アルバム感想(温)

My Favorite Music

「2020年下半期『月間ベストアルバムTOP10』から漏れてしまったベストアルバムTOP10」感想

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毎月大爆笑しながら月間ベストアルバム作ってるけど、しばらくしてから「なんでこれベストアルバムに入ってないの...(TT)(TT)(TT)」というアルバム見つけるとめちゃ悲しくなる、、、笑。私の中でベストアルバムなのにベストアルバムじゃないみたいになってしまったやつ。(ランキング作りの運命なのかもしれないけど...。)悔しすぎるのでそんな漏れ&逃がしのアルバム10枚の感想を順不同で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. Another Sky - "I Slept On The Floor" (8月)

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ライブ映え(大きなステージで観たい...!)

 サウンドが広域に響き渡るような果てしなさがある系のオルタネイティブロック。スタジオ、ライブハウスよりももっと大きい音空間を生成する拡張性があって、めちゃめちゃライブ映えしてるバンドだと思う。もともと私はThe Nationalとか、そのギタリストのAaron DessnerがプロデュースするLocal Natives (Hummingbird ← 人生ベスト級に大・大・大好き)のような、クリーンで開放的な音を鳴らすバンドがとてもツボなのだけど、Another Skyもめちゃめちゃそうだった。(私の中では「二代目Local Natives」みたいな位置づけ)。しかもAnother Skyはそれにプラスで、アートロック系のクールでダークなパワー・かっこよさがある。ここが本当にずるいと思う...笑。なんといってもオペラ属性の高いCatrin Vincentのボーカル、通常のオルタネイティブロックの雰囲気とは反するような雅やかで高貴なキャラクターがアートロックっぽさをより強調してる。拡張性のあるクリーンな開放感の快感も、そのオペラ属性ボーカルで高められる。とても贅沢なスキルでめちゃ魅力的だと思う。

1番好きなのはやっぱり5曲目のThe Cracks。この曲が本当に本当にたまらない。ボーカルのオペラ属性のキャラクターを活かしまくって、大迫力のステージ・アリーナライブを繰り広げるようなスケールを感じさせる曲。それぞれのパートがシューゲイザーへ発展しそうなほど全力で鳴らされてて、本当にめちゃめちゃダイナミック。もうとにかくこの曲のライブが観たい...!この曲のライブをフェスの大ステージとかで堪能したい。観客がワァって沸くのが本当によく想像できる。だから、早くビッグな存在になってほしい 笑。(もっと売れてほしい)

2020年はライブが恋しすぎて死にそうになる年だったと思う。(私が最後に観たのは2月のJay SomとHomecomings)。だから、アリーナ系ライブの音響を感じさせるAnother Skyの音源は異常に刺さった気がする。Slowdive的な深いブルーを纏う残響のAll Ends (M11)とかもめちゃよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Samia - "The Baby" (8月)

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2020年代ポップカルチャーのヒントになりそう

 2017年だとSoccer MommyのClean、2018年だとSnail MailのLush、去年ならClairoのImmunityとかStella DonnellyのBeware Of The Dogs......ロックバンド形態のインディーポップのやつで2020年のアーティストを選ぶなら、私的にはSamiaが有力かなと思った。ポップスとしてのメロディックなよさはもちろん、伸びやかな歌が特徴的なとても丁寧な曲が多くて、Samiaと同じZ世代のポップ好きだけでなく、もっと幅広い層にも人気を得そうな感じ。開放的なフィーリングを高めるストレートなポップのFit N Full (M2)、ハイトーンボイスや轟音ギターなども最高でたまらないTriptych (M6)、あとは胸が苦しくなりすぎるほど儚くて切ないタイプのWaverly (M8)...。ノリのよい明るいフィーリング以外にも、80年代系ポップソングのロマンスもあったりしてとてもエモーショナル。個人的に1番のお気に入りが5曲目のStellateなのだけど、Samiaはバラードも本当に最強だと思う。心満たされるアルペジオのフレーズ、ボーカルのパートが本当に愛おしくて、聴いた後もメロディーがずっと心の中に残る。SofieとかSad13とか、2020年の今年も色々なインディーポップが活躍してたけど、私はSamiaが1番好きだった。

インターネットが普及しまくって、サブスクリプションがもっと発達して、単曲だけで気軽に楽しむポップソングがより力を付けてきた気がする。そういう意味で2010年代はポピュラー音楽の盛んな時代だったのかも。2020年代のカルチャーもとても楽しみで気になるのだけど、Samiaのようなシンプルで丁寧なポップソングがこれから普及していくのかな、とか思ったり。エレクトロニカ技術で派手に装飾しまくるポップソングが逆転されていくのだとしたらかなり面白そう。Samiaすごく好きだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. I Love Your Lifestyle - "No Driver" (10月)

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ありったけのエネルギーを込めてストレートに愛を伝える

 「あのとき、どうして僕をフェイスブックに追加したの?」(Nice Jacket, Yet)、心臓が潰れてしまいそうになるくらい愛おしいエモを奏でる "I Love Your Lifestyle" (『あなたの生き方が大好き』) の3rdアルバムは、爆音をぶつけるような激しいエモの1stアルバムWe Go Way Back (2016)と、エモの中でもセンチメンタル性も磨いた2ndアルバムThe Movie (2019)のいいところどり取りな最適解...!抑えきれない思いを爆裂させるパワフルさも、センチメンタルでメロディックな安定感も、どちらもちょうどよく取り入れてある感じで、I Love Your Lifestyleのよさが凝縮されてる作品だと思う。Stupid (M1)からいきなりめちゃめちゃ最高。ハングリーにガツガツに突き進んでいく熱量の高いエモ。CHONとかPolyphia風のイケメンなマスロックギターも決めたり、リスナーを興奮させるシンガロング的なパートも含んでいるのに、愛おしさを引き立てまくるメロディー1つ1つのピュアネスは全くブレてない...。こういう曲みたいに、エネルギーをありったけ込めてストレートに愛を伝えるようなエモ・ロックにめちゃめちゃ弱いから、気が緩んでるときとか眼球が壊れそうなくらい泣いてしまう。同様にしてCar (M2)やNo Harm (M3)もすごくいい。No Harm (M3)に関しては、2ndから培ってきたような胸を引き裂くメロンコリックな響きがとても素敵に聞こえたり。前作の2ndも大好きだったけど、今作は1stアルバムのときのヘビィな音圧も戻ってきてたりしてもっと好きだった。

今作のリードトラックで絶対に外せないなと思うのが、4曲目のShilly-Shally。思わずこちらも一緒になって口ずさみたくなるような最高のノリを持ってる歌。クオリティが高すぎる長尺ツインギターソロを挿入するタイミングも完璧すぎてるし、ラストスパートに合わせてシンバルを連打しまくるような激しいエモに発展する感じもやばい。愛おしさ・ピュアネスの感情が高められまくってる。ソングライティングからソロまで本当に全部素晴らしかった。

I Love Yourlifestyleの今作は10月のベストアルバムの逃がしアルバムだった。10月終わった後に作品リリースしてるのを知って「新譜出してるんかーーーい!!泣泣」みたいになった 笑。10月のエモといえばBartees Strangeが本当に超傑作だったけど、I Love Your Lifestyleの今作も同じくらい傑作だった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Daisies - "Cherries - EP" (9月)

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"2020 Perfect Vision"

 90年代のテクノ・トリップホップから、リラクゼーションが強めのドローン・アンビエントまで、多様で幅広いアプローチがすごいドリームポップバンドの新譜EP。チープなかわいさがあるアナログシンセとか、それとは対極的に洗練された神々しい空間系のデジタルシンセとか、ドリームポップが持つ "ドリーミー" なところの表現にとても凝ってて本当に面白い。前作What Are You Waiting For? (2019)も年間ベスト候補並みに大好きだったのだけど、今作はその中でも、前作でいう6曲目Anyone's Styleや7曲目True Absolute Fictionあたりのダンサブルなハウス系エレクトロニカの作風で一貫されてる。このDaisiesのめちゃめちゃユニークなダンスフロアが本当にたまらない...笑。ドリームポップらしいピュアなワールド、アンビエントの大人びたワールド、テクノ・トリップホップの少しダークなワールド...、それぞれがダンスフロアを通じて並列に結びついてる感じ。リードトラックのEverybody's Moving to London (M1)から本当にめちゃめちゃ最高だと思う。バチバチにかっこいいドラムでテンションを上げまくって、そこにメロディックで素敵なボーカルを合わせてリスナーを虜にし、残響を多用した美しいインパクトを持つピアノなども合わせてとどめを刺していく...。めちゃめちゃ傑作だと思う。3曲目のLights Dancing on the Screenも上品なドリームポップで素晴らしかった。

今作で1番ツボったのは、2曲目の『2020 Perfect Vision』笑。Daisiesのドリームポップの中でも無重力なふわふわの音像が強く出てる曲。「これが2020年の理想的なビジョンだから」ってDaisiesが自分たちのエレクトロニカ&ドリームポップスを提示してるわけだから、思わずフフってなる 笑。Daisiesのドリーミーで素敵な音楽が最高なだけに、「そうだよなーーー2020年はこうだったらよかったのになーーー(?)」って納得させられまくる 笑。もう曲名の発想だけでもう優勝してる。本当に楽しかった。

今作は5曲入り25分のEP作品だったけど、「EPなのがもったいなぁぁい!!」ってめちゃめちゃ思った 笑。個人的にはEPよりアルバムの方が断然好きなので。次回はフルレングスでお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Protomartyr - "Ultimate Success Today" (7月)

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ヘヴィでタフな激かっこいいポストパン

 ポストパンク大好きなのだけど、それらの音楽が持つ恐怖や危険性ともっとシリアスに向き合ったようなProtomartyrのダークネスには、何物にも代えがたい絶対的なかっこよさがあると思う。治安の悪そうなワールドの中で汚れていくProcessed by the Boys (M2)、荒ぶるように狂い火を放つようなギターのパッセージがあるThe Aphorist (M4)、神格的な女性ボーカルのニュアンスで悪魔的なエネルギーすらも感じさせるJune 21 (M5)...。どの曲も破壊力があるし、怖さもあるし、ヘヴィでタフなポストパンクとして最高に仕上がってると思う。もう激ヤバ級にかっこいい...笑。1曲目のDay Without Endとかも本当に大好き。怒りの感情が爆発寸前まで高められるようなスリル、いつ何が起きるか分からないハラハラがあってめちゃめちゃ興奮する。アクモンみたいにちょっとスモーキーなUK感(I Am You Now (M3))や、心に平穏が戻るドリーミーな瞬間(Michigan Hammers (M6))など、恐怖や危険性の表現以外にも豊かな素晴らしさがあったり。全曲抜け目なしなタイプのアルバムだった。

あとは9曲目のBridge & Crownも本当に最高だった。この曲も本格的なダークネスが表れてる激かっこいいポストパンクだけど、「Protomartyrというバンドが抱えてる思いがいかに熱いか」ということを感じさせられるような曲。楽曲がエモーショナルになっていく見せ所で、迫力のあるポストブラックメタルみたいな闇闇しいシューゲイザーを発動してるところがすごくいい 笑。今作の中でもグッとくるナンバーだと思った。

2020年、まるでポストパンクの基本フォーマットを新しく更新してしまったようなFontaines D.C. (A Hero's Death)とか本当にすごい業績を残したなと思う。ちょっとポストパンクも名作いっぱいあって目がくらんでたけど、Protomartyrのこちらもよかった。(あと今年だと個人的に絶対に見逃せないのがHypoluxo...。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Duval Timothy - "Help" (8月)

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世界と世界がアンバランスに繋がる

 孤独と向き合うピアノソングのクラシック、未来に憧れる80年代風シティポップ、未知のエネルギーを秘めたテクニカルな電子音楽ニューエイジ。世界と世界をアンバランスに接続させ、これまでに確認したことがないような神秘的なフィーリングを描き出していく作品。そこには、歴史を振り返るような果てしない人生観や、心が空っぽになるような虚しさ、同時にそれらを尊く感じるようなエモーションもある。メロディーのリフレイン、サウンドサウンドの組み立て、豊かな発想がこれでもかと詰まっていて本当に素晴らしい。坂本龍一のようなシンプルで癒し的なピアノも不思議なくらい取り憑かれる力を持ってるし、ブルージーでソウルフルなMelanie Fayeのギター(Fall Again (M4))とかもたまらない。テクニシャンなVegynのエレクトロニカスキルも今作に貢献しまくってると思う。テクノで楽曲の美しさをより刺激的に見せるセンス(Like (M7))とか、のどかな世界の中でニューエイジの強烈なインパクトをもたらしたり(Pink (M18))とか、Vegyn関連のこの2曲だけでも、このアルバムがめちゃめちゃ最高だって思い知らされる。"Help"というアルバムタイトルの重さもそうだし、本当にとてもとても素晴らしい1枚。なんで月間ベストアルバムから漏れたんだろう...(TT)(TT)(TT)。今すごくガッカリしてます...笑。

全曲を改めて聴き直したけど、1番好きな曲なんですかと聞かれたら、2曲目のSlaveとかと僅差で1曲目のNext Tommorrowが1位かもしれない。神秘性・ミステリアス・興奮・哀愁、楽曲中に心奪われまくるピースがいくつも存在してる。本当にすさまじい曲でやばい。Duvall Timothy固有のユニークで豊かな発想とか、Vegynコラボ要素のテクニカルでハイレベルな作曲性がよく表れてる。ますますベストアルバムから漏れた(or逃れた)理由が分からない...。本当に本当に大傑作。ウルトラスーパーハイパー大好き。

何度か言ってるけど、大学院の修士論文が終わったころの1月から始まった月間ベストアルバムTOP10が12月まで続いちゃった。 ベスト10位×12ヶ月分+おまけ(20枚)でベストアルバムなるものが140枚くらい...自分でも引いてるんだけど、その中でDuval Timothyは何位になるのだろう...(現在猛スピードで順位を上げていってる)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Kevin Morby - "Sundowner" (10月)

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様々な土地を巡るカントリー・フォークロックの旅

 60s~70s期のフォークロックの魅力を改めて現代に刻んだ Singing Saw (2016)(ウルトラスーパー素晴らしい)、そこから素朴なクラシックロックにも発展したCity Music (2017)、さらにはピアノの存在感が本当にたまらないバロックポップまで幅を広げるOh My God (2019)....。カントリー系から王道のロック、Kevin Morbyが蘇らせる古典的な音楽はどれも本当に名曲だと思う。その中でも今作Sundownerは、あてもなく漂流していく旅人のような趣を持つカントリー・フォークソングのタイプな感じ。孤独感や寂しさを抱えながら何かに思い馳せるようなフィーリングがとても深かったり、そこに自分の人生と向き合うような大人のかっこよさもあったりですごく最高だった。1曲目のValleyとか、シンプルで至高なアコースティックソングで本当に大好き。物憂いを感じさせるジャケットの雰囲気とよくマッチしたワールドの中で、心にじんわり響くようなメロディーの作用がある。ギターのソロワークも本当に豊か。(Kevin Morbyのギターってどうしてこんなにいいの??笑)。そんなKevin Morbyのギターメロディーを静寂の中で利かせるアプローチが最高すぎてるDon't Underestimate Midwest American Sun (M6)とかも素晴らしい。他にも、ボン♪ボンボン♪なフレーズが特徴的すぎるBrother, Sister (M2)、Wander (M5)なども好き 笑。Kate Le Bonみたいに呪われそうなくらいメロディーが脳内にこびりつくから笑っちゃう。今作の大人びてる作風の曲の中でもとても渋いナンバーでユニークだし、さすらいのカントリー・フォークソングの味が最高に染みてると思う。

Kevin Morbyの古典的な音楽が大好きでたまらないのは、フォークソング・ロックの伝統的なものに触れ、ニューヨーク、ロサンゼルス、日本ではないアメリカのどこかへトリップしたり、そこで様々な文化と出会うような喜びがあるから。各アルバム・各曲にそれぞれ固有の景観があって、ロマンがあって、本当に胸がいっぱいになる。それはもしかしたらUS・UKの洋ロックの醍醐味かもしれないけど、特にKevin Morbyはもっとクラシックな文化をリメイクする達人だと思う。今作も、トラディショナルなカントリー・フォークソングの作風のところに、彼の故郷のテキサスとか、アメリカの田舎の風土がよく表れてる感じ。そういう土地に一人でじっくり旅行していくような感覚、さらにはそこで色々な歴史と巡り合ったり。やっぱりKevin Morby本当に大好きだなと思った。

2020年は家に籠ることが余儀なくされてしまい、例年に比べて音楽をディグることが多くなった。その中でも気軽に摂取できるなロック&ポップスを大量に聞いてたのだけど、Thurston MooreやJeff Tweedyなど、じっくり鑑賞するタイプは摂取量が少なかったり。Kevin Morbyも他のベストアルバムに少し埋もれてしまったのだけど、Twitterの影響とかもあってどんどん来てる。(こちらもベスト入れられなかったのすごく悔しい、、、泣)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Zora Jones - "Ten Billion Angels" (9月)

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子供の頃トラウマだったエヴァンゲリオンに似てる

 テクノロジーが過剰に発達したようなFloating Points的サイバネティック・エレクトロニカ、そして激しい悲しみや痛みを伴うArca的センシティブサウンドの残酷なハードコア、それらが構築するSOPHIEのような前衛的でかつ異次元的なワールド...。想像性が半端ないような未来的で恐ろしい世界観が本当に魅力的。1曲目のShadows to the Lightから、まさしくFloating PointsとArcaのエレクトロニカをそのまま足して2で割ったようなとても壮絶な世界観がよく表れてる。Sister's Blade (M3)では、高速のテンポで精神を高ぶらせる演出のやばさとかもあったり。ドラムンベースダブステップ、ジューク/フットワーク系のリズムワークの鬼気迫るようなスピード感で、ワールドの異次元性の恐ろしさがよく強化されてる。Low Orbit Ion Cannon (M5)では中盤にヒップホップ系ハードコアなタフなフレーズとしての恐ろしさもあったり。ただ恐ろしいだけじゃなく、電子音のハイテク感・高級感のテクスチャを洗練しまくって、それらの恐ろしさをリアルに伝えるようなテクニックがあるところが本当に素晴らしいと思う。他にも、メロディーがちょっとFKA TwigsっぽいMelancholy Princess (M7)とか、数100年先のフューチャーエレポップみたいな雰囲気がある I Wanna Lose You (M8)とかもよかった。

私が今作でものすごく心惹かれた部分は、異次元性が高くて恐ろしい音楽性や、『10億の天使』というアルバムのモチーフのところに、子供の頃に怖すぎてトラウマだったエヴァンゲリオンの世界観を連想するというところ 笑。(具体的にはアスカのエヴァンゲリオンが敵のエヴァンゲリオンに負けてしまうやつ)。エヴァンゲリオンはどちらかといえば好きではないし、全然知らないけど、昔友達に見せられた映画のシーンが本当に嫌になるくらい印象に残ってる。敵に追い詰められて完全にやられてしまうような絶対的な絶望のリアリティとかもそうなのだけど、神話的なテーマを引用した使徒のデザイン、宇宙人っぽさと同時に天使っぽさも感じられる雰囲気とか、Zora Jonesの今作の世界観ととても似てる気がする。特に5曲目のLow Orbit Ion Cannonなんかは本当にどストレートでそれ...。冒頭の恐ろしい天使の悲鳴のようなサウンドとかもう完全にあの頃感じたトラウマのエヴァンゲリオン...笑。子供の頃のトラウマが呼び起こされてしまうような圧倒的な迫力。でもそんな怖さがたまらなく大好き。

ホラー映画もだけど、やっぱり怖い芸術ってめちゃめちゃ大好きだなって思った。The Haxan CloakのExcavation (2013)とか、Valentina Lisitsaが演奏するラフマニノフの赤ずきんちゃんとか。特にZora Jonesはヴィジュアルアーティストとしての怖さを持ってるところもいいなーって思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Land Of Talk - "Indistinct Conversations" (7月)

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ポカポカでウトウトしながら見るソフトシューゲイザーの夢

 日向ぼっこの感覚を再現するような温もりの半端ないソフトなシューゲイザー・ドリームポップ。陽だまりが暖かくて気持ちよくて、思わずウトウトしてしまうような至福の瞬間ってあると思うのだけど、その中で意識がうつらうつらになって素敵な夢を見る~みたいな、そんな体験を実現してしまう音楽...。どう考えても超最高だと思う 笑。シューゲイザーが持つ浮遊感をそれらの夢心地に作用させるのがやばいDiaphanous (M1)、ドラムやベースの低音を利かせたアタックがかっこいいLook to You (M3)、ソフトな音像で心も ふわふわ・もふもふになるのが最高すぎるWeight of That Weekend (M4)...。ソフトなシューゲイザーという音楽性、それによる陽だまりのような温もりの生成、さらにはその音楽で物語を紡ぎ出すようなドラマ性の曲想なんかもあったり、本当に素晴らしいと思う。ギターロックとしてのリフの存在が光るFootnotes (M7)も傑作。見せ所を変化させていくようなバンドアンサンブルの魅力なんかもあったりして本当にユニーク。感想を書けば書くほど、7月のベストアルバムTOP10から漏れてしまった後悔がでかくなる...笑。ほんと、めちゃめちゃベストアルバムだった。

そんな今作で最もアルバムのハイライトになってるだろうリードトラックが8曲目のA/B Futures。ソフトなシューゲイザー・ドリームポップの最高のキャラクターをぶらさないまま、そこに生き生きとしたロックの音楽性もしっかりアップデートさせてる曲。Land Of Talkが持つ夢心地の快感をさらにモチベートしていくような強力な幸せがあって本当に素晴らしすぎてる。音楽がアクティブになりすぎず、適度なテンションに保たれてるロックなのがいい。この曲はすさまじく大好きだった。その8曲目のA/B Futuresで最高な状態になった後、日が暮れて夜になってお休みなさーいみたいになるFestivals (M9)も大好きだった 笑。

前作Life After Youth (2017)も大好きな作品でフィジカル持ってる。そちらの方も愛おしい最高のドリームポップだったと思うけど、どちらかといえば、夢心地のクオリティ的に今作の方がツボみが深かったかも。というかLand Of Talkがもっと好きになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Taylor Swift - "folklore" (7月)

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インディー音楽も我が物に

 私は高校の頃は弦楽合奏部、大学の頃はオーケストラのサークルに所属していて、学生時代はずっとクラシック~ポップスのバイオリンを演奏してた。その中でも楽曲コピーのためにThe Piano GuysのアレンジのBegin Againなんかは耳がもげるくらいめちゃめちゃリピートしてたし、同じ系統でいうとChristina PerriのA Thousand Yearsとか理性がぶち壊れて頭がおかしくなるくらい聴きまくってた。1989のような人類が滅亡するくらいポップが大爆発してる曲とかも流石に傑作で好きだけど、どちらかというとTaylor Swiftに関しては、ストリングス大活用のクラシック~フォーク型のアダルティーなポップスの方が身体に染みついてる。今作のfolkloreは、そんな馴染みのあるアダルティーなポップスとして作風が極められてるよさだけでなく、Aaron Dessner (The National)のプロデュースやBon Iverのフィーチャリングなど、大好きすぎるBig Red Machine要素が追加されてるという...。何年にも渡ってポップミュージックの頂点に立つ大大大スターのテイラーさんが、Bon IverやThe Nationalなどを好むインディー・オルタナファンも巻き込みまくるとか...「ず、ずるー、ー!!泣」って思った 笑。個人的なところだとthis is me trying (M7)とかめっちゃ好き。従来のTaylor Swiftにあったような歌が目立つポップネスが少なく、空間中によく溶け込むような丁寧な音楽性が保たれてる感じ。その中でも曲としての見せ所のピークはしっかり持っていて、リスナーを大きく揺さぶっていく高揚がある。「Taylor Swiftなんだけど、どことなくインディー感もある」みたいなこのバランス、すごく最高だと思う。

今作のキャラクターを最大に象徴してるのが、4曲目のexile (feat. Bon Iver)だと思う。Taylor SwiftとBon Iverとかいうウルトラスーパーハイパー豪華なコラボ。Bon Iverのサウンドデザインならどんな音楽も超最高になるって分かってたけど、今作のクラシック~フォーク型のアダルティーなポップスであるTaylor Swiftとは本当に相性がいい。Taylor Swiftというアーティストが持つ女王的な存在感のオーラにBon Iverの威力が組み合わさってる感じがあって、本当に鳥肌がやばくなる。もうとてつもなく最高、本当にめちゃめちゃ大好きだった。

Taylor Swift、高校~大学初期の頃によく聴いてたから、今回改めて聴き直してみたら懐かしすぎて超エモかった。(エレポップとロックを巧みに合体させたStyleとか本当に大好き。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

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