アルバム感想(温)

My Favorite Music

「2020年9月ベストアルバムTOP10」感想

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今月はセンチメンタルな曲を摂取しすぎたせいでメンタルバランスが崩れてめちゃ死にそうになってた、、、笑

そういった点で、IDLESやOSeesのようなハードなロックに助けられたな 笑

 

今月の最最最高だったアルバム10枚、感想をランキングで

(全部1位です) #ランキングとは

全然10枚に収まらなかったから漏れたやつは後で絶対フォローする(T_T)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. The Flaming Lips - "American Head"

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カラフルにロマンチックに染め上げるサイケポップのバラード

 ピアノを強調したようなバラードのスタイルをメインに、テキサス系カントリーの風味(Kacey Musgraves)のメロウなテイストもプラス、そしてそこに鮮やかな花を満開に咲かせるようなThe Flamings Lipsの派手やかなサイケポップを応用させるという...。もう間違いなく最高だと思う 笑。極上のゆらゆらワールドへ導いてくれるThe Flaming Lipsのサイケポップの素晴らしさはもちろん、ロマンチックで大人びたバラードの景色をよりカラフルにドラマチックに染め上げてて本当に流石だと思う。1曲目のWill You Return / When You Come Downからもう傑作、The Soft Bulletin (1999)のときからお馴染みのオーケストレーションを取り入れたような大規模のサイケポップバラード。ゆらゆらしててキラキラしててメロメロが止まらなくなるめちゃめちゃ素敵なやつ。そんな感じで1曲目のスタートから感動がでかすぎるから思わずびびってしてしまう 笑。そこから一貫してサイケポップバラードのやつが展開されるわけだけど、Kacey Musgravesをフィーチャリングした今作一押しの一つであるWatching the Lightbugs Glow (M2)やFlowers of Neptune 6 (M3)もまた素晴らしい。夏の情景を映し出すようなカントリーの世界観の中でサイケデリアを濃いめに調整するようなテクニック。ロマンチックな大人のサイケポップバラードとしてのよさだけでなく、サイケ要素によってカントリー系の味わいの深みをよりトロトロにアレンジしてるのが本当に上手だと思う。中でもWatching the Lightbugs Glowは楽曲中のロマンスを高めまくるKacey Musgravesの上品さもかなり効いてるし。

そんなアルバム前半で既にお腹いっぱいになれる最高の大作だと思うけど、私的には7曲目のBrother Eye以降におけるアルバム後半のプロットがものすごくやばいと思う。Brother Eyeで6曲目までのトーンを少し暗めに変えて、8曲目You n Me Sellin' Weedで本作の特徴的な要素であるカントリーの音楽性をサンプリング的に取り入れるユニークさなどを発揮しつつ、9曲目のMother Please Don't Be Sadではストリングスのバッキングをより大胆に実装したゴージャスな感動大作ソングを繰り出していく。曲調を徐々に変化させていく流れがおもしろくてよくできてるし、M9のそれに関してはYoshimi Battles The Pink Robots (2002)のDo You Realize?みたいなライブ感も彷彿させるところもあってグッとくる。ここの段階でもうめちゃ満足できるのに、そこから10曲目When We Die When We're Highでよりダークでエクスペリメンタルなサイケロックのやつに転移するという...。2010年代っ子である私はThe Terrror (2013)も本当にお気に入りでよく聴いているのだけど、Yoshimi~だけでなくTerrorの作風まで網羅してしまうというこの充実っぷり!笑。心満たされるような感動系からダーク系のゾクゾク感まで内包されてて本当に素晴らしいと思う。

そんな風に10曲目まででさえこんなに強トラックが取り揃えてあるのに、、、その後にラスボスみたいな12曲目のGod and the Policemanが待ち構えているのがね、、、笑。今までのThe Flaming Lipsでは味わったことがないくらい強力な神秘性・幻想性があるナンバー。それまでのサイケポップバラードの印象がぶっ飛んでしまうくらいのシリアスな重たさがあって、まるでアルバムの最後の最後で全身全霊の思いをぶつけるような強い精神が感じられる。そこには繊細なところまで気を配ったThe Flaming Lips渾身のサイケ技術もあるし、Kacey Musgravesのボーカルもさらに聖なる存在感を放ってたりで、本当にめちゃめちゃ感動する。歌詞、MV、それらのメッセージ性もすごくツボ。

The Flaming Lipsって20作も作品を出してるとは知らなかった。他のアルバム聴いてみたら直近だとAt War With the Mystics (2006)とかものすごく最高だった。ディスクユニオンですぐさま買った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Devi McCallion & Katie Dey - "Magic Fire Brain"

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混沌の世界の中で築き上げる自分だけのファンタジー

 情報社会を中心に生きてきたようなデジタルネイティブ的作家性が強いエレクトロニカポップ、音圧の高いトランス・EDM系のサウンドを濃厚なドリームポップの音楽として昇華(Circumstances (M6))したり、今までに出会ったことのないカオスな発展性をたくさん含んでるところにめちゃめちゃゾクゾクする。まずカオスという点だと、耳の中でいきなり大災害が発生するみたいに攻撃的すぎるポストハードコア(Plant Matter (M1))、低音を思い切り強調したトラップミュージック属性のエクスペリメンタルポップ(Plastic (M2))、怒りや憎しみの暗黒な感情がメラメラ燃え盛るように恐ろしいハードコアテクノ(Milk (M8))などがそう。特にハードコア系の音楽性は本当に過激すぎて危なさが度を越してると思う 笑。それなのに、それらの間にMirror (M3)やCircumstances (M6)など、天に昇るほど解放的で眩しいエモーションが溢れたポップのナンバーを用意してたり。もう本当にハチャメチャだと思う。そしてこのMirror (M3)やCircumstances (M6)といったポップスの楽曲群が本当に最高でやばい...笑。Mirrorはシンセポップのカラフルな世界観の中でセンチメンタルなメロディーの愛おしさが本当によく際立ってるし、Circumstancesは目まぐるしく暴走していくようなテンポ感を活用したエモーションの高密度化が本当に素晴らしい。ハチャメチャなアルバムで、ハチャメチャに振り回されながら、ハチャメチャに感動するという。新世代の作家性がよく表れてる傑作のアルバムだと思う。

私が今作で最も心打たれたところは、ハードコアによるストレスの発散が、心を病ませる現代の混沌とした情報社会に対してのものとして感じられたところ。そして、それらのありったけの感情の解放によって、自分だけのファンタジーを築き上げ、天国に昇るような多幸感を獲得するという意図を感じたところ。アルバムの展開の仕方が本当に大好きでたまらない。個人的に、今作のEDM・ポストハードコア系の音楽性のところには、ネットゲームやアニメなどのサブカルチャーがよく発達した世界観の現代性をよく感じる。そういった現代世界の主なイメージって、私だとデジタル化・IT・インターネットとかがモリモリになった世界のイメージなのだけど、情報過多の疲れとか、物事がどんどん複雑に分かりづらくなっていく気持ち悪さとか、現代ならではの苦しみ・ストレスをよく連想してしまう。Devi McCallion & Katie Deyの音楽は、そういった世界観の中で生じている激しい怒りのハードコアだということ。私はそういうイメージを持ったからこそ、激しい怒りをぶつけた後に訪れる、解放的で心満たされるフィーリングを目指した楽曲(MirrorやCircumstancesなど)に対して、本当に感動しまくった。私自身、従来よりネットを使うことが多くなってるし、情報にまどわされることも多くなって心がどんどん不健康になってたわけだけど、ハードコアによるストレスの発散も、その後に訪れる心満たされる解放感も、音楽の持つ世界観に対して全部にめっちゃ共感できる。ほんと、心を揺さぶりまくるとても刺激的な音楽体験。

Devi McCallion & Katie Dey、新世代のカオスなアーティストという点だと、別次元の未来的ポストパンクを提示したCrack Cloudとも似てるなと思った。どちらも、新時代における進化の過程で変異を遂げている最中の化け物な感じ 笑。(めちゃめちゃ褒めてます...!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Osees - "Protean Threat"

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ツインドラムのレパートリーがやばい

 ドラムの存在感がよく強調されたローファイ・ガレージロックのおちゃめなアンサンブル、、、とにかく楽しすぎてやばい..!!笑。まずそもそもとして、King Gizzard & The Lizard WizardとかGodspeed You! Black Emperorとか、ツインドラムの曲の充実感やパフォーマンス性ってもう間違いないのかなって思う 笑。Scramble Suit II (M1)の猛スピードで刻みまくるビート、Dreary Nonsense (M2)の小動物みたいなかわいいロールがあるトコトコ感、Mizmuth (M8)の不規則的にアクセントがずれたりするテクニカル性、どの曲もドラムのダブルな存在感がより前面に出てると思うのだけど、楽曲のノリとか勢いがもっと強化されまくってて絶えず楽しい...そしてめちゃめちゃかっこいい...笑。そんなドラムの特異性が目立つ今作の中でも、If I Had My Way (M9)のグルーヴとか特徴的だと思う。ベース込みの総合的なリズムワークにモダンロック・ジャズのようなオシャレなステップの動きが含まれてるやつ。必然的にタッチが多くなるツインドラムならではの効果によって、オシャレなリズムの動きがより大胆に派手になってる感じが本当におもしろいなと思う。ドラムが連続的に繰り出される気持ちよさのところも〇。Gong of Catastrophe (M11)のドラムフレーズとかも本当に最高すぎる。こちらはOseesらしいビターな味わいのある暗めのロック。ドラムのフレーズだけを強調するように曲の密度が調整されてて、Oseesの最高に美味しいツインドラムをたくさん堪能できる仕様なってるのが私得すぎる...笑。Josh Homme(Queens of the Stone Age)のロックンロール・ブルース感っぽいところもあって、ギターとかとてもメロディックなのも最高。そして私が今作でウルトラスーパー1番大好きなドラムが!5曲目のTerminal Jape...!これはもう本当にやばい 笑。パフォーマンス性が鬼高いOseesのツインドラム連打ビート。ガレージロックとしての攻撃力も全開でアドレナリンがドバドバに出まくる。あまりに楽しすぎてマジで笑いが止まらない。こういう曲を期待してたので、Oseesの今作は私にとってもう満点の作品でした 笑。

ドラム要素なしに楽曲的に見てもやっぱり最高...。例えば11曲目のCanopnr '74、私的に今作のベストトラックだと思う。Osees(Thee Oh Sees, Oh Sees)ってアルバム何個もリリースしてる(調べたら22作品だった)くらいには超メロディーメイカーのバンドだと思うのだけど、この曲はそのソングライティングのスキルがめちゃめちゃ発揮されてる感じ。Oseesのロックのクールな曲調も相変わらずかっこよすぎるし、自分も歌いたくなってしまうような耳に残る格別のフレーズ(はっはっはっは)があったり。曲構成のバランスとかも上手。その後にテンション高まるアンサンブルで締めくくるラストのPersuaders Up! (M12)もバッチリ最高 笑。ギターのブラッシングワウワウとドラムのドコドコのアンサンブル。この人たち本当に愉快で楽しい 笑。

今作を聴いて、2019年のフジロックのキンギザの楽しさを思い出した。Oseesもライブめちゃめちゃ楽しそう 笑。曲を予習するのは絶望的だけど...。(今まで2~3作品しか聴いたことない)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Deradoorian - "Find the Sun"

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死の世界にアクセスするインディーロック

 心霊的で宗教的で瞑想的。Cross Recordと同じようなスピリチュアルな意思が音楽に込められまくってる。メロディーが神秘的でどこまでも引き込まれまくるし、クラウトロックやポストパンクのアンダーグラウンド感に似たダークネスのパワーが超超超かっこよくて大好き。Cross Recordだけでなく、最近だとKatya YonderのMultiply Intentions(←大好きすぎてやばい)とか、スピリチュアル思想の音楽作品ってもうめちゃんこ大量にあると思うけど、その中でもDeradoorianの今作は、なんといってもスタイルが超シンプル...!!エレクトロニカ的表現の装飾が一切ない、正統派インディーロックのみで創造するスピリチュアル性がめちゃめちゃ特殊で本当に素晴らしいと思う。例えば、Red Den (M1)やCorsican Shores (M2)など、人影のないホールのような静寂に包まれた世界で演奏される音楽。その静けさの中でギターやボーカルの存在がゴースト的に浮き彫りになるわけだけど、ミステリアスな性質のある魔法的なニュアンスもあるために、メロディーがリスナーのマインドに対して深く食い込みまくる特殊性があるのがやばい。シンプルなバンドスタイルだからこそ成せるメロディーの神秘性の強調、そしてありのままに剝き出しになったダークネスの演出。それは、GrouperのRuins (2014)とかと同じ、音を取り除く引き算の発想によるインパクトの与え方だと思う。飾られていないメロディー一つで勝負できてるところがかなりハイセンスだと思うし、純粋に正統派インディーロックが大好きというのもあるので、めちゃめちゃツボに刺さった。

ありのままのダークネスの演出というところだと、私は3曲目のSaturnine Nightとか大好きすぎる。気迫を無限に高め続けていくような儀式的音楽。もともとDeradoorianの音楽は心霊的で宗教的な世界観が濃いと思うけど、この曲は特に心霊的なダークネスのレベルが高くて、まるで死の世界にアクセスするような恐ろしさがある。シンプルでスタンダードなインディーロックのスタイルでそういう恐ろしさを表現できるって本当に最高...笑。Dirty Projectorsの頃からかっこよかったけど、今作のこのダークさは特にかっこいいと思う。他にも、ラストの展開でバリバリに教会音楽に発展するMonk's Robes (M4)とかもスピリチュアルなダークオーラがあってめちゃ最高だった。

私が今まで出会ってきたスピリチュアルな音楽作品は、ほとんどエレクトロニカ的表現を借りてたかな?と思う。やっぱり、Owen Pallettのような厳格なオーケストラのシンフォニー技術とかがない限り、スピリチュアルな音楽って多分エレクトロニカの表現を使いたくなるよね。それをせずしっかりよさを確立したDeradoorianさん本当に流石だな思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Shabason, Krgovich & Harris - "Philadelphia (feat. Joseph Shabason, Chris Harris & Nicholas Krgovich)"

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"ヒーリングプラネタリウム"

 まるでPat Metheny Groupのジャズ・フュージョンのような心臓がぎゅっと掴まれるほど綺麗な景色を見せてくれるポストロックの作品。音が果てしなく流れていくようなアンビエント特性の安らぎ、歌うことの喜びで満たされているようなとても自由なメロディー、臨場感のある立体的なサウンドの高級感、滑らかな質感、澄み切った透明感。ものすっっっごく美しい。現実を圧倒的に撃破してしまうような幻想へのトリップ性が本当に半端ないと思う。例えば3曲目のI Don't See The Moon。現代の音響技術を可能な限り駆使して実現するような究極的に癒し的なドリーミーワールドのやつ。鳥の鳴き声をサンプリング利用した自然描写とか最強すぎるのに、そこにピアノやトランペットの歌を重ねて音楽の世界をもっともっと豊かに広げていく。即興的なピアノのメロディーはまるで命が宿ってるようにソウルフルでやばすぎるし、トランペットに関してはBon IverのST (2011)みたいに非現実的なニュアンスの存在感があったり。ギターソロもSandro Perriみたいに超繊細でうますぎる。

ラストのOpen Beauty (M8)も超やばい。自然の恵みを享受するような天然の癒しに満ちたワールド、空を飛んでいくようなふわふわのシンセのメロディー、そしてピアノのバッキングに込められてるありったけの愛情。まるで夕日のように美しく心を温めてくる、本当にヒーリングミュージックとして完璧だと思う。あとフルートにDestroyerのKaputt (2011)のような洗練された輝きを感じるところにもめちゃめちゃ惹かれた。

そして1番美しすぎて死にそうになったのが、4曲目のFriday Afternoon。音響効果をダイナミックに使用したヒーリングプラネタリウムのような世界観があると思うのだけど、本当に癒されまくってやばいことになる。夜空の星々が輝くような情景の中で、メランコリックな歌のコーラスがこの上ないほど合いまくる。そして3:30あたりから出てくるピアノが死にそうになるほど美しい。夜空の背景に溶け込んでいくようなグラデーションを持っているところが本当に素晴らしすぎると思う。このピアノセンス、本当にやばいから誰にも真似できない気がする。

今作を聴いたらオーディオオタクに目覚めそうになってしまった。これを聴いてると、自宅の環境では満足できず、お金をかけてオーディオをもっとグレードアップしたくなってくる。今までオーディオ環境とか別に気にしてなかったけど、こんなに欲望が沸いてきたのは初めてだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Sault - "Untitled (Rise)"

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自分たちのこと愛し、祈り続ける

 3ヶ月前にリリースされた前作Untitled (Black Is)の続編的作品、前作も思いがボリューミーに込められまくったBLMムーヴメント音楽の大傑作だったのに、「自分たちの民族性に対するリスペクトや愛はまだまだこんなものではない」と言わんばかりに今作も超傑作...。思わず泣きそうになってしまう。前作(Black Is)では、虐げられる自分たちの種族に対して、「それでも自分たちを愛することを止めない」という思いを強く提示したようなUs、Eternal Life (Cover me with love)、Only Synth in Churchがめちゃくちゃ特徴的だったと思う。今作(Rise)では、そういった前作の励ましや祈りのテーマ性に、さらにオーケストラ系の華々しさやパレード系の祝福的なニュアンスをプラスしたような派手やかさがあるアルバムになってると思う。代表的なところだと、2曲目のFearless。従来のSaultのカラフルなR&B・ソウルの中で、ストリングスの豪快さもパーカッシブなダンサブル性も両方同時に全力で炸裂してる。Riseという副題らしいSaultの祈り・祝福の思いが注がれまくってて最高だと思う。そして、4曲目のI Just Want to Dance。こちらはヒップホップタイプのグルーヴ感があるナンバーだと思うのだけど、シンセのオーロラを織り交ぜたストリングスの流れ星みたいなメロディーが本当にロマンチック。心満たされるようなときめきを抱きながら踊るようなシーンを描き出してて本当に素晴らしいと思う。他にも、Saultならではの怪しげな美しさを秘めつつ、ギターのファンキーなグルーヴやエキゾチックなパーカッションのかっこよさを主張したStrong (M1)とかもとてもよかった。

個人的に今作(Rise)の素晴らしすぎてたまらないところは、前作(Black Is)に込めた祈りを引き継ぎ、さらに延長し、祝福のテーマも追加してもっと拡張したというところ。それをビシビシ感じるのが本作6曲目Son Shine。 前作(Black Is)のEternal Lifeのようなコンテンポラリー的エレクトロニックの美しさが大好きでめちゃツボだったのだけど、Son Shineはそれと同系列の作風の曲。エモーションを余すことなく解き放つソウルミュージックならではの幸せを、カラフルに、グルーヴィーに、ドリーミーに、ロマンチックに表現してる感じが本当に最高すぎてやばい。前作(Black Is)の忘れられないEternal Lifeの印象も込みで、Saultというアーティストが、自分たちの音楽を深く深く愛していることが心から伝わってくる。誰にも負けず祈り続けるような強い信念、自分たちのこと愛する熱い思い、もう感動しないなんてありえない...。本当にむちゃくちゃ素晴らしいと思う。前作(Black Is)とセットで大傑作。どちらもめっちゃ大好き。

ストリングスもそうだけど、ストリート系ヒップホップなFree (M9)、ほろ苦い味わいが最高なUncomfortable (M11)、リラックス効果が抜群なジャズのLittle Boy (M15)など、歌のメロディーもめちゃめちゃよかった。10月はもうRough Tradeが年間ベストアルバムを発表する頃だし、そろそろそういう時期に入っていくと思うけど、私は年間ベストアルバムにSaultの(Black Is)と(Rise)をダブルランクインさせたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Fenne Lily - "BLEACH"

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田舎のおばあちゃん家みたいな馴染みやすさ

 Fenne Lilyの今作は、デビュー作のOn Hold (2018)のときからの甘くて儚いドリーミーなフォークをメインにしつつ、ギターリフも取り入れたメロディックなフレーズがある。そしてシューゲイザー的轟音サウンドの最高の気持ちよさもある。愛おしいピュアネスもある、哀愁もある、メロウな香ばしさもある...。もう最高じゃない理由が見つからない...笑。本当にめちゃめちゃ素敵な作品だと思う。Phoebe Bridgersのように天使みたいなメロディーライン、Lucy Ducusのような上品でメロウな声質、並びにLaura Marlingのようなエモさ・歌唱スキル、そしてSoccer Mommyのようにキラキラ輝くポップネス、Land Of Talkのような陽だまりの温かさなど、多くのよさが含まれてる感じがする。まるでFenne Lily一人の中にインディー女子SSW↑のネットワークが構築されてるような多様性のやばさがある。そんなにも最高な作品なのに、メロウな哀愁を引き立てるクラシカルなバイオリン族楽器など、オリジナリティ要素も本当に素晴らしい。具体的にはElliott (M5)とBirthday (M6)の二曲。Elliottはフォークテイストの素朴な曲調の中で、バイオリンによる大人びた雰囲気がよく演出されてるけど、Fenne Lilyの甘いメロディーに含まれてあるピュアネスも強力。この大人びた雰囲気とピュアネスのバランス、まるで田舎のおばあちゃん家みたいな馴染みやすさがあってやばい。思いやりのフィーリングが溢れてると思うけど、感覚的には、お母さんが子供に絵本を読み聞かせるようなものを連想する。半端ないほどツボすぎる。そしてBirthday (M6)も超傑作。こちらはバイオリンが楽曲の盛り上がり部分で感動的な華やかさを生み出してるタイプの曲。センチメンタルになりすぎてしまう今の季節に抜群にちょうどいいポジティブさが本当にたまらない。今の私にはこういうやつが必要なんです...!!笑。他にも、大胆にロックの方向性にターンしたFenne LilyのネクストレベルソングのAlapathy (M2)やSolipsism (M8)などももちろん最高。Fenne Lilyの甘くて儚いメロディーセンスでロックするという間違いなしの安定感...笑。MVもめちゃめちゃ大好きだし、ライブもものすごく観たくなる。

1曲目から最高の曲の連続で抜け目がなさすぎるアルバムだと思うのだけど、私が今作で1番大好きで気絶しそうになった曲が、間奏パートの'98 (M10)。誰か分からない子どもの声をサンプリングした愛おしさのやばすぎるアコースティックのインスト。1分程度しかない短い曲だけど、この曲でFenne Lilyが考えていること、思っていることをまるまる察することができた。「そういうものを深く愛しているのね、そういう思いを表現したいのね。」......私もそう、"それ"が本当に大好き。。。そういう感情を心から愛しまくってる。。。この'98を聴いて、Fenne Lilyに対する信頼度・好感度が限界突破した 笑。Lilyさん好きすぎて死ねる、、、というかもう死にます、、、(ダメだ)(生きろ)

ジャケットの雰囲気など、今作は聴く前からもう絶対最高のアルバムだって予想してた。実際本当に最高、特にM2からM6までの流れとかが私的に超やばかった。他にも、後半で転調するドリームポップのI Used To Hate My Body But Now I Just Hate You (M9)とかもめちゃよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Fleet Foxes - "Shore"

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どんな方向に転んでも全部最高でウケる

 Fleet Foxesといえば、大地を踏みしめるように力強く、自然豊かで広大なワールドを描き出すようなカントリー。聴くと心が晴れ晴れしくなるような開放感、神秘的で幻想的なものさえ生み出してしまうような美しい情景描写、もうこれ以上に大好きなカントリーありません(T_T)って思うくらいFleet Foxesのカントリーがウルトラスーパー大好きなのだけど、今作のように作風が軽やかなポップのやつにシフトされてもよさが不変すぎてた 笑。例えば、今までにはなかったような女性ボーカルのカットアップが導入されてるJara (M4)とか。Fleet Foxes元来の豊かなカントリーでありつつ、それとは一味違うコンテンポラリーなアレンジでヘヴンリーなポップ感が創造されてるような曲。新しい発想の試みだと思うけど、Fleet Foxesの音楽性ととても素敵な相性でめちゃめちゃ大成功してると思う。あとは6曲目のA Long Way Past The Pastもすごくポップ。とてつもなく最高に気持ちいいFleet Foxesのボーカルやコーラスをより目立たせるような曲構成とミキシング。Fleet Foxesの歌が大活躍しまくっててこれもまた素晴らしい...笑。やっぱりFleet Foxesの歌要素はどんな風に変化しても安定して最高なんだって確信付いた。9曲目のYoung Man's Gameのコーラスパートでいきなり幼げな子ども達が登場してくるハピネスの演出も最高 笑。1曲目のWading In Waist-High Waterからそうだけど、今作における女性や子どもたちとのコラボ要素はとてもよかったと思う。

ポップス的な新しい魅力がある今作、その中で私が最も大好きなベストソングは3曲。ピアノが神秘的すぎて鳥肌が立ちまくるようなQuiet Air / Gioia (M11)と、冒険へ旅立つ船出のようなエモーショナルさがあるGoing-to-the-Sun Road (M12)と、金管が楽しすぎてニヤニヤが止まらなくなるCradling Mother, Cradling Woman (M14)。Going-to-the-Sun Road (M12)は、Fleet Foxesのカントリーならではのグッとくる感動的なパッセージ・展開を含んでる曲で「待ってました!!泣」ってなった 笑。その2曲後に来るCradling Mother, Cradling Woman (M14)も本当にやばい。ドラムが回転していくような激しい渦があるリズムの中で、祝祭的な金管パートが奏でられまくる感じの曲。神秘性も幻想性も高いのに、喜びのフィーリングで満たされたような美しい歓喜も込められているところに自分の中のエモさが止まらなくなる。もう本当に傑作ソングだと思う。このM12とM14、スピーディーに流れていくような果てしない心地よさ・かっこよさがあるところもめちゃハマる。

今作はギターも最高だったな...。A Long Way Past The Past (M6)とか、高速のアルペジオで神秘的な模様を描き出すようなテクニックがあったりして芸術的だと思った。1番好きだったギターのフレーズはMaestranza (M8)あたり。ザラザラしたテクスチャなのにドリーミーなサウンドスケープがある感じが本当にお見事だと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Lomelda - "Hannah"

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秋との相性が犯罪レベル

 Lomeldaの本作は、日々を生きていく中で時折感じる感傷的で情緒的な瞬間に溢れてる。Gregory And The Hawkのように淡く霞んだアコースティックの色褪せた深み、憂いに沈んだ響きを持ったメロディー。その音楽の感情は、何かが恋しくて寂しさがマックスになっているような心理状態に似てると思う。憧れを強く抱いたり、求めてるものに手が届かない切なさに心を痛めたり。それらの感傷的で情緒的なフィーリングを、フォークの愛おしい響きにのせて奏でるようなインディーロック系の作品。心がぐしゃぐしゃにかき乱されたり、死にたくなってしまうようなつらさが引き出されたり、でも同時に傷ついた心を慰めるようにして癒してくれたり。どう考えても素晴らしいと思う。それはまるで、人生の中で最もセンチメンタルな気分になれる瞬間、心に残りまくるような特別でとっておきな体験。似た系統の作品だと、自身の孤独にまつわる心情について忠実に描き出したFlorist (Emily A. Sprague)のEmily Alone (2019)とかがあると思うけど、個人的にはセンシビリティの高いエレキギター(Wonder (M4))や、記憶に焼き付くインパクトのレベルでいうとJay SomのEverybody Works (2017)にも通じるところがある。Jay Somのそれは私が死にほど愛してる人生TOP5レベルのベストアルバムなのだけど、Lomeldaの今作におけるリードトラックのHannah Sun (M2)を聴いたときは、それと同一の感覚を得た。感傷的で情緒的な瞬間の感動をギュッと噛みしめるような曲。まるで、時を止めてこの瞬間をずっと味わっていたいと思うほど愛おしいフィーリング。ありえないほど美しい。Twitterで見た「泣きそうになった」「泣いた」のコメントがきっかけで即座に今作をチェックしたのだけど、このHannah Sunって曲は本当に泣けると思う。私にとって今季超絶必須のキラートラック。他にも、チェロの温かい音色がLomeldaと相性がよすぎるPolyurethane (M5)や、身体に気持ちよく伝わる音楽のフローがあるTommy Dread (M13)なども本当にめちゃめちゃ最高だった。

私的に今作が本当に犯罪レベルで反則すぎるなと思ったところは、今作のリリース時期が9月という秋のシーズンだったいうところ。。。今作の感傷的で情緒的な音楽性は、ウルトラスーパーずびずばめっちゃんこハイパー秋とぴったりマッチしてると思う。もうほんと、秋という季節のためだけに用意されたのではないかと錯覚を起こすくらい。具体的にいうと、フォークテイストの音像的にオーガニックな香りが漂う暖色のカラーが感じられるところや、憂いに沈んでいるメロディーが少し死の感覚に近づいているような印象を与えるところ。それは、夏のエネルギーが消滅している今の季節の感覚そのもの。気候、香り、情緒、風情、全身で感じる全ての秋の要素がLomeldaの感傷的で情緒的な音楽性に作用するという...。そんなの反則級に美しくなるに決まってる、、、もうダメです、ずるいです、、、笑。この季節の効果によって、音源から得られる情緒的な瞬間の感動がもっともっと巨大なものになった。

私は、昔聴いてた音楽を聴き返すと当時の思い出が蘇る現象のやつをこの上なく愛している。2020年の秋はLomeldaの今作によって完全に保存されたので、数年後に2020年の秋のメモリーをロードするときは絶対にLomeldaの音楽を使う 笑。だから、来月も再来月もめちゃくちゃに聴きまくりたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Sufjan Stevens - "The Ascension"

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ニューエイジの魔力を聖なる思いにぶつける

 記憶の奥深くに触れるような究極的なメンタルタイムトラベルを実現してしまったCarrie & Lowell (2015)、愛の感情と真摯に向き合って完成された『君の名前で僕を呼んで』のMystery of Love、Visions of Gideon (2017)...。Sufjan Stevensというアーティストは、人間の心や感情のことを深く愛している人物の一人だと思う。私にとってSufjan Stevensが永久的にベストアーティストであるのは、彼の音源からそういった人間の心や感情に対しての聖なる思いを感じられるから。そんな彼の新作は、Aporia (2020)の制作を経て手に入れた宇宙を創出するようなニューエイジの魔法力を、命を削るように全身全霊でその聖なる思いにぶつけたような作品だと思う。フロアを振動させるほどの燃えるようなエネルギーが含まれてるMake Me an Offer I Cannot Refuse (M1)、音を粉々に破壊するようなFKA Twigs(Arca)技術が発揮されたGilgamesh (M10)、宇宙のような無限の世界の中で漂流していく冒険性があるSugar (M13)、絶望や悲しみも愛してくれるスフィアンの思いがドリーミーに表れたようなThe Ascension (M14)、そして集大成的クラマックスの超大作なAmerica (M15)...、音の爆発力、臨場感の拡張、大規模なステージで演奏するような白熱のライブ感、あまりにも生々しい躍動。壮絶なほど感動する。インディーフォークからニューエイジまで、ここ数年でSufjan Stevensが生み出してきた作品群が結集されてるというか、点と点が一つに繋がるように生まれた傑作の傑作だと思う。

まずは1曲目のMake Me an Offer I Cannot Refuse。今作における私の1番のお気に入り、本当に死ぬほど好きな曲。コーラスが残響の中で共鳴し合い、この上ないほど神秘的な反応を起こしまくる。音響的な迫力とダンスミュージックなビートを組み合わせ、Sufjan Stevensの聖なるメロディーのインパクトを信じられないほど絶大に高める感じ。生命力がみなぎるような美しさが本当にやばくて、聴くと泣きすぎて吐きそうになる。5拍子によるカオスのエネルギーを見事に応用したあのI Want To Be Wellより何倍も情熱的だと思う。今年のベストオブベストすぎるナンバー。

タイトルトラックのThe Ascensionも本当に本当に素晴らしい。こちらは、リア王のコーディリアが引用された心打たれまくる曲。Carrie & LowellやVisions of Gideonのような夢想的で美しいサウンドに包まれる。残念ながら、人生は絶望的だと思う。生まれたその瞬間から理想は打ち砕かれ、理不尽な暴力を受け、大切なものは粉々に破壊される。喜びの裏には必ず悲しみが潜んでいて、無垢で純粋な心が負った傷は一生、二度と治らない。それでも、感情が存在することは美しいと思う。死にたいと思う中でも、命はメラメラと燃えていて、ずっとずっと美しいと思う。The Ascensionを聴くと、そんな風に、悲しみの感情を持っていることがいかに美しいことなのかを思い知らされる。Sufjan Stevensの音楽によって得られるその感覚を本当に心の底から愛してる。...ごめんなさい、「何言ってんだコイツ」と思ってしまったかもしれないけど、感傷的な気分に浸るとポエミーモードになってしまう気持ちは分かってほしい...笑。

今作は、リードトラックのVideo Tape (M3)など、今まででは考えられないほどメインストリームのポップの方向に舵を切った異色な作風だったと思う。それでも!私は!大好きです!!笑。この感じ、例えるなら「初期の頃も大好きだけど、Mylo Xylotoみたいに思い切りポップに振り切ったやつも大好き」みたいなColdplayの感覚に似てる気がする。中でも今作は音像の豊かさに驚いたけど、まるでBon Iverのようなシンパシーの伝達技術も感じた。ライブ絶対最高だと思うし、もう本当にいい加減日本に来てほしい(怒)(マジで死ぬまでには絶対1回観たい、、、)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

↓ プレイリスト🍎

温の「2020年9月ベストアルバム(温)」をApple Musicで

↓ Devi McCallion & Katie Dey - "Magic Fire Brain" の音源

https://blacksquares.bandcamp.com/album/magic-fire-brain

 

 

 

その他・とてもよかったもの

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Avalon Emerson - "DJ-Kicks (Avalon Emerson) [DJ Mix]"

Bill Callahan - "Gold Record"

Blue Hawaii - "Under 1 House - EP"

Freak Heat Waves - "Zap the Planet"

IDLES - "Ultra Mono"

Michael Rother - "Dreaming"

Sad13 - "Haunted Painting"

Seth Bogart - "Men on the Verge of Nothing"

Sylvan Esso - "Free Love"

Thurston Moore - "By The Fire"

Zora Jones - "Ten Billion Angels"

 

 

 

★9月3週目リリース作品の感想・ランキング★

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