アルバム感想(温)

My Favorite Music

「2020年6月ベストアルバムTOP10」感想

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今月はロックがめちゃ強かった気がするけど、ベストアルバム選定してみたら民族音楽的なエキゾチックなやつも多かった 笑

ちょっと夏補正が入ってしまった感じは否めない

TOP10に収まらなかったのは後でフォローしたいなと思う

 

今月の大大大好きなアルバム、感想をランキングで

(上位3つは全部1位)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. Hinds - "The Prettiest Curse"

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最後までとことんパーティーを楽しむ!

 もう本当にめちゃめちゃ最高のサマーチューンだと思う 笑。従来のほのぼのとした温暖性のローファイ・ガレージロックよりも、今作はThe Go! TeamやSleigh Bellsのようなもっとハジけるエネルギーが溢れてるようなめちゃめちゃパワフルでポップなやつ。シンガロングな曲の盛り上がりで最強のワクワク感を提示するGood Bad Times(M1)や、テンションを高めまくる合いの手のアイディアが超有効なBoy(M4)など、オーディエンスを沸かせるようなボルテージが高いポップスの感じ。そして、もともと所持してた温暖性のガレージロックのセンスに加えて、チルさのあるシンセや、ハワイアンでトロピカルなフィーリング(Come Back And Love Me(M5))なども含まれてて、夏要素がバリバリに感じられるアルバムだと思う 笑。雰囲気としては、仲良しガールズならではのハッピーな元気全開でサマーパーティーを開催するような感じ。夏フェスにぴったりすぎるThe Go! TeamやSleigh Bellsのような音楽性が本当に大好きというのもあるからものすごくハマる。特に3曲目のRiding Soloとか熱量が本当にやばい...笑。最高にチルくてキャッチーなとっておきのサマーチューンだけど、後半でガレージサウンドがハードになりすぎたようなシューゲイザーにヒートアップしまくる 笑。最初聴いたときは耳が燃えそうになった 笑。本当にむちゃくちゃテンション上がる。

今作の本当に素晴らしいところは、それらの仲良しガールズのサマーパーティーな音楽を最後までとことん楽しむような盛り上がりの持続性、そしてパーティーが終わりに近づいていく微妙なニュアンスを上手に表現したアルバムのシーケンス...!。1曲目のGood Bad Timesからずっとパーティーしててエネルギーを全部出し切るように楽しめる作品なのだけど、ラストに差し掛かるTake Me Back(M7)から昼間のパーティーとは違うロマンチックなナイトパーティーみたいなパートが始まったりする感じ。フィナーレ近いWaiting For You(M9)ではパーティーがそろそろお開きになるようなめちゃくちゃ切ない雰囲気が出てくるのだけど、「それでもまだまだ楽しみたい!」というようなパーティーの継続願望が表れてる感じに嬉しさで泣きそうになってしまう。最高に楽しいパーティーのサマーチューンを存分に楽しんだ後だからこそ、センチメンタルでメランコリックなフィーリングが効いてくる。ラストのThis Moment Forever(M10)で、それらの美しい余韻を堪能しまくりながら素敵な夢を見る感じも本当にやばい。アルバムの流れが本当によくできてると思う。

個人的には、4月リリース予定だった今作は6月の夏に延期されて正解だった気がする 笑。(彼女たちは残念がってたけど。)それくらい完璧にサマーチューンだと思った 笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Clap! Clap! - "Liquid Portraits"

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命を捧げるように本気になって踊る

 アフリカンミュージックやシリア系の民族音楽を完璧にマスターしたようなハウス・フットワークの作品なのだけど、エレクトロニカの技術を利用して民族音楽が持つ不屈の精神や怒り・恐怖といった生々しい感情をよりリアル化させているところが本当にたまらない。呻くような重低音ベースによって民族音楽のダークな部分をより出現させたSouthern Dub(M4)とか、ディープな音響エレクトロニカによって野性的な音楽性に鮮やかな美しさをプラスしたようなRising Fire(M8)とか。土着的で原始的な民族音楽の本質的な感情源をエレクトロニックなハイビジョンのテクノロジーで描き出すような素晴らしさがある。クラブミュージックと民族音楽の双方の性質を失わず、両方の持ち味を本当に上手に発揮できてると思う。"民族音楽ワールドミュージックエレクトロニカ化"だとChancha Vía CircuitoのRío Arribaとか本当に大好きなのだけど、Clap! Clap!の場合、Liquid Mantra(M2)やRising Fireなど、多彩なサウンドと立体的な音像を取り入れた高級感のあるデザインが本当に美しい。その音響的な美しさを大迫力で感じるようにヘッドホンで思いっきり堪能して、生々しい感情が溢れた民族的なダンスに完全に酔いしれたくなるような、とても魅力の濃い作品だと思う。

私がこの作品をベストアルバムに選んだ絶対的な要因は、6曲目Mandragora。このトラックを聴いて一瞬理性を失ってしまったのだけど、本当に本当にやばい。もともと民族音楽の踊りには、自分たちの命を祝福をするような喜びの種類のものももちろんあると思うけど、地球や宇宙などのある巨大な存在に対して、自分たちの命を捧げる生贄の儀式のような種類のものもあると思う。文明人には理解できないような犠牲を厭わない狂気、自分たちの命を本気で捧げようとする覚悟、民族音楽の踊りに対して感じる恐ろしさのニュアンスはそういうところにある気がする。Mandragoraが本当にやばいのは、その真に迫る圧倒的な恐怖でさえ、エレクトロニカの技術を利用してリアル化させているというところ。初めて聴いたときの感覚を思い出しただけでももう怖くて苦しくなる。頭の中でうるさく鳴り響くような大量のパーカッションや、心臓にまで届く強力な低音、暗黒物質を纏ったようなシンセサウンド、そして理性を失うように没頭するハウスの音楽性...。何かに命を捧げるために本気になって踊る、というような血が騒ぎまくるエモーションを感じて思わず泣きそうになる。表現として、アイディアとして、本当に素晴らしくてやばい。

私的には、今作は2017年ベストのJLinのBlack Origamiに匹敵するよさだった。Black Origamiは民族音楽ダンスの狂気をリアルに描いたフットワークのワルツ。今作の場合、Liquid Mantraとかフットワーク~ダブステップの趣があったり。こちらの曲も、より内向的なエネルギーを感じさせる特殊なダンスを感じさせて本当によかった。雨音をサンプルした優しい出だし1曲目からの流れも本当によく効いてると思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Photay - "Waking Hours"

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贅沢すぎる二部構成

 Photayが本当に素晴らしいのは、Arca、Bon Iver、Nicolas Jaar、Oneohtrix Point Neverなどと同様、「どうすることで人間の感覚をもっと刺激することができるのか」ということを真摯に研究しまくったような音楽アーティストであるというところ。中でもPhotayは、クラシックとアフリカンミュージックをルーツに持つようなエクスペリメンタル・ハウスの音楽性が本当にめちゃめちゃ個性的。エレクトロニカとして妥協せず理想のサウンドを追及する精密なこだわりはもちろん、クラシック音楽の発想に着実な遊び心豊かなメロディーメイキング、民族音楽系のワイルドなノリを持ったパワフルなリズムワーク、さらには強弱をよく意識した音楽のダイナミクスの利用、もっというとそれらのアイディアを掛け算させて全体をまとめるような器用すぎるテクニックなど、他のアーティストとは違う特殊なアプローチでセンセーションを作り出す超凄腕のお方だと思う。前作Onism(2017)も管楽器とシンセをミラクルに調合させる天才的な発明などをしていて人生ベスト級に大大大好きなアルバムだったのだけど、今作も音色・メロディー・音量など、音楽を構築するための全部の要素に対して1から向き合って曲を作るような繊細さ・丁寧さを持っているところが本当に素晴らしい。巧妙なフェードインで音のセンシティブさを強調するIs It Right?(M3)や、打弦楽器と管楽器の音色をブレンドしたようなマジカルな音色が光るRhythm Research(M7)などなど。豊富な感情表現、もっと特殊な人間のエネルギー放出、それらが予測不能に時間変化していく様々な曲のパターン...感覚が刺激されまくるようなアイディア・工夫がめちゃんこ溢れてて、とても芸術的な仕上がりだと思う。

今作のめちゃめちゃ最高なところは、アルバムが効果的に展開されるような前半と後半がそれぞれ異なるテーマを持った二部構成の作りになっているというところ。前半5曲のA面と、後半5曲のB面。A面は、Photayならではのテクニックを駆使して神々しさの半端ない幻想を創造したWarmth in the Coldest Acre(M2)や、リスナーをゾクゾクさせる聖なるオーラを纏った超かっこいいFanfare for 7.83 Hz(M4)など、神聖でうっとりするほど美しさがよく表れたパート。それに対するB面は、効果音を利用したインパクトの強いダンスのThe People(M6)や、エッジを微妙に際立たせたストリングスの存在感の与え方が最高すぎるPressure(M8)など、ハウスのパワフルな影響力が色濃く表れた迫力の強いパート。(私的には特にこのB面が大好きすぎてやばい!)どちらも本当に素晴らしいパートなのだけど、うっとりするような美しいパートから迫力のあるパートにシフトする展開部分が本当に楽しすぎて...笑。メロディーもリズムワークも一つ一つが超最高なのに、アルバムの流れを大きく変えるストーリー構成力もあるから本当に贅沢すぎる作品だと思う。今作もめっちゃ力作。

今作のB面パート、特にThe PeopleとPressureのダンサブルすぎるリズムは本当に最高すぎてアゴの筋肉がおかしくなるくらい笑ってた 笑。やっぱり、Photayのアフリカンリズムはとてもとても楽しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Sports Team - "Deep Down Happy"

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ガレージパンクのアップデート

 古き良きガレージパンクのエッセンスを上手に吸収したような能天気型ハピネスのロックンロールなのだけど、従来のガレージパンクが持っていないようなメロディックなポップセンスが多く盛り込まれていたり、ボーカルが少し変態気質なところもあって、音楽で表現される楽しさレベルがめちゃめちゃハイクオリティなのが本当に魅力的 笑。ガツガツ突き進んでいく攻撃的でストレートなガレージパンクの性質だけでなく、どこかリスナーを励ましてくれるような和み系の暖かさのあるギターメロディー(Here It Comes Again(M2), Going Soft(M3))を含んでる感じ。Fountaines D.C.、Idels、Shameなど、ドス黒さの効いた反社会的なポストパンクのイメージとは正反対の存在感があって、ネガティブなフィーリングをスッキリ吹き飛ばしてくれるような清々しい快感があるから本当に最高 笑。そんなHere It Comes Again(M2), Going Soft(M3)もそうだけど、うねうね動く抑揚を効かせた愉快なギターフレーズが特徴的なFishing(M10)なども本当に楽しい。6人のメンバー達のフレンドリーな様子も伝わってくるのも微笑ましくて大好き 笑。

今作で私が1番最高だと思ったところは、古き良きガレージパンクの忠実な再現以上に、それらの音楽性を2020年の現代版としてアップデートして完成させているというところ。代表的なのだと、ラモーンズ的なダウンストロークの突破力を感じさせるようなリードトラックのHere's the Thing(M7)とかまさに。ロックンロール文化が発祥し始めたばかりのギスギスしまくってる当時の感覚をそっくりそのまま掘り起こしたのかと思うくらい、それらのコピー・アレンジのセンスが本当に秀逸で、今作はそういう再現がとても大成功してる作品だと思う。私は95年生まれだから80年代以前の作品は疎か、90年代の作品でさえ名盤界隈のマップを全然把握できてない。だからこそ、80年代のディスコ~フュージョンを新構築したNeon IndianのVega Intl. Night School(2015)とか、60~70年代のアコースティックソングを復興させたようなKevin MorbyのSinging Saw(2016)とか、過去の時代の音楽をリメイクによって今この瞬間に出会わさてくれる作品を本当に嬉しく思う。Sports Teamの今作の場合、過去のガレージパンクが持っていた当時の熱量やその激しさのリアルな再現の感動だけでなく、新しさを感じさせる新鮮でメロディックなポップセンスなどの新規性・アップデート要素もあるから本当にめちゃめちゃ心に響く。中でもCamel Crew(M4)なんかは本当に素晴らしすぎてやばい...笑。一種のガレージパンクに対する憧憬を含んでる感じも込み込みで、アルバム通して聴くと素敵な思いが炸裂して泣きそうになってしまう。今作で私が1番大好きなナンバー。

Camel Crew、コロナの自粛期間のときにたくさん聴けたらよかったな...笑。(Winter Nets - EP(2018)のバージョンよりも今作の方が好み)。「You say it's boring, but it's not」とか、「Just call a number, make it change」とか、リリックがめちゃめちゃ素敵だし、外出自粛のシチュエーションにマッチする部分もあるから本当にグッとくる。今後自分の人生に退屈さを感じたときに聴きまくりたい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Khruangbin - "Mordechai"

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リスナーに捧げる優しさをもっと高みに

 存在感の半端ない超かっこいいバンドがリスナーにありったけの優しさを捧げてくれるような作品が本当にたまらなく大好きなのだけど、Khruangbinの今作は、東南アジア・中東のイメージにリンクする神聖な動物たちをモチーフにした神々しいアートワークや、メンバーたちが「美しいから」というシンプルな理由で名付けたMordechai(モルデカイ)というタイトルなど、リスナーに捧げるありったけの優しさをもっともっと高みに上げるようなコンセプトがあるところが本当にやばい。東南アジア・中東の息吹を込めた珍しいタイプのエキゾチック性があるファンク・ロックという音楽性ももちろん、艶美な色気を放つフロントマンのローラを率いる個性的なトリオのオーラや、そしてそのメンバー達が夢心地で奏でる優しいアンサンブルといった特殊性、本当に超かっこいいバンドなのでどんな作品を作っても最高に魅力的だと思う 笑。中でも今作だと、パフォーマンス性の高いエモーショナルな演奏の中で生きることのメッセージ性を込めたTime(You and I)(M2)や、ローラの歌が泣きそうになるほど美しすぎてやばいSo We Won't Forgot(M9)など、珠玉のリードトラックが用意されてて本当に最高。今作は従来のインストゥルメンタルの作風よりもボーカルを導入したスタイルで話題を呼んでたけど、中でもこのSo We Won't Forgotのローラのボーカルは本当に素晴らしいと思う。Khruangbinならではの優しいファンクの気持ちいい躍動感の鮮やかさと、エキゾチックでビターなフレーバーのコントラスト。日本を舞台にしたMVも桜の雰囲気が超ぴったりでめちゃくちゃ最高!笑

私はドリームポップが大大大好きなので、幻想的な音楽は全てドリームポップの枠組みで捉えてしまう病気にかかってるのだけど 笑、Khruangbinの音楽についても、「エキゾチックな新しいドリームポップ」というようなよさをやっぱり感じる。前作Con Todo El Mundo(2018)もそういうドリーミーな音像をよく所持していた作品だったと思うけど、今作の場合、One to Remember(M7)のように、トリオのスタイル以上に装飾レベルで環境音・効果音を追加するようなアンビエントのアイディアもさりげなく起用されてる感じも大好き。Khruangbinの最高の優しさをより夢想的な味わいにさせるためのアイディア。Khruangbinの本質的な演奏精神を邪魔することにならない程度だったらどんどんモリモリにしてもOKです...、もっとやっていいよ 笑。

ボーカルの導入、私は思ったより従来通りの作風に感じたけど、If There is No Question(M5)とか聴くとローラのボーカル本当に最高だなと思う。浮遊感があって本当に気持ちいい。こういうのライブで観たいな...笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. HAIM - "Women In Misuic Pt. Ⅲ"

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豊かな陽エネルギーをよりチルアウトにコーディネート

 HAIMといえば、ロックだけでなくフォーク・カントリー・ソウル・ファンクとか、様々な方面の雑多なジャンルを天才的に消化した独自のプラットフォームがやばすぎるバンドだと思うのだけど、そのオリジナリティの濃い音楽性に追随して、メロディーの一つ一つがより特別な仕上がりになってるところも本当に至高だと思う。今作はアコースティックで落ち着いたカントリーや、夏に合いまくるポカポカのレゲエ(Another Try(M8))など、全体的にチルアウト系の和み要素が全面に表れた気持ちよさが半端ない作風だと思うのだけど、HAIMの特別で至高なメロディーセンスが全て気持ちよさのフィーリングに全振りされてるようなところが本当に最高すぎると思う。具体的には、気持ちいいコーラスをカントリーロックのアプローチで印象的にさせたようなThe Steps(M2)や、持ち前のファンキーなギターセンスが身体に優しく作用するDon't Wanna(M7)とか。3姉妹の豊かな陽エネルギーをよりチルアウトに気持ちよくコーディネートした感じ。中でも5曲目のGasolineとか本当に最高すぎてやばい...。綺麗にまとまった多様なサウンドの充実感、泣きそうになるほど癒し的で究極的に満たされるメロディー。サイケ的なギターサウンド一つ取っても本当に最高の味わい。あと、なんでボーナストラックなのか全然分かんない先行曲のNow I'm In It(M14)とかも本当に本当に素晴らしい。気持ちよさをベースにしながらも、刺激的なエレクトロニカで音楽のワクワク感を高めまくったような感じ。アルバムにおける最高のラストのFUBT(M13)後に用意されてるエンドクレジット的な存在感があって、アルバムの中で本当に最高に素敵な印象を残してる曲だと思う。そんな風に、この夏とっておきの曲たちが凝縮されたボリューミーな大傑作。

カントリーというところだと、チェンバロサウンドのクラシックなカントリー感が特徴的なLeaning On You(M9)とか、本当にめちゃめちゃフォークすぎてびっくりするHallelujah (Bonus Track)(M15)など、ポップとして大きく躍進した前作Something Tell You(2017)からは思いつかないほど古風なテーマが引用されてると思う。チルアウトR&Bのヒップホップな3am(M6)とか現代的な曲もあるけれど、ウエスタンで伝統的なカントリーを彷彿させるジャケ写のデザインであったり。そういったように今作は、HAIM3姉妹の音楽性のルーツをもっとクラシックなところまで深堀り・探求したようなある種の実験的で挑戦的な部分がある気がする。私が今作で本当に素敵だと思ったところは、そういった自分たちのルーツの深堀り・探求の部分に、彼女達の音楽愛のレベルアップ、そして自分たちでその音楽を演奏できるという最高の喜び、もっというとそこから滲み出る3人の仲良し感などが感じられるところ。音楽に溢れてる果てしない陽エネルギーのハピネスだけでなく、断固たる3姉妹バンドの音楽愛としてのハピネス。そんなことを感じながら改めてGasolineとか聴くと、またさらに泣きそうになる。本当に最高すぎてやばい。

HAIMに関してはデビュー作のDays Are Gone(2013)の頃からギターも本当に大好きなのだけど、今作でいうとUp Form A Dream(M4)のギターソロとかも超最高だった。HAIMのファンキーなギターのソロワークって他のハードロックとかにはない最強の楽しさがあるんだよね...笑。(Let Me Goのギターとか死ぬほど好き)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Phoebe Bridgers - "Punisher"

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Phoebeの人間味が最高の形で音楽化

 天使的な存在すらも感じさせるような愛情の深いハーモニアスなPhoebeの歌声がとにかく最高すぎてやばいのだけど、心がときめく丁寧なベッドルーム~ドリームポップの至福の味わいだけでなく、ローファイによるかわいいサウンドスケープや、トランペットなどカントリー楽器のキャラクターを効かせた明るいアクセントなど、Phoebeの温かい人間味をもっともっと感じさせるフィーリングが大量に含まれてるところが超絶に最高だと思う。心を穏やかにさせまくるサイレンスのローファイがどこまでも優しいGarden Song(M2)や、牧歌的なカントリーのアプローチで温かい人間味をもっと確実で強力なものに仕上げたようなGraceland Too(M10)など。前作のデビューアルバムStranger In The Alps(2017)も、重みのある幻想性をいっぱい繰り出したようなベッドルーム・ドリームポップソングの宝箱だったと思うのだけど、今作はほっこり系のリラックス効果が果てしないような安心感の幸福がたくさん味わえるところが本当に魅力的だと思う。特にGraceland Tooなどに関してはバンジョーやストリングスによる温もりのギブネスが本当にやばいし、リスナーを昇天させるレベルでソウルフルなメロディーが引き立てられてるコーラスパートとか、泣きそうになるほど心が暖まる。もともとPhoebeってお風呂でライブやったり、躊躇なく変顔を繰り出したり、Twitterでネタツイしたり、ユーモアが溢れまくってる素敵なキャラクターだけど、そういったパーソナリティも込みで彼女の温かい人間味が最高の形で音楽化されてるから本当にたまらない。

そういったPhoebeの新たな一面を見せてくれたアルバムだと思うのだけど、中でも前作にはなかったロックのナンバーが本当にやばい。代表的なのが今作屈指のリードトラックであろうKyoto(M3)。かわいくて優しいローファイの音色、全身に心地よい風を浴びるような好天気ロック、Phoebeの思いだけでなく日本愛も込められてる本当に素敵なリリック、そしてPhoebeの温かい人間味のリアリティを決定付けたようなトランペット......。"ドリーミーでシャイニーな満たされたフィーリングをPhoebeがロックする" という断固確実たるやばさがあると思う。また、祝福のオーケストラのようなパッセージを含んだChinese Satellite(M6)とかも迫力のあるロックでめちゃ最高。ラストのI Know the End(M11)とかに関しては、フェスとかで思い切り映えそうなさらに大きなスケール感を持っていて、ライブが本当に観たくなるから死にそうになる...笑。トランペットの装飾がアルバムのフィナーレ感をより演出してるところも超天才だと思う。

Punisher(M4)やMoon Song(M7)など、従来のベッドルーム~ドリームポップのナンバーも相変わらずめちゃめちゃよい。Punisherは静寂の中で音が微かに光るようなピアノのセンスがJulien Bakerっぽかったり、Moon Songは水面が波打つようなサウンドのイメージにアンビエントっぽさがあったり、あまりに美しすぎて昇天しそうになる。特にMoon Songはメロディーに深いエモーションが込められてるから本当にグッときまくる。

今作はPitchforkで8.7のスコアを獲ったけど、マネージャーが「8.7は悪くない」って言ったのに対して、「お前はクビだ、少なくとも9.5だろ」みたいにコメントしてたのめちゃめちゃ笑った 笑。本当にPhoebe大好き

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Sault - "Untitled (Black Is)"

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"Cover me with love"

 DJ ShadowのEndtroducng...のサンプリング要素みたいな古来のR&Bソウル・ジャズ・ヒップホップ、そしてゴスペル・アフリカンミュージック・ブラックコンテンポラリーなど、様々なブラックミュージックにアクセスするユニバーサルな作風だと思うのだけど、それらの古来の音楽が目を覚ましていくようなゴ-スト的サンプリングとか、バッキングの規模を最小限に収めたような落着いたリズム隊など、薄暗い空間の中でひっそりと明かりを灯すようなミステリアスな魅力を持っているところが本当に最高だと思う。また、2019作の5と7のマッチのジャケットと同様、暗闇の中に小さくオブジェクトを用意するジャケットの感じとか、Sault自身も怖いくらい謎に包まれてる人物であるところとか、音楽性以外の要素も含めてSaultはミステリアス性をめちゃめちゃ所有してるアーティストだと思う。今作が本当に素晴らしいのは、そういったミステリアスなセンスでより芸術的にブラックミュージックを復興し、黒人文化・種族をリスペクトするだけでなく、それらを深くから持ち上げて支えるようなスピリチュアルなパワーを発揮してるというところ。『Black Is 』というタイトルや、楽曲中のナレーションのリリックが簡潔に表してるように、本作は虐げられた黒人種族を守り、団結し、不屈の精神を訴えるような明快なコンセプトを持っていると思う。基本的でヒストリカルなブラックミュージックを総括してる作風だからこそ表現できる芸術的で特殊なリスペクトがあるから本当に素晴らしいと思う。「我々は死なない」というメッセージを発信した私的2017年ベストのIbeyiにも通じる作品で大好きだし、現在のBLMムーブメントに不可欠なテーマ性で無視し難いのももちろんそう。

ナレーションのトラック含めて20曲もあるボリューミーなアルバムだけど、私のお気に入りを列挙しまくると→→→、ソウルの優しい歌が絶大な癒しを与えるようなWildfires(M5)、摩天楼に響くような儚げな音像が美しいSorry Ain't Enough(M7)、穏やかな曲調の中で「私達は神」という内容が強烈なBlack Is(M8)、リフから掛け合いまでギターが本当に最高すぎるBow(M9)、ヒップホップのグルーヴ感がたまらなく楽しいBlack(M12)、オルタネイティブロック感がめちゃツボなMonsters(M16)、思いやりのフィーリングをたっぷり込めて締めくくるラストのPray Up Stay Up(M20)などなど....。本当にたくさん大好きな曲があるのだけど、今作の1番やばすぎてやばいところはUs(M13)とEternal Life(M14)のセット。Sault独自のブラックコンテンポラリーみたいなポップスの音楽性に、教会音楽のような神聖な祈りのニュアンスを追加したようなナンバー。ゆらめくように「Cover me with love」をリピートするパートが本当に美しすぎて死にそうになる。Usの「You are gold」「You are rubies」「You are diamonds」「Little black girl, you are exalted」とか、歌詞も全部やばすぎて目ん玉がもげそうになるし。余韻を残したOnly Synth in Church(M15)もめちゃ最高だと思う。

音楽の美しさ、内容の美しさ、作品のコンセプト、現在のムーブメント、全てが一体になった作品鑑賞ってこんなに心に響くんだなと思った。音楽に"大事"とか"大切"とかあんまりないと思うけど、現在におけるこの作品の鑑賞はやっぱり大事なのかなと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Braids - "Shadow Offering"

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「色を獲得する」

 無色半透明のフィーリングの繊細なシンセサウンドが奏でられるアートポップ、あるいはナチュラルでドリーミーな音像が溢れたメランコリックで綺麗なオルタネイティブロック。本作はそういった冷たい感触がある無機質でセンセーショナルな美しさが半端ない音楽アート作品だと思うのだけど、ボーカルのRaphaelle Standell-Prestonによるエレガントでソウルフルな歌のアプローチによって、それらの無機質で透明なサウンドたちが鮮やかに色を獲得していく感じが本当に本当に素晴らしすぎてやばい。シンプルなシンセサウンドなのに琴線に触れるような響きを持ち始めるYoung Back(M2)や、展開部でエネルギー密度を高めるような発色の変化を起こすFear of Men(M6)など。「色を獲得する」ということ、それはまるで、命の無いものに命が吹き込まれる瞬間。これがどれだけ芸術的で、魔法的で、感情的であるだろう...。しかもそれらの瞬間に、The NatuonalやLocal Nativesのようなクリーンでアコースティカルなロックの迫力などもプラスして、それらの生命的な感情・色彩の出現をもっと大胆に美しく見せるようなテクニックもあるから感動が本当にやばすぎる。無機質で無感覚のものが豊かさを手に入れていくような感情変化。"時間"を扱う音楽の芸術だからこそ成せる表現で、私達が死ぬほど愛してる音楽鑑賞の感情変化的な喜びが詰まりまくってる作品だと思う。音楽を聴いて泣くことは多々あるけど、私の場合、それらは感覚以上に自分の理性に働きかける何かの要因があるからだと思ってる。Braidsの本作では、そういった理性にアクセスすることなく、純粋なサウンドの美しさだけで泣いてしまった気がする。こんな体験、私的2010年代ウルトラハイパーベストアルバムのMr. Twin Sister(2014)以来かもしれない。

本作は、ポップスやロック、さらにはオーケストラのような壮大なスケール感などを活かして、それらの芸術的で感情的な美しさのインパクトをもっとグレードアップさせてるところが本当に秀逸だと思う。重さのあるピアノのバッキングがRaphaelleのエレガントなメロディーの存在感をより高めるようなHere 4 U(M1)、ロックのグルーヴ感でBraidsの繊細な美しさにパワーを付け足していくようなSnow Angel(M7)、オーケストラホールのようなステージのライブ感によってRaphaelleのエレガントさとエモーションをめちゃめちゃに拡張するOcean(M8)...。メロディー力のあるポップスやドラムやギターの熱量を発揮したオルタネイティブロックとして音楽の繊細な部分が表現されてる感じが本当に大好きすぎる。特にロック要素としては、The NationalやLocal Nativesのような空間を切り裂くジャキーン!というアクセント的サウンドがツボすぎてやばい 笑。音楽のセンセーショナルで繊細な部分に対して研ぎ澄まされたインパクトをぶつけるようなところに心がもぎ取れそうなほど感動する。そういったオルタネイティブロック・アートロックで、かつシンセポップ・アートポップ・ドリームポップ...もう私の大好物の塊みたいになってる 笑。

前前前作のNative Speaker(2011)は私の2011年のベストアルバム級に大好きな作品。BraidsよりもBlue HawaiiのTenderness(2017)が最初のRaphaelleのバンドだったのだけど、No One Like Youとか一時期は耳がもぎ取れるレベルでヘビロテしてた 笑。Raphaelleさん本当に最高でございます...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Rolling Blackouts Coastal Fever - "Sideways To New Italy"

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心がときめく真夏のRBCF

 Rolling Blackouts Coastal Feverの音楽がどこまでも無敵でやばいのは、「鉄壁のリズム隊によるキレキレでフォーマルなかっこよさのある最高のロックンロール」なのに、「アコギ・クリーントーンを多用したギターの丁寧な優しさをめちゃめちゃ所有してる」というところ。それはどれだけ無敵かと言うと、人間で例えるなら『容姿端麗でイケメンなのに優しくて性格も完璧』とかそういう感じ 笑。本当にやばくない???笑。最高にテンポよく繰り出されるロックンロールのグルーヴ感がめちゃめちゃかっこよくて、最高にノリノリで楽しくて、それでいながらReal Estate属性のサウンドの気持ちよさも最大に感じられるという...。そんな抜け目のない完璧なかっこよさを体現してまった前作Hope Downs(2018)のフルアルバムデビューから2年、インディーロックシーンで波に乗りまくっているRBCFの新作ということで本当に待望すぎてた 笑。実際に中を開けてみると、1曲目のThe Second of the Firstからアクセル全開でそれをかっ飛ばしていく感じ、今作をずっとずっと前から楽しみに待ってたというのもあって、初聴時には思わずテンションが上がりすぎて叫び出しそうになってた 笑。本当に嬉しすぎてやばい。

今作で特徴的な部分としては、気持ちよすぎる綺麗な青ジャケのデザイン然り、夏のイメージにぴったり合いまくるエネルギッシュでエモーショナルな作風だというところ...!うおーなんて素敵なんだー!笑。エネルギッシュ要素といえば、例えばギターのブラッシングでビートの躍動感を強調するShe's There(M3)やNot Tonight(M8)のアイディアなどがそうなのだけど、全体を通じてメロディーがもっと前に出るように感じさせるミキシングになってたり。また、従来のシンプルだったドラミングも変動パターンがさりげなく追加されてアクティビティを増やしていたり。従来のRBCFのよさだけでなく、夏に合いまくるエネルギッシュでエモーショナルなよさもプラスされてるから本当にめちゃめちゃ心がときめく。さらに今作は、エネルギッシュ・エモーショナルという部分だけでなく、リラックス効果の高いチル要素も多く含んでいるのも本当に夏...笑。冒頭の3連続リードトラック後の一服ソングのようなBeautiful Steven(M4)などが特にそうだけど、日が落ちて涼しくなった夕暮れの時間帯とかに聴きたくなるようなトロける音色があって、今作の夏のイメージを深く印象付けるのによく貢献できてると思う。アルバムのタイトルとかもロマンチックでオシャレだし、本当にめちゃんこ素敵なアルバム。

そんなRBCF特性のフル出力、夏的なイメージを持ったアルバムのコンセプトなど、本当に超最高な作品だと思うのだけど、今作で1番最高なのはやっぱり6曲目のCars in Space...笑。この曲1曲でアルバムの原価が取れると思うくらい、もう本当に力作トラックだと思う 笑。RBCFロックンロールの特性をバリバリ所持したスピード感のあるかっこよさ・楽しさ・気持ちよさが最大に表された上に、ツインギターソロパートを用意した超充実した間奏パート・展開を持ってる長尺ソング。かっこよさの上にかっこよさを重ねていくような倍増効果を持っていて、聴いてると感情が高まりすぎるあまり泣きそうになってしまう 笑。超超超傑作。MVでメンバーたちがノリノリで演奏してる様子もめっちゃお気に入り。今作を通じてRBCFのことが本当にもっと大好きになった。KEXPのライブも観返したりしてるのだけど、司会の人の「Rolling Blackouts Coastal Fever」の発音がかっこよすぎてウケる 笑(特に"Coastal Fever"のとこ)。もう本当に果てしなくラブです...。

RBCFのYoutube公式チャンネルがアップしたStella Donnellyとのコラボも尊すぎて死にそうになってた...。新作出してくれただけで本当に嬉しいのに、なぜそんな最高なことを連続するのか...笑。本当、選曲のセンス、アレンジ、相性のよさが神のレベルだと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

🍎プレイリスト↓

温の「2020年6月ベストアルバム(温)」をApple Musicで

 

 

その他とてもよかったやつ

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Arca - "KiCk i"

Bad Moves - "Untenable"

Bo Ningen - "Sudden Fictions"

GUM - "Out In The World"

James Krivchenia - "A New Found Relaxation"

Mountain Time - "Music for Looking Animals" 

No Age - "Goons Be Gone"

Patricia - "Maxyboy"

Pottery - "Welcom to Bobby's Motel"

Sofie - "Cult Survivor"

Westerman - "Your Hero Is Not Dead"

Yaya Bey - "Madison Tapes"