アルバム感想(温)

My Favorite Music

「2020年上半期『月間ベストアルバムTOP10』から漏れてしまったベストアルバムTOP10」感想

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ランキング作るとさーーー「やっぱりこれもいいなー」が絶対に出てきてしまうよねーー嘆

 

2020年上半期の漏れ&逃しのベストアルバムTOP10の感想

(順番はあんまり意識してない) 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. Bibio - "Sleep On The Wing" (6月)

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情景描写スキルが半端ない

 ヨーロッパ民謡の世界観設定をもっとガチで極めたようなクラシックなフォーク・カントリー作品だと思うのだけど、前作Ribons(2019)よりも統一感のあるメロウでシリアスな曲調として仕上がってて、メロディーによる情景描写の尊さがもっと巨大になってるところがめちゃめちゃ最高。田舎と都会を行き来するアマツバメの生涯を描いたようなジャケットアートも素晴らしすぎてやばいのだけど、アルバム全体がクラシック・フォークの上品でノスタルジックな美しさを所持していて、本当に絶大なまでに心に沁みる。特にこのクラシック・フォークの音楽性については、メロディーによってヨーロッパ民謡のような文化的背景を演出するクオリティが本当にやばいと思う 笑。公式YoutubeチャンネルがアップしてるOakmossのセッションのライブとかも鳥肌級のよさなのだけど、ヨーロッパのその土地ならではの広大なアルプスとか、それらの美しい田園風景などが呼び起こされる。そういったようなケルト民謡・アイリッシュ音楽にも通ずるような牧歌的なストリングスセンスもあれば、ドリーミーでディープなエレクトロニカで音楽の物語にミステリアス性を付加しまくるCouple Swim(M2)とか、強烈なノスタルジーを引き起こす超ローファイのLightspout Hollow(M3)などもあって、ほのぼのとした気持さよさ以上に思い馳せるような深い感動があったり。私的インディーフォークとしてのツボ要素や文化的背景の描写スキルだけでなく、そういった奥深い味わいもあって本当に最高。

私はカントリーというジャンルの王道作品はほとんど聴かない...。強いて私が大好きなカントリー作品を挙げるとしたら、Fleet FoxesのSF(2008)かなと思う。ウエスタンなステーキ屋さんとかの店内BGMで流れるようなおちゃらけたカントリーとは異なるのだけど、Fleet Foxesは広大な大地を踏みしめるような美しい迫力の気持ちよさが本当にたまらない。私的に、カントリーにはそういった大地を感じさせるような広大な空間を生成する能力を秘めてると思う。Bibioの今作もヨーロッパ民謡的なカントリーっぽさを持ってると思うのだけど、私が本作で特に大好きなのは、メロディーによる情景描写スキルとカントリーによるその広大な空間生成の効果、それらの両方を持ち合わせているというところ。このダブルなセンスの感じが本当に最高だと思う。自然豊かなアルプスやそれらの美しい田園風景としてのワールドの体験をもっと充実させる感じ。ただでさえ作品の物語のイメージをより膨らませるジャケットの世界観補正効果がやばいのに、本当に本当に素晴らしい作風だと思う...笑。

フォーク・カントリー作品といえば、今年4月に前倒しリリースされたLaura MarlingのSong For Our Daughterとかも本当に素晴らしかった。そちらは歌パフォーマンスとしても抜群な作品だったと思うけど、アルバムとしての全体的なアート感の奥深さの魅力を詰め込んだBibioのこちらの作品も本当に素敵。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Mura Masa - "R.Y.C" (1月)

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新しいクラブカルチャー(ロックのリバイバル

 今作はClairoやGeorgia、さらにはWolf Aliceなどとフィーチャリング・コラボした曲など、Mura Masaのクールなトラックメイキングに実力派アーティストの魅力が組み合わさりまくった最高の楽曲達が用意されてる素敵なアルバム...、という時点でよさが問答無用に確立されてる感じがする 笑。何より私がこのアルバムに対して強く惹かれたところは、前作ST(2017)のように新しいクラブカルチャーを創造するスタンスを持ちながらも、そこに私の大好きなロックのリバイバルが含まれてるように感じられるというところ。今作は、純粋な和音ベースが超印象的なRaw Youth Collage(M1)のように、全体を通じてシンプルにレコーディングされたベースサウンドが強調されてる感じがする。それに、ギターをかき鳴らす刺激的なイントロのVicarious Living Anthem(M6)など、一般的なクラブミュージックにはないバンドの感じをよく所持していたり。チルアウトのR&BやEDMが充実してた2010年代のムーブメントに沿うような部分もありつつ、ギターとベースがよく聞こえるロックのオーラを持ってるところがめちゃめちゃ大好き 笑。中でもNo Hope Generation(M2)やDeal Wiv It(M5)なんかはSleaford Modsのグルーヴ感があったりして思わずフフってなる 笑。イケイケ度が高めのパリピ属性がある感じもとても楽しめる。そしてそして、シューゲイザーによってクラブミュージックのフロアをもっと熱くしたようなTeenage Headache Dreams(M10)とかも本当に最高すぎてやばい 笑。テンションがぶっ飛び上がるようなダンスの熱狂にドリーミーな轟音ギターの組み合わせが本当に完璧のよさ...笑。何度も聞きたくなる今作のお気に入りナンバーの一つ。

前作STでデビューしたMura Masaは、EDMのようなモリモリな迫力表現が発展していく昨今のエレクトロニカ・クラブミュージックに反して、Jamie xxやFour Tetのような繊細でクールなスタイルをメインストリームのクラブカルチャーにしっかり展開できた影響力の高いアーティストだと思う。今作もロックのユニークな発想で他とは違う新しいクラブカルチャーを創造してる感じが本当にすごいと思う。代表的なのだと、Clairoのスキルによって贅沢すぎるほどオシャレなダンスミュージックになったI Don't Think I Can Do This Again(M3)とか、Georgiaのヴァイタリティと歌詞のメッセージ性で死ぬほど素敵なフィーリングが溢れたLive like We're Dancing(M9)など...。これが今のクラブミュージックの最前線か...!と感じさせるようなクラブシーンの更新の瞬間と立ち会うみたいに本当にワクワクした。ちなみにI Don't Think I Can Do This AgainはClairo主張が最高なMVもめちゃめちゃ大好き。

Mura Masa氏、今年の1月のベストアルバムの中に入れられなくてごめん...笑。さりげなくスルーしてたけど、ちゃんとベストアルバム級だった。歳が近いというのもあるし、とても応援してる 笑。(私より360日だけ年下)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Hot Mulligan - "You'll Be Fine" (3月)

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感情発散のセラピー

 単位日数あたり再生回数でいえば断トツかもしれないOG Bule Sky(M1)を含んだ今年私が忘れられない思い出を凝縮しまくったアルバム。The World Is A Beautiful Place & I Am No Longer Afraid To DieとかI Love Your Life Styleとかと同じ、さっぱり爽快系のエモ・パンクなのだけど、爽快感とエモ要素、どちらもフルパワーで出力するような高い火力を誇ってるところが本当に最高だと思う 笑。喉を潰すように全力をぶつけてシャウトするようなボーカルと、感情を爆発させるように激しく演奏するエモ・パンクのスタイルなのだけど、楽器に込めた圧力が全て最高に気持ちよく発散していく広大で自由なフレッシュさがめちゃめちゃある。加えて、夜空に光るようなメランコリックな美しさを演出するギターが特徴的なGreen Squirrel in Pretty Bad Shape(M4)やAnalog Fade (New Bule Sky)(M6)など、爽快フレッシュなフィーリングとは別タイプの、心に沁みるような気持ちよさのエモーションもある。エモ・パンクとしてでなく、みなぎるエネルギーを復活させるようなハードなパワーポップしてもとても素敵な作品だと思う。

とにかく1曲目のOG Bule Skyが本当にたまらなくてやばい。高速のメロディーが入り混じるマスロック的なハイテクニックのアンサンブルを展開する曲なのだけど、爽快系エモ・パンクの今作の中で最も心をえぐるような痛みと切なさがある。マスロックのテクニックならでは桁違いの爆発力や、めまいが起きそうなほど勢いの激しい揺さぶりなどを利用して、爽快フレッシュな気持ちよさに痛み・悲しみのような負の感情を付加させてるのが本当にやばすぎる。ものすごく気持ちいい曲なのに、メンバー全員が悲しくて辛くて泣きじゃくりながら演奏してるような感じ。ラストのギターどドラムが交錯するパートではあまりのエモーションに心臓がはちきれそうになる。

~ここから少し思い出タイム~

私は今年4月に社会人デビューをしたのだけど、大学院まで6年間過ごした茨城の生活が本当に本当に楽しかった。週末は朝から映画館までドライブしながら音楽を聴いて、映画館で映画を2~3本ハシゴして、レイトショー後の夜の帰宅ドライブでまた音楽を聴いて...。フジロック資金を稼いだイベントスタッフのバイトや家庭教師のバイトの日々も本当に楽しかったし、大学の自分の時間の全てを自分の大大大好きなものに費やして、この上ないほど充実した幸せな学生生活だった。学業に関しても、他の国大でゼミに参加したり、オーストラリアの国際学会に一人で参加したり(←本当にウルトラスーパーハイパー神。。。。)、人生で一番幸せ時期だった。

新社会人で東京に引っ越す準備をしてた3月、もう二度と戻れない学生最後の春休みの時間がたまらなくエモーショナルだった。充実しまくりな今までの生活とのサヨナラ、新生活における期待と不安、もっというとコロナの影響とかも。嬉しさもあれば人生で1番楽しかった学生生活に二度と戻れないという強烈な切なさもあって、自分の感情を上手く発散できずにいた。

そんな人生の大転換期の3月に聴いてたから、1曲目のOG Bule Skyの心臓がはちきれそうになるほどのエモーションが、自分の内面に抑え込んでいたはちゃめちゃな感情とめちゃめちゃ深い共感を起こしてた。音楽が過度に大好きな人は感情を表現する人が苦手な人が多いのかなとか思うのだけど、感情を表現するのが苦手な私とかは特に、この曲で膨大な量の思いを発散することができて、一回ボロっボロになるまで泣いたことある...笑。桁違いの爆発力によって、感情が上手に吐き出せた。そういう体験・思い出が詰まってる曲。曲調も春休みの時期にウルトラなぴったり感じだし、マジで取り憑かれたようにリピートしてた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Houses Of Heaven - "Silent Places" (5月)

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ドロドロでブラッディーになっていこう

 アンダーグラウンド感が半端ないクラウトロック・インダストリアルのめちゃめちゃダークなやつなのだけど、そのダークなフィーリングをよりドロドロに、よりブラッディーに描いたような濃厚さがあって本当に最高…笑。音のキャラクター的には伝統的なクラウトロック・インダストリアルの諸作品のそれなのだけど、A Place Between(M4)やCanneling(M5)のように、シューゲイザー的轟音ギターのヘビーな存在感をもっと出してる感じ。当時のアンダーグラウンドの精神状態をそのままに、それらのダークなフィーリングをシューゲイザー・エモのアイディアで進化させてる感じが本当にかっこいい。こういうドロドロしてるブラッディーでダークな音楽、時々病みつきになるように摂取したくなる 笑。例を挙げるなら、Ellen AllienのNostとかZombyのUltra(←好きすぎて本当にやばい)とか。溜まったストレス抑止の制限を全部解除して、気持ちを完全なる悪に染めていくような最高のゾクゾク感。特にHouses Of Heavenの今作は、All Possible Obstacles Are Present(M3)のシンセのバッキングみたいに、These New Puritansのにも通じる神々しいアートロックの感じも含まれてるからとてもハマる。実際Houses Of Heavenもモデル体型のメンバーが革ジャンしてたり、バンドのアーティスト写真もめちゃめちゃイケメン感あると思う 笑。

ブラッディーな気持ちになりたい時があるということ、超個人的な意見だけど、どれだけ善人な人でも、どれだけ仏のような優しい人でも、人間は誰でも絶対的なダークサイドを持ってると思う 笑。(心を単位化・数値化するのは不可能で、正と負の両方向に対してフィーリングは無限に存在すると思うから)。たまにそういう作品を鑑賞して、自分の内面のダークネスにどっぷり酔いしれたくなる。そういった人間の内面のダークサイドを扱った作品の類だと、映画『RAW 〜少女の目覚め〜』とか本当に大好きでやばい。普段大人しい思春期のベジタリアンの女子がありえないほどに肉食に目覚めていくそのダークネスの描写は、衝撃的でありながらとても普遍的だと思う。さすがカンヌ映画祭で批評家の高評価を得ただけある、本当に共感できるダークネス。ちなみ私的にその映画で大好きなシーンは、鏡を見つめながらダンスするシーンです...本当にお見事すぎる。

話が少し脱線してしまってごめんなさい...笑。『RAW 〜少女の目覚め〜』が本当に大好きでつい...笑。ほんと、伝説の名言「緑になるまで戻ってくるな」とか本当に最高すぎるからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Blake Mils - "Mutable Set" (5月)

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色んな魔法を込めてるやばさ

 アコギだけでなくクラシックギターの起用など、メロウで上品な本格派フォークの作品として既に至高の仕上がりな感じなのに、そのフォークの形式を基本に、ニューエイジ・エクスペリメンタルの音楽性で人間の聴覚の感度を何倍にも高めるような特殊な感覚拡張をしてる感じが本当に素晴らしすぎると思う。Never Forever(M1)やMay Later(M2)など、現実味のあるフォークのバッキングにアンビエント〜エクスペリメンタルのアトモスフェリックで超常的なサウンドを混ぜてしまうようなセンス。意味分かんない感じで例えるなら、あまりの特殊性に人間で初期設定されてる聴覚のサンプリングレートでは情報処理ができなくなって、感覚器官としての機能がリミットを超えて神経にバグを起こしちゃうような感じ 笑。作品全体の雰囲気としてはThe Cinematic OrchestraDamien Riceのような死にたくなるくらい切なくて美しいアコースティックの感じがあると思うのだけど、ニューエイジ技術によってそれらに色んな魔法を込めてるから本当にやばい。ただでさえ心に沁みるフォークとしてのよさをめちゃめちゃ持ってるのに...本当に絶品のアルバムだと思う。

Blake Milsの今作で特に大好きなのは6曲目のVanishing Twin。陽だまりの中でくつろぐような癒し的な世界なのに、非現実的で神聖なニューエイジのニュアンスがある感じ。存在するのが嘘だと思ってしまうような神秘的で美しすぎる冒頭のサウンドなど、死にたくなるくらい切ない感情が引き立てられる曲なのだけど、ニューエイジの技術でそれらの死にたさレベルもめちゃめちゃ高められてる感じがする 笑。なんなら、「死にたくなるくらい切ない」とかもう通り越して、もっと不気味で怖いニュアンスも出てきてたり。ノイジーなギターも本当に素晴らしいし、影響力が絶大で本当に深い感動が得られる曲だと思う。

The Cinematic Orchestraを挙げたけど、"感覚拡張"がある今作は、視覚までも使用されるような映画のサウンドトラック的な味わいも持ってると思う。特にMirror Box(M8)とかのインストの曲とか、物語のイメージに思いふけるように聴いてみたり。The Cinematic OrchestraのMa Fleurが超大好きというのもあるけれど、映画的音楽という点でもとてもツボだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Melenas - "Días Raros" (5月)

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上半期ベストジャケ

 ガレージならではのロックの楽しさ、本格派ポストパンクの旨味、そして洗練されたドリームポップの美的センス....、主にこれらの3本槍を持ち味として取得してる感じが他のバンドよりも個性的で本当に最高だと思う。そんなMelenasのデビューアルバムで私が特に大好きなところは、メンバー達をめちゃくちゃ素敵に捉えたパーフェクトなジャケ写の影響力によって、それらの個性的な魅力・Melenasというバンドの存在感がもっと最強になっているというところ。今年でいうと、TennisのSwimmerとか、WilsenのRuinerとか、メンバーのジャケ写によって奏でられる音楽の特別感がもっと増すタイプの魅力的な作品ってあると思う。Melenasの今作も、マルチな特色を凝縮した個性的な音楽性だけでなく、素敵なメンバージャケによってバンドがさらにかっこよくなってる感じがする。私はジャケット大好き一族の人間なので、こういう作品はものすごく高評価したくなる...笑。本当にロケーション・シチュエーション・メンバーのファッションセンス・配置・角度・座り方・写真のフィルターのチョイス、全部全部ウルトラ最高だと思う 笑。

また、前にも触れたけど、今作はガレージロック・ポストパンク・ドリームポップの3つの接点に、オルガンシンセがセットされてるところがめちゃめちゃ秀逸だと思う。オルガンが持つ古典的なセンスはガレージロックの古風な部分によく合うし、Stereolab感のあるポストパンクの部分はトコトコかわいいキャラ像にもぴったりで、オルガンだからドリーミーな美しさも最大に発揮できる。今作の個性をつかさどるメインのエレメント、本当に最高のアイテムだと思う。そんなオルガンシンセを主題にしたようなEl Tiempo Ha Pasado(M5)とかは初めて聴いたとき美しすぎてびっくりした。

今作はいわばガールズのガレージロック・ポストパンクということだけど、Camp Copeみたいな愛おしい仲良し感も感じられるところもめちゃ大好き 笑(てかCamp Copeがやばいくらい大好き)。スペインという点だとMournとかHindsも連想する。MournとHindsに関しては下北沢のライブハウスに来てたと思うけど、Melenasも来る?笑

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Mumrunner - "Valeriana" (3月)

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他のドリームポップ作品にはないロック力

 めっちゃ久しぶりに優等生のドリーミー系インディーロック作品と出会った 笑。DIIV, Beach Fossils, Wild Nothingsなど、2010年代に発達した幻想性の高いネオアコ~サーフロックのそれなのだけれど、それらの諸作品よりもロックとしてのモチベーションがもっと最強で、ギターリフのかっこよさを主張するようなフレーズ力を持ってたりしてて本当によい。ドリーミーな優しさの裏に秘めた熱狂を間奏からラストスパートまで全力で繰り出していくようなFoe(M1)、浮遊感のやばい優しすぎるボーカルなのにアグレッシブに攻めるようなドラムの存在感が光るRemember Me(M2)、The DrumsのようなミニマルなポストパンクもやっちゃうEasy Life(M4)などなど、脳裏でぼんやりと輝く優しくてたまらないサウンドスケープを持ってるのに、モチベーションの高いロックを演っててめちゃめちゃ好感が持てる 笑。今まで自分の目に止まらなかったのが不思議なくらい、とても安定したレベルのよさがある作品だと思う。DIIVやWild Nothingsを大好物にしてる友達全員に布教しまくりたい 笑。

私的にはやっぱり、他のドリームポップ作品とは一味違うMumrunnerの個性的な印象を与えるFoeをアルバムの1曲目に用意しているところが本当に最高だと思う。2010年代ドリームポップ諸作品と同じようなドリーミーオーラを出しまくりながらも、それらとはどこか違いを感じさせるロック力のポテンシャル。光輝く優しい幻想を持ってるのに、間奏パートのギターソロから闇闇したカラーに変化させていく美しいコントラストなどがあってめちゃめちゃエモーショナル。そこで確実にリスナーをつかんだ後、本作メインなトラックともいえる2曲目のRemember Meでリスナーを完全に虜にする流れも本当に完璧...笑。Mumrunnerの個性を魅せるためのアルバムのストラテジーが大成功してると思う。

今年のドリームポップ作品でいうと、2月にリリースされたWilsenのRuinerとかも本当に素晴らしかった 笑。今の時代、よりリスナーの印象に残るドリームポップを作るのってなかなか難しいのかなとか思うけど、その中でも個性的な作品を作れるって本当に最高だと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Bad Moves - "Untenable" (6月)

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ヘビロテを約束

 初めて聴いたとき、本当に最高のメロディーメイカーすぎてやばいなって思った 笑。かわいくてハッピーなパワーポップなのだけど、Party with the Kids Who Wanna Party with you(M3)、Toword Crescent Park(M4)、Tides(M11)など、リスナーにヘビロテを約束させるようなキャッチー性の鬼高いメロディー。アグレッシブな性質を持つパワフルなロックのよさももちろん所持してると思うけど、どちらかといえばメロディー重視で音楽を作ったようなインディーポップの作風がメインの感じ。元気溢れるロックのテンション感を借りてメロディーのノリがハイクオリティになってる感じが本当に病みつきになる。Superchunk、Charly Bliss、The Bethsなど、大好きなパワーポップのバンドはたくさんあるけど、ここまでロックとポップの二刀流が上手にできてる感じもなかなか秀逸な気がする。あと私はLocal Radio(M1)やNight Terrors(M2)など、メンバー全員が本当に楽しそうに歌ってる感じもめちゃ大好き。アーティスト写真を見てもその雰囲気がよく出てると思うのだけど、めちゃくちゃ楽しそうなバンドだなって思う 笑。

私的には、特に3曲目のParty with the Kids Who Wanna Party with youが本当にやばい。パワーポップならではのポジティブさの中にほんのちょっぴり切ないテイストがミックスされてて、メロディックなよさ以上にエモーショナルな作用もあるところが本当にたまらない。シンプルなバンドの編成ながらもメロディー力がものすごく活きてると思う。このアルバムがベストアルバム級だったのはこの曲の存在がでかい。本当にずっとヘビロテしたくなる。(6月ベストから漏れてしまったけど...)

メロディー重視よりもロック重視を思わせる8曲目のFog Is a Funny Thingもとてもよい。声質的にもめっちゃSuperchunkにそっくりでちょっと笑ってしまう 笑。ギターのパワーコードだけで音楽が成り立ってる感じ、このくらい無駄が削られてるシンプルなロックもやっぱり大好きだな...笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. The Strokes - "The New Abnormal" (4月)

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来年のフジロックの待ち遠しさをもっとエモーショナルに

 「ストロークス新作!いつもウルトラ最高のヘビロテチューンを届けてくれるけど、スーパー期待してハードルを上げすぎるのもよくないし...心をニュートラルにして平常心で...」→1曲目再生→「いきなり最高かよーー!!」という流れでした 笑。とにかく私は1曲目のThe Adults Are Talkingの虜になりまくってやばかった。前作Comedown Machine(2013)でいうところのOne Way Triggerみたいなトコトコ・テケテケ感があるストロークスならではのチープなロックのやつ。音楽がかわいく進行していく無敵なまでに満たされるような最強のフィーリングスがあるのに、そこにJulian Casablancasの歌いこむようなかっこよすぎるボーカルで無敵感をさらに高めてしまうという...笑。ドラムのオープンハットによるスウィングのオシャレなダンサブル感もたまらなく好き。紛れもない2020年上半期のベストソング。

今作がとにかくスペシャルだったのは、At The Door(M6)やNot The Same Anymore(M8)など、バラード的な雰囲気や哀愁さえもを感じさせるようなロマンチックな作風の部分が、2020年のフジロックを最高に特別なものにさせる予感を十分に与えてしまったというところ...泣。名作・名曲だらけのストロークスのセトリを想像して楽しむのももちろん最高すぎるのだけど、今作をアルバムで通して聴いて、「あぁ...この曲のこの部分でギターの二人が...」とか「あぁ...苗場のあの空間でこの曲を聴いたら私は...」とか想像しまくったりするのもこの上ないほど充実してた。そこには、開催が厳しい中で本当に観れるのか、観れないのか、の狭間で揺れてたメランコリックな複雑なフィーリングも影響してたと思う。残念ながらフジロックは中s...延期になってしまったけど、このアルバムのロマンチックな作風や、Julian Casablancasの歌のメランコリーのそれらが、フジロックへの切ない感情をとっておきの思い出として保存し、来年のフジロックの待ち遠しさをもっとエモーショナルにした気がする。フジロックは"今のところ" 参加アーティストに変更なし...伝説のバンド、本当に死ぬまでにあのステージを、あのライブを、あのパフォーマンスを観たい...!!そしてまたThe Adults Are Talkingを再生するのである...笑。

今作を機に過去作を復習したらストロークスにめっちゃハマりだした 笑。機会があれば私的ストロークスベストソングとか作ってみたい 笑。(The Adults Are Talkingも絶対入る)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Porridge Radio - "Every Bad" (3月)

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情緒不安定の危なげな狂気に満ちた美しさ

 本気を出したロックにできること、私が大好きなもので例を挙げると、Radioheadによる魂が抜けるような強烈な現実逃避、My Bloody Valentineによる轟音ノイズ素材のベットで眠る気持ちよさ、Tame Impalaによる幸せホルモンを脳内分泌するエクスタシー、Real Estateによる純粋でリアルな夢の世界の創造......。ロックが持つシンボルは本当に色々あって、いつの時代もワクワクさせてくれる果てしない可能性を秘めてると思うのだけど、Porride Radioも、他のどのロックにも属さないような、「情緒不安定の危なげな狂気に満ちた美しいエモ」というような新しいシンボルのロックを提示してる感じが本当にたまらない。それは、昨今のオルタネイティブロックがエレクトロニカ技術を多用する傾向があるのに対して、もっとクラシック思考のシンプルなサウンドを意識したインディーロック。Sweet(M2)やCircling(M9)のように、美しいエモのフィーリングの中に暗くて湿ってるダウナー感とか、恨みや呪いのような狂気を含ませている感じがする。まるでインディーロックの形式のままサッドコアに接近するような不気味な感覚。明るい曲調があるBorn Confused(M1)やGive/Take(M7)のようなフィーリングも、それらの不気味な狂気に飲まれていくような危なさがある。情緒不安定で耐えがたい不安やフラストレーション、嘆き苦しみ、怒り震えるような負の感情のそれらを、シンプルでありのままに爆発させて描くようなところが本当に素晴らしいと思う。芸術性の観点からすれば、去年のblack midiとかに匹敵する感じがする。正直に言うとね!本当にごめん、よさが遅れてじわじわやってきた! 笑。3月ベストに入れられなくてほんとにすまん...笑。

新しいシンボル・芸術性というのは、言い換えればオリジナリティの高い作家性がよく表れてるということ。代表的なところだと、ただでさえ狂気じみた凄まじいエモーションなのに、緩急のあるフレーズでさらに勢いをプラスするようなSweetとか、中盤で不意に暴れまわるような攻撃性を発揮し出すDon't Ask Me Twice(M3)とか。不安定な危なさや真に迫る本気のエモーションを本当にユニークに表現できてると思う。中でも8曲目のLilacとか本当に最高すぎてやばい。絶望の悲痛な思い、夢想的な癒しの現実逃避、それらが入り混じるようなカオスに溢れた絶大すぎるエモーション。もう本当にありえないくらい感動する。Pop Song(M6)からのGive/Take(M7)でリスナーの調子を狂わせた後、襲い掛かるようにLilacを持ってくるところも本当に大好き。

新しいシンボルのロックということを言ったけど、そんな新しさという点だと、バンドのアーティスト写真の感じなんかもめちゃくちゃ好みなんだよね...笑。このベリーショートヘアのフロントマン、なんかアートポップバンドのAlaskalaskaの感じがする(大好き)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

プレイリスト🍎

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