アルバム感想(温)

My Favorite Music

「2020年5月ベストアルバムTOP10」感想

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今月は私好みなものが大量でやばかった 笑。私は英語でいう"holy"なものがとにかく大好きなのだけど、そういうやつばっかり。

 

2020年5月にリリースされた新譜、感想をランキングで

(上位5つは全部1位 笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. The 1975 - "Notes On A Conditional Form"

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モチベーションのすごさにびっくり

 カラフルでヘヴンリーな1975サウンドの最高の味わいはもちろん、バリエーションをめちゃめちゃ拡張させた多ジャンルをぎゅうぎゅうに詰め込んだ豊富な内容、大切な人達との思い出などマシュー・ヒーリーの思いを反映させたグッとくるリリック、それに付随するエモーション、それらが80分あるというアルバムのボリューム...もうウルトラスーパー力作だと思う 笑。渾身の出来栄えのような2018年『ネット上の人間関係についての調査』も本当に素敵な作品だった。それから僅か1年強くらいのスパンでまた大作を連続するとか、モチベーションのすごさに本当にびっくり。音のクオリティからしてUKポップスの最高峰クラスのよさを感じる。また今作は、音楽的に1975らしさがよく表れたIf You're Too Shy(M16)などもあれば、バチバチのノイズ・パンクなPeople(M2)、トライバルで情熱的なダブステップ・ハウスまで発展するShiny Collarbone(M15)など、刺激的で力強いナンバーも含んでいるところもあって、エネルギッシュなかっこよさもあるところも魅力的だな思った。

今作で私が最も大好きだったところは、カラフルでヘヴンリーな1975サウンドを存分に利用したテクノ系ポップの楽曲たち。具体的には、心の弱さについて歌ったFrail State of Mind(M4)や、ダンスフロアに着実なYeah I Know(M7)など。私が人生ベスト級に愛してるSubiza(Delorean)を彷彿させるような透明感と清涼感が半端ないディスコパンク性があって本当にツボ...笑。テクノ系ポップというだけで既に大好きなのに、スーパー素敵なサウンドを奏でるThe 1975がそれをしたらもう最強だよね...笑。中でもFrail State of Mindは、楽曲に込められた"I'm sorry~"の思いが音楽の澄み渡った美しさにとても作用してる感じが本当に素晴らしい。閉じこもった空間の中で憂鬱な気持ちを見事に表現したMVもどこまでも美しくて本当に最高だと思う。

先日ツイートしたテンションの推移グラフのやつ、アルバム2周目以降だと全くあてにならなくて笑った 笑。GuysとかMVとセットで鑑賞したらもっともっと最高になるのに、テンション低すぎ...作り直したい...笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Kaitlyn Aurelia Smith - "Mosaic Of Transformation"

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ファンタジーのお祭り

 Bombay Bicycle ClubやM83など、童心がくすぐられるようにワクワクするファンタジーワールドへ誘い出してくれる作品が大大大好きなのだけど、それがちょっと行き過ぎてしまった奇矯じみたエクスペリメンタル全開のファンタジーワールドの作品もめっちゃ大好き 笑。Kaitlyn Aurelia Smisthの今作は、モジュールシンセを生楽器化させたような従来の自然派エクスペリメンタルの作風であるけれど、精神が完全に破壊してしまったような狂心じみた幻覚体験のそれ(The Kid(2017))を所有しつつ、Tim HeckerのKonoyoのような東洋系の宗教観がある神聖な幻覚作用のニュアンスを持っている。危険じみた薬物乱用系の幻覚が黄泉の国や宇宙の真理に接近するようなスピリチュアルな体験を含んでいる感じ。"Mosaic Of Transformation"というアルバムのタイトルや万華鏡のようなジャケットなどもそうなのだけど、そういった作品全体が持つテーマ性に、ドクターストレンジのマルチバーズ(アトラス次元・ミラー次元)のような世界観を連想させるところがあるからもうめちゃくちゃかっこいい...笑。個人的にドクターストレンジが大好きすぎるので、それに通ずる世界観を持ってる今作はとてもツボにハマる。

今作の本当に素晴らしいところは、リスナーに最強のインパクトを与えるような10分超えの大作Expanding Electricity(M9)。まるでメロディーそのものが発狂しているかのような振動エネルギーを持つエクスペリメンタルのメロディー。彼女が創造するスピリチュアルなファンタジーワールドに対しての幻覚的な陶酔がもっともっと大規模に展開されてて本当にやばい。精神は隅々まで破壊され、魂はあの世へトリップし、幻覚的で妄想的なファンタジーワールドの中で妖精たちとお祭りする......例えるならそんな感じ。そのくらいエキサイティングな音楽体験で本当に最高だし、それらのインパクトを高めるようなExpanding Electricityに辿り着くまでのアンビエントのプロセスもシリアス性が高くてとてもよい。

これを機に未聴だったらEuclid(2015)を買いました。ジャケットが私の好みすぎてやばい 笑。何気にEars(2016)も持ってないので買わなければいけない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. White Denim - "World As A Waiting Room"

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マイルドなサイケ

 中音域のネバネバを引き出すようにイコライジングされたマイルドな優しさのあるサイケデリック・ギターに表されているように、最高にノリノリでかっこいいロックンロールをめちゃめちゃ楽しくハッピーにやってる感じが本当にたまらない 笑。荒々しく攻撃的なまでに情熱的なサザンロック~ブルースロックの音楽性が濃いWorkout Holiday(2008)なども本当に最高なのだけど、今作は彼らのそういったバックボーンを失わず、サイケデリック・ローファイのぎらついたかっこよさを持ちながら、マイルドな気持ちよさやそれらの優しいフィーリングを大量に投入したような素敵な作品だと思う。ハピネスが増大するあまり錯乱状態になってしまった人みたいなジャケも最高すぎてやばいのだけど、Vampire Weekendや初期のClap Your Hands Say Yeahにも通ずる天然系のかわいさなどがあったり。かっこよさと気持ちよさのいいとこどり、よりパワフルなハピネスを作り出していて本当に最高だと思う。

そういったかっこよさと気持ちよさのいいとこどりをたっぷり繰り広げてる部分として、アルバム前半のWork(M3)までの3連続トラックが本当にめちゃめちゃ最高...笑。全体としてマイルドでさっぱりとした気持ちいい感触をキープしてるのに、前のめりのドライブがかかったアンサンブルでドラムとギターがぴったりハモるアクセントがあったり、気持ちよさとかっこよさが抜群で本当に超楽しい 笑。特に3曲目のWorkはノリノリの最高潮がいつまでも続くように展開するからニヤニヤが止まらなってもう苦しくなるる。ここまでの流れでテンションがめちゃめちゃに上がる。

そして私がもっとやばいと思うのは、それまでに蓄積したハピネスにもっと確実な愛を添えるようなフィナーレのKing Prospero(M9)。テンションが高まるノリノリなロックンロールの音楽性よりも穏やかなテイストにチェンジしてて、アルバムを通して聴くと蓄積した大量のハピネスのリアリティが想像以上に深まるから思わず泣きそうになってしまう。ブラス系の暖かい音色をバッキングで起用したアイディアが本当に最高すぎると思う。

本作はノリノリすぎてダンシング性が本当に高かったから、夕飯のクッキングタイムで毎日のように聴いてた 笑。(踊りながら自炊するのめちゃめちゃ楽しいからね)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. India Jordan - "For You"

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光と闇が衝突する異空間テクノ

 80~90年代に普及したフレンチタッチ・ディスコによるパラダイスと、ドラムンベースデトロイトテクノなどによるアンダーグラウンドの合体。光と闇が衝突しまくるようなめちゃくちゃ特殊な異空間を生成してる感じにゾクゾクが止まらなくなる。めちゃくちゃかっこよすぎるし本当に最高。もともとフレンチタッチ・ディスコのようなポップ系のダンスミュージックは、ハウスよりも少しルーズなテンポ感のダンス性があって、心の余裕を最大に表したような幸福感に着実な明るい音楽性を持っていると思う。それに対し、ドラムンベースデトロイトテクノなどのハイスピードなダンスミュージックには、我を失うほど没頭する集中力とそのダークネス、冷静沈着な激しい怒りの感情さえも含んだような音楽性。光と闇、喜びと怒りを織り交ぜた特殊性があるから、自分の感情が理解できなくなるくらい刺激的で情熱的な音楽体験だと思う。主に前半の2曲のI'm Just Waiting (Just 4 You)とFor You(M2)がそれなのだけど、ダンスミュージックとしてとても高品質だし、本当に素晴らしい。

また今作は、透明感のあるシャイニーな音像と興奮作用のある高速ビートを両立させた新しいトランスの制作とか、Stellar OM Sourceのように爽快にコンボしていくサウンドの組み立てとか、DJとしての技術が結晶されまってる点でもとても傑作だと思う。マキシマルなリズムと裏打ちビートを複合させたリズムワークのRave City(M4)、ドリーミーな音像で精神的なハイ状態を実現するWestbourne Ave(M5)...、シャイニーな美しさとダンサブルな激しさの両方を取り入れた上で、テクニカルにサウンドがハーモニーされていく感じ。様々なジャンルの特性をオリジナルに吸収しててめちゃすごいし、プロデューサー・コンポーザーとして秀逸なのがめちゃ分かる。

こうしてまた大好きな女性DJが一人増えました...笑。先月のLaurel Haloなんかも本当に大好きだったな。直近だと8月のKelly Lee Owensが楽しみすぎてやばい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Happyness - "Floatr"

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ある一定層の人たちがツボ死するやつ

 "ウルトラスーパーラブリーなElliott Smithボーカルのインディーロック"というチートすぎる音楽なのだけど、90年代に栄えたロックシーンのドストライク世代のようなエスケイピズム性の高い大好きなインディーロックのそれで、なおかつリスナーのことを深く愛してくれるようなハートウォーミングのフィーリングスを音楽にめちゃめちゃ込めてるというやばさ。1曲目からクライマックス級に涙腺を刺激しまくるような感動作のtitle track(M1)から、Elliott Smithにより似せてくるアコースティックスタイルのずるすぎるUndone(M7)、さらには眩しくて暖かい輝きを放つような優しさのあるロックのOuch(Yup)(M9)など、PavementとかDinosaur Jr.とかにも通じるような、永遠に色褪せることなく心に響き続ける、私たちにとって憧れの90sロックの音楽性がめちゃめちゃ濃厚なのが本当にやばい。本当、ある一定層の人たちがツボにハマりすぎて発狂しそうになってしまうのが手に取るように想像できる 笑。そのくらいドストレートなほど90sインディーロックのエッセンスが超詰まってると思う。

今作のよさは、アルバムの中で傑作トラックをいくつも含んでいるというところ。ただでさえtitle track、Undone、Ouch(Yup)などのめちゃ最高なナンバーを兼ね備えているのに、ラストを飾るSeeing Eye Dog(M11)もとびきりの傑作で本当にやばい。強い気持ちが反映されたようなノイジーなギターのエモーション、Elliot Smithのボーカル特性によるエモーション、そして心が温まりまくる無限の美しさを持ったようなメインのパッセージ...。「あれだけ最高なトラックらを用意しといて、ラストがそれ以上のクオリティかよ!?」とツッコミを入れたくなる 笑。本当に美しくてやばいし、全体として強トラックの取り揃えがとてもやばいアルバム。

今作は、先々月リリースされたJunk Drawerの作品と対になるような作品に感じる。Junk Drawerが陰で、こちらが陽。どちらもYo La Tengo的な夢想的センスを持った90s系インディー作品だと思う。(どちらも最高ですね。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Perfume Genius - "Set My Heart on Fire Immediately"

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革命の上に革命

 私にとってPerfume Geniusは、まるでルネサンスロマン主義のような古典的な芸術様式のイズムを体得したような革新的な性質を所持したアーティストだと思ってる。今作はそういった革新的な性質を、自分の大好きな"オルタネイティブロック"としてフォーマット化・再定義して、そのスタイルの上でオリジナリティの半端ない新ジャンルを確立したような音楽性だと思うのだけど、『古典的芸術のイズム(美しい)×革新的な音楽性(すごい)×ロック(大好き)』というように、大好きのメタ構造みたいなものができあがっててめちゃめちゃびっくりした 笑。ローマやギリシャ時代にルーツを持つような美術・アートの高貴なロマンスを"ロック"で表現するというか、ジェントルで華やかなクラシック感にロートーンでノイジーなギターをブレンドしたりする技術があまりにも天才すぎてやばい。それにイメージ的には、"美術・アート"と"音楽"の枠を超越したようなニュータイプの芸術感というのもあって、鑑賞するときに身体中の全ての感覚を研ぎ澄まして堪能したくなるような、鑑賞的価値がめちゃくちゃ高い作品だと思う。初めて聴いたときはちょっと理解が追い付かなかったくらい、自分の感受性が拡張されるような多重なよさを含んだ音楽性。天才すぎて本当に興奮する。

今作で神がかっている最強で最高のやばやばトラックは、なんといっても6曲目の『On The Floor』、、、もう本当に最高すぎる。高貴で果てしなく美しいPerfume Geniusの音楽に、クリーントーンの二パニパしたかわいさを強調したカッティングギターのバッキングを組み合わせるという、、、ねぇ、何それ????笑。どんな脳みその回路になってたらそんな奇怪なアイディア思いつくの?笑。しかもそれが後半で光沢のある瑞々しい音色に変色してたりとかが本当にやばい。Perfume Geniusの革新的な芸術性が、奇抜なアイディアでさらに革新的になった感じ。アイディアとしてめちゃめちゃ新しいしくてどこまでも素晴らしいし、本当に美しくてたまらない。

前作No Shape(2017)は、今作と同様のルネサンスロマン主義のような古典美術のイズムを持った大規模な音響エレクトロニカの音楽性があったと思う。(こちらもスーパー傑作。)私の場合、前作のそのエレクトロニカの作風の印象がめちゃめちゃ濃かったからこそ、ロックのキャラクターでまた新しく焼き直されたPurfume Geniusのそのセンスにまたさらに感動した。サブスクにはないフォークスタイルのPut Your Back N 2 It(2012)も触る程度に聴いたことがあるのだけど、もう本当、Perfume Geniusって引き出しのバリエーションどうなってるの??笑。すごすぎない?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Eve Owen - "Don't Let The Ink Dry"

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「純粋な感情の全てをずっと大切したい」

 西洋のスピリチュアルな宗教観を感じさせるような聖なるオルタネイティブロックから、純潔な思いを大事に保存したような祈りのベッドルームフォークまで、Eve Owenという人物のパーソナリティをとても多面的に表した作品だと思うのだけど、宗教観のある神聖な魂、感傷的なエモーション、純潔なるありのままの感情、それらの無垢な人間味など、作品を構成してる一つ一つのパーツが全部がウルトラハイパー級に大好きすぎてやばい。20歳の彼女がこれまでに貯め込んだアイディアのコレクションを感じさせるような様々なパターンの曲を含んだ作品なのだけど、最高にエモーショナルでソウルフルな美しいソングラインを根幹部分に持っていて、どの曲も本当にめちゃくちゃ素晴らしい。ピアノを多用してヘヴンリーなエモーションをダイナミックに拡張したフォークテイストのShe Says(M7)などもあれば、大規模な疾風を発生させるように迫力のある激しいロックのMother(M3)など。ソングラインという点だと、持ち前のメロディー力を発揮しためちゃめちゃ印象に残るパワーフレーズを含んだSo Still for You(M9)なども。まるで全曲がリードトラックであるかのようなシングル集みたいな作品になってると思う。

今作がマジで死ぬほどにやばいのは、頭の中で様々な色が混ざり合っている状態を示したジャケットと、「それらの色をいつまでも新鮮なまま大事にしたい」という意味が込められたようなアルバムのタイトルで表されている作品全体のコンセプト。これが本当に本当に死ぬほどツボでやばい...。ロックからフォークまで統一性のない自由なスタイルの今作には、宗教観のある神聖な魂を体現したような大人の側面もあれば、初々しいデビュー作としての純粋無垢なあどけなさの部分も持ってると思う。それはまるで思春期中のある種の通過点で、Eve Owenがこれからもっと大人になっていくことを示唆してるようにも感じる。だからこそ、Eve Owenのエモーショナルでソウルフルな美しい祈りの歌が、「過去の思い出やそれらの純粋な感情の全てを大切にとっておきたい」というような作品のコンセプトと直結する部分がある。それはもっというのであれば、A Lone Swan(M12)の世界観で示されてるような、"日常で感じる全て瞬間をいつまでも美しく愛おしく感じていたい"ということ。もう本当にやばすきて目ん玉がいくつあっても足りないくらい泣いてしまう。私が憧れてる理想の人生観と死ぬほどマッチしすぎててマジでやばい。もう共感しすぎて身体が消滅しそうになる。

他にも、宗教観の気高く立派な尊厳を体現したようなアルバム1発目のTudor(M1)や、残響を多用したマリンバの音がやばいほど美しいFor Redemption(M5)など、初めからずっとずっと最高。本当にやばすぎたからお父さん(Clive Owen)の映画も主要なやつは全部観た 笑。(クローサー、トゥモローワールド、インサイドマン、シューテムアップ、ラストナイツ、キラーエリートなど。)インサイドマンが一番好きなClive Owen 笑。まだ観てないルール・オブ・デス(Clive Owenのヒットのきっかけ)も絶対観る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Erik Hall - "Reich: Music For 18 Musicians"

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神の存在をリアルに感じるということ

 途切れることなく流れ超自然的な世界を創造し続けるミニマル、鑑賞者に何かを訴える小鳥のさえずりのような木管系楽器のメロディー、それらの謎に満ちた神秘的な世界の遠く奥で静かにゆっくりと動く低音の巨大な生命体...。まるで人類未踏の神秘的な森林地に迷い込んで誰も知らない未知の生物達と遭遇していくような、想像が果てしなく掻き立てられる奥行があると思う。またそれは、誰にも邪魔されない音楽の精神統一の世界の中で、この世の真理やありのままの自分と向き合うような瞑想的な体験も含んでると思う。私的には特に、音楽の超自然的な要素を司る巨大な低音に対して、深呼吸の概念を実体化したようなこの上ないほど極大なリラクゼーションのリアルを堪能して、死んじゃうじゃないかなと思うくらい感動した。Section Ⅸあたりでは涙腺が壊れて涙が止まらなくなってしまって、5分間以上ずっと泣きっぱなしだった。そのくらいやばい威力がある、とてつもなく素晴らしい作品。

巨匠Steve Reichが1978年にリリースした「Music For 18 Musicians」のエレクトロニカ版として制作された今作は、オーケストレーションが持つ多人数演奏形態のニュアンスが一切なくなって、センシティブな孤独の感覚とそれによる虚しく切ないエモーションをより掻き立てたような味わいを持っている。それらの強烈な感覚・エモーションをずっと抱えながら50分間のミニマルを展開し、超自然的な世界の無限の彼方までリスナーを運んでしまうのが本当にやばい。もともとミニマル・ミュージックには音が永遠に体内へ流れ込んでくるような特性があるけど、それはつまり、音楽が鳴らされる向こう側の世界へ自分が相対的にどんどん入り込んでいくということ。孤独の感覚も神秘的なフィーリングも瞑想的な体験も、それら全てが誰の手も届かないほどまで奥深さを持ち始めるから本当に凄まじい、本当にやばい。

「誰かに愛されたい」、「誰かに自分を認めてほしい」、もしそれらの願いを叶えてくれるような、ありのままの自分を受け止めてくれる存在がいるのなら、尚且つそれを心から信じることができるのなら、自分はどれだけ救われ、どれだけ幸せなのだろう。宗教・信仰には、それらを実現するため世界最強の力があると思う。無力でちっぽけな自分でさえも承認してくれる絶対的な存在。心の底から安心できるものを与えてくれるような断固確実たるもの。Erik Hallが今作で実体化した超自然的な世界とか、真実に永遠に辿り着けないような神秘性とか、深呼吸の概念を実体化したような巨大な低音のそれらは、人間の感性の範疇を超えたメタ次元的なもの、もしくは宗教で信仰されているような絶対的な存在のそれに感じられる。そういったものが、音楽によって確実にリアル化・実体化するということ。言い換えるのであれば、"神の存在をリアルに感じる"ということ。ちょっと頭おかしめなことを言ってるけど、私におけるErik Hallの今作はそういうことなんです、、、笑。低音の重々しさが本当に素晴らしいし、永遠に理解できない無限性が本当に美しい。だから死ぬほどにツボで、死ぬほどにやばくて、死ぬほどに感動する。

他にも、6拍子の組み立てのバリエーションとか、ミニマルによるシューゲイザー的音楽性の実現とか、セクションごとで微妙に変化するメロディーに込められた内容の考察とか、入口と出口に設置されたPulsesによる音楽のストーリ性の構築とか、なんかもう最高なところが鬼のように詰め込まれてて。。。本当に頭おかしいくらい好き。。。笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Moses Sumney - "græ"

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レベル100の状態にレベル100のアイテムを装備しまくる感じ

 本作が本当に頭がおかしいほど素晴らしいのは、「壮大なフォークオーケストラのバッキング」、「ネオソウル・ジャズ系のピアノ」、「音楽を神秘化させるエクスペリメンタルのセンス」など、一つ一つが半端なく素晴らしい効力を持ったアイテムらを、魂が壊れてしまいそうになるくらい心に響くMoses Sumneyの強大なエモーションに全部装備しているというところ。これがもう本当にめちゃんこハイパーやばすぎると思う。フォーク形態のオーケストレーションによる素朴で暖かい人間味を基調としながらも、ネオソウル・ジャズ系のピアノによるロマンチックな美しさや、音響エレクトロニカによる非現実的で神秘的なデザインを追加した感じ、ただでさえMoses Sumneyのボーカルそのものだけで十分すぎるほど圧倒的な感動を作り出せるのに、それらの美しいエモーションやシンパシーの伝達をさらにさらにスペシャルなものとして完成させるというやばさ...。Moses Sumneyの内面に秘めた思いがどれだけ強力なものであるか、ということをビシビシ感じるからとても激しく感動する。2枚組構成のパート1とパート2、それぞれ最強のトラックを所有していて本当に素晴らしい。

本作で目ん玉がズキズキするくらい泣きまくってしまう今年ベストソング第1位級の曲は、パート1の9曲目に収録されてるColouour。冒頭のサックスとピアノの完璧なまでに美しいハーモニー、思い返すだけで泣いてしまうレベルのやばさなのだけど、そこにMoses Sumneyの聖なる祈りや深い慈悲が反映されているようなところに涙が止まらなくなる。「Why don't you wear some color」という歌のパートが入ったとき、シンパシーが心臓にドスンと直撃してさらに一気に泣く。本当に大好きだから3分という短さが残念すぎる...笑。欲求が満たされるまで何度でもリピートしたい。

そしてパート1の12曲目のPollyもそう。年間ベストソングの1位クラスが一つの作品に2曲もあるということ、これがどれだけやばいか...笑。Moses Sumneyが自身の傷ついた心を治癒しようとするような願いのリアリティが半端ないほど感じられるようなメロディー、素朴でありのままの思いを強調したような飾り気のないシンプルなアコースティックスタイルが本当によく合う。心を込めて歌うことによって苦しみを解放するソウル・ミュージックの本質がとても詰まっている曲なので、これからめちゃくちゃお世話になると思う。

今作はグレーネスという白と黒の中間的な無彩色をコンセプトにしたということだけど、4位のEve Owenと同様、感情・色をテーマにしてる作品という点でここに関してもツボみが深い...笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Owen Pallett - "Island"

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神業

 Owen Pallettの音楽ことが本当に本当に大好きでたまらないのは、血の通ったカントリーポップ(ハート)と、厳格で神々しい交響曲(スピリット)の音楽性を融合させて、汚れなき純粋な命(ライフ)を創造しているということ。そしてさらにOwenの音楽には、クラシック音楽のスタイルを十分に吸収したストーリー・ドラマ性のある映画音楽的なニュアンスも持っている。Owenの音楽が本当に本当にやばいのは、そういった音楽のストーリー・ドラマに、その命を宿すというところ。本当に神業だと思う。メロディーに宿るその命が、アルバムの中で、曲の中で、途切れることなく流れ続ける。そしてそこにはストーリーがある。だから、音楽の一瞬一瞬が本当にやばくて、ずっと美しくて、本当に素晴らしくてたまらない。

一般的に"命"とは、生物的な観点でいう心臓・ハートに相当するものと、人知を超えた非肉体的である霊魂に相当するようなスピリット(ソウル)の両方があると思う。Owen Pallettの場合、木管やアコースティック系の楽器を多用した可愛くて愛おしいキャラクターによる血の通った暖かいハートの感覚がある。そしてそれとは別に、ものすごく厳格なストリングスの迫力が作り出す絶対的な力を手に入れたような高潔で神々しさの強いスピリットもある。暖かいハートと神々しいスピリット、肉体と非肉体の両方を兼ね備えたありのままの純潔な命。Owenの作り出す音楽やメロディーが私にとって完璧にツボな理由はそれ。暖かい人間味と神聖なニュアンスのダブル。それら二つによって音が鳴らされる度に命が宿るというのが本当にやばい。本作も本当にめちゃくちゃ素晴らしくて、ぶっちぎり年間ベスト、★×50個レベルです 笑。

今作のウルトラ最高ポイントは、冒頭の「- - -> (i)(M1)」が提示するように、音楽が持つ光と闇の両極をグッと深くして、静寂を際立たせるような深刻性、さらにはヘビーな衝撃波を音楽に持たせているというところ。深い悲しみの静寂の中でも音が微かに輝くThe Sound of The Engines(M5)や、地響きのような力強い低音によってリスナーの負の感情をドバドバと吐き出す作用を持ってるA Bloody Morning(M9)など。そのOwenの音楽のストーリーに深く入り込んだ私は、深刻性の高いインパクトのある感情体験により苦しみから解放され、Owenが込めた祈りに深く共感し、ありのままの現実を受け入れるために必要な強さを手に入れることができる。もう本当、Owen Pallettのことが大好きで大好きでたまらない。今作も本当にめちゃめちゃ心に響いた。

A Bloody MorningのMVもめちゃめちゃよかった。今作はサプライズリリースということだけど、フィジカル出たら電光石火で買う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

🍎プレイリスト🍎↓

温の「2020年度5月ベストアルバム(温)」をApple Musicで

 

来月はRolling Blackouts C.F.が楽しみすぎてやばい

 

 

 ★5月8日にリリースされたアルバムの感想・ランキング★

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