「2021年4月ベストアルバムTOP10」感想
今月はこの時期特有の春フィルターがかかって、春めいた作品はもれなくよさが最強になってた 笑。あとEPの作品達がめちゃめちゃよかった。
今月のスーパー最高なアルバム(EPも)のTOP10の感想をランキングで
10. SPIRIT OF THE BEEHIVE - "ENTERTAINMENT, DEATH"
こんな現代社会でも最高に幸せになれる
原形をとどめなくらいまでボロボロになってるローファイ・ノイズロック、そしてとても激しいサイケデリックのロックの感じ。アコースティック、エレクトロニック、ストリングス、サンプリング...、無秩序でバラバラに壊れてるサウンドが常に耳の中を埋め尽くすようなその感覚は、広告で溢れた都市の中を徘徊するような、鳴りやまない自動車や電車の騒音のストレスを感じるような、とても息苦しい感覚のものがあると思う。それなのに、どうしてこんなに心地よいのだろう。そしてどうしてこんなに美しいのだろう、、、。私はこの音楽で現実と空想の狭間に迷い込むように狂っていき、脳みその機能がシャットダウンするような、とても強烈な現実逃避の瞬間を味わっていく。ものすごくスリリングで、ものすごくエクスタティックで、そしてハチャメチャにエモーショナル。本当に素晴らしいと思う。現実味の強いドラッグの体験みたいに、気持ち悪さと気持ちよさの両方が完璧に再現されてる感じがすごく最高。1曲目のENTERTAINMENTから、それらの強烈なドラッグ的音楽を展開しまくる。音が歪んだ爆音の破壊的な演出に、小鳥のさえずりのサンプリングがもたらす豊かな情景描写、ワールドとワールドが激しくぶつかり合うような、ものすごく刺激的なサイケデリア。そんな強烈な世界の中で、甘美なフィーリングの歌を咲かせて、エクスタシーを上乗せさせるように感情と感情の相乗を発生させる...。この1曲目だけで、今作が本当に最高の傑作なんだと思い知らされた。目眩がするようにクラクラなりながら、ものすごく癒される。去年のPet Shimmersの諸作品みたいに、音を粉々にクラッシュしたようなローファイの切ない感情を引き立てたりとか、そういうのってたまらなく好きだなと思う。今作2曲目から3曲目の流れとかも、地獄からユートピアまでレンジの広いワールドの揺さぶりがあって本当にびっくりした。
アルバムを通して作風を一定に保ってる感じだけど、10曲目のI SUCK THE DEVIL’S COCKとかよく印象に残る。こちらはポストパンクみたいなドラムのかわいいトコトコビートがある感じの曲。こういうスタイルも持ってるんだ...!って思った。Puma BlueやUnknown Mortal Orchestraのようなローファイ・ノイズロックとしてよさだけでなく、バンドのスタイル的な点でもツボに刺さるポイントを持ってるということ。前作もすごく好きだったけど、今作のこの曲でより一層SPIRIT OF THE BEEHIVEに対する好感・信頼が強くなった気がする 笑。
テクノロジーの発達、情報社会の発達、現代社会はとても窮屈で、いつも心が休まらない。今日も明日もとにかく時間に追われながらひーひー言って過ごしてる。SPIRIT OF THE BEEHIVEの今作は、そんな心に余裕が持てない現代社会の姿によくフィットしてたと思う。ごみごみとした社会の中で息苦しさを感じながら、それでもエクスタシーを味わっていくようなこの感じ。気持ち悪さすらも残るとてもリアルなドラッグ的体験。そんな音楽だからこそ、絶対無敵の最高な現実逃避が楽しめたんだと思う。そして私は、こんな現代社会でも最高に幸せになれるんだと分かった。SPIRIT OF THE BEEHIVEめちゃ大好きだった。
9. Cory Hanson - "Pale Horse Rider"
私が思うノマドランド的ビジョンに一番近い感覚の歌
夕方~夜に差し掛かるギリギリ寸前の時間を切り取ったようなWaxahatcheeのSaint Cloud (2020)のジャケット空間とか、最近で言うとノマドランドで全面に表れてるようなアウトドア・キャンプのビジョンとか、そういう時間・空間のことがとてもとても大好き。Cory Hansonの今作は、それらと同じ質の時間と空間の景色を何個も所持してるようなカントリー・フォークで、最高の風情がある作品だと思う。オルタネイティブ、アコースティック、バロックポップ...、どの曲も深く心に刺さるのだけど、曲ごとで様々なセンスを持ってる感じが本当に素晴らしい。穏やかな曲調の中で感情の揺らぎを増幅させていくようなエモ密度(Angeles (M2))、クラシックじゃなくて民謡系のバイオリンの人懐っこいキャラ(Pale Horse Rider (M3))、そしてビタースウィートでメランコリックな美しさ(Bird of Paradise (M5))、さらにはギターアルペジオで奏でる子守歌のような愛おしさ(Vegas Knights (M7))なども...。アンビエントの間奏トラック含め、1曲目から10曲目まで全部全部最高...。リラクゼーション、味わい深さ、あと9曲目のAnother Story from the Center of the Earthに関してはギターノイズの快感とかも本当にやばくて...。フォーク・カントリーとしてだけでなく、インディーロック的に見ても文句なしに大好きな感じ。ノマドランドのアウトドアのビジョンみたいに美しくてたまらない時間・空間をイメージしながら、思いを巡らせるようにCory Hansonの歌をしみじみ聴いて、幸福度を果てしなく高めていく...。過ごしやすいこの季節には尚更刺さる仕様。めちゃめちゃよかった。
今作はどの曲も歌のメロディーがほんとに最高だなと思うけど、その中でもラストPigs (M10)とかウルトラハイパーに大好き。声のトーンがリスナーに一番沁みるように調整されてるような音域のボーカル。そのメロディーをこの上ないくらい綺麗にしっとり歌い上げるのだけど、心に刺さりすぎて思わず泣いてしまいそうになる。自分がイメージするノマドランド的ビジョンに一番近い感覚の歌、とてもとても繊細な歌。この手のフォークのバラードはもう本当にたまらないなって思った。
Cory Hanson、ツイッターでおすすめされてなかったスルーしてたかもしれない。実際じっくり聴いてみたらとてもハマる作品だった...!Wandにも寄り道したくなる。
8. Remember Sports - "Like a Stone"
ガツガツハングリー & ほのぼのまったり
パンキッシュなパワーポップのCharly Bliss、多幸感に包まれるようなノイズロックのSwearin'、ロックンロールの反抗心は、ときにリスナーの元気をフルチャージするようにポジティブなモチベーションをくれると思う。Rember Sportsもその手のパワーポップ・ノイズロックの音楽であり、ハジける元気と強力なハピネスを提供してくれるアーティストであり、私の最高にお気に入りなバンドなのである...笑。パンチの効いたサウンドで勢いよくリスナーのテンションを上げてくるPinky Ring (M1)、綺麗な揺らめきのサウンドから唐突に地響きみたいなギターも炸裂させちゃうSentimentality (M3)、そして可愛いポップの状態からガツガツにハングリーに攻めのロックにスタイルチェンジをするLike a Stone (M7)...笑。もうめちゃめちゃ楽しくて、元気よくて、ハピネスが最大に表れてる精神状態のやつ。ガレージ・サイケのアプローチで心の余裕を表現した去年のMamalarkyとかもそうなのだけど、こういうハピネス栄養素の多い音楽がマジで大好きで...笑。特にタイトルトラックのLike a Stone (M7)とか、メロディーが駆け抜けていくような爽快感とかもほんとに最高で、とても春に似合ってた。
Rember Sportsの今作がCharly BlissやSwearin'などのパワーポップとひと味違うのは、元気モリモリ系のハピネスだけでなく、ほのぼのまったり系のハピネスも最強だというところ。例えば6曲目のMaterialistic。3拍子の豊かなグルーヴの中でメロメロな気分になるようなバラードのナンバー。攻撃力のあったロックから一転した雰囲気があって、コーラスのハーモニーとか、美しいエモさを引き立てるようなメロディーワークがある。こっちのパートもとってもいい。ロックとバラードどちらも良くてすごく器用だなと思う。極め付きは11曲目のOut Loud。この曲も本当に素晴らしくて...。涼しい温度感のリラックスムードの中で、胸が締め付けられるようなエモさのある歌を添える。とてもロマンチックだと思う。あんなに元気モリモリにパワーポップやってたのに、こっちはまるでYo La TengoのAnd Then Nothing Turned Itself Inside-Out (2000)みたいに落ち着くムード。ほんと、私にとって驚きのよさだった。こっちを聴いてしまうと「バラード路線でも全然勝負できるのでは...?!」と思うくらい。今月のランキング、上位の作品が強すぎなければ、本当は順位4位くらいだったのだよ...(上には上がいた)
Franki Cosmosみたいに可愛いメロディーを持ってたところもよかった。それでいうと今作もとても春に合うアルバムの感じ。今月はそういう春との適合率でアルバムのよさが格段にレベルアップしてる作品多くって、、、、笑
7. Crumb - "Ice Melt"
恋するミステリアス
私のハートを掴んで離さない、Crumbのミステリアスな恍惚。それは、マイブラ様が確立したシューゲイザーの恍惚でもない、インパラ様が確立したサイケロックの恍惚でもない、ジャジーでソウルなエッセンスを配合した全く新しいロックの恍惚...。濃厚なムードに包まれたその音楽は、スモーキーで、色気を持っていて、まるで恋するようにとても深い引力を私にもたらす。今作『Ice Melt』は、アルバムのタイトルは美しいものの、ジャケットは不気味でとてもダークなのが特徴的な作品。それらの印象から伝わるように、Crumbの濃厚なミステリアスさが最高に発揮されてるようなめちゃ最高のアルバムだった。1曲目のUp & Downから虜になりまくる。ドリーミーで、ムーディーで、スペーシーで、そしてロマンチックで...。ぽわぽわと浮かぶ怪しげなサウンドたった1つだけで、こんなにも様々な角度からリスナーに大量のフィーリングを与えていく...。もうめちゃめちゃ素晴らしい。この曲を聴いて、Crumbの濃厚でミステリアスなよさがまたアップグレードされてるような気がした。それらのフィーリングを強化するようなグルーヴィーな高揚感とかも本当にやばい。8曲目のBalloonとかも最高...。集中力を高めるような8ビートの静かな興奮、ベースが同じ音を単発でズンズン打つ続けるようにグルーヴ感を出して、音楽をもっとダンサブルに。ドラムが裏打ちビートに変形する中盤パートの盛り上がりとかでもう圧倒されてしまうのだけど、こんな興奮の強いCrumbは今までになかったと思う。前作のJinx (2019)もリードトラックが最強でもちろんよかったけど、ダークなジャケットの重たい雰囲気、それに伴った濃厚なミステリアスの強さ、グルーヴィーな高揚、総合的に考えたら今作の方が好きかもしれない。"Ice Melt"ってタイトルもすごくお気に入りだった。
ミステリアスなものが大好き。例えばGastr Del Solみたいに怖いもの見たさで引き込まれていくようなエクスペリメンタル系の作品とか、その他もろもろ神秘的な存在感を放つアンビエントとか...。Crumbの場合、ジャジーでスモーキーなオーラだからこそ生み出せるような、アダルトで上品なキャラクターとしてのミステリアスを持っているところがやっぱり素晴らしいと思う。それなのに、サウンドがぽわぽわしててすごく可愛らしかったり、ギャップ的にも惹かれる部分があったり。神曲Locketのときからもうどんな曲をリリースしても「あぁCrumbだからどうせ最高なんだろうな」って安心してたのだけど 笑、案の定今作も素晴らしかった。
6. Beach Youth - "Postcard"
ネオアコとは思えないほど最高にエモーショナルになる瞬間...!
春の真っ盛りな4月のこの季節に最高のネオアコ・ギターポップが届いた!!!!ドリーミーな成分、和やかな脱力成分を多く含んでる抜群に素敵なやつ。ボーカルがすごくマイルドなキャラクターを持ってるし、トロピカルなサーフロックみもあるからポカポカの快感がすごくハイクオリティ。春-夏のシーズンに超絶ぴったりな作品で、もうベストアルバムのランキングに入らないなんて考えられない...!って思った 笑。王道のジャンルものの作風だから似たような作品はたくさんあるかもしれないけど、それでもBeach Youthの今作のエモーショナルレベルは本当に高かったと思う。冒頭のLove Yourselfからもう完全に持っていかれる。解放感のあるネオアコの質感を保ちつつも、ロックのドライブ要素を少し多めに入れてるアレンジ。ジャケットの青空みたいに最高に気持ちいい曲なのに、エンジンがかかるようにして音楽がどんどん加速して高まっていって、ラストの方になると「私今エモ聴いてる...??」って錯覚するくらいロックさが増していって...。一般的なネオアコ・ギターポップの想像を超えるほど、ずっとずっとエモーショナルになる瞬間。音楽がロックに発展していくのに並行して、歌が泣きメロに変化していく感じが本当にたまらない。7曲目のIn My Chestとかもそういう系のロックだけど、ドラムの熱量高めな感じとか、汗かきながらガムシャラに演奏してるこういう雰囲気って、素敵なものに一生懸命になるみたいでめちゃめちゃ最高だと思う。例えるならDIIVのHow Long Have You Known?のMVの中で演奏してるメンバーの姿とか。気持ちいいものを全力で追い求めるようにして鳴らすロック。実際サブスクの"こちらもオススメ"の枠にDay WaveとかDIIVが出てきたし、"分 か る"って思った 笑。
3曲目のTwo Bedroomsも本当にやばい。こちらはネオアコからロックへの発展というよりは、逆にロックをネオアコ要素に効かせたようなイメージの曲。胸いっぱいになるようにギターのアルペジオを奏でて、ネオアコのドリーミーな味わいをもっと拡張していくような音楽描写。こっちのタイプの曲も最高すぎる。ギターも純粋無垢で可愛らしいポップのキャラを持っててもうツボにグサグサ刺さる...。この2曲目、3曲目のコンビネーションでもう(TT)(TT)ってなってた 笑。マジでめちゃんこ好き。
お散歩に積極的に出かけたくなるようなこの時期、Beach Youthの今作もお散歩BGMに最適なアルバムだった。ただ、Beach Youthは疾走感も持ってるから、どちらかというとドライブで聴きたい。Love Yourself (M2)やTwo Bedrooms (M3)を聴きながらめちゃめちゃドライブしたい。車を乗り回してた学生時代 in 茨城の頃が懐かしい、、、(しみじみ)
5. CFCF - "Memoryland"
全身全霊で楽しむダンスフロア
作風的には、ゲーマーの人とかが好きそうなテクノ・エレクトロロックのイメージなのだけど 笑、リスナーをヒートアップさせまくるような激アツのアルバムだと思う!バチバチに火花を散らすようなドラムの最高のパフォーマンスがあるブレイクコア(Life is Perfecto (M2))、そこからもっと凄まじい運動エネルギーを放っていくジャングル(Nostalgic Body (M3))、さらには広大なノイズの海を発生させるようなニューゲイザー(Model Castings (M4))、ブレのないストレートなロック(Punksong (M6))、そして意識が完全にぶっ飛ぶくらい無我夢中でハイになるテクノ(Night/Day/Work/Home (M7))...。70分のアルバムの内、ここまでが前半部分という内容の濃さ、、、笑。後半ではフレンチハウス、UKガレージなど、こちらも中毒性のあるダンストラックが揃ってるし、最高にグッとくるエレクトロニックのバラードでフィナーレを飾るという...(Heaven (M15))。一曲一曲が強い上に、それらが継続して展開されるようなストーリーとしての強さもすごい。作品がボリューミーなワクワクを持っていて、初めて聴いたときからずっと病みつきになってた。毎日通勤時も退勤時も何かに取り憑かれたようにリピートしてた 笑。ほんとにやばい、特に2曲目と7曲目と15曲目がめちゃめちゃやばい。
冒頭のLife is Perfecto (M2)は、ブレイクコアのカッコよさだけでなくギターやドラムのキャラのよさもとてもアピールしたような曲。エッジの利いたギターをクールにキメていきながら、テクニカルなドラミングを思う存分に披露するこの圧倒的なパフォーマンス...。あまりに興奮しすぎて叫び出しそうになってしまうくらい、ほんとにほんとに超カッコいい、、、笑。ドラムのパフォーマンスがめちゃアグレッシブなのに対し、ギターがメランコリック気味にバッキングを演奏し続けてる感じも とてもつもなくカッコいい。そこから後半にかけて、音楽がひんやりとした感触を持つように温度変化を見せていく。これまでエッジを利かせていたギターはもっとスムースに、エレクトロニックのサウンドはもっと潤いのあるニュアンスに。それらのしっとりしたサウンドスケープが、それまでのドラムのアツいパフォーマンスに対して、その興奮の熱を冷ますように影響していくのだけど、この熱反応がもうめちゃめち素晴らしすぎて…泣。序盤から興奮してアツくなりまくって、後半ではそのアツさが冷めていく気持ちよさを味わうというこのダブルの性質。火属性の感情と水属性の感情の魔法的なコントラスト。ほんと、なんて素晴らしいんだろう...。Life Is "Perfecto"というタイトルの曲だけど、私からしたらこの曲こそ本当に"Perfecto"な出来栄えだった 笑。この1曲だけでずっとリピートできてしまう。
そんなLife Is Perfecto (M2)に匹敵するようなよさのNight/Day/Work/Home (M7)もまた超超超名曲。こちらは8分の中でとにかく攻めて攻めて攻めまくるようなテクノ。まるで夜の高速道路をかっ飛ばし続けるようなとびきりのハイパーエネルギー。踊って踊って踊り倒して、アドレナリンをドバドバに出して、全身全霊でそのダンスフロアを楽しむ。私にとってこれがどれほどの喜びか...。相変わらずコロナコロナで毎日ほんっっとうに退屈だけど、それでも私は、誰も介入することができない私だけのとっておきのマイワールドの中で、CFCFの珠玉のダンスフロアを堪能する。私はその場所で、理性をぶっ飛ばすくらいハイになって踊りまくる。本当に幸せ。特に開始5分くらいから始まる16ビート3拍感のアクセントのフレーズのところとかめちゃめちゃ好き。曲の中でカッコいいパートを本当にいくつも持ってて、今作屈指のナンバーだと思った。
.......こんにも最強の曲を持ってるのに、それらすらも超えてしまうような素晴らしさがまだある...!(まだある...!泣泣)。それがラストのHeaven (M15)。最高にアツいエレクトロニカの世界を巡り、興奮して、踊って、ぶっ倒れるまでとことん遊んで楽しんで、最後の最後に辿り着くアルバムの境地。そこには、これまでにはなかったファンタジックな世界があった。それはまるで、アルバムでこれまでに得た数々の思い出に浸りながら、それらとお別れをするような物語のクライマックス。寂しくて切なくて、それでも愛おしいフィーリングで胸いっぱい満たされるような物語のエンディング。思わず泣いてしまった。こんなエンディング用意されてたらもう絶対泣いてしまいます。これまでのアルバムの楽曲で得た喜びのフィーリングが思い出としてエンディング時にドリーミーにフィードバックされて、最高にエモーショナルに完成される。このときにKero Kero BonitoのSarah Bonitaをフィーチャーリングしてるのがマジでセンス最高すぎると思う。Heavenってテーマとか、Goodbyeのリリックとか、細かいところ一つ一つでfeat. Sarah Bonitaの愛おしさがよく発揮されてる感じ。もう半端なく素敵で、完璧で、涙腺が刺激させられまくるほど感動した。このラスト単曲だけでも十分に素晴らしかった。
今月における私のこのアルバムの再生回数は本当にすごかったと思う 笑。とりあえず暇さえあればすかさずCFCFのこのアルバムを再生してた。CFCFは他の音源聴いたことなかったけど、さすがに聴こうと思う。
4. Unschooling - "Random Acts of Total Control - EP"
人間なのを疑うヤバさ
先々月のBlack Country, New Road、5月に新作を控えたblack midi、規格外で衝撃的なカッコよさを誇る2021年のポストパンクバンドの中で、Unschoolingもそれらに全く劣らないほどカッコいいバンドだと思う...!!もうやばすぎて笑いが止まらないくらい鉄壁のポストパンク 笑。人間味を失ったのごとく機械のようにビートを刻み込んでいく超精密なリズム隊、切れ味抜群のソリッドなギター、それらの ものすごく本格的で最高なサウンドたち。一見するとストレートでフォーマルなスタンスのポストパンクだけど、それらの常識から思い切り外れるようなユーモアさを持ってるのが本当に本当に素晴らしくて...。5曲目のNyeとか、鼻水出るくらい笑いながら泣いちゃった 笑。リスナーの調子を完璧に崩すような緊張感と緩和のスイッチ。まるで何か制御が壊れるようにしてアンサンブルが崩れていくところで、これまでずっと鉄壁だったところに"隙"が現れ始める。この絶妙なニュアンス、とても人間味があって、豊かな感情があって、もうたまらないなって思ってた。......そんな風に油断してたら、私はまんまとキルされてしまった...。鉄壁だったところに隙を見せていたと思ってたら、今度は逆に、人間味や豊かな感情をあえて全力で見せてきたのだ、、、。ここでもう目ん玉がギタギタになった。今までのクールでカッコいいポストパンクが嘘みたいに素敵すぎるサウンド。あれだけ鉄壁のポストパンクを演ってたのに、もう意味分からないくらい愛しくて胸がいっぱいになる音楽に方向性が転換してて、Unschoolingの情緒どうなってるの????って思った 笑。ほんと、人間なのを疑うレベルのヤバさ 笑。本当にめちゃめちゃ感動した。
今作は5曲入りのEPだけど、5曲全部が最高に最高だった。ミニマルの楽しさ、7拍子の変化球、アングラなダークさ、そして不意打ちのメロディアス...。去年のThe Homesick(私の2020年ベストアルバムTOP10)のユーモアとか、Hypoluxoの豊かな感情性とか、よさを大量に持ってる感じ。もしかしたらそれらのバンド以上に好きかもしれない...。ブレイクしないのが不思議なくらい、本当にハイレベルなバンドだと思った。
3. Godspeed You! Black Emperor - "G_d's Pee AT STATE'S END!"
どれだけダメージを負っても、ずっと闘い続ける
2012年作の'Allelujah! Don't Bend! Ascend!は、私の2010年代のベストアルバム第1位の作品。戦争のように残酷な世界の中で生きる力が残りわずかになり、「死にたい」という気持ちに深く共感するときの、『かろうじて、生きている』をモチーフにしたあのメロディー。「"あなたは、かろうじて、生きている"」。Godspeed You!は、私のことを本気で肯定してくれる。自分に自信が持てなくなるように傷ついて絶望していても、私の悲しみに共感して、私のことを一生懸命応援してくれる。そんなGodspeed You!の作品の中でも、今作G_d's Pee AT STATE'S END!はトップ3に大好きなアルバムだった。物語の中で主人公が力の限り絶望に立ち向かうような6曲目(“GOVERNMENT CAME” (9980.0kHz 3617.1kHz 4521.0 kHz))のところで、心臓が破裂しそうになるほど感動した。悲しみの表現、奮闘の表現、そして痛みの表現...、Godspeed You!の音楽表現は本当に卓越してると思う。生命力を吸い取るようなストリングスの嘆きの感情とか、音楽を巨大なスケールで見せるような低音の演出とか、どれだけダメージを負っても死ぬまでずっと闘い続けるようなギターとか。何もかもが他の音楽には描けないくらいの圧倒的な美しさがある。それらを発動しながら、音楽が泣き叫ぶようにして力を込めていくわけだけど、もう鳥肌がバーストするのを抑えられない。素晴らしさのレベルが尋常じゃないと思う。どれだけ世界が残酷でも、それでも力強く生きることを教えてくれるようなポストロックの轟音シンフォニー。今作においても、自分が生きることを応援してくれるようなテーマを持ってた。やっぱり泣いてしまった。私にとってGodspeed You!の音楽は偉大すぎてる。6曲目が本当に美しかった。
6曲目はそんな風だけど、今作は全体的に言えば前作Luciferian Towers (2017)と同じ冒険感の強い作風だったと思う。大海原を渡るようにして音楽の世界を最高に旅していくようなストーリー。M1, M2, M3のワンセットのパートも素晴らしい。シンフォニックな轟音ならではのロックの鼓動、音の波動がお腹の中まで響くようなとてもヘヴィなアンサンブル。それらの生命力がみなぎるようなエネルギーで、人生を謳歌するように喜びを奏でていく。それの音楽のドラマの中には、希望とか勝利とか、そういうテーマを見出せると思うのだけど、Godspeed You!ってやっぱりこういうの大好きなんだなって思う 笑。広大で、美しくて、そしてすごくすごくカッコいい。私も大好き。いい加減マジで早くライブみたい...。コロナさえなければ、コロナさえなければ、2020年の4月に大阪で観れたのに、、、、、、(行く気満々だったのに)
間奏トラックだけど4曲目も素晴らしかった。すごくショッキングなサウンドのサンプリング、それらの恐ろしい世界観、とてもGodspeed You!らしいセンス。アルバムの中でシリアス感・緊張感を作るとても重要な役割を持っていたと思う。サンプリングはラジオもすごくよかった。
2. Skullcrusher - "Storm in Summer - EP"
奇跡的なヒーリング
朗らかであったかいカントリーの音楽性に、キラキラのセンチメンタルなポップを適応させると一体どんなことになるのか。それはすなわち、カントリーの自然的な感触の安らぎと、ポップのキラキラしたときめきを融合させるということ。"素敵"と"素敵"の爆発。そして半端ないほど心に沁みる美しさを生み出すような魔法...。もうなんて感動的な音楽なんだろう。。。4曲目のStorm in Summerを聴いたとき、あまりにも好きすぎて白目向いて気絶しそうになった。センチメンタルなメロディーで、あったかいカントリーの世界の中にファンタジーを描いていくような世界観の構築。もうとんでもないほど素晴らしいと思う。心奪われるようなそのファンタジーの中で、バンジョーが本当に大活躍してる。ポロポロと流れるように音粒がかわいく落ちて、鼓膜にしっかりヒットしていくような楽しさ。ただでさえとても美しくてセンチメンタルで胸がこれほど痛いのに、その痛みを和らげてくれるように、慰めてくれるように、バンジョーのサウンドが愛情を与えてくれる。まさかバンジョーでこんなに泣くとは思わなかった。バンジョーでここまで励まされるなれるなんて思ってもなかった。サウンドが鼓膜にヒットしていくその感覚を思い出しだけでもう泣いてしまう。センチメンタル要素とカントリー要素、それらがもたらす奇跡的なヒーリング。ノーマルの状態でこんなに刺さるんだから、気持ちがダウン気味のときとかに聴いたりしたらもう絶対やばいことになる。歌詞も大好きだし、"Storm in Summer"って設定も大好き、全てにおいて大好き度が尋常じゃなかった。
去年のセルフタイトルのEPは鮮烈なデビュー作だったと思う。憩いのスポットのような森の中、川のほとりをバックにしたジャケット写真。Phoebe BridgersとSoccer Mommyにも通じるようなインディーズSSWでありながら、自然的なワールド感をよく持ってるアーティストの感じ。今作はそんな彼女の音楽性をハイレベルに極めて、キラキラのセンチメンタル要素(Song for Nick Drake (M2))だけでなく、サウンドの美しさ・浸透レベルとかをめちゃめちゃ高めてたEPだったと思う。3曲目のStepとかも大好きでたまらない。楽器の呼吸まで鮮明に伝わってくるような澄んでいて綺麗なサウンド。本当に心に沁みる曲だから、身体がリセットされるような最高の回復が味わえる。4曲目のStorm in Summer同様、こちらもめちゃめちゃ素晴らしいと思った。この曲1分51秒とか曲が短すぎるんですけど、、、泣。
去年のベストアルバムのところでも言ったけど、やっぱり私はEPよりアルバム派。EPだと作品を鑑賞したとき、サイズ的にお腹いっぱいにならないから。ウルトラスーパーハイパーわがままだけど、今作Storm in Summer -EPは最高の作品だっただけに、アルバムで聴きたかったなって思った...。ほんと、次回はフルレングスのやつ出して下さい...泣。もうほんと、心からウルトラスーパー待ち望んでいる。
1. Porter Robinson - "Nurture"
願いを叶える
芸術がこの世界で何よりも素晴らしいのは、世界を創造できるから。音楽はその中でも、心に対するサウンドの直接的な働きによって、リスナーの中に大規模なスケールの世界を創造することができる。Porter Robinsonの今作がもうありえないくらい素晴らしいのは、アルバムアートワークが象徴する豊かな緑の草地に対して、その世界の創造を行っているところ。澄み渡った空、視界を埋め尽くすほど広がる自然、優しくてたまらない春めいた世界。Porter Robinsonは、メラメラ燃えるような激しいエネルギーのEDMで、リスナーに心の中に爆発を起こすようにして、それらのアートワークの世界を創造してる。信じられないくらい傑作だと思う。目一杯自然が広がるこのアートワークの世界をリスナーに叩きつけるように与えて、もっともっと大規模な空間を生み出して、リスナーをそこへ思いっ切りダイブさせるような体験。Get Your Wish (M3)で身体が壊れそうになるくらい感動した。その春めいた世界にありえないくらい癒されて、嬉しくて、顔面がぐちゃぐちゃになるように泣きまくってしまった。小鳥のさえずりがサンプリングされた安らぎの自然の中で見せる、EDM・エレクトリックシューゲイザーの絶景。自分の中で無意識のうちに溜まっていた緊張や不安が一度に消滅するような、凄まじいインパクトの癒し。私はこのとき、今までずっと求めていたものに手が届くような気持ちになった。ずっと欲しかったものが手に入ったような、何か願いが叶うような、感無量の幸せに包まれた。もう好きすぎて頭がおかしくなりそう。もしかしたら、これまで私の中で何年も積み重ねてきた膨大な数の春の思い出が、アートワークのイメージと感連づけられた数々の喜びの感情が、Porter Robinsonが奏でる一つの音に凝縮されたのかもしれない。だからこそ、たった一つのサウンドで、爆発で、こんなにも壮絶に心打たれたんだと思う。これまでのこってりとしたEDMの印象とは全く違う、水を浴びるように瑞々しくフレッシュな音像の存在が本当に大きいと思う。何度も何度もリピートしても涙が止まらなくなるくらいの感動。もう私一人分の身体では全然足りない。
私が初めてポタロビのことを知ったのは、2014年のGoogleのCM。(そこからSad Machineとかに手を出して大学生時代ハマってた)。大体EDMというと、リスナーのテンションを少し無理やり上げるようなジャンルの音楽だと思ってた。(Cash Cashとか私的にちょうどいいテンション感で好き)。そんなEDMシーンの中でも、ポタロビのEDMはセンシティブな感覚を多く持ってて、EDMの莫大なエネルギーを美しいものを描くために100%利用するような作家性を持ってたと思う。今作はEDMとは思えないような自然の世界をコンセプトとして持ってるのがめちゃ特徴的だけど、爆発を起こすように豊かな自然を創造するこのアイディアは、ポタロビならではEDMだったと思う。今作11曲目のSomething Comfortingとかも本当に素晴らしい。こちらもGet Your Wishと同様に巨大な癒しを与えるEDMソング。スピードがすごくてめちゃエネルギッシュだけど、サウンドがとても眩しくて温かい。そしてその中でピアノのアクセントがとてもソフトに響いてる。すごいアプローチだなと思う。「癒しを全力で表現したい」、アーティストの気持ちがこんなにも伝わってくるなんて、やっぱりどう考えても素晴らしい作品だと思う。私はこの音楽のように、アートワークが象徴する自然の世界に思い切りダイブしながら、それらの喜びを精一杯嚙みしめて、この上なく満たされていく。大音量で再生するのが止められない。何度でもリピートしてしまう。"手に入れるともっと欲しくなって。期待するともっと傷付いて。誰か僕を慰めてよ"、歌詞もすごく素晴らしかった。
春って本当に素晴らしい。涼しくてポカポカで最高に気持ちいい気候、命が芽生えたような緑色、それらの癒し、そして安心感。世界が生まれ変わるような瞬間や、新しいものとの出会いを彷彿させるワクワク感なども。ポタロビの今作はたった1枚のアルバムアートワークの中で、私が大好きで大好きなそれらの春を一発で表現してくれた。光が反射したようなこの緑色、鮮明度、すごくすごく的確に春。それらをEDMのエネルギーでめちゃめちゃ激しく描いてくれたわけだから、もうたまったもんじゃない。春めいてるEDM、この季節にこのテーマの作品をリリースしたってだけでもう完璧。Get Your Wish (M3)やSomething Comforting (M11)以外にも、Wind Tempos (M4)、Musician (M5)、Mother (M6)、Mirror (M10)などなど、他の曲もよかった。前に4月23日リリースの新譜の感想のとき、★×20の評価をしてたけど、全然足りなかった。ほんと、ダイブのレベルがすごかった。
あとがき
プレイリスト
Apple Music↓
温の「2021年4月ベストアルバム(温)」をApple Musicで
Sportify↓
その他・とてもよかったもの
Babygirl - "Losers Weepers - EP"
Bruno Pernadas - "Private Reasons"
Dry Cleaning - "New Long Leg"
Flock of Dimes - "Head of Roses"
girl in red - "if i could make it go quiet"
Leon Vynehall - "Rare, Forever"
Matt Sweeney & Bonnie 'Prince' Billy - "Superwolves"
PDP III - "Pilled Up on a Couple of Doves (feat. Britton Powell, Lucy Railton & Huerco S)"
People Museum - "I Could Only See Night - EP"
Ryley Walker - "Course In Fable"
Royal Blood - "Typhoons"
Sindy - "HORROR HEAD"
Yellow Ostrich - "Soft"