。あどけなさが感じられるような可愛らしいワルツのグルーヴ。Drug Store Romeosのベッドルームポップはこういう作風の曲もめちゃめちゃ似合ってると思う。私はMamalarkyとかピュアネスが激しい曲が超好きなので、この曲にもノックアウトされまくってた 笑。なんといってもやっぱりSarahのボーカルがずっと最強の素敵さを誇ってる、、、5曲目のWalking Talking Marathonとか声の響き方もうGregory and the Hawkメレディス・ゴドルーやん...って思ってた。(←メレディスは私の好きなボーカリストランキング2位くらい。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Clairo - "Sling"

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風情や情緒を抱きしめて、ありったけの温もりを受け取る

 今まで私が持っていたClairoのイメージは、"クールなのに優しくてありえないくらい素敵なローファイ・チルアウトの宅録系ベッドルームポップ" だった。もしもそんなClairoの音楽が、自分のワールド内に閉じこもるようなベッドルームの空間から、風情ある街並みや雄大な自然、それらの外の世界へと出会うように音楽のワールドを広げたら一体どうなるのか...。情緒溢れるクラシカルなフォークポップのスタイルが印象的な今作Slingは私にとってそんなアルバムで、奥深いフィーリングの特別な美しさを提供してくれた。ディープでエモーショナルなメロディーを心ゆくまで堪能できるBambi (M1)、従来のポップの作風を大人びたアレンジで進化させたAmoeba (M2)、Clairoの至高のピアノバラードをフォークでもっとメロウにしてるHarbor (M7)、そしてシンプルなアコースティックの響きが泣きそうになるほど暖かいJust For Today (M8)...。彼女の以前までのポップにはなかったような、心奪われるような重みのある感動がある。世界観も宅録系ドリームポップのような音楽が持っている景色とは違う、ジャケットの雪景色のようなもっと実世界の澄み渡った空気が感じられたり。聴けば聴くほどその素晴らしさにどんどん虜になる。個人的には、音楽からどこかオールドムービーのような大人のロマンスが感じられるようなところが本当にめちゃめちゃ大好きで、こちらのClairoの作風も最高なんだなって思った。ポップやロックを取り入れてある前半パート、涙が誘われるようなバラード色の強い後半パート、どの曲もめちゃめちゃいい。

私的Clairoの神神神ソングのBagsのイメージが脳内に思いっきりこびりついてたせいで、今作をリリース初日に聴いたときはそれと同じ系統のポップさを持ってる2曲目のAmoebaにめちゃんこ夢中になってた 笑。私が大好きでたまらないClairoの綺麗なピアノ、心が弾むようなグルーヴ、そしてクールなのに優しいClairoのあのメロディー...、Bagsに通じる私的Clairoのツボ要素をしっかりと抑えつつ、このAmoeba (M2)にはなんとフルートがある、、、!!これ、Clairoの音楽にフルートってマジでぴったりすぎると思う 泣。木管楽器大好き人間の私にとって、クラシカルなフォークのテイストがとても大きなツボになった瞬間。このAmoeba (M2)があっただけでもうClairo万々歳、ありがとうありがとう...って気持ちでいっぱいになってた 笑。そこからのPartridge (M3)やZinnias (M4)みたいなドラムがロックしてる曲も大好き。アルバム前半だけでもかなり最高の内容だったと思う。

繰り返し聴いてる内に、アルバム後半の曲の素晴らしさにどんどん気づいていった。特にHarbor (M7)とJust For Today (M8)とReaper (M10)の3曲は本当に泣ける。。。Clairoのウィスパーな歌声の魅力が最大限に表れてるようなバラード。音楽から溢れてる風情や情緒を抱きしめるように感じながら、ときめきや切なさ、それらのありったけの温もりを胸いっぱいに受け取っていく。バラードの方向性でもClairoは本当に最強だって実感するようなナンバー。Bagsとかとはまた違う新しいよさを確立できてた。これはめちゃめちゃレコードで聴きたくなる。

私はクソバカなので分からないのだけど、ジャケットの動物はネコ?ワンコ?動物のカテゴリーすら認識できてないのに、足だけでもこんなにも可愛いのはなぜ??笑(※あとあと判明しましたがこれは激カワのワンコでした。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Hollie Kenniff - "The Quiet Drift"

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「死にたい」という苦しみとは絶対的に対極なもの

 私が"安心"というものの喜びを心から信じているのは、それが幸せのクオリティを決定する重要なパラメータだと思っているから。自分自身への禁止や拒絶が心の余裕を奪うように、自己否定による「死にたい」という苦しみは、"緊張"や"不安"と密接な関連を持っていると思う。だから、視野の狭い単純でストレートな考えでいけば、緊張や不安の逆の概念である"安心"こそが、ありとあらゆる"幸せ"の本質的な部分なのだと、そんな風なことを信じている。Hollie Kenniffの聖なるアンビエントがもたらす感情的な作用は、そういった安心を実感する上でとても有効な手段なのだと思うのだけど、それは想像を遥かに超える、とても巨大な作用だった。リズムや旋律のない半透明な色をしたサウンドは、不明瞭で、不完全で、まるで実体を持たない幻のよう。その幻のようなサウンドの中で、確かに存在しているものがある。ゆっくり、ゆっくりと動いているものがある。それはまるで、静かに呼吸をする生物のようで、または遠い記憶の中でかろうじて生きている過去の感情のようで、あるいは何かの魂そのものなのかもしれない。その存在の確認は、私が生きていることを実感すること。そして、私が私自身のことを許して、認めて、どれだけダメダメな人間でも、「私が私のことを愛する」というかけがえのない行為。実は私は、あまりに大きな感動のショックを味わうと手足が麻痺してしまう過呼吸症候群の症状が現れてしまうのだけど、Hollie Kenniffのアンビエントを聴いたときにそれが起きてしまった。あまりにも嬉しくて、涙が止まらなくなって、気絶しそうになるほど感動した。2曲目のQuellでもう涙腺がいかれてしまう。アートワークの世界で示された青空のように、音がどこまでも果てしなく伸びていく中で、人間的な生々しい温もりがあるストリングスの感覚をじっくりと発生させる。こんなにも非現実的な音楽なのに、夢のような世界なのに、それらの音の愛が現実味を持って、確かに私の中に存在している。これ以上に嬉しいことがあるのだろうか、そしてこれ以上に美しいことがあるのだろうか。私は、これこそ安心というものの真の姿なのだと思った。リアルを定義付ける"存在"というものこそが、安心の正体なのだと思った。「私は、今、ここにいる」、何千万年も太古の昔から、大地があり、空があり、木々があるのと同じように。私が芸術に抱いている憧れは、人生のほとんどをそれに捧げたいと思うほど夢中になるのは、芸術の特別な表現による"存在"を手に入れたいと願うからなんだと思う。Hollie Kenniffの今作は、それらを叶える作品だった。それは、自分が自分の大切な人に愛される感覚と等価である。あまりにも衝撃的な感動を、何度も何度も味わった。

安心、その他ヒーリングをもたらすアンビエントの音楽について、似たような作風の、似たような構造の、似たようなコンセプトの作品なら幾つものあったと思う。それでもHollie Kenniffの今作がそれらのどの作品とも異なっていたのは、アートワークが持つ強力なリアリティズムにあったと思う。同じ作風のアンビエントでももう比べ物にならないほど、私が死ぬほど好きなアートワーク。遊園地の空間、コーヒーカップの質感、アンビエントが所有する幻夢やファンタジーの非現実的な要素に対して、とても現実的に影響している力がある。そしてアートワークの中にいる背中を向けた人物に興味を抱くことが、アンビエントの非現実的な世界への引力にもなる。音楽とアートワークの相互作用がある作品の中で、ここまで強力な素晴らしさを持ってる作品は出会ったことがないって思う。快晴の青空、遊園地、そして女性が一人...音楽の物語への想像性という点でも最高の充実性。本当に魅力が止まらないアートワーク。これはレコードを手に入れないと気が済まない作品。

3曲目のSome Day if Some Day Comesも強烈に素晴らしい。こちらはもっと聖なるオーラが色濃く表れてる曲。深い眠りに落ちて黄泉の国へ導かれるような音楽なのに、音が僅かに、僅かにして燃えている。魂が解放されたような世界の中で、まだ僅かにエネルギーが残っている。なんて凄まじい描写なのだろう。これもまた、私が手に入れたいと望む"存在"の概念そのものだった。それを感じていったとき、私の中で安心が生成される。緊張や不安などといった、「死にたい」という苦しみとは絶対的に対極な、この上なく尊い喜びを実感していく。それは、「この感覚を永遠に忘れないでいたい」と思う瞬間だった。

....私のようなちっぽけな人間が何かを分かったように偉そうに話すのは大変おこがましいけど、それでも、とにかく、Hollie Kenniffのこの作品が大好きだった。大好きでたまらなかった。改めて、自分がどういったものに憧れを抱いていたのかを再認識できた作品。Goldmundとのフィーチャリング、Mint Julep的シューゲイザー・ドリームポップ要素があるStill Falling Snow (M7)などもよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

0. Various Artists - "「竜とそばかすの姫」Original Soundtrack"

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※ランキング関係ないけど大好きすぎるので追加

 私のオールタイムベスト映画は『おおかみこどもの雨と雪』『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』『シング・ストリート』とかなのだけど、『竜とそばかすの姫』もそこに並ぶ私にとっての神映画。もともと『おおかみこどもの雨と雪』における高木正勝さんのオヨステ・アイナとか、スタジオ地図のサントラって死ぬほどの名曲があると思うのだけど、『竜とそばかすの姫』のサントラでも遠い音色 (M4)とか儚い日常 (M7)とか、それと同クラスの名曲が複数あった。こういうの聴くと、自分の人生がいかに かけがえのないものかを思い知らされるみたいで、もう目ん玉がギタギタになるまで泣く。本当に泣きまくる。特に 遠い音色 (M4)は物語的にはなればなれの君へ(M26)の伏線的な役割を持ってるのが音楽的にありえないくらいヤバい。何度聴いても死にそうになる。もちろん、作中で大きな見どころになっているBelleの曲も言わずもがなのヤバさ。細田監督が作詞ということもあり、映画を通じてメッセージ性がストレートで分かりやすく本当によく刺さる。はなればなれの君へ(M26)は、分割することなく8分間丸々一曲にしてくれてありがとうって感じ。『竜とそばかすの姫』は7月末の時点でIMAXで8回鑑賞したのもあってか、サントラの再生による映画館の感覚の再現性も強い...。シング・ストリートのサントラも超超超名盤だと思うけど、それ以上に愛してるかもしれない。。。

サウンドトラックのアルバムって好きな曲が数曲しかない場合が多いかもしれないけど、それでも大好きでついついCD買ってしまう。本作品の音楽は神コンポーザーの高木正勝さんではないけど、本作品のテーマとなるインターネットの多様性に沿った複数の作曲家の参加ということでこれまた素晴らしかった。通常の音楽作品と映画音楽を並べてよさを比較するのはちょっとムズすぎるけど、それでも『竜とそばかすの姫』のサントラはちょっとヤバかった。。。(映画の感想もどこかで発信できたらいいな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

プレイリスト

Apple Music ↓

温の「2021年7月ベストアルバム(温)」をApple Musicで

Spotify

open.spotify.com

 

その他 よかったもの

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Alphabet Holds Hostage - "Motherblossom - EP"

andrea_andrea & Kazuma Matsui - "GIRLS"

Darkside - "Spiral"

The Go! Team - "Get Up Sequences, Pt. 1"

Half Waif - "Mythopoetics"

Jodi - "Blue Heron"

K.D.A.P. - "Influences"

Leslie Winer - "When I Hit You —You'll Feel It"

MARK BLOOM - "Fünfzig"

Mega Bog - "Life, And Another"

Museum Of Love - "Life of Mammals"

Tangents - "Timeslips & Chimeras"

Twin Shadow - "Twin Shadow"

Various Artists - "Red Hot + Free"

Yves Tumor - "The Asymptotical World - EP"

 

 

 

「2021年上半期『月間ベストアルバムTOP10』から漏れてしまったベストアルバムTOP10」感想

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毎月新譜のよかったランキングTOP10を作ってるけど、そこから漏れてしまったorよさに遅れて気付いたor見逃してたアルバムに対して、ごめんの気持ちを乗せて感想を書くコーナー。。。だけど選んでみたらこれまた多すぎて...(T_T)(T_T)。なんとか10枚ピックアップしてみた。(どうして10枚なの → きりがよいから。)

 『月間ベストアルバムTOP10』から漏れてしまったベストアルバムTOP10の感想。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. Arab Strap - "As Days Get Dark" (3月)

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尊さすら感じさせるダークネス

 「スコットランドのスローコア・トリップホップのバンド」ってだけでもう大好きが止まらないのだけど、実際クラシック音楽みたいな上品さを兼ね備えた至高のダークネスを持ってて本当にカッコいいなって思った。トリップホップ系のじめじめとしたダウナー感のオーラ、ポストパンク~ニューウェーヴのクールな世界観(Compersion, Pt. 1 (M3), Here Comes Comus! (M7))、さらにはアコースティックギターアルペジオで奏でる北欧感のある風情とか...。ボーカルも色気が隠しきれないほど綺麗なロートーンボイスだし、物語の語り手みたいな感じで少しラップっぽく歌うとか...。アルバムを構成してるパーツの一つ一つがめちゃカッコいいって思う。冒頭の1曲目The Turning of Our Bonesからもう全力で惚れる。闇がとても深いのに、音楽自体は分かりやすいフックを持っててとてもキャッチーな感じ。ピアノ伴奏とかストリングスによる抑揚の装飾とか、尊さすら感じさせるようなダークさに仕上がってると思う。ジャケットのクリスチャンなイメージとかもそんな雰囲気、このダークネスは本当に大好きだった。ジャケットについてはよく見るとゾっとしてしまう怖さがあるけど、作品が持ってる闇を印象強くするアクセントとして利いててすごくいいなと思う。

8曲目のFable of the Urban Foxとかもすごく好き。こちらもピアノとかストリングスが全力でカッコいい感じ。初期のJames Blakeとかそうだけど、この曲みたいに「ゴーンッ...!」って衝撃の余韻を残すピアノのサウンドが本当に大好きで...笑。ストリングスも歌いまくってるけど、曲としては表現力豊かなオルタネイティブロックとして完成されてる。グルーヴとか含めてよさ密度の濃い曲だと思った。

偉大なるMassive Attack様やPortishead様、ダークなトリップホップのバンドってやっぱり超最高だと思うのだけど、Arab Strapのダークなトリップホップには、それらにはない聴きやすさのあるメランコリーが感じれらた。初めてジャケットを見たときはキツめのメタルとか、全く好きでないタイプのヒップホップの作品とかだと勝手に想像してたけど、ごめん全然大好きでした 笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Tala Vala - "Modern Hysteric" (2月)

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音楽が持つ不完全なドラマ

 何度聴いても新しい鑑賞的価値を見出せるようなインストゥルメンタルのエクスペリメンタル。ゆったりめのスペースディスコなクラブミュージック感(Angel Organ (M1))、ギターを重視したインディーロックのテイスト(Beach Tranquiliser (M3))、Cartoon Saloonのアニメみたいなバリバリに民謡な世界観(Reoccurring Weather (M4))、そして厳格で崇高なポストクラシカルの現代音楽(Orbits (M7))...。未来や過去、現実と空想、ワールドとワールドが重なり合う中をぐるぐる巡っていくような、とってもハイな音楽体験がある。インストだけどどの曲もRöyksoppのRöyksopp Foreverみたいにとても分かりやすいドラマが用意されてるから、インパクト大のアドベンチャーに仕上がってて本当にグッとくる。ワールドが多様な分、音楽が持つ感情の幅もすごく広くて、エモーションが次から次へと生成されていく感じも本当にたまらない。タイトルトラックのModern Hysteric (M2)とかめちゃめちゃそう。ヘヴィなドラムを強調したハードロックかと思ったら、Bon Iverのi, iみたいな華やかな歓喜の歌を突然発動させたり。同じ音楽の中で怒りも愛も同時に発生するような、とても揺さぶりの強い曲。骸骨と花の二つのアイコンを象徴したアートワークを完璧に表現してる感じが本当に素晴らしいって思った。生と死、相反しているようで共通性が微妙にあるような絶妙なアートセンス、私はこの部分だけでもうすごく「ベストアルバムーーー!!」ってなる 笑。メロディーも伴奏と主旋律の区別がつかないくらい全部最高だし。最初聴いたときは内容が全然頭に入らなくて困惑してたけど、そういう衝撃的で圧倒される体験も込みでよかったなと思う。

とにかく本作は音楽のストーリーがいくつも用意されてて、アルバムを通して鑑賞するのがとても面白い作品だと思うのだけど、クラシックを重視した終盤のOrbits (M7)は特に感動した。本気を出した弦楽四重奏のパート、憂いのエモーションを感化させまくるようなメロディーに思い切り涙が誘れる。タイトルトラックの2曲目が象徴していたような骸骨と花、生と死のテーマを、また別の視点で捉えた音楽の感じ。2曲目とは印象が全然違うけど、こちらもすごく心奪われた。一つのコンセプトでこんなに色んな発想を入れられるなんて...。

音楽は感情に直接的な芸術だと思うけど、同時に不明瞭で不完全なアートでもあると思う。だからこそ、想像をよく広げることができるし、その世界の中で自分は主人公になって、その物語の中を思う存分に冒険することができる。それでいうと、Tala Valaの今作は映画音楽・ゲームミュージックみたいに音楽のドラマがはっきり確立されてて、そういう冒険がいっぱいできるような作風だったと思う。音楽だからこそ楽しめる不完全なドラマ。(不完全すぎても困るけど...笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Codist - "A Dream Is Just a Big Thought" (1月)

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やるせない気持ちをロックしたい

 Codistのギターロックがたまらなく愛おしいのは、エモに差し掛かりそうなくらい元気でストレートなのに、何か憂いの思いを抱えたような、後悔でため息が漏れるような、やるせない気持ちのセンチメンタルな感情をたくさん所有しているところ。うまくいかないことがあったり、失敗して傷ついたりで気分が落ち込んでるとき、それでも前向きになろうとするようなメロディックなポップさを持ってるロックだということ。私は学生の頃からこういう類のロックでずっと育ってきたわけだし、私の音楽好きの原点みたいな部分に重なるところが多いような、もう100%に大好きなやつ。ガツガツ突き進んでいくような激しさがあるのに豊かなフィーリングスで溢れてるようなMany Clouds (M1)、淡々とギターロックしてる中にエモーショナルなコーラスがとても気持ちよく響くCarrying the Milk Around (M2)、そして悲しみにグッと耐えるような思いを込めて一生懸命にロックするHeaven Handed (M8)...。汗かきそうなくらいアツくロックを奏でてるその姿は無器用でカッコ悪いかもしれないけど、それでも心に素敵に作用するような、メロディックでポップでエモーショナルなものが最高に詰まってる。私はやっぱり、こういうロックは永遠に大好きだなって思う。"A Dream Is Just a Big Thought"というタイトルだけでも今作のよさが滲み出てるし、バンドのキャラクター的に見ても自分がすごく信頼できる感じ。シャキシャキでサクサクのギターサウンドの聴き応えという点でもとてもよくて、単純にギターロックとしてバッチリ。とても大好きだった。

ロック&ポップスというジャンルは実に広大だと思うけど、その中でもCodistの今作で大きく惹かれたところは、Yvonne DeBibble (M3)、Find the Water (M7)、900 Years (M11)のようなメランコリーなナンバーのたまらなく美しい曲たち。Many Clouds (M1)のようなパワーポップ・エモ系も間違いなく大好きなのだけど、これらの3曲のよさはまた一味違うと思った。Yvonne DeBibble (M3)はライトなロックの曲なのに、歌はまるで失恋ソングみたいに悲しく響いてる。とてもとても切ない。それは胸を引き裂くような苦しくて痛いものじゃなくて、Codistの元気なロックだからこそのちょうどいい具合の切なさのやつ。こういう曲で、私は自分の中で捨てられずに溜まったやるせない気持ちとかを発散できると思うのだけど、そういう曲が本当に好き。Find the Water (M7)も素晴らしい。メランコリックだけどリバーブの効いたクランチのトーンのギターの輝きはとてもロマンチックな美しさを放ってる。私の中で去年のJunk Drawerに匹敵するレベルのよさ、今作ではMany Cloudsみたいな曲が中心でリードトラックだと思うけど、こっちの曲もかなり最強だと思う。パワーポップ・エモ系とメランコリックでセンチメンタル系、こんなにも充実してるのに、ラストを飾る900 Years (M11)もこれまた傑作。今までのロックの熱量、胸を締め付けるエモーショナルさ、それらの感動をクライマックスでダイナミックに見せるような大作ソングのやつ。ラブハウスで演奏されるようなロックンロールを越えて、もっと大きな空間で繰り広げるようなスケール感がある。一度聴いたら圧倒されるような曲だと思うのだけど、アルバムの最後の最後までこんな切り札・必殺技みたいな曲を用意してるのが本当にすごい 笑。音楽性、アルバムのテーマ、内容、総合的に1枚のアルバムとしてめちゃ完成されてる作品だって思った。

失恋ソングみたいな歌のYvonne DeBibble (M3)、"And I let nostalgia beat the shit out of me on a daily basis."って歌詞がすごくすごく好き。私もノスタルジックなものに日々打ちのめされてる。何か静かな悲しみを帯びているような、やるせない思いに包まれるような、そういった感覚がたまらなく好きだから。Codistめちゃよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Erika de Casier - "Sensational" (5月)

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テクニカルなエレクトロニカ系センスの次世代R&B

 Erika de CasierのR&B・ソウルが最高に魅力的なのは、今にも消えてしまいそうなくらい儚くて静かな音楽なのに、音を連続的に発生させるテクニカルなエレクトロニカ系のセンスで、音楽が絶えず流れ、儚さが持つ死とは反対のニュアンスを生み出しているところだと思う。分類でいったらヒーリング系の音楽に含まれそうなのに、ビートが細かく刻まれていたり、音数が多かったり、何か動きが大きいアクセントが常に存在してる感じ。なんておもしろくて、綺麗で、そして最高にカッコイイんだろう...!。ボーカルは溶けて無くなっていくみたいにソフトなのに、旋律は華やかに舞うようにいつも踊ってる。それはFKA Twigsのように琴線に触れて感受性を刺激しまくるような儚さとはまた違う、心の中でほんのりと高揚感が残すような特別な美しさ。本当に珍しい音楽だなって思う。特に私的にはエレポップ・シンセポップ味を感じさせるSomeone to Chill With (M7)とか、ハウスミュージックのようなダンスフロアの演出が濃いBetter Than That (M9)やBusy (M12)など、ボーカルのキャラクターがもっとクールなものとして強調されるようなエレクトロニカ要素が濃い曲がめちゃめちゃ大好き...。去年で言えば私的ベストR&BアーティストはぶっちぎりでLianne La Havasなのだけど、彼女のような人懐っこさ全開の人間味ももちろん大好きだけど、こういうエレクトリックなパフォーマンス性を持ってるR&Bアーティストも魅力的だなって。なんならBetter Than That (M13)とか、もうR&Bとか関係なくエレクトロニカのアーティストとして超一流な風格が出てる気がした 笑。

あと私的に今作は5曲目のInsult Meがすごく印象的だった。もともとErika de Casierの今作は、民族音楽系のアレンジとかピアノ大活用のクラシック・ジャズのようなスタイルとか、エレクトロニカ以外の音楽の作り方をたくさんしてるけど、その中でもInsult Meのハープ的な弦楽器のメロディーには、ゼルダの伝説とかファイナルファンタジーみたいな世界観があったと思う 笑。個人的にめちゃめちゃテンションが上がってしまった。一般的なR&B・ソウルやアフリカンミュージックにはないような、何かスピリチュアルなものや超自然的なものを感じさせる気配。それもどちらかというと、和の精神に近い東洋系の世界観のイメージ。伝統的なブラックミュージックを越えて、自然世界からクラブミュージックのようなダンスフロアの空間まで、型にはまらない自由なワールドをいくつも持ってる。改めて本当におもしろいなって思う。彼女が次世代のアーティストと言われても全然納得する。

Erika de Casierは作品だけでなくアーティストとしても見てもかなり好き。ポルトガル生まれデンマーク育ちという個性的なルーツ、学生時代にErykah Baduに夢中になっていたこと、近所迷惑にならないように小さな声で歌うことをマスターしたこと(←ここが特にヤバい。。。)音楽からも彼女の特別感は滲み出てると思うけど、その根幹を担うパーソナリティもめちゃめちゃ特別だということ。改めてもっともっとファンになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Wild Pink - "A Billion Little Lights" (2月)

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安らぎに身を預ける瞬間

 "A Billion Little Lights"(億個の小さな光)というたまらなく素敵なタイトルの今作は、ただ普通にロマンチックな作品なのではなく、カントリー・フォークのほのぼのとした性質の特別な光を持っている作品。それはとても優しくて、純粋で、一つの邪念や疑心なども存在していないようなもの。ゆったりのんびりしてる平和的なグルーヴや、春めいた空気を感じさせるような暖かさがあるドリーミーなサウンドスケープ。親しみを覚えるような、懐かしさが残るような、そういった強力な安心感を持ってる感じ。こういう音楽に身を預ける瞬間がすごく好き。音楽の安心感をもっと強調するようなフォークロック系の曲から、Track Mud (M8)みたいな子守歌・バラードのような曲まで、アルバムが終始ピースフルな幸せで満たされてて、油断してると泣きそうになるくらい癒される。ドリーミー路線を極めたAmalfi (M4)とかも今作において超有力なナンバーだと思うのだけど、中でも私は、ロック力の高いThe Shining But Tropical (M3)とかに特に感動してた。もともとWild Pinkの今作はアルバムのアートワークでも示されてるみたいに、寒さの残る明け方時に朝焼けを感じるような、心に沁みまくるフィーリングスのサウンドのやつをたくさん所有してると思うのだけど、そういうサウンドでダイナミックにロックするって本当にヤバいなって思う。フォークロックだからできる美しさの巨大化。裏打ちビートの躍動感も音楽の快感によく貢献してる。インディー・オルタナロックで光属性の作品って多岐にわたると思うけど、その中でもWild Pinkはやっぱりピースフルさと安らぎ、それらの心地よさがトップクラスなバンドだって思った。

Family Friends (M7)みたいな女性ボーカル採用型の曲も最強だと思う。カントリー・フォークのキャラクターの印象が強いボーカルに対して、それらのほのぼの感にハイトーンな声質のキラキラしたピュアネスをプラスするような演出。ただでさえとてもピースフルなのに、さらに畳み掛けるように幸せの精度が上げる感じ。もう最高に満たされまくるから、思わず天にも昇るような気分になる。。。笑。Wild Pinkの音楽には本当に一切の不純物がない。100%の安らぎ。だからこんなにもピースフルな優しさに包まれるんだって思う。

ロックが色濃い前作Yolk in the Fur (2018)も改めていいなって思った。今作だとラストでお腹にどっしりとくるようにパワフルにロックするDie Outside (M10)とかがそう。ただ今作のカントリー・フォークの性質がある暖かさはめちゃめちゃ春にぴったりな作風の感じで、ちょうど3月手前の一番春が待ち遠しくなる2月のタイミングのリリースが本当に最高だった 笑。Skullcrusherやポタロビに並ぶ私的2021年の春アルバム。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Flock of Dimes - "Head of Roses" (4月)

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こんなに綺麗なロックある???

 儚い風情が漂うアコースティックなインディーフォーク、それとは対称的に情熱的なフィーリングが宿ったノイジーなギターロック、そしてエネルギーがみなぎるような多層的なコーラスのメロディー...。Flock of Dimesの音楽は色々なものが組み合わさって完成された芸術的な魔法のようで、それはそれはもう最高に素晴らしい。1曲目の2 Headsは"女性ボーカル版Bon Iver"みたいなやつの、センシティブなサウンドをふんだんに取り入れたナンバーだけど、この冒頭からよさのインパクトがすごかった。Flock of DimesことJenn Wasnerの歌声は本当に華々しくて、メロディーは暖かみのある優しい色を帯びているけど、2 Heads (M1)はその歌を心に突き刺さすように深くまで届ける音響技術を持ってる曲。音楽が持つ色や感情をもっと魔法的に実体化するみたいな素晴らしさ、もう鳥肌がバリバリに立つし、「こんなの感動しないわけないじゃないですか...!!」ってなった 笑。そんなFlock of Dimesの音楽だけど、2曲目のPrice of Blueでは2 Heads (M1)の魔法性をそのまま引き継ぎつつ思い切りロックするような曲で、私がもっと大好きなやつだった、、、笑。ギターはめちゃめちゃノイジーでアグレッシブなのに、Jenn Wasnerの華やかな歌のキャラの存在が強くて、音楽自体はとても上品なものになってる。ちゃんとロックなのに、ロックだとは認識できないような奥ゆかしさと風情...、こんなに綺麗なロックある???笑。1曲目と同じ多層的なボーカルのエネルギーを利用しながらエモーションをさらにさらに高めていくような展開の部分は今作でもクライマックス級の感動。エモーションを高めるだけでなく、その熱が拡散して広がるような気持ちいい温度変化のフィーリングが本当に見事だし、"Alone with you, the price of blue"って詩の響きもものすごく美しい。歌のパート、ギターソロ、どこを取っても抜群、もう感動せずにはいられない。これらの冒頭2曲が紛れもないベストソングだった。

実は私はWye Oakの音源はCD持ってるのにあんまり聴いてなかったのだけど、Flock of Dimesの今作を通じて改めて聴いてみたら、「Wye Oakめちゃめちゃ最高じゃん!?」ってなった 泣。オルタナロックの自在な表現・音楽の魔法性という点ももちろん別格だけど、特にJenn Wasnerの歌のキャラクターが本当にいいなって改めて思う。今作だとWalking (M5)とかも大好き。歌と一緒に新鮮な香りがこちらまで漂ってくるような感覚。音楽のオーガニックなテイストや、フローラルなイメージのアートワークなどの要素も込み込みで、このJenn Wasnerの豊かでメロウな歌のやつがすごくいい。そういう上品なキャラクターすらも、Flock of Dimesならではのセンスで魔法的にアレンジされてるって、やっぱりどう考えても最高だと思う。Flock of DimesだけでなくWye Oakにも戻り、より一層ハマりました。

前半の1,2曲目が最強すぎてて「他の曲劣るんじゃないか...」ってなっちゃうけど、Two (M3)とかLightning (M6)とかOne More Hour (M7)とかAwake for the Sunrise (M9)とか、いい曲めっちゃいっぱいあった。風情のあるアコースティックなフォーク、パワフルなロック、歌、そして魔法性...。Wye Oakのよさに気づくの遅れてごめんという意も込めた、今年の上半期漏れベストアルバム。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Middle Kids - "Today We're the Greatest" (3月)

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正のフィーリングが溢れて止まらない...!

 Kacy Musgravesみたいに、心の天気がどれだけ悪くても必ず晴れをもたらすみたいな、陽エネルギーや正のフィーリングが100%チャージされてるタイプのロック&ポップス。その中でもMiddle Kidsの音楽が特別なのは、ほのぼのまったり系の陽エネルギーとは違って、悲しみを背負いながらそれでも何かを信じるような、絶望に立ち向かうような、そんな力強い希望が込められた陽エネルギーがあるところ。映画でも小説でもなんでもそうだけど、やっぱりこういう風に鑑賞者の信じる気持ちを増強させる作品って本当に身体にいい。Cellophane (Brain) (M2) → R U 4 Me? (M3) → Questions (M4)って流れで、純粋な正のフィーリングをもっとパワフルに、もっと熱く、もっとエモーショナルにロックしていく。そこには、負の感情に屈することなく、解放的な気分に浸るような、それらの喜びを嚙み締めるような、そんな幸せな姿がある。特にQuestions (M4)なんかはそれらの喜びに対して、何か苦しみや痛みにも耐えて泣きそうになりながら歌うところがあるのが本当にヤバい。それはまるで、一生懸命になりながら喜びのことを力強く願うようなメロディー。祝福や歓喜を象徴するブラス隊の効果も合わさって、音楽がもっと大きく輝いていく。なんて感動的なんだろう。自分のことを信じられなくなるようなネガティブなもの全てに対して、それらに絶対負けないMiddle Kidsの音楽の愛を感じたとき、自分の中の正のフィーリングが増幅されて、この上ないほど満たされて幸せになれる。"Today We're the Greatest"、タイトル、アートワーク、そして音楽...。正のフィーリングが溢れて止まらない、そんな作品だった。

10曲目のI Don't Careのイントロとかでも思いっきり泣きそうになる。私がイントロ大好き選手権を開催したら上位はDeloreanとかMarnie Sternとかになると思うけど、このI Don't Careも最高に最高のイントロ。Middle Kidsらしい力強い希望の陽エネルギーがあるのに、胸が裂けそうになるくらい切ない。エモーショナルさの密度がとんでもないレベルで、どうしてこんなに素晴らしいの?って感じ。サウンドとかメロディー、抜け目なく全てが好き。即効性があるから「Middle Kidsのフィーリングを速攻チャージしたい」ってときにはすかさず聴きたくなる 笑。R U 4 Me? (M3)やQuestions (M4)も超名曲だと思うけど、こちらのI Don't Care (M10)も最高に大好きだった。

2017年に来フジしたReal Estate、2018年に来フジしたKacy Musgraves、願わくば私はMiddle Kidsも小雨がふる朝のホワイトステージとかで観たい。心が晴れ渡るような気持ちいサウンド、ネガティブなものが全て消滅するような純粋たる正のフィーリング、フジロックの朝ホワイト(プリキュアみたいに言うな 笑)に本当にぴったりだと思う。てかまずフジロック行きたすぎる。( 定 期 )

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Paul Jacobs - "Pink Dogs on the Green Grass" (4月)

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ドラムがいいお仕事をしてる

 Ariel Pinkみたいなローファイ・サイケ系のインディーロックによる"古き良きロック"の再建。私はLou ReedとかThe Velvet Undergroundみたいなクラシカルなやつって、名曲をつまみ食いする程度にしか聴かないのだけど、それらを現代版として復興させたようなPaul Jacobsのロックに関しては猛烈にハマりました...!!のんびり気ままに過ごすような安心感のあるレトロな趣、ギターのストローク感含めこだわりぬいた至高のグルーヴ、そして気分がふわふわになるようなめっちゃ楽しいメロディーの数々...。トラディショナルな王道ロックンロールだけど、音楽が丁寧に上手にまとまってて、13曲全てがハイレベルのよさの感じ。特に私的にはHalf Rich Loner (M3)とかYour Last Words (M11)みたいにドラムがいいお仕事してる曲がマジで大好きで...笑。Half Rich Lonerに関してはDancing with the Devil (M8)と同じでロックンロール・ブルースのリズムを持ってる曲だと思うけど、こういう腰の入ってるグルーヴってこんなにも最高なんだって実感した。テキトー感がよく出てるローファイの愉快な精神状態もプラス、ノリノリがエスカレートするあまりニヤニヤを我慢できない...笑。Your Last Words (M11)の方はパンチの効いた重たさを持ってるタイプのドラム。スピーディーな中でスネアとかシンバルが爽快にハマっていく感じがすごくアがる!結構激しめなのに、ローファイ・サイケのダラダラのんびり感は健在で、ロックンロールだけど和む部分も残ってる。本当に楽しいロックだなって思う 笑。今作は4月末にリリースされた作品だったけど、他の作品に気を取られていて月間ベストアルバムに入れられなかった...。ほんと、めちゃ傑作の作品。

もう一つ、今作では9曲目のGlory Days, Yesterdayでも唸された。古き良きロックの再建・復興って感じの今作の作風の中でも、この曲だけ現代風のテクスチャを思わせるシンセサウンドが混じってる曲。透明感があってとても綺麗なサウンドなのだけど、"Glory Days, Yesterday"って名前の曲でそういうサウンドを発揮するこの感じがもうめちゃめちゃハイセンス~!って思った 笑。同じ感じでいうとKathy's Bible (M10)とかもそう。もともとサイケデリックな音とかもとても本格的な品質だけど、それらから派生したドリーミー透明感というところもすごくいいサウンド。改めてPaul Jacobsめちゃめちゃ最高じゃん!ってなる 笑。ほんと、ベストアルバムから漏れてごめんなさいです。

ドラムじゃなくてギターという観点だったらUnderneath the Roses (M7)とか特に大好きだった。中盤以降に出てくるメロディーのフックがとにかく印象に残る。"the オールドロック"って感じのムードたっぷりの粋なリフ、こういうところからも古き良きロックの再現が徹底っぷりが窺えると思う。クラシカルなロックに対してそこまで関心を持ってなかった私を黙らせるくらいのレベル、Paul Jacobsほんとにほんとによかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. King Gizzard & The Lizard Wizard - "L.W." (2月)

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テンション爆上がりソングばっかり

 耳にこびりつくような悪魔的なメロディーと、誰にも止められない最強のツインドラム...。『K.G.L.W』という大ボリュームのセルフタイルは、Gang Gang Danceの作風を継ぐようなインディアンでアラビアンなサイケロックの作風、マジで無敵の楽しさを誇ってると思う...!笑。呪文を唱えるような怪しげなギターのメロディーがドラゴンのように舞って浮遊し、音楽の中を駆け抜けていくようにドライブする。グルーヴはとても流動的で、込めた力がスムーズに伝達するような気持ちよさ。ゾクゾクするような世界観で、サイケデリックな陶酔を味わいながら、それらの中毒性のヤバすぎるメロディーとグルーヴにありったけ魅了されていく、、、。もう!本当に!たまりません!!泣泣。これより一つ前のK.G. (2020)も、なんで私ベストアルバムに入れなかったんだろうって超後悔してるくらい本当に素晴らしい作品。今年6月にリリースされたButterfly 3000のときから私の中でキンギザブームがなお加速して、今ではもうめちゃめちゃ夢中になってる 笑。K.G.の方だとOddlifeとか超絶名曲だと思うのだけど、L.W.の今作の方もPleura (M3)、Supreme Ascendancy (M4)、Static Electricity (M5)、See Me (M8)などなど、こちらも劣らずテンション爆上がりソングばっかり。Pleura (M3)とかに関しては一つ前のO.N.E (M2)とのつながりから場面転換のようにして雰囲気が変わるけど、これから何かが起きることを予感させるような強力なドキドキとゾクゾク感がある。そこからキンギザロックが始まったときはやっぱり全力でアがる 笑。彼ら自身も随所で「Whoooo!!」って叫んでるけど、分かるよ、分かるよその気持ち。。。笑。そこから興奮が冷めない状態でSupreme Ascendancy (M4)に移行にしたとき、今度はミニハープのようなとても美しいサウンドがリスナーをお迎えしてくれる。この曲のロックもめちゃめちゃカッコいい。そこからのStatic Electricity (M5)も今作屈指のスーパーリードトラックな感じ、マジでずっとずっと最高...!今作L.W.は中毒性の超高いフレーズだらけだけど、私的にはこのStatic Electricity (M5)が一番中毒性を感じてた 笑。中盤以降で歌とギターが並行するメロディーのところが本当に没頭性が半端ない。テクニカルなツインドラムのグルーヴも「いいぞーもっとやれーー!!」ってなる 笑。1曲目から始まりこの5曲目までのアルバム前半、休憩するところが存在しないくらい終始最高が持続してて素晴らしい。ちなみに6曲目East West Link (M6)もよかった。

See Me (M8)とK.G.L.W. (M9)のラストも、前半と同じかそれ以上の最高さ。See Meは滴るように流れていくメロディー・フレーズもめちゃ魅力的なのだけど、その中でここぞとばかりにツインドラムが無双しまくってる 笑。こういうアップテンポのキンギザのドラムのよさって本当に抜群のよさ、後半でビートの刻みが倍になったときは異常なほど楽しくて「うわーー!」ってなりながら爆笑しちゃう 笑。こういうドラムにもキンギザの音楽の素晴らしさが詰まってると思う。

その後のK.G.L.W. (M9)はモンスター的ハードロックソング、まるで悪魔でも召喚するのかというような邪悪な気配が立ち込めてる。今までのサイケロックとは桁違いな迫力、ワウワウ言いながら暴走するギターに呪いのようなダークなパワーが宿ってる。こっちもめちゃめちゃにカッコいい~~~泣。ロック、ロック、そしてハードロック、あぁ楽しい。。。キンギザもう超絶に大好き!またライブ観たい!

さっきも言ったけど、一つ前のK.G. (2020)をベストアルバムに入れられなかったのめちゃ悔やまれる。何か今作L.W.もセットで、キンギザをベストアルバム扱いできる機会はないだろうか...。もし2020年代のベストアルバムを作るってなったら、上位200位までにはなんとしてでも入れたい!笑

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Lost Girls - "Menneskekollektivet" (3月)

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ミステリアスなものに恋をする感覚か、ダークサイドへ堕ちる死の感覚か

 不気味なものはしばしば、それと出会った人を闇へと突き落とすような危険な感覚を持っている気がする。Lost Girlsのダンスミュージックは、宇宙ないしはブラックホールの無限の暗黒を秘めている音楽で、リスナーが二度と戻れなくなるような、抜け出せなくなるような、そんな強力な重力のダークネスを所持した作品。それはミステリアスなものに恋をするような感覚か、ダークサイドへ堕ちる死のような感覚か、あるいはその両方かもしれない。なんて魅惑的で、美しくカッコよく、そして素晴らしいんだろうって思う。感情を失ったような冷たさのあるエレクトロニカの性質、感覚を研ぎ澄まして集中するクラブミュージックの性質、Jenny Hvalの存在はそれらの特性を所有しているのに、不思議とどこか神々しくて神聖なオーラすら放っている。それらの歌が淡々と響くさまに私はどこまでも虜になる。本当に永遠にカッコいい。今年で言えばSofia KourtesisのEPとか、私はただただひたすらに美しいものへ没頭するようなダンスミュージックのやつがめちゃめちゃ大好きなんだって思ったけど、Lost Girlsのダンスミュージックのやつも今年最上クラスの大好きさ。10分越えの長尺トラックもあっという間に終わってしまう、そのくらい夢中になれる作品だった。

Andy Stottみたいな工場的なサウンドワークが病みつきになるMenneskekollektivet (M1)、ポストパンク・ニューウェーヴみたいなアングラの世界で聖なる歌が絶大な美しさを生み出すLosing Something (M2)、そしてディスコ系の音楽ですらもダークな重力を発生させるCarried by Invisible Bodies (M3)...。どの曲も最高だけど、私的にはLove, Lovers (M4)が1番好き。音楽の緊張感を掻き立てるようなハイテンポなビート、Lost Girlsのダークな音楽性とも相まって、まるで息苦しさすら催すような感覚にまでなってしまう。この高揚感が本当にたまらない。そんな高揚感に包まれた音楽なのに、中盤になると今度はドラマチックな場面が出現してくるも本当にヤバい。誰かを思って呼びかけるように、Jenny Hvalの歌が遠くまで伸びるように響いていく。尊くて、愛おしくて、たまらなく美しいメロディー。緊張や高揚感やダークネスだけでなく、それらからは予想もできないような綺麗な華を持っているということ。15分の曲だけど、本当に素晴らしいストーリー性があった。マジでめちゃんこに大好き。

ノルウェー語で『人間集合体』というタイトル(Menneskekollektivet)のコンセプトも素晴らしいセンスだと思う。不気味で怖いのに、ミステリアス性を十分に持っていて近づきたくなるような鑑賞的価値の余白がある感じ。Arab Strapもそうだけど、やっぱりこういう尊さを持ってるダークネスってすごくツボだなって思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

プレイリスト

Apple Music↓

温の「2021年上半期の漏れ&逃しのベストアルバム(温)」をApple Musicで

 

Spotify

open.spotify.com

 

※「月間ベストアルバムから漏れてしまったベストアルバム」...から漏れてしまったベストアルバムもあります 泣。

(今回だとSG LewisとかElori SaxlとかDry Cleaningがそう)

 

 

 

 

2021年上半期音楽まとめ

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前にもツイッターでいったけど、今年は上半期ベストは選ばないって思う。選んだら年間ベストアルバムになっちゃうから。

2021年上半期音楽まとめ of 私

 

 

 

目次

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2021年上半期ベストアーティスト

Nana Yamato

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自分が学生の頃から通ってたレコード屋さんの店員で、Arcaのノートブックなど私に様々な特典をくれた人が、パラレルワールドみたいに最高に魅力的で特別なミステリアス・ベッドルームポップの作品を制作して、しかもそれがPitchforkであのきゃりーぱみゅぱみゅよりも高い評価を得るなんて、、、笑

pitchfork.com

つまりは中田ヤスタカを越えるよさということで、日本トップクラスの音楽プロデューサーの作品よりも世界的に評価されるってこと...!!本当にウルトラハイパーおめでとうございます!!!!(TT)(TT)笑。様々な海外音楽メディアで取り上げられるだけでなく、Oneohtrix Point NeverもSNSで紹介するレベルというヤバさ。(光栄すぎるでしょ)実際私もBefore Sunriseの渇望 (M3)のエモーショナルたっぷりなメロディーが本当に大好き。この前Big Loveレコードでレコード4枚くらい買い物したときに、予算オーバーしなかったからNanaさん本人の前で「これください」ってBefore SunriseのCDをレジ出した 笑笑。(本人も「あ、、ありがとうございます、、」ってなってた)。2021年上半期のベストアーティストを選ぶなら圧倒的に彼女かなって思う。ほんと、めちゃめちゃおめでとうございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2021年上半期月間ベストアルバムTOP10(ランキング)まとめ

いっぱいあるのでジャケ貼るだけ、、、

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左から右 : 2021年1月~2021年6月
上から下 : 10位~1位

(例) Black Country, New Road → 2月ベストアルバムランキング4位

感想はここ↓

worried10fire.hatenablog.com

その他ベストアルバム↓

worried10fire.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2021年上半期ベストジャケットTOP5

5. afternoon bike ride - "Skipping Stones"

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4. Sharon Van Etten & Angel Olsen - "Like I Used To - Single"

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3. No Joy - "Can My Daughter See Me From Heaven - EP"

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2. Lost Horizons - "In Quiet Moments"

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1. babygirl - "Losers Weepers - EP"

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2021年上半期ベストライブTOP5

5. Sharon Van Etten & Angel Olsen: Like I Used To | The Tonight Show Starring Jimmy Fallon

www.youtube.com

 

 

 

 

 

4. Sons of Raphael | Revolution (Live)

www.youtube.com

 

 

 

 

 

3. Subsonic Eye - Fruitcake | Audiotree Worldwide

www.youtube.com

 

 

 

 

 

2. Miss Grit - Full Performance (Live on KEXP at Home)

www.youtube.com

 

 

 

 

 

1. Puma Blue - A Late Night Special (full film)

www.youtube.com

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2021年上半期ベストアーティスト写真

Britton Powell, Lucy Railton & Huerco S

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music.apple.com

 

 

 

 

 

 

下半期はClairoが楽しみすぎて死んじゃう。 (死ぬな) (生きろ)

 

 

「2021年6月ベストアルバムTOP10」感想

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今月はFaye Websterが待ち遠しすぎて過去作を毎日リピートしてた。リリースされた今はもう無敵。。。他にもFaye様以外にもチルアウトや爽やかインディーロックなど、夏の準備が万全になった月だったと思う。

今月の大好きof大好きの新譜トップ10の感想をランキングで
(1位レベルの作品が渋滞してた)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. Modest Mouse - "The Golden Casket"

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グルーヴィーでダンサブルなよさに特化

 「Modest Mouseのハッピーなディスコパンクってこんなに楽しいんだ...!」ってすごく感動した。自分が今まで聴いてたThe Lonesome Crowded West (1997)やThe Moon And Antarctica (2000)にはない、グルーヴィーでダンサブルなよさに特化したリードトラックがとても最強に完成されてる感じ。それらと相乗的なよさのメロディーやギターパートの出来上がりもすごい。アニコレやChk Chk Chk (!!!)みたいなハジけたおもしろさはもちろんだけど、私にとってもっとテンション上がるModest Mouseになってた。Fuck Your Acid Trip (M1)の進行力の高いグルーヴのやつから全力で大好き。Battlesみたいなトリッキーなサウンドとか、演奏から楽しさが滲み出てて思わずニヤニヤしちゃうのだけど 笑、そこに浸透性のあるセンチメンタルなエモを混ぜるというずるさ...。こういう不意打ちメロディック攻撃って絶対泣きそうになっちゃう。メロディーというよりギターの活躍のよさという点だと、4曲目のWalking And Runningもまた素晴らしい。ノイジーで切れ味抜群なサウンドでめちゃめちゃロックしまくるやつ。ただでさえ激アツなのに、後半で火に油を注ぐみたいにドラムがヒートアップしていくところが本当にむちゃくちゃカッコよくて、、、Modest Mouseでこんな内臓が突き破れそうになる興奮を味わったことなんてなかった 笑。他にも「いやもうLCD Soundsystemやん」ってツッコミたくなるWe Are Between (M2)とかも楽しい。アルバム前半だけでもかなりの満足感だった。

後半なら11曲目のJapanese Treesが最高だと思う。Modest Mouseらしくハッピーにハジけてるのに、温度感が変化して音楽が急にメランコリックになるのがとても美しい。The Moon And Antarctica (2000)でもGravity Rides Everythingとか切ない曲すごく好きだったけど、Japanese Treesのこっちはグルーヴィーでダンサブルなよさも合わせて堪能できる。エモさたっぷりでグッとくるナンバーだったと思う。

私の今年の抱負は「マイ1990年代ベストアルバムを作る」なのだけど、Modest Mouseもこの前The Lonesome Crowded West (1997)のCD買った。あの時代のパンキッシュなインパクトの感じのやつってやっぱりいいなーって思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Wolf Alice - "Blue Weekend"

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心臓が持ってかれそうなくらい興奮するライブ

 今作のWolf Aliceのロック&ポップスは、臨場感とかダイナミックさのヤバさがすごく印象的だったと思う 笑。宇宙を繰り広げるようなシューゲイザー、素敵な多幸感に包まれる80sポップ、そしてバチバチにカッコいい白熱のロックンロール・パンク...。どのスタイルもオーディエンスを魅了しまくるような最高のライブが感じられる演奏。1曲目The Beachからもう鳥肌がバーストしそうになってた 笑。エモーションを最高潮まで高めて噴火させるようなロックで、初見だと心臓が持ってかれそうなくらい興奮する曲。私は今作Blue Weekendは、雰囲気のあるメンバージャケを見たときから「さぞ名盤だろうな...!」って思ってたのだけど、このThe Beachの興奮でそれを確信できたと思う。感動しまくってもう泣きそうなってしまうライブのそれだし、アルバムの1曲目の掴みとしても完璧な感じ。そこからのDelicious Things (M2)、Lipstick On The Glass (M3)、Smile (M4)...と連続されるリードトラックも力作。特に私的には、今作で一番テンションが爆発するHow Can I Make It OK? (M6)から、パンキッシュにハジけまくるPlay The Greatest Hits (M7)の流れで完全に虜になってた。

Wolf Aliceの今作で一番好きなのは、ジャケットが与えるダークなイメージのように、エリー・ロウゼルのソウルフルなボーカルが、暗闇の中で光を放つような存在感を発揮しているところ。こういうところが本当にカッコよすぎると思う。Delicious Things (M2)、Lipstick On The Glass (M3)のリードトラックとかがそう。もともとシューゲイザーとしてもレベル高いバンドだし、ボーカルのパフォーマンス性のよさは前作からそうだったと思うけど、それでも今作は臨場感・ダイナミックさにさらに磨きがかかってて、ソウルフルで綺麗な歌の存在感、そこに付随するカッコよさがより強調された作風だったなって。そういった意味で、今作はエリー・ロウゼルというキャラクターの魅力をもっと実感できるアルバムだと思った。やっぱり名盤な感じする。暗めのシューゲイザーだけでなく、もちろん80sポップテイストの明るいワールドも好きだけど。

実は今作がリリースされた6/4の翌日の土日は京都に行ってて、このアルバムも新幹線に乗ってたときに聴いてた 笑。新幹線とか京都とかマジで小中学生以来だったしめちゃワクワクしてたのだけど、Wolf Aliceの今作は見事その思い出たちと結合したよね 笑。(音楽思い出効果。)Wolf Alice、2017年で話題になったときは着いていけてなかったのだけど、改めて過去作聴いたらめちゃよくて、今になってみると当時ハマれなかったの惜しいなって思う 泣(なぜハマらなかった)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. King Gizzard & The Lizard Wizard - "Butterfly 3000"

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ぽわぽわサイケサウンド

 今作のキンギザがとても新しのは、DTMの打ち込みスタイルで制作されたエレポップ系の作風だというところ!フジロックで見せた熱量の半端ないハードロック・メタルのアクト然り、ガレージ・サイケロックの王者的なバンドである彼らが、今度は持ち前のサイケスキルをもっとポップ路線で活用させてる感じ。もともとFishing for Fishies (2019)のときからメロディックなポップでも全く劣らず良いのは認知してたけど、今作のサイケサウンドのぽわぽわのメロディーはとりわけめちゃめちゃ最高だと思う 笑。グルーヴィーなモチベーションが音楽のハピネスに拍車をかけまくるYours (M1)、ぽわぽわのサウンドに奥ゆかしさのある品性までプラスしてるのがヤバすぎてるShanghai (M2)、そしてダンサブルなエレポップでもキンギザは最強なんだと決定づけたButterfly 3000 (M10)...。もうめちゃめちゃ素敵。メタル系のInfest the Rats' Nest (2019)より私が何倍にもツボに刺さる作風 笑。特に2曲目のShanghaiのメロディーのセンスとかどこまでも素晴らしいと思う。どこかオリエンタルな風情を感じさせるような美しさがあるけど、それらを愛らしいぽわぽわのサウンドに落とし込むなんて、やってることがとても天才だと思う。1曲目のYoursからのセットで尚お得。他にも、Dreams (M3)、Interior People (M5)、Catching Smoke (M6)、2.02 Killer Year (M7)、Ya Love (M9)などなど、他の曲もめちゃよかった。(もう全部じゃん)

こんなにも魅力的なサイケサウンドの音楽性を確立してるけど、そこに合わせてButterflyをシンボライズしたアルバムのコンセプトワークの部分もとても大きいと思う。アルバム一つで大きな一曲になってるような構成で、ぽわぽわサイケサウンドが作中ずっと奏でられてる中、それらのサイケのぽわぽわが、蝶々が美しく舞うような描写として特徴付けられてるイメージ。コンセプトワークがめちゃめちゃ素晴らしい。そういったことを意識して改めて2曲目のShanghaiとか聴いたりすると、もう心奪われるような圧倒的な感動さえ覚える。フジロックで観たハードロック・メタルのよさとは全く別次元のセンス。持ち前のサイケサウンドを応用しながら、こんなにもユニークなアートも作れるなんて...って思った。今作のキンギザもめちゃめちゃ最高だと思う。

キンギザのK.W.とL.W.の二作の音源がめちゃ欲しくて、2月にCD予約したのだけど、L.W.だけ販売終了になって、K.W.だけ手元に届いた、、、泣。でもディスクユニオンで売ってたんだね、全然知らなかった。(今はアマゾネスで注文した方を待ってる。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Lightning Bug - "A Color of the Sky"

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幻想的なサウンドをもっと本気出したとき

 Lightning Bugの上品なドリームポップ・シューゲイザーには、オールドムービーのようなロマンス、そして物思いにふけるような美しい時間を過ごしたくなる世界観があると思う。Land of Talkのようなじんわり暖かいソフトなシューゲイザーのThe Right Thing Is Hard To Do (M2)、ローファイの少し錆びついたような淡い音色のSeptember Song, pt. ii (M3)、中には激しい轟音で絶景を見せるようなI Lie Awake (M7)まで。音を可能な限り綺麗に見せるような反響とか、ドリーミーなサウンドの豊かさについて徹底的にこだわったような出来栄え。今作のLightning Bugの音楽が持つ情景も本当に素晴らしいと思う。特に私的にはWings of Desire (M4)みたいな静かなタイプの曲がとてつもなく大好き。ギターのアルペジオのドリーミーな音粒、今にも消えそうなくらい儚いAudrey Kangの歌。このとき、夕焼けと虹が重なったジャケットのビジュアルが機能して、私の中で音楽の世界がもっと完璧に完成された。まるでLightning Bugが奏でる全ての音の美しさがグレードアップするみたいなジャケットの効果が表れて、感動がめちゃめちゃ巨大になる感じ。もう全力で恋をするみたいに惹かれていく。途中で現れるエレクトロニックなサウンドも驚異的に綺麗。前作October Song (2019)の水平線の月が輝くジャケットのやつも言わずもがな大好きだったけど、今作のジャケットの方も予想以上の素晴らしさ。音楽の存在でジャケットがここまで特別に見えるとは思わなかった。

そういう音楽に対してのジャケットの機能という点でもそうだけど、今作で一番ヤバいのがタイトルトラックのA Color of the Sky (M9)だと思う。この曲は映画のサウンドトラックのようなインストルメンタルの特性を持った曲。October Song (2019)のときもでも幻想的なサウンドというところはLightning Bugは最強だったけど、この曲はもっと本気出してる。後半で長い長いあのフレーズが出てきたところで、死にそうになるくらい感動した。序盤のThe Right Thing Is Hard To Doとかからは考えられないくらいの深さと重さ。呼吸が止まるようなフレーズでサウンドや世界観のことをもっともっと素敵に見せていて、泣きそうになるくらい愛おしい気持ちでいっぱいになった。Lightning Bugやっぱり素晴らしい。 

October Song (2019)が秋のアルバムなのはそうとして、今作A Color of the Skyはジャケットの温度感的にも夏感のあるのアルバムだと思う。Floters (2015)などもあるけれど、これからまだ季節感をコンセプトとして持った作品を期待できるだろうか。妄想しただけでめちゃドキドキする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Lucy Dacus - "Home Video"

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躍動感溢れるパワーポップ

 クラシカルでノスタルジックな趣、大人びた包容力、それらの性質が詰まったLucy Dacusの至高の歌声...。彼女の音楽が唯一無二なのは、そういった上品で豊かな歌のキャラクターをロックとして活かしてる部分にあると思う。今までの音源だと私的にはYours & Mineとか、Lucyの歌の性質を高めるような丁度いいインディーロックのそれが泣きそうになるくらい大好きなのだけど、今作Home Videoのパワフルで存在感のあるロックのやつも大当たりだって思った。3曲目のFirst Timeとかめちゃめちゃよすぎてる。Lucyのエレガントな歌のキャラを保ったまま、ノイズをガンガン鳴らすギターとグルーヴィーなドラムを採用したパワーポップ型のやつ。(想像しただけで鳥肌。)とても透き通っていて、光り輝いてて、もっと生き生きとした躍動感が溢れてる。今までのAngel Olsenのようなメロウで濃厚な歌のイメージに反したフレッシュさがある新しさ。これはすごく名曲だと思う。まるでOso OsoのLucy Dacusバージョンみたい。イントロのギターのダウンストロークの感じだけでテンションがマックスになる。他にも、Hot & Heavy (M1)、Partner in Crime (M8)、Brando (M9)、Triple Dog Dare (M11)、パワフルなロック要素がある曲は全部ツボだった。特にBrandoのビートのノリノリなやつとか本当に楽しい。もちろんPhoebe Bridgers的ピアノが光ったバラードタイプもよかった。

ロック以外でいうとGoing Going Gone (M7)の存在がやっぱりとても目立ってたなと思う。Lucy DacusだけでなくJulien BakerやMitsukiがコーラスに参加した贅沢コラボ。こういうシンプルなアコースティックのLucy Dacusも本当に強い。とても繊細で、音がフェードアウトしていく余韻の細部まで心沁みる感じ。見事ワンテイクで仕上げて、レコーディングが終わったあとみんなで「わーい(^^)」ってやるのもめちゃかわいくて...笑。改めてこの界隈のSSW勢は全員大好きだなって思う。

Phoebe BridgersのPunisher (2020)、Julien BakerのLittle Oblivion (2021)、うまいことまたboygeniusの活動しないかなって思う。奇跡のようなスーパーバンドだから絶対観るの難しいけど、「それでもフェスとかで一斉に来日すれば...」って可能性を捨てきれてない。。。。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Allesandro Cortini - "SCURO CHIANO"

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ただただ果てしなさが存在している

 音楽鑑賞には孤独を楽しむという要素があると思う。自分の中だけのマイワールドを築き、イマジネーションを膨らませて、世界や人生の様々なことについて思いを巡らせていくようなかけがえのない時間。アナログシンセで構築するAlssandro CortiniのSF的アンビエントには、それらの"孤独の時間"をもっと壮絶に大スケールで与えるような素晴らしさがあると思う。今作CHIAROSCUROの体験も本当に凄まじい。集中力を研ぎ澄ますようなホワイトノイズのECCO (M1)からリスナーを現実からシャットダウンし、メイントラックであるCHIAROSCURO (M2)から彼の音楽の宇宙に導かれていく。その世界にはワクワクや高揚感があるわけではなく、恐怖があるわけでもなく、ただただ果てしなさが存在している。私はこれを聴くと、宇宙船に最後一人取り残された物語の主人公が、自分のことも誰だか分からなくなっていくように死んでいく様子とかを想像するのだけど、そんな世界観だからこそ描ける壮絶さがここにある。本当にとてつもない感動。静かに眠りにつくようなサウンドダイナミクス、ステレオの反響、細部まで「シンセサイザーの音をいかに美しく表現できるか」というところに注力していて、世界観の完成度が本当に高い。中盤でビリビリしたノイズの密度が増していくところも、なんて美しいんだろうって思った。すべてが無に感じられるような果てしない世界だからこそ、その中に何かエネルギーのようなものや生命の存在を感じられたとき、その神秘にとても心惹かれるのだと思う。同じタイプだとミステリアスな引力が魅力的なVERDE (M6)とかもそう。Alessandro Cortini大好きなのだけど、今作は特にお気に入りだった。

今作のネクストステージ的な部分だと、やっぱり7曲目のNESSUNOかなと思う。彼はゆっくり時間をかけて音楽を大きく重くしていくスキルに長けてると思うけど、この曲に関してはCHIAROSCURO (M2)やVERDE (M6)とは違うスピード感がある。今までにはなかったようなもっと緊迫感のある迫力の質。重たいシンセのエネルギーを高速で伝達させていくような描写がすさまじくカッコイイし、そこから得るゾクゾク感もこれまた最高....。なんなら、CHIAROSCURO (M2)よりも今作のメインな曲かもしれないって思うくらい。思わず音量を大にして、夢中になってヘッドホンの中をその音で埋め尽くしてた。

他にも、人間味が消滅したようなメカニカルな世界のCORRI (M4)とか、背筋が凍るようなTim HeckerのKonoyo的サウンドのSEMPRE (M5)とかもよかった。アナログシンセだけで構築するダークでシリアスなSF的ワールド、やっぱりAlessandro Cortiniのアンビエントはめちゃめちゃカッコいい。(6月11日新譜のランキング低くてごめん(__))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Japanese Break - "Jubilee"

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上品な甘さの完璧な味付け

 Japanese Breakfastのメロディックなドリームポップのデザート。柿のジャケットのオレンジのイメージ、ディスコが効いたハッピーなグルーヴ、そしてとってもピュアでスウィートなメロディー...。一見すると甘ったるい感じのポップスだけど、Japanese Breakfastの今作は、音楽をこってりすぎないようにエレクトリックの味付けは控えめに調整されてるし、ブラスやストリングスといった生楽器の自然素材を活かしたり、ファンク系のギターのパリッとしたテクスチャなども添付したりしていて、スウィートながらもとてもフレッシュに作られてる。この加減・バランスがとても素晴らしいと思う。"心にキュンと来るようなときめき"+"爽やかな心地よさ"のダブルな性質の素敵さ。1曲目のPaprikaからその素敵なフィーリングがもう止まらなくなる。可愛らしい行進曲のようなリズムワークはチルドレンミュージックのようなピュアな世界観を見せてるけど、対するオーケストレーションのバッキングはとてもエレガントで、心の中にそよ風を発生させるような清々しさを生み出してる。ものすごいワクワクとときめき量。ジャケットから作品がフルーツのコンセプトを持ってるということは事前に予想できてたけど、まさかこんなにも上品な甘さを持っていたなんて...。ディスコファンクのキラキラしたカラフルさをいっぱい出すBe Sweet (M2)とかも、アコースティックのさっぱり感とトロピカルな甘さを最高にミックスさせたKokomo, IN (M3)とかも、どの曲もすごくいい。後半でいうと、心温まるホットな甘さのIn Hell (M8)とか、胸を締め付けるような少しウェットな仕上がりのPosing For Cars (M10)とかも。正直に言ってしまうと、インディーロックな音楽性が目立ってた前作Soft Sounds From Another Planet (2017)は、発売当初にCDを買ったのにそこまでハマらなくて...。だけど今作は、ポップソングのデザートのフルコースみたいに自分にツボっててめちゃ大好きだった。

今作で特に最高すぎてたのが4曲目のSlide Tackle、この曲のよさはもう尋常じゃないって思う。ディスコファンクの1番調子いい感じにノってる最高にハッピーなグルーヴ。その中でエレクトリックのほどよいドリーミーさとカッティングギターのパリパリ感をブレンドさせてるのが本当に素晴らしすぎて、、、。まるで素敵なものに素敵なものを上乗せするみたいなサウンドのハマり方。そこからさらに畳み掛けるように、グッときまくるブラスのド派手な演出を用意してるとか、もう泣いちゃいそうになるんだけど...笑。まるで自分の心が晴れ渡るような、とても開放的なフィーリングスを与えてくれるメロディー。ダンサブルさ、ドリーミー要素、ギターの楽しさ、曲の展開のおもしろさ、それらのエモーショナルなメロディーの数々...こうやって書くとよさの詰め込み方がなかなかにハード。"上品でフレッシュなスウィートさ"という点でも今作を象徴してるリードトラックだと思った。

ロック的な観点だと、Sit (M6)みたいなシューゲイザー系も好きだった。あと今作でビビったのがPosing In Bondage (M5)の音響エレクトロニカ要素...。前作Soft Sounds From Another Planet (2017)でも今まで聴いたことないようなユニークなサウンドはあったかと思ったけど、このPosing In Bondageのサウンドは息を飲むほど美しいと思った。まるでジブリ映画のような世界観のニュアンス。ただでさえスウィートなドリームポップとしてのよさのレベルが高いのに、それだけでなく彼女はサウンドアーティストとしても一流なんだなと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Sault - "Nine"

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"光は手の中にある"

 ボロボロになって傷ついて自分自身のことを大切にできなくなったとき、それでも傍に寄り添って私のフィーリングに共感して、「大丈夫だよ」と言ってくれる音楽の存在のことが一体どれだけ有り難いことか。Untitled (Black Is)のEternal LifeやUntitled (Rise)のSon ShineといったSaultの音楽は私にとってそういう存在であり、それは私が自分自身を愛するために必要な一つの重要なパーツなのだと思う。今作Nineには、そういったEternal LifeやSon Shineに匹敵する曲としてLight's in Your Hands (M10)が用意されていて、もう心がギタギタされるみたいにありえないくらい泣きまくってしまった。涙が本当に止まらなくなる曲。暗闇を照らすようなピアノの響きは、自分がどれだけダメダメな存在でも歓迎してくれるような、祝福してくれるような、そういった類のものを含んでいる。"決して自分を見失わないで"、"いつでもやり直せるよ"、リスナーにこんなにも愛を届けることできること、そういったメロディーを作れること、本当に本当に素晴らしい。Saultの音楽はリスナーの心の傷を治癒する能力がズバ抜けてる。R&B・ソウルの愛は本当に強力。今作Nineもぶっちぎりのベストアルバムだった。

Light's in Your Hands (M10)以外でいっても もちろん素晴らしい。London Gangs (M2)やTrap Life (M3)のエキゾチックなカッコイイ系も最高なのだけど、私的には今作ではアルバム後半のムーディなトラックが特に刺さってた。ストリングスで美しいロマンスをいっぱいに与えるBitter Streets (M6)、スモーキーでメロウな甘さが本当にたまらないAlcohol (M7)、心がほっこり暖まるような癒しをくれる9 (M9)....。あまりに素晴らしいムードだから、スピーカーで流して部屋の中をそのムードで満たして最高の空間にしたくなる。極めつけはLittle SimzのフィーチャリングしたYou from London (M8)。ローファイのチルなビートトラックのフィーメルラップ。私はHip HopはAzealia BanksとかKreayshawn(あとはKero Kero Bonito)とかしか聴かないのだけど、Little Simzも本当に大好きで、You from Londonもすごくお気に入りだった。ムーディーなアルバムの中で聴くと尚大好きな味わい。

99日間限定の解禁、Bandcampでデジタルアルバムがフリーなのはどう考えてもダウンロードするでしょって思う 笑。てかLight's in Your Hands (M10)とか聴くと、「これが二度と聴けない」とか本当にありえないなって思うし。そんなのは絶対無理すぎるので、電光石火でダウンロードした。https://saultglobal.bandcamp.com/

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Faye Webster - "I Know I'm Funny haha"

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酒だ!酒を持ってきてください!!泣

 ~2021年上半期 私が選ぶ「最もお酒のおつまみにしたいアルバム賞」の金賞を受賞~。インディーフォーク・カントリーの"ロマンチックな脱力感"において、もうFaye Websterの右に出るものはいないよなって思う。空間をじんわり染めていくようなトロピカルなスライドギターの温もりの与え方、ほろ苦くて甘酸っぱい感情がギュッと保存されてるような音楽のムード...。特に今作は、去年からシングルカットされていたBetter Distractions (M1)やIn a Good Way (M4)の最強っぷりだけでなく、コーラスのきらめきを持った癒し(Cheers (M6))、スペースディスコのシンセようなコスミックな美しさ(A Dream With a Baseball Player (M9))など、フォーク・カントリー以外のニュースタイルも見られたり。今作も相変わらず、私の中でメロメロが爆発するようなサウンド・メロディーの宝庫みたいになってた。アルバムリリース前からよく聴いていたとはいえ、やっぱりIn a Good Wayの破壊力が強烈だなって思う。Faye Websterのロマンチックでメロメロな脱力の歌が、音楽の儚さを強調するような美しいブルーの色を帯びてる曲。Faye Websterというアーティストの感性・作家性が120%出てる私的今作ナンバーワンのトラック。こんなにも素敵な安らぎに溢れていて、こんなにも満たされるのに、メロディーがずっとずっと泣いているという凄まじさ。つられて私も泣きそうになる。"良い意味で泣けてくるね (you make me wanna cry in a good way)"の印象的な歌のフレーズ、それらをストリングスとハーモニーさせるエモーショナルさ、本当に全てが心に残りまくる。今作I Know I'm Funny hahaは、このIn a Good Wayが入っているというだけで私の中で大勝利が保証されてた。そしてシングルで聴くよりアルバムの中で聴く方がずっとよさを発揮していた。

Cheers (M6)も本当に素晴らしい。イントロのギターサウンドがJack Whiteみたいで自分でもびっくりするくらい興奮した 笑。まさかFaye Websterがこんなクールにロックするとは...!それでもFaye Websterのメロメロな癒し性は完全に失っておらず、また別の感じでアップデートされてる感じ。そのニュースタイルをバギーやバイクといったアイコンで特徴付けたMVもハイセンスすぎる。音楽性だけでなくアーティストとしての魅力が全開だということ。もうマジで大好きにならざるを得ないです。

Faye Websterの音楽には、キャッチーでメロディックな要素とか、楽曲の山場の部分(サビ)とか、そういうものを超えたよさを持ってると思う。それは言うなれば、"ロマンチックな脱力感の概念が音楽上にずっと存在している"というところ。"聴く"よりは"聞く"という音楽の感じ方。Better Distractions (M1)とかKind Of (M5)とか特にそれを味わってた。意識をぼーっとさせ、回転する円盤を眺めながら、音の余韻にただただ浸るというあの感じ...。そんなひと時だからこそ、レコードがウルトラハイパーぴったりな作品だと思うし、「酒だ!酒を持ってきてください!!泣」ってなる 笑。今作も全曲最高。中でもmei eharaとのコラボのOverslept (M10)はめちゃめちゃに衝撃的だった。(私の邦楽友達が大好きで自分も好きなアーティスト)。Faye Webster、早くレコード届いてほしい。(切実に)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Good Morning TV - "Small Talk"

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永遠にダラダラと過ごすキラキラした夏休みのあの感じ

 喫茶店で食べる素朴なナポリタンが、どの高級イタリアンのスパゲティよりも美味しく感じられるときがあるように、"特別でないものが何よりも特別に感じられる瞬間"というのがあると思う。何か小さなもので満たされるような、本当にちょっとしたことで「私の人生最高に幸せだ」って思えるような、嬉しさで胸がいっぱいになるやつ。私にとってGood Morning TVの今作がもうありえないくらいやばいのは、インディーポップの最高にチルってる音楽が、私の中でその"特別でないものの特別感"という最上級の幸せに達するから。表面的で雰囲気だけのチルアウトミュージックとは違う、もっと自分の人生における喜びの核心に触れるようなヤバさ。マジで私の中の"大好き"が無限に止まらなくて、今月脳みそがおかしくなるくらいリピってた。ドリーミーでサイケデリックな温熱、キラキラしててソフトなボーカルの響き。テロテロになってじんわり溶けていくような微ノイズと、清涼感や透明感に満ちたメロディーが合わさった史上最強レベルの素敵な心地よさ。そしてそれらを誰にも邪魔されず淡々と続けていくような絶対無敵の安らぎ・のんびり感。それはまるで、何の予定もなく永遠にダラダラと過ごすキラキラした夏休みのあの感覚にとても近い気がする。特にドラマチックなことが起きるわけじゃない、でもそれらの平凡な時間に一番満たされてるときのあの状態。青々とした空に浮かぶ夏雲と自分の存在がシンクロするようにして、ボーカルBérénice Deloireのたまらなく綺麗な浮遊感を得ていくのだけど、何か私の中で憧れているものがメーター吹っ切れてぶち壊れそうになるような、そんな感覚になった。ポカポカでふわふわでキラキラしたもの、そこから漂う夏の匂い、この上なく素敵なチルアウトの魔法。Good Morning TVはそういったものを届けてくれたわけだから、もうとことんコテンパンにぶっ飛ばされてた。Faye Websterとはまた全然違う、Bérénice Deloireの素敵な脱力感のボーカルがどこまでも最高すぎてるし、何より表現を大袈裟に盛るようなメインストリームのポップには絶対に出せないような、インディーだからこその"非特別な特別感"の部分が本当に素晴らしいって思った。全曲がめちゃめちゃに好き。冗談抜きでもう最高すぎて困るレベル。

アルバムのスタートのInsomniac (M1)から半端なくヤバい。オルゴール系のひんやりとしたエレクトリックピアノが耳の中をコロコロするようなイントロだけでぶっちぎりの素敵さ。。。そこから流れる最高にトロトロしたギターフレーズ...。初めて聴いたときから「これもう100%最高なやつじゃん、、、」って確信してたところに、案の定Bérénice Deloireのあのキャラクターが炸裂したから、あばばばって理性もげてた 笑(そんなことある??笑)そこからほんのり優しくテンションを高めるようなエレポップ・シューゲイザーポップ要素も展開してくるという最強さ。そんな1曲目で完全にノックアウトされたのに、そこから続く本作屈指の2曲目Lethargic Wayもさらにヤバくて、、、泣。Good Morning TVのチルアウトの素敵成分・美味しさを凝縮したような、病みつきになるほどリピート性の高いあのメロディー。音楽性も歌要素もそれぞれのよさが100%+100%な感じ。もう意味分かんないくらい大好きで泣きそうになる。ムードを味わうチルアウトミュージックでここまでフックの利いたメロディーを発動すると、こんなにも反則レベルのよさになるなんて知らなかった。そんな調子でHuman Comedy (M3)、Entertainment (M4)、Tourism Business (M5,M6).....ってずっっっと素晴らしくて。アルバム通して聴いてると「一体どれだけ素敵なことをしたら気が済むんですか、、、????泣」ってなる 笑。特にEntertainment (M4)に関しては、音楽がとってもシャイニーなフィーリングスを持っててハピネス量が尋常じゃない。ねぇ、もう最高すぎて困るんだけど!!!!(ブチギレ)

これは個人的な話だけど、今作のヤバさについて改めて思ったのが、Good Morning TVのインディー感というものを感じて、私が洋楽好きの原点を思い出したということ。私は大学2年終わりの春にオーケストラを辞めて、何か新しい音楽が聴きたくなったときに出会ったHundred Watersが、今みたいに洋楽にのめり込むようにハマった最初のきっかけなのだけど、そのときから"インディーズ・オルタナロックの洋楽"という作品群に猛烈な憧れを抱くようになった。ヒットチャートでランキング何位とか、トレンドとか、そういうものから外れたところにある、アーティスト固有の"そこだけにしかない世界"。そういう世界があるんだって知った当時のあの強烈なワクワクの感覚に対して、Good Morning TVの音楽が持つインディー感が不思議とすごく結びついた。多分私の潜在意識的なところに、Good Morning TVを聴いたときの特別な幸せが影響してして、当時の記憶がよく蘇ったのだと思う。懐かしみを感じさせるだけでなく、社会人になって2年目の私の身体がちょーーーど欲していたようなもの。すごくすごく嬉しい。私はまだまだ音楽を好きでいられる、まだまだ音楽に感動できる。Good Morning TV本当にありがとうって心から思う。

「逆さまになって寝っ転がったせいでへんてこりんに曲がってる、青いベンチのブロンドのポニーテール」。ジャケットのよさもハイレベルだったと思う。透明感のあるチルアウトな音楽性で、青が持つ夏のイメージとか、ブロンドが持つキラキラのイメージ、作品にめちゃめちゃぴったりなコンセプトのアートワークの感じ。(特に夏感というところ...!)写真を逆さまで採用するというアイディアの素晴らしさもそうだし、ポニーテールがクネって曲がってる感じの可愛さとかもポイント高い。そしてこういう部分にも、私が大好きな"非特別な特別感"というのがある気がした。これはもう超超超ベストアルバムだって思う。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

プレイリスト

Apple Music

温の「2021年6月ベストアルバム(温)」をApple Musicで

 

Spotify

open.spotify.com

 

 

その他とてもよかったもの

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Andrew Hung - "Devastations"

Dean Blunt - "Black Metal 2"

Dizzy - "Separate Places - EP"

Hildegard - "Hildegard"

Hiatus Kaiyote - "Mood Valiant"

Ilis - "love and other disasters"

Justin Jay & Claude Vonstroke - "Oh - EP"

Kovonaut - "sleepaway"

Throwing Snow - "Dragons"

TWO LANES - "Reflections"

 

 

 

7月はClairoだ、、、、、

(あとDrug Store Romeos)

 

 

「2021年5月ベストアルバムTOP10」感想

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5月のアルバムはランキング選ぶのがウルトラスーパー難しかった、、、泣
2021年5月の大好きな新譜、トップ10の感想をランキングで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. St. Vincent - "Daddy's Home"

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大人の高級感

 今作のSt. Vincent様は、余裕たっぷりの大人なムードや、それらの高級感が目一杯堪能できるアルバムだと思う。この"高級感"がめちゃ本格的な感じで本当に大好きなのだけど、特に2曲目のDown And Out Downtownとか超最高の曲だと思う。今までずっと培ってきた歌メロとギターメロのよさをフルで使った、ジャズ、R&B・ソウルのとっても濃厚な音楽。ヴィンテージな趣やビターな味わいをすごく大切にしたような曲で、大人の贅沢気分が満喫できるような、上物のワインを嗜むような、そういう"大人素敵"な瞬間を最高に楽しめる。エモーションを高めていくような曲の見せ所も設けてあるし、そのタイミングでシタールのような ほどよくスパイシーな弦楽器の音色を魅せるとか、音楽が本当に絶妙...。そこからDaddy's Home (M3)、Live In The Dream (M4)、The Melting Of The Sun (M5)...という風に、それらの大人の高級感を繰り広げまくって...。こちらのSt. Vincent様の作風もめちゃめちゃいいと思った。今までとはまた違うキャラクターのよさ。ジャケットを見たときは正直従来のイメージと全然外れてて「誰だこれは、、、(゜-゜)」ってなってたけど 笑、さすがは女王様だった。

上品でメロディアスな歌と、男性が求めるそれらの"女性らしさ"に対して中指を立てまくるようなバリバリのロック。St. Vincent様は常に自分らしくあることを忘れずにいて、自由でカッコよくて、これまでずっと皆から愛される女性のヒーローであり続けてたんだと思う。今作Daddy's Homeは70年代の古風なアレンジが特徴的だけど、メロディアスな歌要素とロック要素の二刀流の発揮とかではなく、自分らしさのアピール以上にアーティストとしてのワールドの創造に注力した作品なのかなと思った。ソウルミュージック系のコーラスはもちろん、ファンクチックなギタープレイやブラスバンドの活用など、細部まで徹底した世界観作りの感じ。2017年のMasseducationとかもオリジナリティの高いワールドを持っていたと思うけど、今作は高級感のあるムードがより一定に保たれてる感じがする。最初Daddy's HomeのSt. Vincentのアーティスト写真を見たときは、どんなところを目指してるのか掴めなかったけど、中身を開いてみたら納得のできる内容だった。

本音を言ってしまうとですね、実は本家のジャケット↑よりも、VMPが取り扱ってる別ヴァージョンとかのジャケットの方が好きです、、、笑。こっちのレコードが一番欲しい。どうにか再販してくれないか...泣。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Lydia Ainsworth - "Sparkles & Debris"

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エクスペリメンタルでマジカルなインパク

 Lydia Ainsworthのエクスペリメンタルポップ(アートポップ)は、デビュー作のRight from Real (2014)のときから只者ではなかったと思う。エキゾチックな民族音楽系のグルーヴ、現実離れした存在感のめちゃめちゃ神秘的なストリングス、その他これまでに聞いたことのないような実験的なサウンドとメロディー...。Lydia Ainsworthのポップは、それらの強力な数々の魔力を装備した状態のパフォーマンスだということ。言うなれば"めっちゃヤバいAURORA"みたいな 笑。今作Sparkles & Debrisはよりシティポップ・R&B寄りのロマンチックな作風だけど、10曲目のQueen of Darknessがほんとにほんとに素晴らしかった。金属楽器のような響きは宗教音楽のような雰囲気を醸し出しているのに、何かクリスマスソングで用いられる鈴のようなとても素敵な音色も持っているサウンド。Lydia Ainsworthのエクスペリメンタルで魔法的な作家性のセンスが炸裂しまくってる、今作屈指の大名曲だと思う。そんなサウンドのパフォーマンスなわけだから、もう本当にゾクゾクが止まらない。ポップスでこんな音響芸術をできるアーティストは本当に少ないと思う。このQueen of Darknessが1番大好きだった。

Right from Real (2014)はワイルドなのに幻想的で、とても独創的なポップスだったと思う。それ以降はどんどんメインストリームな方向に行ってる中で、今作は「メインストリーム系なのになんかこれヤバくない...?」みたいになる、また新しい境地を見せてくれたと思う 笑。メロドラマのような世界観にエンヤのような超ヘヴンリーなサウンドスケープをミックスさせたようなParade (M1)とかそう。ものすごくロマンチックで素敵なのに間違いはないのだけど、馴染みがあるようで全然聴いたことのないような、異色な雰囲気のあるポップスの感じ。この不思議な味わい、Lydia Ainsworthだからこそのエクスペリメンタルでマジカルなインパクトのポップって最高だと思う。料理で例えるなら、口に入れたときめちゃめちゃ美味しい~!ってなるのに、何のカテゴリーの料理かは分からない!って感じ 笑。バリバリにポピュラーソングな曲調に高潔なハープのサウンドを入れるForever (M2)とかもそう。Right from Realかそれ以上に大好きなアルバムだった。

今作はジャケットもかなり好きだった。アーティスティックなオブジェクト散りばめるというカッコよさ。遊び心も溢れていて楽しい。さすが魔法性の高いアーティスト、ジャケットのセンスも素晴らしいと思う。そういう点だとMVもすごくよかった。(てか渋谷来てたんだ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Colleen - "The Tunnel and the Clearing"

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恐怖と安らぎの信じられないような中間領域

 真っ暗な背景の中に浮かび上がる半円状の光。ザラザラと霞んだサンドアートのようなタッチがあるそのジャケットは、鑑賞者を異次元に誘うような、幻覚をもたらすような、何か心惹き付ける魔法の特性を持っている。それはとても恐ろしく、一方でとても大きな安らぎも感じさせるもの。Colleenのシンセオルガンのアンビエントは、まさしくそういう音楽だと思う。夜空の星をぼーっと眺め、それらに吸い込まれてしまいそうになる錯覚の激しい恐怖と、満天の輝きのこれ以上ないほどの美しさ、それらのどちらも味わうような、とてもとても幻想的な時間。教会音楽のような神聖さ(The Crossing M1)、サイケデリックな瞑想(Revelation (M2), Implosion-Explosion (M3), Hidden in the Current (M7))、シンセオルガンの魅力をとことん突き詰めたような音楽性。今作も大傑作だと思う。魂を解放させるような浮力の発生、願いごとを唱えるようなメロディー、それらがふわっと消えたときの余韻、シンコペーションの反響、もう何もかもが素晴らしい。こういうヘヴンリーな音楽がツボすぎてツボすぎて、、、笑。ヴィオラ・ダ・ガンバのループで奏でるGolden Morning Breaks (2005)とかも超傑作だったと思うけど、エレクトリックなスタンスのこっち系も間違いなしなよさ。妖精と踊るようなGazing at Taurus - Santa Eulalia (M5), Gazing at Taurus - Night Sky Rumba (M6)なんかもすごくよかった。

今作で私的に1番やばいのがタイトルトラックのThe Tunnel and the Clearing (M4)。今作が象徴するようなジャケットの恐怖と安らぎ、それら2つのフィーリングの中間領域を実現したような曲だと思う。もうありえないくらい素晴らしい。人間が到底理解できないような、とにかくものすごくディープなものを与えてくれる。シンセオルガンのサウンドをオクターブ上げて、その存在をさらに強調するところで、もう死にそうになるくらい心奪われた。恐怖と安らぎの中間、そういう概念って音楽化してイメージできるレベルまで完成させられんだって本当に驚いた。今作で私が1番好きなシンセオルガンのサウンド。実際Colleenもめちゃ本気出してる気がする 笑。ジャケットのアート、サウンドメイキング、一種のヒーリングミュージックとしてもトップクラスの品質だと思う。

実は私のLINEのアイコンはColleenのGolden Morning Breaksです 笑。もう4年くらい前からずっとそう。天使、ユニコーン、それらのholyな要素、宗教的な世界観、スピリチュアルなテーマ性、感情、そして祈り...。私がこの世で1番好きなジャケット。(今作のジャケットもめちゃんこハイパー大好き)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Bachelor - "Doomin' Sun"

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深みのあるメランコリー+色鮮やかなノスタルジー

 ほっこりハピネスが摂取できる平和的なシューゲイザー・ドリームポップのやつ。Jay Somの光属性・センシティブさ、Palehoundの熱すぎないクールな温度感、それらのミラクルな作家性。すごく最高なコラボアルバムだと思う。Back of My Hand (M1)、Sand Angel (M2)、Stay in the Car (M3)の3曲とか本当に心に響きまくる。深みのあるブルーな感情のメランコリーと、色鮮やかで暖かい感情のノスタルジーを融合させるような、尋常じゃないくらいエモーショナルなことをしてる曲。まさか二人がここまで最強のよさを生み出すとは思ってなかった...笑。それは例えるなら、ひんやりと冷たいのに心温まるような、寂しいのに満たされるような、私にとって特別でかけがえのないフィーリングスを再現する曲。リラクゼーションが深くて、ものすごく素敵で、私がウルトラハイパー大好きなやつ。Palehoundならではのグルーミーでダークな曲調に、Jay SomのEverybody Works (2017)みたいな鮮やかな色のギターを使ってる感じが本当に美しい。頑張りすぎず落ち着きすぎずでとてもちょうどいいテンション感を維持してるし、リピート性の高い仕上がりなのもよかった。

6曲目のAnything at Allみたいなトーンの明るい曲もすごくいい。ほどよくポップで可愛いらしい雰囲気の中で、ゴージャスな轟音ギターの花を思い切り咲かせるような演出。メランコリックでノスタルジックなエモーショナルさだけでなく、高品質なシューゲイザーとしてのよさも兼ね備えてるということ。こういうノイジーなギタープレイもめちゃめちゃ好き。(もちろんStay in the Carも。)Jay Somの前作Anak Koでも、ギターでよく遊ぶおもしろさがあったと思うけど、ほっこりハピネスの曲調の中でのシューゲイザーとか、今作Palehoundとのコラボでもこれまたエモいギターが聞けたと思う。去年のRoutine (Chastity BeltのAnnie Truscottとのコラボ)も超最高だったし、これからももっともっと私のツボに刺さるロックをやってほしい 笑

私的には、今作は秋に聴きたいなってめっちゃ思った。1曲目から3曲目までのリードトラックとか、7曲目のMoonとか、秋の空気とすごくマッチしてる思う。また、どことなく90年代のYo La Tengoのインディーロックを聴いてるときのような、懐かしいときめきとかもそう。個人的にもともとPalehoundが秋のイメージを持ってるというのもあるけど。そういう意味で今作は聴きすぎず、秋までにとって置くのもありかもって思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Iceage - "Seek Shelter"

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ナイフで切りつけるのではなく、花束を贈るように

 世界に何かを訴えようとするロックンロールの革命。殺意すら感じさせるような怒りを放出したNew Brigade (2011)の頃からIceageは私達を奮い立たせ、胸が高鳴るような喜びを届けてくれたと思う。今作Seek Shelterは、そんな敵意剝き出しの頃とは全然違う、祝福や賛美を込めたような輝かしさと華やかさのあるタイプの作風。1曲目Shelter Songを聴いたとき、思わず「うわぁ、、、泣」ってなった 笑。近寄ってくる人全員にナイフで切りつけるのではなく、花束を渡すような、手を差し伸べるような、リスナーを心温まるフィーリングで満たしまくるようなロックンロール。復讐のようにして反乱を起こすような革命ではなく、誰かを愛するような、そういうもののために起こす革命。ゴスペルの聖歌隊を用意して、従来のIceageの攻撃力に希望とか勝利とかのテーマを寄与させるのが本当に素敵で素晴らしいと思う。もともとPlowing Into The Field Of Love (2014)や、Beyondless (2017)の頃からクラシカルなアメリカンロック、ブルース、モダンロックのスタイルを持ってたと思うけど、特にこのShelter Songのゴスペルの聖歌隊はこれもまた最高のアレンジだなって。ちゃんとIceageなのに、今までのIceageとは思えないくらいの大人の成長がある感じ。New Brigade (2011)から始まって今作Seek Shelter (2021)まで、覚醒に覚醒を重ねるように傑作アルバムを連続アップデートしてるのがすごすぎる、、、。ますますフロントマンEliasの大ファンになったし、Iceageというバンドがもっと大好きになった。

Shelter Song (M1)と並んで、ラストのThe Holding Hand (M9)もめちゃめちゃ名曲だと思う。こちらも輝かしさと華やかさを持ってる作風だけど、Iceageならではの灼熱のロックが繰り広げられてる。相変わらずハチャメチャにカッコいいし、今作がこれまでのIceageのアルバムとは違う方向性を持ってる分、彼らのロックの熱さがまた特別に影響するようなところも最高にグッとくる。ロックを鳴らすための理由は様々だと思うけど、やっぱりこうやって愛とか勝利とかのために革命を起こすようなロックンロールって格別だなと思う。ほんと、Iceageのことがもっと大好きになった。

他にも、5曲目のDrink Rainとかも最高だった。こちらはカフェで流れるようなほっこり系のジャズソングの感じ。意外性があってすごく目立つ印象があるけど、こういうビターでマイルドな曲もすごくIceageに似合ってて素晴らしい。雰囲気の作り方というか、バランスというか、アルバムの中でもいいポジションにある曲だと思う。アクモンのTranquility Base Hotel & Casino (2018)を思い出す...笑(あれ好きなんだよねー)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Sons of Raphael - "Full-Throated Messianic Homage"

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ドラマチックでグッときまくる

 コスミックなシンセサウンドが特徴的なスペースオペラのようなワールド、宗教や神話、それに関連する革命の英雄をモチーフにしたような勇敢で力強さのある曲想、それらの映画音楽的迫力、そしてたまらなくソウルフルな歌...。世界観もメロディーも本当に最強すぎてる...!泣。ジャンル的に言えばクラシカルなサイケポップだと思うのだけど、スケールが大きくて、ドラマチックで、最高にグッときまくるアルバムだと思う。各楽曲に必ずソウルフルなパートが用意されてる感じだけど、レトロチックなラブソングのようなロマンチックさ(On Dreams That Are Sent by God (M4))とかも抜群だし、オーケストレーションで感動をレベルアップさせまくるスキル(Let's All Get Dead Together (M9))とかも半端なくて...。まるでMercury Revのようなスウィートな夢の世界のひと時を提供してくれる。サウンドスケープも最高だけど、特にSons of Raphaelの今作は転調的な感情豊かな旋律を作るのが本当に見事だなと思う。特にLet's All Get Dead Togetherのメロディーはあまりにも素敵で美しくて心奪われまくってた。ほんと、マジでメロディーがヤバすぎる。

Sons of Raphaelの今作で私がもう完璧なまでに大好きになった曲は、なんと言っても1曲目のRevolution。全体的にサイケポップな今作の中でも1番ロックしてる曲だと思うだけど、この曲は最高すぎてどうかしてると思う、、、笑。スペースオペラ的ワールドのドラマチックさ、ソウルフルなメロディー、それらSons of Raphaelの素晴らしさをパワフルなロックンロールでさらに高めるような感じ。そういうパワフルなロックのスケールアップで、何か勇敢な姿を感じさせるようなカッコよさすらも発生させてる。この演出が本当にヤバい。。。笑。MVの世界観でも表現されてるように、"Sons of Raphael"ってバンド名とか、スペースオペラ的サイケポップのクラシカルな作風とか、作品が持ってる各要素が本当にぴったりハマってて、総合的に見るとなおさら魅力が光ってると思う。ライブのバージョンもめちゃ最高。この曲は紛れもなく今年のベストソングだった。

Sons of Raphaelのメロディーは本当にヤバかった。なんだかついつい口ずさみたくなるようなキャッチーなフレーズ。それでいうとSiren Music (M3)とかYeah Yeah Yeah (M6)なんかは、どことなくカラオケ感があったかも 笑。MVもすごくよかった。(Revolutionが1番好き)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Current Joys - "Voyager"

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素敵なものに一生懸命になる人

 Current Joysの今作は、情熱的で美しい冒険の物語で、純粋で真っ直ぐなラブソングで、それらの溢れる想いを詰め込んだ人間味の結晶なのだと思う。クラシカルなアメリカンロック系の力強いハート、正統派バラードのロマンス、そしてネオアコ系のたまらなく開放的で心地よいフィーリング...。Current Joysはきっと、情の厚いロマンチストで、素敵なものに一生懸命になる人で、純粋な人間性を目指した孤高のアーティストなのだろうなと思った。彼の曲を聴くと、まるで心に火が灯るように、自分の中で愛おしいエモのエネルギーが生まれていくをいっぱい感じる。こんなにも最高なのに、それが捨て曲なしのリードトラックだらけのアルバムとして出来上がってて本当に名盤だと思う。熱いビートにとっても華やかなピアノとストリングスをいっぱい広げていくDancer in the Dark (M1)から今作の最高さを決定づけてるけど、そこからのAmerican Honey (M2)とNaked (M3)のダブル傑作ソングコンボとか本当にヤバかった。American Honeyは海辺を1人歩く今作のジャケットのイメージに本当にぴったりな曲。しんみり系のとても切ない雰囲気を持っていて、Current Joysの歌声は今にも泣いてしまいそうな悲しい表情をしてるのに、音楽は夕日のように大きく、優しく、そして暖かくリスナーを抱きしめてくれる。なんというエモーショナルさ。切なさよりも暖かさの方が上回ってて、センチメンタルのダメージを負うことなく何度でも聴けるバランスなのが本当にいい。そこから次のNakedでは、しんみり系とは対極的な激アツのロックを爆裂してる。The War On DrugsのRed Eyesとかと同じ、胸がはちきれそうなほど情熱を込めまくってる曲。何かと激しく闘ってるみたいに、ドラムも歌も凄まじいほど熱量が高いのに、それらのエネルギーが爽快感や気持ちよさとして変換されてる。音楽の熱量が高すぎるから、そのエネルギー変換がめちゃめちゃダイナミックになってて本当にヤバい。あまりにも大好きすぎて泣いちゃう。この曲で、Current Joysが今作で描いてる情景・感情がいかに素敵なものかがよく分かる曲だと思う。バラードとロック、このAmerican HoneyとNakedだけでもうめちゃめちゃベストアルバムだった。

他にも、めちゃカッコいいギターロックのBreaking the Waves (M5)、Arcade Fireみたいなキャラに変身してるRebecca (M8)、ポストパンク感がツボに刺さるMoney Making Machine (M11)、そしてCurrent Joysらしい孤高の冒険ソングのVagabond (M15)などなど、本当に名曲ばかり。そんな中でも、タイトルトラックのVoyager (M12, M16)もとても強かったと思う。インストゥルメンタルのPt 1では、シンガーソングライターっぽい作風とはかけ離れたような、映画のサウンドトラック的印象を持ってる曲。クラシックなテイストで固めたシリアス調の曲だけど、この曲の美しさも段違いに素晴らしい。シンガーソングライターとしてのコンパクトな曲ではなく、もっとアルバムに大きな物語を付加させるように機能してる曲。バラードやロック、それ以上の才能も素晴らしい。

今作はSecret Canadianのメールで知ったアルバム。Stella Donnellyでお馴染みのレーベルだけど、6月はいよいよFaye Websterなんですよね、、、!!(楽しみすぎてヤバい)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Squid - "Bright Green Field"

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友達になれそうな親しみと、関わりたくない狂人のような危なさ 笑

 Squidのポストパンクには、リスナーの調子を破壊しまくる最高の楽しさがあると思う 笑。安定と不安定が混同したような不思議さとクレイジーさ。楽しいのか怒ってるのかを全然教えてくれなかったり(G.S.K. (M2))、油断してるところにいきなりヒステリックに暴走を起こし始めたり、陽気でハッピーなんだけど、メランコリーに沈んだ美しいナンバー(2010 (M7))とかもあって...。ギターの演奏スタイルも、単音を器用に並べるような丁寧なのもあれば、ブラッシングとかのBattlesチックな実験的なのもある感じ。それは、ボロボロな状態で何かと激しく葛藤するCrack Cloudのポストパンクのキャラとも違う、マスロックのように複雑なアンサンブルのテクニカルさで威力を発揮するblack midiのポストパンクのキャラとも違う、もっと友達になれそうな親しみと、関わりたくない狂人みたいな危さのどちらも持ち合わせてるようなキャラ 笑。このキャラもめちゃめちゃ最高だと思う!ハッピーすぎずヤバすぎずのバランスで本当にすごくユニーク。Narrator (M3)とかもう別格で言わずもがなの傑作ソングだと思うけど、私的にはG.S.K (M2)、Paddling (M5)、Pamphlets (M11)あたりがすごくお気に入り。特にG.S.K.のギターリフとかほんとに素晴らしいと思う。バウンドのニュアンスがある特殊なグルーヴ、とても変な形状をしたメロディーで、快感やスリルというだけでなく、リスナーに対する魅惑や催眠性の効果も含んでる感じ。とっても不思議でとってもクレイジー。ここで私はもう完全に調子が狂って「あぁもうSquid大好き...!!泣」ってなった 笑。この曲のギターリフ一つだけでも、Squidのキャラクターがいかに最高なのかがよく表れてると思う。

Pamphlets (M11)とかもやっぱり超素晴らしい。ドライブの強いストレートなロックだけど、Cloud NothingsのWasted Daysの間奏とか、DeerhunterのNothing Ever Happenedのラストとか、ノイズやエフェクトの実験的なサウンドで無限に遊べるパートが用意されてるような曲。こういうパートっていつまでも聞けるし、多様な感情を引き出しSquidの不思議さとクレイジーさを発揮しながらめっちゃロックしてる感じが本当にいいなって思う。ライブがかなり最高なご様子だからやっぱり観たい。(スパソニの無念よ、、、)

今作は『Bright Green Feild』という緑が特徴的なジャケットの作品だったけど、音楽のワールドに対する想像の余地とか、Narrator (M3)のMVで表れてるようなアート的観点もすごくよかったと思う。単純にバンドのアンサンブルのよさというだけでなく、全体がコンセプトを持ったアルバムとして完成されているということ。気持ちいい緑に見えて、どこか心が引っかかるようなミステリアスさとか、少し不気味な雰囲気とか。Narratorの音楽にもあったけど、何か違和感を与える空白を持ってる感じにもすごく惹かれてた。(というかNarratorのMVめちゃめちゃ好き。)Black Country, New Road、Iceage、black midi...。ポストパンクのブレイクがすごい現代のロックシーン、どれもめちゃめちゃ大好きだけど、Squidもかなりのお気に入り。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Theo Alexander - "Sunbathing Through A Glass Screen"

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もっともっと凄まじい幸福に満ちたもの

 それは、和音の豊かな響きに包まれるピアノの二重奏。そしてそれは、精霊を召喚するような鍵盤楽器と低弦のアンサンブル。この世のものとは思えないような、聖なる輝きと透明感。川のせせらぎのように、天から降り注ぐ恵みのように、私を癒し、命を与える音色。Theo Alexanderの今作が私にとって嬉しくてたまらないのは、自分が考えてるよりもずっと、世界は神秘的であるのだということを私に思い知らせるから。自分の理解の範疇を超えるほど、この世界は圧倒的に美しいのだということを私に教えてくれるから。私はこういう音楽に本当に弱くて、やっぱり呼吸ができなくなるくらい泣いてしまった。聖なるメロディーが私に非現実的で魔法的なものをハッキリと信じさせ、私を目覚めさせるように、生きていることの実感を叩きつけるように、私と世界の全てについて祝福してくれるような感覚。まるで、「この世界は何もかもが素晴らしいんだよ」と伝えるように。音楽による感情の体験は、それをリアルに叶えることができる。それこそ、私が芸術の中で1番音楽が好きである理由。ピアノのサウンドで一貫して音楽の世界が作られている本格的なクラシックではあるけれど、非常にシンプルで、力強く、崇高で威厳に満ちた風格すら感じさせる作品だった。

Introduction To Sunbathing (M1)から、もう尋常じゃないほど感動する。それはなんといっても、ピアノのサウンドが所持している光の性質を最大に引き出しているというところ。和音に和音を重ねるような重奏のアレンジで、リスナーを包み込むようにしてその光の音をいっぱいにしてる。そのSunbathing(日光浴)は、単なるバカンスのような ほのぼのとした雰囲気の日向ぼっこなんかでは全然なく、人生で最も幸せな瞬間を想像するような、生きる希望を見出すような、もっともっと凄まじい幸福に満ちたもの。「光とは、こんなにも美しいものだったんだ」と思った。私はこの曲で、生きてる限り自分はずっと幸せなんだということをイメージした。ピアノの光に含まれる何か願いのようなものを受け取って、自分の人生のことを心から愛おしく思った。アルバムのイントロなのに、この1曲だけでもう目ん玉がギタギタになるほど泣いてしまう。ピアノの二重奏が、シンセオルガンが、ここまで強度の高い幸せの光を生み出せるなんて。ピアノって本当に素晴らしい。Theo Alexanderって本当に素晴らしい。

ただでさえ1曲目でもう感動レベルがやばいのに、2曲目のBright-Eyed Hunger (M2)もそれ以上くらいヤバくてもう死ぬかと思った。日光浴らしい1曲目とは雰囲気がガラリと変わった世界。記号のようなメロディーを規則的に並べて描く、幾何学模様のようなアート。そこにチェロとコントラバスの怒りのような低音を作用させて、そのアートはもっと巨大な建造物のような発展を見せていく。本当に、本当にヤバすぎる。その音楽を聴いた私は、究極的な神々しさと、限界を超えるような美しさを目の当たりにして、自分が持っているマインドがぶち壊されるような、とてつもない衝撃的な感動を味わった。想像上で例えるなら、初めて天国や宇宙の世界を目にするときのような体験。7分の曲だけど、現実世界を生きてることが思い出せなくなるくらいの幻想への没頭がある。もうめちゃめちゃぶっ飛ばされた。芸術とは、人間のクリエイティビティとは、こんなにも尊いものなのかと思いながら、やっぱり泣いてしまった。色々なサウンドを使用するのではなく、鍵盤楽器の歌だけで描くという神秘性の高め方が本当に強い。自分はオルタネイティブロックの洋楽が1番好きなのだけど、本格的なクラシックタイプの作品にもこんなにハマるとは思わなかった。自分でも意外でびっくりする。同じ系統で6曲目のAccidental Enlightenmentとかも、頭おかしいくらい素晴らしかった。

"ガラス越しの日光浴(Sunbathing Through A Glass Screen)"と題されたアルバムだけど、日光浴に対するピアノの色々な感情を堪能すること、そのワールドや物語に対する想像を膨らませること、シンプルながらとても中身の濃い素敵な作品だったと思う。特にピアノの二重奏は本当に格別。自分はピアノ全く弾けないのだけど、ラフマニノフの二重奏とかは大好きで、オーケストラをやってた大学生時代にはよく聴いてた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. black midi - "Cavalcade"

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この音楽に呪われたい。。。

 私を支配する、black midiの巨大な帝国。マスロック、ジャズ、プログレなどを足し合わせたような圧倒的なアンサンブルの存在が、まるで暗黒世界の覇者のように君臨している。私がどうあがいても太刀打ちできないような、絶対的な威力を持ったダークネス。あぁもうカッコよすぎる、、、、泣泣。このblack midiの音楽の虜になりたい。この音楽に呪われたい。音量を爆音にして聴きたくなるような激ヤバの興奮に、体中がこれでもかというほど熱くなる。John L (M1)では地震を発生させるような衝撃的な怒りを放ち、Chondromalacia Patella (M3)の後半では殺意をむき出しにして猛スピードで襲い掛かって来たり...。それは、ただ苦しみを抑えきれず発狂して暴れまわるような幼稚なものではなく、抱えてる闇がもっと高度な発達を遂げたような、芸術性のある奇抜さと異様さがある。不協和音のグロテスクな低音の破壊的な迫力も、メタリックな弦楽器の出血を連想させるようなダメージも、過激な表現を技術力のあるアンサンブルとして丁寧にアートに落とし込んで、負の感情を最高に魅力的に見せるように完成させてる。この神のようなスマートさ、、、リアリティの高い怒りと闇を120%発揮するためのアンサンブル力、、、!!もう大好きが限界突破を起こしそうになるくらい好き。Slow (M4)の時点で、大好きすぎるあまり感極まって号泣しそうになってた。私が今作で1番好きな、絶対的な威力のダークネス。純粋なアンサンブルにblack midiの闇の感情を込めまくって、まるで魔物を創造するような気迫を生み出してる。緊張感を煽る特殊なリズムパターン、内なる怒りと闇を全て解放するような聖なるメロディー、それらを休むことなくリスナーに与え続けるとってもスリリングなストーリー性、そしてその果てしないスケール感...。音楽を通じて、まるで化け物に成り果てた人間が神のような姿を見せるような、恐ろしさが芸術の領域に達したときの並外れた素晴らしさを感じさせる。もう本当に凄まじすぎてヤバすぎて、中毒性が半端なくて、身体が言うことを聞かなくなるくらい爆音でずっとリピートしたくなった。何度でも聴きたくなるほどのよさ。長調から短調に無理やり切り替えるような気持ち悪さのテクニックとか、身体が追い付かず吐き気を催しそうになるところもあるのだけど、そういう気持ち悪さからもblack midiの強烈な怒りと闇のリアリティが伝わってくる。本当に素晴らしい。それらのblack midiの絶対的な威力を表現するMVも傑作すぎて、、、笑。特にこの2Dアニメーションのマスコット、本当にめちゃめちゃユニークで、もうここまでくるとblack midiのセンス狂ってるな、、!って思う 笑。ほんと、ヘビロテが止まらない曲だった。

私が今作で何よりも惹かれるのは、暗黒世界の覇者のように君臨しているblack midiの強大なヴィランに、この物語の主人公は絶対に敵わない、というようなことを思わせるところ。例えばラスボスと戦うバトル漫画で、主人公が必殺技を使って勝利するとか、そういうのももちろん最高だと思うのだけど、black midiの今作の場合は、そういう必殺技を使っても到底勝てないような、圧倒的な絶望を与える敵として描かれてる感じがする。そのくらい、black midiが築く帝国が恐ろしい存在であることを想像させるアンサンブル。いかなるものでも抵抗できないような、絶対的な権力、そしてそこに含まれている、作品の造り手側の"反抗心"。私は「この世で一番ロックなものは何だと思う?」と聞かれたら、多分Battlesって即答するけど 笑、ダークサイドを進化させた化け物じみたblack midiもまた、この世で一番ロックなものと捉えられるかもしれない。それほどのパワーが込められた、もっとリアルな激しい怒りと闇のロック。もう世界一カッコいい。。。笑。特にやっぱりSlowのMVの世界観が刺さりまくってた。

今作は全曲通して素晴らしい。メロメロなバラードや、ビタースウィートでムーディーなジャズ要素、それらの幻覚的なユートピア。過激さと穏やかさの緩急があって、アルバムがよりドラマチックな仕上がりになっていたと思う。激しい系だとDethroned (M6)とかもかなり好き。後半パートのグルーヴが超カッコいいし、連符のギターサウンドとか、ドライブするベース、その他全部最高すぎてずっとニヤニヤしちゃう。アルバムがほんとに充実してる。何度聴いても新しい発見ができるところもポイントが高かった。black midiが新譜をリリースするってこんなにも嬉しいんだね。もうblack midi毎週新曲出してほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

プレイリスト

Apple Music

温の「2021年5月ベストアルバム(温)」をApple Musicで

 

Sportify

open.spotify.com

 

その他よかったもの

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Avec Sans - "Succession"

Body Meπa - "The Work Is Slow" 

Erika de Casier - "Sensational" 

India Jordan - "Watch Out! - EP"

Juliana Hatfield - "Blood"

Lucinda Chura - "Antidotes 2 - EP"

N0V3L - "Non Fiction"

Pinky - "Tomorrow's Where I'm At - EP"

 

 

 

「2021年4月ベストアルバムTOP10」感想

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今月はこの時期特有の春フィルターがかかって、春めいた作品はもれなくよさが最強になってた 笑。あとEPの作品達がめちゃめちゃよかった。

今月のスーパー最高なアルバム(EPも)のTOP10の感想をランキングで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. SPIRIT OF THE BEEHIVE - "ENTERTAINMENT, DEATH"

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こんな現代社会でも最高に幸せになれる

 原形をとどめなくらいまでボロボロになってるローファイ・ノイズロック、そしてとても激しいサイケデリックのロックの感じ。アコースティック、エレクトロニック、ストリングス、サンプリング...、無秩序でバラバラに壊れてるサウンドが常に耳の中を埋め尽くすようなその感覚は、広告で溢れた都市の中を徘徊するような、鳴りやまない自動車や電車の騒音のストレスを感じるような、とても息苦しい感覚のものがあると思う。それなのに、どうしてこんなに心地よいのだろう。そしてどうしてこんなに美しいのだろう、、、。私はこの音楽で現実と空想の狭間に迷い込むように狂っていき、脳みその機能がシャットダウンするような、とても強烈な現実逃避の瞬間を味わっていく。ものすごくスリリングで、ものすごくエクスタティックで、そしてハチャメチャにエモーショナル。本当に素晴らしいと思う。現実味の強いドラッグの体験みたいに、気持ち悪さと気持ちよさの両方が完璧に再現されてる感じがすごく最高。1曲目のENTERTAINMENTから、それらの強烈なドラッグ的音楽を展開しまくる。音が歪んだ爆音の破壊的な演出に、小鳥のさえずりのサンプリングがもたらす豊かな情景描写、ワールドとワールドが激しくぶつかり合うような、ものすごく刺激的なサイケデリア。そんな強烈な世界の中で、甘美なフィーリングの歌を咲かせて、エクスタシーを上乗せさせるように感情と感情の相乗を発生させる...。この1曲目だけで、今作が本当に最高の傑作なんだと思い知らされた。目眩がするようにクラクラなりながら、ものすごく癒される。去年のPet Shimmersの諸作品みたいに、音を粉々にクラッシュしたようなローファイの切ない感情を引き立てたりとか、そういうのってたまらなく好きだなと思う。今作2曲目から3曲目の流れとかも、地獄からユートピアまでレンジの広いワールドの揺さぶりがあって本当にびっくりした。

アルバムを通して作風を一定に保ってる感じだけど、10曲目のI SUCK THE DEVIL’S COCKとかよく印象に残る。こちらはポストパンクみたいなドラムのかわいいトコトコビートがある感じの曲。こういうスタイルも持ってるんだ...!って思った。Puma BlueやUnknown Mortal Orchestraのようなローファイ・ノイズロックとしてよさだけでなく、バンドのスタイル的な点でもツボに刺さるポイントを持ってるということ。前作もすごく好きだったけど、今作のこの曲でより一層SPIRIT OF THE BEEHIVEに対する好感・信頼が強くなった気がする 笑。

テクノロジーの発達、情報社会の発達、現代社会はとても窮屈で、いつも心が休まらない。今日も明日もとにかく時間に追われながらひーひー言って過ごしてる。SPIRIT OF THE BEEHIVEの今作は、そんな心に余裕が持てない現代社会の姿によくフィットしてたと思う。ごみごみとした社会の中で息苦しさを感じながら、それでもエクスタシーを味わっていくようなこの感じ。気持ち悪さすらも残るとてもリアルなドラッグ的体験。そんな音楽だからこそ、絶対無敵の最高な現実逃避が楽しめたんだと思う。そして私は、こんな現代社会でも最高に幸せになれるんだと分かった。SPIRIT OF THE BEEHIVEめちゃ大好きだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Cory Hanson - "Pale Horse Rider"

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私が思うノマドランド的ビジョンに一番近い感覚の歌

 夕方~夜に差し掛かるギリギリ寸前の時間を切り取ったようなWaxahatcheeのSaint Cloud (2020)のジャケット空間とか、最近で言うとノマドランドで全面に表れてるようなアウトドア・キャンプのビジョンとか、そういう時間・空間のことがとてもとても大好き。Cory Hansonの今作は、それらと同じ質の時間と空間の景色を何個も所持してるようなカントリー・フォークで、最高の風情がある作品だと思う。オルタネイティブ、アコースティック、バロックポップ...、どの曲も深く心に刺さるのだけど、曲ごとで様々なセンスを持ってる感じが本当に素晴らしい。穏やかな曲調の中で感情の揺らぎを増幅させていくようなエモ密度(Angeles (M2))、クラシックじゃなくて民謡系のバイオリンの人懐っこいキャラ(Pale Horse Rider (M3))、そしてビタースウィートでメランコリックな美しさ(Bird of Paradise (M5))、さらにはギターアルペジオで奏でる子守歌のような愛おしさ(Vegas Knights (M7))なども...。アンビエントの間奏トラック含め、1曲目から10曲目まで全部全部最高...。リラクゼーション、味わい深さ、あと9曲目のAnother Story from the Center of the Earthに関してはギターノイズの快感とかも本当にやばくて...。フォーク・カントリーとしてだけでなく、インディーロック的に見ても文句なしに大好きな感じ。ノマドランドのアウトドアのビジョンみたいに美しくてたまらない時間・空間をイメージしながら、思いを巡らせるようにCory Hansonの歌をしみじみ聴いて、幸福度を果てしなく高めていく...。過ごしやすいこの季節には尚更刺さる仕様。めちゃめちゃよかった。

今作はどの曲も歌のメロディーがほんとに最高だなと思うけど、その中でもラストPigs (M10)とかウルトラハイパーに大好き。声のトーンがリスナーに一番沁みるように調整されてるような音域のボーカル。そのメロディーをこの上ないくらい綺麗にしっとり歌い上げるのだけど、心に刺さりすぎて思わず泣いてしまいそうになる。自分がイメージするノマドランド的ビジョンに一番近い感覚の歌、とてもとても繊細な歌。この手のフォークのバラードはもう本当にたまらないなって思った。

Cory Hansonツイッターでおすすめされてなかったスルーしてたかもしれない。実際じっくり聴いてみたらとてもハマる作品だった...!Wandにも寄り道したくなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Remember Sports - "Like a Stone"

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ガツガツハングリー & ほのぼのまったり

 パンキッシュなパワーポップCharly Bliss、多幸感に包まれるようなノイズロックのSwearin'、ロックンロールの反抗心は、ときにリスナーの元気をフルチャージするようにポジティブなモチベーションをくれると思う。Rember Sportsもその手のパワーポップ・ノイズロックの音楽であり、ハジける元気と強力なハピネスを提供してくれるアーティストであり、私の最高にお気に入りなバンドなのである...笑。パンチの効いたサウンドで勢いよくリスナーのテンションを上げてくるPinky Ring (M1)、綺麗な揺らめきのサウンドから唐突に地響きみたいなギターも炸裂させちゃうSentimentality (M3)、そして可愛いポップの状態からガツガツにハングリーに攻めのロックにスタイルチェンジをするLike a Stone (M7)...笑。もうめちゃめちゃ楽しくて、元気よくて、ハピネスが最大に表れてる精神状態のやつ。ガレージ・サイケのアプローチで心の余裕を表現した去年のMamalarkyとかもそうなのだけど、こういうハピネス栄養素の多い音楽がマジで大好きで...笑。特にタイトルトラックのLike a Stone (M7)とか、メロディーが駆け抜けていくような爽快感とかもほんとに最高で、とても春に似合ってた。

Rember Sportsの今作がCharly BlissやSwearin'などのパワーポップとひと味違うのは、元気モリモリ系のハピネスだけでなく、ほのぼのまったり系のハピネスも最強だというところ。例えば6曲目のMaterialistic。3拍子の豊かなグルーヴの中でメロメロな気分になるようなバラードのナンバー。攻撃力のあったロックから一転した雰囲気があって、コーラスのハーモニーとか、美しいエモさを引き立てるようなメロディーワークがある。こっちのパートもとってもいい。ロックとバラードどちらも良くてすごく器用だなと思う。極め付きは11曲目のOut Loud。この曲も本当に素晴らしくて...。涼しい温度感のリラックスムードの中で、胸が締め付けられるようなエモさのある歌を添える。とてもロマンチックだと思う。あんなに元気モリモリにパワーポップやってたのに、こっちはまるでYo La TengoのAnd Then Nothing Turned Itself Inside-Out (2000)みたいに落ち着くムード。ほんと、私にとって驚きのよさだった。こっちを聴いてしまうと「バラード路線でも全然勝負できるのでは...?!」と思うくらい。今月のランキング、上位の作品が強すぎなければ、本当は順位4位くらいだったのだよ...(上には上がいた)

Franki Cosmosみたいに可愛いメロディーを持ってたところもよかった。それでいうと今作もとても春に合うアルバムの感じ。今月はそういう春との適合率でアルバムのよさが格段にレベルアップしてる作品多くって、、、、笑

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Crumb - "Ice Melt"

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恋するミステリアス

 私のハートを掴んで離さない、Crumbのミステリアスな恍惚。それは、マイブラ様が確立したシューゲイザーの恍惚でもない、インパラ様が確立したサイケロックの恍惚でもない、ジャジーでソウルなエッセンスを配合した全く新しいロックの恍惚...。濃厚なムードに包まれたその音楽は、スモーキーで、色気を持っていて、まるで恋するようにとても深い引力を私にもたらす。今作『Ice Melt』は、アルバムのタイトルは美しいものの、ジャケットは不気味でとてもダークなのが特徴的な作品。それらの印象から伝わるように、Crumbの濃厚なミステリアスさが最高に発揮されてるようなめちゃ最高のアルバムだった。1曲目のUp & Downから虜になりまくる。ドリーミーで、ムーディーで、スペーシーで、そしてロマンチックで...。ぽわぽわと浮かぶ怪しげなサウンドたった1つだけで、こんなにも様々な角度からリスナーに大量のフィーリングを与えていく...。もうめちゃめちゃ素晴らしい。この曲を聴いて、Crumbの濃厚でミステリアスなよさがまたアップグレードされてるような気がした。それらのフィーリングを強化するようなグルーヴィーな高揚感とかも本当にやばい。8曲目のBalloonとかも最高...。集中力を高めるような8ビートの静かな興奮、ベースが同じ音を単発でズンズン打つ続けるようにグルーヴ感を出して、音楽をもっとダンサブルに。ドラムが裏打ちビートに変形する中盤パートの盛り上がりとかでもう圧倒されてしまうのだけど、こんな興奮の強いCrumbは今までになかったと思う。前作のJinx (2019)もリードトラックが最強でもちろんよかったけど、ダークなジャケットの重たい雰囲気、それに伴った濃厚なミステリアスの強さ、グルーヴィーな高揚、総合的に考えたら今作の方が好きかもしれない。"Ice Melt"ってタイトルもすごくお気に入りだった。

ミステリアスなものが大好き。例えばGastr Del Solみたいに怖いもの見たさで引き込まれていくようなエクスペリメンタル系の作品とか、その他もろもろ神秘的な存在感を放つアンビエントとか...。Crumbの場合、ジャジーでスモーキーなオーラだからこそ生み出せるような、アダルトで上品なキャラクターとしてのミステリアスを持っているところがやっぱり素晴らしいと思う。それなのに、サウンドがぽわぽわしててすごく可愛らしかったり、ギャップ的にも惹かれる部分があったり。神曲Locketのときからもうどんな曲をリリースしても「あぁCrumbだからどうせ最高なんだろうな」って安心してたのだけど 笑、案の定今作も素晴らしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Beach Youth - "Postcard"

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ネオアコとは思えないほど最高にエモーショナルになる瞬間...!

 春の真っ盛りな4月のこの季節に最高のネオアコギターポップが届いた!!!!ドリーミーな成分、和やかな脱力成分を多く含んでる抜群に素敵なやつ。ボーカルがすごくマイルドなキャラクターを持ってるし、トロピカルなサーフロックみもあるからポカポカの快感がすごくハイクオリティ。春-夏のシーズンに超絶ぴったりな作品で、もうベストアルバムのランキングに入らないなんて考えられない...!って思った 笑。王道のジャンルものの作風だから似たような作品はたくさんあるかもしれないけど、それでもBeach Youthの今作のエモーショナルレベルは本当に高かったと思う。冒頭のLove Yourselfからもう完全に持っていかれる。解放感のあるネオアコの質感を保ちつつも、ロックのドライブ要素を少し多めに入れてるアレンジ。ジャケットの青空みたいに最高に気持ちいい曲なのに、エンジンがかかるようにして音楽がどんどん加速して高まっていって、ラストの方になると「私今エモ聴いてる...??」って錯覚するくらいロックさが増していって...。一般的なネオアコギターポップの想像を超えるほど、ずっとずっとエモーショナルになる瞬間。音楽がロックに発展していくのに並行して、歌が泣きメロに変化していく感じが本当にたまらない。7曲目のIn My Chestとかもそういう系のロックだけど、ドラムの熱量高めな感じとか、汗かきながらガムシャラに演奏してるこういう雰囲気って、素敵なものに一生懸命になるみたいでめちゃめちゃ最高だと思う。例えるならDIIVのHow Long Have You Known?のMVの中で演奏してるメンバーの姿とか。気持ちいいものを全力で追い求めるようにして鳴らすロック。実際サブスクの"こちらもオススメ"の枠にDay WaveとかDIIVが出てきたし、"分 か る"って思った 笑。

3曲目のTwo Bedroomsも本当にやばい。こちらはネオアコからロックへの発展というよりは、逆にロックをネオアコ要素に効かせたようなイメージの曲。胸いっぱいになるようにギターのアルペジオを奏でて、ネオアコのドリーミーな味わいをもっと拡張していくような音楽描写。こっちのタイプの曲も最高すぎる。ギターも純粋無垢で可愛らしいポップのキャラを持っててもうツボにグサグサ刺さる...。この2曲目、3曲目のコンビネーションでもう(TT)(TT)ってなってた 笑。マジでめちゃんこ好き。 

お散歩に積極的に出かけたくなるようなこの時期、Beach Youthの今作もお散歩BGMに最適なアルバムだった。ただ、Beach Youthは疾走感も持ってるから、どちらかというとドライブで聴きたい。Love Yourself (M2)やTwo Bedrooms (M3)を聴きながらめちゃめちゃドライブしたい。車を乗り回してた学生時代 in 茨城の頃が懐かしい、、、(しみじみ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. CFCF - "Memoryland"

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全身全霊で楽しむダンスフロア

 作風的には、ゲーマーの人とかが好きそうなテクノ・エレクトロロックのイメージなのだけど 笑、リスナーをヒートアップさせまくるような激アツのアルバムだと思う!バチバチに火花を散らすようなドラムの最高のパフォーマンスがあるブレイクコア(Life is Perfecto (M2))、そこからもっと凄まじい運動エネルギーを放っていくジャングル(Nostalgic Body (M3))、さらには広大なノイズの海を発生させるようなニューゲイザー(Model Castings (M4))、ブレのないストレートなロック(Punksong (M6))、そして意識が完全にぶっ飛ぶくらい無我夢中でハイになるテクノ(Night/Day/Work/Home (M7))...。70分のアルバムの内、ここまでが前半部分という内容の濃さ、、、笑。後半ではフレンチハウス、UKガレージなど、こちらも中毒性のあるダンストラックが揃ってるし、最高にグッとくるエレクトロニックのバラードでフィナーレを飾るという...(Heaven (M15))。一曲一曲が強い上に、それらが継続して展開されるようなストーリーとしての強さもすごい。作品がボリューミーなワクワクを持っていて、初めて聴いたときからずっと病みつきになってた。毎日通勤時も退勤時も何かに取り憑かれたようにリピートしてた 笑。ほんとにやばい、特に2曲目と7曲目と15曲目がめちゃめちゃやばい。

冒頭のLife is Perfecto (M2)は、ブレイクコアのカッコよさだけでなくギターやドラムのキャラのよさもとてもアピールしたような曲。エッジの利いたギターをクールにキメていきながら、テクニカルなドラミングを思う存分に披露するこの圧倒的なパフォーマンス...。あまりに興奮しすぎて叫び出しそうになってしまうくらい、ほんとにほんとに超カッコいい、、、笑。ドラムのパフォーマンスがめちゃアグレッシブなのに対し、ギターがメランコリック気味にバッキングを演奏し続けてる感じも とてもつもなくカッコいい。そこから後半にかけて、音楽がひんやりとした感触を持つように温度変化を見せていく。これまでエッジを利かせていたギターはもっとスムースに、エレクトロニックのサウンドはもっと潤いのあるニュアンスに。それらのしっとりしたサウンドスケープが、それまでのドラムのアツいパフォーマンスに対して、その興奮の熱を冷ますように影響していくのだけど、この熱反応がもうめちゃめち素晴らしすぎて…泣。序盤から興奮してアツくなりまくって、後半ではそのアツさが冷めていく気持ちよさを味わうというこのダブルの性質。火属性の感情と水属性の感情の魔法的なコントラスト。ほんと、なんて素晴らしいんだろう...。Life Is "Perfecto"というタイトルの曲だけど、私からしたらこの曲こそ本当に"Perfecto"な出来栄えだった 笑。この1曲だけでずっとリピートできてしまう。

そんなLife Is Perfecto (M2)に匹敵するようなよさのNight/Day/Work/Home (M7)もまた超超超名曲。こちらは8分の中でとにかく攻めて攻めて攻めまくるようなテクノ。まるで夜の高速道路をかっ飛ばし続けるようなとびきりのハイパーエネルギー。踊って踊って踊り倒して、アドレナリンをドバドバに出して、全身全霊でそのダンスフロアを楽しむ。私にとってこれがどれほどの喜びか...。相変わらずコロナコロナで毎日ほんっっとうに退屈だけど、それでも私は、誰も介入することができない私だけのとっておきのマイワールドの中で、CFCFの珠玉のダンスフロアを堪能する。私はその場所で、理性をぶっ飛ばすくらいハイになって踊りまくる。本当に幸せ。特に開始5分くらいから始まる16ビート3拍感のアクセントのフレーズのところとかめちゃめちゃ好き。曲の中でカッコいいパートを本当にいくつも持ってて、今作屈指のナンバーだと思った。

.......こんにも最強の曲を持ってるのに、それらすらも超えてしまうような素晴らしさがまだある...!(まだある...!泣泣)。それがラストのHeaven (M15)。最高にアツいエレクトロニカの世界を巡り、興奮して、踊って、ぶっ倒れるまでとことん遊んで楽しんで、最後の最後に辿り着くアルバムの境地。そこには、これまでにはなかったファンタジックな世界があった。それはまるで、アルバムでこれまでに得た数々の思い出に浸りながら、それらとお別れをするような物語のクライマックス。寂しくて切なくて、それでも愛おしいフィーリングで胸いっぱい満たされるような物語のエンディング。思わず泣いてしまった。こんなエンディング用意されてたらもう絶対泣いてしまいます。これまでのアルバムの楽曲で得た喜びのフィーリングが思い出としてエンディング時にドリーミーにフィードバックされて、最高にエモーショナルに完成される。このときにKero Kero BonitoのSarah Bonitaをフィーチャーリングしてるのがマジでセンス最高すぎると思う。Heavenってテーマとか、Goodbyeのリリックとか、細かいところ一つ一つでfeat. Sarah Bonitaの愛おしさがよく発揮されてる感じ。もう半端なく素敵で、完璧で、涙腺が刺激させられまくるほど感動した。このラスト単曲だけでも十分に素晴らしかった。

今月における私のこのアルバムの再生回数は本当にすごかったと思う 笑。とりあえず暇さえあればすかさずCFCFのこのアルバムを再生してた。CFCFは他の音源聴いたことなかったけど、さすがに聴こうと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Unschooling - "Random Acts of Total Control - EP"

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人間なのを疑うヤバさ

 先々月のBlack Country, New Road、5月に新作を控えたblack midi、規格外で衝撃的なカッコよさを誇る2021年のポストパンクバンドの中で、Unschoolingもそれらに全く劣らないほどカッコいいバンドだと思う...!!もうやばすぎて笑いが止まらないくらい鉄壁のポストパンク 笑。人間味を失ったのごとく機械のようにビートを刻み込んでいく超精密なリズム隊、切れ味抜群のソリッドなギター、それらの ものすごく本格的で最高なサウンドたち。一見するとストレートでフォーマルなスタンスのポストパンクだけど、それらの常識から思い切り外れるようなユーモアさを持ってるのが本当に本当に素晴らしくて...。5曲目のNyeとか、鼻水出るくらい笑いながら泣いちゃった 笑。リスナーの調子を完璧に崩すような緊張感と緩和のスイッチ。まるで何か制御が壊れるようにしてアンサンブルが崩れていくところで、これまでずっと鉄壁だったところに"隙"が現れ始める。この絶妙なニュアンス、とても人間味があって、豊かな感情があって、もうたまらないなって思ってた。......そんな風に油断してたら、私はまんまとキルされてしまった...。鉄壁だったところに隙を見せていたと思ってたら、今度は逆に、人間味や豊かな感情をあえて全力で見せてきたのだ、、、。ここでもう目ん玉がギタギタになった。今までのクールでカッコいいポストパンクが嘘みたいに素敵すぎるサウンド。あれだけ鉄壁のポストパンクを演ってたのに、もう意味分からないくらい愛しくて胸がいっぱいになる音楽に方向性が転換してて、Unschoolingの情緒どうなってるの????って思った 笑。ほんと、人間なのを疑うレベルのヤバさ 笑。本当にめちゃめちゃ感動した。

今作は5曲入りのEPだけど、5曲全部が最高に最高だった。ミニマルの楽しさ、7拍子の変化球、アングラなダークさ、そして不意打ちのメロディアス...。去年のThe Homesick(私の2020年ベストアルバムTOP10)のユーモアとか、Hypoluxoの豊かな感情性とか、よさを大量に持ってる感じ。もしかしたらそれらのバンド以上に好きかもしれない...。ブレイクしないのが不思議なくらい、本当にハイレベルなバンドだと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Godspeed You! Black Emperor - "G_d's Pee AT STATE'S END!"

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どれだけダメージを負っても、ずっと闘い続ける

 2012年作の'Allelujah! Don't Bend! Ascend!は、私の2010年代のベストアルバム第1位の作品。戦争のように残酷な世界の中で生きる力が残りわずかになり、「死にたい」という気持ちに深く共感するときの、『かろうじて、生きている』をモチーフにしたあのメロディー。「"あなたは、かろうじて、生きている"」。Godspeed You!は、私のことを本気で肯定してくれる。自分に自信が持てなくなるように傷ついて絶望していても、私の悲しみに共感して、私のことを一生懸命応援してくれる。そんなGodspeed You!の作品の中でも、今作G_d's Pee AT STATE'S END!はトップ3に大好きなアルバムだった。物語の中で主人公が力の限り絶望に立ち向かうような6曲目(“GOVERNMENT CAME” (9980.0kHz 3617.1kHz 4521.0 kHz))のところで、心臓が破裂しそうになるほど感動した。悲しみの表現、奮闘の表現、そして痛みの表現...、Godspeed You!の音楽表現は本当に卓越してると思う。生命力を吸い取るようなストリングスの嘆きの感情とか、音楽を巨大なスケールで見せるような低音の演出とか、どれだけダメージを負っても死ぬまでずっと闘い続けるようなギターとか。何もかもが他の音楽には描けないくらいの圧倒的な美しさがある。それらを発動しながら、音楽が泣き叫ぶようにして力を込めていくわけだけど、もう鳥肌がバーストするのを抑えられない。素晴らしさのレベルが尋常じゃないと思う。どれだけ世界が残酷でも、それでも力強く生きることを教えてくれるようなポストロックの轟音シンフォニー。今作においても、自分が生きることを応援してくれるようなテーマを持ってた。やっぱり泣いてしまった。私にとってGodspeed You!の音楽は偉大すぎてる。6曲目が本当に美しかった。

6曲目はそんな風だけど、今作は全体的に言えば前作Luciferian Towers (2017)と同じ冒険感の強い作風だったと思う。大海原を渡るようにして音楽の世界を最高に旅していくようなストーリー。M1, M2, M3のワンセットのパートも素晴らしい。シンフォニックな轟音ならではのロックの鼓動、音の波動がお腹の中まで響くようなとてもヘヴィなアンサンブル。それらの生命力がみなぎるようなエネルギーで、人生を謳歌するように喜びを奏でていく。それの音楽のドラマの中には、希望とか勝利とか、そういうテーマを見出せると思うのだけど、Godspeed You!ってやっぱりこういうの大好きなんだなって思う 笑。広大で、美しくて、そしてすごくすごくカッコいい。私も大好き。いい加減マジで早くライブみたい...。コロナさえなければ、コロナさえなければ、2020年の4月に大阪で観れたのに、、、、、、(行く気満々だったのに)

間奏トラックだけど4曲目も素晴らしかった。すごくショッキングなサウンドのサンプリング、それらの恐ろしい世界観、とてもGodspeed You!らしいセンス。アルバムの中でシリアス感・緊張感を作るとても重要な役割を持っていたと思う。サンプリングはラジオもすごくよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Skullcrusher - "Storm in Summer - EP"

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奇跡的なヒーリング

 朗らかであったかいカントリーの音楽性に、キラキラのセンチメンタルなポップを適応させると一体どんなことになるのか。それはすなわち、カントリーの自然的な感触の安らぎと、ポップのキラキラしたときめきを融合させるということ。"素敵"と"素敵"の爆発。そして半端ないほど心に沁みる美しさを生み出すような魔法...。もうなんて感動的な音楽なんだろう。。。4曲目のStorm in Summerを聴いたとき、あまりにも好きすぎて白目向いて気絶しそうになった。センチメンタルなメロディーで、あったかいカントリーの世界の中にファンタジーを描いていくような世界観の構築。もうとんでもないほど素晴らしいと思う。心奪われるようなそのファンタジーの中で、バンジョーが本当に大活躍してる。ポロポロと流れるように音粒がかわいく落ちて、鼓膜にしっかりヒットしていくような楽しさ。ただでさえとても美しくてセンチメンタルで胸がこれほど痛いのに、その痛みを和らげてくれるように、慰めてくれるように、バンジョーサウンドが愛情を与えてくれる。まさかバンジョーでこんなに泣くとは思わなかった。バンジョーでここまで励まされるなれるなんて思ってもなかった。サウンドが鼓膜にヒットしていくその感覚を思い出しだけでもう泣いてしまう。センチメンタル要素とカントリー要素、それらがもたらす奇跡的なヒーリング。ノーマルの状態でこんなに刺さるんだから、気持ちがダウン気味のときとかに聴いたりしたらもう絶対やばいことになる。歌詞も大好きだし、"Storm in Summer"って設定も大好き、全てにおいて大好き度が尋常じゃなかった。

去年のセルフタイトルのEPは鮮烈なデビュー作だったと思う。憩いのスポットのような森の中、川のほとりをバックにしたジャケット写真。Phoebe BridgersとSoccer Mommyにも通じるようなインディーズSSWでありながら、自然的なワールド感をよく持ってるアーティストの感じ。今作はそんな彼女の音楽性をハイレベルに極めて、キラキラのセンチメンタル要素(Song for Nick Drake (M2))だけでなく、サウンドの美しさ・浸透レベルとかをめちゃめちゃ高めてたEPだったと思う。3曲目のStepとかも大好きでたまらない。楽器の呼吸まで鮮明に伝わってくるような澄んでいて綺麗なサウンド。本当に心に沁みる曲だから、身体がリセットされるような最高の回復が味わえる。4曲目のStorm in Summer同様、こちらもめちゃめちゃ素晴らしいと思った。この曲1分51秒とか曲が短すぎるんですけど、、、泣。

去年のベストアルバムのところでも言ったけど、やっぱり私はEPよりアルバム派。EPだと作品を鑑賞したとき、サイズ的にお腹いっぱいにならないから。ウルトラスーパーハイパーわがままだけど、今作Storm in Summer -EPは最高の作品だっただけに、アルバムで聴きたかったなって思った...。ほんと、次回はフルレングスのやつ出して下さい...泣。もうほんと、心からウルトラスーパー待ち望んでいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Porter Robinson - "Nurture"

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願いを叶える

 芸術がこの世界で何よりも素晴らしいのは、世界を創造できるから。音楽はその中でも、心に対するサウンドの直接的な働きによって、リスナーの中に大規模なスケールの世界を創造することができる。Porter Robinsonの今作がもうありえないくらい素晴らしいのは、アルバムアートワークが象徴する豊かな緑の草地に対して、その世界の創造を行っているところ。澄み渡った空、視界を埋め尽くすほど広がる自然、優しくてたまらない春めいた世界。Porter Robinsonは、メラメラ燃えるような激しいエネルギーのEDMで、リスナーに心の中に爆発を起こすようにして、それらのアートワークの世界を創造してる。信じられないくらい傑作だと思う。目一杯自然が広がるこのアートワークの世界をリスナーに叩きつけるように与えて、もっともっと大規模な空間を生み出して、リスナーをそこへ思いっ切りダイブさせるような体験。Get Your Wish (M3)で身体が壊れそうになるくらい感動した。その春めいた世界にありえないくらい癒されて、嬉しくて、顔面がぐちゃぐちゃになるように泣きまくってしまった。小鳥のさえずりがサンプリングされた安らぎの自然の中で見せる、EDM・エレクトリックシューゲイザーの絶景。自分の中で無意識のうちに溜まっていた緊張や不安が一度に消滅するような、凄まじいインパクトの癒し。私はこのとき、今までずっと求めていたものに手が届くような気持ちになった。ずっと欲しかったものが手に入ったような、何か願いが叶うような、感無量の幸せに包まれた。もう好きすぎて頭がおかしくなりそう。もしかしたら、これまで私の中で何年も積み重ねてきた膨大な数の春の思い出が、アートワークのイメージと感連づけられた数々の喜びの感情が、Porter Robinsonが奏でる一つの音に凝縮されたのかもしれない。だからこそ、たった一つのサウンドで、爆発で、こんなにも壮絶に心打たれたんだと思う。これまでのこってりとしたEDMの印象とは全く違う、水を浴びるように瑞々しくフレッシュな音像の存在が本当に大きいと思う。何度も何度もリピートしても涙が止まらなくなるくらいの感動。もう私一人分の身体では全然足りない。

私が初めてポタロビのことを知ったのは、2014年のGoogleのCM(そこからSad Machineとかに手を出して大学生時代ハマってた)。大体EDMというと、リスナーのテンションを少し無理やり上げるようなジャンルの音楽だと思ってた。(Cash Cashとか私的にちょうどいいテンション感で好き)。そんなEDMシーンの中でも、ポタロビのEDMはセンシティブな感覚を多く持ってて、EDMの莫大なエネルギーを美しいものを描くために100%利用するような作家性を持ってたと思う。今作はEDMとは思えないような自然の世界をコンセプトとして持ってるのがめちゃ特徴的だけど、爆発を起こすように豊かな自然を創造するこのアイディアは、ポタロビならではEDMだったと思う。今作11曲目のSomething Comfortingとかも本当に素晴らしい。こちらもGet Your Wishと同様に巨大な癒しを与えるEDMソング。スピードがすごくてめちゃエネルギッシュだけど、サウンドがとても眩しくて温かい。そしてその中でピアノのアクセントがとてもソフトに響いてる。すごいアプローチだなと思う。「癒しを全力で表現したい」、アーティストの気持ちがこんなにも伝わってくるなんて、やっぱりどう考えても素晴らしい作品だと思う。私はこの音楽のように、アートワークが象徴する自然の世界に思い切りダイブしながら、それらの喜びを精一杯嚙みしめて、この上なく満たされていく。大音量で再生するのが止められない。何度でもリピートしてしまう。"手に入れるともっと欲しくなって。期待するともっと傷付いて。誰か僕を慰めてよ"、歌詞もすごく素晴らしかった。

春って本当に素晴らしい。涼しくてポカポカで最高に気持ちいい気候、命が芽生えたような緑色、それらの癒し、そして安心感。世界が生まれ変わるような瞬間や、新しいものとの出会いを彷彿させるワクワク感なども。ポタロビの今作はたった1枚のアルバムアートワークの中で、私が大好きで大好きなそれらの春を一発で表現してくれた。光が反射したようなこの緑色、鮮明度、すごくすごく的確に春。それらをEDMのエネルギーでめちゃめちゃ激しく描いてくれたわけだから、もうたまったもんじゃない。春めいてるEDM、この季節にこのテーマの作品をリリースしたってだけでもう完璧。Get Your Wish (M3)やSomething Comforting (M11)以外にも、Wind Tempos (M4)、Musician (M5)、Mother (M6)、Mirror (M10)などなど、他の曲もよかった。前に4月23日リリースの新譜の感想のとき、★×20の評価をしてたけど、全然足りなかった。ほんと、ダイブのレベルがすごかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

プレイリスト

Apple Music↓

温の「2021年4月ベストアルバム(温)」をApple Musicで

 

Sportify↓

open.spotify.com

 

 

 

その他・とてもよかったもの

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Babygirl - "Losers Weepers - EP"

Bruno Pernadas - "Private Reasons"

Dry Cleaning - "New Long Leg"

Flock of Dimes - "Head of Roses"

girl in red - "if i could make it go quiet"

Leon Vynehall - "Rare, Forever"

Matt Sweeney & Bonnie 'Prince' Billy - "Superwolves"

PDP III - "Pilled Up on a Couple of Doves (feat. Britton Powell, Lucy Railton & Huerco S)"

People Museum - "I Could Only See Night - EP"

Ryley Walker - "Course In Fable"

Royal Blood - "Typhoons"

Sindy - "HORROR HEAD"

Yellow Ostrich - "Soft"