アルバム感想(温)

My Favorite Music

「2020年4月ベストアルバムTOP10」感想

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今月もThe StrokesFiona Appleなど、ビッグな話題作があってめちゃんこ盛り上がった月だったなと思う。取り上げたいアルバムが10枚から溢れてしまったので、ベストソングTOP10枠もおまけで用意した。私的にはBraidsやThe 1975もスーパー楽しみにしていたのだけど、お楽しみはまた今度...。

2020年4月リリースの新譜のベストアルバムのTOP10、感想をランキングで

(上位2つは両方1位!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. EOB - "Earth"

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Radioheadのスピンオフバンド

 Ed O'brienのソロ、数々の大大大名作を生み出しまくったRadioheadの今までのキャリアを持ってるというだけあって、UKオルタナロックのめちゃめちゃ"いい音"がいっぱい鳴ってて最高...笑。それ以上に、カントリー・フォークやディスコパンクへもリンクするような多様性のある実験的なロックも本当に楽しい。正直に言ってしまうと、Colin Greenwood(Radioheadのベーシストでおなじみ)が参加してたり、Portisheadのギタリスト(Adrian Utley)や、その他キャリアのあるアーティストとコラボした "Radioheadのスピンオフバンドのアルバム"というオーラがあるので、その時点で無条件に高評価したくなる 笑。実際に中を開いてみると、00年代のガレージ感を取り入れたUKロックエッセンスの濃いShangri-La(M1)、コスミックなエレクトロニックサウンドが本当に美しいディスコパンクのBrazil(M2)、ドリーミーなフォークの中でブーミーなギターも混ぜちゃうMass(M5)、メロディーからグルーヴ感までRadiohead感がすごくてニヤニヤしちゃうBanksters(M6)、自由なアンサンブルが最高に魅力的なOlympik(M8)......などなど、よさ密度がめちゃくちゃ高かった 笑。私的には、Dave Grohl, Josh Homme & Trent ReznorのMantraのような、シンプルなバンドアンサンブルの持ち味が存分に表れたおもしろさを感じたのだけど、じっくりとハマっていくような中毒性があってとても大好き。

特にお気に入りなのが、BrazilとOlympik。ずっと聴いてられるようなクセのあるドラミングが本当にツボるし、怪しげな輝きを放つサウンドとかがネオンライトみたいなジャケットとよくマッチしてる感じも本当に最高。先月リリースのUltraístaもそうだけど、Radioheadに携わる人のドラムがとても大好きなんだと再認識した 笑

これを機にRadioheadのメンバーをググってたら検索候補のところに「Radiohead エド いらない」とか出てきた 笑。それはかわいそすぎる 笑(Earthめっちゃよかったぞ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Laurel Halo - "Possessed"

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リアリティの高い感情表現というレベルアップ

 フリージャズ的アプローチを取り入れた実験的で最高なハウス・エレポップの傑作Dust(2017)、これまでに築いたエクスペリメンタルなスキルをアンビエントに適応させまくったRaw Silk Uncut Wood(2018)、それらの経験でフロア・オリエンテッドなテクノ・ハウスの能力を爆発させたDJ-Kicksシリーズ(2019)...進化が止まらないスーパールーキーのエクスペリメンタル作曲家のネクストステージは、"感情表現のリアリティをとことん突き詰めた映画音楽"...!!もう本当に最高すぎる 笑。膨大な量のバリエーションを持つ彼女の表現技術が、絶望的な深い悲しみの感情に的確に応用されてる感じ、彼女のエクスペリメンタルな迫力で感情の深刻性が増大されまくっているのもあり、とても最高なことになってると思う。

今作で最も素晴らしいと思うところは、人間的な感情をより際立たせるようなピアノの配置センス。全体を通してみるとRaw Silk Uncut Woodのアンビエントまっしぐらな1曲目や6曲目に近い作風があって、あたり一面に立ち込める冷たい感触の濃霧をモクモク発生させている感じがあるのだけど、そこに亡霊のごとく出現するピアノの存在感が本当に美しい。ピアノという点でいうと、アルバムの節々に置かれてるめちゃめちゃクラシックなRome Theme(M2, M6, M9)もとても特徴的。深く立ち込める薄ぼんやりとした世界観の中で、背筋が凍るような怖さを与えるようなインパクトにもなっていて本当に素晴らしい。こういう部分からも、今作でLaurel Haloが完全に映画音楽家として確実にプロになったのだと感じる 笑。Trent ReznorやThom Yorkeのように、今後もいっぱい活躍してほしい。

このアルバムは、2018年にオランダのロッテルダム国際映画祭(ギルティが観客賞受賞に選ばれたやつ)の最優秀作品賞(Hivos Tiger Award)の候補になったPossessedという映画のサウンドトラック。日本では違法な手段でしか見れないっぽいのだけど、トレーラー見ただけでもかなりおもしろそう。Laurel Halo関係なしにめちゃ観たい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Kluster B - "B"

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エクスペリメンタルなのにめちゃめちゃロック!

 サイケデリック、ドリームポップ、シューゲイザー、もっというとアートロックへのアクセスもあったりして、天国から地獄まで様々なヴィジョンを見せてくれるようなめちゃくちゃロマンの溢れたエクスペリメンタル。それでいながら、ギターリフとか含めた基本的なロックの美味しさを凝縮した"王道オルタナロック"の主軸を持っているというところが本当に最高 笑。オルタナロックの新たな可能性を模索したような冒険性や実験性があって、ロックファンにとても突き刺さるものがあると思う。もともとオルタナロックっていうジャンルって超幅広くて、色々なタイプの作家性を持ったユニークなバンドがめちゃくちゃあると思うのだけど、本作はエクスペリメンタルで特異な作風を持ちながらも "めちゃめちゃロックしてる"というところが本当にたまらない。様々なジャンルを巡りながらも最終的に私たちの大大大好きなロックに帰還する感じ。インテリジェンスなかっこよさもあるし、新時代のバンドとしてもめっちゃ気に入ってる 笑。

私的には、初期のHundred Watersみたいな遊び心が溢れたサウンドメイキングとか、シンプルにぶれないモダンロックっぽさとか、大好きなところが本当にたくさんあるのだけど、何よりやっぱり、心霊的なニュアンスさえも生み出してしまうように美しいLinnea Hallのボーカルが本当に素晴らしい。PortisheadのBeth Gibbonsのような深い悲しみを背負ったものを感じるのだけど、Unicorn(M3)の後半の部分とか、曲によってはボーカルがやばいほどのよさを発揮してると思う。一般的なロックには出せない幻覚的なヴィジョンの生成に貢献していて本当に素晴らしい。

今作を通じてオルタナロックの定義みたいなものを改めて考えたのだけど、私的には"歌うドラム"なんかはオルタナロックの大きな特徴だと思う。例えるならBroken Social SceneDeath Cab For Cutie(Jason McGerr)、ちょっと外れるとGang Gang Danceとかも。そんなドラミングという点でいうと本作9曲目のWildなんかがめちゃくちゃ最高でやばい 笑。ちなみにWildは去年にシングルカットでリリースされているのだけど、キツネジャケがマジで神。(→これ)精神崩壊するくらい大好き。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Jerskin Fendrix - "Winterreise"

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まるで多重人格のサイコパス

 数回聴いても作品のキャラクターが全く把握できないほどカオスで異常すぎなエクスペリメンタル・ポップなのだけど、予期できないタイミングで急に心臓を掴まれるような爆発力のある感動があって本当に素晴らしい。EDM・トランスのようなハイテンションなエレクトロニカ(Onigiri(M2))を繰り出したかと思ったら暗黒にまみれたノイズ・スロウコア(Last Night in New York(M3))に転移したり、そこから気持ちの悪いダーク・ポップになったと思ったら真心を込めたシリアスな音楽を急に展開しだしたり...まるで多重人格のサイコパスなのかと思うくらい、一貫性の見えない恐ろしさとゾクゾク感がある。それでも、音楽の魔法性を高めるように伴奏の細部まで凝った音作りをしていたり、ふざけ倒すような音楽性とは正反対に真面目な音楽性もあったりして、油断してると感動しすぎてやばくなる 笑。私的には、音楽家としてかなりマニアックな領域に踏み込んだ"桁違いのオタク"という感じがあるからめちゃくちゃ好感が持てる 笑。

そして今作で私が最も心臓を掴まれるようにびっくりしたパートは、I'll Wait For It(M8)のサンプリング曲。ちょっとね...これは本当にせこすぎてズルすぎる...笑。初めて聴いたときは「え?!えぇ?!?!」みたいな驚きと、「こんな曲サンプリングされたら絶対に最高になるやん!!」みたいな怒りがこみ上げてきた 笑。(→ 50秒あたりから。)私達の人生に多大な影響を与えた人類屈指のあの大名作から、数あるテーマ曲がある内のここの部分を持ってくるなんて...泣(→ 答え(ネタバレ))。全体を通して聴いたときはあまりの不意打ちにめっちゃ泣きそうになった。最近だと(Sandy) Alex Gのインスタライブの予告ツイートでこのシリーズを見かけたけど、やっぱり海外の人もみんな大好きなんだよな(最高です)。

毎月いつもベストアルバムのブログのあとがきでプレイリストを作ってるけど、このアルバムに関してはどの曲を抜粋するかめっちゃ悩んだ 笑。どの曲も最高なのだけど、異常じみたポップを選ぶか、ダークで不気味なやつにするか、はたまた問題作のI'll Wait For Itにするか。このアルバムを初めて聴ける人が本当に羨ましい 笑。(I'll Wait For Itなんか尚更。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Empress Of - "I'm Your Empress Of"

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人間らしさの美しいコーディネート

 民族音楽系のR&Bで表現される情熱的でワイルドな人間性と、現代的なエレポップによるカラフルで綺麗な音楽デザインの両立。人間的なヴァイタリティを鮮やかに美しくコーディネートしたような感じがあって本当にたまらない。それはまるで、原始的でありのままの人間らしさを尊重したようなものにも感じられる。R&B・ソウル、エレポップとしても今までにないニュータイプな音楽に仕上がっているし、そういった音楽を容易く実現してしまったEmpress OfことLorely Rodriguezの存在感が本当にかっこいい...笑。ジャケットも含めて作品全体の彼女のスペシャルな魅力をたっぷり感じられる傑作だと思う。

今作はR&B・ソウル、エレポップに加え、グルーヴィーなハウスとしての音楽性も濃厚なのが特徴的。本作のリードトラックであるLove Is A Drug(M4)やGive Me Another Chance(M7)とかがそう。民族音楽R&Bの効果によって一般的なハウス・テクノよりも情熱的なダンスフロアを演出していて、心が熱くなるようなテンションの上がり方があるから本当に素晴らしい。

そんな充実した今作の私的ハイライトのナンバーが、3曲目のVoid。これが本当に最高。原始的な躍動とエレクトロニカならではのカラフルな装飾が、Empress Ofの音楽のソウルフルな部分にめちゃくちゃ作用してる感じ。今までに全く出会ったことのなかった"情熱的な幻想"というようなものを創造していて、心奪われるようめちゃめちゃ感動した。Lorely Rodriguezのボーカルがどこまでも美しいし、ダンサブルな感じも本当にかっこいい。

今作でみるみるEmpress Ofにハマり、過去作も改めて聴いてみたらめちゃめちゃよくてフィジカルが欲しくなった。特に2015年作のMeって本当に秀逸。今めっちゃ欲しい旧作アルバムの一つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Laura Marling - "Song For Our Daughter"

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フォークSSWとしての真骨頂

 飾り気のない正統派カントリー・フォークによるオーガニックな温もり、心に確実な安定を与えるようなアダルトな優しさ、その背後に静かに潜む儚い美しさ、それらによるディープなエモーション、そしてリスナーの心に響きまくる至高の歌...。世界観、感触、メロディー、どの部分にしても極上の深みがあって本当に素晴らしい。まるで心の傷を癒すような暖かい日差しと自然的で美しいヴィジョンを伴うようなそれは、Laura Marlingのとてもハイレベルな感情密度を実現していると思う。前作Semper Femina(2017)はオルタネイティブ・フォークによる楽曲構造の独自のアレンジがあったけど、正統派なフォークのスタイルで挑んだ今作は、Laura MarlingというSSWとしての真骨頂を最大に発揮したような傑作だと思う。2019年ベストフォークアルバムであるRosie CarneyのBare(マイベストフォーク作品)に匹敵するほど完成度を感じる。

私的には、Only the Strong(M4)後からのアルバム後半パートが特に大好き。ピアノがそっと残されるような静寂からエモーションを輝かせていくBlow By Blow(M5)や、強大な愛を高らかに歌うパッセージのあるThe End of the Affair(M8)など、心に沁みまくってめちゃくちゃ泣きそうになる。本当、リスナーに感銘を与える歌唱スキルが高すぎる。中でも今作のタイトルトラックであるSong For Our Doughter(M6)は、彼女の至高の歌と組み合わせるストリングスの活かし方が完璧すぎて本当にやばい。鳥肌が立ちすぎて皮膚がおかしくなるレベルで感動した。

今作は本来なら夏の時期だったところを4月に前倒しになったリリースということだけど、このアルバムの夏のイメージを想像したらますますエモーションが深まった。フォークならではのオーガニックな温もりがあるし、夏の時期にもウルトラぴったりな作品だと思う。(絶対聴く)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Yves Tumor - "Heaven To A Tortured Mind"

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ブルージーでスモーキーな魅力

 "エクスペリメンタルなサッドコア"というような画期的な大傑作の前作Safe In The Hands Of Love(2018)から一変、今作は70年代のソウルミュージックサイケデリック・ロックのハイクオリティなリバイバルを体現した作風に仕上がってると思うのだけど、ブルージーでスモーキーな魅力が本当にやばすぎてやばい...笑。色気とか臭いとか、当時の感覚が100%再現されてしまうような最上クラスのリアリティ。よさの系統としては、過剰なローファイによって昔ながらの非現代的なよさを最大に表現したUnknown Mortal Orchestraと同じ感じがする。そういった古風なセンスだけでなく、最新の音響による高精度なサウンドの質感を取り入れたエクスペリメンタルとしてのオリジナリティも健在...。フォロワさんがいってた"ぐわんぐわん"って表現が大好きなのだけど、アブノーマルな迫力に取り憑かれるような強烈な音楽体験ができるから本当に素晴らしいと思う。

新譜を追いかけるようになってから、LoticAngel-Hoなどといった恐ろしいほどに奇才なカリスマアーティストを目にするようになったのだけど、その中でも今作を聴いてYves Tumorのことが本当に大好きになった。前衛的な手段でカリスマ性を高めるのではなく、古き時代のロックとかを吸収して発展させながらカリスマ性を高める感じ。今まで誰も聞いたことがないような新しいロックサウンドを鳴らすのって本当にかっこいいと思う。今作だと特にKerosene!(M4)のギターソロワークとかめちゃくちゃ大好きで泣きそうになった 笑。(というかもともと、ブラックミュージック×ロックのスタイルのTV On The Radioとか、そういうのめっちゃ大好きだから...笑。)

今作の70年代感のめちゃ強い"ブルージーでスモーキーな魅力"は本当にやばかった。小さい頃、レコードまみれのタバコ臭い叔父さんの部屋で流れてたソウルミュージックサイケデリック・ロックのあの感じが本当にそのまま。前作も最高だったけど、ひょっとしたら今作のほうが好きかもしれない(そのくらい)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Junk Drawer - "Ready for the House"

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悲しくて眠れない夜はロックで夢を描く

 Yo La Tengoのような夢想的で最高に心地よいセンスを含んだオルタナ~インディーロックなのだけど、心を引き裂くような強烈なハートブレイクのサッドネスをものすごく大量に含んでいるという点で、他のインディーロックを凌駕するくらいむちゃくちゃ素晴らしい作品に仕上がってると思う。具体的には、清楚で綺麗な響きを洗練したクリーントーンのギターが儚く揺れるYears of the Sofa(M2)や、心が冷えてしまうような身を切るつらさがよく表現されたMumble Days(M4)などがそう。行き場のない悲しみを抱えながら夜空の星を眺めるように、美しくも死にたくなってしまうほど切ないキラキラしたエモーションが満天に繰り広げられていると思う。それはまるで、"悲しくて眠れない夜にロックで壮大な夢を描く"というような音楽性にも感じられる。ロックにはロックを奏でるためのトリガーとなるエモーションが必ずあると思うのだけど、Junk Drawerの場合、抜け出すことができない深い悲しみに沈んでしまい、どうすることもできなくなって、もがき苦しむようにして生まれたロックのように感じる。ロックの荒々しいエネルギーによって心にぽっかり穴が開いてしまうような虚無感がより引き立てられていて、胸がひどく痛むような圧倒的なダメージの感動があるから本当に本当にたまらない。

今作には00年代より前のインディーロックシーンに通ずるような、昔ながらのナチュラルなロックのサウンドスケープがあるところがめちゃめちゃ最高だと思う。途中で唐突に加速していくWhat I've Learned / What I'm Learning(M1)や、ポストロック形式のような自由なスタイルのあるInfj(M5)など。リードトラックであるYears of the SofaやMumble Daysのようなハートブレイクなテーマ性以前に、ロックとしてのクオリティがそもそもに高い。なんならWhat I'm Leavingだけを聴いたら、「ただただシンプルに良質なロック・パンク」という全く違う作品に感じると思う 笑(私も入口はそうだった...!)。ロック的にもテーマ的にも、"大好き"がめちゃめちゃ詰まっているとても愛おしいアルバム。

あと今作はMarnie SternのST(2010)と同じような手書きの部屋ジャケもものすごくお気に入り。色合いと言い緩さのバランスと言い、切ないエモーションがよく掻き立てられる最高のジャケだと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Lorenzo Senni - "Scacco Matto"

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情熱的すぎて死にかけるアート・レイヴ

 寿命が縮まりそうになるほど危険で激ヤバな興奮と、そこから一気にリスナーを揺さぶり意のままにコントロールしてしまうような巧みすぎるアルバムのシーケンス。理性がぶち壊れるほど脳みそがギタギタにされ、Lorenzo Senniの催眠術にかかり、情熱的で美しいアート・レイヴの波に飲み込まれて、しばらく何もできなるくらい感動しまくってやばくなる。とにかく恐ろしく完璧なまでにリスナーの感情のノせ方がうますぎる。精神がコテンパンに打ち砕かれて訳分かんなくなるくらい本当に凄まじい音楽体験だと思う。リリースの一週間前から先行曲を頭おかしくなるくらいリピートしてたのだけど、何度も何度も死にそうになるほどの興奮を得て体中の血管がバーストしそうになってた。本当、初めて聴いたときはめちゃくちゃ汗だくだくになって消費カロリーが半端なかったからね...笑。

今作の本当に本当に素晴らしいところは、アルバム4曲目のCanone Infinitoまで絶対的にリスナーのモチベーションを確保するような、ありえないくらい絶大な燃料エネルギーを生成する冒頭のDiscipline of Enthusiasm。この曲が本当にやばい。半端ないほど激しい曲なのだけれど、それは激化した感情やハードコアのような音楽性によるものではなく、"ただの音楽的な工夫"によるもの...!!ここで思わず叫びそうになる。「スマートすぎて!!やばいーー!!」笑。具体的には、17拍子という意味の分からない不規則なリズムのビートによる身体の破壊作用。サウンドインパクト自体も激しいのだけれど、サウンドの無い休符のパワーも本当に凄まじい。その17拍子のセクションを3分近く続け、とにかくリスナーの感情を活性化させまくる。体内にありえないほどの情熱が蓄積するような、とてつもなくエキサイティングすぎなナンバーだと思う。

それにより獲得したエネルギーを持って展開されるその後のシーケンスも本当に素晴らしい。緊張感が発散していくような燃えるダンスとメロディーを体現したようなMove In Silence(M3)や、夕闇に溶け込んでいくような美しさのあるCanone Infinitoなど、1曲目の圧倒的な興奮を引き継いで到達するオリジナリティの濃い世界観が本当にたまらない。そこには、イタリアやスペインなどといった南ヨーロッパ風の情熱的なヴィジョンがあると思う。(実際Lorenzoはイタリアのアーティストだし。)ラストのTHINK BIG(M8)のような子供みたいにかわいらしいフィーリングも本当に素敵で楽しい。

リリース一週間前から超聴いてたけど、これ絶対BleepのAlbum Of The Week(ロード長いけど→ここになるなってめっちゃ思ってたら、やっぱりそうだった 笑。Bleepさん最高に分かってらっしゃる...笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Trace Mountains - "Lost In The City"

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完全無欠の最高すぎる相乗効果

 Real EstateやThe Sea And Cakeのような優しさの天然成分が大量に配合されているインディーロック、まずその段階で大好きポイントを100億ポイントくらい稼いでる 笑。しかもその上で、宅録インディーポップ感のあるほのぼの系の和み要素とか、地味にシューゲイザーにまで発展しちゃうほどの轟音ギターなど、気持ちよさを高めまくる最高なアイディアが盛りだくさんに用意されていて本当に最高すぎる。自然的な美しさのある優しさの成分が、様々なルートからのアプローチによって何倍にも倍増しされてる感じ、アプローチの一つ一つが本当に大好きすぎるから、大好きポイントが無限大ポイントにまで膨れ上がって測定エラーを起こしちゃうくらい、例えるならそのくらい大好き。

今作の本当に最高すぎるところは、音楽が優しくてソフトなタッチを十分に含んでいるのに、それと対極的であるはずのロックのスキルが思わぬほどガッツリと適合しているというところ。具体例を挙げると、体の中で風が走っていくような爽快感がやばいRock & Roll(M1)や、フックの効いたグルーヴでノリノリが高まるCooper's Dream(M5)、シューゲイザー的な比重量のあるギターが巨大な快感を生むAbsurdity(M9)など。もともとロックにはテンションを高める効果がとてもあると思うけど、Trace Moutainsの今作の場合、ロックによるテンションの高まりと心地よくて優しいフィーリングの二つが、完全無欠の最高すぎる相乗効果を生み出していると思う。特にRock & RollやBenji(M6)みたいに、後半からグッとくる展開を用意してある曲とかに関しては、あまりの幸せを感じてめちゃくちゃに泣きそうになる。ロックにより自分の心が優しく動かされていくような感動。本当にどこまでも無敵すぎる。

Lost in the City(M6)やFallin' Rain(M8)のような、心に沁みる切ないナンバーも本当に最高。やっぱりこの自然的な世界観の奥深さの感じは、Real EstateやThe Sea And Cakeっぽさがあると思う。

Twitterでも指摘されていたように、Trace Mountainsの今作はインディーらしさが凝縮されたような作品だと思う。似たタイプだと、今年1月にアルバムをリリースしたPet Shimmersなんかも超インディー感があると思うけど、そちらも本当に最高だった。現時点ではPet ShimmersとTrace Mountainsが二大・大好きインディー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

今月のベストアルバムのプレイリスト🍎↓

温の「2020年4月ベストアルバム(温)」をApple Musicで

 

 

~2020年4月ベストソングTOP10~

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10. Fionna Apple - "Newspaper"

9. Minor Science - "Balconies"

8. Yaeji - "WHAT WE DREW 우리가 그려왔던"

7. Day Wave - "Starting Again"

6. Jeremy Zucker - "Julia"

5. Thundercat - "I Love Louis Cole (feat. Louis Cole)"

4. DE DE MOUSE - "Hello My Friend"

3. Black Dresses - "Damage Suppressor"

2. The Strokes - "The Adult Are Talking"

1. Bon Iver - "PDLIF"

ベストソングのプレイリスト🍎↓

温の「2020年4月ベストソング(温)」をApple Musicで