アルバム感想(温)

My Favorite Music

「2021年3月ベストアルバムTOP10」感想

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今月はアバンギャルドな作品、2020年代の新時代を感じさせるようなやつが多かった気がする。可能性を感じてすごくワクワクした。どれも最高で相変わらずランキングの順位迷った、、、

2021年3月のベストアルバムTOP10の感想をランキングで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. Bernice - "Eau De Bonjourno"

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ぶっ飛んでるくらいマジカルなサウンド

 自由なアプローチで音楽の"素敵"をとことん追求したようなエクスペリメンタルポップのやつ。音楽の土台はHiatus KaiyoteMoonchildのような高級感のある大人びたネオソウル・ジャズだと思うのだけど、頭のネジが飛んでるんじゃないかと疑うくらい、マジカルな音が強烈に詰め込まれてて驚愕する...。クラシックジャズ~モダンジャズの音、ジャズフュージョンの音(Infinite Love (M9))、シンセポップ(Empty Cup M6)~ダンスポップの音(Personal Bubble (M7))、さらにはOneohtrix Point NeverとかFloating Pointsみたいな音響芸術の音(We Choose You (M10))...。ネオソウル・ジャズの高級感と前衛的なエレクトロニカのセンスが合わさったような、とても強烈な音楽だと思う。それらのマジカルな音が連続的に発生していくようなすごさがあるし、変拍子チックなテクニックとか、メロディー的にもぶっ飛んでるものがある。まるで現代アートの美術館の中を巡っているような、見たことのない世界に飛び込んでクラクラしそうになるくらいの感覚。そういうセンスを活かして、リスナーに音楽の美しさを激しくぶつけるようなところが本当に素晴らしいなって思う。美しさが次から次へと襲ってくるというか、何度聴いても新しい発見ができるというか、そんな感じだった。

今作が月間ベストアルバム入りを確定させた決定的なトラックは、3曲目のBig Mato (M3)とかかなと思う。エレクトロニカ技術を駆使しながらネオソウル・ジャズ特性の高い歌を繰り広げる感じ。リスナーに素敵なものを与えまくるための気合が強い気がする 笑。たまらなく綺麗だし、自分の中で音楽のワールドが豊かに広がっていくのがよく感じられる。こういう音楽を聴いてる時間って本当に満たされる。全曲好きだけど、これは特に好きな曲だった。

今作は本当にサウンドがすごかったと思う。大人びたポップの曲調なのに、8曲目とか音がいちいちぶっ壊れてる感じでめちゃおもしろい 笑。クラブハウスのようなアンダーグラウンドの世界、鳥が羽ばたくイメージのオープンな世界(It's Me, Robin (M2))、音の組み立てや発想がほんとに素晴らしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Xiu Xiu - "OH NO"

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カオスだから表現できるソウルフルさ

 悲愴を込めた気高きアートロック・アートポップのやつ。鬼気迫るような怖さ・カオスな迫力を多く持ってるはずなのに、聴くのに抵抗がない分かりやすいロック・ポップスに仕上がってる感じ。バチバチに暴れるようなノイズ (Goodbye For Good (M4))、悲鳴のサンプリング(OH NO (M5))、背筋がゾッとするほど衝撃的なホラー的サウンド(It Bothers Me All The Time (M11))...。こうやって文章で書いてたら「いやいや聴きやすいわけないでしょ」ってなっちゃうけど 笑、それらの怖さ・迫力・カオスがアートとして上手に吸収されて、親しみのある音楽として完成されてる。2曲目のI Cannot Resistとかめちゃめちゃそう。通常のロック・ポップスにはゆかりがないような破壊的なサウンドとか不調和な場面を音楽に持ってるけど、ピアノの残響やオペラ特性の歌、曲全体が高貴な音楽として成立してる感じ。4曲目のGoodbye For Goodとかもすごくカオスじみてるけど、憂いに沈んでいるようなブルーな曲調、その中でも力強くあろうとする凛々しさ、あくまでソウルフルで風格のある音楽としてカオスが作用されてる。ほんとにバリバリにカッコいいと思う 笑。去年だとSon Luxとか、アートロック(というか神秘的な音楽は全般)が大好きだけど、Xiu Xiuの今作は、スリリングでホラーな表現をアートとしてよく消化してる感じがすごくよかった。コラボしてるアーティストの充実度も高すぎる。

今作は6, 7, 8曲目の3連続コンボがめちゃくちゃヤバかった。まずは6曲目のRumpus Room、これはドラムが鬼かっこいいやつ。DARKSIDEと同じ感触があるギターのフレーズとかもあって身体がめちゃ反応してしまう 笑。気高くてソウルフルなアートロックとしての作風というよりかは ただただカッコいいオルタナロックって感じだけど、グルーヴがクールすぎてて本当にハイセンスだった。そして7曲目のFuzz Gong Fight、こっちはダークでノイジーな音楽性が魅力的なやつ。アングラなポストパンクの雰囲気だけど、音程がずれた金属打楽器とか、Xiu Xiu持ち前のカオスがプラスされてる。とても痺れる内容の曲になってると思う。そして8曲目のI Dream of Someone Else Entirely。こっちはXiu Xiuらしいアーティスティックな音楽表現を取り入れつつ、前曲とは打って変わったメロディアスなナンバー。ただでさえ心に安らぎが差し込むような巨大な癒しを持ってる曲なのに、コラボアーティストがOwen Pallettっていうのがもうチートすぎて、、、、、。私がマジでマジで大好きなやつ 笑。ストーリー的にもアルバムの見せ場としてセットされてる感じで、感動がむちゃくちゃに大きい。とても短い曲だけど本当に名曲だった。

今作の私的注目ポイントはShearwaterとのコラボだったけど、そっちの曲(It Bothers Me All The Time (M11))はめちゃめちゃカオスで笑っちゃった 笑。迫力たっぷりで本当におもしろい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Mint Julep - "In a Deep and Dreamless Sleep"

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アンビエントっぽくて重たそうで全然重くない(そこがいい!)

 ふわふわでモフモフなサウンドを極めまくってるニューゲイザーのエレポップ。ブレスの長いシンセを多用したシリアスな雰囲気のドローン/アンビエントっぽさが目立つのに、打ち込み系のドラムの生き生きとしたグルーヴとか、AlvvaysやMen I Trustみたいに心躍るドリームポップとか、シリアスなアンビエントとかには絶対ないようなワクワクさがある。バリバリの王道シンセポップで心がときめきまくるBlack Maps (M2)、ニューゲイザーのダイナミックな感動のMirage (M3)、ビートの脈打つエネルギーが強いLure (M4)、さらにはクラブミュージック並みにダンサブルで最高に楽しいLost (M7)...。シンセのサウンド自体はBoards Of Canadaとかみたいに重たい空気を持ってるのに、音楽はものすごくポップに仕上がってる感じ。ふわふわでモフモフで最強にドリーミーなサウンドに重たさを与えつつ、ポップスの音楽性で心のときめきを最大にまで強化させたような音楽性。それらはまるで、雨上がりの虹とか、雪解けとか、色が生まれるような、空気が変わるような、心に深く届くような美しいイメージを私に見せてくれた。もうめちゃめちゃ大好き 笑。AlvvaysやMen I Trustが好きな王道ドリームポップファンにも刺さりそうだし、Julianna BarwickやMary Lattimoreのような聖なるサウンドを好むアンビエントリスナーにも刺さる気がする。心地よくて、幸福度が高くて、本当に素敵な作品だった。

アルバム最後の方のIn the Ocean (M10)とかもとても大好き。ふわふわ、モフモフ、心のときめき、ダンサブルなビート、ダイナミックな感動、重たさのある美しさ、Mint Julepのよさが選り取り見取り揃った目玉トラックな感じ。遠くで鳴り響くようなサウンドがもたらす夢の世界に酔いしれて、それらの素敵なフィーリングをたっぷり味わっていく。めちゃめちゃいい。エレポップな作風とアンビエントな作風のダブルの持ち味がこの1曲でよく表現できてるって思った。

アンビエントっぽくて重たい曲調のはずなのに重くない、今作はそこが魅力的だったと思う。エクスペリメンタル・アンビエント作品で有名なWestern Vinylからのリリースなのがまたすごくいい...笑。Western Vinylってまさかこんな王道インディーポップも扱うんだ、みたいな。"Mint Julep"ってバンド名も大好きだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. For Those I Love - "For Those I Love"

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美しさと興奮が絶頂に達するあの感じ

 センシティブな刺激がヤバいとてもクールなダンストラック。音響エレクトロニカサウンドメイキング、アイルランド訛りのあるラップ調のタフな歌、テクノからフットワークまでダンサブル性を磨いた独自のグルーヴ...。半端いほどカッコよくてゾクゾクがずっと収まらない。ダークなのにセンチメンタルなときめきがあるI Have a Love (M1)、激しいサウンドで理性がぶっ飛びそうになるくらいハイになるTop Scheme (M4)、音楽の興奮をもっともっと高めていくThe Myth / I Don't (M5)。ヒップホップとかEDMの要素もあって、あんまり自分が普段聴かないタイプの音楽要素もあるけど、For Those I Loveの今作にはもうまんまとやられてしまった、、、。本当にベタ惚れするほどカッコイイ。リードトラックのYou Stayed / To Live (M2)とか、会社のお昼休み中に聴いたらあまりによすぎて仕事に集中できなくなっちゃった 笑。遠く奥から静かに鳴り響くようなセンシティブなサウンドとか、息を飲むほど素敵な世界を持ってるのに、踊りまくれるアツいビートが打ち込まれてる感じ。美しさと興奮が絶頂に達して、初めて聴いたときは気絶するかと思った。単調なビートよりも ひねりのあるテクニカルなビートなのが本当にカッコいいと思う。ヘッドホンの音量を上げまくって全身で浴びるように聴きたい。ほんとに最高に大好きな曲だった。

クールな印象から少し転換するアルバム後半パートもめちゃくちゃよかった。The Shape of You (M6)、Birthday / The Pain (M2)とかがそう。気分がるんるんになるようなパーティー風の明るいムードを持ってる曲。音響エレクトロニカサウンドメイキングとか、センシティブな刺激はそのままあって少し特別なダンストラックに仕上がってる。こちらも大音量で聴いてテンションを思いっきり高めたくなる曲。光と闇、表と裏、ダークな曲も明るい曲もどっちも最高だった。

For Those I Love、すごいカッコいいアーティストだなと思った。特に今作は "I have a love" ってフレーズ(テーマ)があるけど、センシティブに攻めたサウンドとか、ジャケットのモノトーンでシックなイメージとか、アーティスト含めてアルバム全体に統一感のあるデザインを持ってたと思う。(それとは別に、アーティストがアイルランド・ダブリン出身というところも好感度が高かった 笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. IAN SWEET - "Show Me How You Disappear"

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不思議ちゃんドリームポップ

 ノイジーサウンドで音楽の快感を最強に強化しまくるようなドリームポップだと思う 笑。浮遊感を意識してる優しいポップの作風なのに、ドリームポップとは全く思えないくらいのギターの轟音とか(My Favorite Cloud (M1), Power (M8))、ハードロックみたいに強いドラムのアタックとか(Sing Till I Cry (M5), Get Better (M7))、優しさに反するような強烈なサウンドがいっぱい。それだけでなく、サイケデリックな感覚をもたらすような催眠的なサウンド感も持ってたり(Sword (M3))。まるで不思議ちゃんみたいに考えてることが読めない異質な音楽に感じるのだけど、めちゃめちゃユニークで最高のキャラだと思う 笑。考えてることが読めないような音楽、例えばDirty ProjectorsとかThe Chapとか、変化球多めのバンドって色々いると思うけど、その中でもIAN SWEETの"不思議ちゃんドリームポップ"ってキャラは特別なよさがあると思う。代表的なのが6曲目のDumb Driverとか。ドリーミーみが濃厚で夢心地の気分になれる音楽なのに、不安感が煽られるような気持ち悪さを同時に含んでる感じ...。わけが分からない、、、ウットリするようなメロディーでありながら、自分の嘆きや悲しみの感情が引き出されるようなニュアンス。まるで気づかないうちに涙がこぼれるような、意識の外側にあるものに身体が反応するような感じ。とても不思議な音楽。そういう不思議さが結果的にドリームポップとしてのドリーミーな感覚をめちゃ高めてる感じがする。クオリティが鬼高くてほんとに素晴らしかった。

今作で1番好きな曲は、Dumb Driver (M6)と僅差でShow Me How You Disappear (M9)かもしれない。鳥肌が立ちまくるような音圧の高いエレクトロニックサウンドがあるナンバーのやつ。もともとIAN SWEETは宅録のベッドルーム系よりも、Sleigh Bellみたいにもっとライブ映えするような大きなステージ感を持ってると思うけど、この9曲目はそういうライブ系の迫力がとても利いてる感じがする。ドリームポップを越えたシューゲイザー的な魅力以上に、アルバムのクライマックスに向かっていくようなダイナミックさもあるし、そこに"Show Me How You Disappear"ってフレーズを合わせたりするのがもう...。ドリーミーな快感にセンチメンタルなエモーションが思い切り影響しまくる。めっちゃ大好きな曲だった。

今作で初めてIAN SWEETを知ったのだけど、過去作もすごいよかった(特に1st)。てっきり宅録ベッドルームポップな感じかと想像してたけど、もともとはロック感が強めのギターポップだったとは全然思ってなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Tune-Yards - "sketchy."

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エキセントリックなハッピー

 Tune-Yards (tUnE-yArDs)のポップは、状態的に言えば~🤪~だと思う 笑。「ジャンル : お笑い」というか、リズム隊が大袈裟でコミカルな動きを持ってたり、常に予想の斜め上をいくハジけ方をしたり、とてもハッピーなキャラクターの音楽の感じ。W H O K I L L (2011)とか、置いてきぼりにされるくらいそれらの楽しいセンスが発揮されてて本当に笑っちゃう 笑。3年前のI can feel you creep...(2018)では、クラブミュージック系のアプローチがあったライブ映えする作品だったと思うけど、今作はTune-Yardsのそのハッピーな音楽性で、よりポップスとしての完成を意識したようなアルバムな気がする。nowhere, man (M1)、make it right. (M2)、hold yourself. (M7)...、ハッピーさが派手に強調されたTune-Yardsらしい曲だけど、どの曲もフックを持っててシングルとしても強い、みたいな。結果的にハピネスがもっと最強になってた 笑。3曲目のhypnotizedとかもうめちゃめちゃに最高...。Tune-Yardsらしいエキセントリックなメロディーで心のときめきすらもを発生させてしまうような曲。最高にハッピーなTune-Yardsのキャラクターがポップ・バラード系の曲の中で活きて、音楽がとてもエモーショナルに発展したようなイメージ。いつもニヤニヤしながら聴いてたTune-Yardsの曲で思わず泣きそうになってしまうとか、私の中でわけの分からないことになってた 笑。コミカルでヘンテコだからこそ、心のときめきももっと特別なものにできたんだと思う。このhypnotizedは特に最高な曲だった。

5曲目のsilence pt. 1 (when we say “we”)も大好き。こちらはエキセントリックなセンスが多めのナンバー。トロピカルでポカポカした雰囲気、儀式みたいに怖い雰囲気、密度が濃い上にフックのあるメロディーも利いてる。本当にすごい楽しい...!!エキセントリックだかこそ実現できるレベルの高い楽しさ。Tune-Yardsのヘンテコ攻撃(大好き)。ベース・グルーヴも一丁前。

あと今作が100点なのは、ラストbe not afraid. (M11)の最後の最後で奇声をあげるところ 笑。この奇声だけでもベストアルバムにしようかなって思うくらい、何度聞いても笑っちゃう 笑。(ちょっと音程下がって終わるところが尚大好き。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. The Antlers - "Green to Gold"

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The Antlersの美しい物語のページを開く

 The Anntlersの音楽はどうしてこんなに泣けるのだろう。前作Familiars (2014)は胸を引きちぎるような強烈な切なさを持っていて、Sigur RósのUntitled ( )みたいに魂を奪われてしまった。そんな尊くて儚いThe Anntlersの今作は、ジャケットのオレンジ色がとても特徴的な『Green to Gold』というアルバム。切なくて心が冷たくなる部分を持っていたFamiliarsの作風とは異なった、ほっこり温まるリラクゼーションが終始維持されてるタイプの作品で、こちらも猛烈に感動的だった。リスナーの純粋な心に触れるように温かい1曲目のStrawflowerから、「大丈夫だよ。こっちへおいで。」と優しく語りかけられるようにしてアルバムの世界に導かれていく。そうして2曲目のWheels Roll Homeに入ると、そこにはThe Antlersの楽しそうな姿があった。Mercury Revの品のある声質と似ている歌の、優しさを込めまくったThe Antlersのメロディー。まるで穏やかな昼下がりにお庭でティーパーティーをするような、そんな幸せを想像する。もう本当に素敵でたまらない。Just One Sec (M5)やIt Is What It Is (M6)に表れてるような、バンジョー・スライドギターのカントリーも本当によく似合ってる。そうやってThe Antlersの美しい物語のページを開いていって、アルバムが象徴する"Green to Gold"の世界を堪能していく...。なんて素晴らしいんだろう。ジャケットのオレンジ色が濃いところが本当に見事だって思った。

3曲目のSolsticeと4曲目のStubborn Manが1番好き。心が温まるリラクゼーションの中に、ロマンチックな愛を持ってる。ムーディーで表面的なよさなんかじゃなくて、もっともっと心の奥に届くもの。素敵なものを抱きしめて、それに対する愛おしさが溢れて、涙が止まらなくなるような、そういう体験。特にStubborn Man (M4)はメロディーの引力、涙を誘う力が半端なさすぎて本当にキツかった。さっき心温まる作風だって言ってたけど↑、この曲に関しては温かさと同時に悲しみも帯びてる。だからこそ深くまで届く、心に沁みて沁みまくる。私の中で思いが止まらなくなってた。ほんとに素晴らしかった。

カントリーもそうだけど、The Antlersはアンビエントの音楽性もとても強いと思う。同じ音を鳴らし続けるようなテクニックとかもそう。 今作の温かい曲調ともすごくよく合ってた。エンディングも軽やかでずっと心癒されてた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Really From - "Really From"

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センセーションを強くする

 ジャズとマスロックで構成されてる新種のポストロックの感じ。インストを主体としたスタンス、手数の多いアンサンブル、音楽がジャズとマスロックの共通項で結ばれてるようなまとまりがあるけど、ジャズともマスロックとも全然違う画期的な新しさがある感じなのが素晴らしいと思う。ジャズの濃厚なムードとマスロックのパリっとしたフレッシュ感、大人びてる上品なキャラと若々しい活発なキャラ......ジャズとマスロックのニュアンスでドラムの微妙な使い分けがあって、シーン転換を色々持ってるようなストーリーの充実もあったり。まるで個性と個性を力強くミックスして、ジャズとマスロックのポテンシャルを同時に拡張してるみたい。別次元の音楽を堪能してる感覚になるくらい、本当にスペシャルな音楽だと思う。アンサンブルのパフォーマンス以上にサウンドの美しさも極められてるし(Apartment Song (M1))、アルバムのハイライトになるような印象的なフレーズがあるリードトラックもめちゃ最強(I Live Here Now (M5))。中でも個人的に大好きすぎてヤバかったのが2曲目のQuirk、マスロックからエモへの発展も見せる私的激アツなトラック。ジャズ、マスロック、エモ、それぞれが持つカラーで音楽を鮮やかに飾って、感情をどんどん揺さぶっていく。心がときめいたり、ときには激しく情熱的になったり、センセーションがすごく強い。ジャズからマスロックまで多様な引き出しを持ってるReally Formだから成せる感じ。本当にすごい作品だと思った。

今作のよさに大きく貢献してるのはやっぱり、全曲を通じてとにかく歌いまくってるトランペットかなって思う。ジャズとしてキャラクターは強く感じるけど、ジャズのクセがあんまりないさっぱりした印象の感じ。ジャズっぽさがないマスロックのフラットなアンサンブル感の影響もあって、トランペットが自由に躍るようにして歌ってるのが本当に嬉しそうに感じられる。CARMみたいにトランペットでガチガチに固めたコンセプトの作風でもない限り、今まで"トランペットを聴く"ということをあんまりしなかったけど、この作品は思いっきり"トランペットを聴く"を楽しんでた。インディー・オルタナばかりしか聴かない私の感受性・価値観を広げてくれたような作品。そういうところも好き。

2020年代の音楽、新しい時代を感じさせてくれる作品と出会うと、可能性をいっぱいに感じでとてもワクワクする。ジャズでもマスロックでもない新しいアンサンブルの景色、Really Formめっちゃかっこよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Sofia Kourtesis - "Fresia Magdalena - EP"

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美しいもの没頭するだけして生きてたい

 ハウスの熱いビートでただひたすら美しいものに集中しまくるようなダンストラック。心臓にまで届くような激しめの撃力を持ってるのに、瑞々しくて透明感のある鍵盤楽器、オルゴール、まるで曲の中に星が散りばめられてるみたいに美しいサウンドで構成されてる。もうめちゃめちゃツボなんだけど...笑。心沁みまくる美しいサウンド達がダンストラックの中で次々に発生するような感じ。まるで無我夢中になってダンスするハウスミュージックのモチベーションやエネルギーが、美しいものに没頭するためだけに利用されてるみたい。ヘッドホンの中で繰り広げられるダンスフロアの中で、水滴が零れ落ちる瞬間とか、夜空の星々を眺めてるようなシーンをたくさん想像していく。こういう優しさいっぱいで成り立ってるクラブミュージックの体験ってほんとに最高だと思う。La Perla (M1)から耳の中で美しさがバチバチに奏でられててヤバい。華のある鍵盤の音色とぱちぱち弾けるビートが楽しそうに会話してる。躍動感の強いフックもあって、心に沁みる美しさがもっと強調されたり。もうこの1曲目から「最高!!最高!!!(机バンバン!!)(号泣)」みたいに興奮してた 笑。2曲目~3曲目もすごくいい。ほんと、ひたすら綺麗な音で埋め尽くされてる感じがあってJon Hopkinsの"Emelard Rush"って言葉を思い出す。サウンド以上にビートにも華があるのもヤバい。私はこの音楽みたいに、ただひたすら美しいものに没頭するだけで生きてたいって思った。そのくらい好き、マジでリピートが止まらない。

1曲目のLa Perlaと同じくらい4曲目のJuntosも大好きだった。ライブみたい臨場感が濃くて、音楽の体験がよりハイなものに用意されてる感じの曲。ハウスミュージックの高い集中力の効果も相まって、ダンスフロアの向こう側にある世界にどんどん導かれていく...。ピアノの音色一つ取っても本当にレベル高いのに、そこにプラスで登場する二胡の破壊力が本当にありえなくて...笑。すごく奇抜な存在感、もう美しさがめちゃめちゃ際立ってる。あまりによすぎて最初聴いたときは泣きそうになってた。今年1月にリリースされたCARMのアルバムとかでも二胡を採用してたと思うけど、Sofia Kourtesisの今作の方がスペイン語を引用した中南米の世界観とかによく似合った感じがしてる。メロディーもめちゃめちゃハイセンス。本当にめっちゃよかった。

Four TetとかDJ Kozeとか、インテリジェンスなカッコよさよりも精神的な安定感とかを意識したクラブミュージックのやつって本当に大好き。今作はそれでいうとほんとベストアルバム(EP)だった。EPってアルバムよりも小型の作品だから、振り返ったときに忘れてしまうことが多々あるのだけど、今作はもう絶対忘れないなって思う。(というか年間ベストEPとかやってみたい。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Floating Points, Pharoah Sanders & The London Symphony Orchestra - "Promises"

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見てはいけないものを見てしまい、神に殺されるような体験

 私がFloating Pointsの音楽にどこまでも虜になるのは、ジャズ・クラシック・電子音楽、それぞれの音楽が持つ繊細さと高級感を異常なまでに高め、音楽に桁違いの美しさを与えるようなところ。メロディーも一つの神経のように扱って、まるでバイオエレクトロニクスのテーマのようなSF的な魅力も感じさせたり。2015年のEleaniaとか、それらの繊細さ・高級感を余すことなく発揮して、真っ白に広がるような空間、静寂、"無" を本当に見事に表現していたと思う。今作Promisesが実現したのは、そのEleaniaのような静寂、無の世界の延長にあるものだと思うのだけど、感想を文章にするのがおこがましいくらい、とてつもないほど凄まじい作品になってた。これまで私が人生で積み重ねてきた思想、感情、想像、自分の全て上回ってしまう果てしなさを持っていた。

9つのパッセージで構成されたMovementのストーリーの中で、自分の持っている想像・発想を何度も破壊するような未知が与えられ、瞑想的な体験を幾度となく繰り返し、音のみで表現される得体の知れない概念と出会っていく。冒頭から全編に亘ってリピートされる波打つフレーズは、まるで暗号のように、メッセージのように、そして呪いのようにしてリスナーを釘づける。一定時間ごとに「よく見ろ」とリスナーに働きかけるようにそのフレーズが作用し、音楽の世界から逃げることが禁止される。そういう風にして強制的に音楽の世界と向き合い、その世界を巡り、時空を超え、たどり着いたMovement 6で、いよいよバケモノと遭遇する。そのとき、見てはいけないものを見てしまった気がした。無の世界の最果てを訪れ、来ては行けない場所に来てしまったような気がした。私はそのバケモノの存在感に圧倒され、それらのエネルギーを喰らい、何か激しく恐ろしい感情に襲われて、気が付けば大量の涙をこぼしていた。信じられないような経験だった。そのバケモノが去った後、私はまた無の世界に取り残された。時間が止まるような、完璧な静寂だった。美しさを越えた何かで心がおかしくなって、理性が壊れそうなほど感動した。そんな状態で、私はラストのMovement 9で力尽きてしまった。降り注ぐ光に撃たれたと思った瞬間、心臓が止まり、地獄に墜ちるように沈んで行ってしまった。あまりにもリアルにでとても恐ろしかった。まるで、この音楽の世界を知ってしまったがために神に殺されるような罰を受けたみたい。そうやって音楽が終わって目が覚めたわけだけど、その後はずっと虚無感に苛まれていた。現実のこと、生きてることが、どうでもよくなってしまうような、自分の中で大好きだったもの、愛していたものが思い出せなくなるような、そんな状態だった。何もできなくなっていた。Floating Pointsが創造したMovement 6のバケモノのこと、それらと出会ってMovement 9で殺されたこと、それらの余韻がずっとずっと残っていた。たった一つの音楽で、どうしてここまで壮絶な体験ができるのだろう。さっき私は、「人生で積み重ねてきた思想、感情、想像を上回る...」とか言ってたけど、この作品に比べたら、私の"積み重ねてきた" ものなんか、ナノメートルサイズの薄さにも満たない。今作はそのくらい大きなスケールの世界を与える音楽だと思う。というか、"世界"という言葉も、私はとても狭い意味でしか理解できてないんだなと分かった。きっと、私は何かを理解したつもりになっていたんだと思う。芸術のこと、喜びのこと、人生のこと。もう全く理解できていなかった。なんか、自分の心の健康の問題とか、将来への不安とか、そういうものがバカみたいに小さいものに思えてしまった。希望も絶望もどちらも感じなくなってしまった。この作品には、そういう影響力があった。先月のCassandra Jenkinsのようなベストアルバムとはまた方向性が違う傑作。あまりにも壮絶すぎて、ベストアルバムに選ぶのも本当に恐れ多いって思ってしまうほどに。

前作Crush (2019)は、2010年代の歴史に残る最最最高のハウス・テクノだったと思う。今作はサックス奏者のPharoah Sandersも合わさった形で、よりフォーマルにオーケストラコラボとしてのアルバム。正直、ここまで来るともうFloating Points (Sam Shepherd)のことを人間として見れなくなる。私の記憶では、確かベートーヴェンは「神はいる。だって人間が音楽を創造できるのだから」みたいなことを言ってた気がするのだけど、それでいうとFloating Pointsの今作は、音楽自体が神であることを象徴したような作品にも思えてしまう。『Promises』というタイトルが、ここに来て本当にやばいものに感じられた。For TetやJon Hopkinsも絶賛なアルバム、「シャッフル機能がオフになってることを確認して(fuck shuffle)」「初めから最後まで全部聴いて」、本当に素晴らしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

★プレイリスト

Apple Music ↓

温の「2021年3月ベストアルバム(温)」をApple Musicで

Sportify ↓

open.spotify.com

 

★その他 とてもよかったもの

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Alice Phoebe Lou - "Glow"

Anna Fox Rochinski - "Cherry"

Arab Strap - "As Days Get Dark"

Do Nothing - "Gluland - EP"

James Levy - "Soldier"

Kings Of Leon - "When You See Yourself"

Lost Girls, Jenny Hval & Håvard Volden - "Menneskekollektivet"

Middle Kids - "Today We're The Greatest"

serpentwithfeet - "DEACON"

Vegyn - "Like A Good Old Friend - EP"

 

 

 

 

 

「2021年2月ベストアルバムTOP10」感想

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今月は神作のラッシュすぎて、、、笑。"2月の作品だけで年間ベストアルバムを選ばなければ死ぬ" という呪いにかかっても全然大丈夫だった。(何が????)

2021年がまだ続くとは思えないくらい、私にとっての名盤が凝縮されたような1ヶ月。毎月ベスト10を選んでるけど、今月は10枚に収めることが無理すぎてた...(TT)。

2021年2月ベストアルバム、超超超最高な作品のTOP10の感想をランキングで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. Puma Blue - "In Praise of Shadows"

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ビタースウィートなイケメン

 Nick HakimRiver Tiberみたいに陶酔が半端ないネオソウル。2018年のMoon Undah Waterのころから才能が本当にやばくて、デビューALがめちゃめちゃ待ち遠しかったアーティストの一人だったけど、やっぱりすごくすごく最高だった。ビタースウィートを極めまくった とことんディープなベッドルームのVelvet Leaves (M3)、ゆらゆら揺れるジャジーなグルーヴでメロメロが止まらなくなるAlready Falling (M5)、そして持ち前のローファイにストリングスをプラスさせてしまうオリジナル性のレベルアップ(Sheets (M6))とか、美しさをさらに最強にしてしまうミニハープの装備(Is It Because (M10))とかまで...。ディープなエクスタシーをもっともっと追求したような最高の傑作、夜の静かな時間に飲むお酒のおつまみにぴったりすぎる...笑。RhyeとかMr Twin Sisterみたいに、シティ属性がめちゃ高いシックでモダンなボーカルを持ってるところが特にヤバいなって思う。Sweet Dreams (M1)、Cherish (Furs) (M2)、アルバム序盤からもう私の中の大好きがヒートアップする。2/5リリースの新譜のよかったランキングで5位にしてたけど...ごめんさい、もうちょっと上でした...笑。

ローファイでチルでジャジーでソウルなPuma Blue。中でも私は、打ち込み系のドラムで仕上げたベッドルームポップ的な部分がでかいなって思う。2曲目のCherish (Furs)とかがそう。作品がすごくコンパクトに感じるような印象になってると思うのだけど、このサイズ感がまたすごくすごくオシャレだなって。プレイリスト等で音楽を持ち歩くようになった今の時代によくマッチしてる。夜の静かな時間に聴くのもぴったりだけど、夜の街を徘徊するときのBGMにもぴったりそう。(最高の気分になれるのがよく想像できる 笑)

そして!Puma BlueがNick HakimやRiver Tiberの他のネオソウルと異なるところは!イケメンだというところ!!(爆)。Oil Slick (M8)のロックみたいなやつも明らかにイケメンだけど、Opiate (M11)とかBath House (M13)とかもイケメンだと思う。華やかなのにサウンドが悲しみの色を帯びてるような、とても綺麗でディープなサウンド。本当にカッコいい。歌がめっちゃ上手なのにギターもこんなに弾きこなして、、、打ち込み系のドラムのグルーヴもやっぱり超クール。めちゃめちゃ惚れる。ギターはソロプレイよりかはバッキングがメインだけど、個人的にはTash Sultanaのギターサウンドより好みだった。

Puma Blueさん、ローファイサウンドの達人なのに、今作はSuper Soft (M14)とかアコースティックスタイルになっても最強だった。もともとの素質が素晴らしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Blanck Mass - "In Ferneaux"

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ノイズハードコアのその先にあるもの

 2017年のWorld Eaterは、オペラの合唱のサンプリングを駆使したり、ハードコアの音楽が所有する痛みの感情を聖なるものとして捉えるような作家性があったと思う。激しいノイズのエネルギーにも神々しい美しさをプラスするようなサウンドメイキング。PharmakonやDeli Girlsとかみたいに、人間の負のエモーションを徹底的に描いたような芸術も素晴らしいと思うけど、個人的にはハードコアの好きな作品ならもうBlank Mass (Fuck Buttons)の右に出るものはありません...笑。心や感情、神秘的なもの、今作のBlanck Massもハードコアの中に聖なる世界をいっぱい持っていて私のツボに刺さりまくってた。Phase Iの序盤からエレクトロニックのバチバチな興奮を駆り立てていく。エネルギーが高密度に凝縮されたような激しさを持ってるのに、心に沁みるような丁寧な輝き。それらのメロディーが分裂し、光線となって二重螺旋のように絡み合うフレーズにはもう完全に心奪れる...。サウンドによるエネルギーの描写が本当にカッコよすぎると思う。そこから心臓に直接届くような灼熱のビートを叩きつけて、命が燃えたぎるような壮絶な刺激を与えていく...。まるで封印を解いて巨大な魔物を召喚するようなとてつもない魔法の瞬間。めちゃめちゃたまらない。アルバムの中にほんの少しでもこういうシーンを用意してくれただけで「ありがとう!!!泣」ってなる 笑。2017年のホステスのときみたいに夜中3時やるスタイルでも全然いいから、もう一回ライブを観たいって思った。

Phase IIも素晴らしい。耳の中が嵐に包まれるような強力なノイズアンビエントがある曲。音楽の物語が進むにつれ、そのノイズアンビエントの先にあるものが見えてくる。それは、Phase Iの序盤から繰り広げていたようなハードコアの世界とは正反対な平穏。過激なノイズをマイナスして、Blanck Massの特別な神々しさをもっともっと引き立てるようなアルバムの演出。1曲目に負けないくらいめちゃ最高だと思う。まるで天候が目まぐるしく変動するような大スケールの世界観。楽曲終盤のピアノのパートとか、私的には戦争が終結するような果てしないストーリーを感じて、もうめちゃめちゃに感動した...。非ハードコアな音楽性にも磨きをかけまくったような傑作。レベルアップしてたなと思う。

ジャケットの稲妻(?)のイメージもよかった。今作はPhase IIとかで、より音響的にもこだわったセンセーショナルさがあったと思うけど、そういう部分とぴったりマッチしてる。(前作みたいに血ついてるジャケとかあんまり好きじゃなかった...笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Smerz - "Believer"

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"Massive Attack女子"

 衝撃的なほどカッコいいダーク・エクスペリメンタルなエレクトロニカのやつ...!身体が麻痺するようなトランス系のハイなサウンド、クラシックバイオリンで引き出す負の感情、Andy Stottのような死の世界、そしてなんといっても "ザ・Massive Attack" な音楽のキャラクター...!自分がめっちゃ大好きな作風のやつだった 笑。タイトルトラックのBeliever (M3)とかほんとにヤバい。まさしくMassive Attack(クワガタ虫)そのままなグラビティの強い暗黒。少しグロテスクで怖いフレーズも持ってるのに、そこに民謡チックなバイオリンの綺麗なイメージを取り入れたり。不穏で不気味な雰囲気なのにとても美しくて、調和が破壊されるような特別な緊張感がある。本当にすごくすごく傑作。"Massive Attack女子"って雰囲気も猛烈にカッコいい 笑。Laurel Haloとかもそうだけど、ダークなのにどこか悲しみの美しい感情を抱えてるようなエレクトロニカってやっぱりめちゃ最高だなと思う。前作Have fun (2018)とか聴いたことなかったけど、Smerzのアルバムめちゃめちゃよかった。

Smerzの今作は、I don't talk about that much (M15)みたいにただ単純にダークな迫力があるだけじゃなく、攻めのスタイルから1歩引いたようなしっとり系の表現力もあるのがいいなって思う。5曲目のRainとかがそう。大枠はグルーヴィーなヒップホップ調の曲なのに、音楽を落ち着かせるようなストリングスの効果で音楽が異様な空気に仕上がってる。本当におもしろい。静と動のエモーショナルな抑揚、2曲目のMax (M2)とかもそうかなと思う。Oneohtrix Point Neverのような音圧の高いサウンドを出したと思えば、それがフワッと消えるような瞬間を大切に扱う感じ。前衛的だけど一貫して聴き心地のよさが保たれてる。そういうところも魅力的だと思った。

Smerz、去年でいうZora Jonesっぽかった。Zora Jonesよりも何倍も聴きやすかったけど 笑。(Zora Jonesの作品に対するコメント

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Cloud Nothings - "The Shadow I Remember"

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Attack On Memoryにかなり近い音(最高だー!笑)

 クラナシは、メロディー感とエモーショナルさでいえばやっぱりAttack On Memory (2012)Here And Nowhere Else (2014)かなと思ってる。ローファイが可愛い初期のTurning On (2010)とかも好きだし、Life Without Sound (2017)やLast Building Burning (2018)も刺さる曲があって好きだけど、私的はそのAttack On MemoryとHere And Nowhere Elseの二強が1番。今作のクラナシは!!そことかなり近い音がしてる!!!熱量の高いロックでありながら、Fall InやStay Useless (Attack On Memory)のときみたいな派手に盛らないプレーンな音作り、そして胸がいっぱいになる愛おしいメロディー...。Open Rain (M6)やAm I Something (M8)みたいな手数の多いハチャメチャなドラムとかもそう。BadcampリリースのThe Black Hole Understands (2020)では通気性の高いフレッシュなバンドサウンドを磨いていたけど、その実験的な経験がここに来て初期の頃の原点回帰に至ったみたいな。結果的にめちゃめちゃ大好きなクラナシになってた!笑。11曲目のThe Room It Wasとか最高すぎる。The Black Hole Understandsで培った切ないフィーリングがよく反映されてる感じ。こんなに激アツなロックなのに、メロディーに心をかき乱されて思わず泣きそうになってしまう。この人のロックは本当にピュアだなと思う。改めてクラナシ大好きだなって思わせてくれるような曲。「すごく最高だー!」って言いたい 笑。

The Room It Was (M11)もそうだけど、ネクストステージ要素でいうとやっぱりピアノ要素がとても大きいよなと思う。リードトラックのNothing Without You (M2)とか、今作最大のハイライトの感じ。結構大胆にピアノが入ってるのに、違和感がなさすぎてめちゃめちゃびっくりする。Macie Stewartのボーカルも本当にクラナシにぴったりハマってる。Psychic TraumaやI'm Not Part Of Me(Here And Nowhere Else)みたいに心が浄化されるようなエモさがあった。やっぱりとても傑作。声を大にして「最高だー!」って言いたい 笑。

私がクラナシに出会ったのは大学1年生の春(2014年)、Attack On Memoryが最初。Stay UselessとかI'm Not Part Of Meをめちゃリピートしてたのだけど、今作のThe Shadow I Rememberを聴いたときは、その頃の感覚にとても近いものがあった。2021年なのに、すごく懐かしい気分を味わったみたいに。...ということはやっぱり傑作であるということ!笑。去年のThe Black Hole Understandsより好きだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Mogwai - "As the Love Continues"

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失神するほどの爆音の演出

 空間が破壊されそうになるくらいアンプから爆音を出して、身体が宙に浮きそうになるくらい大量の音を埋めるライブ。そこには、理性をギリギリ保つか保たないかみたいな危ないところまでランナーズハイ的になるエクスタシーとか、自らに強烈なダメージを与えて実現するハードコアの瞑想みたいなところがあると思う 笑。The Armedなど、そのエクスタシーを強く求めるあまり失神しそうになるほど爆音を鳴らしたり、そういうポストロック・ハードコアってやっぱり本当に圧倒的...。でもMogwaiの今作みたいな爆音は、鼓膜へのダメージはあったとしても、The Armedとかみたいに耳に圧をかけるような窮屈な轟音とは違って、天にまで手が届くような美しいアップライズがあると思う。これが壮絶に綺麗でたまらない...。エレクトロニックな音の拡張(Ritchie Sacramento (M4))、プラネタリウム的音響(Dry Fantasy (M3), Fuck Off Money (M6))、さらにはストリングスを取り入れたオーケストラのステージ感(Flit (M8))...。ただガムシャラに爆音を発動させるのではなく、M83のようなニューゲイザー的演出があって、音楽一つ一つに感動のストーリーを持たせてるみたい。理性を失いそうになるくらいの激しい爆音が、その熱が、それらの感動をこれ以上ないくらい巨大に倍増させるという...。もうよすぎて泣きそうになる、、、笑。1曲目のTo the Bin My Friend,...からそう。「ようこそ、爆音の世界へ!(ドカーン!!)」みたいにスタートして、一気に持っていかれて、そこからストレートにカッコいいRide的シューゲイザーのパフォーマンスを繰り広げまくったり、フィナーレレベルの超大作ソングを連発したり...。もうたまらなくシビれる。臨場感が強いから尚更やばかった。

クールな印象とは打って変わってピュアなワクワク感があるSupposedly, We Were Nightmares (M10)とかも本当に大好きなのだけど、1番ツボったのは5曲目のDrive the Nailかなと思う。Mogwaiはベースも魅力的だけど、この曲に関してはドラムがすごく大活躍してる。曲の盛り上がりパートにおけるギターのダウンストロークとドラムのパンチのコンビネーション。リズム隊というバッキングの扱いではなく、完全にドラムの見せ場として用意されてる感じ、特別なパフォーマンス感があってすごくカッコいいなと思う。(というかほんと、全曲が最高のパフォーマンスだった)

ライブがよくイメージできる今作の臨場感は鳥肌がやばかった...。「いつかまたライブが観たい!」という希望を与えてくれる作品だったなと思う。なにより"ロック"がとっても輝いてた(≪大好き≫)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Katy Kirby - "Cool Dry Place"

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毎日のことを大切に思う

 Katy Kirbyの今作の大好きで大好きでたまらないところは、特別なことが起きないようなノーマルの日常ベースで音楽の物語が描かれているところ。それでありながら、それらのノーマルな日常のことを愛おしく大切に思うような観点を常に持っているところ。Juniper (M2)みたいにほっこり落ち着いてるムードの中で穏やかに踊ったり、Traffic! (M4)みたいに退屈な日々の中でもドラマを見出すようにして楽しんだり、Portals (M7)みたいに寂しい気持ちもロマンチックに消化してじっくり味わったり。休日の朝のコーヒータイムとか、お散歩の時間みたいにまったりしたリズム進行なのだけど、それらの一つ一つが多幸感に包まれるように満たされてる。それはまるで、ありきたりで一定の毎日の中にも感情を揺さぶるような刺激を生み出す魔法、人生のどの瞬間も肯定的に捉えるようなこれ以上ない幸せ。もうあまりにも大好きすぎてる。今日も明日も明後日も、これからの人生の全ての時間を大好きにさせてくれるような作品。感傷的なよさをたっぷり持ってる作品だと思うけど、去年のLomeldaとかよりも感傷レベルがキツすぎないバランスだから連続して聴いても全然大丈夫 笑。そういうところでもリピート性が高くて、確実に確実にベストアルバムだった。

余すことなく全曲好きだけど、1番好きかなと思うのが6曲目のSecret Language。ほっこり落ち着いてるムードの日常的音楽から、思い切りドラマチックにジャンプするような展開を持ってるナンバー。人生の日々を愛おしく大切に思うような今作のテーマをよりダイナミックに描いてる感じ。感動がとてつもなくてやばい。Juniper (M2)とかTraffic! (M4)とかのリードトラックのエモーションを積み重ねてくる流れになってたから、もう問答無用に号泣してしまう。短い曲だけど、この曲だけでもリピートしまくりたくなる。本当に素敵な歌。その後に来るCool Dry Placeもメロディーが完成されててやばかった。ラストスパートまでずっとずっと最高。めちゃめちゃ名盤だと思う。

自分の人生を退屈に思うことがたまにある。生きてることに満足感を得られなくて心が死んでしまうことがたまにある。それでも、Katy Kirbyのこの音楽みたいに、絶えず流れる日々のことをできればずっと愛おしく感じていたい。表面的でも別にいいから、ワクワクしたり、心をときめかしたり、いっぱい泣いたり笑ったり、人生のどの瞬間も大切に感じていたい。そういうことを実現してくれたKaty Kirbyは、私の永遠の憧れかなと思う。映画でいうところのアメリとかの感じ。ありきたりな毎日も特別になるような魔法。本当によすぎてびっくりした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Black Country, New Road - "For the First Time"

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奇跡のカオス

 バンドによる音楽の魅力は、メンバー達がオンタイムで同一の時間を共有し、それぞれが一体となって一つのアートを作るというところにあると思う。メロディーが感情を形取り、それらが伝達し合うネットワークが生まれ、その中で共鳴・増幅を起こし、一人では絶対に辿り着くことができない領域に至っていく...。私がBlack Country, New Roadのことが大好きで大好きでたまらないのは、そういったバンド演奏の特別感・バンド演奏の喜びがもう目一杯堪能できるところ!サックス、ストリングス、鍵盤...、フリーセッションスキルだけでなく不協和音など変則的な表現も体得した熟練のアンサンブル。Instrumental (M1)やOpus (M6)の呪文を唱えるような旋律、Athens, France (M2)の温かい光、Science Fair (M3)の衝撃的な恐ろしさ、そしてSunglasses (M4)のソウルフルな幸福...。それぞれのパートが交錯しながらメロディーが美しい反応を見せていく。エモーションのダイナミクスがより多様で、より多彩で、音楽性のバリエーションも豊かで、展開も本当におもしろくて...そして何よりめちゃめちゃカオス!笑。まるで神々しさを放つような未知の魔法性を秘めてるところもあったり。そういうスキルフルなアンサンブルを仲良し感MAXな若者7人が無限に楽しそうに演奏してしまうという...もう本当に泣けてくる、、、笑。素敵だし天才的だしカッコいいしで魅力が止まらない。技術を結集したアートとしてはもちろん、仲良し感が出てるバンドの人間味としても憧れを感じる一面がある。フロントマンIsaac Woodによる歌要素のバケモノ感もやばい(←ウルトラスーパー褒めてる)。ほんと、素晴らしいメンツだった。

Black Country, New Roadは洋楽ファンを虜にする特徴をいくつも持っていたと思う。Shellacのような古きよきロックのスタンス、black midiやBattlesのようなエキセントリックな刺激、90sポストロックのようなダークネス、GY!BEのようなスケールの大きい気迫、そして大まかな構成の中で各パートが自由にやり取りするようなジャズ的なお楽しみまで...。アルバムを通して聴いていくと色んなよさが見えてきて、色んな作品を連想して、結果的に色んな音楽の"好き"が再発していく。そしてそれらの音楽をまた聴き返して、またBC,NRに戻ってきて...。個人的には、ベース担当のTyler HydeUnderworldHydeの娘さんだというのを知ってからUnderworldばかり聴いてる 笑(そっち??笑)。ほんと、洋楽ファンの色んな"好き"にコネクトするような珠玉の作品だと思った。Bandcampのライブもめちゃ楽しかった。

私は高校の頃は弦楽部(ヴァイオリン・ビオラ・チェロ・コントラバスの編成で演奏する部活)に所属していたのだけど、そこには学校屈指の音楽のスペシャリストが集結していた。重度のクラシックオタク、作曲・編曲をこなすような音楽マニア、触ったことない楽器も数十分でマスターしてしまうようなテクニシャン、そしてどんなメロディーも一瞬でコピーしてしまうような天才中の天才...。彼らは楽器があればどこでも自由にセッションしてしまうような才能を持っていて、本当にいつも楽しそうで素敵だった。(私も鍛えられた)。BC.NRは、そんな音楽マニアによる素敵なセッションで終始成り立ってるような感じがする。あぁ...羨ましい。。。まるでとても運命的な出会いを果たした選ばれしグループみたい。そういうところも込み込みで本当に大好きだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. The Weather Station - "Ignorance"

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私を世界最高に幸せにするメロディー

 映画のような心に残るシーンをいくつも持ってるSharon Van Ettenの超絶名作Are We There (2014)と同じタイプのインディーフォーク。ウィスパーボイスやファルセットが特徴的な歌、そしてオーケストレーションやピアノをメインにした編成、ステータスで表すのなら、不純物0、天然成分100、透明感100、浸透性100、それらのエレガントでメロウな優しさ999,999,999...みたいな感じかなと思う 笑。そんな風なめちゃめちゃ高尚な音楽性でもう十分最高なのに、上品なアレンジでポピュラーソングを大人風にモデルチェンジしてみせたり(Tried to Tell You (M3), Separated (M6))、音楽にストーリー・ドラマを存分に与えて楽曲の密度や作品のインパクトを高めたり(Robber (M1), Wear (M7))...、もうやってることがとにかく全部本当に素晴らしぎてる、、、笑。それはまるで、音楽から得られる美しさやロマンスなど、私達が愛してるそれらの喜びを、もっと愛おしくかけがえのないものにグレードアップさせるような最強のテクニック。エレガントでメロウで超ハイレベルに美しい音楽なのに、それらの音楽体験をもっと特別なものに仕上げるとか...泣。Sufjan Stevensとかのインディーフォークもそうだけど、そういう音楽鑑賞の特別な工夫を意識してるアーティストのことが1番好き。前評判が高すぎて作品鑑賞前から身構えてしまっていたけど、それらのハードルも吹っ飛ぶくらいの傑作。すごくすごく素晴らしかった。

モダンジャズ系の豊かなサックス、シャイニーなピアノ、ふわふわのクラリネット、そしてエクスタシーがやばすぎるファルセット...、サウンド1つ1つがとにかく素晴らしいなって思う。まるで風に乗って飛んでいくような美しい開放感を持ってる感じ。本当に本当に癒し的で、メロディーが心に届くだけで簡単に泣いてしまう。それって本当にすさまじいことだと思う。全体を通じてすごく大人びてる作風だけど、音楽を暗くしすぎないダンサブルなドラムワークとかもすごく最高。音楽を優しくライトアップしててたまらない、オルタネイティブロックっぽいニュアンスもやっぱりとてもツボった。

今作で1番感動しすぎて死にそうになったのが、10曲目のSubdivisions。今作の上品で高尚なフォークの作風の中でも、祈りや願い、それらの聖なる感情がもっともっと強く込められてるようなナンバー。The Weather Stationのエレガントでメロウな至高の音楽が、迷いや不安、精神的な苦悩を解放するために思い切り作用するようなところがあって、目ん玉の神経がイカれるくらい泣いてしまう。本当にありえない。それはまるで、自分自身が感じている罪だとか、自分に自信を持てないところとか、そういうものが全て許される瞬間を味わうみたい。ピアノの輝き、ファルセットのエクスタシー、このメロディーで私は世界最高に幸せになれる。ものすっっっごく名曲。音楽の高らかなエモーションをさらに倍加させるような歌詞もやばすぎてた。

Fleet foxes、Feist、War On The Drugみたいなのカントリー・フォーク要素、それプラスでバロックポップ、ジャズの雰囲気とかも。The Weather Stationの今作は本当に猛烈に大好きだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Julien Baker - "Little Oblivions"

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生命力を与える音楽の光

 Julien Bakerといえば、暗闇の世界に光を灯すようにして、音楽に込めた思いを力いっぱい咲き誇らせるようなアーティスト。その光は儚くて、エモーショナルで、とても生命力に満ちてると思う。エレキギターの弾き語りスタイルでも100点満点に素晴らしいのに、今作Little Oblivionは充実感の半端ないバンドの形態...。光属性の性質をそのまま、もっとロックに、もっとパワフルに、もっとカッコよくなっててもう。。。笑。マジでめちゃめちゃ大好き。シューゲイザーな轟音があるHardline (M1)、心が躍るような最高のグルーヴのBloodshot (M6)、ライブ映えがヤバそうなRepeat (M10)...。スケールが大きくてワクワクが止まらないような作風だし、暗闇の中で光を灯すような歌やギターのそのメロディーを、もっともっと力強く掲げてる感じが本当にグッとくる。その力強さはまるで、傷ついた状態から立ち上がって希望を噛みしめるような精神的な強さ。このアルバムを聴くだけで、それらの正のエネルギーを満タンにチャージできる。バンドになったことでThe NationalやLocal Nativesのような自然派ロックの音像を持ち始めてきたところもツボすぎた。先行曲を一切聞かず、リリースの日までめっちゃドキドキしながらスタンバってたけど、期待を全く裏切らない最高の作品。本当によかった。

バンド形態が特徴的だったJulien Bakerの今作、Song in E (M)のようなバラードも神だった。バッキングにピアノを採用した従来の弾き語りスタイル。アルバムがワクワク感の強いポジティブな作風なのも相まって、音楽の光が自分に生命力を与えるように作用するのが本当にやばい。自分の心にダイレクトに響きまくるようなその光を感じてたまらない気持ちになる。ライブだと一体どうなってしまうんだろう。想像しただけで泣きそうになってしまった。

私の数少ない自慢の一つに、「Julien Bakerと同い年」というのがある 笑。こんなスーパー最高なSSWと同い年とか、もうなんか光栄すぎてすごく元気が出てくる。注文したレコードが届いてテンションが爆上がりになってた 笑。(いっぱい聴きますね。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Cassandra Jenkins - "An Overview on Phenomenal Nature"

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「目を閉じて。3つ数えるね。深呼吸して...」

 心や感情のことを深く愛してる。怒りや憎しみ、希望や愛とかも、自分が持っている "感覚"のことを深く深く愛している。なぜならば、それは自分が生きていることを確立してくれるもので、私自身そのものでもあるから。ものに手を触れると、その"もの"は私に触覚の反応を返してくれる。目には光が、耳からは様々なlifeが、私に生きてることのリアリティをくれる。自分の存在が理解不可能な漠然とした何かに承認されるような、これ以上ないほどの絶対的な安心感。それは、私が思う喜びや幸せの本質な部分、自己肯定感の究極的なものだと思う。Cassandra Jenkinsの今作は、音楽のイマジネーションの世界の中で、私が愛しているその"感覚"を、それらの究極的な喜びを私にたくさんくれた。音楽性のキャラクターは例えるなら、「Destroyer + Sandro Perri (In Another Life)」みたいな状態に映画音楽系の充実性も取り入れたような感じ。音のテクスチャはとてもクリアで、メロディーはとてもメロウで、それでありがら和やかな表情を持っていて、ピュアで、とてもとてもあったかくて。インストゥルメンタル形式の環境音楽的アプローチ、オーケストレーションからエレクトロニカまで自在な引き出し、音楽の豊かさを最大限まで引き出すような表現力も神がかってたり。それらの音楽性は総合的に、私が最も親しみを感じる自然的なイメージとなって表れた。澄み渡った空のイメージ、流れ渡る風のイメージ、広大で力強い大地のイメージ、そして温もりを感じる日の光のイメージ...。風、空気、匂い、体温、ジャケットの神秘的なPurple Noonの瞬間の世界観ももちろんプラスで、それらのイメージが一つになって、私に"感覚"をくれた。もう3曲目のHard Driveでボロボロになるまで泣いた。涙が本当に止まらなくなってた。メロディーが遠くに伸びていくのに、リスナーの傍に寄り添ってくれるような距離の近さも感じさせる超絶的なニュアンス。「目を閉じて。3つ数えるね。深呼吸して...」「one, two, theree...」...もう頭がおかしくなるくらい美しい。"The mind is just hard drive."、センスがあまりにも、あまりにも神すぎてる。本当に死ぬほど尊い。この曲を聴いてずっとずっと泣いてしまったのだけど、私の心は気づかないうちに疲弊していたのかもしれない。人との出会いが制限されるような状況の中で、無意識に無理をして、知らぬ間にストレスをため込んでいたのかもしれない。この作品を鑑賞して、正直な自分と向き合った。溜め込んでいた苦しみが一気に消し飛ぶような、圧倒的な幸せを得た。『心に沁みる』、これに尽きるかなと思う。死ぬほどツボにハマる作品。外に出ることが十分にできていなかった昨今、外の世界の感覚をリアルに見せてくれた部分がめちゃめちゃ大きかったなって思う。死んだ心を蘇らせるような作品、Cassandra Jenkins本当にありがとう。

今月はThe Weather StationやKaty Kirby、私にとっての年間ベスト1位クラスの作品が何枚もリリースされててめちゃめちゃヤバかったけど、Cassandra Jenkinsの今作はそれらを包含してしまった...笑。これはちょっとやばすぎる。1曲目のMichelangeloとかそう。声質の柔らかいメロウな歌、日常に浸透していくような愛おしいビジョン...。The Weather Stationのよさ、Katy Kirbyのよさ、それぞれが持っていたよさをこの1曲目だけでゲットできてしまうなんて...笑。夕日の景観が目に映るような、ロマンチックでドラマチックなフィーリングをいっぱい堪能できて、この1曲目だけでも素晴らしかった。

5曲目のAmbiguous Norway (M5)とかも本当に本当に素晴らしい。感情に直接作用する音楽のエネルギーをより神秘的に魔法的にデザインしたような曲。Hard Driveとかそれまでの曲で感じていたアルバムの世界観・イメージに対する愛がもっともっと確固たるものにレベルアップする。Destroyer + Sandro Perriな究極的にメロウな音楽性、日常を飾る人生のサントラ的音楽性、それらにもっと神秘的に魔法的に印象付けるとか...、もう本当に好きすぎて失神しそうになる。とてつもなく素晴らしい。この世界で私が愛してるありとあらゆるものが詰め込まれてるような感じ。どう考えてもベストアルバムにならないわけがなかった。

ラストのThe Ramble (M7)も最最最高。ヘブンリーな余韻をこれでもかと言うくらいリスナーに届けてくれるフィナーレ。Hard DriveやAmbiguous Norwayで目ん玉がギタギタになっている状態で、さらにワンランク上の癒しを受け取るという。鳥達と一緒に空を飛行するサックスのメロディーが神々しく輝いてる。ほんと、Cassandra Jenkinsどこまでも素晴らしかった。

音楽が好き、というかは芸術が好き。というか、何かを鑑賞することが好き。それはすなわち、この世のありとあらゆるものに価値を見出そうとすること、人生を最高に楽しもうとすること。人間の持つ感覚は、そういった行為の原点にあたるものだと思う。私が心から憧れてるそれを、愛して止まないその感覚を、そのマインドを、Cassandra Jenkinsは「just hard drive」と呼ぶ。そう、それはただのハードドライブ...。そんな"ただのハードドライブ"のことを、私は死ぬほど愛してる。死ぬまで一生愛してる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

プレイリスト

Apple Music ↓

温の「2021年2月ベストアルバム(温)」をApple Musicで

Sportify ↓

open.spotify.com

 

 

 

その他とてもよかったもの

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Balthazar - "Sand"

Camera - "Prosthuman"

Claud - "Super Monster"

Django Django - "Glowing in the Dark"

King Gizzard & The Lizard Wizard - "L.W."

Lost Horizons - "In Quiet Moment"

Miss Grit - "Imposter - EP"

Mouse On Mars - "AAI"

Roosevelt - "Polydans"

SG Lewis - "times"

Tala Vala - "Modern Hysteric"

TV Priest - "Uppers"

 

 

「2021年1月ベストアルバムTOP10」感想

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今月はインディーロック・ポストパンクの充実度がすごかったと思う 笑。ほんとに豊作すぎてランキング作るのめちゃ迷った、未だに1を位決められてない。(TOP10の内、上位4つがもう全部1位)

2021年1月リリースの作品のベストTOP10の感想をランキングで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. CARM - "CARM"

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Sufjan StevensとBon Iverのジャンクション

 サックスならColin StetsonJenny HollingworthクラリネットならAnna Meredith、Emily Cross、管楽器奏者で大好きなアーティスト、CARMのトランペットのキャラクターもめちゃいいなと思った。透明感のある清純派ポストクラシカル(Soft Night (M2))、ワイルドな雰囲気が漂うウエスタン音楽(Nowhere (M3))、そしてYo La Tengoを採用したStereolab的90sエクスペリメンタルポップ(Already Gone (M4))、さらにはガノン戦BGMみたいな神々しい恐ろしさがあるエレクトロニカ(After Hours (M5))笑...。環境音楽のような伴奏系のアプローチから、主旋律を奏でるメインパートまで、温かいメロディーもクールなメロディーもトランペットで縦横無尽に歌いまくってる。トランペットっていう共通項はあるけど、全体で見るとかなり異質なコンピになってる感じなのもユニークで楽しい。個人的には、透き通っている綺麗な音色からバチバチにかっこいいフレーズまで、アルバムの中で表情が異なるギャップをいくつも持ってるようスキルフルなところがとてもよかったなと思う。

今作がマジでヤバいなと思ったところは、Sufjan StevensとBon IverがCARMを通じて一つのアルバムに集結しているというところ...!!笑。私はSigur RósとかSufjan StevenやBon Iverのようなアーティストが1番大好きなのだけど、私にとってその内の神のアーティスト2人、今まで共演することのなかったようなスフィアンとバーノン氏が、冒頭とラストにそれぞれガッツリ入ってる。この存在がかなり大きい!笑。センセーショナルな美しさ、心満たされまくるハーモニー、Song of Trouble (feat. Sufjan Stevens)もLand (feat. Justin Vernon)も尋常じゃないくらい大好き。この2曲が聴けるってだけでもう「CARM最高です!!泣」ってなる 笑。ほんと、ありがとうございます<(_ _)>

私オーケストラやってたのだけど、トランペットって小さい音量で吹くの難しいよって友達が言ってた。それでいうとCARMのトランペットって優しい音色・ダイナミクスが本当に丁寧。トランペットの友達に聞かせてみたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. The Notwost - "Vertigo Days"

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安心感のあるベテランバンドの名曲

 ダーク&ミステリアスな催眠性を常に所持しているようなオルタナティブロックの作品。The Flaming Lipsのエクスペリメンタル(e.g. The Terror)のような不可解な部分が多いのだけど、グルーヴィーで楽しいロックだったり、安心感の強いインディーフォークだったり、ベテランバンドの風格がめちゃ出てるような良作だった。代表的なところだと、2曲目のInto Love / Starsから4曲目のWhere You Find Meまでの流れとか。ジャケットみたいに ぼんやり輝くサウンドにうっとり魅了されてたら、突然音楽がめちゃ動き出して置いてけぼりになりそうになったり。サイケデリアな快感とアップテンポのドキドキが入り混じるような格別の味わい。そのままリードトラックのExit Strategy To Myself (M3)に突入して、本格的にロックへ変化していく。最高にグルーヴィーだし、ニューゲイザー・ポストロックのようなダーク&ミステリアスのオーラを放ってて抜群にカッコいい。そこからさらにWhere You Find Me (M4)の優しくハッピーな曲がやってきて、リスナーの信頼を取り戻していく 笑。心満たされるようなバラードで、The Notwist特有の催眠的でエクスペリメンタルな音楽性が可愛らしく表現されてる感じ。この2曲目から4曲目までの流れが本当におもしろくてすごく大好きだった。その後のShipも謎の日本語パートがあって楽しかった 笑。

今作は先行曲のSans Soleil (M10)もとてもよかった。今作で1番安心感の強いナンバーな感じ、フルートの可憐なサウンドがポツポツと音を立てる描写がとても愛おしいし、心を解放するような聖なるフィーリングも素晴らしい。もともとThe Notwistってエクスペリメンタルみが強いバンドかと思うけど、この曲はとても分かりやすい最高さがあると思う。ベテランバンドの間違いない名曲。流石のよさだった。

他にも、ドラムがバチバチに活躍してるタイプのロックのAl Sur (M13)とかもよかった。こちらはどことなくDeradoorianみたいなマジカルで謎めいたサウンドがめっちゃふわふわしてる 笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Goat Girl - "On All Fours"

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魔女感が出てきた

 魅惑的な音を奏でまくるゆったり系のポストパンク。前作ST (2018)のノイジーでギラギラしていたロックよりもずっと のんびりしてて、スペーシーで少し不気味なニューウェーブ・シンセポップのアプローチが多用されてる感じ。メロディーに不思議な魔力が込められてるみたいなロックに仕上がっててこっちの作品もすごくよかった。例えば3曲目のJazz (In the Supermarket)、脳内を直接刺激するようなゆらゆらのシンセサウンドとかとてもマジカルなやつ。後半のギターロックのパートもワルツのまろやかなグルーヴが利いてて洗脳されそうになる魅力があったり。穏やかな曲調の中で実はアツさを持ってるようなOnce Again (M4)とかもマジカルなエネルギーが高くてすごく最高だった。どの曲もジャケットに表れてるようなハロウィン系の世界観とよくマッチしてる。シンプルなロックで勝負しても全然負けないP.T.S.Tea I (M5)とかThe Crack (M7)とかもめちゃよかった。

今作は、8曲目Closing Inからの後半パートが本当に素晴らしかったと思う。シンセポップのハッピーな表情が強くなったり、メロディーの魔力も浸透性を高めたり、彼女達が求めてる音楽の楽園にどんどん接近していくみたいなのを感じる。私的には特に、極上のゆったりメロディーが炸裂してるAnxiety Feels (M9)とか本当に大好きすぎる。Goat Girlが持ってるサウスロンドンのホットなインディーズロックってイメージとはまた違う雰囲気があるバラード。魅惑的で濃厚だったそれまでの音楽よりもすっきりした心地よさが本当にたまらない。また逆に、濃厚で凄まじい輝き方をするシンセサウンドを強化させまくったようなWhere Do We Go? (M12)とかも大好き。ハロウィンみたいな世界観のジャケット然り、今作は全体的に魔女感がよく出てる作品だと思ったけど、このWhere Do We Go?のシンセの輝き方が1番魔女感あった気がする 笑。

初めてジャケを見たときから、「今作のハロウィン感やばいな」ってずっと思ってた 笑。実際、Goat Girlってキッズのホラーコミックの影響をよく受けてるんだね(知らなかった)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Subsonic Eye - "Nation of Things"

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サラダ食べてるみたい

 シャキシャキしててヘルシーなインディーロック。Camp Cope、Pinegrove、またはHomecomings、心に沁みる効果が強いクリーントーンのギターが特徴的なやつ。それらのバンド同様にセンチメンタルな愛おしいロックを奏でてて大好きが確定してた。中でもSubsonic Eyeのギターのシャキシャキ感のよさはトップクラスだと思う 笑。Cabin Fever (M2)とかAniminimism (M4)とか、和音を奏でたときに丁度いいざらつき感・ノイズのフレッシュな余韻を残す感じ。ほんのちょっぴりドリーミーで、どことなくローファイっぽくて、それでも唯一無二の新しい音がしてる。Further (M5)などの勢いの強いロックだとより尚歯切れがよかったり。まるでサラダ食べてるみたいに健康的なシャキシャキ感ですごく美味しかった 笑。

曲でいうと3曲目のFruitcakeとか本当にヤバい。Subsonic Eyeの最高にヘルシーなサウンドをいっぱい魅せつつ、突き抜けるように気持ちいいスピード感がある。空気の美味しい山道を窓を開けてドライブしてるときのようなフィーリング。開放的だし、ボーカルもめちゃかっこよくて最高にノリノリになれる。めちゃ名曲だと思う。

社会問題、精神的な病み、ロックってもともとは何かに対しての強い反抗心から生まれたものだと思う。そこからサウンドメイキングがより多様になって、エレクトロニックの自由度も発達して、オルタナティブロックという概念が根付いて。でもSubsonic Eyeのロックって本当にさっぱりしてて、エスケイピズムが強かったりということもあんまり感じず、シャキシャキしたギターの健康的なサウンドで溢れてる。もうロックが本質的に持ってた社会的な態度とか何だっけ?ってなるくらい 笑。アジアのバンドは引き出しが全然ないので、大好きなやつ新しく知れてよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Midnight Sister - "Painting the Roses"

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~ご機嫌まろやか月曜日~

 70年代のグラムロックバロックポップの世界で完璧に固められたようなジャンル物の作品。当時のディスコルーム・ダンスパーティーにリスナーをワープさせるようなトリップ度が本当に高くて、Aldous HardingやWeyes Bloodに通じるようなクラシカルで大人の気品のよさが最強に表れてる。そこには、何十年も昔のディズニー映画を鑑賞してるときのような懐かしさたっぷりの感覚とか、それらの特殊なときめきなどもあったり。Foxes (M3)、Escalators (M5)、My Elevator Song (M8)...。1曲1曲の中に古き良き時代の風情が保存されてて、胸がいっぱいになるようなドラマとロマンスを堪能できる。サイケデリック、ローファイ、オーケストレーションサウンド一つ一つが本当にレトロチック。こだわりぬかれてる世界観ですごく完成されてた。

今作は全体的にめちゃいい曲ばかりだったけど、1番やばいなって思ったのは9曲目のWednesday Baby。メリーメローマンデー(ご機嫌まろやか月曜日 笑)とか、フリーフィーリーフライデー(自由で気持ちいい金曜日)とか、言葉遊びを入れながら毎日のことを愛おしく綴ってるナンバー。胸がいっぱいになるようなドラマとロマンスで溢れてる今作の中でも、心が1番最強の満たされ方をする曲だと思う。ほんと、バロックポップならではの軽やかで親しみやすいフィーリングが最大に表れてる。MVに流れてるゆったりとしたリズムも大好き。この曲は本当に傑作だなと思った。

Midnight Sister、8曲目のMy Elevator Songも大好きだったな...。白黒のクラシック映画をそのまま音楽化したようなやつ。背筋が凍る本気のホラーとか、クラリネットの能天気なムードとか、1曲の中に色々なシーンを含んでる感じ。ストーリーすごく豊かだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Pom Poko - "Cheater"

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一見するとふざけてるけど、実はとても健全

 トリッキーでぶっ飛んでるみたいなガレージロック・マスロックのめちゃくちゃ楽しいやつ 笑。サウンド自体はチープでコンパクトなサイズに収まってるけど、そこから巨大化してド派手に散ったり、急に感情を爆発させたり、または唐突にセンチメンタルで癒し的なフレーズを差し込んだり...。情緒不安定でハラハラが止まらないような最高のおもしろさがある作品だと思う。ハチャメチャな部分が多すぎて身体がバラバラになるようなエモさがあるCheater (M1)、一転してセンチメンタルさを醸し出してわけも分からず涙が誘われてしまうAndrew (M3)...。モチベーションの高いロックなのに、ゆるキャラみたいに愛らしい側面も持っていて感情が揺さぶられまくる。Danger Baby (M5)とか胸キュンがバーストするようなめちゃくちゃチャーミングなメロディーもあったり。ボーカルのキャラのJoanna Newsom特性が高いのだけど、見方次第では「Joanna Newsomがぶっ飛んでるロックやる」みたいにも捉えられるから本当に楽しい 笑。去年のMamalarkyにも通じるようなハピネスが強くてとてもツボだった。

今作で素晴らしいと思ったところは、「一見するとめちゃふざけてるけど、自分の幸せには正直で、ピュアで、実はとても健全」みたいな態度を音楽から感じるところ 笑。My Candidacy (M4)とかBaroque Denial (M8)とか、ギターがギュイーンギュイーンって飛び回ったり、無秩序で騒々しい部分が目立つけど、全体的に見るとやっぱりロックの芯をバンドとしてしっかり持っていて、音楽自体はとても丁寧に響いてると思う。Baroque Denial (M8)とかまさにそんな感じ、ぶっ飛んでるロックと癒し的なフレーズ、Pom Pokoという1つのキャラクターとして成り立ってる統一性が感じられる。そういう風な音楽の聴きやさとかも最大の魅力だったと思う。

今作はどちらかといえばジャケットが好きではなく、メディアに取りあげられる前は完全にスルーしてたけど、内容はもうそれはそれはよかった...。ハチャメチャで無器用だからこそ表現される絶大なピュアネス。こういうバンド本当に大好き。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Arlo Parks - "Collapsed in Sunbeams"

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「誰にでも傷はある。辛いのは分かるよ。」

 ナイトカフェで流れるようなしっとり系のネオソウル。レゲエやジャズの音楽性をキラキラのシティポップ風に、またはIn Rainbowsのオルタネイティブロック(Caroline (M5)、Eugene (M10))みたいにアレンジしてて、スムースリーで最高に素敵な作品に仕上がってた。Black Dog (M6)、Green Eyes (M7)、Bluish (M11)...、人肌恋しさが掻き立てられるようなメランコリックさ、でも同時に満たされるようなハートウォーミングの作用も強力で...。夜の都会を一人徘徊しながら聴いたら最高にエモくなりそうな曲の数々。Green Eyesとかドリーミーみがめっちゃ濃くて感情がやばくなる、本当にたまらない。歌声がSoccer Mommyっぽいクリアな美しさを持ってるところが音楽に本当によく似合ってる。

今作で頭おかしくなるくらい心打たれたのが、4曲目のHope。リスナーを慰めてくれるようなコンテンポラリージャズ系のピアノがめちゃ特徴的で、心の緊張が解けていくような最高に心地いいムードを持ってる曲。そういう穏やかな音楽の中で、「あなたが思ってるみたいに、あなたは一人じゃなよ」ってストレートにリスナーを励ましてくれる。これが本当に胸に響いてやばい。「We all have scar, I know it's hard」、リスナーに思いが届いて、心にタッチするようなリアルな温もり。実際に傷ついてるときとか、なんとなく寂しいときとかに聴いたら、涙腺がいかれてしまうくらい泣いてしまうかもしれない。今作のハイライトになるようなとても最高の名曲だった。

Arlo Parksってアルバム出す前からすごく注目されてて、聴く前からハードルが高かったと思う。個人的には、それでも易々と最高レベルを叩き出してるような素晴らしさ。弾き語りとか、特殊な編成のない素朴な演奏形態でいくらでも名曲を量産できてしまうようなハイセンス。ClairoのBagsとか、カバーのチョイスもめちゃめちゃ最高だった 笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Yung - "Ongoing Dispute"

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いつも最高の瞬間を求めてる

 エモーショナルなギターの轟音を巧みに鳴らすようなポストパンク系統の正統派ロック。1曲目のAutobiograhyを聴いて死ぬほど感動した。打ち付けるようにして全身全霊で音を鳴らすロックの最高の瞬間。何かを強く求めるようにして、その瞬間だけ完璧にハイになる。感情を燃やすこと、それは命を燃やすこと。ロックという名のエレキギターのアート。過去も未来も一切考えず、かけがえのない今この瞬間、この時だけにフォーカスして夢中になる。4分の曲の中、数十秒くらいの一瞬だけでいい、その瞬間だけでいい。その瞬間を永遠に求めてる。もうたまらなく大好き...。まるで私が心から憧れてるロックのその本質・概念を忠実に完璧に体現したような音楽。虜になりすぎて、リピートが止まらなくなる。本当に素晴らしかった。

80sポストパンクの少し憂鬱な雰囲気、シューゲイザー的な白熱、青春を感じさせるようなストレートさ、Yungの今作は本当にめちゃめちゃかっこいい作品だった。神 of 神なリードトラックAutobiograhy (M1)以外にも素晴らしい曲がたくさん。例えば4曲目のDismantled (M4)、轟音を鳴らす激しいエモーションとは対比的なセンチメンタルな情景を見せてくれる曲。豪雨が止むように音楽の湿度が一気に変わっていく場面転換の演出みたいなのが見事だと思う。ただアツいだけじゃなく、ロックを演奏するための葛藤・モチベーションがよく見えるようなグッとくる感動がある。Unresolver (M8)も同様に最高。全身を使ってストロークするようなギターの力技パートに心打たれまくるクライマックスがある曲。ほんと、歯を食いしばるように力を込めてるのが痛いほど伝わってくる。音楽に込めたその熱量が美しくドリーミーに響くのがやばすぎる。ただでさえAutobiograhyがめちゃめちゃ神曲なのに、それと同レベルに傑作な曲を収録してるとか本当にすごい。Yung大好きすぎる、もっと有名になってほしい。

「今を生きる」とか、本でもテレビでもよく耳にするフレーズだけど、それって本当に難しいことだと思う。過去に思い浸ったたり、傷ついたり、未来に希望を抱いたり、妄想したり、絶望を感じたり...。そういうことに囚われず、今この瞬間だけを生きる~なんて、よほどの集中力がないとできないと思う。だからこそ、Yungが今作(Autobiograhyとか)で提示したような、ロックの"最高の瞬間"のこと心から愛してる。その瞬間だけ完璧にハイになるような、命を燃やすロックのその瞬間を心から愛してる。Yungもっと有名になってほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. The Big Net - "In the Service of Song"

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リスナーのことをいっぱい愛してくれる

 心に平穏をもたらしまくるような90s属性のインディーロック。寄り添ってくれるように優しくて、ギュッと抱きしめてくれるように温かくて、天国へ導かれるみたいに満たされる。私の人生ベストアーティストのYo La TengoとかSlowdiveの血を受け継いでるようなバンドの一つ。もう大好きが止まらない、こんな作品、ベストアルバムにならないわけがない。Never Knew Blue (M1)、Keep (M2)、Cowboy (M3)、Kevin's Shield (M6)...。ポカポカになって暖まるソフトな轟音の癒しがあって、心をかき乱すような愛おしさがあって、エスケイピズムが最強に濃くて。他にも、脳内麻薬を分泌するようなローファイのノイズ(Beauty Bomb (M5))、美しい光景を映し出すギターのアルペジオ、心くすぐるカントリー系のスライドギター、ハイトーンでたまらなく上品なウィスパーボイス...。心惹かれる大好きなポイントが詰まりまくってる。アートワークもめちゃめちゃ好み。超最高なアルバムだった。

代表的に大好きなのがやっぱり7曲目のIt's Not There。心に沁みる切ない風情、美しい物語への想像。メロディーがリフレインしながら、感情が高まるようにシューゲイザーへの発展も見せたり。なんて素晴らしいんだろう。。。ほんと、息もできなくなるくらい猛烈に惹かれていく。ビブラフォンのような高音のかけらとか、サウンドメイキングもとてもユニーク。この曲にThe Big Netの大好きさが凝縮されてる 笑。今作最高のリードトラックだと思った。

音楽鑑賞はある種の感情体験であり、アーティストとリスナーとの共振でもあり、同時に音楽に込められた思いをリスナーが受け取る行為でもあると思う。だから、アーティストはリスナーに愛を与えることができるし、言え換えれば、リスナーはアーティストに愛してもらう感覚を得ることができるのだと思う。The Big Netの今作は、それで言うとリスナーにたくさんの愛を与えてくれる作品。リスナーのことをいっぱい愛してくれる作品。それはときに、自分自身を大切にすることを自分自身が許可するためのとても大きなきっかけになる。そういう音楽の喜びって本当に本当に素晴らしいと思う。The Big Netマジでよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Shame - "Drunk Tank Pink"

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揺るぎない自信、余裕のあるフルパフォーマンス

 挑発的でアグレッシブなShameのポストパンク。今作はその攻めのスタンスがもっと前面に出てるような激しい作風の感じ、リスナーを駆り立てるようなアツさがヤバくて本当に最高な作品だなと思った。ハイペースなビートを力強く叩き込んでリスナーをこれでもかと興奮させるようなAlphabet (M1)、ありのままにストレートにエモーションをぶつけることを洗練させたWater in the Wall (M5)、電撃が走るようなエッジの強いギターが本当に超かっこいいGreat Dog (M8)...。ただひたすらに反抗的で挑発的なのではなく、音楽のそのアグレッシブさを丁寧に見せるような完成度の高さがある。特にリードトラックのWater in the Wallとかほんとに名曲、特別なことをしない基本的な構成の中でShameらしさが全開でパフォーマンスされてる感じ。Nigel Hitter (M2)にも表れてるような生意気でお調子者のShameらしいキャラのよさが抜群でめちゃめちゃテンション上がる 笑。2010年代の後半からイギリスのインディーズでホットなバンドたくさん出てると思うけど、このWater in the Wallで完璧に表現されてるようなShameのアグレッシブなキャラは唯一無二のよさだと思う。全曲がすごくいい、前作より大好きだった。

アグレッシブさを丁寧に見せるというところ、特に今作はMarch Day (M4)とかSnow Day (M6)とか1/6 (M9)みたいなギターとドラムが高速で交錯するアンサンブルのやつもやばかった。刻みの細かいエネルギッシュなドラムにギターの音粒が綺麗にヒットしまくるような感じ、音楽の攻撃的な部分をスタイリッシュに見せるようなテクニック。Shameってこんなに器用なの?!って最初めちゃびっくりした 笑。そういう曲の激しさとスマートさのバランスの感じも今作の魅力的なところだったと思う。中でもSnow Dayみたいな闇闇しい曲調の中の16ビートのドラムワークはカッコよすぎてベタベタに惚れた、、、笑。

そして今作で絶対に絶対に見逃せない部分が、3曲目のBorn in Luton。一般的なポストパンクには考えられないようなゾッとする恐怖がある、迫力がある、そして身体が焼き焦げるような強烈な精神的苦痛がある。反抗的で挑発的なShameの精神の裏に潜在するダークネス。それはまるで、誰かに助けを求めるような音楽の悲痛の叫び。クライマックスのところでベースがもっとヘヴィーになるところとかやばくて、何度聴いても鳥肌が止まらない。本当に本当に素晴らしい曲だった。

容赦なく不満を爆発させたようなIceageの1stアルバム、吐き気を催すほど不健康に暴れ狂ったようなMETZの1stアルバム、限界を目指して本気でロックンロールに打ち込んだ去年のMourn...、リミッターを解除して全力を出し切ったロックの名作の中でも、今作のShameには余裕があって、自信があって、もっと調子に乗ってた感じがした(超褒めてる)。それこそ真のShameの姿だと思う。今作は完成度がとても高かった。ほんと、前半5曲までの流れが最高すぎてる...笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

プレイリスト(Spotify

open.spotify.com

 

プレイリスト(Apple Music)

温の「2021年1月ベストアルバム(温)」をApple Musicで

 

 

その他 とてもよかったもの

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Beautify Junkyards - "Cosmorama"

Bicep - "Isles"

Buck Meek - "Two Saviors"

Casper Clausen - "Better Way"

Codist - "A Dream Is Just a Big Thought"

Elori Saxl - "The Blue of Distance"

Lande Hekt - "Going to Hell"

Robbie & Mona - "EW"

Venus Ex Machina - "Lux"

Weezer - "OK Human"

 

 

 

2月はもうほとんどベストアルバム決まってる 笑

(Puma Blueとか...Julien Bakerとか...Julien Bakerとか...)

 

2020年音楽まとめ

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2020年ベストアルバムはここ!!

 

2020年下半期の記録とベストアルバムのところには書けなかったこと

 

 

 

 目次

 

 

 

 

 

 

 

月間ベストアルバム(2020年下半期)

感想一覧 → https://t.co/LYM4yaLf2g?amp=1

(上半期↓)

worried10fire.hatenablog.com

 

7月ベストアルバム

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10. E^ST - "I'M DOING IT"

9. Cloud Nothings - "The Black Hole Understands"

8. Thanya Iyer - "KIND"

7. Secret Drum Band - "Chuva"

6. Nicolas Jaar - "Telas"

5. Trevor Powers - "Capricorn"

4. Fontaines D.C. - "A Hero's Death"

3. Julianna Barwick - "Healing Is A Miracle"

2. Lianne La Havas - "Lianne La Haves"

1. Crack Cloud - "Pain Olympics"

 

8月ベストアルバム

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10. Disclosure - "ENERGEY"

9. Bully - "SUGAREGG"

8. Drugs - "Episodic"

7. Katya Yonder - "Multiply Intentions"

6. JOBS - "endless birthdays"

5. Siv Jakobsen - "A Temporary Soothing"

4. Young Jesus - "Welcome To Conceptual Beach"

3. Angel Olsen - "Whole New Mess"

2. Keely Lee Owens - "Inner Song"

1. The Microphones - "Microphones In 2020"

 

9月ベストアルバム

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10. The Flaming Lips - "American Head"

9. Devi McCallion & Katie Dey - "Magic Fire Brain"

8. Osees - "Protean Threat"

7. Deradoorian - "Find the Sun"

6. Shabason, Krgovich & Harris - "Philadelphia (feat. Joseph Shabason, Chris Harris & Nicholas Krgovich)"

5. Sault - "Untitled (Rise)"

4. Fenne Lily - "BREACH"

3. Fleet Foxes - "Shore"

2. Lomelda - "Hannah"

1. Sufjan Stevens - "The Ascension"

 

10月ベストアルバム

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10. Rian Treanor - "File Under UK Metaplasm"

9. Actress - "Karma & Desire"

8. Bartees Strange - "Live Forever"

7. Helena Deland - "Someone Now"

6. Knox Fortune - "Stock Child Wonder"

 5. Mourn - "Self Worth"

4. Pet Shimmers - "Trash Earthers"

3. Loma - "Don't Shy Away"

2. Adrianne Lenker - "songs / instrumentals"

1. Jónsi - "Shiver"

 

11月ベストアルバム

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10. Woodes - "Crystal Ball"

9. Tom Vek - "New Symbols"

8. Emily A. Sprague - "Hill, Flower, Fog"

7. Kevin & The Bikes - "Ironic Songs"

6. ROBERT HOOD - "Mirror Man"

5. Elskavon & John Hayes - "Du Nord"

4. Dirty Projectors - "5EPs"

3. Cuushe - "Waken"

2. Hypoluxo - "Hypoluxo"

1. Mamalarky - "Mamalarky"

 

12月ベストアルバム

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10. Godblesscomputers - "The Island"

9. AADJA - "Thought Dealer"

8. Son Lux - "Tomorrows II"

7. 青葉市子 - "アダンの風"

6. Jordana - "Something To Say To You"

5. Alaska Reid - "Big Bunny"

4. Taylor Swift - "evermore"

3. Ed The Dog - "Untitled.Crashed.Crashed.Crashed"

2. Salami Rose Joe Louis - "Chapters of Zdenka"

1. The Avalanches - "We Will Always Love You"

 

その他ベストアルバム

 

worried10fire.hatenablog.com

 

 

 

 

 

2020年はどんな年だった?

集団療法 "Group Therapy"

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 ライブアルバム、カバーアルバム、チャリティーの作品が数多くリリースされた2020年、その中で特にGroup Therapyが印象的だった。Porridge Radio、Happyness、Pet Shimmers、Sorry、今年話題のインディーズバンドを始めとする総勢60組くらいのアーティスト達によるライブ音源・デモ・リミックス・カバーのコンピレーションのやつ、5時間以上もあって本当に莫大なスケール...!好きなアーティストのボーナストラック集みたいなよさもあったし、知らないバンドがいっぱいで新しい音楽を探すのにもとても便利なツールになってたと思う。パンデミック期間の音楽業界を支えるためのキャンペーン作品だけど、パンデミックだからこそ出会えたスペシャルな作品だったと思う。"集団療法"ってタイトルもすごく好き。インディーロック勢だけでなくエレクトロニカ・クラブミュージック界隈のアーティストの曲もすごくよかった。

 

 

 

 

 

Radioheadラッシュ

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 代表的なところだとLianne La HavasとKelly Lee OwensのWeird Fishes/Arpeggi、そしてDeath Cab For CutieのBen Gibbardのデイリーライブで演奏されたFake Plastic Trees、あとはBBCのPhoe Bridgers(×Arlo Parks)のFake Plastic Trees...。2020年のRadioheadのカバーラッシュ、どれもRadioheadの曲のキャラクターが各アーティストのキャラクターにトランスフォームされてる感じで本当に面白かった。その中でも特にやばいなと思ったのがRosie CarneyのThe Bendsカバー。Planet TelexからStreet Spirit (Fade Out)までThe Bendsの全12曲をまるまるカバーするマジのThe Bendsカバー。最初「そこまでやる!?」って思った 笑。実際に聴いてみると流石はRosie Carney、Radioheadのロックも子守歌レベルで癒し的に変換されててやばい。High And Dryとか落ち着いてるテイストの曲はさらにドリーミー味が濃厚になってたり。それぞれの曲にしっかり思い入れを感じるような仕上がりで、23歳のRosieが持つRadiohead並びにそれらの90年代のインディーズシーンに対してのリスペクトが伝わってくる。私も90年代はGastr Del Solのポストロックとか本当に憧れを強く持ってるし、そういうのすごくいいなぁと思う。とても傑作だと思うのだけど、よく考えたらこれRadioheadのもともとの素材が最高なんだよな...って思った 笑。前作Bare (2019)とか本当によかったし、是非是非フルレングスのアルバムまた作ってほしい。

 

 

 

 

涙の延期

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 新譜のリリースがたくさん延期になってしまった2020年、それでも007とかブラックウィドウの映画みたいに1年規模の延期になる作品がなかったのは大変ありがたかった。。。Laura Marlingとかはリリース時期が春から夏に遅れて、音楽がよりぴったりハマるタイミングにずれるみたいなパターンもあったと思うし。だけどTV Priestのリリースが2021年に延期なったのはウルトラスーパーハイパー残念だった、、、泣。次世代ポストパンク界隈の中でもメキメキ頭角を現してるみたいなやつ。リードトラックしか聴けてないけど、どの曲もアグレッシブながらスマートで最高に素晴らしい。低音の分厚さとかサウンドのテクスチャも逸品。フルで聴けるようになるのが本当にめちゃめちゃ待ち遠しい。陽性者減らないし、2021年もまだまだ怪しいけど、欲求不満でストレスになるからなるべく早くサブスク解禁されてほしい 笑。

 

 

 

 

 

2020年ベストMV TOP5 

5. Yellow Days - "Love Is Everywhere"

 昔のジャズ・フュージョンとかサイケロックとかの時代のメモリーへアクセスするようなビデオ。写真に写る人それぞれに人生がある、ストーリーがある。そしてそれらのいたるところにLoveがある...めちゃめちゃ素敵だと思う。

 

 

4. Jordana - "I Guess This Is Life"

 ホームパーティーやってるところを外から通り過ぎるときのあの感情、何気ない日常の中で言葉にできないフィーリング(I couldn't tell you in words how I'm feeling)の瞬間がある。それは少し切なくて、でも満たされてるところもあって。そういう愛おしい瞬間のことを「I guess this is life」という言葉で染めるJordanaは本当にやばいと思う。

 

 

3. Lianne La Havas - "Can't Fight"

 こういう精神の根っこからハピネスが強い人、本当に心から尊敬してる。おちゃめな描写もギター弾いてるところも人間が最高に輝いて見える。最後お辞儀するところがめちゃめちゃ好きで本当にたまらない。

 

 

2. Kevin Morby - "Campfire"

 ベストインディーズカップルのイチャイチャ動画。大好きと大好きが累積されて身体が爆発しそうになる。

 

 

1. The Beths - "Dying To Believe"

 メンバーが楽しそうに演奏してるMVはどれも間違いなく最高かなと思うけど、私の中でこれは特にトップクラス。「曲にベースソロとか必要ないから」みたいなエリザベスのテキトーな感じの人柄がよく表れてて本当に大好きすぎる 笑。あとベーシストコピーのクオリティも高すぎて超びっくりした。

 

 

 

 

その他 私の中で話題になった作品

Car Seat Headrest - "Making A Door Less Open"

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 サブスク、CD、レコード、それぞれで収録されてる曲目が違うとかいうやばい作品。「レコードを買うと全てのバージョンのデジタルアルバムが手に入るけど?」「じゃあ買えばいいんでしょ~はい分かりました~」ってレコード買ってた 笑。自分の作品をプロデュースする作戦的には全然いいと思うのだけどさ、同じ曲でも違いがまるで分からないけど、、、??笑。もうちょっと分かりやすく違うテイストにしてほしかったな...笑。だけどサブスクとアナログの対立(?)みたいな現代の中で見ると、媒体それぞれに異なる価値を付けるような試みはとても新鮮だったかなと思う。そういう点で今年すごく印象的な作品だった。

 内容的にもとてもよかった。ウィル君が思う自分なりのロックのヒーローを目指してるようなオルタネイティブロックのかっこよさ。Can't Cool Me Downとか全体的にクールな印象が目立つ感じ。もともとCar Seat Headrestって名前通り車の中で曲考えてたくらいには宅録に根付いてるアーティストだと思うのだけど、そういう人物がもっとバンドを組む喜びとか、ステージで演奏する喜びとかを知るようになって、まるでロックスターのような大きな存在を夢見てるようなワクワク感に近いものを感じる。ガスマスクなアイコンが特徴的なアーティスト写真とかも本当にかっこよかった。

 

 

 

 

 

あとがき

来年は2021年、、何かの手違いでDaft Punkが新譜出したりしないかな~~~(しないかな~~~)

 

 

 

 

「2020年下半期『月間ベストアルバムTOP10』から漏れてしまったベストアルバムTOP10」感想

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毎月大爆笑しながら月間ベストアルバム作ってるけど、しばらくしてから「なんでこれベストアルバムに入ってないの...(TT)(TT)(TT)」というアルバム見つけるとめちゃ悲しくなる、、、笑。私の中でベストアルバムなのにベストアルバムじゃないみたいになってしまったやつ。(ランキング作りの運命なのかもしれないけど...。)悔しすぎるのでそんな漏れ&逃がしのアルバム10枚の感想を順不同で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. Another Sky - "I Slept On The Floor" (8月)

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ライブ映え(大きなステージで観たい...!)

 サウンドが広域に響き渡るような果てしなさがある系のオルタネイティブロック。スタジオ、ライブハウスよりももっと大きい音空間を生成する拡張性があって、めちゃめちゃライブ映えしてるバンドだと思う。もともと私はThe Nationalとか、そのギタリストのAaron DessnerがプロデュースするLocal Natives (Hummingbird ← 人生ベスト級に大・大・大好き)のような、クリーンで開放的な音を鳴らすバンドがとてもツボなのだけど、Another Skyもめちゃめちゃそうだった。(私の中では「二代目Local Natives」みたいな位置づけ)。しかもAnother Skyはそれにプラスで、アートロック系のクールでダークなパワー・かっこよさがある。ここが本当にずるいと思う...笑。なんといってもオペラ属性の高いCatrin Vincentのボーカル、通常のオルタネイティブロックの雰囲気とは反するような雅やかで高貴なキャラクターがアートロックっぽさをより強調してる。拡張性のあるクリーンな開放感の快感も、そのオペラ属性ボーカルで高められる。とても贅沢なスキルでめちゃ魅力的だと思う。

1番好きなのはやっぱり5曲目のThe Cracks。この曲が本当に本当にたまらない。ボーカルのオペラ属性のキャラクターを活かしまくって、大迫力のステージ・アリーナライブを繰り広げるようなスケールを感じさせる曲。それぞれのパートがシューゲイザーへ発展しそうなほど全力で鳴らされてて、本当にめちゃめちゃダイナミック。もうとにかくこの曲のライブが観たい...!この曲のライブをフェスの大ステージとかで堪能したい。観客がワァって沸くのが本当によく想像できる。だから、早くビッグな存在になってほしい 笑。(もっと売れてほしい)

2020年はライブが恋しすぎて死にそうになる年だったと思う。(私が最後に観たのは2月のJay SomとHomecomings)。だから、アリーナ系ライブの音響を感じさせるAnother Skyの音源は異常に刺さった気がする。Slowdive的な深いブルーを纏う残響のAll Ends (M11)とかもめちゃよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Samia - "The Baby" (8月)

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2020年代ポップカルチャーのヒントになりそう

 2017年だとSoccer MommyのClean、2018年だとSnail MailのLush、去年ならClairoのImmunityとかStella DonnellyのBeware Of The Dogs......ロックバンド形態のインディーポップのやつで2020年のアーティストを選ぶなら、私的にはSamiaが有力かなと思った。ポップスとしてのメロディックなよさはもちろん、伸びやかな歌が特徴的なとても丁寧な曲が多くて、Samiaと同じZ世代のポップ好きだけでなく、もっと幅広い層にも人気を得そうな感じ。開放的なフィーリングを高めるストレートなポップのFit N Full (M2)、ハイトーンボイスや轟音ギターなども最高でたまらないTriptych (M6)、あとは胸が苦しくなりすぎるほど儚くて切ないタイプのWaverly (M8)...。ノリのよい明るいフィーリング以外にも、80年代系ポップソングのロマンスもあったりしてとてもエモーショナル。個人的に1番のお気に入りが5曲目のStellateなのだけど、Samiaはバラードも本当に最強だと思う。心満たされるアルペジオのフレーズ、ボーカルのパートが本当に愛おしくて、聴いた後もメロディーがずっと心の中に残る。SofieとかSad13とか、2020年の今年も色々なインディーポップが活躍してたけど、私はSamiaが1番好きだった。

インターネットが普及しまくって、サブスクリプションがもっと発達して、単曲だけで気軽に楽しむポップソングがより力を付けてきた気がする。そういう意味で2010年代はポピュラー音楽の盛んな時代だったのかも。2020年代のカルチャーもとても楽しみで気になるのだけど、Samiaのようなシンプルで丁寧なポップソングがこれから普及していくのかな、とか思ったり。エレクトロニカ技術で派手に装飾しまくるポップソングが逆転されていくのだとしたらかなり面白そう。Samiaすごく好きだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. I Love Your Lifestyle - "No Driver" (10月)

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ありったけのエネルギーを込めてストレートに愛を伝える

 「あのとき、どうして僕をフェイスブックに追加したの?」(Nice Jacket, Yet)、心臓が潰れてしまいそうになるくらい愛おしいエモを奏でる "I Love Your Lifestyle" (『あなたの生き方が大好き』) の3rdアルバムは、爆音をぶつけるような激しいエモの1stアルバムWe Go Way Back (2016)と、エモの中でもセンチメンタル性も磨いた2ndアルバムThe Movie (2019)のいいところどり取りな最適解...!抑えきれない思いを爆裂させるパワフルさも、センチメンタルでメロディックな安定感も、どちらもちょうどよく取り入れてある感じで、I Love Your Lifestyleのよさが凝縮されてる作品だと思う。Stupid (M1)からいきなりめちゃめちゃ最高。ハングリーにガツガツに突き進んでいく熱量の高いエモ。CHONとかPolyphia風のイケメンなマスロックギターも決めたり、リスナーを興奮させるシンガロング的なパートも含んでいるのに、愛おしさを引き立てまくるメロディー1つ1つのピュアネスは全くブレてない...。こういう曲みたいに、エネルギーをありったけ込めてストレートに愛を伝えるようなエモ・ロックにめちゃめちゃ弱いから、気が緩んでるときとか眼球が壊れそうなくらい泣いてしまう。同様にしてCar (M2)やNo Harm (M3)もすごくいい。No Harm (M3)に関しては、2ndから培ってきたような胸を引き裂くメロンコリックな響きがとても素敵に聞こえたり。前作の2ndも大好きだったけど、今作は1stアルバムのときのヘビィな音圧も戻ってきてたりしてもっと好きだった。

今作のリードトラックで絶対に外せないなと思うのが、4曲目のShilly-Shally。思わずこちらも一緒になって口ずさみたくなるような最高のノリを持ってる歌。クオリティが高すぎる長尺ツインギターソロを挿入するタイミングも完璧すぎてるし、ラストスパートに合わせてシンバルを連打しまくるような激しいエモに発展する感じもやばい。愛おしさ・ピュアネスの感情が高められまくってる。ソングライティングからソロまで本当に全部素晴らしかった。

I Love Yourlifestyleの今作は10月のベストアルバムの逃がしアルバムだった。10月終わった後に作品リリースしてるのを知って「新譜出してるんかーーーい!!泣泣」みたいになった 笑。10月のエモといえばBartees Strangeが本当に超傑作だったけど、I Love Your Lifestyleの今作も同じくらい傑作だった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Daisies - "Cherries - EP" (9月)

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"2020 Perfect Vision"

 90年代のテクノ・トリップホップから、リラクゼーションが強めのドローン・アンビエントまで、多様で幅広いアプローチがすごいドリームポップバンドの新譜EP。チープなかわいさがあるアナログシンセとか、それとは対極的に洗練された神々しい空間系のデジタルシンセとか、ドリームポップが持つ "ドリーミー" なところの表現にとても凝ってて本当に面白い。前作What Are You Waiting For? (2019)も年間ベスト候補並みに大好きだったのだけど、今作はその中でも、前作でいう6曲目Anyone's Styleや7曲目True Absolute Fictionあたりのダンサブルなハウス系エレクトロニカの作風で一貫されてる。このDaisiesのめちゃめちゃユニークなダンスフロアが本当にたまらない...笑。ドリームポップらしいピュアなワールド、アンビエントの大人びたワールド、テクノ・トリップホップの少しダークなワールド...、それぞれがダンスフロアを通じて並列に結びついてる感じ。リードトラックのEverybody's Moving to London (M1)から本当にめちゃめちゃ最高だと思う。バチバチにかっこいいドラムでテンションを上げまくって、そこにメロディックで素敵なボーカルを合わせてリスナーを虜にし、残響を多用した美しいインパクトを持つピアノなども合わせてとどめを刺していく...。めちゃめちゃ傑作だと思う。3曲目のLights Dancing on the Screenも上品なドリームポップで素晴らしかった。

今作で1番ツボったのは、2曲目の『2020 Perfect Vision』笑。Daisiesのドリームポップの中でも無重力なふわふわの音像が強く出てる曲。「これが2020年の理想的なビジョンだから」ってDaisiesが自分たちのエレクトロニカ&ドリームポップスを提示してるわけだから、思わずフフってなる 笑。Daisiesのドリーミーで素敵な音楽が最高なだけに、「そうだよなーーー2020年はこうだったらよかったのになーーー(?)」って納得させられまくる 笑。もう曲名の発想だけでもう優勝してる。本当に楽しかった。

今作は5曲入り25分のEP作品だったけど、「EPなのがもったいなぁぁい!!」ってめちゃめちゃ思った 笑。個人的にはEPよりアルバムの方が断然好きなので。次回はフルレングスでお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Protomartyr - "Ultimate Success Today" (7月)

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ヘヴィでタフな激かっこいいポストパン

 ポストパンク大好きなのだけど、それらの音楽が持つ恐怖や危険性ともっとシリアスに向き合ったようなProtomartyrのダークネスには、何物にも代えがたい絶対的なかっこよさがあると思う。治安の悪そうなワールドの中で汚れていくProcessed by the Boys (M2)、荒ぶるように狂い火を放つようなギターのパッセージがあるThe Aphorist (M4)、神格的な女性ボーカルのニュアンスで悪魔的なエネルギーすらも感じさせるJune 21 (M5)...。どの曲も破壊力があるし、怖さもあるし、ヘヴィでタフなポストパンクとして最高に仕上がってると思う。もう激ヤバ級にかっこいい...笑。1曲目のDay Without Endとかも本当に大好き。怒りの感情が爆発寸前まで高められるようなスリル、いつ何が起きるか分からないハラハラがあってめちゃめちゃ興奮する。アクモンみたいにちょっとスモーキーなUK感(I Am You Now (M3))や、心に平穏が戻るドリーミーな瞬間(Michigan Hammers (M6))など、恐怖や危険性の表現以外にも豊かな素晴らしさがあったり。全曲抜け目なしなタイプのアルバムだった。

あとは9曲目のBridge & Crownも本当に最高だった。この曲も本格的なダークネスが表れてる激かっこいいポストパンクだけど、「Protomartyrというバンドが抱えてる思いがいかに熱いか」ということを感じさせられるような曲。楽曲がエモーショナルになっていく見せ所で、迫力のあるポストブラックメタルみたいな闇闇しいシューゲイザーを発動してるところがすごくいい 笑。今作の中でもグッとくるナンバーだと思った。

2020年、まるでポストパンクの基本フォーマットを新しく更新してしまったようなFontaines D.C. (A Hero's Death)とか本当にすごい業績を残したなと思う。ちょっとポストパンクも名作いっぱいあって目がくらんでたけど、Protomartyrのこちらもよかった。(あと今年だと個人的に絶対に見逃せないのがHypoluxo...。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Duval Timothy - "Help" (8月)

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世界と世界がアンバランスに繋がる

 孤独と向き合うピアノソングのクラシック、未来に憧れる80年代風シティポップ、未知のエネルギーを秘めたテクニカルな電子音楽ニューエイジ。世界と世界をアンバランスに接続させ、これまでに確認したことがないような神秘的なフィーリングを描き出していく作品。そこには、歴史を振り返るような果てしない人生観や、心が空っぽになるような虚しさ、同時にそれらを尊く感じるようなエモーションもある。メロディーのリフレイン、サウンドサウンドの組み立て、豊かな発想がこれでもかと詰まっていて本当に素晴らしい。坂本龍一のようなシンプルで癒し的なピアノも不思議なくらい取り憑かれる力を持ってるし、ブルージーでソウルフルなMelanie Fayeのギター(Fall Again (M4))とかもたまらない。テクニシャンなVegynのエレクトロニカスキルも今作に貢献しまくってると思う。テクノで楽曲の美しさをより刺激的に見せるセンス(Like (M7))とか、のどかな世界の中でニューエイジの強烈なインパクトをもたらしたり(Pink (M18))とか、Vegyn関連のこの2曲だけでも、このアルバムがめちゃめちゃ最高だって思い知らされる。"Help"というアルバムタイトルの重さもそうだし、本当にとてもとても素晴らしい1枚。なんで月間ベストアルバムから漏れたんだろう...(TT)(TT)(TT)。今すごくガッカリしてます...笑。

全曲を改めて聴き直したけど、1番好きな曲なんですかと聞かれたら、2曲目のSlaveとかと僅差で1曲目のNext Tommorrowが1位かもしれない。神秘性・ミステリアス・興奮・哀愁、楽曲中に心奪われまくるピースがいくつも存在してる。本当にすさまじい曲でやばい。Duvall Timothy固有のユニークで豊かな発想とか、Vegynコラボ要素のテクニカルでハイレベルな作曲性がよく表れてる。ますますベストアルバムから漏れた(or逃れた)理由が分からない...。本当に本当に大傑作。ウルトラスーパーハイパー大好き。

何度か言ってるけど、大学院の修士論文が終わったころの1月から始まった月間ベストアルバムTOP10が12月まで続いちゃった。 ベスト10位×12ヶ月分+おまけ(20枚)でベストアルバムなるものが140枚くらい...自分でも引いてるんだけど、その中でDuval Timothyは何位になるのだろう...(現在猛スピードで順位を上げていってる)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Kevin Morby - "Sundowner" (10月)

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様々な土地を巡るカントリー・フォークロックの旅

 60s~70s期のフォークロックの魅力を改めて現代に刻んだ Singing Saw (2016)(ウルトラスーパー素晴らしい)、そこから素朴なクラシックロックにも発展したCity Music (2017)、さらにはピアノの存在感が本当にたまらないバロックポップまで幅を広げるOh My God (2019)....。カントリー系から王道のロック、Kevin Morbyが蘇らせる古典的な音楽はどれも本当に名曲だと思う。その中でも今作Sundownerは、あてもなく漂流していく旅人のような趣を持つカントリー・フォークソングのタイプな感じ。孤独感や寂しさを抱えながら何かに思い馳せるようなフィーリングがとても深かったり、そこに自分の人生と向き合うような大人のかっこよさもあったりですごく最高だった。1曲目のValleyとか、シンプルで至高なアコースティックソングで本当に大好き。物憂いを感じさせるジャケットの雰囲気とよくマッチしたワールドの中で、心にじんわり響くようなメロディーの作用がある。ギターのソロワークも本当に豊か。(Kevin Morbyのギターってどうしてこんなにいいの??笑)。そんなKevin Morbyのギターメロディーを静寂の中で利かせるアプローチが最高すぎてるDon't Underestimate Midwest American Sun (M6)とかも素晴らしい。他にも、ボン♪ボンボン♪なフレーズが特徴的すぎるBrother, Sister (M2)、Wander (M5)なども好き 笑。Kate Le Bonみたいに呪われそうなくらいメロディーが脳内にこびりつくから笑っちゃう。今作の大人びてる作風の曲の中でもとても渋いナンバーでユニークだし、さすらいのカントリー・フォークソングの味が最高に染みてると思う。

Kevin Morbyの古典的な音楽が大好きでたまらないのは、フォークソング・ロックの伝統的なものに触れ、ニューヨーク、ロサンゼルス、日本ではないアメリカのどこかへトリップしたり、そこで様々な文化と出会うような喜びがあるから。各アルバム・各曲にそれぞれ固有の景観があって、ロマンがあって、本当に胸がいっぱいになる。それはもしかしたらUS・UKの洋ロックの醍醐味かもしれないけど、特にKevin Morbyはもっとクラシックな文化をリメイクする達人だと思う。今作も、トラディショナルなカントリー・フォークソングの作風のところに、彼の故郷のテキサスとか、アメリカの田舎の風土がよく表れてる感じ。そういう土地に一人でじっくり旅行していくような感覚、さらにはそこで色々な歴史と巡り合ったり。やっぱりKevin Morby本当に大好きだなと思った。

2020年は家に籠ることが余儀なくされてしまい、例年に比べて音楽をディグることが多くなった。その中でも気軽に摂取できるなロック&ポップスを大量に聞いてたのだけど、Thurston MooreやJeff Tweedyなど、じっくり鑑賞するタイプは摂取量が少なかったり。Kevin Morbyも他のベストアルバムに少し埋もれてしまったのだけど、Twitterの影響とかもあってどんどん来てる。(こちらもベスト入れられなかったのすごく悔しい、、、泣)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Zora Jones - "Ten Billion Angels" (9月)

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子供の頃トラウマだったエヴァンゲリオンに似てる

 テクノロジーが過剰に発達したようなFloating Points的サイバネティック・エレクトロニカ、そして激しい悲しみや痛みを伴うArca的センシティブサウンドの残酷なハードコア、それらが構築するSOPHIEのような前衛的でかつ異次元的なワールド...。想像性が半端ないような未来的で恐ろしい世界観が本当に魅力的。1曲目のShadows to the Lightから、まさしくFloating PointsとArcaのエレクトロニカをそのまま足して2で割ったようなとても壮絶な世界観がよく表れてる。Sister's Blade (M3)では、高速のテンポで精神を高ぶらせる演出のやばさとかもあったり。ドラムンベースダブステップ、ジューク/フットワーク系のリズムワークの鬼気迫るようなスピード感で、ワールドの異次元性の恐ろしさがよく強化されてる。Low Orbit Ion Cannon (M5)では中盤にヒップホップ系ハードコアなタフなフレーズとしての恐ろしさもあったり。ただ恐ろしいだけじゃなく、電子音のハイテク感・高級感のテクスチャを洗練しまくって、それらの恐ろしさをリアルに伝えるようなテクニックがあるところが本当に素晴らしいと思う。他にも、メロディーがちょっとFKA TwigsっぽいMelancholy Princess (M7)とか、数100年先のフューチャーエレポップみたいな雰囲気がある I Wanna Lose You (M8)とかもよかった。

私が今作でものすごく心惹かれた部分は、異次元性が高くて恐ろしい音楽性や、『10億の天使』というアルバムのモチーフのところに、子供の頃に怖すぎてトラウマだったエヴァンゲリオンの世界観を連想するというところ 笑。(具体的にはアスカのエヴァンゲリオンが敵のエヴァンゲリオンに負けてしまうやつ)。エヴァンゲリオンはどちらかといえば好きではないし、全然知らないけど、昔友達に見せられた映画のシーンが本当に嫌になるくらい印象に残ってる。敵に追い詰められて完全にやられてしまうような絶対的な絶望のリアリティとかもそうなのだけど、神話的なテーマを引用した使徒のデザイン、宇宙人っぽさと同時に天使っぽさも感じられる雰囲気とか、Zora Jonesの今作の世界観ととても似てる気がする。特に5曲目のLow Orbit Ion Cannonなんかは本当にどストレートでそれ...。冒頭の恐ろしい天使の悲鳴のようなサウンドとかもう完全にあの頃感じたトラウマのエヴァンゲリオン...笑。子供の頃のトラウマが呼び起こされてしまうような圧倒的な迫力。でもそんな怖さがたまらなく大好き。

ホラー映画もだけど、やっぱり怖い芸術ってめちゃめちゃ大好きだなって思った。The Haxan CloakのExcavation (2013)とか、Valentina Lisitsaが演奏するラフマニノフの赤ずきんちゃんとか。特にZora Jonesはヴィジュアルアーティストとしての怖さを持ってるところもいいなーって思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Land Of Talk - "Indistinct Conversations" (7月)

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ポカポカでウトウトしながら見るソフトシューゲイザーの夢

 日向ぼっこの感覚を再現するような温もりの半端ないソフトなシューゲイザー・ドリームポップ。陽だまりが暖かくて気持ちよくて、思わずウトウトしてしまうような至福の瞬間ってあると思うのだけど、その中で意識がうつらうつらになって素敵な夢を見る~みたいな、そんな体験を実現してしまう音楽...。どう考えても超最高だと思う 笑。シューゲイザーが持つ浮遊感をそれらの夢心地に作用させるのがやばいDiaphanous (M1)、ドラムやベースの低音を利かせたアタックがかっこいいLook to You (M3)、ソフトな音像で心も ふわふわ・もふもふになるのが最高すぎるWeight of That Weekend (M4)...。ソフトなシューゲイザーという音楽性、それによる陽だまりのような温もりの生成、さらにはその音楽で物語を紡ぎ出すようなドラマ性の曲想なんかもあったり、本当に素晴らしいと思う。ギターロックとしてのリフの存在が光るFootnotes (M7)も傑作。見せ所を変化させていくようなバンドアンサンブルの魅力なんかもあったりして本当にユニーク。感想を書けば書くほど、7月のベストアルバムTOP10から漏れてしまった後悔がでかくなる...笑。ほんと、めちゃめちゃベストアルバムだった。

そんな今作で最もアルバムのハイライトになってるだろうリードトラックが8曲目のA/B Futures。ソフトなシューゲイザー・ドリームポップの最高のキャラクターをぶらさないまま、そこに生き生きとしたロックの音楽性もしっかりアップデートさせてる曲。Land Of Talkが持つ夢心地の快感をさらにモチベートしていくような強力な幸せがあって本当に素晴らしすぎてる。音楽がアクティブになりすぎず、適度なテンションに保たれてるロックなのがいい。この曲はすさまじく大好きだった。その8曲目のA/B Futuresで最高な状態になった後、日が暮れて夜になってお休みなさーいみたいになるFestivals (M9)も大好きだった 笑。

前作Life After Youth (2017)も大好きな作品でフィジカル持ってる。そちらの方も愛おしい最高のドリームポップだったと思うけど、どちらかといえば、夢心地のクオリティ的に今作の方がツボみが深かったかも。というかLand Of Talkがもっと好きになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Taylor Swift - "folklore" (7月)

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インディー音楽も我が物に

 私は高校の頃は弦楽合奏部、大学の頃はオーケストラのサークルに所属していて、学生時代はずっとクラシック~ポップスのバイオリンを演奏してた。その中でも楽曲コピーのためにThe Piano GuysのアレンジのBegin Againなんかは耳がもげるくらいめちゃめちゃリピートしてたし、同じ系統でいうとChristina PerriのA Thousand Yearsとか理性がぶち壊れて頭がおかしくなるくらい聴きまくってた。1989のような人類が滅亡するくらいポップが大爆発してる曲とかも流石に傑作で好きだけど、どちらかというとTaylor Swiftに関しては、ストリングス大活用のクラシック~フォーク型のアダルティーなポップスの方が身体に染みついてる。今作のfolkloreは、そんな馴染みのあるアダルティーなポップスとして作風が極められてるよさだけでなく、Aaron Dessner (The National)のプロデュースやBon Iverのフィーチャリングなど、大好きすぎるBig Red Machine要素が追加されてるという...。何年にも渡ってポップミュージックの頂点に立つ大大大スターのテイラーさんが、Bon IverやThe Nationalなどを好むインディー・オルタナファンも巻き込みまくるとか...「ず、ずるー、ー!!泣」って思った 笑。個人的なところだとthis is me trying (M7)とかめっちゃ好き。従来のTaylor Swiftにあったような歌が目立つポップネスが少なく、空間中によく溶け込むような丁寧な音楽性が保たれてる感じ。その中でも曲としての見せ所のピークはしっかり持っていて、リスナーを大きく揺さぶっていく高揚がある。「Taylor Swiftなんだけど、どことなくインディー感もある」みたいなこのバランス、すごく最高だと思う。

今作のキャラクターを最大に象徴してるのが、4曲目のexile (feat. Bon Iver)だと思う。Taylor SwiftとBon Iverとかいうウルトラスーパーハイパー豪華なコラボ。Bon Iverのサウンドデザインならどんな音楽も超最高になるって分かってたけど、今作のクラシック~フォーク型のアダルティーなポップスであるTaylor Swiftとは本当に相性がいい。Taylor Swiftというアーティストが持つ女王的な存在感のオーラにBon Iverの威力が組み合わさってる感じがあって、本当に鳥肌がやばくなる。もうとてつもなく最高、本当にめちゃめちゃ大好きだった。

Taylor Swift、高校~大学初期の頃によく聴いてたから、今回改めて聴き直してみたら懐かしすぎて超エモかった。(エレポップとロックを巧みに合体させたStyleとか本当に大好き。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

プレイリスト

Apple Music↓

温の「2020年下半期の漏れ&逃しのベストアルバム(温)」をApple Musicで

Sportify ↓

open.spotify.com

 

 

 

 

 

 

 

「2020年12月ベストアルバムTOP10」感想

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「12月だけど一応新譜チェックしとこうかな」って色々聴いてみたらベストアルバムだらけだった 笑。サムネイル画像で1位がバレバレかもしれないけど、今月のベストアルバムTOP10(12月まだ終わってないけど)の感想をランキングで

(上位3つだいたい同率)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. Godblesscomputers - "The Island"

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木琴とサックスの素晴らしすぎるブレンド

 イタリアンDJによるオシャレでかっこいいエレクトロニカ作品のやつ。ベースはR&B・ソウルなどのブラックミュージックだと思うのだけど、それらのグルーヴのダンスをもっと上品にかつセクシーに見せるようなサウンドの高級感がめちゃめちゃいい。木琴やサックスの音を多層化させてこれ以上ないほど濃厚な味わいを出していくようなThe Island (Intro) (M1)、エレクトリックピアノとドリーミーなギターが美しく交差していくFire in the Jungle (M2)、どの曲も素敵でオシャレなサウンドがよく鳴ってる。中でも1曲目の木琴とサックスのブレンドは本当に素晴らしすぎると思う。それぞれ性質の異なる音をミックスさせて全く違った色を生み出していく特殊な反応ってあると思うけど、特にこのサウンドの絶妙な調和はやばい。サウンド面以外ももちろん最高で、例えば3曲目のPacific Soundとか大好き。こちらはボーカルを採用したオシャレR&Bのゆったりダンストラックなやつ。表現されてるワールドがRhyeの音楽みたいに洗練されまくっててめちゃめちゃクリーン。鍵盤楽器の綺麗なメロディーもとても引き立てられてると思う。

今作をベストアルバムにさせた1番の決定的要因は6曲目のRocks (feat. Glenn Astro)。この曲は本当にめちゃめちゃ傑作だと思う。ビートが超ノッてて、ベタ系のシンセサウンドも最高に気持ちよくて、メロディーに華があって、遊び心がありまくりで...。オシャレでかっこいいエレクトロニカの頂点ってこういう曲だよなって納得させられてしまう。Louis Coleとかにありそうな動きが活発なベースラインとかも本当に楽しいし、ずっとずっと聴いていたくなる。とても感激しました。

今作はジャケもかなり好きだった。上下の向きが不確定なデザインで、ひっくり返して捉えることもできるみたい。オシャレでかっこいいエレクトロニカともめちゃぴったりの世界観だと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. AADJA - "Thought Dealer"

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恐怖の煽り方(満点)、興奮の作り方(満点)、テクノのヤバさ(満点)

 2019年、アンダーグラウンドが持つ真のゾクゾク感・危険性を手加減なしで描いたようなPTU (Am I Who I Am)は本当に最高すぎてやばかった。そこからアンダーグラウンド感をガチで突き詰めたようなめちゃめちゃハラハラするテクノのことがもっと好きになったし、そのPTUが所属するロシアのテクノレーベル трип (Trip Records)に対しても注目度がグンと上がった。AADJAの今作も想像通りかそれ以上に最高なアンダーグラウンドのテクノだった 笑。恐怖の煽り方、興奮の作り方、テクノのヤバさ、持ってるスキルのレベルがどれも本当に高い。恐怖の煽り方というところだと、タイトルトラックのThought Dealer (M1)。ステレオの揺さぶり、緊張、聴いていると胸が苦しくなるような気持ち悪さがある。まるでThom Yorkeのサスペリアのような嘆き系の悲しさもあるし、テクノのピリピリした音楽性でそれらが煽られるのはかなりキツい...。めちゃめちゃ陰湿なアンダーグラウンドで本当に最高だと思う 笑。興奮の作り方でいうと、Zappa Valley (M2)やEar Bubbles (M5)がそう。心拍数が上がりすぎて病気になってしまいそうなくらい強烈にハイスピードなビート。低音のパンチも強力だし、とにかく攻めて攻めて攻めまくるようにリスナーのテンションを上げていく。こういうところも圧倒的にハイな気分になれるアンダーグラウンドのクラブミュージックな感じで本当にたまらなかった。ヘッドホンで音量大にして聴くのが最高に楽しい。

それ以外にも、AADJAはクセになるフレーズ感の作り方とかも本当に上手だなと思った。個人的には、4曲目のNeuro Eroticとかのアシッドでグロテスクなサウンドが悲鳴を上げるみたいなフレーズのやつ。冷たさとか、憎しみとか、アンダーグラウンドの世界観に通じる闇の感情をいっぱいに感じる。こういうミニマルのメロディーって本当にめちゃめちゃかっこいい。Laurel Halo、India Jordan、Kelly Lee Owens、Avalon Emerson、今年はクールな女性テクノ作家がいっぱい躍進した年だなと思う。

трип、というかロシアのテクノだと、тпсб (Sekundenschlaf (2018))とかもめちゃめちゃ大好き。テクノの興奮で人間のダークサイドをドバドバ炙り出すことに成功してる感じ。地味にロシアのアンダーグラウンドテクノのプチブームが私の中で来てるかも...。(AADJAはカナダですが)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Son Lux - "Tomorrows II"

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魔法性の高い音響芸術バンド(ツボ曲多め)

 ポストクラシカルでアートロックなバンドの今年2作目、8月にリリースされた1作目Tomorrow I の方も新時代の音響芸術を遂げたような作品でベストアルバム級だったけど、2作目のこちらの方がもっとツボだった...!彼らのルーツとなっているようなジャズ・クラシック系のエレガントさ、かっこよさ、ダーク感をそのまま、今作はその中でも実験的でミステリアスな作曲性が前面に出てる感じ。例えばMolecules (M2)。痒い所に手が届くような民族系のパーカッションが本当に最高なのだけど、それらが醸し出す謎めいた魅惑的な雰囲気がとてもいい。音響的にこだわりまくてるSon Luxの曲の中でも繊細さがかなり強いから、思わずめちゃめちゃ飲み込まれそうになる。6曲目のApartとかもそう。こちらは、Forest Swordsにもありそうな魔法密度の高いサウンドを使ってSon Luxの濃密なワールドへの没頭感を強化していくような曲。ダークな中にも華々しくて開放的なメロディーを含んでたりするから本当に美しい。他にも、4曲目のLeavesとかもよかった。ミニマルなフレーズを組み立てていくようなテクニカルな実験性、ハットとかスネアとかをランダムに打ち込むようなドラムワークの最高にかっこいいやつ。実験性とか関係なく、シンプルにスモーキーなR&B・ソウルとして格別だったProphecy (M3)もめちゃ最高だったし、好きな曲が多いアルバムだった。

1番好きなのはLive Another Life (M8) 笑。今作で特徴的な民族系パーカッションのサウンド、テクニカルでかっこいいドラムワーク、スモーキーで格別なR&B・ソウルなど、今作におけるよさが全部集約された曲だと思う 笑。Son Luxの音響芸術、魔法性の高いエレクトロニカ技術を駆使しながら "Live Another Life"ってメッセージを放つところが本当にたまらない。アルバムのフィナーレ的な迫力もあるし、本当にグッときまくる。前作Tomorrow I でいうところのUndertowとかもすごくよかったけど、今作のLive Another Lifenの方がやられました 笑。

Son Lux、2018年のBrighter Woundsのときもノーチェックだったのだけど、実際ちゃんと聴いてみたら改めてすごく好きな感じのアーティストだなと思った。音響芸術家としてとても秀逸、今作の8曲目のWeight of Your Airとかも、音の質感の使い分けが本当に上手だと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. 青葉市子 - "アダンの風"

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この世で最も素晴らしい かえるのうた のカバー

 クラシックギター一つでどこまでも豊かな文化を創造していくような京都のSSWの新作。日本の風土や和の精神を徹底的に体現してしまうようなフォークソングの作家性が本当に素晴らしくて、生み出される作品の一つ一つが全部傑作だと思う。特に今作は、沖縄の島々から着想を得た新規的なコンセプトがある作品で、従来の淡い音色の引き立つ素朴なフォークの感性だけでなく、環境音楽による海岸のビジョン、宗教音楽系の聖なる風情など、多様な表現力の進化を見せてくれてる。冒頭のPrologue (M1)とPilgrimage (M2)からすごくそれで、伝統的なフォークのスタイルを超えた本格的にドリーミーな音楽性がよく表れてる。質素な美しさがある青葉市子のボーカルをめちゃめちゃ神々しく演出してるのが本当にやばい。癒し的なさざ波のサンプリングも、非現実的で幻な世界の中で見せていくような美しいトリックがある。青葉市子がサントラとして制作しただけあるし、幻想をリアルに想像するアーティストとしての真骨頂が出てると思う。個人的には、それらの音楽性が沖縄の土地から得られたアイディアっていうところがたまらない 笑。ほんと、青葉市子ってすごい感性...。他にも、木管楽器の旋律で音楽にドラマ性を付加するようなDawn in the Adan (M12)とか、和やかな青葉市子のワールドの中で緊張感を作っていくohayashi (M13)とかも素晴らしかった。

そんな新規的なコンセプトを持った今作だけど、その中でもとてつもないほどキラートラックになってると思ったのがやっぱり8曲目のSagu Palmʼs Song。静寂を利用して繊細なエモーションを絶大に高める青葉市子パワーが炸裂しまくってる曲。ギターの音がたった一粒鳴るだけで、鳥肌がバチバチに立ちまくる。どうしてここまで人間の琴線に触れる音を生み出せるのだろう...。フォークソングライターとしてあまりにも天才だと思う。かえるのうたの引用が本当に頭おかしいほど美しい。もともと青葉市子と童謡的な音楽との相性って凄まじくいいと思うけど、中でもこの曲のかえるのうたのカバーはこの世でもっとも素晴らしいと思った。

沖縄っぽさというところだと、個人的には帆衣 (M4)とかもよかった。やっぱり青葉市子は暖かい音楽がよく似合ってる。架空のサントラ、これからもアート性をバンバン発揮していって欲しい...!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Jordana - "Something To Say To You"

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「これが人生なのかな」

 前作Classical Notions of Happiness (2020)は、ベッドルームポップ重視でありながらガレージノイズをバリバリに装備した新型ドリームポップ(Crunch)の作風が超特徴的だったと思う。今作は、そのCrunch系のグルーヴィーでノイジーなタイプの曲をコンピレーションアルバムとしてフルで納めたような最高の作品...!笑。前作を聴いてたときから「もっとCrunchみたいな曲いっぱい演らないのかなー」と思ってたので、アルバムをその作風で統一させた感じの今作には個人的に大正解&大満足だった。撃力の強いドラムが楽曲のノリを激しくしていくHitman (M3)、Queens of The Stone Ageみたいにヘビーでノイジーなギターベースすらも繰り出してしまうBig (M4)、そしてそれらのダイナミックなアレンジを一体にしてまとめあげたようなDecline(M10)...。荒っぽいロックの感じとか、ダンサブルな楽しさがよく強調されてるポップですごくいい。Clairoと同様、それらはここ数年の間に発達したベッドルームポップの新しいスタイルだと思う。そういうドリームポップ・ベッドルームポップ界隈のニューカマーってやっぱり大好きなのでめちゃ応援したくなる。他にも、Divine (M8)とかFuck You (M9)もよかった。

今作はJordanaの最高ソングだらけのコンピレーションアルバムだと思うのだけど、その中でも私がぶっちぎりに大好きだったのが11曲目の I Guess This Is Life。他のベッドルームポップの曲にはないようなドラマチックなストーリー性がある曲。韻を踏みながらJordanaの人生を映し出していくリリックとか、それらの物語のイメージを愛おしく描いたMVが本当に完璧すぎてるのに、そこに「これが人生なのかな」って歌をのせてるのが本当にありえないくらいやばい。何回聴いても涙が止まらなくなる。その音楽には、普段の日常で私達がなんとなく感じている寂しさや不安がある。そして同時に、それらが取り除かれる癒しの発生の瞬間もある。それは、もしかしたらJordanaが音楽を奏でる理由の本質的な部分なのかもしれない。Jordanaが感じているもの、Jordanaが求めているもの、それらの全てにありえないくらい共感して思わず死にそうになる。本当にめちゃめちゃに素晴らしい。2020年のベストソングとかも作ってるのたけど、この曲のせいで上位TOP5あたりが思いっきり更新された。そのくらいやばい。

正直なところ、Jordanaの前作Classical Notions of Happinessは期待しすぎてた部分がありました...。それでいうと今作は、逆に期待度が下がった状態からスタートしたので、余計に最高になった 笑。I Guess This Is LifeのMVは今後何回も観まくると思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Alaska Reid - "Big Bunny"

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病みつきになる音響ドリームポップ

 空間系のエフェクトを完璧にマスターしたような音響ポップ。まるでOneohtrix Point Neverみたいなサウンドアーティストの音響に匹敵するくらい音の扱いがプロフェッショナルなのに、インディーポップのSSWとしてのメロディーの引き出しもやばくて、びっくりするほどめちゃめちゃ最高のアーティストだと思う。サウンドの立体感が本当に深くて、夜にヘッドホンで堪能するのがたまらないほど幸せ。基本スタイルはエレキギターだけど、煌めくサウンドが際立つアルペジオから、ハードロック・シューゲイザー系のノイジーなソロまで、本当に全部音がいい。リバーブ、エコー、多様なプロセスを駆使して本当に素敵なサウンドを鳴らしてる。なんでもいいのだけど、例えば6曲目のBoys From Townとか。エレキギターのノイジーな質感、夜空に星を映すような煌めき、そして少しだけメランコリーなフィーリング...。ドリームポップとしてもいいし、ギターポップ、もしくは一種のシューゲイズポップ的にも名作だと思う。

このアルバムはリリース前からチェックしてたけど、その時から私が意識を失いそうになるほどリピートをしまくってたのが3曲目のOblivion。この曲が本当に病みつきになる。曲を再生して音が鳴ったその0.1秒くらいで「はい神曲ー!はい大好きー!!」ってなるようなやつってやっぱりあると思うのだけど 笑、私にとってのこのOblivionはマジでそれだった。ギターの音の立体的な深さが本当にとてつもない。息を飲むほど綺麗で、まるで恋をするように心惹かれまくる。もしこのAlaska ReidのOblivionを初めて聴く人がいるのなら、私個人としては、ヘッドホンで聴くことを推奨したい...。周りの音を可能な限りシャットアウトして、この音の深みを味わうということ。夜空に輝く星のような、身が引き裂かれる思いをするほど美しい音を堪能する。こんなに音響の深い特殊なドリームポップは今までに聴いたことなかった...。本当に本当に素晴らしい。

今作は1曲目から6曲目くらいまで最高ソングが連続しまくってるところにもびっくりした。柔らかいサウンドと硬いサウンドの質感を見事に使い分けるQuake (M4)、綺麗なメロディーと一緒に外へ駆け出していくようなCity Sadness (M5)、どの曲もすごくいい。(その中でもOblivionがやばすぎた。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Taylor Swift - "evermore"

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背中を押してくれるようなカントリーの温もり

 前回のfolkloreは、cardigan、exile (feat. Bon Iver)、this is me tryingのような儚さのある深い感動のトラックが印象的だったと思う。今作のevermoreも、tolerate it (M5)のようなfolkloreタイプの超絶大傑作トラックがあると思うけど、どちらかといえば今作は、もう少し風に乗って前進するようなポジティブなフォーク・カントリーテイストを強く感じる。安心感のあるカントリーギターにソフトな歌をのせるWillow (M1)、シンプルなピアノがリスナーの背中を押してくれるような励ましを持ってるchampagne problems (M2)、悲しいことがあっても元気付けて慰めてくれるような曲調のdorothea (M8)、フォーク・カントリーの優しくて温かい仕上がりで本当にめちゃめちゃ最高だと思う。カントリーっぽさという点だと、例えば10曲目のivyとかもめちゃめちゃ大好き。Kacey Musgravesのような晴れ晴れしいカントリーの陽エネルギー、広大な高原をイメージさせるような壮大な清々しさも持ってる。春の到来とかに合わせて聴いたら本当にグッときそう。他にも、テイラーのポップパワーをフォーク・カントリテイストの作風にバランスよく適合させてるgold rush (M3)とかも素晴らしかった。従来のキューティーなポップ、昨今の優しいフォーク・カントリータイプのポップ、どちらも ちょうどよすぎるくらいに存在してる...笑。キューティーなポップいうと、エレポップっぽさがあるlong story short (M12)も快適な曲だった。

folkloreからの最大の特徴といえば、やはりAaron Dessner (The National)やBon Iverとのチートコラボ。11曲目のconey island (feat. The National)とかThe Nationalの音楽にTaylor Swiftがそのまま参加しました~みたいにめちゃめちゃ豪華 笑。最後のevermore (feat. Bon Iver) (M15)もどこまでもやばい。今まで蓄積されたTaylor Swiftの音楽の癒し・温もりに、Bon Iverの超絶魔法が発動していくとか...。曲想的にもAdrianne Lenkerに近い精神状態とかがあったりしてて、感動レベルがあまりにも高すぎてる。アルバム通して聴くとより激しい。

「てかfolkloreはどうなんだよ」ってなってるかもしれないけど、そちらは「2020年下半期『月間ベストアルバムTOP10』から漏れてしまったベストアルバムTOP10」のところで既に感想を書いてある。未公開だけど。「じゃあ公開しろよ」「そうだそうだ」いやまだ10枚選べてないです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Ed The Dog - "Untitled.Crashed.Crashed.Crashed"

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無器用でピュアでめちゃめちゃ愛おしいパワーポップ

 ガレージロック、ディスコパンク、パワーポップ、エモ、そしてものすごくストレートなまでに "ロック"...。打ち込み系のドラムや日常系のサンプリングまで、雑食的に様々なジャンル・手法を吸収したロック&ポップスだと思うのだけど、あまりにも傑作で1曲目のEverybody, I love Youからめちゃくちゃに泣いてしまった。「泣くのが恥ずかしいほど僕は無価値なんだ」。悩んだり、後悔したり、葛藤して、ぶつかって、それでも必死になってがむしゃらになって全力疾走していくような生き様。雑食的に様々なアイディアを音楽に取り込んでるところに少し無器用な姿もあって、楽曲中のメロディーがよりピュアに、より愛おしいものになってるところが本当にたまらない。不満を吐き出して、理想を追いかけて、ロックを奏でるための思いがこれでもかというほど伝わってくる。このEverybody, I Love Youだけでめちゃめちゃにベストアルバムだった。

そんな今作だけど、全体的にはWeeezerやJapandroidsのような元気なパワーポップ・エモの作風が基本だと思う。オーディエンスと一緒に盛り上がるような巨大な熱量があるThank You Buddy (M2)、ほんのちょっぴりブルーな気持ちを抱えながらもロックの楽しい余裕が表れてたりするThe Milk (M3)、ゆったりしたグルーヴに刺激的なマスロック風のギターも混ぜたりするPulse Flickers Under Wrist (M6)。メロディーがめちゃめちゃキャッチーでノリまくりだし、パワーポップ・エモとしてのエモーション密度も超高くて、本当にハイクオリティな曲ばかり。エモーション密度という点だと、絶対に絶対に見逃せないのが5曲目のUntitled.Crashed.Crashed.Crashed。この曲も1曲目のEverybody, I Love Youと同じくらい大大大傑作ソング。ノイジーな激しさ、音圧、爆発力、本当に楽しさが尋常じゃない。自分でもよく分からないけど、楽しさのフィーリングが強まりすぎてこの曲でも泣きそうになっちゃった 笑。何もかも本気で楽しもうとするロックバンドとしての意気込み、そこの純粋な思いにやられたんだと思う。本当に素晴らしい。

さらに今作がやばいのが、ロックだけでなくラブソングも最高なところ (I'll Be Your Dog (M9))。今までのエネルギッシュすぎるパワーポップをよりバラードな方向へシフトさせた曲、少しトロピカルな夏サイケのムードも素敵なのだけど、そこにラブソングを発動させるあたり本当に最高すぎてる。「I'll be your dog」、例えばエモ・パンクの失恋ソングとかだとPUPとかあると思うけど、Ed The Dogのこちらも本当に素晴らしかった。

1曲目のEverybody, I Love You、本当にすさまじく最高だったな、、、これはしばらくリピートが止まらないと思う。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Salami Rose Joe Louis - "Chapters of Zdenka"

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エレクトリックピアノのコスモス

 喫茶店で流れてる昭和歌謡曲のアナログレコードみたいな雰囲気が漂うジャズ×エレクトロニカの作品、アートワークのイメージのように、レトロでエレガントな趣とか、天体・惑星系の素敵なコンセプトを持ってると思うのだけど、それらのテーマをエレクトリックピアノだけで特徴付けてしまうような作品としてオリジナリティが本当に強烈すぎてる 笑。本当にもうめちゃめちゃにエレピだらけ。このおもしろさはなんだろう、、、がんばって例えるなら、スマブラでファルコン使うとき普通だったらスマッシュ攻撃とかファルコンキックとか色々な技を使うはずなのに、もう狂ったみたいにファルコンパンチの連打しかしない みたいな 笑、例えるならそういうおもしろさに似てる(スマブラ知らない人には大変申し訳ない)。もうとにかくエレピに依存しまくってて、そのキャラクター一つでどこまでも無双していくようなやばさがある。運動エネルギーの高い興奮があるテクノ系のエレピ (We're Dumb (M1))、ポストパンク~ニューウェーブのスペーシーなニュアンスがあるエレピ (Fuck “Eager to Please” (M5))、可愛らしい大人ジャズのエレピ(A Thermogenic Interlude (M12))...。エレピのよさがより深く、より多面的に表れてる。中でも私的な極めつけはFantasy (M3)のエレピ。すごく甘くて、まろやかで、ほっぺたの中でほろほろ零れ落ちるような食感の味わいすら感じられるサウンド。エレピにしかないようなメロメロになるほど素敵なサウンドの特性がよく表れてると思う。タイトルがFantsyというのも追撃でやばいし、純粋にSalami Rose Joe Louisのボーカルも本当に綺麗でたまらない。

エレピのサウンドってとても特徴的だと思うのだけど、そのサウンドでコスモスを創造していく今作のテーマは本当にお見事だと思った。特に80年代のフュージョンみたいな世界観だけでなく、まるで50年代かなと思わせるようなクラシカルな雰囲気も持っていて、とても個性的なワールドに仕上がってる。ジャズとしてもダンサブルなエレクトロニカとしても傑作、素晴らしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. The Avalanches - "We Will Always Love You"

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フェスが封印された残酷な1年の中、それに匹敵する思い出をくれてありがとう

 2020年は本当にしんどくて、とても散々な1年だったと思うけど、それでも「2020年って最高の年だったな」って思わせてくれるような、今年最大級にデラックスで信じられないほどスペシャルな思い出を提供してくれる1枚。歴史的大アーティストなJohnny Marr (The Smith)、Mike Jones (The Crash)、伝説的なフォークシンガーのVashti Bunyan (本当に?!)、ブルース・R&B・ソウル・ヒップホップ勢だとLeon Bridges (クルアンビンで好きになった)、Blood Orange、Neneh Cherry、Pink Siifu、Denzel Curry (初めて聴いたけどすごくいい)パワーポップだとRivers Cuomo (Weeezer)、エレポップだとオロノ(Superoganism)、MGMT (好き)、そしてエレクトロニカのルーキーなJamie xx (大好き)、さらにインディーロック枠でKurt Vile (マジか 泣)、そして現代クラシックのKelly Moran (←ここで口から泡を吹いて膝から崩れ落ちる)...。「コラボしてコラボしてコラボしまくる」みたいに大大大スケールのコレクションで、本当に錚々たる面々すぎてる。それらのアーティストみんながアバランチーズの一つのアルバムに集合して、まるでフェスのような夢のステージを見せてくれるところが本当に本当にたまらない。アルバム25曲を通して、次から次へと豪華なアーティストの曲が続いていく。それは、アーカイブでもない、配信生ライブでもない、"アルバムの音源で味わう"という最新型のフェス。今年はライブというライブは全て行けず、心から愛してるフジロックも来年に延期になって、1年の楽しいイベントが全て消滅してしまったけど、アバランチーズが、一緒の音源に集まることが考えられないようなメンバー達を集めて、想像を遥かに超える夢のコラボを見せてくれた。We Will Always Love You (feat. Blood Orange) (M3)とか、The Divine Chord (feat. MGMT & Johnny Marr) (M4)とか、Take Care in Your Dreaming (feat. Denzel Curry, Tricky & Sampa the Great) (M17)とか、ドラマチックでロマンチックで興奮が冷めないグッときまくる最高で最高のトラックだらけ。もうめちゃめちゃ泣いた。今年のかけがえのないアルバム、本当に嬉しい。

3曲目あたりから既に死にそうなほど感動してたけど、そこからさらに追い込みをかけて私を殺しにくるほど感動させたのが、15曲目のMusic Makes Me High。ハードルが高い曲名でありながら、全く名前負けしない超絶に名曲だと思う。ボルテージが高まりまくる最高のライブステージで、ファンク系の熱量が本当に見事に応用されてる。フェスの感覚を再現するような最高にアガる曲だと思うのだけど、そのライブの空間の中に、今作でコラボしてる豪華なアーティスト達が楽しそうにしてるところを連想する。普通なら交流しないようなアーティスト達が、このアルバムを通じてみんなでワイワイやってるところを想像する。本当に死ぬほど素敵なライブソングだと思う。それはもしかしたら、アルバムの音源だからこそできる幸せの想像なのかもしれない。感情が高まりすぎて本当に死ぬかと思った。フェスが封印された残酷な1年間の中、それに匹敵する思い出をくれて本当にありがとう。頭おかしいほど素晴らしかった。

サンプリングされてる曲、色々気になる。めちゃめちゃ音源欲しい。絶対にレコード買いたい。ボーナスは貯金にあてるって決めてたけど、このアルバムのためなら余裕で散財する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

★プレイリスト

Apple Music ↓

温の「2020年12月ベストアルバム(温)」をApple Musicで

Sportify ↓

open.spotify.com

 

 

 

★その他よかったもの

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Death Cab For Cutie - "The Georgia - EP"

Fana Hues - "Hues"

Helios - "Domiclie"

Kelly Moran & Prurient - "Chain Reaction At Dust - EP"

Laura Groves - "A Private Road - EP"

Osees - "Panther Rotate"

パスピエ - "synonym"

Rosie Carney - "The Bends"

Sigur Rós - "Odin's Raven Magic (with Steindór Andersen, Hilmar Örn Hilmarsson and María Huld Markan Sigfúsdóttir)"

Steve Racy - "The Lo-Fis"

 

 

 

 

「2020年11月ベストアルバムTOP10」感想

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今月は、Emily A. Sprague、Elskavon & John Hayes、Ólafur Arnaldsなど、アンビエントの良作が多かったイメージ...。先月同様ランキングを作るのがウルトラハイパー難しかった。

 

今月のベストアルバムTOP10の感想をランキングで

 

(上位2つがほんとのほんとにぶっちぎりのダブル1位(T_T)(T_T)(T_T))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. Woodes - "Crystal Ball"

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クリスマスシーズンに降臨するインディーポップの騎士

 HuntlyKlloLastling...オーストラリアのエレポップってみな大好きなのだけど、そこに新しくWoodesの本作も追加された...。私の中ではオーストラリア(メルボルン)版のAURORAみたいな位置付けなのだけど、 Ariesfusq、その他私がめちゃめちゃ大ファンのDE DE MOUSEみたいなピュアすぎるサウンドを多く含んでいたり、それらのファンタジックなパフォーマンスに富んだ良質なポップス作品だった。例えばタイトルトラックのCrystal Ball (M2)。ストリングスのピッチカートのような愛おしい音色、それらが可憐に弾んでいく旋律、ファンタジーの世界がどんどん構築されていく。まるでディズニー映画のようにピュアネスが徹底された世界観を持っていて思わずめちゃキュンキュンする 笑。キュンキュンという点だと、フルートが幸せそうに踊るClose (M4)なんかもとてもいい。最近は気づかぬ内にクリスマスシーズン専用のプレイリストを作るくらいにはクリスマスンソングに飢えていたのだけど、Woodesのこれらの曲はどちらもクリスマスシーズンに本当によく似合うと思う。今年はコロナでとても酷い目に合い、クリスマスも100%楽しめないような状況になってしまっているけど、そん中でもウルトラスーパー素敵でロマンチックな曲を見つけられて嬉しいです...笑。

内容的にも最高だけど、それ以上かなと思うくらいジャケットも強烈に最高...。なんだこの超かっこいいナイトの姿は、、、。鎧から剣までめちゃ本格的で仮想がめっちゃ楽しそう 笑。(私も着たい)

↑最初に綴ったオーストラリアのインディーポップバンド、他にも「LEYYAもめちゃ大好き!」、って書こうとしたらあれはオーストリアだった 笑。だって、これすごくオーストラリアっぽくない???笑。(めちゃ紛らわしい)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Tom Vek - "New Symbols"

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Car Seat Headrestのドラムが超かっこいいバージョン

 Kluster Bの感想のときにも言ったけど、オルタネイティブロックならではの歌うように奏でられるドラムって本当に最高だと思う。私のオールタイムベストアーティストでいうところのBroken Social Scene, Death Cab For Cutie, あと個人的にやばいところだとGang Gang Dance (Eye Contact)...。それは、言うなればリズムワークの根本的な部分からロックの迫力を豊かにデザインしていくような演出。特殊なノリを作り出して音楽をさらにモチベートしていくようなとても美味しいパートだと思うのだけど、Tom Vekの今作はそのドラムの美味しさがとてもよく表れてる作品だと思う。4拍子と3拍子を織り交ぜてフレージングしていく最高のおもしろさがあるSurvive (M1)、ヘビーでパンチの効いたビートを思い切り叩きこんでいくようなGuilty Pleasure (M2)、シェイク系のリズムパターンがとてもクールに決まっていくSlippery Fish (M3)、そしてテクニカルなかっこよさを魅せまくるようなラストのFountains Spit Your Name (M8)...。どれもドラムのよさが曲の中で維持されるような構造になってると思うのだけど、一つ一つTom Vekのお気に入りのグルーヴなんだなというのが伝わってくる。2020年、私の中でSecret Drum Bandに続くドラム部門の優秀賞作品。

もちろん、ドラム以外の点も含め総合的に見て最高!笑。特に全体を通じてライドみたいに鬼かっこいいギタープレイが本当に素晴らしいと思う。代表的なところだと、冒頭のSurvive (M1)とかがそう。4拍子と3拍子の中でミニマルに組立られるスライドのギターが本当にはちゃめちゃにかっこいい。めっちゃUKロックの旨味がのってるサウンドだと思う。そのギターがTom Vekの最高のドラムと合体されるわけだから、それはそれはもう大変素晴らしいよね...笑。ラストのFountains Spit Your Nameのギターも同様に素晴らしい。長尺ソングの中でそれらの美味しさがずっと続いてくところがいいんだよね。

今作でTom Vekのこと初めて知ったのだけど、なんか雰囲気がCar Seat Headrestっぽいなと思った。(曲調というよりかはアーティストのキャラクター的に)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Emily A. Sprague - "Hill, Flower, Fog"

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音の振動の繊細な部分にまで命が宿る

 Floristとしての前作Emily Alone (2019)では、孤独の世界の中で生きるシビアな感情と生々しく対面し、その過程でありのままの自分と向き合い、全ての自然環境の恩恵を享受するような境地にまで至る凄まじい傑作だったと思う。その前のWater Memory / Mount Visionなどのアンビエント作品も同様に、Emily A. Spragueという人物が捉える多自然的な幻想の世界は、どれも創造性が豊かで本当に素晴らしい。そんなEmilyのアンビエントの3作品目の今作は、もっと不思議で、リスナーの精神が超自然的な次元にまで転移されてしまうようなインパクトの強い作品になってると思う。リコーダーの音色とオルガンの音色の中間領域を実現するような繊細でマジカルなシンセ、そのサウンドが残響を持ちながらリフレインし、空間中に溶け込んで実世界を犯していく。空間中に馴染むまで長時間存在し続けた後、まるで時が止まったかのような現実世界の超越を見せてくれるのが本当に素晴らしい。繊細性を高めるサウンドメイキングから残響のチューニングまで全部が本当に最高で、リスナーに強い幻覚症状を与えるほどの完成度だと思う。アンビエントの醍醐味がとても詰まってる、聴けば聴くほど大好きになるようなアルバム。

6曲収録されてる内、私の最もお気に入りなトラックが4曲目のWoven。音の振動の繊細な部分にまで命が宿るような低音の衝撃。このサウンドが静寂・平穏のアンビエントの世界で僅かなアクセントになっているところがたまらない。曲想的にもとても暖かいものがあり、本当に心が満たされまくる。エレクトロニックハープという新サウンドも制作してしまうサウンドアーティストとしての腕も見せまくってる。本当にめちゃ最高の曲だと思う。

他にも、止まっている心臓が動き始めるような熱の伝達があるRain (M5)とかもめちゃ好きだった。マジカルなだけでなく、繊細なところがやっぱりすごくいい。今年3月の来日公演が潰れてしまったけど、ライブ必ずや観たいぞという意思はとても強くなりました(願)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Kevin & The Bikes - "Ironic Songs"

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ユニークで最高におもしろいノイズロック

 Empty CountryやThe War On The Drugsのように、フォーク・カントリーのルーツを持ったタイプのロックンロール。けどKevin & The Bikesの今作の場合、それらのフォーク系のテイストが行き過ぎてしまうようなめちゃめちゃ過激なロックなのが特徴的だと思う 笑。状態的にはNeutral Milk Hotelにも近いところがあると思うのだけど、ノイジーでギラギラしてて本当に楽しい。また、それらの荒々しいロックの印象と同時に、素朴で大人しいフォークロックの面影もちゃんと持っていて、それらが入り混じるような先の読めない自由な発想もある。リスナーの心を掴むようなおもしろいメロディーをいくつも用意してるし、感情をユニークに発散するオルタネイティブロックとして本当に名作だと思う。Intellectual Bean-Spill (M1), Turbulence (M4), Salamia (M9)の3曲がすごくいい。

まずは1曲目のIntellectual Bean-Spill、メランコリックで素敵な感情を抱えながら真っ直ぐ突き進んでいくようなドライブ感のある曲、ギターとドラムが互いに重ね合わさるようなパッセージが本当にすごくかっこいい。4曲目のTurbulenceは、ポジティブなフィーリングの強いギターポップの感じ。表面の細部までギターがめっちゃギラついてて、通常のギターポップには出せないホットなエモーションがよく描かれている。1曲目・4曲目、どちらも高ぶる感情をノイジーに荒々しくぶつけていく曲で本当にとても最高。

9曲目のSalamiaも物凄く素晴らしい。ノイジーなギターの楽しさだけでなく、ドリーミーな安らぎとシューゲイザー系の感動も提供してくれる曲。5曲目のMy Marrowや7曲目のGod's Orientationで印象的だったような素朴で大人しいフォークの世界観よりももっと壮大でドラマチック。音圧も激しくて感動が倍増されまくるから涙腺がめっちゃ刺激される。ラスト曲として本当にふさわしいと思う。

フォークロックが行き過ぎてめちゃめちゃロックになるタイプの作風のやつ、私的にはCult Of Youthの2014年作なんかも少し連想した。(←好き)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. ROBERT HOOD - "Mirror Man"

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笑いが止まらなくなるくらいかっこいいデトロイトテクノ

 ジャケットちょっとダサいかな?とか思ってたら中身めちゃめちゃかっこよくてお腹痛くなるくらい笑った 笑。デトロイトテクノ1時間超えコースのクラブミュージックすぎる作品のやつ。1曲目のイントロを経て2曲目のNothing Stops Detroitから本格的にそれが始まるけど、攻め方というか、フロアの盛り上げ方、リスナーの感情の高め方がすごく上手だと思う。3曲目のFear Notでは、暗黒面の世界に堕ちていくように危険なゾーンに入りこんでいく。ミニマルテクノのアプローチによる増幅効果で集中力を上げまくるエネルギーがあると思うのだけど、それらを途中からさらに強力にさせてしまうような低音のブーストが本当にやばすぎる...。ほんと、アドレナリンがドバドバ出てしまうほどの強烈な興奮。思わず「か、か、かっこいい、、、泣」みたいになる 笑。4曲目のBlack Mirroなんかだと、ニューエイジ・エクスペリメンタル系のアート性もあったり。謎めきの強い奇怪な怖さも持ってて、アルバムのダークな印象がより濃くなってる。怖さという点だと、7曲目の間奏トラックであるFreezeも本当にやばい。身の毛もよだつようなホラー系の強弱手法、アルバムに対するリスナーのゾクゾクがめちゃめちゃ煽られる。(これTNGHTのEasy Easyみたい。)

1時間休むことなく最高なアルバムだけど、その中で一番キターー!!ってなるのがラストのThe Cure (M14)。低音のブースト、変則的なクラップも交えていく複合型のリズム、ダークなデトロイトテクノをよりかっこよくおもしろく魅せるようなアイディアが盛りだくさんで本当に素晴らしい。約7分の曲の中で音の立体感が不規則に変化していくから本当に全然飽きない。もうほんと、バカみたいにかっこよかった、、、笑。

他にも、反響しまくるサウンドがめちゃ楽しいIgnite a War (M11)やPrism (M12)などもとてもよかった。今月、Charles Webster、Dan Kye、Off The Medsなど、ブラックミュージックのテクノハウス作品どれもよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Elskavon & John Hayes - "Du Nord"

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殺人級の美しさ

 サントラ系のアンビエント作品が持つ無限大の想像って本当に最高だと思う。それはまるで、各々リスナーだけに構築される特別でとっておきの物語。Elskavon & John Hayesの今作の場合、Bing & Ruthのような音響芸術、Nils Frahmのようなポストクラシカルのサウンド、イマジネーションを深く美しく創造していく豊かさがめちゃめちゃあるところがすごく素晴らしい。オープニングのVermilion (M1)では、ダンサブルで情熱的な興奮を喚起させるような演出があって、ドラマチックな展開に期待するような高揚感が表現されてる。ここの導入部でもう完全に心を掴まれてしまうのだけど、そこから2曲目のItascaで田園風景のような自然的な世界を見せてくれたり、3曲目のRefrostで思い馳せるドリーミーなポストクラシカルの世界に導いてくれたり、本当にたくさんの想像が駆り立てられていく。音響を重視したピアノのサウンドが常にものすごく綺麗だから、駆り立てられる想像の世界の一つ一つがとても高級になるのがすごくいい。最近愛用していたヘッドホンが壊れてしまい、7万円相当の新しいものを購入したのだけど、それもあってか、初めて聴いたときは音が綺麗すぎてやばくて本当にびっくりした。ものすごく奥行が深くて、音楽の空間がとても広い設計になってると思う。

音響芸術、ポストクラシカル、至高のピアノサウンド、それらのよさを1曲で爆発させているのが4曲目のL'etoile、本当に殺人級に美しい曲だと思う。鍵盤の感触のとても繊細なところまで行き渡るほど研ぎ澄まされた音響の世界。その中で生じる胸を引き裂くほどにエモーショナルな和音。『星』というタイトルの曲で、これほどまでに打ちのめされてしまう曲は今までになかった。自分の中で大切にしている思い出を回想しながら聴いたら、魂が消滅しそうになるくらい感動した。涙腺がおかしくなって涙が止まらなくなるほどやられた。本当に恐ろしいくらい素晴らしい曲だと思う。

ダークめのエレクトロニカとして目立ってるDu Nord (M8)もとてもよかった。こちらはTim Heckerっぽい重さ・迫力があってすごくかっこいい曲。本作はJulianna BarwickLyra Pramukに並ぶ2020年の私的ベストアンビエントだなと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Dirty Projectors - "5EPs"

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リードトラック密度がすごい

 音楽の響きをもっと特別なものにするエキセントリックでタレンティッドなバンドのEPシリーズが完結...!フロントマンのDavidを筆頭に、マルチプレイヤーなメンバーそれぞれの個性が発揮されまくった名曲だらけのアルバムになってると思う。ボサノバ系のリラックス特性にMaia Friedmanのボーカルがこれ以上ないくらいフィットするOverload、女子メンバー3人のハイトーン和声が本当に素晴らしぎてやばいLose Your Love、シンプルなフォークソングのスタイルで心に深く残るエモーションを完成させたHoly Mackerel、さらにはエクスペリメンタルやアートポップとして幅を広げる挑戦的なBird’s Eye、そして心温めるダープロならではのほっこり感が極められたMy Possession...。半年以上続けざまにリリースされたリードトラックが積み重なってる大作なわけだし、もう大好きにならざるを得ない 笑。私的には特に、めちゃかっこよくてめちゃオシャレなMaia Friedmanが激推しなのだけど、彼女がリードボーカルを務めるOverloadは本当に最高すぎると思う。音域も声質も絶妙にちょうどよくて、リスナーの耳への調和率がとてつもなく高い。ダープロらしい快適な音楽性との相性も超抜群だし、MVも綺麗でオシャレで最高。私の今作のベストソング。(そしてベストMV。)

Dirty Projectorsは、クラシックや民族音楽のニュアンスもよく取り入れ、フレッシュで繊細な刺激を作り出すR&B・ロックのバンドだと思う。その中でも2018年以降の新生ダープロは、前作のBreak Thruに特徴的だったように、親和性の高いアンプラグドでアコースティックな作家性が強い感じがする。今作も全体を通じてさっぱりとした軽い仕上がりになってると思うのだけど、そのアンプラグド系の作風の中で、癒し的で気持ちいいフィーリングが濃くなっているところがすごくいい。代表的なところだとやっぱりHoly Mackerel。Davidの歌とクラシックギターの素朴な音色がリスナーのことを抱きしめて慰めてくれるように温かい。5EPsの充実した楽曲の中で通して聴くと、よりアコースティックの癒し的な曲調がもっと強く感じられる。他にも、ストリングス要素のNow I Know (4枚目M4)なんかもとても心沁みた。こちらはクリスマスにもぴったりそうなロマンチック系の感動も含まれているのでタイミングもいい 笑。

EPを5作連続でリリースするって聞いたときからシリーズの完結をすごく楽しみにしてたけど、実際スケールの大きいボリューミーなコレクションアルバムになってて本当に充実してた。甘く切ないメロディーに飲み込まれてしまいそうになるInner World、ダープロのトリッキーなグルーヴに踊らされるSelf Design、他のリードトラックもとても最高。従来のようなダープロ・ロックなPor Qué No、Searching Spiritも相変わらず◎。20曲ランダム再生でも楽しめるアルバムだと思う。私的な1番はやっぱりOverloadとLose Your Loveの2強です!笑。Lose Your Loveはコーラスのライブアレンジがあまりにも最高すぎてる。(ライブまた観たい)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Cuushe - "Waken"

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ドリームポップ&クラブミュージックの素敵すぎるダブルパンチ

 ときめきが止まらなくなるほど綺麗で素敵なドリームポップ~エレポップのやつ、コスチュームが干してあるみたいな洗濯物ジャケの世界観そっくりそのままで、晴天をもたらすようなシャイニーなフィーリングや、ふわふわでモフモフした質感の音像をたくさん所持してる。さらには、音楽のセンセーショナルな部分を高めるようなピアノのキャラクターもすごく利いてたり、ボーカルも青葉市子のような日本人特有のソフトな声質でとても優しかったり。ドリームポップならではの透明感や開放的なエモーションが極められてる最高の作品だと思う。1曲目のHold Halfからその音楽性がパワフルに繰り広げててとてもやばい。音が本当にクリーンで天に昇りそうなほど綺麗。

Cuusheの今作のすごいところは、そういった綺麗で素敵なドリームポップの音楽性に、クラブミュージックのクールさを取り入れてるところ。こんなに はちゃめちゃにかっこいいドリームポップの作品は今まで聴いたことない 笑。代表的なところだとやっぱり3曲目のEmergence。開放的な1曲目のHold Halfが嘘みたいになるほどダンサブルで強力なエネルギーがある曲。Kelly Lee Owensにも負けないくらいバチバチに本格的なハウスで、Hold Halfとのギャップがめちゃめちゃ出てると思う 笑。4曲目のNot to Blameも細かいビートが刻まれるテクノで鳥肌が止まらない。そんなクラブミュージック系のクールな楽曲の中でも、表情的にはやっぱりドリームポップなものを持っているから、どの曲も開放的な気持ちよさは絶大。特にDrip (M6)なんかは、そのドリームポップ性とクラブミュージック性のよさがどちらも最大に表れてる曲だと思う。ドリームポップもクラブミュージックも本当に大好きなので、それらのツボをダブルでパンチされるようなDripには本当にグッときた...笑。

ラストのSpread (M8)も本当に傑作。こちらはPurity Ringのようなふくよかで豊かなグルーヴを持った曲。開放的なドリームポップの感動をエレクトロシューゲイザーのような大規模なスケールで奏でてるのが本当にたまらない。ファルセットの透き通ったコーラスも一つ一つに心を掴まれる。6分間の長尺トラックだけど、本当にずっとサウンドが素晴らしかった。

前にも言ったけど、本作は冬の朝に超超超ぴったりな作品だと思う。澄んでいてクリアな空気、透明感、そして真っ白で気持ちいいフィーリング。可能なら雪が積もった休日の朝とかに聴きまくりたい。東京に引っ越してきてから雪が降るのを楽しみにしてるけど、そのとき用のBGMとしてCuusheをスタンバイしとく...笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Hypoluxo - "Hypoluxo"

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ストパンクの幸せ

 今が2020年であること思い出せなくなるくらい、70s~80sの時代にのめり込んでトリップするポストパンクのワールド。光沢のあるギター、短く切るようにして強く歌うボーカル、タイトなリズム、それらのチープでコンパクトにまとまったサウンド...。"元祖ポストパンク" みたいにものすごくトラディショナルだと思うのだけど、イギリス~労働階級~冷戦~不況など、様々なニュアンス・世界観を忠実に投影し、その中で自分たちの怒り・不満を吐き出すパンクミュージックへ夢中になっている。もともと私ポストパンクのことが大好きというのもあるけれど、Hypoluxoの今作は時代や文化をリアルに切り取るような芸術性がとても素晴らしいと思う。何より、この作品みたいに音楽の中で世界がひっくり返されていく(時代を越えていく)ような感覚が本当に大好きでたまらない。今年だと、6月にリリースしたド直球ロックンロールのSports Teamみたいに、古き良き時代のパンク・ロックを再現する作品ってあると思うけど、Hypoluxoの今作はその中でも再現率の高いもっとマニアックな作品だと思った。モノクロのメンバージャケの雰囲気もさながらにとてもとても最高。

私が今作で最も感激し、ベタベタに惚れまくったところは、Matthew Hershoff (ジャケ写右) の作り出すリードギターのメロディー。ポストパンクのギターならではのクールな印象と、そのイメージに少し反するような明るい表情の両方を持った特徴的なサウンド。それは、今までのポストパンクにはないような感情豊かな幸せ。パンクミュージックへの憧れ・ロマンを込めるようなハートが溢れまくってて本当にやられた。最初から最後までずっとその幸せが鳴り響いてる。サウンドメイキング的にもやっぱり超本格的で本当に楽しい。特にSelf Meyersのギターには本当に驚いた...「ギターが好きすぎる」という理由だけでこんなに泣いちゃうなんて...。

ストパンクの申し子でお馴染みのFontaines D.C.も最高だった2020年、他にもThe Wants, The Homesickなど、私の中でポストパンクが次々に来てる。ベストアルバムのランキング作るのが趣味なのだけど、Fontaines D.C.もThe Homesickも傑作すぎて優劣付け難い、、、(悩)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Mamalarky - "Mamalarky"

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無敵のハピネス

 ガレージ・ローファイならではの飾り気のないカジュアルなスタイルを活かして、純粋無垢の能天気なハピネスを生成しまくるようなロック&ポップス。元気いっぱいに飛び出していくようなロックから、のどかで落ち着いたブルージーなポップス(You Make Me Smile (M2))、さらには胸がいっぱいになるほど美しくてたまらないバラードまで、本当に幅広いタイプの曲を兼ね備えてる。それらの音楽性が全て、ハンドメイドのカーペットみたいなジャケの中にいる謎キャラの精神状態とコネクトして、能天気なハピネスをどこまでも最強にさせてるのが本当にやばい 笑。マジで、全てを無に帰すほど無敵のハピネスが表れてると思う。ほんと、このジャケのような精神状態で日々を暮らしたい、、。ジャケットによって音楽のハピネスを高めていく他の例だとAnna MeredithのVarmintsとかがあると思うけど、こういう能天気でピュアな音楽ってマジで大好きすぎる。そういう風に、ガレージ・ローファイなMamalarkyの音楽性を、最高にハッピーなアルバムアートワークに適合させたコンセプト的な部分でもう100点満点の作品だと思う。

実際に収録されてる曲も本当に本当に最高...。可愛くハジけるガレージロックFurry (M1)とか、Crumbのようなジャジーでサイケなドラッグ作用さえもあるCosine (M4)とか、全曲がほんとに最高水準の素晴らしさ。その中でも、Big TroubleからAlmighty Heatまでの5, 6, 7曲目の流れが完璧すぎてる。Big Troubleは本作で1番グルーヴィーな曲。大きくウェーブするベースとアナログシンセ、そこにハマっていくギターのアクセント、ロックの曲としてとても完成されてると思う。この曲だけ原型が壊れるほどローファイの効かせ方も強烈で、楽しさレベルもめちゃめちゃ高い。この曲でMamalarkyというバンドの最高さを確信できた。

そして、Mamalarkyらしいジャジーな特性が強く表れたHero (M6)も格別にやばい。体が制御不能になって強制的に動いちゃうくらいグルーヴがゆらゆらがしてる。あまりにも心地いいからほっぺたの筋肉がおかしくなるくらいニヤニヤした 笑。会社のお昼休憩中に聴いてたら体の揺れが止まんなくなっちゃって大分恥ずかしい思いをするくらい...。フロントマンのLivvy Bennettフルアコースティックギターのキャラクターがほんとに魅力的な曲だと思う。

その後に訪れる美メロが極めに極められたAlmighty Heatも頭おかしいくらい最高。。。能天気なローファイのサウンドが持つ暖かさでここまで泣かされることなんて考えられなかった。テロテロに溶けてしまうような恍惚の美メロを持ってる曲ってたくさんあると思うけど、その中でもMamalarkyのこの曲は頭一つ飛び抜けてると思う。5曲目のBig Trouble, 6曲目のHeroからのコンビネーションもやばいし、この曲が決定打となってMamalarkyの大大大大ファンになった。そして当初1位予定だったHypoluxoよりも順位が上になっちゃった 笑。

今作は、ガレージ・ローファイのポテンシャルを余すことなく発揮しためちゃめちゃ最高なロック&ポップス作品だったと思う。音楽性もジャケもテーマ的にも私のツボがえぐられまくる。冗談抜きで今年のベストアルバムのTOP5でもいいくらい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

★プレイリスト

Apple Music ↓

温の「2020年11月ベストアルバム(温)」をApple Musicで

Spotify

open.spotify.com

 

★その他・とてもよかったもの

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Charles Webster - "Decision Time"

Dan Kye - "Small Moments"

Hachiku - "I'll Probably Be Asleep"

King Gizzard & The Lizard Wizard - "K.G."

Madisenxoxo - "Plead No Contest - EP"

Off The Meds - "Off The Meds"

Ólafur Arnalds - "some kind of peace"

Routine (Annie Truscott & Jay Som) - "And Other Things - EP"

Tiña - "Positive Mental Health Music"

Told Slant - "Point the Flashlight and Walk"

 

 

 

★11月20日リリースされた新譜 感想

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12月はSigur Rósの新譜(必修科目)