アルバム感想(温)

My Favorite Music

「2020年12月ベストアルバムTOP10」感想

f:id:Worried10Fire:20201212120508j:plain

「12月だけど一応新譜チェックしとこうかな」って色々聴いてみたらベストアルバムだらけだった 笑。サムネイル画像で1位がバレバレかもしれないけど、今月のベストアルバムTOP10(12月まだ終わってないけど)の感想をランキングで

(上位3つだいたい同率)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. Godblesscomputers - "The Island"

f:id:Worried10Fire:20201206110116j:plain

木琴とサックスの素晴らしすぎるブレンド

 イタリアンDJによるオシャレでかっこいいエレクトロニカ作品のやつ。ベースはR&B・ソウルなどのブラックミュージックだと思うのだけど、それらのグルーヴのダンスをもっと上品にかつセクシーに見せるようなサウンドの高級感がめちゃめちゃいい。木琴やサックスの音を多層化させてこれ以上ないほど濃厚な味わいを出していくようなThe Island (Intro) (M1)、エレクトリックピアノとドリーミーなギターが美しく交差していくFire in the Jungle (M2)、どの曲も素敵でオシャレなサウンドがよく鳴ってる。中でも1曲目の木琴とサックスのブレンドは本当に素晴らしすぎると思う。それぞれ性質の異なる音をミックスさせて全く違った色を生み出していく特殊な反応ってあると思うけど、特にこのサウンドの絶妙な調和はやばい。サウンド面以外ももちろん最高で、例えば3曲目のPacific Soundとか大好き。こちらはボーカルを採用したオシャレR&Bのゆったりダンストラックなやつ。表現されてるワールドがRhyeの音楽みたいに洗練されまくっててめちゃめちゃクリーン。鍵盤楽器の綺麗なメロディーもとても引き立てられてると思う。

今作をベストアルバムにさせた1番の決定的要因は6曲目のRocks (feat. Glenn Astro)。この曲は本当にめちゃめちゃ傑作だと思う。ビートが超ノッてて、ベタ系のシンセサウンドも最高に気持ちよくて、メロディーに華があって、遊び心がありまくりで...。オシャレでかっこいいエレクトロニカの頂点ってこういう曲だよなって納得させられてしまう。Louis Coleとかにありそうな動きが活発なベースラインとかも本当に楽しいし、ずっとずっと聴いていたくなる。とても感激しました。

今作はジャケもかなり好きだった。上下の向きが不確定なデザインで、ひっくり返して捉えることもできるみたい。オシャレでかっこいいエレクトロニカともめちゃぴったりの世界観だと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. AADJA - "Thought Dealer"

f:id:Worried10Fire:20201211212302j:plain

恐怖の煽り方(満点)、興奮の作り方(満点)、テクノのヤバさ(満点)

 2019年、アンダーグラウンドが持つ真のゾクゾク感・危険性を手加減なしで描いたようなPTU (Am I Who I Am)は本当に最高すぎてやばかった。そこからアンダーグラウンド感をガチで突き詰めたようなめちゃめちゃハラハラするテクノのことがもっと好きになったし、そのPTUが所属するロシアのテクノレーベル трип (Trip Records)に対しても注目度がグンと上がった。AADJAの今作も想像通りかそれ以上に最高なアンダーグラウンドのテクノだった 笑。恐怖の煽り方、興奮の作り方、テクノのヤバさ、持ってるスキルのレベルがどれも本当に高い。恐怖の煽り方というところだと、タイトルトラックのThought Dealer (M1)。ステレオの揺さぶり、緊張、聴いていると胸が苦しくなるような気持ち悪さがある。まるでThom Yorkeのサスペリアのような嘆き系の悲しさもあるし、テクノのピリピリした音楽性でそれらが煽られるのはかなりキツい...。めちゃめちゃ陰湿なアンダーグラウンドで本当に最高だと思う 笑。興奮の作り方でいうと、Zappa Valley (M2)やEar Bubbles (M5)がそう。心拍数が上がりすぎて病気になってしまいそうなくらい強烈にハイスピードなビート。低音のパンチも強力だし、とにかく攻めて攻めて攻めまくるようにリスナーのテンションを上げていく。こういうところも圧倒的にハイな気分になれるアンダーグラウンドのクラブミュージックな感じで本当にたまらなかった。ヘッドホンで音量大にして聴くのが最高に楽しい。

それ以外にも、AADJAはクセになるフレーズ感の作り方とかも本当に上手だなと思った。個人的には、4曲目のNeuro Eroticとかのアシッドでグロテスクなサウンドが悲鳴を上げるみたいなフレーズのやつ。冷たさとか、憎しみとか、アンダーグラウンドの世界観に通じる闇の感情をいっぱいに感じる。こういうミニマルのメロディーって本当にめちゃめちゃかっこいい。Laurel Halo、India Jordan、Kelly Lee Owens、Avalon Emerson、今年はクールな女性テクノ作家がいっぱい躍進した年だなと思う。

трип、というかロシアのテクノだと、тпсб (Sekundenschlaf (2018))とかもめちゃめちゃ大好き。テクノの興奮で人間のダークサイドをドバドバ炙り出すことに成功してる感じ。地味にロシアのアンダーグラウンドテクノのプチブームが私の中で来てるかも...。(AADJAはカナダですが)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Son Lux - "Tomorrows II"

f:id:Worried10Fire:20201208215032j:plain

魔法性の高い音響芸術バンド(ツボ曲多め)

 ポストクラシカルでアートロックなバンドの今年2作目、8月にリリースされた1作目Tomorrow I の方も新時代の音響芸術を遂げたような作品でベストアルバム級だったけど、2作目のこちらの方がもっとツボだった...!彼らのルーツとなっているようなジャズ・クラシック系のエレガントさ、かっこよさ、ダーク感をそのまま、今作はその中でも実験的でミステリアスな作曲性が前面に出てる感じ。例えばMolecules (M2)。痒い所に手が届くような民族系のパーカッションが本当に最高なのだけど、それらが醸し出す謎めいた魅惑的な雰囲気がとてもいい。音響的にこだわりまくてるSon Luxの曲の中でも繊細さがかなり強いから、思わずめちゃめちゃ飲み込まれそうになる。6曲目のApartとかもそう。こちらは、Forest Swordsにもありそうな魔法密度の高いサウンドを使ってSon Luxの濃密なワールドへの没頭感を強化していくような曲。ダークな中にも華々しくて開放的なメロディーを含んでたりするから本当に美しい。他にも、4曲目のLeavesとかもよかった。ミニマルなフレーズを組み立てていくようなテクニカルな実験性、ハットとかスネアとかをランダムに打ち込むようなドラムワークの最高にかっこいいやつ。実験性とか関係なく、シンプルにスモーキーなR&B・ソウルとして格別だったProphecy (M3)もめちゃ最高だったし、好きな曲が多いアルバムだった。

1番好きなのはLive Another Life (M8) 笑。今作で特徴的な民族系パーカッションのサウンド、テクニカルでかっこいいドラムワーク、スモーキーで格別なR&B・ソウルなど、今作におけるよさが全部集約された曲だと思う 笑。Son Luxの音響芸術、魔法性の高いエレクトロニカ技術を駆使しながら "Live Another Life"ってメッセージを放つところが本当にたまらない。アルバムのフィナーレ的な迫力もあるし、本当にグッときまくる。前作Tomorrow I でいうところのUndertowとかもすごくよかったけど、今作のLive Another Lifenの方がやられました 笑。

Son Lux、2018年のBrighter Woundsのときもノーチェックだったのだけど、実際ちゃんと聴いてみたら改めてすごく好きな感じのアーティストだなと思った。音響芸術家としてとても秀逸、今作の8曲目のWeight of Your Airとかも、音の質感の使い分けが本当に上手だと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. 青葉市子 - "アダンの風"

f:id:Worried10Fire:20201207224430j:plain

この世で最も素晴らしい かえるのうた のカバー

 クラシックギター一つでどこまでも豊かな文化を創造していくような京都のSSWの新作。日本の風土や和の精神を徹底的に体現してしまうようなフォークソングの作家性が本当に素晴らしくて、生み出される作品の一つ一つが全部傑作だと思う。特に今作は、沖縄の島々から着想を得た新規的なコンセプトがある作品で、従来の淡い音色の引き立つ素朴なフォークの感性だけでなく、環境音楽による海岸のビジョン、宗教音楽系の聖なる風情など、多様な表現力の進化を見せてくれてる。冒頭のPrologue (M1)とPilgrimage (M2)からすごくそれで、伝統的なフォークのスタイルを超えた本格的にドリーミーな音楽性がよく表れてる。質素な美しさがある青葉市子のボーカルをめちゃめちゃ神々しく演出してるのが本当にやばい。癒し的なさざ波のサンプリングも、非現実的で幻な世界の中で見せていくような美しいトリックがある。青葉市子がサントラとして制作しただけあるし、幻想をリアルに想像するアーティストとしての真骨頂が出てると思う。個人的には、それらの音楽性が沖縄の土地から得られたアイディアっていうところがたまらない 笑。ほんと、青葉市子ってすごい感性...。他にも、木管楽器の旋律で音楽にドラマ性を付加するようなDawn in the Adan (M12)とか、和やかな青葉市子のワールドの中で緊張感を作っていくohayashi (M13)とかも素晴らしかった。

そんな新規的なコンセプトを持った今作だけど、その中でもとてつもないほどキラートラックになってると思ったのがやっぱり8曲目のSagu Palmʼs Song。静寂を利用して繊細なエモーションを絶大に高める青葉市子パワーが炸裂しまくってる曲。ギターの音がたった一粒鳴るだけで、鳥肌がバチバチに立ちまくる。どうしてここまで人間の琴線に触れる音を生み出せるのだろう...。フォークソングライターとしてあまりにも天才だと思う。かえるのうたの引用が本当に頭おかしいほど美しい。もともと青葉市子と童謡的な音楽との相性って凄まじくいいと思うけど、中でもこの曲のかえるのうたのカバーはこの世でもっとも素晴らしいと思った。

沖縄っぽさというところだと、個人的には帆衣 (M4)とかもよかった。やっぱり青葉市子は暖かい音楽がよく似合ってる。架空のサントラ、これからもアート性をバンバン発揮していって欲しい...!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Jordana - "Something To Say To You"

f:id:Worried10Fire:20201206131945j:plain

「これが人生なのかな」

 前作Classical Notions of Happiness (2020)は、ベッドルームポップ重視でありながらガレージノイズをバリバリに装備した新型ドリームポップ(Crunch)の作風が超特徴的だったと思う。今作は、そのCrunch系のグルーヴィーでノイジーなタイプの曲をコンピレーションアルバムとしてフルで納めたような最高の作品...!笑。前作を聴いてたときから「もっとCrunchみたいな曲いっぱい演らないのかなー」と思ってたので、アルバムをその作風で統一させた感じの今作には個人的に大正解&大満足だった。撃力の強いドラムが楽曲のノリを激しくしていくHitman (M3)、Queens of The Stone Ageみたいにヘビーでノイジーなギターベースすらも繰り出してしまうBig (M4)、そしてそれらのダイナミックなアレンジを一体にしてまとめあげたようなDecline(M10)...。荒っぽいロックの感じとか、ダンサブルな楽しさがよく強調されてるポップですごくいい。Clairoと同様、それらはここ数年の間に発達したベッドルームポップの新しいスタイルだと思う。そういうドリームポップ・ベッドルームポップ界隈のニューカマーってやっぱり大好きなのでめちゃ応援したくなる。他にも、Divine (M8)とかFuck You (M9)もよかった。

今作はJordanaの最高ソングだらけのコンピレーションアルバムだと思うのだけど、その中でも私がぶっちぎりに大好きだったのが11曲目の I Guess This Is Life。他のベッドルームポップの曲にはないようなドラマチックなストーリー性がある曲。韻を踏みながらJordanaの人生を映し出していくリリックとか、それらの物語のイメージを愛おしく描いたMVが本当に完璧すぎてるのに、そこに「これが人生なのかな」って歌をのせてるのが本当にありえないくらいやばい。何回聴いても涙が止まらなくなる。その音楽には、普段の日常で私達がなんとなく感じている寂しさや不安がある。そして同時に、それらが取り除かれる癒しの発生の瞬間もある。それは、もしかしたらJordanaが音楽を奏でる理由の本質的な部分なのかもしれない。Jordanaが感じているもの、Jordanaが求めているもの、それらの全てにありえないくらい共感して思わず死にそうになる。本当にめちゃめちゃに素晴らしい。2020年のベストソングとかも作ってるのたけど、この曲のせいで上位TOP5あたりが思いっきり更新された。そのくらいやばい。

正直なところ、Jordanaの前作Classical Notions of Happinessは期待しすぎてた部分がありました...。それでいうと今作は、逆に期待度が下がった状態からスタートしたので、余計に最高になった 笑。I Guess This Is LifeのMVは今後何回も観まくると思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Alaska Reid - "Big Bunny"

f:id:Worried10Fire:20201209214026j:plain

病みつきになる音響ドリームポップ

 空間系のエフェクトを完璧にマスターしたような音響ポップ。まるでOneohtrix Point Neverみたいなサウンドアーティストの音響に匹敵するくらい音の扱いがプロフェッショナルなのに、インディーポップのSSWとしてのメロディーの引き出しもやばくて、びっくりするほどめちゃめちゃ最高のアーティストだと思う。サウンドの立体感が本当に深くて、夜にヘッドホンで堪能するのがたまらないほど幸せ。基本スタイルはエレキギターだけど、煌めくサウンドが際立つアルペジオから、ハードロック・シューゲイザー系のノイジーなソロまで、本当に全部音がいい。リバーブ、エコー、多様なプロセスを駆使して本当に素敵なサウンドを鳴らしてる。なんでもいいのだけど、例えば6曲目のBoys From Townとか。エレキギターのノイジーな質感、夜空に星を映すような煌めき、そして少しだけメランコリーなフィーリング...。ドリームポップとしてもいいし、ギターポップ、もしくは一種のシューゲイズポップ的にも名作だと思う。

このアルバムはリリース前からチェックしてたけど、その時から私が意識を失いそうになるほどリピートをしまくってたのが3曲目のOblivion。この曲が本当に病みつきになる。曲を再生して音が鳴ったその0.1秒くらいで「はい神曲ー!はい大好きー!!」ってなるようなやつってやっぱりあると思うのだけど 笑、私にとってのこのOblivionはマジでそれだった。ギターの音の立体的な深さが本当にとてつもない。息を飲むほど綺麗で、まるで恋をするように心惹かれまくる。もしこのAlaska ReidのOblivionを初めて聴く人がいるのなら、私個人としては、ヘッドホンで聴くことを推奨したい...。周りの音を可能な限りシャットアウトして、この音の深みを味わうということ。夜空に輝く星のような、身が引き裂かれる思いをするほど美しい音を堪能する。こんなに音響の深い特殊なドリームポップは今までに聴いたことなかった...。本当に本当に素晴らしい。

今作は1曲目から6曲目くらいまで最高ソングが連続しまくってるところにもびっくりした。柔らかいサウンドと硬いサウンドの質感を見事に使い分けるQuake (M4)、綺麗なメロディーと一緒に外へ駆け出していくようなCity Sadness (M5)、どの曲もすごくいい。(その中でもOblivionがやばすぎた。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Taylor Swift - "evermore"

f:id:Worried10Fire:20201212115727j:plain

背中を押してくれるようなカントリーの温もり

 前回のfolkloreは、cardigan、exile (feat. Bon Iver)、this is me tryingのような儚さのある深い感動のトラックが印象的だったと思う。今作のevermoreも、tolerate it (M5)のようなfolkloreタイプの超絶大傑作トラックがあると思うけど、どちらかといえば今作は、もう少し風に乗って前進するようなポジティブなフォーク・カントリーテイストを強く感じる。安心感のあるカントリーギターにソフトな歌をのせるWillow (M1)、シンプルなピアノがリスナーの背中を押してくれるような励ましを持ってるchampagne problems (M2)、悲しいことがあっても元気付けて慰めてくれるような曲調のdorothea (M8)、フォーク・カントリーの優しくて温かい仕上がりで本当にめちゃめちゃ最高だと思う。カントリーっぽさという点だと、例えば10曲目のivyとかもめちゃめちゃ大好き。Kacey Musgravesのような晴れ晴れしいカントリーの陽エネルギー、広大な高原をイメージさせるような壮大な清々しさも持ってる。春の到来とかに合わせて聴いたら本当にグッときそう。他にも、テイラーのポップパワーをフォーク・カントリテイストの作風にバランスよく適合させてるgold rush (M3)とかも素晴らしかった。従来のキューティーなポップ、昨今の優しいフォーク・カントリータイプのポップ、どちらも ちょうどよすぎるくらいに存在してる...笑。キューティーなポップいうと、エレポップっぽさがあるlong story short (M12)も快適な曲だった。

folkloreからの最大の特徴といえば、やはりAaron Dessner (The National)やBon Iverとのチートコラボ。11曲目のconey island (feat. The National)とかThe Nationalの音楽にTaylor Swiftがそのまま参加しました~みたいにめちゃめちゃ豪華 笑。最後のevermore (feat. Bon Iver) (M15)もどこまでもやばい。今まで蓄積されたTaylor Swiftの音楽の癒し・温もりに、Bon Iverの超絶魔法が発動していくとか...。曲想的にもAdrianne Lenkerに近い精神状態とかがあったりしてて、感動レベルがあまりにも高すぎてる。アルバム通して聴くとより激しい。

「てかfolkloreはどうなんだよ」ってなってるかもしれないけど、そちらは「2020年下半期『月間ベストアルバムTOP10』から漏れてしまったベストアルバムTOP10」のところで既に感想を書いてある。未公開だけど。「じゃあ公開しろよ」「そうだそうだ」いやまだ10枚選べてないです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Ed The Dog - "Untitled.Crashed.Crashed.Crashed"

f:id:Worried10Fire:20201212080937j:plain

無器用でピュアでめちゃめちゃ愛おしいパワーポップ

 ガレージロック、ディスコパンク、パワーポップ、エモ、そしてものすごくストレートなまでに "ロック"...。打ち込み系のドラムや日常系のサンプリングまで、雑食的に様々なジャンル・手法を吸収したロック&ポップスだと思うのだけど、あまりにも傑作で1曲目のEverybody, I love Youからめちゃくちゃに泣いてしまった。「泣くのが恥ずかしいほど僕は無価値なんだ」。悩んだり、後悔したり、葛藤して、ぶつかって、それでも必死になってがむしゃらになって全力疾走していくような生き様。雑食的に様々なアイディアを音楽に取り込んでるところに少し無器用な姿もあって、楽曲中のメロディーがよりピュアに、より愛おしいものになってるところが本当にたまらない。不満を吐き出して、理想を追いかけて、ロックを奏でるための思いがこれでもかというほど伝わってくる。このEverybody, I Love Youだけでめちゃめちゃにベストアルバムだった。

そんな今作だけど、全体的にはWeeezerやJapandroidsのような元気なパワーポップ・エモの作風が基本だと思う。オーディエンスと一緒に盛り上がるような巨大な熱量があるThank You Buddy (M2)、ほんのちょっぴりブルーな気持ちを抱えながらもロックの楽しい余裕が表れてたりするThe Milk (M3)、ゆったりしたグルーヴに刺激的なマスロック風のギターも混ぜたりするPulse Flickers Under Wrist (M6)。メロディーがめちゃめちゃキャッチーでノリまくりだし、パワーポップ・エモとしてのエモーション密度も超高くて、本当にハイクオリティな曲ばかり。エモーション密度という点だと、絶対に絶対に見逃せないのが5曲目のUntitled.Crashed.Crashed.Crashed。この曲も1曲目のEverybody, I Love Youと同じくらい大大大傑作ソング。ノイジーな激しさ、音圧、爆発力、本当に楽しさが尋常じゃない。自分でもよく分からないけど、楽しさのフィーリングが強まりすぎてこの曲でも泣きそうになっちゃった 笑。何もかも本気で楽しもうとするロックバンドとしての意気込み、そこの純粋な思いにやられたんだと思う。本当に素晴らしい。

さらに今作がやばいのが、ロックだけでなくラブソングも最高なところ (I'll Be Your Dog (M9))。今までのエネルギッシュすぎるパワーポップをよりバラードな方向へシフトさせた曲、少しトロピカルな夏サイケのムードも素敵なのだけど、そこにラブソングを発動させるあたり本当に最高すぎてる。「I'll be your dog」、例えばエモ・パンクの失恋ソングとかだとPUPとかあると思うけど、Ed The Dogのこちらも本当に素晴らしかった。

1曲目のEverybody, I Love You、本当にすさまじく最高だったな、、、これはしばらくリピートが止まらないと思う。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Salami Rose Joe Louis - "Chapters of Zdenka"

f:id:Worried10Fire:20201212145917j:plain

エレクトリックピアノのコスモス

 喫茶店で流れてる昭和歌謡曲のアナログレコードみたいな雰囲気が漂うジャズ×エレクトロニカの作品、アートワークのイメージのように、レトロでエレガントな趣とか、天体・惑星系の素敵なコンセプトを持ってると思うのだけど、それらのテーマをエレクトリックピアノだけで特徴付けてしまうような作品としてオリジナリティが本当に強烈すぎてる 笑。本当にもうめちゃめちゃにエレピだらけ。このおもしろさはなんだろう、、、がんばって例えるなら、スマブラでファルコン使うとき普通だったらスマッシュ攻撃とかファルコンキックとか色々な技を使うはずなのに、もう狂ったみたいにファルコンパンチの連打しかしない みたいな 笑、例えるならそういうおもしろさに似てる(スマブラ知らない人には大変申し訳ない)。もうとにかくエレピに依存しまくってて、そのキャラクター一つでどこまでも無双していくようなやばさがある。運動エネルギーの高い興奮があるテクノ系のエレピ (We're Dumb (M1))、ポストパンク~ニューウェーブのスペーシーなニュアンスがあるエレピ (Fuck “Eager to Please” (M5))、可愛らしい大人ジャズのエレピ(A Thermogenic Interlude (M12))...。エレピのよさがより深く、より多面的に表れてる。中でも私的な極めつけはFantasy (M3)のエレピ。すごく甘くて、まろやかで、ほっぺたの中でほろほろ零れ落ちるような食感の味わいすら感じられるサウンド。エレピにしかないようなメロメロになるほど素敵なサウンドの特性がよく表れてると思う。タイトルがFantsyというのも追撃でやばいし、純粋にSalami Rose Joe Louisのボーカルも本当に綺麗でたまらない。

エレピのサウンドってとても特徴的だと思うのだけど、そのサウンドでコスモスを創造していく今作のテーマは本当にお見事だと思った。特に80年代のフュージョンみたいな世界観だけでなく、まるで50年代かなと思わせるようなクラシカルな雰囲気も持っていて、とても個性的なワールドに仕上がってる。ジャズとしてもダンサブルなエレクトロニカとしても傑作、素晴らしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. The Avalanches - "We Will Always Love You"

f:id:Worried10Fire:20201212000220j:plain

フェスが封印された残酷な1年の中、それに匹敵する思い出をくれてありがとう

 2020年は本当にしんどくて、とても散々な1年だったと思うけど、それでも「2020年って最高の年だったな」って思わせてくれるような、今年最大級にデラックスで信じられないほどスペシャルな思い出を提供してくれる1枚。歴史的大アーティストなJohnny Marr (The Smith)、Mike Jones (The Crash)、伝説的なフォークシンガーのVashti Bunyan (本当に?!)、ブルース・R&B・ソウル・ヒップホップ勢だとLeon Bridges (クルアンビンで好きになった)、Blood Orange、Neneh Cherry、Pink Siifu、Denzel Curry (初めて聴いたけどすごくいい)パワーポップだとRivers Cuomo (Weeezer)、エレポップだとオロノ(Superoganism)、MGMT (好き)、そしてエレクトロニカのルーキーなJamie xx (大好き)、さらにインディーロック枠でKurt Vile (マジか 泣)、そして現代クラシックのKelly Moran (←ここで口から泡を吹いて膝から崩れ落ちる)...。「コラボしてコラボしてコラボしまくる」みたいに大大大スケールのコレクションで、本当に錚々たる面々すぎてる。それらのアーティストみんながアバランチーズの一つのアルバムに集合して、まるでフェスのような夢のステージを見せてくれるところが本当に本当にたまらない。アルバム25曲を通して、次から次へと豪華なアーティストの曲が続いていく。それは、アーカイブでもない、配信生ライブでもない、"アルバムの音源で味わう"という最新型のフェス。今年はライブというライブは全て行けず、心から愛してるフジロックも来年に延期になって、1年の楽しいイベントが全て消滅してしまったけど、アバランチーズが、一緒の音源に集まることが考えられないようなメンバー達を集めて、想像を遥かに超える夢のコラボを見せてくれた。We Will Always Love You (feat. Blood Orange) (M3)とか、The Divine Chord (feat. MGMT & Johnny Marr) (M4)とか、Take Care in Your Dreaming (feat. Denzel Curry, Tricky & Sampa the Great) (M17)とか、ドラマチックでロマンチックで興奮が冷めないグッときまくる最高で最高のトラックだらけ。もうめちゃめちゃ泣いた。今年のかけがえのないアルバム、本当に嬉しい。

3曲目あたりから既に死にそうなほど感動してたけど、そこからさらに追い込みをかけて私を殺しにくるほど感動させたのが、15曲目のMusic Makes Me High。ハードルが高い曲名でありながら、全く名前負けしない超絶に名曲だと思う。ボルテージが高まりまくる最高のライブステージで、ファンク系の熱量が本当に見事に応用されてる。フェスの感覚を再現するような最高にアガる曲だと思うのだけど、そのライブの空間の中に、今作でコラボしてる豪華なアーティスト達が楽しそうにしてるところを連想する。普通なら交流しないようなアーティスト達が、このアルバムを通じてみんなでワイワイやってるところを想像する。本当に死ぬほど素敵なライブソングだと思う。それはもしかしたら、アルバムの音源だからこそできる幸せの想像なのかもしれない。感情が高まりすぎて本当に死ぬかと思った。フェスが封印された残酷な1年間の中、それに匹敵する思い出をくれて本当にありがとう。頭おかしいほど素晴らしかった。

サンプリングされてる曲、色々気になる。めちゃめちゃ音源欲しい。絶対にレコード買いたい。ボーナスは貯金にあてるって決めてたけど、このアルバムのためなら余裕で散財する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

★プレイリスト

Apple Music ↓

温の「2020年12月ベストアルバム(温)」をApple Musicで

Sportify ↓

open.spotify.com

 

 

 

★その他よかったもの

f:id:Worried10Fire:20201212151018j:plain

Death Cab For Cutie - "The Georgia - EP"

Fana Hues - "Hues"

Helios - "Domiclie"

Kelly Moran & Prurient - "Chain Reaction At Dust - EP"

Laura Groves - "A Private Road - EP"

Osees - "Panther Rotate"

パスピエ - "synonym"

Rosie Carney - "The Bends"

Sigur Rós - "Odin's Raven Magic (with Steindór Andersen, Hilmar Örn Hilmarsson and María Huld Markan Sigfúsdóttir)"

Steve Racy - "The Lo-Fis"