アルバム感想(温)

My Favorite Music

「2021年3月ベストアルバムTOP10」感想

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今月はアバンギャルドな作品、2020年代の新時代を感じさせるようなやつが多かった気がする。可能性を感じてすごくワクワクした。どれも最高で相変わらずランキングの順位迷った、、、

2021年3月のベストアルバムTOP10の感想をランキングで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. Bernice - "Eau De Bonjourno"

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ぶっ飛んでるくらいマジカルなサウンド

 自由なアプローチで音楽の"素敵"をとことん追求したようなエクスペリメンタルポップのやつ。音楽の土台はHiatus KaiyoteMoonchildのような高級感のある大人びたネオソウル・ジャズだと思うのだけど、頭のネジが飛んでるんじゃないかと疑うくらい、マジカルな音が強烈に詰め込まれてて驚愕する...。クラシックジャズ~モダンジャズの音、ジャズフュージョンの音(Infinite Love (M9))、シンセポップ(Empty Cup M6)~ダンスポップの音(Personal Bubble (M7))、さらにはOneohtrix Point NeverとかFloating Pointsみたいな音響芸術の音(We Choose You (M10))...。ネオソウル・ジャズの高級感と前衛的なエレクトロニカのセンスが合わさったような、とても強烈な音楽だと思う。それらのマジカルな音が連続的に発生していくようなすごさがあるし、変拍子チックなテクニックとか、メロディー的にもぶっ飛んでるものがある。まるで現代アートの美術館の中を巡っているような、見たことのない世界に飛び込んでクラクラしそうになるくらいの感覚。そういうセンスを活かして、リスナーに音楽の美しさを激しくぶつけるようなところが本当に素晴らしいなって思う。美しさが次から次へと襲ってくるというか、何度聴いても新しい発見ができるというか、そんな感じだった。

今作が月間ベストアルバム入りを確定させた決定的なトラックは、3曲目のBig Mato (M3)とかかなと思う。エレクトロニカ技術を駆使しながらネオソウル・ジャズ特性の高い歌を繰り広げる感じ。リスナーに素敵なものを与えまくるための気合が強い気がする 笑。たまらなく綺麗だし、自分の中で音楽のワールドが豊かに広がっていくのがよく感じられる。こういう音楽を聴いてる時間って本当に満たされる。全曲好きだけど、これは特に好きな曲だった。

今作は本当にサウンドがすごかったと思う。大人びたポップの曲調なのに、8曲目とか音がいちいちぶっ壊れてる感じでめちゃおもしろい 笑。クラブハウスのようなアンダーグラウンドの世界、鳥が羽ばたくイメージのオープンな世界(It's Me, Robin (M2))、音の組み立てや発想がほんとに素晴らしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Xiu Xiu - "OH NO"

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カオスだから表現できるソウルフルさ

 悲愴を込めた気高きアートロック・アートポップのやつ。鬼気迫るような怖さ・カオスな迫力を多く持ってるはずなのに、聴くのに抵抗がない分かりやすいロック・ポップスに仕上がってる感じ。バチバチに暴れるようなノイズ (Goodbye For Good (M4))、悲鳴のサンプリング(OH NO (M5))、背筋がゾッとするほど衝撃的なホラー的サウンド(It Bothers Me All The Time (M11))...。こうやって文章で書いてたら「いやいや聴きやすいわけないでしょ」ってなっちゃうけど 笑、それらの怖さ・迫力・カオスがアートとして上手に吸収されて、親しみのある音楽として完成されてる。2曲目のI Cannot Resistとかめちゃめちゃそう。通常のロック・ポップスにはゆかりがないような破壊的なサウンドとか不調和な場面を音楽に持ってるけど、ピアノの残響やオペラ特性の歌、曲全体が高貴な音楽として成立してる感じ。4曲目のGoodbye For Goodとかもすごくカオスじみてるけど、憂いに沈んでいるようなブルーな曲調、その中でも力強くあろうとする凛々しさ、あくまでソウルフルで風格のある音楽としてカオスが作用されてる。ほんとにバリバリにカッコいいと思う 笑。去年だとSon Luxとか、アートロック(というか神秘的な音楽は全般)が大好きだけど、Xiu Xiuの今作は、スリリングでホラーな表現をアートとしてよく消化してる感じがすごくよかった。コラボしてるアーティストの充実度も高すぎる。

今作は6, 7, 8曲目の3連続コンボがめちゃくちゃヤバかった。まずは6曲目のRumpus Room、これはドラムが鬼かっこいいやつ。DARKSIDEと同じ感触があるギターのフレーズとかもあって身体がめちゃ反応してしまう 笑。気高くてソウルフルなアートロックとしての作風というよりかは ただただカッコいいオルタナロックって感じだけど、グルーヴがクールすぎてて本当にハイセンスだった。そして7曲目のFuzz Gong Fight、こっちはダークでノイジーな音楽性が魅力的なやつ。アングラなポストパンクの雰囲気だけど、音程がずれた金属打楽器とか、Xiu Xiu持ち前のカオスがプラスされてる。とても痺れる内容の曲になってると思う。そして8曲目のI Dream of Someone Else Entirely。こっちはXiu Xiuらしいアーティスティックな音楽表現を取り入れつつ、前曲とは打って変わったメロディアスなナンバー。ただでさえ心に安らぎが差し込むような巨大な癒しを持ってる曲なのに、コラボアーティストがOwen Pallettっていうのがもうチートすぎて、、、、、。私がマジでマジで大好きなやつ 笑。ストーリー的にもアルバムの見せ場としてセットされてる感じで、感動がむちゃくちゃに大きい。とても短い曲だけど本当に名曲だった。

今作の私的注目ポイントはShearwaterとのコラボだったけど、そっちの曲(It Bothers Me All The Time (M11))はめちゃめちゃカオスで笑っちゃった 笑。迫力たっぷりで本当におもしろい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Mint Julep - "In a Deep and Dreamless Sleep"

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アンビエントっぽくて重たそうで全然重くない(そこがいい!)

 ふわふわでモフモフなサウンドを極めまくってるニューゲイザーのエレポップ。ブレスの長いシンセを多用したシリアスな雰囲気のドローン/アンビエントっぽさが目立つのに、打ち込み系のドラムの生き生きとしたグルーヴとか、AlvvaysやMen I Trustみたいに心躍るドリームポップとか、シリアスなアンビエントとかには絶対ないようなワクワクさがある。バリバリの王道シンセポップで心がときめきまくるBlack Maps (M2)、ニューゲイザーのダイナミックな感動のMirage (M3)、ビートの脈打つエネルギーが強いLure (M4)、さらにはクラブミュージック並みにダンサブルで最高に楽しいLost (M7)...。シンセのサウンド自体はBoards Of Canadaとかみたいに重たい空気を持ってるのに、音楽はものすごくポップに仕上がってる感じ。ふわふわでモフモフで最強にドリーミーなサウンドに重たさを与えつつ、ポップスの音楽性で心のときめきを最大にまで強化させたような音楽性。それらはまるで、雨上がりの虹とか、雪解けとか、色が生まれるような、空気が変わるような、心に深く届くような美しいイメージを私に見せてくれた。もうめちゃめちゃ大好き 笑。AlvvaysやMen I Trustが好きな王道ドリームポップファンにも刺さりそうだし、Julianna BarwickやMary Lattimoreのような聖なるサウンドを好むアンビエントリスナーにも刺さる気がする。心地よくて、幸福度が高くて、本当に素敵な作品だった。

アルバム最後の方のIn the Ocean (M10)とかもとても大好き。ふわふわ、モフモフ、心のときめき、ダンサブルなビート、ダイナミックな感動、重たさのある美しさ、Mint Julepのよさが選り取り見取り揃った目玉トラックな感じ。遠くで鳴り響くようなサウンドがもたらす夢の世界に酔いしれて、それらの素敵なフィーリングをたっぷり味わっていく。めちゃめちゃいい。エレポップな作風とアンビエントな作風のダブルの持ち味がこの1曲でよく表現できてるって思った。

アンビエントっぽくて重たい曲調のはずなのに重くない、今作はそこが魅力的だったと思う。エクスペリメンタル・アンビエント作品で有名なWestern Vinylからのリリースなのがまたすごくいい...笑。Western Vinylってまさかこんな王道インディーポップも扱うんだ、みたいな。"Mint Julep"ってバンド名も大好きだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. For Those I Love - "For Those I Love"

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美しさと興奮が絶頂に達するあの感じ

 センシティブな刺激がヤバいとてもクールなダンストラック。音響エレクトロニカサウンドメイキング、アイルランド訛りのあるラップ調のタフな歌、テクノからフットワークまでダンサブル性を磨いた独自のグルーヴ...。半端いほどカッコよくてゾクゾクがずっと収まらない。ダークなのにセンチメンタルなときめきがあるI Have a Love (M1)、激しいサウンドで理性がぶっ飛びそうになるくらいハイになるTop Scheme (M4)、音楽の興奮をもっともっと高めていくThe Myth / I Don't (M5)。ヒップホップとかEDMの要素もあって、あんまり自分が普段聴かないタイプの音楽要素もあるけど、For Those I Loveの今作にはもうまんまとやられてしまった、、、。本当にベタ惚れするほどカッコイイ。リードトラックのYou Stayed / To Live (M2)とか、会社のお昼休み中に聴いたらあまりによすぎて仕事に集中できなくなっちゃった 笑。遠く奥から静かに鳴り響くようなセンシティブなサウンドとか、息を飲むほど素敵な世界を持ってるのに、踊りまくれるアツいビートが打ち込まれてる感じ。美しさと興奮が絶頂に達して、初めて聴いたときは気絶するかと思った。単調なビートよりも ひねりのあるテクニカルなビートなのが本当にカッコいいと思う。ヘッドホンの音量を上げまくって全身で浴びるように聴きたい。ほんとに最高に大好きな曲だった。

クールな印象から少し転換するアルバム後半パートもめちゃくちゃよかった。The Shape of You (M6)、Birthday / The Pain (M2)とかがそう。気分がるんるんになるようなパーティー風の明るいムードを持ってる曲。音響エレクトロニカサウンドメイキングとか、センシティブな刺激はそのままあって少し特別なダンストラックに仕上がってる。こちらも大音量で聴いてテンションを思いっきり高めたくなる曲。光と闇、表と裏、ダークな曲も明るい曲もどっちも最高だった。

For Those I Love、すごいカッコいいアーティストだなと思った。特に今作は "I have a love" ってフレーズ(テーマ)があるけど、センシティブに攻めたサウンドとか、ジャケットのモノトーンでシックなイメージとか、アーティスト含めてアルバム全体に統一感のあるデザインを持ってたと思う。(それとは別に、アーティストがアイルランド・ダブリン出身というところも好感度が高かった 笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. IAN SWEET - "Show Me How You Disappear"

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不思議ちゃんドリームポップ

 ノイジーサウンドで音楽の快感を最強に強化しまくるようなドリームポップだと思う 笑。浮遊感を意識してる優しいポップの作風なのに、ドリームポップとは全く思えないくらいのギターの轟音とか(My Favorite Cloud (M1), Power (M8))、ハードロックみたいに強いドラムのアタックとか(Sing Till I Cry (M5), Get Better (M7))、優しさに反するような強烈なサウンドがいっぱい。それだけでなく、サイケデリックな感覚をもたらすような催眠的なサウンド感も持ってたり(Sword (M3))。まるで不思議ちゃんみたいに考えてることが読めない異質な音楽に感じるのだけど、めちゃめちゃユニークで最高のキャラだと思う 笑。考えてることが読めないような音楽、例えばDirty ProjectorsとかThe Chapとか、変化球多めのバンドって色々いると思うけど、その中でもIAN SWEETの"不思議ちゃんドリームポップ"ってキャラは特別なよさがあると思う。代表的なのが6曲目のDumb Driverとか。ドリーミーみが濃厚で夢心地の気分になれる音楽なのに、不安感が煽られるような気持ち悪さを同時に含んでる感じ...。わけが分からない、、、ウットリするようなメロディーでありながら、自分の嘆きや悲しみの感情が引き出されるようなニュアンス。まるで気づかないうちに涙がこぼれるような、意識の外側にあるものに身体が反応するような感じ。とても不思議な音楽。そういう不思議さが結果的にドリームポップとしてのドリーミーな感覚をめちゃ高めてる感じがする。クオリティが鬼高くてほんとに素晴らしかった。

今作で1番好きな曲は、Dumb Driver (M6)と僅差でShow Me How You Disappear (M9)かもしれない。鳥肌が立ちまくるような音圧の高いエレクトロニックサウンドがあるナンバーのやつ。もともとIAN SWEETは宅録のベッドルーム系よりも、Sleigh Bellみたいにもっとライブ映えするような大きなステージ感を持ってると思うけど、この9曲目はそういうライブ系の迫力がとても利いてる感じがする。ドリームポップを越えたシューゲイザー的な魅力以上に、アルバムのクライマックスに向かっていくようなダイナミックさもあるし、そこに"Show Me How You Disappear"ってフレーズを合わせたりするのがもう...。ドリーミーな快感にセンチメンタルなエモーションが思い切り影響しまくる。めっちゃ大好きな曲だった。

今作で初めてIAN SWEETを知ったのだけど、過去作もすごいよかった(特に1st)。てっきり宅録ベッドルームポップな感じかと想像してたけど、もともとはロック感が強めのギターポップだったとは全然思ってなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Tune-Yards - "sketchy."

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エキセントリックなハッピー

 Tune-Yards (tUnE-yArDs)のポップは、状態的に言えば~🤪~だと思う 笑。「ジャンル : お笑い」というか、リズム隊が大袈裟でコミカルな動きを持ってたり、常に予想の斜め上をいくハジけ方をしたり、とてもハッピーなキャラクターの音楽の感じ。W H O K I L L (2011)とか、置いてきぼりにされるくらいそれらの楽しいセンスが発揮されてて本当に笑っちゃう 笑。3年前のI can feel you creep...(2018)では、クラブミュージック系のアプローチがあったライブ映えする作品だったと思うけど、今作はTune-Yardsのそのハッピーな音楽性で、よりポップスとしての完成を意識したようなアルバムな気がする。nowhere, man (M1)、make it right. (M2)、hold yourself. (M7)...、ハッピーさが派手に強調されたTune-Yardsらしい曲だけど、どの曲もフックを持っててシングルとしても強い、みたいな。結果的にハピネスがもっと最強になってた 笑。3曲目のhypnotizedとかもうめちゃめちゃに最高...。Tune-Yardsらしいエキセントリックなメロディーで心のときめきすらもを発生させてしまうような曲。最高にハッピーなTune-Yardsのキャラクターがポップ・バラード系の曲の中で活きて、音楽がとてもエモーショナルに発展したようなイメージ。いつもニヤニヤしながら聴いてたTune-Yardsの曲で思わず泣きそうになってしまうとか、私の中でわけの分からないことになってた 笑。コミカルでヘンテコだからこそ、心のときめきももっと特別なものにできたんだと思う。このhypnotizedは特に最高な曲だった。

5曲目のsilence pt. 1 (when we say “we”)も大好き。こちらはエキセントリックなセンスが多めのナンバー。トロピカルでポカポカした雰囲気、儀式みたいに怖い雰囲気、密度が濃い上にフックのあるメロディーも利いてる。本当にすごい楽しい...!!エキセントリックだかこそ実現できるレベルの高い楽しさ。Tune-Yardsのヘンテコ攻撃(大好き)。ベース・グルーヴも一丁前。

あと今作が100点なのは、ラストbe not afraid. (M11)の最後の最後で奇声をあげるところ 笑。この奇声だけでもベストアルバムにしようかなって思うくらい、何度聞いても笑っちゃう 笑。(ちょっと音程下がって終わるところが尚大好き。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. The Antlers - "Green to Gold"

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The Antlersの美しい物語のページを開く

 The Anntlersの音楽はどうしてこんなに泣けるのだろう。前作Familiars (2014)は胸を引きちぎるような強烈な切なさを持っていて、Sigur RósのUntitled ( )みたいに魂を奪われてしまった。そんな尊くて儚いThe Anntlersの今作は、ジャケットのオレンジ色がとても特徴的な『Green to Gold』というアルバム。切なくて心が冷たくなる部分を持っていたFamiliarsの作風とは異なった、ほっこり温まるリラクゼーションが終始維持されてるタイプの作品で、こちらも猛烈に感動的だった。リスナーの純粋な心に触れるように温かい1曲目のStrawflowerから、「大丈夫だよ。こっちへおいで。」と優しく語りかけられるようにしてアルバムの世界に導かれていく。そうして2曲目のWheels Roll Homeに入ると、そこにはThe Antlersの楽しそうな姿があった。Mercury Revの品のある声質と似ている歌の、優しさを込めまくったThe Antlersのメロディー。まるで穏やかな昼下がりにお庭でティーパーティーをするような、そんな幸せを想像する。もう本当に素敵でたまらない。Just One Sec (M5)やIt Is What It Is (M6)に表れてるような、バンジョー・スライドギターのカントリーも本当によく似合ってる。そうやってThe Antlersの美しい物語のページを開いていって、アルバムが象徴する"Green to Gold"の世界を堪能していく...。なんて素晴らしいんだろう。ジャケットのオレンジ色が濃いところが本当に見事だって思った。

3曲目のSolsticeと4曲目のStubborn Manが1番好き。心が温まるリラクゼーションの中に、ロマンチックな愛を持ってる。ムーディーで表面的なよさなんかじゃなくて、もっともっと心の奥に届くもの。素敵なものを抱きしめて、それに対する愛おしさが溢れて、涙が止まらなくなるような、そういう体験。特にStubborn Man (M4)はメロディーの引力、涙を誘う力が半端なさすぎて本当にキツかった。さっき心温まる作風だって言ってたけど↑、この曲に関しては温かさと同時に悲しみも帯びてる。だからこそ深くまで届く、心に沁みて沁みまくる。私の中で思いが止まらなくなってた。ほんとに素晴らしかった。

カントリーもそうだけど、The Antlersはアンビエントの音楽性もとても強いと思う。同じ音を鳴らし続けるようなテクニックとかもそう。 今作の温かい曲調ともすごくよく合ってた。エンディングも軽やかでずっと心癒されてた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Really From - "Really From"

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センセーションを強くする

 ジャズとマスロックで構成されてる新種のポストロックの感じ。インストを主体としたスタンス、手数の多いアンサンブル、音楽がジャズとマスロックの共通項で結ばれてるようなまとまりがあるけど、ジャズともマスロックとも全然違う画期的な新しさがある感じなのが素晴らしいと思う。ジャズの濃厚なムードとマスロックのパリっとしたフレッシュ感、大人びてる上品なキャラと若々しい活発なキャラ......ジャズとマスロックのニュアンスでドラムの微妙な使い分けがあって、シーン転換を色々持ってるようなストーリーの充実もあったり。まるで個性と個性を力強くミックスして、ジャズとマスロックのポテンシャルを同時に拡張してるみたい。別次元の音楽を堪能してる感覚になるくらい、本当にスペシャルな音楽だと思う。アンサンブルのパフォーマンス以上にサウンドの美しさも極められてるし(Apartment Song (M1))、アルバムのハイライトになるような印象的なフレーズがあるリードトラックもめちゃ最強(I Live Here Now (M5))。中でも個人的に大好きすぎてヤバかったのが2曲目のQuirk、マスロックからエモへの発展も見せる私的激アツなトラック。ジャズ、マスロック、エモ、それぞれが持つカラーで音楽を鮮やかに飾って、感情をどんどん揺さぶっていく。心がときめいたり、ときには激しく情熱的になったり、センセーションがすごく強い。ジャズからマスロックまで多様な引き出しを持ってるReally Formだから成せる感じ。本当にすごい作品だと思った。

今作のよさに大きく貢献してるのはやっぱり、全曲を通じてとにかく歌いまくってるトランペットかなって思う。ジャズとしてキャラクターは強く感じるけど、ジャズのクセがあんまりないさっぱりした印象の感じ。ジャズっぽさがないマスロックのフラットなアンサンブル感の影響もあって、トランペットが自由に躍るようにして歌ってるのが本当に嬉しそうに感じられる。CARMみたいにトランペットでガチガチに固めたコンセプトの作風でもない限り、今まで"トランペットを聴く"ということをあんまりしなかったけど、この作品は思いっきり"トランペットを聴く"を楽しんでた。インディー・オルタナばかりしか聴かない私の感受性・価値観を広げてくれたような作品。そういうところも好き。

2020年代の音楽、新しい時代を感じさせてくれる作品と出会うと、可能性をいっぱいに感じでとてもワクワクする。ジャズでもマスロックでもない新しいアンサンブルの景色、Really Formめっちゃかっこよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Sofia Kourtesis - "Fresia Magdalena - EP"

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美しいもの没頭するだけして生きてたい

 ハウスの熱いビートでただひたすら美しいものに集中しまくるようなダンストラック。心臓にまで届くような激しめの撃力を持ってるのに、瑞々しくて透明感のある鍵盤楽器、オルゴール、まるで曲の中に星が散りばめられてるみたいに美しいサウンドで構成されてる。もうめちゃめちゃツボなんだけど...笑。心沁みまくる美しいサウンド達がダンストラックの中で次々に発生するような感じ。まるで無我夢中になってダンスするハウスミュージックのモチベーションやエネルギーが、美しいものに没頭するためだけに利用されてるみたい。ヘッドホンの中で繰り広げられるダンスフロアの中で、水滴が零れ落ちる瞬間とか、夜空の星々を眺めてるようなシーンをたくさん想像していく。こういう優しさいっぱいで成り立ってるクラブミュージックの体験ってほんとに最高だと思う。La Perla (M1)から耳の中で美しさがバチバチに奏でられててヤバい。華のある鍵盤の音色とぱちぱち弾けるビートが楽しそうに会話してる。躍動感の強いフックもあって、心に沁みる美しさがもっと強調されたり。もうこの1曲目から「最高!!最高!!!(机バンバン!!)(号泣)」みたいに興奮してた 笑。2曲目~3曲目もすごくいい。ほんと、ひたすら綺麗な音で埋め尽くされてる感じがあってJon Hopkinsの"Emelard Rush"って言葉を思い出す。サウンド以上にビートにも華があるのもヤバい。私はこの音楽みたいに、ただひたすら美しいものに没頭するだけで生きてたいって思った。そのくらい好き、マジでリピートが止まらない。

1曲目のLa Perlaと同じくらい4曲目のJuntosも大好きだった。ライブみたい臨場感が濃くて、音楽の体験がよりハイなものに用意されてる感じの曲。ハウスミュージックの高い集中力の効果も相まって、ダンスフロアの向こう側にある世界にどんどん導かれていく...。ピアノの音色一つ取っても本当にレベル高いのに、そこにプラスで登場する二胡の破壊力が本当にありえなくて...笑。すごく奇抜な存在感、もう美しさがめちゃめちゃ際立ってる。あまりによすぎて最初聴いたときは泣きそうになってた。今年1月にリリースされたCARMのアルバムとかでも二胡を採用してたと思うけど、Sofia Kourtesisの今作の方がスペイン語を引用した中南米の世界観とかによく似合った感じがしてる。メロディーもめちゃめちゃハイセンス。本当にめっちゃよかった。

Four TetとかDJ Kozeとか、インテリジェンスなカッコよさよりも精神的な安定感とかを意識したクラブミュージックのやつって本当に大好き。今作はそれでいうとほんとベストアルバム(EP)だった。EPってアルバムよりも小型の作品だから、振り返ったときに忘れてしまうことが多々あるのだけど、今作はもう絶対忘れないなって思う。(というか年間ベストEPとかやってみたい。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Floating Points, Pharoah Sanders & The London Symphony Orchestra - "Promises"

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見てはいけないものを見てしまい、神に殺されるような体験

 私がFloating Pointsの音楽にどこまでも虜になるのは、ジャズ・クラシック・電子音楽、それぞれの音楽が持つ繊細さと高級感を異常なまでに高め、音楽に桁違いの美しさを与えるようなところ。メロディーも一つの神経のように扱って、まるでバイオエレクトロニクスのテーマのようなSF的な魅力も感じさせたり。2015年のEleaniaとか、それらの繊細さ・高級感を余すことなく発揮して、真っ白に広がるような空間、静寂、"無" を本当に見事に表現していたと思う。今作Promisesが実現したのは、そのEleaniaのような静寂、無の世界の延長にあるものだと思うのだけど、感想を文章にするのがおこがましいくらい、とてつもないほど凄まじい作品になってた。これまで私が人生で積み重ねてきた思想、感情、想像、自分の全て上回ってしまう果てしなさを持っていた。

9つのパッセージで構成されたMovementのストーリーの中で、自分の持っている想像・発想を何度も破壊するような未知が与えられ、瞑想的な体験を幾度となく繰り返し、音のみで表現される得体の知れない概念と出会っていく。冒頭から全編に亘ってリピートされる波打つフレーズは、まるで暗号のように、メッセージのように、そして呪いのようにしてリスナーを釘づける。一定時間ごとに「よく見ろ」とリスナーに働きかけるようにそのフレーズが作用し、音楽の世界から逃げることが禁止される。そういう風にして強制的に音楽の世界と向き合い、その世界を巡り、時空を超え、たどり着いたMovement 6で、いよいよバケモノと遭遇する。そのとき、見てはいけないものを見てしまった気がした。無の世界の最果てを訪れ、来ては行けない場所に来てしまったような気がした。私はそのバケモノの存在感に圧倒され、それらのエネルギーを喰らい、何か激しく恐ろしい感情に襲われて、気が付けば大量の涙をこぼしていた。信じられないような経験だった。そのバケモノが去った後、私はまた無の世界に取り残された。時間が止まるような、完璧な静寂だった。美しさを越えた何かで心がおかしくなって、理性が壊れそうなほど感動した。そんな状態で、私はラストのMovement 9で力尽きてしまった。降り注ぐ光に撃たれたと思った瞬間、心臓が止まり、地獄に墜ちるように沈んで行ってしまった。あまりにもリアルにでとても恐ろしかった。まるで、この音楽の世界を知ってしまったがために神に殺されるような罰を受けたみたい。そうやって音楽が終わって目が覚めたわけだけど、その後はずっと虚無感に苛まれていた。現実のこと、生きてることが、どうでもよくなってしまうような、自分の中で大好きだったもの、愛していたものが思い出せなくなるような、そんな状態だった。何もできなくなっていた。Floating Pointsが創造したMovement 6のバケモノのこと、それらと出会ってMovement 9で殺されたこと、それらの余韻がずっとずっと残っていた。たった一つの音楽で、どうしてここまで壮絶な体験ができるのだろう。さっき私は、「人生で積み重ねてきた思想、感情、想像を上回る...」とか言ってたけど、この作品に比べたら、私の"積み重ねてきた" ものなんか、ナノメートルサイズの薄さにも満たない。今作はそのくらい大きなスケールの世界を与える音楽だと思う。というか、"世界"という言葉も、私はとても狭い意味でしか理解できてないんだなと分かった。きっと、私は何かを理解したつもりになっていたんだと思う。芸術のこと、喜びのこと、人生のこと。もう全く理解できていなかった。なんか、自分の心の健康の問題とか、将来への不安とか、そういうものがバカみたいに小さいものに思えてしまった。希望も絶望もどちらも感じなくなってしまった。この作品には、そういう影響力があった。先月のCassandra Jenkinsのようなベストアルバムとはまた方向性が違う傑作。あまりにも壮絶すぎて、ベストアルバムに選ぶのも本当に恐れ多いって思ってしまうほどに。

前作Crush (2019)は、2010年代の歴史に残る最最最高のハウス・テクノだったと思う。今作はサックス奏者のPharoah Sandersも合わさった形で、よりフォーマルにオーケストラコラボとしてのアルバム。正直、ここまで来るともうFloating Points (Sam Shepherd)のことを人間として見れなくなる。私の記憶では、確かベートーヴェンは「神はいる。だって人間が音楽を創造できるのだから」みたいなことを言ってた気がするのだけど、それでいうとFloating Pointsの今作は、音楽自体が神であることを象徴したような作品にも思えてしまう。『Promises』というタイトルが、ここに来て本当にやばいものに感じられた。For TetやJon Hopkinsも絶賛なアルバム、「シャッフル機能がオフになってることを確認して(fuck shuffle)」「初めから最後まで全部聴いて」、本当に素晴らしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

★プレイリスト

Apple Music ↓

温の「2021年3月ベストアルバム(温)」をApple Musicで

Sportify ↓

open.spotify.com

 

★その他 とてもよかったもの

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Alice Phoebe Lou - "Glow"

Anna Fox Rochinski - "Cherry"

Arab Strap - "As Days Get Dark"

Do Nothing - "Gluland - EP"

James Levy - "Soldier"

Kings Of Leon - "When You See Yourself"

Lost Girls, Jenny Hval & Håvard Volden - "Menneskekollektivet"

Middle Kids - "Today We're The Greatest"

serpentwithfeet - "DEACON"

Vegyn - "Like A Good Old Friend - EP"