アルバム感想(温)

My Favorite Music

「2020年12月ベストアルバムTOP10」感想

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「12月だけど一応新譜チェックしとこうかな」って色々聴いてみたらベストアルバムだらけだった 笑。サムネイル画像で1位がバレバレかもしれないけど、今月のベストアルバムTOP10(12月まだ終わってないけど)の感想をランキングで

(上位3つだいたい同率)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. Godblesscomputers - "The Island"

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木琴とサックスの素晴らしすぎるブレンド

 イタリアンDJによるオシャレでかっこいいエレクトロニカ作品のやつ。ベースはR&B・ソウルなどのブラックミュージックだと思うのだけど、それらのグルーヴのダンスをもっと上品にかつセクシーに見せるようなサウンドの高級感がめちゃめちゃいい。木琴やサックスの音を多層化させてこれ以上ないほど濃厚な味わいを出していくようなThe Island (Intro) (M1)、エレクトリックピアノとドリーミーなギターが美しく交差していくFire in the Jungle (M2)、どの曲も素敵でオシャレなサウンドがよく鳴ってる。中でも1曲目の木琴とサックスのブレンドは本当に素晴らしすぎると思う。それぞれ性質の異なる音をミックスさせて全く違った色を生み出していく特殊な反応ってあると思うけど、特にこのサウンドの絶妙な調和はやばい。サウンド面以外ももちろん最高で、例えば3曲目のPacific Soundとか大好き。こちらはボーカルを採用したオシャレR&Bのゆったりダンストラックなやつ。表現されてるワールドがRhyeの音楽みたいに洗練されまくっててめちゃめちゃクリーン。鍵盤楽器の綺麗なメロディーもとても引き立てられてると思う。

今作をベストアルバムにさせた1番の決定的要因は6曲目のRocks (feat. Glenn Astro)。この曲は本当にめちゃめちゃ傑作だと思う。ビートが超ノッてて、ベタ系のシンセサウンドも最高に気持ちよくて、メロディーに華があって、遊び心がありまくりで...。オシャレでかっこいいエレクトロニカの頂点ってこういう曲だよなって納得させられてしまう。Louis Coleとかにありそうな動きが活発なベースラインとかも本当に楽しいし、ずっとずっと聴いていたくなる。とても感激しました。

今作はジャケもかなり好きだった。上下の向きが不確定なデザインで、ひっくり返して捉えることもできるみたい。オシャレでかっこいいエレクトロニカともめちゃぴったりの世界観だと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. AADJA - "Thought Dealer"

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恐怖の煽り方(満点)、興奮の作り方(満点)、テクノのヤバさ(満点)

 2019年、アンダーグラウンドが持つ真のゾクゾク感・危険性を手加減なしで描いたようなPTU (Am I Who I Am)は本当に最高すぎてやばかった。そこからアンダーグラウンド感をガチで突き詰めたようなめちゃめちゃハラハラするテクノのことがもっと好きになったし、そのPTUが所属するロシアのテクノレーベル трип (Trip Records)に対しても注目度がグンと上がった。AADJAの今作も想像通りかそれ以上に最高なアンダーグラウンドのテクノだった 笑。恐怖の煽り方、興奮の作り方、テクノのヤバさ、持ってるスキルのレベルがどれも本当に高い。恐怖の煽り方というところだと、タイトルトラックのThought Dealer (M1)。ステレオの揺さぶり、緊張、聴いていると胸が苦しくなるような気持ち悪さがある。まるでThom Yorkeのサスペリアのような嘆き系の悲しさもあるし、テクノのピリピリした音楽性でそれらが煽られるのはかなりキツい...。めちゃめちゃ陰湿なアンダーグラウンドで本当に最高だと思う 笑。興奮の作り方でいうと、Zappa Valley (M2)やEar Bubbles (M5)がそう。心拍数が上がりすぎて病気になってしまいそうなくらい強烈にハイスピードなビート。低音のパンチも強力だし、とにかく攻めて攻めて攻めまくるようにリスナーのテンションを上げていく。こういうところも圧倒的にハイな気分になれるアンダーグラウンドのクラブミュージックな感じで本当にたまらなかった。ヘッドホンで音量大にして聴くのが最高に楽しい。

それ以外にも、AADJAはクセになるフレーズ感の作り方とかも本当に上手だなと思った。個人的には、4曲目のNeuro Eroticとかのアシッドでグロテスクなサウンドが悲鳴を上げるみたいなフレーズのやつ。冷たさとか、憎しみとか、アンダーグラウンドの世界観に通じる闇の感情をいっぱいに感じる。こういうミニマルのメロディーって本当にめちゃめちゃかっこいい。Laurel Halo、India Jordan、Kelly Lee Owens、Avalon Emerson、今年はクールな女性テクノ作家がいっぱい躍進した年だなと思う。

трип、というかロシアのテクノだと、тпсб (Sekundenschlaf (2018))とかもめちゃめちゃ大好き。テクノの興奮で人間のダークサイドをドバドバ炙り出すことに成功してる感じ。地味にロシアのアンダーグラウンドテクノのプチブームが私の中で来てるかも...。(AADJAはカナダですが)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Son Lux - "Tomorrows II"

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魔法性の高い音響芸術バンド(ツボ曲多め)

 ポストクラシカルでアートロックなバンドの今年2作目、8月にリリースされた1作目Tomorrow I の方も新時代の音響芸術を遂げたような作品でベストアルバム級だったけど、2作目のこちらの方がもっとツボだった...!彼らのルーツとなっているようなジャズ・クラシック系のエレガントさ、かっこよさ、ダーク感をそのまま、今作はその中でも実験的でミステリアスな作曲性が前面に出てる感じ。例えばMolecules (M2)。痒い所に手が届くような民族系のパーカッションが本当に最高なのだけど、それらが醸し出す謎めいた魅惑的な雰囲気がとてもいい。音響的にこだわりまくてるSon Luxの曲の中でも繊細さがかなり強いから、思わずめちゃめちゃ飲み込まれそうになる。6曲目のApartとかもそう。こちらは、Forest Swordsにもありそうな魔法密度の高いサウンドを使ってSon Luxの濃密なワールドへの没頭感を強化していくような曲。ダークな中にも華々しくて開放的なメロディーを含んでたりするから本当に美しい。他にも、4曲目のLeavesとかもよかった。ミニマルなフレーズを組み立てていくようなテクニカルな実験性、ハットとかスネアとかをランダムに打ち込むようなドラムワークの最高にかっこいいやつ。実験性とか関係なく、シンプルにスモーキーなR&B・ソウルとして格別だったProphecy (M3)もめちゃ最高だったし、好きな曲が多いアルバムだった。

1番好きなのはLive Another Life (M8) 笑。今作で特徴的な民族系パーカッションのサウンド、テクニカルでかっこいいドラムワーク、スモーキーで格別なR&B・ソウルなど、今作におけるよさが全部集約された曲だと思う 笑。Son Luxの音響芸術、魔法性の高いエレクトロニカ技術を駆使しながら "Live Another Life"ってメッセージを放つところが本当にたまらない。アルバムのフィナーレ的な迫力もあるし、本当にグッときまくる。前作Tomorrow I でいうところのUndertowとかもすごくよかったけど、今作のLive Another Lifenの方がやられました 笑。

Son Lux、2018年のBrighter Woundsのときもノーチェックだったのだけど、実際ちゃんと聴いてみたら改めてすごく好きな感じのアーティストだなと思った。音響芸術家としてとても秀逸、今作の8曲目のWeight of Your Airとかも、音の質感の使い分けが本当に上手だと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. 青葉市子 - "アダンの風"

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この世で最も素晴らしい かえるのうた のカバー

 クラシックギター一つでどこまでも豊かな文化を創造していくような京都のSSWの新作。日本の風土や和の精神を徹底的に体現してしまうようなフォークソングの作家性が本当に素晴らしくて、生み出される作品の一つ一つが全部傑作だと思う。特に今作は、沖縄の島々から着想を得た新規的なコンセプトがある作品で、従来の淡い音色の引き立つ素朴なフォークの感性だけでなく、環境音楽による海岸のビジョン、宗教音楽系の聖なる風情など、多様な表現力の進化を見せてくれてる。冒頭のPrologue (M1)とPilgrimage (M2)からすごくそれで、伝統的なフォークのスタイルを超えた本格的にドリーミーな音楽性がよく表れてる。質素な美しさがある青葉市子のボーカルをめちゃめちゃ神々しく演出してるのが本当にやばい。癒し的なさざ波のサンプリングも、非現実的で幻な世界の中で見せていくような美しいトリックがある。青葉市子がサントラとして制作しただけあるし、幻想をリアルに想像するアーティストとしての真骨頂が出てると思う。個人的には、それらの音楽性が沖縄の土地から得られたアイディアっていうところがたまらない 笑。ほんと、青葉市子ってすごい感性...。他にも、木管楽器の旋律で音楽にドラマ性を付加するようなDawn in the Adan (M12)とか、和やかな青葉市子のワールドの中で緊張感を作っていくohayashi (M13)とかも素晴らしかった。

そんな新規的なコンセプトを持った今作だけど、その中でもとてつもないほどキラートラックになってると思ったのがやっぱり8曲目のSagu Palmʼs Song。静寂を利用して繊細なエモーションを絶大に高める青葉市子パワーが炸裂しまくってる曲。ギターの音がたった一粒鳴るだけで、鳥肌がバチバチに立ちまくる。どうしてここまで人間の琴線に触れる音を生み出せるのだろう...。フォークソングライターとしてあまりにも天才だと思う。かえるのうたの引用が本当に頭おかしいほど美しい。もともと青葉市子と童謡的な音楽との相性って凄まじくいいと思うけど、中でもこの曲のかえるのうたのカバーはこの世でもっとも素晴らしいと思った。

沖縄っぽさというところだと、個人的には帆衣 (M4)とかもよかった。やっぱり青葉市子は暖かい音楽がよく似合ってる。架空のサントラ、これからもアート性をバンバン発揮していって欲しい...!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Jordana - "Something To Say To You"

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「これが人生なのかな」

 前作Classical Notions of Happiness (2020)は、ベッドルームポップ重視でありながらガレージノイズをバリバリに装備した新型ドリームポップ(Crunch)の作風が超特徴的だったと思う。今作は、そのCrunch系のグルーヴィーでノイジーなタイプの曲をコンピレーションアルバムとしてフルで納めたような最高の作品...!笑。前作を聴いてたときから「もっとCrunchみたいな曲いっぱい演らないのかなー」と思ってたので、アルバムをその作風で統一させた感じの今作には個人的に大正解&大満足だった。撃力の強いドラムが楽曲のノリを激しくしていくHitman (M3)、Queens of The Stone Ageみたいにヘビーでノイジーなギターベースすらも繰り出してしまうBig (M4)、そしてそれらのダイナミックなアレンジを一体にしてまとめあげたようなDecline(M10)...。荒っぽいロックの感じとか、ダンサブルな楽しさがよく強調されてるポップですごくいい。Clairoと同様、それらはここ数年の間に発達したベッドルームポップの新しいスタイルだと思う。そういうドリームポップ・ベッドルームポップ界隈のニューカマーってやっぱり大好きなのでめちゃ応援したくなる。他にも、Divine (M8)とかFuck You (M9)もよかった。

今作はJordanaの最高ソングだらけのコンピレーションアルバムだと思うのだけど、その中でも私がぶっちぎりに大好きだったのが11曲目の I Guess This Is Life。他のベッドルームポップの曲にはないようなドラマチックなストーリー性がある曲。韻を踏みながらJordanaの人生を映し出していくリリックとか、それらの物語のイメージを愛おしく描いたMVが本当に完璧すぎてるのに、そこに「これが人生なのかな」って歌をのせてるのが本当にありえないくらいやばい。何回聴いても涙が止まらなくなる。その音楽には、普段の日常で私達がなんとなく感じている寂しさや不安がある。そして同時に、それらが取り除かれる癒しの発生の瞬間もある。それは、もしかしたらJordanaが音楽を奏でる理由の本質的な部分なのかもしれない。Jordanaが感じているもの、Jordanaが求めているもの、それらの全てにありえないくらい共感して思わず死にそうになる。本当にめちゃめちゃに素晴らしい。2020年のベストソングとかも作ってるのたけど、この曲のせいで上位TOP5あたりが思いっきり更新された。そのくらいやばい。

正直なところ、Jordanaの前作Classical Notions of Happinessは期待しすぎてた部分がありました...。それでいうと今作は、逆に期待度が下がった状態からスタートしたので、余計に最高になった 笑。I Guess This Is LifeのMVは今後何回も観まくると思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Alaska Reid - "Big Bunny"

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病みつきになる音響ドリームポップ

 空間系のエフェクトを完璧にマスターしたような音響ポップ。まるでOneohtrix Point Neverみたいなサウンドアーティストの音響に匹敵するくらい音の扱いがプロフェッショナルなのに、インディーポップのSSWとしてのメロディーの引き出しもやばくて、びっくりするほどめちゃめちゃ最高のアーティストだと思う。サウンドの立体感が本当に深くて、夜にヘッドホンで堪能するのがたまらないほど幸せ。基本スタイルはエレキギターだけど、煌めくサウンドが際立つアルペジオから、ハードロック・シューゲイザー系のノイジーなソロまで、本当に全部音がいい。リバーブ、エコー、多様なプロセスを駆使して本当に素敵なサウンドを鳴らしてる。なんでもいいのだけど、例えば6曲目のBoys From Townとか。エレキギターのノイジーな質感、夜空に星を映すような煌めき、そして少しだけメランコリーなフィーリング...。ドリームポップとしてもいいし、ギターポップ、もしくは一種のシューゲイズポップ的にも名作だと思う。

このアルバムはリリース前からチェックしてたけど、その時から私が意識を失いそうになるほどリピートをしまくってたのが3曲目のOblivion。この曲が本当に病みつきになる。曲を再生して音が鳴ったその0.1秒くらいで「はい神曲ー!はい大好きー!!」ってなるようなやつってやっぱりあると思うのだけど 笑、私にとってのこのOblivionはマジでそれだった。ギターの音の立体的な深さが本当にとてつもない。息を飲むほど綺麗で、まるで恋をするように心惹かれまくる。もしこのAlaska ReidのOblivionを初めて聴く人がいるのなら、私個人としては、ヘッドホンで聴くことを推奨したい...。周りの音を可能な限りシャットアウトして、この音の深みを味わうということ。夜空に輝く星のような、身が引き裂かれる思いをするほど美しい音を堪能する。こんなに音響の深い特殊なドリームポップは今までに聴いたことなかった...。本当に本当に素晴らしい。

今作は1曲目から6曲目くらいまで最高ソングが連続しまくってるところにもびっくりした。柔らかいサウンドと硬いサウンドの質感を見事に使い分けるQuake (M4)、綺麗なメロディーと一緒に外へ駆け出していくようなCity Sadness (M5)、どの曲もすごくいい。(その中でもOblivionがやばすぎた。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Taylor Swift - "evermore"

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背中を押してくれるようなカントリーの温もり

 前回のfolkloreは、cardigan、exile (feat. Bon Iver)、this is me tryingのような儚さのある深い感動のトラックが印象的だったと思う。今作のevermoreも、tolerate it (M5)のようなfolkloreタイプの超絶大傑作トラックがあると思うけど、どちらかといえば今作は、もう少し風に乗って前進するようなポジティブなフォーク・カントリーテイストを強く感じる。安心感のあるカントリーギターにソフトな歌をのせるWillow (M1)、シンプルなピアノがリスナーの背中を押してくれるような励ましを持ってるchampagne problems (M2)、悲しいことがあっても元気付けて慰めてくれるような曲調のdorothea (M8)、フォーク・カントリーの優しくて温かい仕上がりで本当にめちゃめちゃ最高だと思う。カントリーっぽさという点だと、例えば10曲目のivyとかもめちゃめちゃ大好き。Kacey Musgravesのような晴れ晴れしいカントリーの陽エネルギー、広大な高原をイメージさせるような壮大な清々しさも持ってる。春の到来とかに合わせて聴いたら本当にグッときそう。他にも、テイラーのポップパワーをフォーク・カントリテイストの作風にバランスよく適合させてるgold rush (M3)とかも素晴らしかった。従来のキューティーなポップ、昨今の優しいフォーク・カントリータイプのポップ、どちらも ちょうどよすぎるくらいに存在してる...笑。キューティーなポップいうと、エレポップっぽさがあるlong story short (M12)も快適な曲だった。

folkloreからの最大の特徴といえば、やはりAaron Dessner (The National)やBon Iverとのチートコラボ。11曲目のconey island (feat. The National)とかThe Nationalの音楽にTaylor Swiftがそのまま参加しました~みたいにめちゃめちゃ豪華 笑。最後のevermore (feat. Bon Iver) (M15)もどこまでもやばい。今まで蓄積されたTaylor Swiftの音楽の癒し・温もりに、Bon Iverの超絶魔法が発動していくとか...。曲想的にもAdrianne Lenkerに近い精神状態とかがあったりしてて、感動レベルがあまりにも高すぎてる。アルバム通して聴くとより激しい。

「てかfolkloreはどうなんだよ」ってなってるかもしれないけど、そちらは「2020年下半期『月間ベストアルバムTOP10』から漏れてしまったベストアルバムTOP10」のところで既に感想を書いてある。未公開だけど。「じゃあ公開しろよ」「そうだそうだ」いやまだ10枚選べてないです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Ed The Dog - "Untitled.Crashed.Crashed.Crashed"

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無器用でピュアでめちゃめちゃ愛おしいパワーポップ

 ガレージロック、ディスコパンク、パワーポップ、エモ、そしてものすごくストレートなまでに "ロック"...。打ち込み系のドラムや日常系のサンプリングまで、雑食的に様々なジャンル・手法を吸収したロック&ポップスだと思うのだけど、あまりにも傑作で1曲目のEverybody, I love Youからめちゃくちゃに泣いてしまった。「泣くのが恥ずかしいほど僕は無価値なんだ」。悩んだり、後悔したり、葛藤して、ぶつかって、それでも必死になってがむしゃらになって全力疾走していくような生き様。雑食的に様々なアイディアを音楽に取り込んでるところに少し無器用な姿もあって、楽曲中のメロディーがよりピュアに、より愛おしいものになってるところが本当にたまらない。不満を吐き出して、理想を追いかけて、ロックを奏でるための思いがこれでもかというほど伝わってくる。このEverybody, I Love Youだけでめちゃめちゃにベストアルバムだった。

そんな今作だけど、全体的にはWeeezerやJapandroidsのような元気なパワーポップ・エモの作風が基本だと思う。オーディエンスと一緒に盛り上がるような巨大な熱量があるThank You Buddy (M2)、ほんのちょっぴりブルーな気持ちを抱えながらもロックの楽しい余裕が表れてたりするThe Milk (M3)、ゆったりしたグルーヴに刺激的なマスロック風のギターも混ぜたりするPulse Flickers Under Wrist (M6)。メロディーがめちゃめちゃキャッチーでノリまくりだし、パワーポップ・エモとしてのエモーション密度も超高くて、本当にハイクオリティな曲ばかり。エモーション密度という点だと、絶対に絶対に見逃せないのが5曲目のUntitled.Crashed.Crashed.Crashed。この曲も1曲目のEverybody, I Love Youと同じくらい大大大傑作ソング。ノイジーな激しさ、音圧、爆発力、本当に楽しさが尋常じゃない。自分でもよく分からないけど、楽しさのフィーリングが強まりすぎてこの曲でも泣きそうになっちゃった 笑。何もかも本気で楽しもうとするロックバンドとしての意気込み、そこの純粋な思いにやられたんだと思う。本当に素晴らしい。

さらに今作がやばいのが、ロックだけでなくラブソングも最高なところ (I'll Be Your Dog (M9))。今までのエネルギッシュすぎるパワーポップをよりバラードな方向へシフトさせた曲、少しトロピカルな夏サイケのムードも素敵なのだけど、そこにラブソングを発動させるあたり本当に最高すぎてる。「I'll be your dog」、例えばエモ・パンクの失恋ソングとかだとPUPとかあると思うけど、Ed The Dogのこちらも本当に素晴らしかった。

1曲目のEverybody, I Love You、本当にすさまじく最高だったな、、、これはしばらくリピートが止まらないと思う。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Salami Rose Joe Louis - "Chapters of Zdenka"

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エレクトリックピアノのコスモス

 喫茶店で流れてる昭和歌謡曲のアナログレコードみたいな雰囲気が漂うジャズ×エレクトロニカの作品、アートワークのイメージのように、レトロでエレガントな趣とか、天体・惑星系の素敵なコンセプトを持ってると思うのだけど、それらのテーマをエレクトリックピアノだけで特徴付けてしまうような作品としてオリジナリティが本当に強烈すぎてる 笑。本当にもうめちゃめちゃにエレピだらけ。このおもしろさはなんだろう、、、がんばって例えるなら、スマブラでファルコン使うとき普通だったらスマッシュ攻撃とかファルコンキックとか色々な技を使うはずなのに、もう狂ったみたいにファルコンパンチの連打しかしない みたいな 笑、例えるならそういうおもしろさに似てる(スマブラ知らない人には大変申し訳ない)。もうとにかくエレピに依存しまくってて、そのキャラクター一つでどこまでも無双していくようなやばさがある。運動エネルギーの高い興奮があるテクノ系のエレピ (We're Dumb (M1))、ポストパンク~ニューウェーブのスペーシーなニュアンスがあるエレピ (Fuck “Eager to Please” (M5))、可愛らしい大人ジャズのエレピ(A Thermogenic Interlude (M12))...。エレピのよさがより深く、より多面的に表れてる。中でも私的な極めつけはFantasy (M3)のエレピ。すごく甘くて、まろやかで、ほっぺたの中でほろほろ零れ落ちるような食感の味わいすら感じられるサウンド。エレピにしかないようなメロメロになるほど素敵なサウンドの特性がよく表れてると思う。タイトルがFantsyというのも追撃でやばいし、純粋にSalami Rose Joe Louisのボーカルも本当に綺麗でたまらない。

エレピのサウンドってとても特徴的だと思うのだけど、そのサウンドでコスモスを創造していく今作のテーマは本当にお見事だと思った。特に80年代のフュージョンみたいな世界観だけでなく、まるで50年代かなと思わせるようなクラシカルな雰囲気も持っていて、とても個性的なワールドに仕上がってる。ジャズとしてもダンサブルなエレクトロニカとしても傑作、素晴らしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. The Avalanches - "We Will Always Love You"

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フェスが封印された残酷な1年の中、それに匹敵する思い出をくれてありがとう

 2020年は本当にしんどくて、とても散々な1年だったと思うけど、それでも「2020年って最高の年だったな」って思わせてくれるような、今年最大級にデラックスで信じられないほどスペシャルな思い出を提供してくれる1枚。歴史的大アーティストなJohnny Marr (The Smith)、Mike Jones (The Crash)、伝説的なフォークシンガーのVashti Bunyan (本当に?!)、ブルース・R&B・ソウル・ヒップホップ勢だとLeon Bridges (クルアンビンで好きになった)、Blood Orange、Neneh Cherry、Pink Siifu、Denzel Curry (初めて聴いたけどすごくいい)パワーポップだとRivers Cuomo (Weeezer)、エレポップだとオロノ(Superoganism)、MGMT (好き)、そしてエレクトロニカのルーキーなJamie xx (大好き)、さらにインディーロック枠でKurt Vile (マジか 泣)、そして現代クラシックのKelly Moran (←ここで口から泡を吹いて膝から崩れ落ちる)...。「コラボしてコラボしてコラボしまくる」みたいに大大大スケールのコレクションで、本当に錚々たる面々すぎてる。それらのアーティストみんながアバランチーズの一つのアルバムに集合して、まるでフェスのような夢のステージを見せてくれるところが本当に本当にたまらない。アルバム25曲を通して、次から次へと豪華なアーティストの曲が続いていく。それは、アーカイブでもない、配信生ライブでもない、"アルバムの音源で味わう"という最新型のフェス。今年はライブというライブは全て行けず、心から愛してるフジロックも来年に延期になって、1年の楽しいイベントが全て消滅してしまったけど、アバランチーズが、一緒の音源に集まることが考えられないようなメンバー達を集めて、想像を遥かに超える夢のコラボを見せてくれた。We Will Always Love You (feat. Blood Orange) (M3)とか、The Divine Chord (feat. MGMT & Johnny Marr) (M4)とか、Take Care in Your Dreaming (feat. Denzel Curry, Tricky & Sampa the Great) (M17)とか、ドラマチックでロマンチックで興奮が冷めないグッときまくる最高で最高のトラックだらけ。もうめちゃめちゃ泣いた。今年のかけがえのないアルバム、本当に嬉しい。

3曲目あたりから既に死にそうなほど感動してたけど、そこからさらに追い込みをかけて私を殺しにくるほど感動させたのが、15曲目のMusic Makes Me High。ハードルが高い曲名でありながら、全く名前負けしない超絶に名曲だと思う。ボルテージが高まりまくる最高のライブステージで、ファンク系の熱量が本当に見事に応用されてる。フェスの感覚を再現するような最高にアガる曲だと思うのだけど、そのライブの空間の中に、今作でコラボしてる豪華なアーティスト達が楽しそうにしてるところを連想する。普通なら交流しないようなアーティスト達が、このアルバムを通じてみんなでワイワイやってるところを想像する。本当に死ぬほど素敵なライブソングだと思う。それはもしかしたら、アルバムの音源だからこそできる幸せの想像なのかもしれない。感情が高まりすぎて本当に死ぬかと思った。フェスが封印された残酷な1年間の中、それに匹敵する思い出をくれて本当にありがとう。頭おかしいほど素晴らしかった。

サンプリングされてる曲、色々気になる。めちゃめちゃ音源欲しい。絶対にレコード買いたい。ボーナスは貯金にあてるって決めてたけど、このアルバムのためなら余裕で散財する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

★プレイリスト

Apple Music ↓

温の「2020年12月ベストアルバム(温)」をApple Musicで

Sportify ↓

open.spotify.com

 

 

 

★その他よかったもの

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Death Cab For Cutie - "The Georgia - EP"

Fana Hues - "Hues"

Helios - "Domiclie"

Kelly Moran & Prurient - "Chain Reaction At Dust - EP"

Laura Groves - "A Private Road - EP"

Osees - "Panther Rotate"

パスピエ - "synonym"

Rosie Carney - "The Bends"

Sigur Rós - "Odin's Raven Magic (with Steindór Andersen, Hilmar Örn Hilmarsson and María Huld Markan Sigfúsdóttir)"

Steve Racy - "The Lo-Fis"

 

 

 

 

「2020年11月ベストアルバムTOP10」感想

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今月は、Emily A. Sprague、Elskavon & John Hayes、Ólafur Arnaldsなど、アンビエントの良作が多かったイメージ...。先月同様ランキングを作るのがウルトラハイパー難しかった。

 

今月のベストアルバムTOP10の感想をランキングで

 

(上位2つがほんとのほんとにぶっちぎりのダブル1位(T_T)(T_T)(T_T))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. Woodes - "Crystal Ball"

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クリスマスシーズンに降臨するインディーポップの騎士

 HuntlyKlloLastling...オーストラリアのエレポップってみな大好きなのだけど、そこに新しくWoodesの本作も追加された...。私の中ではオーストラリア(メルボルン)版のAURORAみたいな位置付けなのだけど、 Ariesfusq、その他私がめちゃめちゃ大ファンのDE DE MOUSEみたいなピュアすぎるサウンドを多く含んでいたり、それらのファンタジックなパフォーマンスに富んだ良質なポップス作品だった。例えばタイトルトラックのCrystal Ball (M2)。ストリングスのピッチカートのような愛おしい音色、それらが可憐に弾んでいく旋律、ファンタジーの世界がどんどん構築されていく。まるでディズニー映画のようにピュアネスが徹底された世界観を持っていて思わずめちゃキュンキュンする 笑。キュンキュンという点だと、フルートが幸せそうに踊るClose (M4)なんかもとてもいい。最近は気づかぬ内にクリスマスシーズン専用のプレイリストを作るくらいにはクリスマスンソングに飢えていたのだけど、Woodesのこれらの曲はどちらもクリスマスシーズンに本当によく似合うと思う。今年はコロナでとても酷い目に合い、クリスマスも100%楽しめないような状況になってしまっているけど、そん中でもウルトラスーパー素敵でロマンチックな曲を見つけられて嬉しいです...笑。

内容的にも最高だけど、それ以上かなと思うくらいジャケットも強烈に最高...。なんだこの超かっこいいナイトの姿は、、、。鎧から剣までめちゃ本格的で仮想がめっちゃ楽しそう 笑。(私も着たい)

↑最初に綴ったオーストラリアのインディーポップバンド、他にも「LEYYAもめちゃ大好き!」、って書こうとしたらあれはオーストリアだった 笑。だって、これすごくオーストラリアっぽくない???笑。(めちゃ紛らわしい)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Tom Vek - "New Symbols"

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Car Seat Headrestのドラムが超かっこいいバージョン

 Kluster Bの感想のときにも言ったけど、オルタネイティブロックならではの歌うように奏でられるドラムって本当に最高だと思う。私のオールタイムベストアーティストでいうところのBroken Social Scene, Death Cab For Cutie, あと個人的にやばいところだとGang Gang Dance (Eye Contact)...。それは、言うなればリズムワークの根本的な部分からロックの迫力を豊かにデザインしていくような演出。特殊なノリを作り出して音楽をさらにモチベートしていくようなとても美味しいパートだと思うのだけど、Tom Vekの今作はそのドラムの美味しさがとてもよく表れてる作品だと思う。4拍子と3拍子を織り交ぜてフレージングしていく最高のおもしろさがあるSurvive (M1)、ヘビーでパンチの効いたビートを思い切り叩きこんでいくようなGuilty Pleasure (M2)、シェイク系のリズムパターンがとてもクールに決まっていくSlippery Fish (M3)、そしてテクニカルなかっこよさを魅せまくるようなラストのFountains Spit Your Name (M8)...。どれもドラムのよさが曲の中で維持されるような構造になってると思うのだけど、一つ一つTom Vekのお気に入りのグルーヴなんだなというのが伝わってくる。2020年、私の中でSecret Drum Bandに続くドラム部門の優秀賞作品。

もちろん、ドラム以外の点も含め総合的に見て最高!笑。特に全体を通じてライドみたいに鬼かっこいいギタープレイが本当に素晴らしいと思う。代表的なところだと、冒頭のSurvive (M1)とかがそう。4拍子と3拍子の中でミニマルに組立られるスライドのギターが本当にはちゃめちゃにかっこいい。めっちゃUKロックの旨味がのってるサウンドだと思う。そのギターがTom Vekの最高のドラムと合体されるわけだから、それはそれはもう大変素晴らしいよね...笑。ラストのFountains Spit Your Nameのギターも同様に素晴らしい。長尺ソングの中でそれらの美味しさがずっと続いてくところがいいんだよね。

今作でTom Vekのこと初めて知ったのだけど、なんか雰囲気がCar Seat Headrestっぽいなと思った。(曲調というよりかはアーティストのキャラクター的に)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Emily A. Sprague - "Hill, Flower, Fog"

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音の振動の繊細な部分にまで命が宿る

 Floristとしての前作Emily Alone (2019)では、孤独の世界の中で生きるシビアな感情と生々しく対面し、その過程でありのままの自分と向き合い、全ての自然環境の恩恵を享受するような境地にまで至る凄まじい傑作だったと思う。その前のWater Memory / Mount Visionなどのアンビエント作品も同様に、Emily A. Spragueという人物が捉える多自然的な幻想の世界は、どれも創造性が豊かで本当に素晴らしい。そんなEmilyのアンビエントの3作品目の今作は、もっと不思議で、リスナーの精神が超自然的な次元にまで転移されてしまうようなインパクトの強い作品になってると思う。リコーダーの音色とオルガンの音色の中間領域を実現するような繊細でマジカルなシンセ、そのサウンドが残響を持ちながらリフレインし、空間中に溶け込んで実世界を犯していく。空間中に馴染むまで長時間存在し続けた後、まるで時が止まったかのような現実世界の超越を見せてくれるのが本当に素晴らしい。繊細性を高めるサウンドメイキングから残響のチューニングまで全部が本当に最高で、リスナーに強い幻覚症状を与えるほどの完成度だと思う。アンビエントの醍醐味がとても詰まってる、聴けば聴くほど大好きになるようなアルバム。

6曲収録されてる内、私の最もお気に入りなトラックが4曲目のWoven。音の振動の繊細な部分にまで命が宿るような低音の衝撃。このサウンドが静寂・平穏のアンビエントの世界で僅かなアクセントになっているところがたまらない。曲想的にもとても暖かいものがあり、本当に心が満たされまくる。エレクトロニックハープという新サウンドも制作してしまうサウンドアーティストとしての腕も見せまくってる。本当にめちゃ最高の曲だと思う。

他にも、止まっている心臓が動き始めるような熱の伝達があるRain (M5)とかもめちゃ好きだった。マジカルなだけでなく、繊細なところがやっぱりすごくいい。今年3月の来日公演が潰れてしまったけど、ライブ必ずや観たいぞという意思はとても強くなりました(願)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Kevin & The Bikes - "Ironic Songs"

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ユニークで最高におもしろいノイズロック

 Empty CountryやThe War On The Drugsのように、フォーク・カントリーのルーツを持ったタイプのロックンロール。けどKevin & The Bikesの今作の場合、それらのフォーク系のテイストが行き過ぎてしまうようなめちゃめちゃ過激なロックなのが特徴的だと思う 笑。状態的にはNeutral Milk Hotelにも近いところがあると思うのだけど、ノイジーでギラギラしてて本当に楽しい。また、それらの荒々しいロックの印象と同時に、素朴で大人しいフォークロックの面影もちゃんと持っていて、それらが入り混じるような先の読めない自由な発想もある。リスナーの心を掴むようなおもしろいメロディーをいくつも用意してるし、感情をユニークに発散するオルタネイティブロックとして本当に名作だと思う。Intellectual Bean-Spill (M1), Turbulence (M4), Salamia (M9)の3曲がすごくいい。

まずは1曲目のIntellectual Bean-Spill、メランコリックで素敵な感情を抱えながら真っ直ぐ突き進んでいくようなドライブ感のある曲、ギターとドラムが互いに重ね合わさるようなパッセージが本当にすごくかっこいい。4曲目のTurbulenceは、ポジティブなフィーリングの強いギターポップの感じ。表面の細部までギターがめっちゃギラついてて、通常のギターポップには出せないホットなエモーションがよく描かれている。1曲目・4曲目、どちらも高ぶる感情をノイジーに荒々しくぶつけていく曲で本当にとても最高。

9曲目のSalamiaも物凄く素晴らしい。ノイジーなギターの楽しさだけでなく、ドリーミーな安らぎとシューゲイザー系の感動も提供してくれる曲。5曲目のMy Marrowや7曲目のGod's Orientationで印象的だったような素朴で大人しいフォークの世界観よりももっと壮大でドラマチック。音圧も激しくて感動が倍増されまくるから涙腺がめっちゃ刺激される。ラスト曲として本当にふさわしいと思う。

フォークロックが行き過ぎてめちゃめちゃロックになるタイプの作風のやつ、私的にはCult Of Youthの2014年作なんかも少し連想した。(←好き)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. ROBERT HOOD - "Mirror Man"

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笑いが止まらなくなるくらいかっこいいデトロイトテクノ

 ジャケットちょっとダサいかな?とか思ってたら中身めちゃめちゃかっこよくてお腹痛くなるくらい笑った 笑。デトロイトテクノ1時間超えコースのクラブミュージックすぎる作品のやつ。1曲目のイントロを経て2曲目のNothing Stops Detroitから本格的にそれが始まるけど、攻め方というか、フロアの盛り上げ方、リスナーの感情の高め方がすごく上手だと思う。3曲目のFear Notでは、暗黒面の世界に堕ちていくように危険なゾーンに入りこんでいく。ミニマルテクノのアプローチによる増幅効果で集中力を上げまくるエネルギーがあると思うのだけど、それらを途中からさらに強力にさせてしまうような低音のブーストが本当にやばすぎる...。ほんと、アドレナリンがドバドバ出てしまうほどの強烈な興奮。思わず「か、か、かっこいい、、、泣」みたいになる 笑。4曲目のBlack Mirroなんかだと、ニューエイジ・エクスペリメンタル系のアート性もあったり。謎めきの強い奇怪な怖さも持ってて、アルバムのダークな印象がより濃くなってる。怖さという点だと、7曲目の間奏トラックであるFreezeも本当にやばい。身の毛もよだつようなホラー系の強弱手法、アルバムに対するリスナーのゾクゾクがめちゃめちゃ煽られる。(これTNGHTのEasy Easyみたい。)

1時間休むことなく最高なアルバムだけど、その中で一番キターー!!ってなるのがラストのThe Cure (M14)。低音のブースト、変則的なクラップも交えていく複合型のリズム、ダークなデトロイトテクノをよりかっこよくおもしろく魅せるようなアイディアが盛りだくさんで本当に素晴らしい。約7分の曲の中で音の立体感が不規則に変化していくから本当に全然飽きない。もうほんと、バカみたいにかっこよかった、、、笑。

他にも、反響しまくるサウンドがめちゃ楽しいIgnite a War (M11)やPrism (M12)などもとてもよかった。今月、Charles Webster、Dan Kye、Off The Medsなど、ブラックミュージックのテクノハウス作品どれもよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Elskavon & John Hayes - "Du Nord"

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殺人級の美しさ

 サントラ系のアンビエント作品が持つ無限大の想像って本当に最高だと思う。それはまるで、各々リスナーだけに構築される特別でとっておきの物語。Elskavon & John Hayesの今作の場合、Bing & Ruthのような音響芸術、Nils Frahmのようなポストクラシカルのサウンド、イマジネーションを深く美しく創造していく豊かさがめちゃめちゃあるところがすごく素晴らしい。オープニングのVermilion (M1)では、ダンサブルで情熱的な興奮を喚起させるような演出があって、ドラマチックな展開に期待するような高揚感が表現されてる。ここの導入部でもう完全に心を掴まれてしまうのだけど、そこから2曲目のItascaで田園風景のような自然的な世界を見せてくれたり、3曲目のRefrostで思い馳せるドリーミーなポストクラシカルの世界に導いてくれたり、本当にたくさんの想像が駆り立てられていく。音響を重視したピアノのサウンドが常にものすごく綺麗だから、駆り立てられる想像の世界の一つ一つがとても高級になるのがすごくいい。最近愛用していたヘッドホンが壊れてしまい、7万円相当の新しいものを購入したのだけど、それもあってか、初めて聴いたときは音が綺麗すぎてやばくて本当にびっくりした。ものすごく奥行が深くて、音楽の空間がとても広い設計になってると思う。

音響芸術、ポストクラシカル、至高のピアノサウンド、それらのよさを1曲で爆発させているのが4曲目のL'etoile、本当に殺人級に美しい曲だと思う。鍵盤の感触のとても繊細なところまで行き渡るほど研ぎ澄まされた音響の世界。その中で生じる胸を引き裂くほどにエモーショナルな和音。『星』というタイトルの曲で、これほどまでに打ちのめされてしまう曲は今までになかった。自分の中で大切にしている思い出を回想しながら聴いたら、魂が消滅しそうになるくらい感動した。涙腺がおかしくなって涙が止まらなくなるほどやられた。本当に恐ろしいくらい素晴らしい曲だと思う。

ダークめのエレクトロニカとして目立ってるDu Nord (M8)もとてもよかった。こちらはTim Heckerっぽい重さ・迫力があってすごくかっこいい曲。本作はJulianna BarwickLyra Pramukに並ぶ2020年の私的ベストアンビエントだなと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Dirty Projectors - "5EPs"

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リードトラック密度がすごい

 音楽の響きをもっと特別なものにするエキセントリックでタレンティッドなバンドのEPシリーズが完結...!フロントマンのDavidを筆頭に、マルチプレイヤーなメンバーそれぞれの個性が発揮されまくった名曲だらけのアルバムになってると思う。ボサノバ系のリラックス特性にMaia Friedmanのボーカルがこれ以上ないくらいフィットするOverload、女子メンバー3人のハイトーン和声が本当に素晴らしぎてやばいLose Your Love、シンプルなフォークソングのスタイルで心に深く残るエモーションを完成させたHoly Mackerel、さらにはエクスペリメンタルやアートポップとして幅を広げる挑戦的なBird’s Eye、そして心温めるダープロならではのほっこり感が極められたMy Possession...。半年以上続けざまにリリースされたリードトラックが積み重なってる大作なわけだし、もう大好きにならざるを得ない 笑。私的には特に、めちゃかっこよくてめちゃオシャレなMaia Friedmanが激推しなのだけど、彼女がリードボーカルを務めるOverloadは本当に最高すぎると思う。音域も声質も絶妙にちょうどよくて、リスナーの耳への調和率がとてつもなく高い。ダープロらしい快適な音楽性との相性も超抜群だし、MVも綺麗でオシャレで最高。私の今作のベストソング。(そしてベストMV。)

Dirty Projectorsは、クラシックや民族音楽のニュアンスもよく取り入れ、フレッシュで繊細な刺激を作り出すR&B・ロックのバンドだと思う。その中でも2018年以降の新生ダープロは、前作のBreak Thruに特徴的だったように、親和性の高いアンプラグドでアコースティックな作家性が強い感じがする。今作も全体を通じてさっぱりとした軽い仕上がりになってると思うのだけど、そのアンプラグド系の作風の中で、癒し的で気持ちいいフィーリングが濃くなっているところがすごくいい。代表的なところだとやっぱりHoly Mackerel。Davidの歌とクラシックギターの素朴な音色がリスナーのことを抱きしめて慰めてくれるように温かい。5EPsの充実した楽曲の中で通して聴くと、よりアコースティックの癒し的な曲調がもっと強く感じられる。他にも、ストリングス要素のNow I Know (4枚目M4)なんかもとても心沁みた。こちらはクリスマスにもぴったりそうなロマンチック系の感動も含まれているのでタイミングもいい 笑。

EPを5作連続でリリースするって聞いたときからシリーズの完結をすごく楽しみにしてたけど、実際スケールの大きいボリューミーなコレクションアルバムになってて本当に充実してた。甘く切ないメロディーに飲み込まれてしまいそうになるInner World、ダープロのトリッキーなグルーヴに踊らされるSelf Design、他のリードトラックもとても最高。従来のようなダープロ・ロックなPor Qué No、Searching Spiritも相変わらず◎。20曲ランダム再生でも楽しめるアルバムだと思う。私的な1番はやっぱりOverloadとLose Your Loveの2強です!笑。Lose Your Loveはコーラスのライブアレンジがあまりにも最高すぎてる。(ライブまた観たい)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Cuushe - "Waken"

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ドリームポップ&クラブミュージックの素敵すぎるダブルパンチ

 ときめきが止まらなくなるほど綺麗で素敵なドリームポップ~エレポップのやつ、コスチュームが干してあるみたいな洗濯物ジャケの世界観そっくりそのままで、晴天をもたらすようなシャイニーなフィーリングや、ふわふわでモフモフした質感の音像をたくさん所持してる。さらには、音楽のセンセーショナルな部分を高めるようなピアノのキャラクターもすごく利いてたり、ボーカルも青葉市子のような日本人特有のソフトな声質でとても優しかったり。ドリームポップならではの透明感や開放的なエモーションが極められてる最高の作品だと思う。1曲目のHold Halfからその音楽性がパワフルに繰り広げててとてもやばい。音が本当にクリーンで天に昇りそうなほど綺麗。

Cuusheの今作のすごいところは、そういった綺麗で素敵なドリームポップの音楽性に、クラブミュージックのクールさを取り入れてるところ。こんなに はちゃめちゃにかっこいいドリームポップの作品は今まで聴いたことない 笑。代表的なところだとやっぱり3曲目のEmergence。開放的な1曲目のHold Halfが嘘みたいになるほどダンサブルで強力なエネルギーがある曲。Kelly Lee Owensにも負けないくらいバチバチに本格的なハウスで、Hold Halfとのギャップがめちゃめちゃ出てると思う 笑。4曲目のNot to Blameも細かいビートが刻まれるテクノで鳥肌が止まらない。そんなクラブミュージック系のクールな楽曲の中でも、表情的にはやっぱりドリームポップなものを持っているから、どの曲も開放的な気持ちよさは絶大。特にDrip (M6)なんかは、そのドリームポップ性とクラブミュージック性のよさがどちらも最大に表れてる曲だと思う。ドリームポップもクラブミュージックも本当に大好きなので、それらのツボをダブルでパンチされるようなDripには本当にグッときた...笑。

ラストのSpread (M8)も本当に傑作。こちらはPurity Ringのようなふくよかで豊かなグルーヴを持った曲。開放的なドリームポップの感動をエレクトロシューゲイザーのような大規模なスケールで奏でてるのが本当にたまらない。ファルセットの透き通ったコーラスも一つ一つに心を掴まれる。6分間の長尺トラックだけど、本当にずっとサウンドが素晴らしかった。

前にも言ったけど、本作は冬の朝に超超超ぴったりな作品だと思う。澄んでいてクリアな空気、透明感、そして真っ白で気持ちいいフィーリング。可能なら雪が積もった休日の朝とかに聴きまくりたい。東京に引っ越してきてから雪が降るのを楽しみにしてるけど、そのとき用のBGMとしてCuusheをスタンバイしとく...笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Hypoluxo - "Hypoluxo"

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ストパンクの幸せ

 今が2020年であること思い出せなくなるくらい、70s~80sの時代にのめり込んでトリップするポストパンクのワールド。光沢のあるギター、短く切るようにして強く歌うボーカル、タイトなリズム、それらのチープでコンパクトにまとまったサウンド...。"元祖ポストパンク" みたいにものすごくトラディショナルだと思うのだけど、イギリス~労働階級~冷戦~不況など、様々なニュアンス・世界観を忠実に投影し、その中で自分たちの怒り・不満を吐き出すパンクミュージックへ夢中になっている。もともと私ポストパンクのことが大好きというのもあるけれど、Hypoluxoの今作は時代や文化をリアルに切り取るような芸術性がとても素晴らしいと思う。何より、この作品みたいに音楽の中で世界がひっくり返されていく(時代を越えていく)ような感覚が本当に大好きでたまらない。今年だと、6月にリリースしたド直球ロックンロールのSports Teamみたいに、古き良き時代のパンク・ロックを再現する作品ってあると思うけど、Hypoluxoの今作はその中でも再現率の高いもっとマニアックな作品だと思った。モノクロのメンバージャケの雰囲気もさながらにとてもとても最高。

私が今作で最も感激し、ベタベタに惚れまくったところは、Matthew Hershoff (ジャケ写右) の作り出すリードギターのメロディー。ポストパンクのギターならではのクールな印象と、そのイメージに少し反するような明るい表情の両方を持った特徴的なサウンド。それは、今までのポストパンクにはないような感情豊かな幸せ。パンクミュージックへの憧れ・ロマンを込めるようなハートが溢れまくってて本当にやられた。最初から最後までずっとその幸せが鳴り響いてる。サウンドメイキング的にもやっぱり超本格的で本当に楽しい。特にSelf Meyersのギターには本当に驚いた...「ギターが好きすぎる」という理由だけでこんなに泣いちゃうなんて...。

ストパンクの申し子でお馴染みのFontaines D.C.も最高だった2020年、他にもThe Wants, The Homesickなど、私の中でポストパンクが次々に来てる。ベストアルバムのランキング作るのが趣味なのだけど、Fontaines D.C.もThe Homesickも傑作すぎて優劣付け難い、、、(悩)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Mamalarky - "Mamalarky"

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無敵のハピネス

 ガレージ・ローファイならではの飾り気のないカジュアルなスタイルを活かして、純粋無垢の能天気なハピネスを生成しまくるようなロック&ポップス。元気いっぱいに飛び出していくようなロックから、のどかで落ち着いたブルージーなポップス(You Make Me Smile (M2))、さらには胸がいっぱいになるほど美しくてたまらないバラードまで、本当に幅広いタイプの曲を兼ね備えてる。それらの音楽性が全て、ハンドメイドのカーペットみたいなジャケの中にいる謎キャラの精神状態とコネクトして、能天気なハピネスをどこまでも最強にさせてるのが本当にやばい 笑。マジで、全てを無に帰すほど無敵のハピネスが表れてると思う。ほんと、このジャケのような精神状態で日々を暮らしたい、、。ジャケットによって音楽のハピネスを高めていく他の例だとAnna MeredithのVarmintsとかがあると思うけど、こういう能天気でピュアな音楽ってマジで大好きすぎる。そういう風に、ガレージ・ローファイなMamalarkyの音楽性を、最高にハッピーなアルバムアートワークに適合させたコンセプト的な部分でもう100点満点の作品だと思う。

実際に収録されてる曲も本当に本当に最高...。可愛くハジけるガレージロックFurry (M1)とか、Crumbのようなジャジーでサイケなドラッグ作用さえもあるCosine (M4)とか、全曲がほんとに最高水準の素晴らしさ。その中でも、Big TroubleからAlmighty Heatまでの5, 6, 7曲目の流れが完璧すぎてる。Big Troubleは本作で1番グルーヴィーな曲。大きくウェーブするベースとアナログシンセ、そこにハマっていくギターのアクセント、ロックの曲としてとても完成されてると思う。この曲だけ原型が壊れるほどローファイの効かせ方も強烈で、楽しさレベルもめちゃめちゃ高い。この曲でMamalarkyというバンドの最高さを確信できた。

そして、Mamalarkyらしいジャジーな特性が強く表れたHero (M6)も格別にやばい。体が制御不能になって強制的に動いちゃうくらいグルーヴがゆらゆらがしてる。あまりにも心地いいからほっぺたの筋肉がおかしくなるくらいニヤニヤした 笑。会社のお昼休憩中に聴いてたら体の揺れが止まんなくなっちゃって大分恥ずかしい思いをするくらい...。フロントマンのLivvy Bennettフルアコースティックギターのキャラクターがほんとに魅力的な曲だと思う。

その後に訪れる美メロが極めに極められたAlmighty Heatも頭おかしいくらい最高。。。能天気なローファイのサウンドが持つ暖かさでここまで泣かされることなんて考えられなかった。テロテロに溶けてしまうような恍惚の美メロを持ってる曲ってたくさんあると思うけど、その中でもMamalarkyのこの曲は頭一つ飛び抜けてると思う。5曲目のBig Trouble, 6曲目のHeroからのコンビネーションもやばいし、この曲が決定打となってMamalarkyの大大大大ファンになった。そして当初1位予定だったHypoluxoよりも順位が上になっちゃった 笑。

今作は、ガレージ・ローファイのポテンシャルを余すことなく発揮しためちゃめちゃ最高なロック&ポップス作品だったと思う。音楽性もジャケもテーマ的にも私のツボがえぐられまくる。冗談抜きで今年のベストアルバムのTOP5でもいいくらい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

★プレイリスト

Apple Music ↓

温の「2020年11月ベストアルバム(温)」をApple Musicで

Spotify

open.spotify.com

 

★その他・とてもよかったもの

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Charles Webster - "Decision Time"

Dan Kye - "Small Moments"

Hachiku - "I'll Probably Be Asleep"

King Gizzard & The Lizard Wizard - "K.G."

Madisenxoxo - "Plead No Contest - EP"

Off The Meds - "Off The Meds"

Ólafur Arnalds - "some kind of peace"

Routine (Annie Truscott & Jay Som) - "And Other Things - EP"

Tiña - "Positive Mental Health Music"

Told Slant - "Point the Flashlight and Walk"

 

 

 

★11月20日リリースされた新譜 感想

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12月はSigur Rósの新譜(必修科目)

 

 

 

 

「2020年10月ベストアルバムTOP10」感想

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今月はActress、Autechre、Call Super、OPN、Rian Treanor、Theo Parrishなどなど、エレクトロニカがめちゃめちゃ美味しいひと月だったなと思う 笑。

 

今月のベスト・オブ・ベストなアルバムTOP10の感想をランキングで

1位めっちゃ迷った(TT)

(上位3つがぶっちぎりトリプル1位)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. Rian Treanor - "File Under UK Metaplasm"

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至極の16ビート

 Flying LotusのCosmogrammaのような瞑想的でスピリチュアルなパワーを発揮していくフットワーク/ジューク・テクノ。目まぐるしく展開しまくる高速のエネルギーを常に所持していて、精神が高ぶるような圧倒的な衝動と興奮に満ちてる。至極の16ビート、閃光を放つような瞬発的なサウンド、まるで痛みすら伴うような美しいインパクトを連続的に繰り出してて本当にめちゃめちゃかっこいい...笑。その音楽体験は、瞑想的なメンタルトレーニングにも少し似てるところがあって、一般的なエレクトロニカ作品よりも私得なテーマ性がある。1曲目のHypnic Jerksからその圧倒的な興奮に取り憑かれてしまうのだけど、コードもメロディーも持たないような人間味の欠如した音楽性がより一層ドキドキ感を高めてる。そこからさらにスピリチュアルなパワーを取り出していくような3曲目のMirror Instantも本当に素晴らしい。16ビートの表拍と裏拍を認識できなくさせるようなカオスチックなリズムの構築、スリル満点なテクノで本当に最高...。ちなみにラスト9曲目のOrders from the Pausingみたいなかわいいリズムの曲もめちゃよかった 笑。

瞑想的でスピリチュアルなニュアンスがあるフットワーク/ジューク・テクノ、それだけでなく、悪に染まるようなアンダーグラウンドのClosed Curve (M5)や、世界を破滅させるように暴れ狂うハードコアのMetaplasm (M8)などのトラックも本当によかった。もともと、スピード力や瞬発力のエネルギーをフルで利用したカオスチックなリズムワークが今作の素晴らしいところだと思うけど、そのリズムワークのカオスなところがハードコアの音楽性にもよく適応されてる。強烈で絶大なインパクトを残すような印象、本当に激アツにかっこよかったよ...笑。

数々のエレクトロニカ作品がリリースされた今月でしたが、その中でも今作はトップレベルに好きだった。もちろん、AutechreやOPNも最高だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Actress - "Karma & Desire"

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ピアノの亡霊

 ゴースト出現型のエレクトロニカ、なおかつゴースト出現型のピアノ・アンビエント。ダウナーでとても気持ちいいグルーヴを体現した至高のダンストラックとしてのよさに留まらず、クラシックピアノを強調したアルカイックな趣が漂う世界観としてのよさも半端ない。心霊的な怖さを演出する妖しくてクールな魅力が本当に素晴らしい作品だと思う。ダイナミクスを小さくして妖しさの魅力を抜群に引き立てたようなAngels Pharmacy (M2)、そこから一気にスローテンポに失速させて生気を吸い取るようなダークネスを発動させていくRemembrance (M3)、ピアノのメロディーがとてつもなく不気味なのが本当に美しいSave (M6)、まるで気が狂ったように激しくハイスピードに怖さと興奮を掻き立てていくLoose (M14)...、ダンストラックもアンビエントもどちらも本当に高品質。私が大好きすぎるネオソウル作家のSamphaや、ヴァルキリーでお馴染みテッサ・トンプソンの異母妹にあたるZselaなど、今作のコンセプトによくマッチするユニークなアーティスト達をフィーチャリングしてるところもいい。中でもMany Seas, Many Rivers (feat. Sampha) (M10)とかに関しては、Samphaのソウルフルなボーカルスキルを負の感情に適応させたような新しさがある。今まで自分が持ってた従来のSamphaのイメージ像が崩れてしまうほどホラーな存在感が出ててめちゃおもしろかった 笑。フィーチャリング要素でいうと、イタリアのピアニストであるVanessa Benelli Mosellのピアノソロトラックも本当に美しい。非エレクトロニカな曲もアルバムの中で上手に適合させるハイセンス。意外性もあるし、本当に大好きな作品。

今作が月間ベストアルバムにランクインした最も大きな要因が、やっぱり5曲目のLeaves Against the Sky...。この曲はもう本当にすごく完璧 笑。今作は心霊的な怖さ・妖しさの負の感情がよく表れたアルバムだけど、この曲が漂わせるその負の感情には、失望感にも似た重々しくてネガティブな悲しみの感情がある。聴くと憂鬱になって身体が動かなくなってしまうほどの悲しみなのだけど、その感情を美しくダンストラックとしてクールに描き出すような芸術性が本当に素晴らしすぎてる。めちゃめちゃ綺麗だしかっこいいし、病みつきになるほど大好き。というか、アンビエントの特色もある世界観の中で、ダンストラックのクールなかっこよさがより強調されるようなアルバムとして設計されてるところが特に大好きだった。

他にも、Leaves Against the Skyと同じタイプのLoveless (M11)や、SCUBAのような安定的なダンスフロアを創出したTurin (M15)もとてもよかった。フィーチャリングのAura T-09もナイスワークだし、Turinに関しては長尺トラックなのがよく似合ってる。実は今までほぼ全てActressの作品にパッとしなかった私だけど、今作に関しては猛烈にハマリました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Bartees Strange - "Live Forever"

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2020年のベストエモ

 Nilüfer Yanyaのようにブラックミュージックとロックの境界線を破っていくような新時代のエモ・ロック。エレキギターをブーストさせていくようなロックとしての品質、幻想さえ生み出してしまうような濃厚でマジカルな音色、そこから生み出されるハートウォーミングなシンパシー、胸が締め付けられるように切ないエモーション...。今年リリースされたエモ・ロックの作品の中でも、R&B・ヒップホップ(Kelly Rowland (M4), Mossblerd (M8))も織り交ぜる唯一無二なスタイル、オルタネイティブロックとしてのバリエーションのおもしろさ、一つのアルバムとしての総合的な芸術としてめちゃめちゃ傑作だと思う。リードトラックのMustang (M2)を始め、Boomer (M3)、In a Cab (M5)、Stone Meadows (M6)、Flagey God (M7)など、かっこよくてグッときまくる名曲が揃ってる。ドリーミーな美しさを兼ね備えたエモってだけもう最高なのに、ロックならではの激しいグルーヴ感とか、ギターをスプラッシュさせて音を広げていくような気持ちよさとかもあるのがいい。In Cab (M5)に関しては、Barteesのハイトーンなボーカルとトランペットのハーモニーなども最高だったり。また、Flagey God (M7)なんかはハウスミュージックの音楽性を取り入れたクールでメランコリックなよさもあったり...。オルタネイティブロック、エモ・ロックとして豊かで美しいメロディーに富んでいて、紛れもなく素晴らしかった。

Bloc PartyTV On The Radio、最近でいうとYves Tumorなど、黒人歌手によるソウルフルなボーカルのロックってやっぱりたまらなくツボなのだけど、そんなBartees Strangeの今作の中でもMustang (M2)が1番大好き。ギターを大音量でかき鳴らしていくようなエモ・ロックのイズムがよく表れてるし、疾走していくような加速力でありったけのエモがどんどん強化されていく感じが本当にやばい。名曲揃いの今作においても、Bartees Strangeイチオシのナンバーだと思う。

レーベルのMemory Musicって初めて知ったのだけど、ここまでの名作を出されてしまうと今後リリースされる作品にも期待が高まりまくってしまう...笑。アーティスト含めて今後の活躍を応援したい(フィジカルを買おう)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Helena Deland - "Someone Now"

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「ダークネス × ポップネス」な革新性

 PortisheadGrouperみたいにめちゃめちゃ陰湿なダークネスが装備されてるのに、ソフトで明るいタッチも多く含まれてる大人のインディーポップな感じ。ダークなキャラとしてのかっこよさ、ポップス音楽としてのハピネス栄養素、それらのアンバランスな緊張感...。多様なよさを一体した未知すぎる音楽性でものすごく革新的で画期的。本当に超天才でやばいと思う。Cigaretts After Sexのような濃厚でセクシーなドリームポップにも近い世界観があるけど、そのイメージに反するようなドラムマシーンのグルーヴィーなアクテビティがあったり。さらにはAngel Olsenのように繊細でめちゃ丁寧なボーカルや、それらのフォーキーな印象もある。一見共存しなさそうなそれらのセンスによって、ダークで大人びたポップのキャラクターを一発で作ってるところが本当に驚異的だと思う。特にその特色を100%体現するようなHelenaのメロディーがすごすぎて本当にじわじわくる。1曲目のSomeone Newとかまさにそう。闇に溶けていくような催眠的な感情と、それを体感するエクスタシーとして明るい感情が同時に得られるようなフィーリング。ダーク感もポップ感もちょうど均一になってるバランスで、本当に素晴らしいなと思う。今作のタイトルトラックでありリードトラック、この1曲だけでHelenaの天才っぷりが分かった 笑。

Someone New (M1)ももちろんそうだけど、今作は本当に名曲揃いだなと思う。ダークな世界を優しく照らすような愛おしさが含まれたTruth Nugget (M2)、クールでポップなメロディーをソウルフルに歌い上げるComfort, Edge (M6)、曲名の世界観だけでもう100点満点なSmoking at the Gas Station (M9)、あどけなさがある世界の中でドリーミーな愛情を織りなしていくMid Practice (M11)、深い眠りに落ちていくように心奪われる美しさと快感が込められたFill the Rooms (M13)...。ダークでドリーミーな世界観も、愛おしさや可愛さすら感じられるピュアなフィーリングスも、本当に全て素晴らしい。他にも、スネアドラムのザラザラした音色で雨が降るような情景を演出したり、ピカピカ光る電子音のアクセントを僅かに装飾したり、細部にわたって音楽が作られてるところも本当に大好き。めちゃめちゃ作りこまれてると思う。

ちなみに1番大好きな曲は5曲目のPaleです...笑。中盤に出てくるフレーズがダークすネスが本当にやばい。4曲目まで残っていたポップな感覚とのギャップが出まくってると思う。しかもこれ完全にDARKSIDEじゃん! 笑。(例えばGolden Arrowの5分27秒あたり)。まさかインディーロックの女性SSWの音源で、DARKSIDEみたいなリフが聴けるとは思わなかった 笑。本当に鼻血レベルでかっこいい。

今作のダークでポップな作風の感じ、今年だとSorryとかとも近い音楽性を感じた。Sorryの作品も2020年を代表するインディーロック作品だった思う。こういうダークな音楽、個人的には90年代インディーロックシーンのエスケイピズムの精神と重なる部分があって本当にハマる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Knox Fortune - "Stock Child Wonder"

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エモすぎて死にそうなるダンスポップ

 Handsomeboy Techniqueみたいなヒップホップ調のダンスポップな作品。The Go! TeamとかKero Kero Bonitoとか、ヒップホップ調のイズムだからこそ出せる陽気で純粋なハピネスのダンスポップ作品がもう超超超大好きなのだけど、Knox Fortuneの今作はそれらの大好きエッセンスが目一杯に詰め込まれてて思わず膝から崩れ落ちそうになる...笑。1曲目のJust Enoughから最後のAlwaysまで、ヒップホップ、ポップ、ディスコ、レゲエ、自分の大好物ソングしかない。Chance The Rapperもほとんど聴かないし、Knox Fortuneのことをこのアルバムで初めて知ったのだけど、あまりのよさにええーー?!ってなった 笑。今年ベストヒップホップはSoleimaで確定かなと思ってたけど、今作であっさり更新されてしまった..。(ヒップホップといえどラップないけど。)

例えば6曲目のChange Up。ヒップホップ調のダンスポップならではの元気なモチベーションで、寂しくて切ない気分も心弾むようなルンルンのフィーリングに変えてくれる。それはまるで、寄り添ってくれるような励まし・思いやりのフィーリングで心を満たしてくれる感覚。もうめちゃめちゃ素敵でたまらなく好き。9曲目のShirtlessもそう。こちらに関しては、さっぱりしたアコギの雰囲気がKnox Fortuneの陽気なハピネスと絶妙によく合う。心地よくに昇っていくようなメロディーラインも本当に完璧、気持ちがどんどんノっていく。

そして今作における最高of最高なベストトラックが、なんといっても4曲目のCompromise。陽気で純粋なハピネスを最高に甘酸っぱくテイスティングしたようなナンバー。本当にエモすぎて何度聴いても死にそうになる。グロッケン系のキラキラしたサウンドとか、ピュアネスを掻き立てまくる楽曲の設定が本当に大好きすぎてしんどい。これまで聴いてきた数々の大好きソングを抑え、ヒップホップ系の音楽の中で世界一大好きな曲となってしまった。グルーヴも本当に好き。というか全曲そうだけど、Knox Fortuneのジャジーでグルーヴィーなドラムワークって本当にむちゃくちゃよい。

他にも、派手になりすぎず適切なダイナミクスに調整したR&B・ポップのSincerity (M3)とか、究極的なまでにかわいいリコーダーのキャラを抜擢してしまうやばいセンスのAlways (M11)とかも本当によかった。今作は本当は月間ベストアルバムのTOP3レベルの作品だったのだけど、上には上がいたよね、、、笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 5. Mourn - "Self Worth"

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ガレージロックの理想を叶えた

 不要な装飾を一切施さないオーソドックスな純正ギターロック・ガレージロック。鋭い切れ味、アグレッシブな攻撃力、そしてお手本のようなロックンロールの姿勢...。ギターのリフもしっかり大事にする王道派のロックバンドで、前作Sorpresa Familia (2018)も相当な傑作だったと思うのだけど、今作は本当に信じられないくらいネクストレベルへ発展した驚異的に最高な作品で本当にびっくりした...笑。ガレージロックが所有するかっこよさ・楽しさを全て最大に発揮できてるし、音圧も丁寧に強化されてたり、前作6曲目Orangeに相当するようなメランコリックな感情描写も洗練されてる。さらにはStay There (M7)のように、Mournのロック精神をより高みにあげるようなハードロック・メタルの鬼激しい音楽性もあったり 笑、エモーショナルなメロディック要素(The Family's Broke (M12))も前作以上に磨きがかかってると思う。もちろん、従来の切れ味が高いロックンロールのよさも全く失ってない。それどころか、Worthy Mushroom (M10)のギターとか、音作り以外にレコーディングも込みでそれらのサウンドがより高級になってる感じがする。迫力たっぷりの鬼かっこいい作風になったけど、インディーズのロックバンドの雰囲気も残っていて、より幅広い層に刺さる作風になった感じ。かつては「クラスの男子のバカ話に飽きた」と言って始まった高校生のガールズバンドだったのに、まさかこんなにプロ顔負けのロックンロールバンドに成長するなんて...。Ha, Ha, He (2016)収録のGertrudis, Get Through This!Irrational Friendのときから既に本物感は出てたと思うけど、今作の完成っぷりには本当に感動した。

サウンド的にも精神的にもびっくりするほど進化したのに、それらを超越してしまうほどのネクストレベル要素もあるのが本当にやばい。それがGather, Really (M5)とIt's a Frog's World (M9)の2曲。80年代に流行ったコーラスのエフェクトによる新しいエモーションの装備。まるでガレージロックからシューゲイザーに差し掛かるような音楽性の発展があって、今までにはなかった豊かでカラフルなヴィジョンを見せてくれる。ガレージロックの最高のかっこよさ、心躍るワクワク感と興奮、色鮮やかな美しさ、そしてそれらを激しく奏でるMournの強い精神力...。感動がいくつも重なるやばさ、最高すぎるから思わず大音量で聴きまくりたくなる。この2曲は本当に本当に素晴らしかった。

私はMournのベース担当のレイア様の大ファンなのだけど、今作はベース(リズム隊)の最高の見せ所なApathy (M11)とかもあって大変私得だった 笑。この曲、火力が高くて本当に超最高...。実は2019年の初来日のとき、レイア様は演劇の都合で来れなかったためにまだその姿を1度も拝められていないのだけど、Apathyのレイア様のベース!!ぜひぜひ生で観たいです!!!!(来日祈願爆死)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Pet Shimmers - "Trash Earthers"

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2020年の最高傑作連発シリーズ

 夢と魔法がたくさん詰まったおもちゃ箱のようなサイケポップ・ドリームポップ、前作Face Down in Meta (2020)が最高に切なくて超エモーショナルな大大大傑作だったのに、今作もそれと並ぶくらい愛おしくて素敵なメロディーが詰まりまくってる。本当に傑作すぎてありえない...笑。Nicolas JaarやSaultと同様、2020年の最高傑作連発シリーズ。特にFace Down in Metaは2020年ベストアルバムのTOP10レベルだったし、Pet Shimmersがめちゃめちゃ大好きだったので本当にありがとうございます(土下座)って感じだった 笑。

音楽を聴いててメロディーが最高すぎて思わず泣いちゃう~みたいな瞬間ってあると思うのだけど、Pet Shimmersの作品は本当にそればっかり。今作だと、心がときめく可愛いフィーリングスのUhtceare (M1)、センチメンタルな思いをノイジーなギターソロにのせて奏でるLive-In Atrocity (M5)、シューゲイザー的なかっこよさすら備えてあるBig Ideal (M9)などなど、本当に最高のメロディーだらけ。そこには、自分の中のピュアネスが引き出されるような、童心がくすぐられるファンタジーな世界観もある。根本としてもう私にとってツボすぎる作風だし、楽しくて切なくて、胸がいっぱいになって満たされまくる。本当に素敵で果てしなく愛してる。

そんな今作における私の超絶お気に入りトラックが、3曲目のAll Time Glow、7曲目のMadonna's People、10曲目のThe Mouth Ofの3つ。どの曲も迫力を作ってそのファンタジーワールドがダイナミックに繰り広げられてる。サイケデリックでドリーミーな癒しも、最高にセンチメンタルなエモーションも全て濃密になってて、顔面がぐちゃぐちゃになるように泣きそうになってしまう。中でもAll Time Glow (M3)に関しては胸が締め付けられまくる泣きメロが本当にやばすぎる。このAll Time Glowに関しては、Face Down in Metaの曲らと同等かそれ以上に好きかもしれない。Madonna's People (M7)のテンションが最高潮に達する感動的なパッセージとかも本当に最高。

今作は、前作と比べるとロックよりインディーポップな気色が強い作品かなと思った。前作Face Down in Metaは3曲目Mortal Sport Argonaut、9曲目Nobody: Me:、10曲目Post-Dick Circle Fuckなどのようなアップテンポで激しいビートの曲が特徴的だったから。Nicolas JaarやSaultもそうだけど、年間ベストでダブルランキングが避けられない作品かなと思う 笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Loma - "Don't Shy Away"

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"遠慮しないで"

 私の中で伝説級に大好きなあのCross Record(Emily Cross, Dan Duszynski)と、Okkervil RiverやShearwaterでお馴染みのJonathan Meiburgによるコラボ。Cross RecordのホーリーなエモーションとShearwaterの広大でパワフルな音楽性をクロスオーバーさせて、それらの相互的な反応で様々な魔法を生成していくようなスーパーすぎるバンド、もう本当に死にそうになるくらい私のツボに刺さりまくる...泣。今作も前作ST (2018)と同様、サウンド・メロディー・世界観、アルバムの中に存在する魔法の数が本当にすごい。例えば1曲目のI Fix My Gaze。霧がかったシンセの電子音とクラリネットのまろやかな音色をミックスし、Lomaにしか描けないような未知の世界へリスナーを導いていく。そこには、エレクトロニカの世界とクラシックの世界の狭間に落ちていくような深い謎に包まれた怖い感覚がある。もうこの1曲目の時点ですごくLoma!笑。そこから展開されるOcotillo (M2)は、クリアで綺麗なギターフレーズを聴かせつつ、それらの聖なる魔法性を高めていくようなJonathan Meiburgのパワーをよく発動するナンバー。リードトラックのHalf Silences (M3)では、Lomaで特徴的な宗教的なダークネスをオルタネイティブロックとして強化させてたり。(この曲はMVも大好きすぎる)。他にも、東洋系の民族楽器としてのシンプルな魔法(Elliptical Days (M4))、心をかき乱すスリルを演出するピアノメロディーとしての魔法(Breaking Waves Like a Stone (M7))なども。サウンドそのものがとても洗練されてて美しいし、何よりEmily Crossの解放的な聖なる歌が本当に半端ない。魔法的な感情に溢れたメロディーを奏でるLomaの音楽ならでは喜びが本当に溢れてる。新譜リリースのアナウンスから超超超楽しみにしてたけど、今作もバッチリ最高だった。

今作で忘れられないほど強烈なインパクトを残してるのが、タイトルトラックのDon't Shy Away (M10)。こちらは今作の中で最もEmily Crossとしての思想が反映されてる曲だと思う。ホーリーなエモーション、宗教的なダークネス、それらに圧倒的なグラビティを付加して実現する究極的なリラクゼーション。音楽の魔法のリアリティを高めるために、繊細な音の一つ一つに魂を込めたような音楽。"遠慮しないで" という印象的なフレーズには、死に逝く人に寄り添うデス・ドゥーラのボランティア活動をしてるEmilyの祈りの意思が浮き彫りになっている。Lomaの渾身が注がれた今作屈指の大名曲、私がCross RecordやLomaのことが果てしなく大好きな理由がここにある、もう喉から手が出るほどその思いを欲していた。本当に大好きすぎてやばい。

前作ST (2018)との異なる点でいうと、今作はGiven a Sign (M5)のようなオルタネイティブロック系の楽曲が強いかなと思う。この曲だけでも本当に色んな魔法が込められてると思うし、アップテンポで勢いのあるロックとしてのかっこよさもあってめちゃめちゃいい。こういう曲はCross RecordにはないLoma独自のナンバーだと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Adrianne Lenker - "songs / instrumentals"

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鈍感でいることが不可能になる

 今まで出会ってきた音楽の中でも、素朴なフォークのテイストの音楽でここまでリスナーの感受性を拡張していくような多感なアーティストは他にいなかったと思う。「嬉しい」とか「悲しい」とかの単純な感情の次元では全く表せないような多次元的な感情。そしてその複雑で美しい感情を巧みに表現するテクニック。心躍る楽しそうな雰囲気もビターなテイストで描いたり(two reverse (M1))、安らぎの中にも僅かに痛みを生じさせたり(ingydar (M2))、それらのとても繊細な感情を微妙に時間変化させて流動させていったり(not a lot, just forever (M9))。普段の日常では感じることがない未体験な領域のフィーリングの瞬間が本当にたくさん存在していて、自分が血の通った生身の人間であることを認識させるような生々しい感覚の特別なリアリティがある。鈍感でいることが不可能になるくらい、本当にとつてもなくセンセーショナル。前作Abysskiss (2018)も本当に素晴らしかったけど、今作もとてもとても美しかった。

今作はリードトラックのanything (M3)が本当にやばすぎると思う。Adrianneの多次元的でこの上ないほどセンセーショナルな歌の魔法で、愛おしくてかけがえのない大切なフィーリングを呼び覚まし、そこに色鮮やかな輝きを宿していく。"I don't wanna talk about anything"、"I wanna kiss, kiss your eyes again"...、ただでさえAdrianneのセンセーショナルな歌のメロディーが神がかったよさなのに、リリックが死ぬほど刺さって涙がボロボロ零れる。この歌を聴くと、自分の感情や命がいかに豊かで素晴らしいものなのかを思い知らされる。なんて嬉しい作品なのだろう。

そして本作の場合、zombie girl (M8)のように、環境音楽を引用したアルバムのコンセプトも本当にたまらない。Adrianenが感じた自然の情景、芳醇な香り、それらのありったけの美しさをリスナーと共有してくれる。私的には、そういう世界の中でAdrianneが弾き語りをするという世界観の設定がもう本当に大好きすぎてやばい。ギター一本で無限の感情を創造してしまう彼女の存在感をもっと特別にしてる感じ。そういう点でinstrumentalsも本当に素晴らしかった。

Masterpiece (Big Thief) (2016)、Capacity (Big Thief) (2017)、Abyskiss (Adrianne Lenker) (2018)、U.F.O.F. (2019)、Two Hands (2019)、そしてsongs / instrumentals (2020)...傑作の連発マジですごい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Jónsi - "Shiver"

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"こんな今の時代でも生きててよかった"

 刺激的で鋭いサウンド、胸が張り詰めるような恐ろしい緊迫感、凄まじいダークネス...。そんなカオスな世界の中でも、生きてることが嬉しくてたまらなくなるような祝福を与えてくれる。世界がどれだけ残酷になっても、人間は人間の心を永遠に失わないんだって教えてくれる。初めて聴いたときには思わず号泣してしまった。私の中で世界最大の喜びと愛と希望と夢と天国を恵んでくれるSigur Rósの感動が、2020年以降の未来になってもずっと続くのだということを感じて、目ん玉の神経がぶち切れてしまいそうになるくらい泣いた。今の時代も捨てたものではないって、心の底から思えた。こんな今の時代でも生きててよかったって本当に思った。

今作は、今までのJónsiやSigur Rósが持っていたオーケストレーションシューゲイザーのネイティブなテクスチャが無くなり、コンピューターグラフィックスやVFXのようなテクノロジーによる表現様式に依存した作品。ソフトでフローラルな空気が充満していた前作Go Do (2010)からは考えられないくらいサウンドがメタリックで、自然的なものやアナログ的なものが全て滅亡したような未来の世界が繰り広げられてると思う。それでも、人間の心に触れるJónsiの命のメロディーが溢れてる。音響エレクトロニカのアプローチでJónsiのエモーションにもっと臨場感をプラスしたExhale (M1)、心奪われるイルミネーションの絶景を見せてくれるようなCannibal (M3)、デジタル処理の効果で祈りの思いをより大胆に強調するエレクトロニック教会音楽のSumarið sem aldrei kom (M5)...、どの曲も先進的でサイバネティックな感覚すら含まれてるけど、血が通った生々しい人間としての感覚、熱を伝える心臓の鼓動、心を満たす圧倒的な多幸感、絶対的な優しさ、従来のJónsiやSigur Rósに特徴的だった歌のエモーションは健在。というか、今作の未来的で非人間的な音楽性によって、それのJónsiの生々しいエモーションの存在感がもっと強烈になった感じがする。4曲目のWildeyeとか、動物的な質感が死んだ硬くて冷たいサウンドのエネルギーが恐ろしくて異常じみてるけど、そこにJónsiの生々しい歌声を加えて、感情や愛をもっと濃い存在にさせるようなコントラスト・魅せ方があったり。

極めつけは9曲目のSwill、、、今月私のぶっっっちぎりベストアルバムな今作におけるベストオブベストなトラック。先進的で未来的なエレクトロニカの世界でJónsiの愛を力強く確立するような曲。ロボティクス、仮想空間、人工知能...、自然的なものやアナログ的なものが全て滅亡してしまう時代で、身体がどれだけ機械的になり、人類がいくらサイボーグ化したとしても、人間は人間の感情をずっと維持し続ける。技術がどんどん進化して新しい時代になっていっても、新しい人間らしさが生まれるだけ。そこには絶望ではなく、胸がいっぱいになるようなワクワクする希望がある。そういうことを力強く象徴したJónsiのこの曲にはもう本当に打ちのめされてしまった。本当にボロボロになるまで泣いた。2020年忘れられない名作中の名作、本当に本当に素晴らしい。

Jónsiがまさかここまで前衛的なエレクトロニカをやるなんて思ってなかった。Salt Licorice (with Robyn) (M7)とかちょっと異色ポップナンバーすぎて未だに飲み込めてない...笑。それでも、各アルバムに絶対的な名曲を必ず用意するSigur Rós・Jónsiの伝統はそのまま。2020年になっても心から愛してるJónsiの音楽と出会えて本当に感無量だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

プレイリスト Spotify

2020年10月ベストアルバム(温) on Spotify

プレイリスト Apple Music↓

温の「2020年10月ベストアルバム(温)」をApple Musicで

 

★その他・よかったもの

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Auteche - "SIGN / PLUS"

Future Islands - "As Long As You Are"

Goldmund - "The Time It Takes"

Jeff Tweedy - "Love Is The King"

Katie Melua - "Album No. 8"

Kevin Morby - "Sundowners"

Mary Lattimore - "Silver Ladders"

METS - "Atlas Vending"

Oneohtrix Point Never - "Magic Oneohtrix Point Never"

Slow Pulp - "Moveys"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

来月11月はEmily A. Spragueがめちゃ強そう(あとダープロの5EPs) 

 

 

「2020年9月ベストアルバムTOP10」感想

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今月はセンチメンタルな曲を摂取しすぎたせいでメンタルバランスが崩れてめちゃ死にそうになってた、、、笑

そういった点で、IDLESやOSeesのようなハードなロックに助けられたな 笑

 

今月の最最最高だったアルバム10枚、感想をランキングで

(全部1位です) #ランキングとは

全然10枚に収まらなかったから漏れたやつは後で絶対フォローする(T_T)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. The Flaming Lips - "American Head"

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カラフルにロマンチックに染め上げるサイケポップのバラード

 ピアノを強調したようなバラードのスタイルをメインに、テキサス系カントリーの風味(Kacey Musgraves)のメロウなテイストもプラス、そしてそこに鮮やかな花を満開に咲かせるようなThe Flamings Lipsの派手やかなサイケポップを応用させるという...。もう間違いなく最高だと思う 笑。極上のゆらゆらワールドへ導いてくれるThe Flaming Lipsのサイケポップの素晴らしさはもちろん、ロマンチックで大人びたバラードの景色をよりカラフルにドラマチックに染め上げてて本当に流石だと思う。1曲目のWill You Return / When You Come Downからもう傑作、The Soft Bulletin (1999)のときからお馴染みのオーケストレーションを取り入れたような大規模のサイケポップバラード。ゆらゆらしててキラキラしててメロメロが止まらなくなるめちゃめちゃ素敵なやつ。そんな感じで1曲目のスタートから感動がでかすぎるから思わずびびってしてしまう 笑。そこから一貫してサイケポップバラードのやつが展開されるわけだけど、Kacey Musgravesをフィーチャリングした今作一押しの一つであるWatching the Lightbugs Glow (M2)やFlowers of Neptune 6 (M3)もまた素晴らしい。夏の情景を映し出すようなカントリーの世界観の中でサイケデリアを濃いめに調整するようなテクニック。ロマンチックな大人のサイケポップバラードとしてのよさだけでなく、サイケ要素によってカントリー系の味わいの深みをよりトロトロにアレンジしてるのが本当に上手だと思う。中でもWatching the Lightbugs Glowは楽曲中のロマンスを高めまくるKacey Musgravesの上品さもかなり効いてるし。

そんなアルバム前半で既にお腹いっぱいになれる最高の大作だと思うけど、私的には7曲目のBrother Eye以降におけるアルバム後半のプロットがものすごくやばいと思う。Brother Eyeで6曲目までのトーンを少し暗めに変えて、8曲目You n Me Sellin' Weedで本作の特徴的な要素であるカントリーの音楽性をサンプリング的に取り入れるユニークさなどを発揮しつつ、9曲目のMother Please Don't Be Sadではストリングスのバッキングをより大胆に実装したゴージャスな感動大作ソングを繰り出していく。曲調を徐々に変化させていく流れがおもしろくてよくできてるし、M9のそれに関してはYoshimi Battles The Pink Robots (2002)のDo You Realize?みたいなライブ感も彷彿させるところもあってグッとくる。ここの段階でもうめちゃ満足できるのに、そこから10曲目When We Die When We're Highでよりダークでエクスペリメンタルなサイケロックのやつに転移するという...。2010年代っ子である私はThe Terrror (2013)も本当にお気に入りでよく聴いているのだけど、Yoshimi~だけでなくTerrorの作風まで網羅してしまうというこの充実っぷり!笑。心満たされるような感動系からダーク系のゾクゾク感まで内包されてて本当に素晴らしいと思う。

そんな風に10曲目まででさえこんなに強トラックが取り揃えてあるのに、、、その後にラスボスみたいな12曲目のGod and the Policemanが待ち構えているのがね、、、笑。今までのThe Flaming Lipsでは味わったことがないくらい強力な神秘性・幻想性があるナンバー。それまでのサイケポップバラードの印象がぶっ飛んでしまうくらいのシリアスな重たさがあって、まるでアルバムの最後の最後で全身全霊の思いをぶつけるような強い精神が感じられる。そこには繊細なところまで気を配ったThe Flaming Lips渾身のサイケ技術もあるし、Kacey Musgravesのボーカルもさらに聖なる存在感を放ってたりで、本当にめちゃめちゃ感動する。歌詞、MV、それらのメッセージ性もすごくツボ。

The Flaming Lipsって20作も作品を出してるとは知らなかった。他のアルバム聴いてみたら直近だとAt War With the Mystics (2006)とかものすごく最高だった。ディスクユニオンですぐさま買った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Devi McCallion & Katie Dey - "Magic Fire Brain"

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混沌の世界の中で築き上げる自分だけのファンタジー

 情報社会を中心に生きてきたようなデジタルネイティブ的作家性が強いエレクトロニカポップ、音圧の高いトランス・EDM系のサウンドを濃厚なドリームポップの音楽として昇華(Circumstances (M6))したり、今までに出会ったことのないカオスな発展性をたくさん含んでるところにめちゃめちゃゾクゾクする。まずカオスという点だと、耳の中でいきなり大災害が発生するみたいに攻撃的すぎるポストハードコア(Plant Matter (M1))、低音を思い切り強調したトラップミュージック属性のエクスペリメンタルポップ(Plastic (M2))、怒りや憎しみの暗黒な感情がメラメラ燃え盛るように恐ろしいハードコアテクノ(Milk (M8))などがそう。特にハードコア系の音楽性は本当に過激すぎて危なさが度を越してると思う 笑。それなのに、それらの間にMirror (M3)やCircumstances (M6)など、天に昇るほど解放的で眩しいエモーションが溢れたポップのナンバーを用意してたり。もう本当にハチャメチャだと思う。そしてこのMirror (M3)やCircumstances (M6)といったポップスの楽曲群が本当に最高でやばい...笑。Mirrorはシンセポップのカラフルな世界観の中でセンチメンタルなメロディーの愛おしさが本当によく際立ってるし、Circumstancesは目まぐるしく暴走していくようなテンポ感を活用したエモーションの高密度化が本当に素晴らしい。ハチャメチャなアルバムで、ハチャメチャに振り回されながら、ハチャメチャに感動するという。新世代の作家性がよく表れてる傑作のアルバムだと思う。

私が今作で最も心打たれたところは、ハードコアによるストレスの発散が、心を病ませる現代の混沌とした情報社会に対してのものとして感じられたところ。そして、それらのありったけの感情の解放によって、自分だけのファンタジーを築き上げ、天国に昇るような多幸感を獲得するという意図を感じたところ。アルバムの展開の仕方が本当に大好きでたまらない。個人的に、今作のEDM・ポストハードコア系の音楽性のところには、ネットゲームやアニメなどのサブカルチャーがよく発達した世界観の現代性をよく感じる。そういった現代世界の主なイメージって、私だとデジタル化・IT・インターネットとかがモリモリになった世界のイメージなのだけど、情報過多の疲れとか、物事がどんどん複雑に分かりづらくなっていく気持ち悪さとか、現代ならではの苦しみ・ストレスをよく連想してしまう。Devi McCallion & Katie Deyの音楽は、そういった世界観の中で生じている激しい怒りのハードコアだということ。私はそういうイメージを持ったからこそ、激しい怒りをぶつけた後に訪れる、解放的で心満たされるフィーリングを目指した楽曲(MirrorやCircumstancesなど)に対して、本当に感動しまくった。私自身、従来よりネットを使うことが多くなってるし、情報にまどわされることも多くなって心がどんどん不健康になってたわけだけど、ハードコアによるストレスの発散も、その後に訪れる心満たされる解放感も、音楽の持つ世界観に対して全部にめっちゃ共感できる。ほんと、心を揺さぶりまくるとても刺激的な音楽体験。

Devi McCallion & Katie Dey、新世代のカオスなアーティストという点だと、別次元の未来的ポストパンクを提示したCrack Cloudとも似てるなと思った。どちらも、新時代における進化の過程で変異を遂げている最中の化け物な感じ 笑。(めちゃめちゃ褒めてます...!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Osees - "Protean Threat"

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ツインドラムのレパートリーがやばい

 ドラムの存在感がよく強調されたローファイ・ガレージロックのおちゃめなアンサンブル、、、とにかく楽しすぎてやばい..!!笑。まずそもそもとして、King Gizzard & The Lizard WizardとかGodspeed You! Black Emperorとか、ツインドラムの曲の充実感やパフォーマンス性ってもう間違いないのかなって思う 笑。Scramble Suit II (M1)の猛スピードで刻みまくるビート、Dreary Nonsense (M2)の小動物みたいなかわいいロールがあるトコトコ感、Mizmuth (M8)の不規則的にアクセントがずれたりするテクニカル性、どの曲もドラムのダブルな存在感がより前面に出てると思うのだけど、楽曲のノリとか勢いがもっと強化されまくってて絶えず楽しい...そしてめちゃめちゃかっこいい...笑。そんなドラムの特異性が目立つ今作の中でも、If I Had My Way (M9)のグルーヴとか特徴的だと思う。ベース込みの総合的なリズムワークにモダンロック・ジャズのようなオシャレなステップの動きが含まれてるやつ。必然的にタッチが多くなるツインドラムならではの効果によって、オシャレなリズムの動きがより大胆に派手になってる感じが本当におもしろいなと思う。ドラムが連続的に繰り出される気持ちよさのところも〇。Gong of Catastrophe (M11)のドラムフレーズとかも本当に最高すぎる。こちらはOseesらしいビターな味わいのある暗めのロック。ドラムのフレーズだけを強調するように曲の密度が調整されてて、Oseesの最高に美味しいツインドラムをたくさん堪能できる仕様なってるのが私得すぎる...笑。Josh Homme(Queens of the Stone Age)のロックンロール・ブルース感っぽいところもあって、ギターとかとてもメロディックなのも最高。そして私が今作でウルトラスーパー1番大好きなドラムが!5曲目のTerminal Jape...!これはもう本当にやばい 笑。パフォーマンス性が鬼高いOseesのツインドラム連打ビート。ガレージロックとしての攻撃力も全開でアドレナリンがドバドバに出まくる。あまりに楽しすぎてマジで笑いが止まらない。こういう曲を期待してたので、Oseesの今作は私にとってもう満点の作品でした 笑。

ドラム要素なしに楽曲的に見てもやっぱり最高...。例えば11曲目のCanopnr '74、私的に今作のベストトラックだと思う。Osees(Thee Oh Sees, Oh Sees)ってアルバム何個もリリースしてる(調べたら22作品だった)くらいには超メロディーメイカーのバンドだと思うのだけど、この曲はそのソングライティングのスキルがめちゃめちゃ発揮されてる感じ。Oseesのロックのクールな曲調も相変わらずかっこよすぎるし、自分も歌いたくなってしまうような耳に残る格別のフレーズ(はっはっはっは)があったり。曲構成のバランスとかも上手。その後にテンション高まるアンサンブルで締めくくるラストのPersuaders Up! (M12)もバッチリ最高 笑。ギターのブラッシングワウワウとドラムのドコドコのアンサンブル。この人たち本当に愉快で楽しい 笑。

今作を聴いて、2019年のフジロックのキンギザの楽しさを思い出した。Oseesもライブめちゃめちゃ楽しそう 笑。曲を予習するのは絶望的だけど...。(今まで2~3作品しか聴いたことない)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Deradoorian - "Find the Sun"

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死の世界にアクセスするインディーロック

 心霊的で宗教的で瞑想的。Cross Recordと同じようなスピリチュアルな意思が音楽に込められまくってる。メロディーが神秘的でどこまでも引き込まれまくるし、クラウトロックやポストパンクのアンダーグラウンド感に似たダークネスのパワーが超超超かっこよくて大好き。Cross Recordだけでなく、最近だとKatya YonderのMultiply Intentions(←大好きすぎてやばい)とか、スピリチュアル思想の音楽作品ってもうめちゃんこ大量にあると思うけど、その中でもDeradoorianの今作は、なんといってもスタイルが超シンプル...!!エレクトロニカ的表現の装飾が一切ない、正統派インディーロックのみで創造するスピリチュアル性がめちゃめちゃ特殊で本当に素晴らしいと思う。例えば、Red Den (M1)やCorsican Shores (M2)など、人影のないホールのような静寂に包まれた世界で演奏される音楽。その静けさの中でギターやボーカルの存在がゴースト的に浮き彫りになるわけだけど、ミステリアスな性質のある魔法的なニュアンスもあるために、メロディーがリスナーのマインドに対して深く食い込みまくる特殊性があるのがやばい。シンプルなバンドスタイルだからこそ成せるメロディーの神秘性の強調、そしてありのままに剝き出しになったダークネスの演出。それは、GrouperのRuins (2014)とかと同じ、音を取り除く引き算の発想によるインパクトの与え方だと思う。飾られていないメロディー一つで勝負できてるところがかなりハイセンスだと思うし、純粋に正統派インディーロックが大好きというのもあるので、めちゃめちゃツボに刺さった。

ありのままのダークネスの演出というところだと、私は3曲目のSaturnine Nightとか大好きすぎる。気迫を無限に高め続けていくような儀式的音楽。もともとDeradoorianの音楽は心霊的で宗教的な世界観が濃いと思うけど、この曲は特に心霊的なダークネスのレベルが高くて、まるで死の世界にアクセスするような恐ろしさがある。シンプルでスタンダードなインディーロックのスタイルでそういう恐ろしさを表現できるって本当に最高...笑。Dirty Projectorsの頃からかっこよかったけど、今作のこのダークさは特にかっこいいと思う。他にも、ラストの展開でバリバリに教会音楽に発展するMonk's Robes (M4)とかもスピリチュアルなダークオーラがあってめちゃ最高だった。

私が今まで出会ってきたスピリチュアルな音楽作品は、ほとんどエレクトロニカ的表現を借りてたかな?と思う。やっぱり、Owen Pallettのような厳格なオーケストラのシンフォニー技術とかがない限り、スピリチュアルな音楽って多分エレクトロニカの表現を使いたくなるよね。それをせずしっかりよさを確立したDeradoorianさん本当に流石だな思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Shabason, Krgovich & Harris - "Philadelphia (feat. Joseph Shabason, Chris Harris & Nicholas Krgovich)"

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"ヒーリングプラネタリウム"

 まるでPat Metheny Groupのジャズ・フュージョンのような心臓がぎゅっと掴まれるほど綺麗な景色を見せてくれるポストロックの作品。音が果てしなく流れていくようなアンビエント特性の安らぎ、歌うことの喜びで満たされているようなとても自由なメロディー、臨場感のある立体的なサウンドの高級感、滑らかな質感、澄み切った透明感。ものすっっっごく美しい。現実を圧倒的に撃破してしまうような幻想へのトリップ性が本当に半端ないと思う。例えば3曲目のI Don't See The Moon。現代の音響技術を可能な限り駆使して実現するような究極的に癒し的なドリーミーワールドのやつ。鳥の鳴き声をサンプリング利用した自然描写とか最強すぎるのに、そこにピアノやトランペットの歌を重ねて音楽の世界をもっともっと豊かに広げていく。即興的なピアノのメロディーはまるで命が宿ってるようにソウルフルでやばすぎるし、トランペットに関してはBon IverのST (2011)みたいに非現実的なニュアンスの存在感があったり。ギターソロもSandro Perriみたいに超繊細でうますぎる。

ラストのOpen Beauty (M8)も超やばい。自然の恵みを享受するような天然の癒しに満ちたワールド、空を飛んでいくようなふわふわのシンセのメロディー、そしてピアノのバッキングに込められてるありったけの愛情。まるで夕日のように美しく心を温めてくる、本当にヒーリングミュージックとして完璧だと思う。あとフルートにDestroyerのKaputt (2011)のような洗練された輝きを感じるところにもめちゃめちゃ惹かれた。

そして1番美しすぎて死にそうになったのが、4曲目のFriday Afternoon。音響効果をダイナミックに使用したヒーリングプラネタリウムのような世界観があると思うのだけど、本当に癒されまくってやばいことになる。夜空の星々が輝くような情景の中で、メランコリックな歌のコーラスがこの上ないほど合いまくる。そして3:30あたりから出てくるピアノが死にそうになるほど美しい。夜空の背景に溶け込んでいくようなグラデーションを持っているところが本当に素晴らしすぎると思う。このピアノセンス、本当にやばいから誰にも真似できない気がする。

今作を聴いたらオーディオオタクに目覚めそうになってしまった。これを聴いてると、自宅の環境では満足できず、お金をかけてオーディオをもっとグレードアップしたくなってくる。今までオーディオ環境とか別に気にしてなかったけど、こんなに欲望が沸いてきたのは初めてだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Sault - "Untitled (Rise)"

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自分たちのこと愛し、祈り続ける

 3ヶ月前にリリースされた前作Untitled (Black Is)の続編的作品、前作も思いがボリューミーに込められまくったBLMムーヴメント音楽の大傑作だったのに、「自分たちの民族性に対するリスペクトや愛はまだまだこんなものではない」と言わんばかりに今作も超傑作...。思わず泣きそうになってしまう。前作(Black Is)では、虐げられる自分たちの種族に対して、「それでも自分たちを愛することを止めない」という思いを強く提示したようなUs、Eternal Life (Cover me with love)、Only Synth in Churchがめちゃくちゃ特徴的だったと思う。今作(Rise)では、そういった前作の励ましや祈りのテーマ性に、さらにオーケストラ系の華々しさやパレード系の祝福的なニュアンスをプラスしたような派手やかさがあるアルバムになってると思う。代表的なところだと、2曲目のFearless。従来のSaultのカラフルなR&B・ソウルの中で、ストリングスの豪快さもパーカッシブなダンサブル性も両方同時に全力で炸裂してる。Riseという副題らしいSaultの祈り・祝福の思いが注がれまくってて最高だと思う。そして、4曲目のI Just Want to Dance。こちらはヒップホップタイプのグルーヴ感があるナンバーだと思うのだけど、シンセのオーロラを織り交ぜたストリングスの流れ星みたいなメロディーが本当にロマンチック。心満たされるようなときめきを抱きながら踊るようなシーンを描き出してて本当に素晴らしいと思う。他にも、Saultならではの怪しげな美しさを秘めつつ、ギターのファンキーなグルーヴやエキゾチックなパーカッションのかっこよさを主張したStrong (M1)とかもとてもよかった。

個人的に今作(Rise)の素晴らしすぎてたまらないところは、前作(Black Is)に込めた祈りを引き継ぎ、さらに延長し、祝福のテーマも追加してもっと拡張したというところ。それをビシビシ感じるのが本作6曲目Son Shine。 前作(Black Is)のEternal Lifeのようなコンテンポラリー的エレクトロニックの美しさが大好きでめちゃツボだったのだけど、Son Shineはそれと同系列の作風の曲。エモーションを余すことなく解き放つソウルミュージックならではの幸せを、カラフルに、グルーヴィーに、ドリーミーに、ロマンチックに表現してる感じが本当に最高すぎてやばい。前作(Black Is)の忘れられないEternal Lifeの印象も込みで、Saultというアーティストが、自分たちの音楽を深く深く愛していることが心から伝わってくる。誰にも負けず祈り続けるような強い信念、自分たちのこと愛する熱い思い、もう感動しないなんてありえない...。本当にむちゃくちゃ素晴らしいと思う。前作(Black Is)とセットで大傑作。どちらもめっちゃ大好き。

ストリングスもそうだけど、ストリート系ヒップホップなFree (M9)、ほろ苦い味わいが最高なUncomfortable (M11)、リラックス効果が抜群なジャズのLittle Boy (M15)など、歌のメロディーもめちゃめちゃよかった。10月はもうRough Tradeが年間ベストアルバムを発表する頃だし、そろそろそういう時期に入っていくと思うけど、私は年間ベストアルバムにSaultの(Black Is)と(Rise)をダブルランクインさせたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Fenne Lily - "BLEACH"

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田舎のおばあちゃん家みたいな馴染みやすさ

 Fenne Lilyの今作は、デビュー作のOn Hold (2018)のときからの甘くて儚いドリーミーなフォークをメインにしつつ、ギターリフも取り入れたメロディックなフレーズがある。そしてシューゲイザー的轟音サウンドの最高の気持ちよさもある。愛おしいピュアネスもある、哀愁もある、メロウな香ばしさもある...。もう最高じゃない理由が見つからない...笑。本当にめちゃめちゃ素敵な作品だと思う。Phoebe Bridgersのように天使みたいなメロディーライン、Lucy Ducusのような上品でメロウな声質、並びにLaura Marlingのようなエモさ・歌唱スキル、そしてSoccer Mommyのようにキラキラ輝くポップネス、Land Of Talkのような陽だまりの温かさなど、多くのよさが含まれてる感じがする。まるでFenne Lily一人の中にインディー女子SSW↑のネットワークが構築されてるような多様性のやばさがある。そんなにも最高な作品なのに、メロウな哀愁を引き立てるクラシカルなバイオリン族楽器など、オリジナリティ要素も本当に素晴らしい。具体的にはElliott (M5)とBirthday (M6)の二曲。Elliottはフォークテイストの素朴な曲調の中で、バイオリンによる大人びた雰囲気がよく演出されてるけど、Fenne Lilyの甘いメロディーに含まれてあるピュアネスも強力。この大人びた雰囲気とピュアネスのバランス、まるで田舎のおばあちゃん家みたいな馴染みやすさがあってやばい。思いやりのフィーリングが溢れてると思うけど、感覚的には、お母さんが子供に絵本を読み聞かせるようなものを連想する。半端ないほどツボすぎる。そしてBirthday (M6)も超傑作。こちらはバイオリンが楽曲の盛り上がり部分で感動的な華やかさを生み出してるタイプの曲。センチメンタルになりすぎてしまう今の季節に抜群にちょうどいいポジティブさが本当にたまらない。今の私にはこういうやつが必要なんです...!!笑。他にも、大胆にロックの方向性にターンしたFenne LilyのネクストレベルソングのAlapathy (M2)やSolipsism (M8)などももちろん最高。Fenne Lilyの甘くて儚いメロディーセンスでロックするという間違いなしの安定感...笑。MVもめちゃめちゃ大好きだし、ライブもものすごく観たくなる。

1曲目から最高の曲の連続で抜け目がなさすぎるアルバムだと思うのだけど、私が今作で1番大好きで気絶しそうになった曲が、間奏パートの'98 (M10)。誰か分からない子どもの声をサンプリングした愛おしさのやばすぎるアコースティックのインスト。1分程度しかない短い曲だけど、この曲でFenne Lilyが考えていること、思っていることをまるまる察することができた。「そういうものを深く愛しているのね、そういう思いを表現したいのね。」......私もそう、"それ"が本当に大好き。。。そういう感情を心から愛しまくってる。。。この'98を聴いて、Fenne Lilyに対する信頼度・好感度が限界突破した 笑。Lilyさん好きすぎて死ねる、、、というかもう死にます、、、(ダメだ)(生きろ)

ジャケットの雰囲気など、今作は聴く前からもう絶対最高のアルバムだって予想してた。実際本当に最高、特にM2からM6までの流れとかが私的に超やばかった。他にも、後半で転調するドリームポップのI Used To Hate My Body But Now I Just Hate You (M9)とかもめちゃよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Fleet Foxes - "Shore"

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どんな方向に転んでも全部最高でウケる

 Fleet Foxesといえば、大地を踏みしめるように力強く、自然豊かで広大なワールドを描き出すようなカントリー。聴くと心が晴れ晴れしくなるような開放感、神秘的で幻想的なものさえ生み出してしまうような美しい情景描写、もうこれ以上に大好きなカントリーありません(T_T)って思うくらいFleet Foxesのカントリーがウルトラスーパー大好きなのだけど、今作のように作風が軽やかなポップのやつにシフトされてもよさが不変すぎてた 笑。例えば、今までにはなかったような女性ボーカルのカットアップが導入されてるJara (M4)とか。Fleet Foxes元来の豊かなカントリーでありつつ、それとは一味違うコンテンポラリーなアレンジでヘヴンリーなポップ感が創造されてるような曲。新しい発想の試みだと思うけど、Fleet Foxesの音楽性ととても素敵な相性でめちゃめちゃ大成功してると思う。あとは6曲目のA Long Way Past The Pastもすごくポップ。とてつもなく最高に気持ちいいFleet Foxesのボーカルやコーラスをより目立たせるような曲構成とミキシング。Fleet Foxesの歌が大活躍しまくっててこれもまた素晴らしい...笑。やっぱりFleet Foxesの歌要素はどんな風に変化しても安定して最高なんだって確信付いた。9曲目のYoung Man's Gameのコーラスパートでいきなり幼げな子ども達が登場してくるハピネスの演出も最高 笑。1曲目のWading In Waist-High Waterからそうだけど、今作における女性や子どもたちとのコラボ要素はとてもよかったと思う。

ポップス的な新しい魅力がある今作、その中で私が最も大好きなベストソングは3曲。ピアノが神秘的すぎて鳥肌が立ちまくるようなQuiet Air / Gioia (M11)と、冒険へ旅立つ船出のようなエモーショナルさがあるGoing-to-the-Sun Road (M12)と、金管が楽しすぎてニヤニヤが止まらなくなるCradling Mother, Cradling Woman (M14)。Going-to-the-Sun Road (M12)は、Fleet Foxesのカントリーならではのグッとくる感動的なパッセージ・展開を含んでる曲で「待ってました!!泣」ってなった 笑。その2曲後に来るCradling Mother, Cradling Woman (M14)も本当にやばい。ドラムが回転していくような激しい渦があるリズムの中で、祝祭的な金管パートが奏でられまくる感じの曲。神秘性も幻想性も高いのに、喜びのフィーリングで満たされたような美しい歓喜も込められているところに自分の中のエモさが止まらなくなる。もう本当に傑作ソングだと思う。このM12とM14、スピーディーに流れていくような果てしない心地よさ・かっこよさがあるところもめちゃハマる。

今作はギターも最高だったな...。A Long Way Past The Past (M6)とか、高速のアルペジオで神秘的な模様を描き出すようなテクニックがあったりして芸術的だと思った。1番好きだったギターのフレーズはMaestranza (M8)あたり。ザラザラしたテクスチャなのにドリーミーなサウンドスケープがある感じが本当にお見事だと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Lomelda - "Hannah"

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秋との相性が犯罪レベル

 Lomeldaの本作は、日々を生きていく中で時折感じる感傷的で情緒的な瞬間に溢れてる。Gregory And The Hawkのように淡く霞んだアコースティックの色褪せた深み、憂いに沈んだ響きを持ったメロディー。その音楽の感情は、何かが恋しくて寂しさがマックスになっているような心理状態に似てると思う。憧れを強く抱いたり、求めてるものに手が届かない切なさに心を痛めたり。それらの感傷的で情緒的なフィーリングを、フォークの愛おしい響きにのせて奏でるようなインディーロック系の作品。心がぐしゃぐしゃにかき乱されたり、死にたくなってしまうようなつらさが引き出されたり、でも同時に傷ついた心を慰めるようにして癒してくれたり。どう考えても素晴らしいと思う。それはまるで、人生の中で最もセンチメンタルな気分になれる瞬間、心に残りまくるような特別でとっておきな体験。似た系統の作品だと、自身の孤独にまつわる心情について忠実に描き出したFlorist (Emily A. Sprague)のEmily Alone (2019)とかがあると思うけど、個人的にはセンシビリティの高いエレキギター(Wonder (M4))や、記憶に焼き付くインパクトのレベルでいうとJay SomのEverybody Works (2017)にも通じるところがある。Jay Somのそれは私が死にほど愛してる人生TOP5レベルのベストアルバムなのだけど、Lomeldaの今作におけるリードトラックのHannah Sun (M2)を聴いたときは、それと同一の感覚を得た。感傷的で情緒的な瞬間の感動をギュッと噛みしめるような曲。まるで、時を止めてこの瞬間をずっと味わっていたいと思うほど愛おしいフィーリング。ありえないほど美しい。Twitterで見た「泣きそうになった」「泣いた」のコメントがきっかけで即座に今作をチェックしたのだけど、このHannah Sunって曲は本当に泣けると思う。私にとって今季超絶必須のキラートラック。他にも、チェロの温かい音色がLomeldaと相性がよすぎるPolyurethane (M5)や、身体に気持ちよく伝わる音楽のフローがあるTommy Dread (M13)なども本当にめちゃめちゃ最高だった。

私的に今作が本当に犯罪レベルで反則すぎるなと思ったところは、今作のリリース時期が9月という秋のシーズンだったいうところ。。。今作の感傷的で情緒的な音楽性は、ウルトラスーパーずびずばめっちゃんこハイパー秋とぴったりマッチしてると思う。もうほんと、秋という季節のためだけに用意されたのではないかと錯覚を起こすくらい。具体的にいうと、フォークテイストの音像的にオーガニックな香りが漂う暖色のカラーが感じられるところや、憂いに沈んでいるメロディーが少し死の感覚に近づいているような印象を与えるところ。それは、夏のエネルギーが消滅している今の季節の感覚そのもの。気候、香り、情緒、風情、全身で感じる全ての秋の要素がLomeldaの感傷的で情緒的な音楽性に作用するという...。そんなの反則級に美しくなるに決まってる、、、もうダメです、ずるいです、、、笑。この季節の効果によって、音源から得られる情緒的な瞬間の感動がもっともっと巨大なものになった。

私は、昔聴いてた音楽を聴き返すと当時の思い出が蘇る現象のやつをこの上なく愛している。2020年の秋はLomeldaの今作によって完全に保存されたので、数年後に2020年の秋のメモリーをロードするときは絶対にLomeldaの音楽を使う 笑。だから、来月も再来月もめちゃくちゃに聴きまくりたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Sufjan Stevens - "The Ascension"

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ニューエイジの魔力を聖なる思いにぶつける

 記憶の奥深くに触れるような究極的なメンタルタイムトラベルを実現してしまったCarrie & Lowell (2015)、愛の感情と真摯に向き合って完成された『君の名前で僕を呼んで』のMystery of Love、Visions of Gideon (2017)...。Sufjan Stevensというアーティストは、人間の心や感情のことを深く愛している人物の一人だと思う。私にとってSufjan Stevensが永久的にベストアーティストであるのは、彼の音源からそういった人間の心や感情に対しての聖なる思いを感じられるから。そんな彼の新作は、Aporia (2020)の制作を経て手に入れた宇宙を創出するようなニューエイジの魔法力を、命を削るように全身全霊でその聖なる思いにぶつけたような作品だと思う。フロアを振動させるほどの燃えるようなエネルギーが含まれてるMake Me an Offer I Cannot Refuse (M1)、音を粉々に破壊するようなFKA Twigs(Arca)技術が発揮されたGilgamesh (M10)、宇宙のような無限の世界の中で漂流していく冒険性があるSugar (M13)、絶望や悲しみも愛してくれるスフィアンの思いがドリーミーに表れたようなThe Ascension (M14)、そして集大成的クラマックスの超大作なAmerica (M15)...、音の爆発力、臨場感の拡張、大規模なステージで演奏するような白熱のライブ感、あまりにも生々しい躍動。壮絶なほど感動する。インディーフォークからニューエイジまで、ここ数年でSufjan Stevensが生み出してきた作品群が結集されてるというか、点と点が一つに繋がるように生まれた傑作の傑作だと思う。

まずは1曲目のMake Me an Offer I Cannot Refuse。今作における私の1番のお気に入り、本当に死ぬほど好きな曲。コーラスが残響の中で共鳴し合い、この上ないほど神秘的な反応を起こしまくる。音響的な迫力とダンスミュージックなビートを組み合わせ、Sufjan Stevensの聖なるメロディーのインパクトを信じられないほど絶大に高める感じ。生命力がみなぎるような美しさが本当にやばくて、聴くと泣きすぎて吐きそうになる。5拍子によるカオスのエネルギーを見事に応用したあのI Want To Be Wellより何倍も情熱的だと思う。今年のベストオブベストすぎるナンバー。

タイトルトラックのThe Ascensionも本当に本当に素晴らしい。こちらは、リア王のコーディリアが引用された心打たれまくる曲。Carrie & LowellやVisions of Gideonのような夢想的で美しいサウンドに包まれる。残念ながら、人生は絶望的だと思う。生まれたその瞬間から理想は打ち砕かれ、理不尽な暴力を受け、大切なものは粉々に破壊される。喜びの裏には必ず悲しみが潜んでいて、無垢で純粋な心が負った傷は一生、二度と治らない。それでも、感情が存在することは美しいと思う。死にたいと思う中でも、命はメラメラと燃えていて、ずっとずっと美しいと思う。The Ascensionを聴くと、そんな風に、悲しみの感情を持っていることがいかに美しいことなのかを思い知らされる。Sufjan Stevensの音楽によって得られるその感覚を本当に心の底から愛してる。...ごめんなさい、「何言ってんだコイツ」と思ってしまったかもしれないけど、感傷的な気分に浸るとポエミーモードになってしまう気持ちは分かってほしい...笑。

今作は、リードトラックのVideo Tape (M3)など、今まででは考えられないほどメインストリームのポップの方向に舵を切った異色な作風だったと思う。それでも!私は!大好きです!!笑。この感じ、例えるなら「初期の頃も大好きだけど、Mylo Xylotoみたいに思い切りポップに振り切ったやつも大好き」みたいなColdplayの感覚に似てる気がする。中でも今作は音像の豊かさに驚いたけど、まるでBon Iverのようなシンパシーの伝達技術も感じた。ライブ絶対最高だと思うし、もう本当にいい加減日本に来てほしい(怒)(マジで死ぬまでには絶対1回観たい、、、)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

↓ プレイリスト🍎

温の「2020年9月ベストアルバム(温)」をApple Musicで

↓ Devi McCallion & Katie Dey - "Magic Fire Brain" の音源

https://blacksquares.bandcamp.com/album/magic-fire-brain

 

 

 

その他・とてもよかったもの

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Avalon Emerson - "DJ-Kicks (Avalon Emerson) [DJ Mix]"

Bill Callahan - "Gold Record"

Blue Hawaii - "Under 1 House - EP"

Freak Heat Waves - "Zap the Planet"

IDLES - "Ultra Mono"

Michael Rother - "Dreaming"

Sad13 - "Haunted Painting"

Seth Bogart - "Men on the Verge of Nothing"

Sylvan Esso - "Free Love"

Thurston Moore - "By The Fire"

Zora Jones - "Ten Billion Angels"

 

 

 

★9月3週目リリース作品の感想・ランキング★

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「2020年8月ベストアルバムTOP10」感想

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今月のベストアルバムTOP10の厳選はとても困難だった、、、ジャンル的にいうとインディーフォーク系が多かったかもしれない。あと夏のしんどさを弱化してくれる水ジャケが強かった 笑。

2020年8月リリースの新譜、スーパー最高だった10枚の感想をランキングで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. Disclosure - "ENERGEY"

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カーニバルのレベルまでダンスフロアを発展

 Daft PunkThe Chemical Brothers、それらの偉大なアーティストに継ぐ次世代のダンスシーンを提示してしまったようなやばい兄弟デュオ、今作はダンスフロアに収まらず、もっと人類のバイタリティを沸き起こしていくようなアフリカンミュージック系のルーツも引用し、ダンスミュージックとしての躍動を地球規模で伝達させるような壮大な作風のやつ!うおーー!(歓喜)。『ENERGY』というアルバムタイトル、スケールの巨大な大陸のジャケット、そして世界を震撼させた1stアルバムのときと同じ手ごたえを想像させるようなフェイスマスクのアイコン...!リリース前から大作のオーラをビシビシ放っていたと思うけど、その期待を裏切らないような完成度レベルだと思う。

まずは単純に曲のクオリティ。1曲目のWatch Your Step (M1)では、跳ねるグルーヴが特徴的で最高にダンサブルなやつだけど、テンションの高さが0の状態でも否応なく身体が反応してしまうほどダンサブルなのが本当にすごい 笑。Disclosure特有のハイなサウンド感を取り入れつつ、コテコテになりすぎような丁寧な調整で安定してるのも本当に上手だと思う。2曲目Lavenderからは、クラブミュージックとしてのクールさを保ちながらも徐々にバイブスを上げていく...。私の場合、もうこの時点でかっこよすぎ&楽しすぎでニコニコが止まらなくなってた 笑。さらに3曲目My Highでは、Slowthaiのパワーも借りてさらにリスナーを熱狂させまくっていく。どんどん攻めの態勢にチェンジしていくのだけど、それでも音の詰め方とかはとても綺麗だったり、リスナーの盛り上げ方みたいなのがすごく計算されてて本当に丁寧だと思う。そういう丁寧さという点だと、Kehlaniをボーカルに起用したBirthday (M10)も本当にめちゃめちゃ最高。Kehlaniそのものが所持してる おしとやかさみたいなのに、ぽわぽわシンセのかわいさまで応用させてしまうというセンス。クラブミュージックとしてのダンス性だけでなく、音の使い方も本当に素晴らしいということ。さすが200曲の中から厳選しただけある 笑。

そして今作のネクストステージ要素でいうと、マリ南西部やカメルーンの伝統音楽SSWとタッグを組んだアフリカンミュージック系のニュアンスの付加(Douha (Mali Mali) (M5), Ce n'est pas (M7), ENERGY (M8))。伝統音楽ならではの原始的な音楽性で、ハウス・テクノのダンスの躍動感をもっと深いところから掘り起こすような新しい試みがあると思うのだけど、巨大な大陸のジャケットによる印象操作も込みで、バイタリティ・エネルギーがもっと強烈に感じられる仕様になってるのが本当に素晴らしい。その中でもタイトルトラックのENERGY (M8)は今作のウルトラスーパーハイパーベストソングだと思う。Disclosureの電気ショックを与えるようにハイなサウンドのダンストラックで、サンバのようなカーニバルを実現してしまうという...。このカーニバル感によるダンスフロアの表現、クラブハウスの閉じた空間よりももっと全人類が一体となったような莫大なスケールの拡張みたいなのがあって、初めて聴いたときは本当に感動しまくってた。それはまるで、大地を揺らすほどに強力なダンスの"ENERGY"、Disclosureが追い求めた壮大なコンセプトを本当に見事に達成できてると思う。「Where your focus goes, your energy flows, Are you hearing me!?」って歌詞もものすごくいいんだよね...笑。

8曲目のENERGYも本当に大好きだけど、でももしかしたら4曲目のWho Knewの方がもっと好きかもしれない 笑。サイダーみたいにシュワシュワな音像のやつ。ジャケットが持ってる海(?)のクリアな美しい色のイメージも込みで、すごくフレッシュなサウンドでハイになれる感じが本当にたまらない。ほんと、コラボしてるアーティストも豪華で好きな曲だらけだった。ちなみに今作でコラボしてるアーティストの中で私が一番好きなのはコモン兄さんです。(最近見た映画だとTHE INFORMER/三秒間の死角とかよかった)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Bully - "SUGAREGG"

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高校生の夏休みのあの感じ 泣

 グランジロックのようなぎらついた熱エネルギーを満タンにチャージして、メロディー感の半端ないスーパー元気なパワーポップを最後までかっ飛ばして行く感じ!WeezerとかOso Osoとかと同じくテンションが高まりまくる安定したハピネスが供給される最高なやつ...!!笑。ロックとしての熱いエモーションを心がときめくメロディー感に影響させるような、もう揺るぎないよさが保証されてるタイプのやつだと思うのだけど、ジャケットに示されてる圧倒的な清涼感・爽快感の品質とかもやばいし、BullyことAlicia Bognannoの持ち味が多様な歌のスキルもすごい。激しくパンクさせていくようなシャウト系(Where to Start (M3), Stuck in Your Head (M8))も見事にこなすし、ソウルフルに歌い込むようなテクニックも持ち合わせつつ、ファルセット系のソプラノもマスターしちゃってるような感じ。さらに言えばそのそれぞれを瞬間的に切り替えてミックスさせるような歌い方とかも。パワーポップとしての音楽性抜きにしても歌のパートがめちゃめちゃ強いと思う。特に私的には2曲目のEvery Tradition (M2)の反則級に気持ちいい対旋律的なコーラスとか本当にめちゃめちゃ大好き 笑。シャウト系のアグレッシブなボーカル要素も特徴的だけど、その中で透き通った高音域ボーカルとしてのギャップを効果的に見せてて素晴らしいと思う。というか今作、パワーポップの音楽性としても、そういうロックとしての切れ味とインディーポップ系の甘さを上手に並列できてると思う。特にその甘さという部分だと、Come Down (M9)とかSoccer Mommyレベルでキュンキュンするし 笑。リリース前からSub Popが激推ししてただけある、とても良質。

今作のパワーポップ性が呼び起こす恥ずかしいくらいの心のときめき!それはなんといっても!高校生の夏休みの感覚のような青春のど真ん中すぎるあの感じの感じです!!!(大号泣)。この感覚が本当に素敵で愛おしくてたまらない。1曲目のAdd It Onから元気MAXで爽快に駆け抜けていくのだけど、そのはじける元気・駆け抜けていくガムシャラ感というか、ストレート性というか、そしてパワーポップとしてのメロディックな甘さとか、もっというとジャケットの夏休み感とか、全ての因子が中高校生だった頃の恥ずかしいくらい真っ直ぐだった感覚を呼び起こす性質を持ってると思う。青春ど真ん中のサマーチューンというところだと、今年6月にリリースされたHindsのThe Prettiest Curseとも通じる部分があると思うけど、どちらかというとHindsのホームパーティー感よりもBullyの今作の方が日本の中高生向けの趣があると思う 笑。SCHOOL OF ROCK!とか、ティーネイジ層に刺さる邦ロックの感じとかもそう。私の妹とかそういう文化に根付いた人なので、さりげなくオススメしていきたいなと思う 笑。

Sub Popの激推しの今作、他にもハイクオリティな部分だと、シューゲイズっぽさとAliciaのボーカルの甘さが極上に溶け合っていくようなLike Fire (M7)、パワーポップから少し離れたメランコリーな情緒さえ描いていくようなHours and Hours (M11)、ラストで少しドライに仕上げて締めくくるような感動があるWhat I Wanted (M12)など。ちなみに私が1番大好きなのはStuck in Your Head。今作で1番かっこいいナンバーだと個人的には思ってる...笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Drugs - "Episodic"

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サイケと泣きメロの相性のよさを改めて開花

 例えるなら、"センチメンタルな泣きメロを贅沢に用意しためちゃめちゃエモーショナルなガレージロック×サイケポップ" という感じだと思うのだけど、ロックとしてのかっこよさも涙を誘うメロディックな美しさも両方備えてる最強っぷりが一般的なインディーロック作品よりもすごくて本当に素晴らしいと思う。サウンドのキャラクター的にはKing Gizzard & the Lizard WizardとかOsees(Thee Oh Sees, Oh Sees)に近いクラシカルでアシッドなハードロック系のやつだけど、その中でロマンチックにキラキラ輝く切ないメロディーをしっかり歌う感じ。1曲目のTry Meでエンジンが点火するように突き進んでいくロックを始めたと思ったら、2曲目のJoyrideでポップの甘酸っぱいテイストが出てきて、3曲目のParalyzedになると中盤で昇天しそうになるほど神聖なファルセットのコーラスまで出現したり。そんな風にロック要素と泣きメロ要素がアルバム全体に巡らされているのだけど、二つの要素を同時に取り入れる音楽性のよさ以上に、それらがびっくりするくらい良質なところが本当に充実してると思う。例えば、Positive Feedback Loop (M6)とかがそう。1発目から胸キュンを発生させるような切ないポップで始まるのに、中盤パートになったら心が熱くなりまくるようなギターロックをぶちかましたり。ロック要素と泣きメロ要素を両方モリモリに取り入れるだけでなく、それぞれを最高に魅せるような曲作りに細工されてる感じ。しかもこの曲、ロックと泣きメロの二つの要素が相乗的に一体化するような性質もあるから、それぞれのコンビネーションでエモーションが大変なことになる...笑。ほんと、大好きな曲だからもっと長尺でやってほしい。身体がもっともっとその音楽を求めてる。

私的に、今作がめちゃめちゃ最高だなと思ったところは、サイケデリックの音像が持つキャラクターと泣きメロの相性のよさを改めて開花させたというところ。代表的なところだとアルバム5曲目のMirageサイケデリックの陶酔・目眩の感覚にDrugsならではのめちゃ強い泣きメロを組み合わせて、切なさの感情にえぐい幻覚をプラスさせるようなやばさ。ただでさえ心に沁みる泣きメロとしての質が高いのに、それらの感情をもっとキツくさせるようなサイケならではのエモーションの強化。それは言い換えれば、メロディーが充実したサイケポップだからこその醍醐味でもあると思うのだけど、今までにこれほど強い泣きメロのサイケに出会ったことがなかったから本当に感動した。あと、8曲目のPulling Tissue from the Lobeに出てくるサイケの泣きメロも本当に最高。めちゃくちゃロマンチックで心が掻き乱されまくる。惚れるほどにかっこいいハードロックも演奏するのに、どうしてここまで音楽性を急転移したりして極上の泣きメロを引き出せるのか...笑。本当に素晴らしくて泣きそうになる。

泣きメロ要素じゃなくてロック要素のところだと、7曲目のEvidentialが本当に最高すぎて笑っちゃう 笑。泣きメロを奏でるサイケポップの面影が潰れてしまうくらい、ボーカルが暴走するように喚きまくるパートが用意された曲。本当にはちゃめちゃで激アツで桁違いに興奮する 笑。泣きメロもそうだけど、エモーションの起伏が激しくて全然予測できないから本当に楽しい。ロックパートも本当に最高だと思う。

サブスク・インターネットの発達で音楽にびっくりするくらい気軽にアクセスできるようになってしまった時代。昔のように(私今25だけど)、アルバム一つ一つの出会いが貴重だったような頃に比べると、出会う作品数が膨大になってしまって、どれもありきたりな作品に感じてしまうリスナーが多くなってしまっているのかもしれない(It's me)。そんな中でも、Drugsの今作は流し聞きしてても「むむ?」となるような光るものをたくさん持ってると思う。実際、彼らは自宅で数年前から音源を貯め込んでたみたいで、デビューアルバムの今作はラインナップの全曲が本当に強い。インディーロック勢の中でも類い稀な才能を持ったバンド的な。すごく期待してる、応援してる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Katya Yonder - "Multiply Intentions"

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ポケモンでいうエスパー・ゴースト・フェアリータイプあたり

 神秘的な尊さの果てしないエクスペリメンタル的ベッドルームポップ。妖精が出現するような温かいファンタジー(Invented Journey (M6))から、Cindy Leeのような背筋の凍るクラシック系ホラーの世界観、さらには もののけ姫ラピュタのようなジブリ的ワールドまで、幻想性について幅広く追求されたような作品、なのでもう問答無用に私のどストライクです...笑。先月リリースされたTrevor PowersのCapricornやNicolas JaarのTelasのように、エレクトロニカならではの自在なサウンドメイキングで幻想性を創造する作品群ももちろん大好きなのだけど、Katya Yonderの今作は特に、Summer of '84のようなコスミックな音像を多用したホラー系の世界観としての幻想性が本当に秀逸だと思う。アナログシンセのめちゃめちゃレトロな雰囲気が怖さをより強調するSpinning Olimpia (M3)、不協和音のベルで不穏な空気を演出しまくるPeering into the Distance (M4)、亡霊を復活させる儀式のように本気の恐ろしさすら感じさせてしまうInterlude (M13)など。それぞれの曲が宗教音楽にもコネクトするように心霊的な重さを持ってるのがめちゃ最高だし、オルガンなどの鍵盤楽器によるアルペジオのフレーズ感も本当に美しくてたまらない。ジャケットのロウソクのアイテムによるイメージも本当に素晴らしく絶妙。それらはまるで、現代のベッドルームポップの音楽性で創造する新しいレクイエムとも言えるかもしれない。もともとKatya YonderことKatya Prokinaは、ロシアのシューゲイザー・ドリームポップバンドのTip Top Tellixの人だけど、今作Multiply Intentionsはシリアスでホラーな曲調の中にそのTip Top Tellixのポップ感が適応されてる感じが本当に最高だと思う。(ちなみにTip Top Tellixの音源もかなり好き。)

ホラー系の世界観もゾクゾクするほど本当に最高なのだけど、Вновь и вновь (M8)のようなジブリ的ワールドのところもめちゃめちゃ心惹かれた。ここでいうジブリ的ワールドとは、例を挙げるならMotion GraphicsのMezzotint Glissとかそういうやつ。トトロの楠木とか、もののけ姫で描かれてる太古の森とか、深みのある緑と強い自然をイメージさせるような木製楽器のサウンド。木琴楽器やフルートみたいに生楽器本来の神秘的な音色を味わえるだけでなく、童心に返ってミステリアスなものに対する純粋なときめきが呼び起こされる感覚も本当に大好き。そういうところにKatya Prokinaのドリーミーな歌がブレンドされてるのもまた最高なんだよね...笑。

相変わらずですが、こういう神秘的な作風のやつに私本当にザコすぎるので月間ベストにランクイン。直近だとMusic For 18 Musiciansを再解釈したErik Hallとか、Jenny Hval、Emeraldsっぽさもあったと思う。ポケモンでいうところのエスパー・ゴースト・フェアリータイプあたり。フェアリータイプは新しく出たタイプなので、ポケモンを全くやったことがない私は全然知らない。(知らないのかよ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. JOBS - "endless birthdays"

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90年代のポストロックシーンにも直撃

 現代で新しく生み出されたどの芸術作品も、様式・ジャンル・メソッドなどの点で、先人の作家が古くから開拓した何かしらの方向性に囚われてしまうような運命が常にあるのかもしれないと思う。でもJOBSのアルバムは、その運命から大きく外れるようにものすごく突飛で奇怪な作風のやつ。「こういうの待ってました!泣」ってものすごく興奮する 笑。表面上の分類的にはステレオタイプエレクトロニカって感じだけど、その中で常識を打ち破りまくるような混沌と崩壊が多く含まれてる感じ。冒頭のA Toast (M1)では、表打ちと裏打ちを複雑に織り交ぜていくような2拍子のリズム体系で不安定感を煽りながら、脳みそを刺激するような強い低音でリスナーをショックさせる。また、意識を放心させるような気持ち悪さと美しさを両方実現する電子音のメロディーも導入してたり。アルバムの1発目から恐ろしいくらい前衛的な作品であることを予感させる最高のワクワクが感じられる。Striped Cotton Blanket (M3)に関しては、17拍のトリッキーなフレーズを休憩なしに連射しまくってリスナーを思い切りぶっ飛ばしたり 笑。不規則の拍感で作り出す圧倒的な興奮の感じでいったら、今年4月にリリースされたLorenzo SenniのScacco Matto (Discipline of Enthusiasm)にも通じるぐらい、とてもパワフルでエネルギッシュなナンバーだと思う。Planned Humans (M7)なんかは、音像をより鮮やかに魅せるための音響利用の爆発力を発揮したエクスペリメンタルのテクノを繰り出したり。アルバムの楽曲がそれぞれ、予想を裏切るどころか、あまりに未体験すぎてパニック状態みたいになるくらいよい。初めて聴いたときの喜びが忘れられないくらいずっと心に残る素晴らしさ。前にも言ったけど、この壮絶なワクワク感・ゾクゾク感、数年前(いやもっと昔の高校生とか、)洋楽オタクに目覚めたての頃以来の感覚かもしれない...。特にThe Booksとか、DJ ShadowのEndtroducing...とかあたり(どういう括り??)2020年代に入ってもこういう作品と出会えるということが本当に嬉しい...泣。

今作がなんといっても素晴らしいと思うのは、混沌と崩壊のショッキングな印象を残す過激な音楽性の裏に、それと対極に位置する安定したオアシスのワールドを同時に所有しているというところ。それの代表例がOpulent Fields (M4)、1曲目から3曲目までで提示した混沌・崩壊の世界が逆転するようなユートピア。まるでこの世の向こう側に到達するようにヘヴンリーな平安を取り戻していくのだけど、Gastr Del Solのような謎に満ちた深いファンタジーさえ想起させる果てしない美しさがあって本当にたまらない。プラス、それまでの崩壊した世界で残っていた混沌の残骸を感じさせるようなボロボロの装飾音を活用してたりで、本当にロマンが掻き立てられまくる。Gastr Del Solに似てるやつ、まさかこんなところで90年代のポストロックシーンのプチリバイバルに直撃することになるなんて...笑。他にも、Words About Shapes (M6)とか、混沌と平安の狭間で揺れ動くような楽曲もすごくいいのだけど、1番ツボすぎてやばいのがアルバム2曲目のBrain。エレキの弦楽器におけるハーモニクスを利用しまくったような楽曲だと思うのだけど、混沌・崩壊のワールドの中でこんなにもハーモニクスの浮遊感をミステリアスに魅力的に演出しまくる音楽は他にない気がする。しかもそれらのハーモニクスだけでメロディーを構築するとか、あまりにツボすぎてもう笑うしかない 笑。本当に素晴らしいいハーモニクスサウンド

2020年、大学院の修士論文が終わったのをきっかけに月間ベストアルバムを作り始め、それが8月まで続いてるけど、いざ月々でベストアルバムを作ってみると本当に最高の作品ばっかりでちょっと戸惑ってる 汗。年間ベストアルバム級の作品が多すぎて50位とか絶対収まらなさそう 笑。(年間ベストは『大好き of 大好きアルバム 頂上決戦』みたいになると思う)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Siv Jakobsen - "A Temporary Soothing"

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ジャケット負けしない気持ちよさ・美しさ

 ぷかぷか浮いてて快適すぎるジャケットの印象に全く劣らず、水面に輝く光のようにゆったりとした気持ちいい美しさがたっぷり感じられまくるフォーキーなオルタナロック。BibioやSóleyにも通じるような北欧系の民謡的なアプローチを取り入れつつ、Hundred Watersのようなメロウなファンタジーを発揮していくボーカルが特徴的だと思うのだけど、インディーフォーク、オルタナロック、どのサイドから捉えても本当に最高でめっちゃ大好き。じっくりと重みのあるフォークのFear the Fear (M1)、曲の後半で音の存在をマジカルに魅せるギミックが素晴らしいFight or Flight (M2)、2拍子に身を任せて気持ちよさを強調するようなShine (M3)、アイリッシュ音楽のようなストリングスで音楽に神聖なテーマを付加するFraud, Failure (M5)などなど...。インディーフォークとしての自然的なサウンドのテクスチャも最高だし、音の存在をよりマジカルにさせるための装飾が散りばめられたオルタネイティブロックとしても豊かで、かつトラディショナルな童謡のように聖なる世界観の深みもやばいという。"好き+好き+好き"みたいな作風でとことん突き刺さりまくるし、ボーカルの声質が大ファンのNicole Miglis(Hundred Waters)やWaxahatcheeに近いところもあって無条件に最高評価をしてしまう...笑。実際、今作はフォーク、ロックとしてだけでなく、Siv Jakobsenの透明感が至高な歌声を魅せまくった一種の歌モノとしてのよさもめちゃめちゃあると思う。9曲目のOnly Lifeとか、その至高のボーカルでエモーション密度を高めまくるように歌い込むのだけど、もう本当にめちゃめちゃよすぎて超感動する。シンプルなピアノの伴奏による方法で歌の存在感を全面に出すようなI Call It Love (M12)とかも本当に強い。よさが多面的に用意された良曲揃いのアルバムだと思う。

こんなにたくさん最高の曲があるのだけど、6曲目のA Temporary Smoothingがその中で「マジかよ...」と思わせるくらい本当にやばい 泣。フォークのテクスチャ、マジカルな音の装飾、窓の外を眺めながら真夏の夜に聴いたりしたら、あまりのエモさに気絶するんじゃないかと思うくらい、夕闇に溶け込んでいくようなSiv Jakobsenの美しいフォーキーな音楽の魔法が込められてる。そもそも今作は、気持ちよさが半端なさすぎるジャケットのイメージの時点でもうとびきりに最高なわけだけど、そのジャケットの気持ちよさのパワーをも借りてしまうところが本当に恐ろしい。何回鑑賞しても鳥肌がバーストする。アルバムのタイトルトラックでもあるし、本当に絶大な特別感を持ってる曲だと思う。そこから一連の流れで展開される7曲目のAny Whereも歌モノとしての最高に完成されてる。すごくやばいセクションだと思う。

今作の気持ちいいジャケット、BullyのSUGAREGGもそうだけど、キンキンに冷えてる水のイメージってこの季節だと本当にたまらない 笑。特に今作はSiv Jakobsenの音楽性的にもこのジャケット感と強くリンクする部分があると思う。さらに言えば、ジャケットの湖のような水面のモチーフのところに、揺らめくような穏やかさが含まれてるのも本当に最高。その点だと、ワルツの美しい揺らぎ方をする4曲目のA Feeling Felt or a Feeling Madeとか、ジャケットにめちゃめちゃぴったりでやばい。ほんと、気持ちよさが半端ない作品だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Young Jesus - "Welcome To Conceptual Beach"

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マニアックなポストロックってめちゃかっこいいからね...

 3曲目まで聴いたら疑いようがないくらい傑作のアルバムだって納得させられてしまうようなポストロック作品...笑。ノイジーなギターを鳴らしていくようなロックとしてのエッセンスをしっかりコアに搭載しつつ、バンドアンサンブルのインストメロディーを充実させるテクニックも所有していれば、モダンジャズ風のサックスメロディー(Pattern Doubt (M2))でエレガントな華を添えたりするものだけど、ボーカル自体はオペラみたいにめちゃめちゃ高貴な属性だったり...。色んな種類の美しさを同時に取り揃えたような唯一無二のバランス感が本当に絶妙だし、それらのバラバラな複雑性を巧みにオリジナル化させていく美的センスとかも含めて、本当にめっちゃ傑作のアルバムだと思う。7曲収録されてるけど、1曲1曲がスケールの大きいストーリー性を持ってるところもとても高密度ですごい。アルバム出だしの1曲目のFaithから、そのYoung Jesusの高い技術力が十分に提示されてると思う。ネジが飛んでしまったように狂ったツインギターソロを演奏したと思ったら、そこからピタッと縦をそろえた変則的なアクセントをキメていったり、徐々に音楽を盛り上げていったところにオペラ特性のある高貴なボーカルを全開させたり。ポストロックとしておもしろさも満点だし、ギターロックとしても本当にかっこいい。そこから移行する2曲目のPattern Doubtでは、ポストロックよりもジャズ風の色気が一気に舞い込んできて、音楽がたまらないほど鮮やかな色を帯びていく。とにかくサックスのエレガントでジェントルなメロディーが素敵すぎてやばい...笑。1曲目のかっこよさからは思いつかないほど上品で、ギャップを効かせて感情を大きく揺さぶるようなエネルギーも感じられるから本当に素晴らしい。ただでさえ1, 2曲目の流れがそんな感じで既に超最高なのに、今作一のベストトラックである3曲目(un)knowingがその次に用意されてるという、、、笑。高貴なボーカルの存在をメインで置いたような圧倒的に温かくて切ない曲調、そこにMogwaiみたいに痛烈なギターを当てはめてクライマックス級にド派手なシーンを繰り広げるようなコンビネーション。感動が巨大すぎて思わず号泣しながら叫びそうになってしまう。Microphones In 2020もそうだけど、もしかしたら楽曲最大の見せ所でシューゲイズ系の轟音ギターを繰り出す曲は全部最高だって決まってるのかもしれない 笑。ほんと、一曲一曲がめちゃ大作、全く抜け目がない。

ロック要素、アンサンブル、エレガントさ、今作は色々な技術をコレクションしたような実験的な音楽だと思うけど、それらによる豊かでカラフルな感情たちを最終的にはロックさせる方向に向かっているのがたまらない。1曲目のFaithのラストとか、7曲目のMagiciansのラストとか、インスト・ポストロックとしてのフレーズ感を大事にしてる感じ。フリーセッションっぽい長尺トラックが目立つのも、そういう精神が表れてるからだと思う。やっぱりマニアックなポストロックバンドとしてのキャラクターモデルというか、そういうのめちゃめちゃかっこいいからね 笑。個人的はそういうマニアックなバンド感の部分でいうと、4曲目のMeditationsの後半とかOughtっぽい異端児のガレージロックのインディー感があったり。そういうところもすごく気に入ってる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Angel Olsen - "Whole New Mess"

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"All Mirrorsの反動"

 【問題】天性の歌唱力を持った最高のSSWが自身のすごくいい曲をすごくいい感じにセルフカバーしたらどうなるでしょう? → 【答え】すごくよくなる。......「だよねーーー!!」ってなった 笑。ストリングスを大活用する豪快なアプローチで神々しい存在感すら放ってた力作の前作All Mirrors (2019)、今作はそれらの楽曲をデビュー当時のように原点回帰した弾き語りの形式でオリジナルレコーディグしたわけだけど、前作が巨大なパワーを外向的に発散させてた分、今作はそれらのパワーが内向的に向かっていくようにエモーションの反動をもたらしてるところが私的に凄まじくグッとくる。それは言い換えれば、音楽が鳴らされていた空間がより閉じたものになって、Angel Olsenの歌に含まれる悲しみや切なさのフィーリングにもっと寂しさや空虚なニュアンスが加わった感じ。個人的には例えば今作3曲目の(New Love) Cassetteとかめちゃめちゃそういう味わいがする。もともとAll Mirrorsに収録されてるNew Love Cassetteの原曲がめっちゃ大好きというのもあるけど、あのド派手な威力のあったストリングスのアレンジがなくなるだけで、こんなにも心をえぐられそうになるなんて...。そもそもAngel Olsenの神がかった繊細さは、空間が静寂になればなるほどその真価を把握できると思うのだけど。今作はレコーディング環境が100年もの時を経た古びた教会というのもあって、Angel Olsenのその至高の繊細さがより剝き出しになって表れてると思う。もちろんダイナミックなアレンジのAll Mirrorsの作風もとても感動的なのだけど、もっと生々しさの表れた今作も本当に素晴らしい。前作とセットでお得、Angel Olsenのことがもっともっと大好きになる。

今作の最大の特徴といえば、セルフカバー以外に新しく用意されたオリジナルの2曲、Whole New Mess (M1)とWaving, Smiling (M6)。これらの曲が本当に素晴らしくて鳥肌がもげそうになる。Whole New Messは、Angel Olsenの得意とするビブラートでリスナーの心を震わせまくるやつ。外向的に働いてたAll Mirrorsの反動も活かされてるし、リスナーをそっと抱きしめてくれるような圧倒的な温もりが込められてて本当にめちゃめちゃ泣きそうになる。こんなにリスナーの心を直に暖めてくれるような癒しを歌えるアーティスト、なかなかいないと思う。またWaving, Smiling (M6)は、Angel Olsenのルーツとなっているような和やかなカントリーの曲。音粒の輪郭はっきり表れたカントリー系のギターの音色、高らかに歌う高音の歌のパッセージ、こちらも本当に温かくてめちゃめちゃたまらない。もうほんと、この2曲だけが収録されたカップリングのシングルだけでもベストアルバム認定したくなる 笑。

それらのオリジナル曲がめちゃめちゃ素晴らしいのだけど、ライブバーションだとその素晴らしさがもっと強化されてて本当にやばい。(→ Angel Olsen: Whole New MessAngel Olsen - Waving, Smiling (Live at the Masonic Temple))。ライブならではの臨場感が現れて、低音域の音響もより強くなって、Cigarrets After Sexみたいな濃厚さすらも発生する感じ。原曲の圧倒的な素晴らしさだけでなく、身体がトロトロに溶けていくような恍惚も体感できてしまうという。この人弾き語りライブ、本当に最高なんだよね...。お願いです!!!!来日してください!!!!(爆死)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Keely Lee Owens - "Inner Song"

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か゛っ゛こ゛よ゛す゛ぎ゛る゛ーーー(失神)

 Kelly Lee Owensといえば、フロアオリエンテッドでストイックなテクノと、耳に優しく浸透するふわふわのベッドルームポップのダブル。まるでパラレルワールドみたいに非現実的で不思議なフィーリングスが溢れてて、我を忘れてしまうくらい本当に魅惑的な世界観なのだけど、今作はモダンテクノとしてクールなダンス性がより主張されてる作風のやつ...。テクノならでは集中力を燃料にして作品に対しての中毒性をより高めまくってる感じ、かっこよすぎるあまり思わず膝から崩れ落ちそうになった 笑。本当に超超超かっこいい。まずはアルバム1曲目のAreggi (Radiohead)、憂鬱なオーラ持つ原曲が彼女ならではのミステリアス&クールなセンスで雰囲気がガラリ、スピード感のあるテクノに大変身。本当にかっこよすぎるのでテンションがぶち上がってしまうのを抑えられない...笑。そこから勢いに乗って展開される今作リードトラックのMelt! (M3)は、前作よりももっとバチバチにテクノテクノしてるやつ。Meltというタイトル通り、脳みそが攻撃されるようなサイケデリックな感触もあって、ものすごくゾーンに入っていくエネルギーがある。もうこの時点で完全に虜なのだけど、ゾーンに入りまくったMelt!の後に用意されてるRe-Wild (M4)も凄まじいよさ...。ドリーミーな音像の濃いダブステップだけど、彼女が影響を受けたBjörkトリップホップみたいなダウナー感・ホラーっぽさみたいなのもよく反映されてる感じ。従来からのミステリアスでふわふわの深いエレクトロニカの持ち味が強化されてる感じで本当にたまらない。そこからまだまだ波に乗っていくJeanette (M5)。Melt!の激しいテクノとRe-Wildのふわふわなエレクトロニカが交錯していくように合体するパート。ここで絶頂に到達してもう泣いちゃう。ミステリアスでクールでふわふわだけどキレッキレ。めちゃめちゃかっこいい。前作ST (2017)のデビュー時からこの人かっこいいなとは思ってたけど、まさかここまでツボに刺さりまくることになるとは...笑。

そんなアルバム前半でもう大満足してるのだけど、後半パートも素晴らしい。印象的なのが7曲目のCorner of My Sky、フィーチャリングがThe Velvet UndergroundJohn Caleなのがインパクトある。こちらは前半パートのエネルギッシュなテクノとは対極的に、Kelly特有のミステリアスなオーラの生成に精力が注がれてる曲。恐ろしいくらい取り憑かれてしまうような不思議さに満ちてるのだけど、内容的にも7分ととてもボリューミーだし、Melt!に並ぶ今作のメイントラックの一つだと思う。これからも、オタッキーで風変りなアーティストとどんどんコラボしてほしい 笑。

前作よりも進化してる部分、ラストのWake-Upの存在も見逃せない。Kellyのボーカルを強調したフックのあるフィナーレ。ソフトなシンセオルガンのサウンドが輝き出して迫力を作っていく感じとか本当にめちゃめちゃ感動する。テクノ・エクスペリメンタルだけでなく、ポップとしての引き出しも見せてくれる曲。もっとブレイクしてほしい!日本にも是非是非来てほしい!泣

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. The Microphones - "Microphones In 2020"

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自伝を音楽のアートとして完成させるということ

 The Microphonesの今作が素晴らしくて素晴らしくてたまらないのは、音楽による感情の創造性を強く信頼し、人生の中で心に深く残っているかけがえのない瞬間を蘇生しようとするというところ。その創造性による感情増幅の効果を用いて、永遠に愛おしい過去への憧れを可能な限り引き出していくような試み。ずっと昔の若き頃の自分と対峙するように現在を超越していくトリップの素晴らしさはもちろん、自伝として構築されるその音楽のボリューミーなストーリー性や、それぞれのシーンに固有のビジョンを与えるような多彩なアレンジなど、コンセプトから内容まで何もかもが本当に素晴らしすぎると思う。そもそも私的には、The MicrophonesことPhil Elverum(Mount Eerie)という人物の自伝を44分にも及ぶスケールで1曲に落とし込むという超大作の作風だけでもう大勝利してると思う 笑。音楽を再生したその瞬間からその物語が始まって、断片的に残された記憶の感覚を頼りに脳内のイマジネーションを深く掘り下げて没頭していく。押し寄せては引いていく波動のような揺らぎのコードフレーズが本作の基盤になっているけど、リスナーに与える安らぎが本当に絶大で格別なフレーズだし、その揺らぎによる増幅によって音楽のワールドに対しての没頭性がどんどん深くなる効果があるのも本当にお見事すぎると思う。特に本作は、歌い出しまでのイントロでその絶大な安らぎのフレーズを7分間も継続させてる。アコースティックの音色、フレットノイズ、ありのままのギターコードの存在だけで成り立っているパート。私はこのイントロの安らぎの味わいが本当に大好きで、1音目から本当に心奪われるのだけど、このイントロの部分だけで本作がいかに圧倒的に最高の作品であることが伺えると思う。44分間も没頭したくなるほど、Phil Elverumが愛してるメロディーだってすごく共感できる感じ。7分を経た後の歌い出しの感動もより大きくなるし、本当に圧倒的なイントロだと思う。

44分のストーリーにおけるそれぞれのシーン固有のビジョン・多彩なアレンジというところだと、やっぱりノイジーなギターサウンドが提示する灼熱のエモーションの要素は本当に絶大なよさだと思う。それはまるで、永遠に愛おしい過去の感覚を求める過程で、残されていた当時の記憶が破壊されてしまいそうになるような感覚。本当にめちゃめちゃエモーショナルで胸が締め付けられまくるほどたまらない。果てしなく思い馳せるような憧れが溢れた世界の中で、シューゲイザーの破壊的な轟音を起用してるのが本当に大好きすぎる。ビートの強いドラムと組み合わせて感情を激化させるようなパッセージも同様。それは、Microphones In 2020という自伝をコンセプトとした詩のよさだけでなく、純粋にインディーロック作品としてもめちゃめちゃ最高だということ。アコースティックの魅力が満ちたイントロだけでなく、そういう方面のよさを兼ね備えてるとか、本当にツボすぎてやばい。その他にも、ピアノを強調したクラシック・バロックな趣だったり、心が満たされるドリーミーなアンビエントの感動だったり、音楽表現の演出が極められてる。超超超傑作だと思う。

ただでさえ音楽的にもよさが鬼のように詰まりまくってる作品だけど、詩的な部分でいうと私的には雨の描写がものすごく心に響く。私が覚えた感触的に、Microphones In 2020という自伝の思い馳せるような愛おしさの部分は、"雨"という神秘的なファクターと本当にぴったり一致するから。特に車の中から感じる雨の匂いとか、とても繊細な感覚まで蘇生しようとしてるのが本当にやばい。実際に、曲を聴いてそういう雨の匂いを感じる瞬間が何回かあるのだけど、そういうマニアックな情景の部分まで深く共感できるって本当に最高すぎると思う。私はあまり音楽に歌詞のよさは求めない派の人間だけど、流石に今作に関しては自伝としての密度がやばすぎて、歌詞を無視するのは無理だった 笑。

"I decided I would try to make music that contained this deeper peace" (この深い安らぎを含んだ音楽を作ろうと思った)、私が今作で最も好きな歌詞の部分。記憶・体験・思い出・それらの愛おしい感覚を芸術として表現し、作品化させ、永遠に保存するという行為はこの上なく崇高なことだと思う。甘酸っぱくて恥ずかしいほどの青春をベッドルームポップとして保存したYouth LagoonのThe Year Of Hibernation(2011)然り。こういう作品本当にツボすぎる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

プレイリスト🍎↓

(The Microphonesは長いので除去、Katya Yonderはサブスクなかった 泣)

温の「2020年8月ベストアルバム(温)」をApple Musicで

Katya Yonder → https://metronrecords.bandcamp.com/album/multiply-intentions

 

その他とてもよかったアルバム・EP

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Another Sky - "I Slept On The Floor"

Black Marble - "I Must Be Living Twice- EP"

Bright Eyes - "Down In The Weeds, Where The World Once Was" 

Dan Deacon - "Well Groomed"

Duval Timothy - "Help"

Jason Molina - "Eight Gates"

The Magic Gang - "Death Of The Party"

Sam Prekop - "Comma"

Son Lux - "Tommorws Ⅰ"

Victoria Monet - "Jaguar"

Washed Out - "Purple Noon"

Whitney - "Candid"

 

★8月1週目リリースの新譜 感想・ランキング★

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9月の1位はSufjan Stevens。。。(予言)

 

 

 

「2020年7月ベストアルバムTOP10」感想

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私的に、今月はR&Bとかジャズが強かった気がする 笑。大好きなアーティストのサプライズリリースも多くて、とてもウキウキしました。

ベスト10枚に収まらなかったので 泣、また今月もベストソングTOP10枠も別途で用意した。果たしてTaylor Swiftは何位でしょうか。

2020年7月リリースの新譜、感想をランキングで

(上位4つは全部1位)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. E^ST - "I'M DOING IT"

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「やりたいことはやりたいだけやる」という強い意思

 新感覚のポップスと出会ったときのワクワク感って本当に最高だと思うのだけど、E^STもその"新感覚"をめちゃめちゃ感じさせるような最高に楽しいインディーポップ作品だった 笑。それは、ただでさえポップというジャンルそのものにワクワク性が十分含まれてるのに、"未体験"という領域の巨大なワクワク感がさらにプラスされてるということ。E^STの今作の場合、トライバルっぽい迫力のキックが特徴的なFLIGHT PASS (M2)とか、情熱的でワイルドな作風のポップなのかと思いきや、そこからMAYBE IT'S ME (M3)でまさかの現代的なゲームミュージック風のワールドに一気に転換したり、型破りで未体験な領域に連れてってくれるおもしろさがよく感じられる。流行りのサウンドを取り入れたメインストリーム系のポップ(FOUND SOMEBOY (M4))などもあれば、弾き語りのみで構成されるしんみり系のバラード(I'M NOT FUNNY ANYMORE (M6))まで、様々なカルチャー・世界観が取り込まれたとても自由な形態。特に3曲目のゲームミュージック風のMAYBE IT’S MEに関しては、その自由なスタイルであることの嬉しさ・喜びみたいなものが楽曲中でよく炸裂してる感じが本当に最高 笑。ハウストラック系のダンサブルなノリの高品質さだけでなく、ベースのアップダウンの抑揚とかもめちゃめちゃ楽しい。その他、自由すぎて笑っちゃうポイントだと、5曲目のFRESH OUT OF LOVEなんかもそう。チルアウト系のR&Bに属する曲だと思うのだけど、楽曲後半のファルセットがクラシックのオペラみたいなってるのが予想外すぎてめっちゃ笑う 笑。序盤4曲目までバリバリの超ポップだったのに、いきなりエレガントでめちゃ大人びた雰囲気になるからね...笑。そんな風に、ジャンルレスなアイディアがたくさん詰まってて自由で楽しくて新感覚、めちゃ魅力的なインディーポップだと思う。

私がE^STに対して強く好感を持てたのは、ジャンルレスで自由なスタイルの「やりたいことはやりたいだけやる」というところの主張がとても強く感じられたというところ。それはいわば、音楽制作の束縛に対する強力なアンチテーゼで、インディーポップの精神でありながら、根っこのところからはすごくロックっぽいスタンスさえも伝わってくる 笑。具体的には、リードトラックのMAYBE IT’S ME (M3)、TALK DEEP (M8)、GET THROUGH (M11)、I WANNA BE HERE (M12)の4曲。どれもポップとして確立されていると思うけど、EDMに近いくらい強いダンス要素のクラブミュージック性がある。GET THROGHに関してはもうエレクトロロックだし、メインのトラックの力強い仕上がりの部分に、それらのポジティブな意思がよく表れてるのが本当に大好き。ラスト12曲目のI WANNA BE HEREの感動的なパッセージとか本当にめちゃめちゃそんな感じで、一般的なポップよりずっと心に響く仕様になってると思う。リリックがとてもストレートなのがいい。

フジロックが延期の今年ですが、、、スパソニももちろん覚悟してる、、、(そもそもこの状況下じゃ心から楽しめない...)夏フェスが恋しい分、写真とか見返えしまくったり、フェスの感覚を蘇生させて楽しんでいる(つらい)のだけど、E^STのI WANNA BE HEREとかはものすごく夏フェスソング感があって、聴くと思わず死にそうになってしまう、、、笑。フジロックに行けなーい。(吉高由里子)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Cloud Nothings - "The Black Hole Understands"

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今までのクラナシにはなかった心に沁みる切なさ

 Cloud Nothingsといえば、激しいロックを利用してメロディックなエモーショナルさを生々しくありのままに表現するスキルが本当に素晴らしいバンド。泥臭さすら素直にさらけだすような純粋さが愛おしいし、たくさんの人間味をストレートに表現するようなメロディー感とかが本当に大好き。そんなロック・ポップスの特色を活かして数々の名曲(名アルバム)を生み出してる一流なロックバンドだと思うのだけど、そんなCloud Nothingsの作品の中でも、今作はOso OsoやPinegroveすら彷彿させるような通気性の高いフレッシュなロックのやつ!リードトラックであるStory That I LIve (M1)やThe Mess Is Permanent (M7)、ラストのThe Black Hole Understands (M10)などなど、荒っぽくてパワフルなJayson Gerycz氏のドラムの最高の持ち味は健在だけど、エレキギターの尖ったサウンドはよりクリーンに落ち着いてる感じ。フロントマンDylan Baldiのメロディックな歌も気持ちよさ重視なスタイルに感じられたり。そんな風に、今作は今までにはなかった異色の作風だけど、Cloud Nothings特有の人間味がよく溢れたメロディー感が、通気性の高いフレッシュなロックのやつに適応されているという新しさが私的に大好物だった 笑。特に私はもともとCloud Nothingsのめちゃめちゃ荒々しいドラムワークが本当に大好きなのだけど、今作のドラムは力を込めれば込めるほどより気持ちよくなっていくおかしなエネルギー変換があるところが本当に楽しい 笑。例でいうとThe Mess Is Permanentのシンバル連打とかそう。荒々しくて過激なはずなのに、ずっとフレッシュでめちゃめちゃ気持ちいいからウケる。

そんな異色な作風だけど、今作における特別感は、リードトラックのStory That I LIveや3曲目のAn Average Worldのように、他の作品にはなかった物悲しくてメランコリックなフィーリングの美しさがあるというところ。特徴的なのだと、Dylan Baldiのボーカルの脱力系の歌い方とかがそうで、音色的なフレッシュさとは別の穏やかな心地よさが感じられる。私的にはやっぱり、特にStory That I LIveの曲調が本当にたまらない。今までのCloud Nothingでは味わえなかった心に沁みる切なさが本当に素敵だと思う。なんならばそれのよさと同様、WaxahatcheeのSt. Cloud (2020)のような夕方に差し掛かる時間帯のジャケット空間とかも本当に最高。さらに言うと、7月~8月の季節感との相性のよさもめちゃめちゃある 笑。もう8月に入って夏も後半戦、またまた手持ちの夏ソングが増えて強くなりました。

リードトラックの他にも、ボーカルを取り除いたインストゥルメンタル形式でCloud Nothingsのバンドアンサンブルだけを魅せたTall Grey Structureもめちゃアツくてかっこいい。ベースがこれまでにないほど攻めてる感じなのにちょっと笑ってしまう 笑。あと、An Average Worldのラストスパートとかもめちゃめちゃ大好き。Cloud Nothingsの大大代表曲であるWasted Daysレベルで怖いくらい火力が高まるやつ 笑。もうWasted Daysみたいな曲はどんどん演らなくなってきてしまっているのかもしれないけど、激アツで激アツなクラナシのそれ、多分ファンはいつも求めてると思いますよ。(私🙋‍♀️笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Thanya Iyer - "KIND"

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感情を豊かにしまくる内向的な影響力

 Thanya Iyerの本作が私にとって最高にツボなのは、ストリングス・フルート・ホルンなど、充実したフォークオーケストラの大規模な自然エネルギーが全て内向的に働いて、Thanya Iyerの感情の豊かさを高めまくっているというところ。そもそもとして私、Sufjan StevensのIllinoise (2005)とか、最近でいうと魔法性の高いMoses Sumneyのgræ (2020)とか、優しさの塊のようなフォークオーケストラアレンジのサウンドに弱すぎてやばいのだけど 笑、Thanya Iyerの本作の場合、それらのオーケストレーションが決して大胆に派手になることがなく、落ち着いたテンションをずっとキープしているような丁寧な調整になっている。そのテイストによって、美しい音の一粒一粒の豊かさが全て内向的に影響してくような印象を感じさせるのだけど、この、『誰にも解らない自分だけの特別な感覚』というとっておきの味わい、本当に心から愛してる 笑。それは、音楽という魔法の本質である、目には見えない己の内側のみで生じる感情反応の喜びとものすごく直結していると思う。例えば、2曲目のI Forget to Drink Water (Balance)。"water"のモチーフそのものであるかのような零れ落ちる感覚をメロディーで見事に描写していて、感受性の深いところまで美しく刺激されるようなすごさがある。曲のラストで締めくくるハープの豪快なメロディーさえも、全部自分の豊かな感情として作用していくから本当に素晴らしい。中でも、今作屈指のリードトラックすぎるPlease Don't Hold Me Hostage for ~ (M4)とかは本当にスーパー傑作ソングだと思う。管楽器のフォーク系アイテムだけでなく、エレキピアノのカラフルなサウンドも多用したようなナンバー。Thanya Iyerならではの丁寧で落ち着いたテイスティングでありながら、気持ちが昇っていくようなファンクロック系の楽しさ・かわいさを少しプラスさせてる感じ。その音楽の内向的な心理体験は、まるでおとぎ話の夢を見るような心が満たされまくる素敵なフィーリングのそれと等価なのだけど、そういった優しさたっぷりのハピネス、自分の内側だけで生じる感情反応のとっておきな魅力、それらのファンタジー的要素、どれもこれも全部本当にツボすぎる...笑。それでありながら、前作Do You Dream (2016)のときからのR&B・ソウルのボーカリストとしての強みもプラスされているという......本当にめちゃめちゃ最強だと思う。

「豊かな感情」というところ、感情表現的な点で言うと、1曲目のI Woke Up (In The Water)も本当にやばすぎてやばい。悲しみがポロポロと落ちていくようなストリングスの歌、アルバム「KIND」という物語の冒頭の部分なのに、いきなり主人公が泣いているシーンから始まるというようなシナリオ構成。「どうして泣いているのか分からない」というミステリアスさが強調される曲調の効果もあって、心がかき乱されるような圧倒的なロマンを感じさせる演出になっているのが本当に本当に素晴らしい。アルバムの一曲目でそのアルバムが傑作だと確信させるくらいのパワーソングってやっぱりあると思うのだけど、私における今作のI Woke Upはまさにそんな感じだった 笑。Thanya Iyerの高音域ボーカルの心地よさもとても絶品、本当に心に残る。

初めて今作のジャケットを見たとき、イメージ的には中村佳穂っぽさを少し思い浮かべた 笑。中村佳穂はそんなに詳しくないけど、ジャズ・ポップの両方を吸収したようなオルタネイティブR&Bって感じは、今作のThanya Iyerの作風ともリンクする部分がある気がする。もしかしたら昨今のR&Bのトレンドにもよく当てはまる作品なのかなって思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Secret Drum Band - "Chuva"

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こんなにかっこいいディスコパンク、今までに聴いたことない

 私が今まで聴いてきたどのディスコパンクの作品よりもぶっちぎりのかっこよさ、、、とにかくシビれてシビれてシビれまくる、本当に超絶に激ヤバ級にかっこいい...!!泣。それはなんといっても、主旋律やコード進行など、リズム以外の音楽構成要素を削られるだけ削って、「ドラム・パーカッションのみで歌いまくる」というスタイルで仕上げた実験的な音楽性!もともとPrimal ScreamのKill All Hippiesとか、Oh SeesのSentient Oonaとか、ドラムが"歌"とか"フレーズ"を持ってる感じの曲が最高にかっこよくてたまらなく大好きなのだけど、Secret Drum Bandの今作は、アルバムの100%がそういったドラムの歌で成り立ってるやばさがある 笑。しかもこのSecret Drum Band、Bandcampにドラムスコアをアップするくらいのドラム・パーカッションオタクのバンドで、とにかくドラム・リズムのパターンに対する歌の多様性・こだわりみたいなのが本当にやばい。Antifa Fuchsia (M1)、Alaka'i Swamp (M2)、Robert Plants (M7)などなど、表打ち・16ビートのパターンが最高に美味しくなるように組み立てるハイセンスなリズムワーク。欲しいところにピンポイントで音が届いていくようなその快感は、まるで「太鼓の達人」の達人プレイヤーが激ムズの楽曲を余裕でフルコンボしていくような楽しさにも似てるかもしれない。Ka'ena Point (M4)ではそのドラム・パーカッションのみのバンド形式で人力テクノを実現してるようなすごさがあったり。また、全体を通してドラムが即興的でジャズのような華麗なプレイスタイルなのも魅力的なのだけど、Multispecies (Ants) (M5)みたいにサウンド的にズシンとくるロックぽさもあったりするのもめちゃ最高。極め付きでやばいのは、3曲目のSurface of Abyss at Ducke。この曲はシンバルのミュートによる音響の変化を利用してメロディーを奏でるという荒業を披露しているのだけど、これも本当に最高すぎて笑いが止まらなくなる 笑。あくまでドラム・リズム楽器単体としての扱いでシンバルの音の魅力をめちゃめちゃ引き出すようなすごさ。ほんと、ドラムのプロフェッショナルすぎてめちゃめちゃぶっ飛んでると思う。そんな風に、1枚のアルバムがドラムのコンサート、ドラムのバラエティーショーのようなパフォーマンス性を炸裂させまくってる。興奮がずっと冷めないむちゃくちゃに最高のダンスミュージックだと思う。

さらにSecret Drum Bandの今作が特別にかっこいいのは、従来のダンスフロア・ライブハウスのようなディスコパンクの空間とは全く異なる神秘的な世界観を持っているというところ。それは、民族音楽系の打楽器で表されているようなオーガニックで自然的な空間で、まるで非現実的で謎めいた秘境のような世界のイメージを思い起こさせる。その自然的な世界観の影響で、ハットとかシンバルの音が実際に空気中を振動してる繊細なところまで強調される表現になってるのだけど、この音像が本当に美しくてやばい。これによって、ドラムの音・ドラムの存在そのもののかっこよさが段違いに魅力的になってると思う。そしてさらに、ドラム・パーカッションだけで構成されるというSecret Drum Bandの超絶にかっこいいディスコパンクが、謎めいた神秘的な世界におけるある種の儀式みたいな演奏になってるところもやばい。中でも2曲目のAlaka'i Swampとかはクールなディスコパンクとしての鬼高い集中力があって、まるでドラムの演奏に命を懸けてるみたいな強い熱狂があるのだけど、神秘的な世界観でそれをやるというシチュエーションがもう抜群にかっこよくて...笑。本当にめちゃめちゃ泣きそうになる、史上最高にかっこいいディスコパンクだと思う。

私はいつも、平日の夜に次の日のお弁当を作っているのだけど、そのタイミングで音楽を聴きながらめちゃめちゃ踊りまくってるのが日課になってる 笑。今作は特にダンスミュージックとしての質が高すぎてやばくて、料理に全く集中できないレベルで踊りまくってた 笑。7曲目のRobert Plantsとか、後半の変則リズムのパターンでお腹痛くなるくらい笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Nicolas Jaar - "Telas"

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インスピレーション・精神力をありったけ注ぐ

 前作2012-2017同様、ソウルミュージックなどのサンプリングによって特殊なアツさを生み出した秀作ハウスの2017-2019(Against All Logic)、そしてダークな世界に美しく堕ちていくような魅力が半端なさすぎるCenizas(Nicolas Jaar)、それぞれの制作を経て研ぎ澄まされたインスピレーションが抑えられなくなったのか、今作はもっと大胆に実験音楽としての方向で創造性を極めた魔物のようなアルバム。1曲約15分を4曲用意した1時間の作品だけど、まるで交響曲の4楽章構成みたいに並々ならぬ精神力を注ぎ込んだ作品に感じられる。実際にCenizasとかと比較すると、音楽空間の多様性、そこへ複雑にワープしていくカオス、それらが持つ大規模な音楽のイメージ・ストーリー性など、もっともっと味わいが濃密な内容になっていると思う。Kaitlyn Aurelia Smithのような幻覚・瞑想のアンビエントによるスピリチュアル空間、リングモジュレーターの電子音によって表現される星々の無重力空間・コスモス、さらにはノイズインダストリアルのようなハードな精神すら想起させるアンダーグラウンドなど、Nicolas氏の引き出し・アイディアが超たくさん発揮されてるめちゃめちゃ巨大なスケールの仕上がりになってると思う。Nicolas Jaarのサウンドが本当に大好きなので、彼のその技術・表現力をさらにもっと大スケールで堪能できるって本当に私得でやばい 笑。特に今作は1曲目の1発目から「Nicoalas Jaar、開 幕 !」デデン!みたいな強烈な出だしがあったり、初めて聴いたときは大好きの感情がバーストするようにテンション上がりまくった 笑。本当、1音目で持ってかれる、超超超かっこいい。

まず1曲目のTelahoraで本当に素晴らしいところは、後半10分50秒頃からの鐘のサウンド。このサウンドの採用は本当に秀逸だと思う。1曲15分超えレベルの長尺な実験音楽というのもあるけれど、Telahoraは開始早々から異世界への門口をダイナミックに示してるというのもあり、リスナーに対して先の展開の興味を強く感じさせる働きを持ってると思う。そういった効果もある中、楽曲後半に差し掛かるタイミングで不穏な予感を掻き立てまくる鐘のサウンドを用意して、その先の展開に対するワクワク感と緊張感を両方同時に強調しまくってる。その鐘はまるで、迷い込んだ異世界の中で異常の事態を知らせるような合図。音楽が非現実的な未知の世界というのも相まって、何かを知らせようとする鐘のサウンドに対する恐怖がもっと煽られるような演出になってると思う。とても怖くて魅力的なサウンドだし、後半にそれを準備しておく音楽のストーリー構築という点でも本当に素晴らしい。ラストで重力を失ったのごとく闇の世界に堕ちていき、魂がこの世を去るように死の体験をするゾクゾク感も本当にやばい。

2曲目のTelencimaもほんとにほんとに最高。リングモジュレーターを掛けたコスミックな電子音、ふわふわ漂う無重力感、本当にめちゃくちゃ宇宙をイメージさせるパートだと思う。前半ではFloating Pointsのようなクラシックな生ピアノとエレクトロニカなエレキピアノを融合させてて、懐かしさと新しさの感覚が脳内で美しく衝突するようなこの上ないほど鮮やかなカラーを放っている。それは、宇宙の中で遭遇する未知の惑星に対する感情かもしれないし、またはその未知の惑星そのものの表現であるかもしれない。本当に素晴らしすぎてやばい。

そして私が今作で本当に最高でやばいと思うのは、3曲目Telahumoの後半11分10秒頃からの本作最大級な見せ所。Nicolas Jaarというサウンドアーティストとしての本気がこれでもかというくらい炸裂しまくったような超絶に神秘的なパッセージのやつ。3曲目まで実験音楽環境音楽としての形式がメインだったのに、この部分でそれまでにはなかったような明確な"歌"を持ち始める。その存在はこの上ないほど神々しいエネルギーを纏っていて、本当に力強く圧倒的で、想像を遥かに超えるように美しい。それは、長い長い異世界のトリップで辿り着いたような新世界。2曲目Telencimaで表現されていた無重力のふわふわな宇宙ワールドの反動も効いてて、アルバムを通して聴くとメロディーの存在感・破壊力が半端ないほど感じられる。Nicolas Jaarのインスピレーション・才能・精神力がありったけ注がれたような創造物。初めて通して聴いたとき、鳥肌立ちすぎてもう皮膚が剥がれるかと思った 笑。本当に頭がおかしくなるほど感動する。本当にめちゃくちゃ美しい曲。

Cenizasと今作、どっちが好きかと言われるとめちゃ悩む...笑。正直どっちも同じくらい大好き。A. A. L.の2017-2019はどうなのかと聞かれると、やっぱりそっちも大好き 笑。実はこの2012-2017、「2020年上半期『月間ベストアルバムTOP10』から漏れてしまったベストアルバムTOP10」の候補でした 笑。結果として漏れベストから漏れてしまった。(なんだそれ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Trevor Powers - "Capricorn"

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型にはまらない新時代のアート

 Trevor Powersの今作は、Youth Lagoon時代から育ててきた最強のイマジネーションを原料に、"やぎ座"という神話・伝説にまつわるコンセプトをメインとして制作したような作品だと思う。そのコンセプトを表現するためのアイディアとして、過去の物語へタイムトリップするためのローファイ・アンビエントと同時に、神話の世界にアクセスするための宇宙みたいな実験音楽をミックスさせているのが本当に素晴らしい。古びたレコードがノイズ混じりに再生されるような懐古のトリップ体験(Ghosts Of Shanghai (M5))、宇宙のような大スケールを想起させるドラマチックなニューエイジ(Earth To Earth (M2))、それら両方を組み合わせて表現する型にはまらない新時代のアート。それはただのローファイ・アンビエントでもなく、ただの聖なるニューエイジでもなくて、神話的なコンセプトを引用しながらも現代的な新しさを付与したような作家性。音楽の呼吸を丁寧に意識するアンビエントニューエイジとしてのテクニックを開発してるようなすごさだけでなく、Youth Lagoonのようなメロディックで美しい鍵盤楽器のポップ感もあれば、前作Mulberry Violence (2018)で培った音圧の高いバイオレンスなエレクトロニカ技術なども利用してたり、才能が本当にたっぷり発揮された大傑作だと思う。大大大好きなアーティストがアルバムをサプライズで投下するという喜びももちろんあったし、前作Mulberry Violenceよりも内容や作品のモチーフが私の大好物すぎてテンションが超上がる 笑。1曲目のFirst Rainからその作家性・才能が溢れてて止まんなくて、本当にめちゃめちゃ酔いしれる。こんなに傑作なんだから、カセットテープだけでなく、ヴァイナルのフィジカルとかもリリースしたらいいのに...と思った。(自分が欲しいだけ 笑)

本アルバムは、私的に"大好き中の大好き"みたいな曲をいくつも含んでいるところが本当に魅力的。1曲目のFirst Rainだけでなく、ピアノのメロディーで神話を再生していくようなThe Riverine (M3)、飲み込まれて抜け出せなくなるほどの深いミステリーを感じさせるA New Name (M4)、色褪せた古風な音像に鮮やかな現代的エレクトリックサウンドを対比させる美しさがやばすぎるBlue Savior (M6)など。中でもコンテンポラリー系のエレキピアノ含めて、Trevor Powersの今作は鍵盤楽器のメロディーの美しさを引き出すのが本当に上手だと思う。もともとYouth Lagoonのベッドルームポップの頃から、ピュアで人間味のよく表れた鍵盤メロディーの美しいセンスがあったと思うけど、神話のコンセプトがある大人びた作風の今作でも、そのメロディー力がとても活かされてる感じで本当にたまらない。特に今作だと、ラストの2166 (M8)とか本当にめちゃんこそれで、初めて聴いたときは鳥肌が立ちまくって本当に感動した。鍵盤楽器のメロディー力というだけでなく、ニューエイジアンビエント、バイオレンスなエレクトロニカ、ベッドルームポップ、Trevor Powersの全才能が注ぎ込まれてた素晴らしいナンバーだと思う。それの一個手前の曲が、Aaron Dillowayみたいに超怖いホラーな曲で、そのギャップがめちゃめちゃ効いてるのもずるい 笑。

私が本格的な洋楽オタクに目覚めたのは2016年の3月からなのだけど、Youth Lagoonもその時期に出会ったアーティストで、気が付いたときにはYouth Lagoonはもう存在しなかった...泣。The Year Of Hibernation (2011)とか、人生超ベスト級のアルバムなのだけど、Trevor PowersのライブでYouth Lagoonの曲を観るのが密かに私の夢です...笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Fontaines D.C. - "A Hero's Death"

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完全に信者🙋‍♀️

 鼻血が止まらなくなるくらいとにかく鬼かっこよすぎて発狂してしまうほどにやばいFontaines D.C.、前作Dogrel (2019)のときが「ポストパンクバンドのルーキー」という位置付けであったのだとしたら、今作A Here's Deathの本物感でいったらもう「ポストパンクバンドの神の子」とかそういうランクになりますけど...それでいいですか?笑。って確認したくなるくらい、Joy Divisionが象徴した正真正銘のロックンロールの完全形態として極められてると思う。ポストロック・クラウトロック・インダストリアル、精神の奥底まで徹底的に真っ黒なアンダーグラウンド音楽の超本格的なそれ。聴くと痺れてしまうようなベースのフレーズ1発目でその本物感の確証を得るようなTelevised Mind (M3)、静かに燃え盛るような熱狂が込められたドラムのA Lucid Dream (M4)、そしてダークに染まりきって狂気じみた笑みさえ浮かべるような恐ろしさのあるA Hero's Death (M7)などなど...。70~80年代のガレージ特性を利用した本格的なサウンドデザイン、ストレートなまでに突き進んでいく本格的なポストパンクな演奏、イギリスのダブリンの労働階級を彷彿させる本格的なテーマ、もっというと本格的なメンバーの風貌(なにそれ)、作品を構成してる全ての要素に対して本物感が本当にやばい。(Televised MindのMVにその"本物感"の感じが集約されてると思う。)まるで、Joy Divisionらのポストパンクの遺伝子を継承しただけに収まらず、Fontaines D.C.の中でそれらの信念がもっともっと強化されて、Fontaines D.C.そのものが現代における新しいポストパンクの主になってしまったみたい。前作Dogrelの時点で多くのファンを獲得したと思うけど、ここまでの存在感になると私なんかはもう完全にFontaines D.C.信者になってしまうよ...笑。本当に本当に激アツ。この愛は誰にも止められない。

今作でFontaines D.C.の進化が顕著に表れてる部分は、フロントマンGrian Chattenの歌声が夜空に響くような美しさがたまらないYou Said (M5)や、今までにはないジェントルでディープな雰囲気すら感じさせるSunny (M10)など、反抗的なロックンロールのナンバーとは対極的なセンチメンタルな感情に溢れた曲。前作Dogrelにおける6曲目Roy's Tuneとかでも同じようにセンチメンタルなテイストの楽曲はあったけれど、今作のパートの場合は、もっとサッドネスの感情のリアリティが伝達するような重々しさを重視して表現されてる感じ。それは、Fontaines D.C.のメンバー達が愛している詩的な美しさをより強調する、Fontaines D.C.のもう一つの一面だと思うのだけど、この部分で「彼らが抱えてる思い、彼らが背負っている思いがいかに本物であることか」ということをリスナーに証明するような圧倒的なインパクトがあるのが本当に素晴らしい。ただガムシャラにパンクを演奏するだけでなく、それらの感情源にあたるもっと根本的なエモーションを映し出すような深み。You Saidとか完成度が本当に別格で、空にまで轟くようなギターのメロディーが本当に美しくてたまらない。私的にはこのYou Saidが本作におけるFontaines D.C.の本物感を高めまくるキートラックな1曲だと勝手に思ってる。

私は前作Dogrelでいうところ1曲目のBigみたいなやつが本当に超超超大好きなのだけど、今作は9曲目のI Was Not Bornがそれに相当してた 笑。私がFontaines D.C.に求めてためちゃめちゃノリノリなパンクのグルーヴのやつ。こういうやつが本当に大好きでたまらない。今作はリリース前から、そういうBigみたいな超かっこいい曲が1曲でもあればもう満足だったのだけど、その期待以上にバンドとしてのかっこよさがとてつもないことになっていた...笑。Televised MindのMVとか、もう何もかもが本当にかっこよすぎる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Julianna Barwick - "Healing Is A Miracle"

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その願いが届いたとき、癒しは本領を発揮する

 今作の本当に圧倒させられるところは、黄泉の国を創造するアンビエント作家の中でも指折りの実力者であるJulianna Barwickが、アンビエントの癒しによる救済の奇跡Healing Is A Miracleを心から信じて、それを今までにないくらい力強く作品にぶつけているというところ。ノイズ未使用なのに本格的なシューゲイザーにまで匹敵しそうな極上の快感サウンド、冒頭Insprit (M1)のように重低音のグラビティを利用した最強の浮遊感とか、前作までの作風よりも大迫力なヒーリングミュージックの仕上がりで、「絶対に絶対にお前を癒してやるからな!」というようなものすごく強い気合が感じられる 笑。もともとJulianna Barwickというお方は、多層的な歌声で音のオーロラを生成したり、キリスト教音楽のような光り輝く希望を環境音楽として新構築したり、リスナーを昇天させるような極上の安らぎを巧みに完成させたアーティストの一人だと思う。ただでさえそんな人なのに、今作は今まで以上に迫力のある仕上がりで、リスナーへの癒しをもっと確実に、もっと徹底的にぶつけているというやばさがある。自分のありったけの思いを伝えようとする音楽家としての態度というか、音楽に込める思いや願いのリアリティみたいなのが深く伝わってくるところがあるから本当に泣きそうになる。Mary LattimoreとフィーリングしたOh, Memorry (M2)とか、JónsiをフィーチャリングしたIn Light (M4)とか、一つ一つの楽曲の強さからその意思がよく見てとれると思う。特にこのIn Lightは本当に最高すぎてやばい。鳥の鳴き声のサンプリングで映し出す美しい木漏れ日、その中で現実をしっかり破壊する神秘性。Jónsiのコラボとは近似的に言えばSigur Rosとのコラボ。Julianna Barwickの徹底的な癒しが、心から満たされるSigur Rósの人生最大級の感動と組み合わさるという、、、そんなのありえなくない???笑。このIn Lightは2020年ベスト贅沢ソングだと思う 笑。

そんな今作で私が最も大好きでたまらないところは、Nosaj ThingとフィーリングしたエンディングソングのNod (M8)。この曲は今作の中で最もポピュラーソング的なメロディーのフックを含んだ曲だと思う。アルバムを通じてそれまでに蓄積した徹底的な癒しをさらに高みに上げるような幻想性の強調。フルハイビジョン的なサウンドの美しさが強みのエレクトロニカコンポーザーであるNosaj Thingとコラボレートしてるというところが本当に鬼すぎる。。。こんなことされたらマジでひとたまりもない。。。笑。本当に恐ろしいくらい美しいと思う。Nosaj Thingがめちゃ大好きというのもあるけど、比較的ナチュラルめのサウンドが印象的なJulianna Barwickが、バリバリにエレクトロニカのNosaj Thingと手を組むっていうところのインパクト・ギャップがいいなって思う。ラストソングとしての深みも本当によく出てる。

このアルバムが本領を発揮する瞬間、それはJulianna Barwickが信じた癒しによる救済が、実際にリスナーの中で本物になる瞬間。悲惨的な状況の世の中、息苦しいしんどさが増殖していくような毎日、死にたくなるような憂鬱な感情、この音楽の癒しがそれを克服したとき、自分の中でその癒し・その願いが届いたと感じたとき、それこそがこの作品の最大の価値だと思う。それは、自分の中で求めていた真実に辿り着くような巨大な達成感にも似てる気がする。本当に果てしない感動だと思う。Julianna Barwickの徹底的な癒しを感じとれたその瞬間、その音楽を鑑賞しているときのとっておきの瞬間、心の底から安らぎを得て、身も心も満たされて、誰にも負けないような強い精神力を手に入れられるのだと思う。それがこの作品の本質的な部分、癒しによる奇跡だと思う。もちろんそれはただの一時的な瞬間ではなく、自分の感情の中で履歴として、記憶として残り、自分にとって永遠の存在になるもの。私におけるNodの体験とかは本当にめちゃそれで、徹底的なまでに打ちのめされてしまった。ほんと、In LightとNodがとりわけにやばい。

このアルバム、スタイリッシュに30分でまとめてあるのもナイスワークだと思う。一曲一曲が10分越えの1時間越えのアンビエント作品とかよりもお手軽に摂取できるよさがあると思う 笑。(1時間越えクラスの作品群も最高だけど)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Lianne La Havas - "Lianne La Haves"

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素敵すぎてもう人生ベスト級のR&B・ソウル

 R&B・ソウルに対するこだわりに加えて、そこに込められたハート溢れるメッセージ性、そこから浮き彫りになるLianneのピュアネス、さらに言うとライブ・MVなどからも滲み出る人懐っこさ......アーティストとして総合的にツボすぎて本当にやばい 笑。音楽もめちゃめちゃ大好きだし、Lianne La Havasという一人の人間としても本当に尊敬レベルが高い。特に今作における音楽性に関しては、コンテンポラリー系の丁寧なサウンドが意識されたような極上の味わいのR&B・ソウルだと思うのだけど、"オルタネイティブ"って概念の自由意思みたいなのがもっと投影されまくってて、R&B・ソウルとしての音楽表現・エモーションをめちゃめちゃ豊かにデザインしてる感じ。ただでさえR&B・ソウルという音楽自体が上品なムードの豊かな味わいを十分に持ってるのに、Radioheadカバー然りオルタネイティブロックにもアクセスするようなジャンル的制限の解除もあって、従来のR&B・ソウルにはなかった新しい豊かさ・充実感がある。この芸術的な表現が本当に素晴らしくてたまらない。曲で具体例を挙げると、Crumbのようなジャズ・コンテンポラリーの中にほんのちょっぴりローファイ・サイケデリック感の恍惚をアレンジしてるRead My Mind (M2)とか、ジャジーでありながら同時にドリーミーな音像を合わせたようなGreen Papaya (M3)とか、ギターのカッティング奏法がファンクっぽいけどクラシックギター風のサウンドとして昇華されてるようなCan't Fight (M4)とか。R&B・ソウルの持ち味であるスモーキーな魅力とかビターな美しさのよさをもっと贅沢に感じさせるような特殊なテクニックで本当にやばいと思う。その表現の贅沢化・上品なムードのスケールアップが1曲目のBettersweetからずっと続いてて、アルバムとしての出来栄えがかなりハイレベルなものに感じられる。R&B・ソウルの守備範囲がスーパー狭い私でもノックアウトされまくったよ...笑。

今作で私が最も心奪われたのは、リードトラックの一つであるCan't Fight (M4)。これが本当に大好きでリピートしまくってる(特にMV)。『諦めるべきなのは分かってる。逃げようとしたけどダメだった。この愛には逆らえない』、どこまでも真っ直ぐで純粋な愛が表れたリリックで、とてもとても強力な愛の表現なのに、そこにLianneの豊かで贅沢な音楽のエネルギーが作用して、それらの思いの深みが究極的になってるのが本当にやばすぎる。何回聴いてもめちゃめちゃ心奪われる。MVの一瞬一瞬も本当にやばくて、このビデオでLianneの超絶大ファンになった 笑。(特に最後お辞儀するところが死ぬほどにツボ。)系統的には、私のエターナルベストヒーローのStella Donnellyに相当するような憧れのキャラクター性を感じる。ピュアネスと優しさとユーモア、私もそういうLianneみたいな人間を目指してる 笑。

今作におけるもう一つの傑作ソング、5曲目のPaper Thinもリリックの共感がやばい。"あなたの痛みは本物だって知ってる。自分自身を愛して。でないと誰も愛せない" というストレートな励まし。音楽の和やかな雰囲気もメッセージ性にものすごくマッチしてると思う。この歌詞の内容でLianneの人間性に対する信頼・リスペクトが確信的なものになった 笑。この内容、本当にすごく分かる、めちゃくちゃ友達になりたい。

私的ベストブラックミュージック(ワールドミュージック)は、Janelle Monáe, Ibeyi, Meshell Ndegeochello(←人生ベストソング), Sampha, serpentwithfeet(←ほんとにほんとに死ぬほど好き)Xenia Rubinosなどなど。でもアルバム的にいったらLianneの今作は私的人生ベストブラックミュージック1位の作品かもしれない。私的2010年代ベストアルバムのコメントでもいただいたように、そもそもとして私、R&B・ヒップホップなどの引き出しが本当に少なくてスーパーすみませんって感じなのだけど 泣、ブラックミュージック界隈でStella Donnellyに相当するレベルの大ファンのアーティストを知れたのが本当によかった。話題のRadioheadカバーも本当に素晴らしい。R&B・ソウルによる全く違う現実逃避、本当に新しい景色を見せてくれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Crack Cloud - "Pain Olympics"

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絶望と闘うアーティスト集団

 Crack Cloudのこのアルバムが何よりも優れてると感じられるところは、生きづらさ・精神的な苦痛など、病気的な不健康のリアリティが前衛的に、衝撃的に、ものすごく芸術的に表現されているというところ。アンダーグラウンドで発達したような重苦しくダークなインダストリアル・ポストロック、そしてTVラジオ・ストリート・自然などあらゆる文化・空間を映し出すサンプリングによる未来都市的イメージのニューエイジ、さらには殺意さえ感じられるほどの怒りと不満の暴動を起こすようなハードコアヒップホップ(Favor Your Fortune (M5))...、それらが不安定に合体し、リスナーが絶対に予測できないように繰り出される。その苦痛に満ちた衝撃的な音楽性は、まるで人間が破滅してしまうギリギリのところで耐え抜いているようなとてもしんどい精神状態を想起させられる。自らを癒すためのアプローチとして芸術を生み出すアーティストは多く存在すると思うけど、その中でもCrack Cloudの苦しみのリアリティ表現には本当に本当に感動させられる。(もちろん、他人の不幸で蜜を得る感動ポルノ的な意味合いではなく、純粋に世に生み出された芸術作品としての素晴らしさという意味で。)とても高い才能が感じられるのだけど、特に"Pain Olympics"というアルバムタイトルとか、そのネーミングからだけでもアーティストとしての天才的な素質が確認できるように感じられる。朽ち果てた未来都市のイメージをバックにしたメンバー集合のジャケット写真もそう。演奏メンバーは7人だけど、音楽活動をサポートするチーム全体で考えるとメンバーは総勢約20人、それらの大規模な集団組織としての存在感の魅力もプラスで、世界観が本当に素晴らしい作品だと思う。このCrack Cloudの世界観に対して、大好きなBIG LOVEが商品レビューでAKIRAのネオ東京を引用してたのが印象的だったけど、本当にめちゃめちゃ共感する 笑。あるいは、世界が滅びる寸前の未来からやって来たようなシリアス系のSF的作品の着想の感じも。そんな風に、作品固有のワールドの観点から見ても本当に素晴らしいと思う。

私がこの作品で死にそうになるほど感動したのは、なんといってもキラートラックのThe Next Fix (M4)。ギターリフは濁っていて気持ち悪く、ラップのメロディーは暴力的で腐敗したストリートを演出するよう。それらの苦しみはまるで、人間として必要な何かを失っているような病気的な状態に似ているもので、そこから永遠に抜け出せないようなものすごく深い絶望が感じられる。それでも、仲間達と一緒に騒いだり、一緒に歌を歌たったり、生きることの喜びを知っている。それでも、心が温まる安らぎの感覚をずっと覚えている。病気のように毎日苦しいけれども、その中で一生懸命にもがいてる。それは、生きる気力を失うほど理不尽なまでに残酷で悲しい世界の中で生きている、永遠に癒えない心の傷を抱えた者たちに死にほど響くと思う。私自身、楽曲が物語っているそのエモーションに対して、心に突き刺さりまくって死にそうになるほど感動する。今この文章を書きながら泣くのめちゃめちゃ堪えてる。本当に本当に本当に素晴らしい。MVもそのような意思がよく表現されててやばい、2020年におけるウルトラスーパーベストソングだと思う。

あと今作がとりわけ心に響いたのは、コロナ時代で私達が痛感している社会に対しての生きづらさみたいなフラストレーションを、Crack Cloudが上手に代弁してくれたような部分も大きいと思う。情報が錯綜し、不安は極端に煽られ、精神的な疲労が募っていくばかりの毎日の中、Crack Cloudの音楽が溜まりに溜まった憎しみ・不満の感情と深いシンクロ反応を起こす感じ。私的には、特にハードコアヒップホップのFavor Your Fortune (M5)とか本当にそれで、聴くと身体中が熱くなるような最高の興奮を発散できてめちゃめちゃスッキリした。疲れを取り除く癒し的な音楽もいいけど、爆発力のある音楽も効果的なんだなって改めて感じた。

去年に2010年代の総括をしてるときから、2020年の音楽はどんな風になるのかをずっと楽しみにしてた。だけど、例えばエレクトロニカ技術による音響クオリティのこれ以上の発達なんて全然想像できなかったし、未来の音楽のイメージなんて全然分からなかった。Crack CloudのPain Olympicsは、そんな未来の音楽を感じさせる2020年代の第一歩な作品な気がする。それくらいの衝撃度、そのくらいの爆発力、本当に感動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

7月ベストアルバムのプレイリスト↓

温の「2020年7月ベストアルバム(温)」をApple Musicで

 

 

 

 

★7月ベストソングTOP10

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10. My Morning Jacket - "Climbing the Ladder" (The Waterfall Ⅱ)

9. Jessy Lanza - "Face" (All The Time)

8. Skullcrusher - "Trace" (Skullcrusher - EP)

7. Protomartyr - "Processesd By The Boys" (Ultimate Success Today)

6. Madline Kenny - "Sucker" (Sucker's Lunch)

5. Kaammal Williams - "One More Time" (Wu Hen)

4. Beckey And The Birds - "Wondering" (Trasslig)

3. Land Of Talk - "A/B Futures" (Indistinct Conversations)

2. Taylor Swift - "this is me trying" (folklore)

1. The Beths - "Dying To Believe" (Jump Rope Gazsrs)

 

プレイリスト↓

温の「2020年7月ベストソング(温)」をApple Musicで

 

 

 

 

 

★7月3週目リリースの感想・ランキング

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2020年上半期ベストアルバムまとめ

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順不同で2020年上半期ベストアルバム36枚と月間ベストアルバムのまとめ、あと追加でその他の私の中で話題になった問題作についても少し述べる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2020年上半期ベストアルバム

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1行目

Andy Shauf - "The Neon Skyline"

Bombay Bicycle Club - "Everything Else Has Gone Wrong"

Braids - "Shadow Offering"

Destroyer - "Have We Met"

Empty Country - "Empty Country"

Erik Hall - "Reich: Music For 18 Musicians"

Eve Owen - "Don't Let The Ink Dry"

Grimes - "Miss Anthropocene"

HAIM - "Women In Misuic Pt. Ⅲ"

2行目

Happyness - "Floatr"

The Homesick - "The Big Exercise"

Junk Drawer - "Ready for the House"

Khruangbin - "Mordechai"

Lorenzo Senni - "Scacco Matto"

Lyra Pramuk - "Fountain"

Moses Sumney - "græ"

Mumrunner - "Valeriana"

Nada Surf - "Never Not Toghther"

3行目

Nap Eyes - "Snapshot of a Beginner"

Nicolas Jaar - "Cenizas"

Owen Pallett - "Island"

Perfume Genius - "Set My Heart on Fire Immediately"

Pet Shimmers - "Face Down in Meta"

Phoebe Bridgers - "Punisher"

Pinegrove - "Marigold"

Real Estate - "The Main Thing"

Rolling Blackouts Coastal Fever - "Sideways To New Italy"

4行目

Sault - "Untitled (Black Is)"

Sorry - "925"

Sports Team - "Deep Down Happy"

Tame Impala - "The Slow Rush"

Tennis - "Swimmer"

Trace Mountains - "Lost In The City"

Waxahatchee - "Saint Cloud"

Wilsen - "Ruiner"

Yves Tumor - "Heaven To A Tortured Mind"

 

 

 

 

月間ベストアルバム(ランキング)

(感想一覧→)https://t.co/LYM4yaLf2g?amp=1

1月ベストアルバム

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10. Georgia - "Seeking Thrills"

9. Ethan Gruska - "En Grade"

8. Andras - "Joyful"

7. Frances Quinlan - "Likewise"

6. Dan Deacon - "Mystic Familiar"

5. Destroyer - "Have We Met"

4. Andy Shauf - "The Neon Skyline"

3. Bombay Bicycle Club - "Everything Else Has Gone Wrong"

2. Pet Shimmers - "Face Down in Meta"

1. Pinegrove - "Marigold"

 

2月ベストアルバム

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10. Soccer Mommy - "color theory"

9. Caribou - "Suddenly"

8. Arca - "@@@@@"

7. Wilsen - "Ruiner"

6. Tennis - "Swimmer"

5. Tame Impala - "The Slow Rush"

4. Real Estate - "The Main Thing"

3. The Homesick - "The Big Exercise"

2. Nada Surf - "Never Not Toghther"

1. Grimes - "Miss Anthropocene"

 

3月ベストアルバム

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10. The Wants - "Container"

9. Soleima - "Powerslide"

8. Four Tet - "Sixteen Ocean"

7. Ultraísta - "Sister"

6. Sorry - "925"

5. Lyra Pramuk - "Fountain"

4. Nicolas Jaar - "Cenizas"

3. Nap Eyes - "Snapshot of a Beginner"

2. Empty Country - "Empty Country"

1. Waxahatchee - "Saint Cloud"

 

4月ベストアルバム

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10. EOB - "Earth"

9. Laurel Halo - "Possessed"

8. Kluster B - "B"

7. Jerskin Fendrix - "Winterreise"

6. Empress Of - "I'm Your Empress Of"

5. Laura Marling - "Song For Our Daughter"

4. Yves Tumor - "Heaven To A Tortured Mind"

3. Junk Drawer - "Ready for the House"

2. Lorenzo Senni - "Scacco Matto"

1. Trace Mountains - "Lost In The City"

 

5月ベストアルバム

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10. The 1975 - "Notes On A Conditional Form"

9. Kaitlyn Aurelia Smith - "Mosaic Of Transformation"

8. White Denim - "World As A Waiting Room"

7. India Jordan - "For You"

6. Happyness - "Floatr"

5. Perfume Genius - "Set My Heart on Fire Immediately"

4. Eve Owen - "Don't Let The Ink Dry"

3. Erik Hall - "Reich: Music For 18 Musicians"

2. Moses Sumney - "græ"

1. Owen Pallett - "Island"

 

6月ベストアルバム

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10. Hinds - "The Prettiest Curse"

9. Clap! Clap! - "Liquid Portraits"

8. Photay - "Waking Hours"

7. Sports Team - "Deep Down Happy"

6. Khruangbin - "Mordechai"

5. HAIM - "Women In Misuic Pt. Ⅲ"

4. Phoebe Bridgers - "Punisher"

3. Sault - "Untitled (Black Is)"

2. Braids - "Shadow Offering"

1. Rolling Blackouts Coastal Fever - "Sideways To New Italy"

 

その他ベストアルバム

worried10fire.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その他 私の中で話題になった問題作

春ねむり - "LOVETHEISM"

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 友達が「amazarashiとでんぱ組を足した感じ」と例えていたのだけど、amazarashiもでんぱ組も全然好きじゃない私...笑。でも今作のRiotという曲だけは今年上半期の超絶ベストソングだった。耳が焼き焦げるような熱エネルギーを持ったギターのバッキングがとにかく神なのだけど、その絶大なエネルギー、暴動(Riot)そのものが、「音楽に命を宿す」という歌詞のテーマにとてもリンクしてて死ぬほど泣きそうになる。「私が音楽を奏でるのはあなたの心を目覚めさせるため、そしてそれによって私が生きるため」。やっぱり歌い方とかメロディーは好きじゃないのだけど、『君の命になる』というリリックの部分と、それに組み合わせたバッキングに関してはめちゃめちゃ大好き。まさかアイドルみたいにキュートなボーカリストのアニソン風な邦楽でここまで感動するとは思わなかった...笑。(それがよさだと思うけど)

 

 

 

 

 

 

 

Fiona Apple - "Fetch The Bolt Cutters"

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 私が最高に大好きなPaste Magazineの上半期ベストアルバム50で、1位は当然Waxahatcheeになるだろう~と思ってたら、、、笑。メディアの高評価に目をつむって可能な限り心をニュートラルにして、何も期待せずフラットに聴いても、やっぱり海外の人レベルでよさを感じることができてない...笑。特にPitchforkの10点がノイズになりすぎてる 笑。(人生ベスト1位のGY!BEの2012年作に9点以上つけてるからPitchforkは結構信頼してる)。強いていうのであれば、極力アナログなやり方でもっと人間の動物的な衝動・ワイルドネスを表現してるところはいいなぁと思う。特に7曲目のNewspaperとかは、そのワイルドネスがホラーに差しかかるレベルで表現されてたり。微妙なニュアンスでアップテンポに音楽を加速させて気迫を作っていくようなところも好き。このNewspaperに関してはよさが理解できた、、、気がする、、、笑

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベストソング

The Strokes - "The Adults Are Talking"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベストアーティスト写真

Retirement Party

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あとがき

7月の1位はFontaines D.C.かなぁ...笑(予想)