アルバム感想(温)

My Favorite Music

「2020年10月ベストアルバムTOP10」感想

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今月はActress、Autechre、Call Super、OPN、Rian Treanor、Theo Parrishなどなど、エレクトロニカがめちゃめちゃ美味しいひと月だったなと思う 笑。

 

今月のベスト・オブ・ベストなアルバムTOP10の感想をランキングで

1位めっちゃ迷った(TT)

(上位3つがぶっちぎりトリプル1位)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. Rian Treanor - "File Under UK Metaplasm"

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至極の16ビート

 Flying LotusのCosmogrammaのような瞑想的でスピリチュアルなパワーを発揮していくフットワーク/ジューク・テクノ。目まぐるしく展開しまくる高速のエネルギーを常に所持していて、精神が高ぶるような圧倒的な衝動と興奮に満ちてる。至極の16ビート、閃光を放つような瞬発的なサウンド、まるで痛みすら伴うような美しいインパクトを連続的に繰り出してて本当にめちゃめちゃかっこいい...笑。その音楽体験は、瞑想的なメンタルトレーニングにも少し似てるところがあって、一般的なエレクトロニカ作品よりも私得なテーマ性がある。1曲目のHypnic Jerksからその圧倒的な興奮に取り憑かれてしまうのだけど、コードもメロディーも持たないような人間味の欠如した音楽性がより一層ドキドキ感を高めてる。そこからさらにスピリチュアルなパワーを取り出していくような3曲目のMirror Instantも本当に素晴らしい。16ビートの表拍と裏拍を認識できなくさせるようなカオスチックなリズムの構築、スリル満点なテクノで本当に最高...。ちなみにラスト9曲目のOrders from the Pausingみたいなかわいいリズムの曲もめちゃよかった 笑。

瞑想的でスピリチュアルなニュアンスがあるフットワーク/ジューク・テクノ、それだけでなく、悪に染まるようなアンダーグラウンドのClosed Curve (M5)や、世界を破滅させるように暴れ狂うハードコアのMetaplasm (M8)などのトラックも本当によかった。もともと、スピード力や瞬発力のエネルギーをフルで利用したカオスチックなリズムワークが今作の素晴らしいところだと思うけど、そのリズムワークのカオスなところがハードコアの音楽性にもよく適応されてる。強烈で絶大なインパクトを残すような印象、本当に激アツにかっこよかったよ...笑。

数々のエレクトロニカ作品がリリースされた今月でしたが、その中でも今作はトップレベルに好きだった。もちろん、AutechreやOPNも最高だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Actress - "Karma & Desire"

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ピアノの亡霊

 ゴースト出現型のエレクトロニカ、なおかつゴースト出現型のピアノ・アンビエント。ダウナーでとても気持ちいいグルーヴを体現した至高のダンストラックとしてのよさに留まらず、クラシックピアノを強調したアルカイックな趣が漂う世界観としてのよさも半端ない。心霊的な怖さを演出する妖しくてクールな魅力が本当に素晴らしい作品だと思う。ダイナミクスを小さくして妖しさの魅力を抜群に引き立てたようなAngels Pharmacy (M2)、そこから一気にスローテンポに失速させて生気を吸い取るようなダークネスを発動させていくRemembrance (M3)、ピアノのメロディーがとてつもなく不気味なのが本当に美しいSave (M6)、まるで気が狂ったように激しくハイスピードに怖さと興奮を掻き立てていくLoose (M14)...、ダンストラックもアンビエントもどちらも本当に高品質。私が大好きすぎるネオソウル作家のSamphaや、ヴァルキリーでお馴染みテッサ・トンプソンの異母妹にあたるZselaなど、今作のコンセプトによくマッチするユニークなアーティスト達をフィーチャリングしてるところもいい。中でもMany Seas, Many Rivers (feat. Sampha) (M10)とかに関しては、Samphaのソウルフルなボーカルスキルを負の感情に適応させたような新しさがある。今まで自分が持ってた従来のSamphaのイメージ像が崩れてしまうほどホラーな存在感が出ててめちゃおもしろかった 笑。フィーチャリング要素でいうと、イタリアのピアニストであるVanessa Benelli Mosellのピアノソロトラックも本当に美しい。非エレクトロニカな曲もアルバムの中で上手に適合させるハイセンス。意外性もあるし、本当に大好きな作品。

今作が月間ベストアルバムにランクインした最も大きな要因が、やっぱり5曲目のLeaves Against the Sky...。この曲はもう本当にすごく完璧 笑。今作は心霊的な怖さ・妖しさの負の感情がよく表れたアルバムだけど、この曲が漂わせるその負の感情には、失望感にも似た重々しくてネガティブな悲しみの感情がある。聴くと憂鬱になって身体が動かなくなってしまうほどの悲しみなのだけど、その感情を美しくダンストラックとしてクールに描き出すような芸術性が本当に素晴らしすぎてる。めちゃめちゃ綺麗だしかっこいいし、病みつきになるほど大好き。というか、アンビエントの特色もある世界観の中で、ダンストラックのクールなかっこよさがより強調されるようなアルバムとして設計されてるところが特に大好きだった。

他にも、Leaves Against the Skyと同じタイプのLoveless (M11)や、SCUBAのような安定的なダンスフロアを創出したTurin (M15)もとてもよかった。フィーチャリングのAura T-09もナイスワークだし、Turinに関しては長尺トラックなのがよく似合ってる。実は今までほぼ全てActressの作品にパッとしなかった私だけど、今作に関しては猛烈にハマリました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Bartees Strange - "Live Forever"

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2020年のベストエモ

 Nilüfer Yanyaのようにブラックミュージックとロックの境界線を破っていくような新時代のエモ・ロック。エレキギターをブーストさせていくようなロックとしての品質、幻想さえ生み出してしまうような濃厚でマジカルな音色、そこから生み出されるハートウォーミングなシンパシー、胸が締め付けられるように切ないエモーション...。今年リリースされたエモ・ロックの作品の中でも、R&B・ヒップホップ(Kelly Rowland (M4), Mossblerd (M8))も織り交ぜる唯一無二なスタイル、オルタネイティブロックとしてのバリエーションのおもしろさ、一つのアルバムとしての総合的な芸術としてめちゃめちゃ傑作だと思う。リードトラックのMustang (M2)を始め、Boomer (M3)、In a Cab (M5)、Stone Meadows (M6)、Flagey God (M7)など、かっこよくてグッときまくる名曲が揃ってる。ドリーミーな美しさを兼ね備えたエモってだけもう最高なのに、ロックならではの激しいグルーヴ感とか、ギターをスプラッシュさせて音を広げていくような気持ちよさとかもあるのがいい。In Cab (M5)に関しては、Barteesのハイトーンなボーカルとトランペットのハーモニーなども最高だったり。また、Flagey God (M7)なんかはハウスミュージックの音楽性を取り入れたクールでメランコリックなよさもあったり...。オルタネイティブロック、エモ・ロックとして豊かで美しいメロディーに富んでいて、紛れもなく素晴らしかった。

Bloc PartyTV On The Radio、最近でいうとYves Tumorなど、黒人歌手によるソウルフルなボーカルのロックってやっぱりたまらなくツボなのだけど、そんなBartees Strangeの今作の中でもMustang (M2)が1番大好き。ギターを大音量でかき鳴らしていくようなエモ・ロックのイズムがよく表れてるし、疾走していくような加速力でありったけのエモがどんどん強化されていく感じが本当にやばい。名曲揃いの今作においても、Bartees Strangeイチオシのナンバーだと思う。

レーベルのMemory Musicって初めて知ったのだけど、ここまでの名作を出されてしまうと今後リリースされる作品にも期待が高まりまくってしまう...笑。アーティスト含めて今後の活躍を応援したい(フィジカルを買おう)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Helena Deland - "Someone Now"

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「ダークネス × ポップネス」な革新性

 PortisheadGrouperみたいにめちゃめちゃ陰湿なダークネスが装備されてるのに、ソフトで明るいタッチも多く含まれてる大人のインディーポップな感じ。ダークなキャラとしてのかっこよさ、ポップス音楽としてのハピネス栄養素、それらのアンバランスな緊張感...。多様なよさを一体した未知すぎる音楽性でものすごく革新的で画期的。本当に超天才でやばいと思う。Cigaretts After Sexのような濃厚でセクシーなドリームポップにも近い世界観があるけど、そのイメージに反するようなドラムマシーンのグルーヴィーなアクテビティがあったり。さらにはAngel Olsenのように繊細でめちゃ丁寧なボーカルや、それらのフォーキーな印象もある。一見共存しなさそうなそれらのセンスによって、ダークで大人びたポップのキャラクターを一発で作ってるところが本当に驚異的だと思う。特にその特色を100%体現するようなHelenaのメロディーがすごすぎて本当にじわじわくる。1曲目のSomeone Newとかまさにそう。闇に溶けていくような催眠的な感情と、それを体感するエクスタシーとして明るい感情が同時に得られるようなフィーリング。ダーク感もポップ感もちょうど均一になってるバランスで、本当に素晴らしいなと思う。今作のタイトルトラックでありリードトラック、この1曲だけでHelenaの天才っぷりが分かった 笑。

Someone New (M1)ももちろんそうだけど、今作は本当に名曲揃いだなと思う。ダークな世界を優しく照らすような愛おしさが含まれたTruth Nugget (M2)、クールでポップなメロディーをソウルフルに歌い上げるComfort, Edge (M6)、曲名の世界観だけでもう100点満点なSmoking at the Gas Station (M9)、あどけなさがある世界の中でドリーミーな愛情を織りなしていくMid Practice (M11)、深い眠りに落ちていくように心奪われる美しさと快感が込められたFill the Rooms (M13)...。ダークでドリーミーな世界観も、愛おしさや可愛さすら感じられるピュアなフィーリングスも、本当に全て素晴らしい。他にも、スネアドラムのザラザラした音色で雨が降るような情景を演出したり、ピカピカ光る電子音のアクセントを僅かに装飾したり、細部にわたって音楽が作られてるところも本当に大好き。めちゃめちゃ作りこまれてると思う。

ちなみに1番大好きな曲は5曲目のPaleです...笑。中盤に出てくるフレーズがダークすネスが本当にやばい。4曲目まで残っていたポップな感覚とのギャップが出まくってると思う。しかもこれ完全にDARKSIDEじゃん! 笑。(例えばGolden Arrowの5分27秒あたり)。まさかインディーロックの女性SSWの音源で、DARKSIDEみたいなリフが聴けるとは思わなかった 笑。本当に鼻血レベルでかっこいい。

今作のダークでポップな作風の感じ、今年だとSorryとかとも近い音楽性を感じた。Sorryの作品も2020年を代表するインディーロック作品だった思う。こういうダークな音楽、個人的には90年代インディーロックシーンのエスケイピズムの精神と重なる部分があって本当にハマる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Knox Fortune - "Stock Child Wonder"

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エモすぎて死にそうなるダンスポップ

 Handsomeboy Techniqueみたいなヒップホップ調のダンスポップな作品。The Go! TeamとかKero Kero Bonitoとか、ヒップホップ調のイズムだからこそ出せる陽気で純粋なハピネスのダンスポップ作品がもう超超超大好きなのだけど、Knox Fortuneの今作はそれらの大好きエッセンスが目一杯に詰め込まれてて思わず膝から崩れ落ちそうになる...笑。1曲目のJust Enoughから最後のAlwaysまで、ヒップホップ、ポップ、ディスコ、レゲエ、自分の大好物ソングしかない。Chance The Rapperもほとんど聴かないし、Knox Fortuneのことをこのアルバムで初めて知ったのだけど、あまりのよさにええーー?!ってなった 笑。今年ベストヒップホップはSoleimaで確定かなと思ってたけど、今作であっさり更新されてしまった..。(ヒップホップといえどラップないけど。)

例えば6曲目のChange Up。ヒップホップ調のダンスポップならではの元気なモチベーションで、寂しくて切ない気分も心弾むようなルンルンのフィーリングに変えてくれる。それはまるで、寄り添ってくれるような励まし・思いやりのフィーリングで心を満たしてくれる感覚。もうめちゃめちゃ素敵でたまらなく好き。9曲目のShirtlessもそう。こちらに関しては、さっぱりしたアコギの雰囲気がKnox Fortuneの陽気なハピネスと絶妙によく合う。心地よくに昇っていくようなメロディーラインも本当に完璧、気持ちがどんどんノっていく。

そして今作における最高of最高なベストトラックが、なんといっても4曲目のCompromise。陽気で純粋なハピネスを最高に甘酸っぱくテイスティングしたようなナンバー。本当にエモすぎて何度聴いても死にそうになる。グロッケン系のキラキラしたサウンドとか、ピュアネスを掻き立てまくる楽曲の設定が本当に大好きすぎてしんどい。これまで聴いてきた数々の大好きソングを抑え、ヒップホップ系の音楽の中で世界一大好きな曲となってしまった。グルーヴも本当に好き。というか全曲そうだけど、Knox Fortuneのジャジーでグルーヴィーなドラムワークって本当にむちゃくちゃよい。

他にも、派手になりすぎず適切なダイナミクスに調整したR&B・ポップのSincerity (M3)とか、究極的なまでにかわいいリコーダーのキャラを抜擢してしまうやばいセンスのAlways (M11)とかも本当によかった。今作は本当は月間ベストアルバムのTOP3レベルの作品だったのだけど、上には上がいたよね、、、笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 5. Mourn - "Self Worth"

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ガレージロックの理想を叶えた

 不要な装飾を一切施さないオーソドックスな純正ギターロック・ガレージロック。鋭い切れ味、アグレッシブな攻撃力、そしてお手本のようなロックンロールの姿勢...。ギターのリフもしっかり大事にする王道派のロックバンドで、前作Sorpresa Familia (2018)も相当な傑作だったと思うのだけど、今作は本当に信じられないくらいネクストレベルへ発展した驚異的に最高な作品で本当にびっくりした...笑。ガレージロックが所有するかっこよさ・楽しさを全て最大に発揮できてるし、音圧も丁寧に強化されてたり、前作6曲目Orangeに相当するようなメランコリックな感情描写も洗練されてる。さらにはStay There (M7)のように、Mournのロック精神をより高みにあげるようなハードロック・メタルの鬼激しい音楽性もあったり 笑、エモーショナルなメロディック要素(The Family's Broke (M12))も前作以上に磨きがかかってると思う。もちろん、従来の切れ味が高いロックンロールのよさも全く失ってない。それどころか、Worthy Mushroom (M10)のギターとか、音作り以外にレコーディングも込みでそれらのサウンドがより高級になってる感じがする。迫力たっぷりの鬼かっこいい作風になったけど、インディーズのロックバンドの雰囲気も残っていて、より幅広い層に刺さる作風になった感じ。かつては「クラスの男子のバカ話に飽きた」と言って始まった高校生のガールズバンドだったのに、まさかこんなにプロ顔負けのロックンロールバンドに成長するなんて...。Ha, Ha, He (2016)収録のGertrudis, Get Through This!Irrational Friendのときから既に本物感は出てたと思うけど、今作の完成っぷりには本当に感動した。

サウンド的にも精神的にもびっくりするほど進化したのに、それらを超越してしまうほどのネクストレベル要素もあるのが本当にやばい。それがGather, Really (M5)とIt's a Frog's World (M9)の2曲。80年代に流行ったコーラスのエフェクトによる新しいエモーションの装備。まるでガレージロックからシューゲイザーに差し掛かるような音楽性の発展があって、今までにはなかった豊かでカラフルなヴィジョンを見せてくれる。ガレージロックの最高のかっこよさ、心躍るワクワク感と興奮、色鮮やかな美しさ、そしてそれらを激しく奏でるMournの強い精神力...。感動がいくつも重なるやばさ、最高すぎるから思わず大音量で聴きまくりたくなる。この2曲は本当に本当に素晴らしかった。

私はMournのベース担当のレイア様の大ファンなのだけど、今作はベース(リズム隊)の最高の見せ所なApathy (M11)とかもあって大変私得だった 笑。この曲、火力が高くて本当に超最高...。実は2019年の初来日のとき、レイア様は演劇の都合で来れなかったためにまだその姿を1度も拝められていないのだけど、Apathyのレイア様のベース!!ぜひぜひ生で観たいです!!!!(来日祈願爆死)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Pet Shimmers - "Trash Earthers"

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2020年の最高傑作連発シリーズ

 夢と魔法がたくさん詰まったおもちゃ箱のようなサイケポップ・ドリームポップ、前作Face Down in Meta (2020)が最高に切なくて超エモーショナルな大大大傑作だったのに、今作もそれと並ぶくらい愛おしくて素敵なメロディーが詰まりまくってる。本当に傑作すぎてありえない...笑。Nicolas JaarやSaultと同様、2020年の最高傑作連発シリーズ。特にFace Down in Metaは2020年ベストアルバムのTOP10レベルだったし、Pet Shimmersがめちゃめちゃ大好きだったので本当にありがとうございます(土下座)って感じだった 笑。

音楽を聴いててメロディーが最高すぎて思わず泣いちゃう~みたいな瞬間ってあると思うのだけど、Pet Shimmersの作品は本当にそればっかり。今作だと、心がときめく可愛いフィーリングスのUhtceare (M1)、センチメンタルな思いをノイジーなギターソロにのせて奏でるLive-In Atrocity (M5)、シューゲイザー的なかっこよさすら備えてあるBig Ideal (M9)などなど、本当に最高のメロディーだらけ。そこには、自分の中のピュアネスが引き出されるような、童心がくすぐられるファンタジーな世界観もある。根本としてもう私にとってツボすぎる作風だし、楽しくて切なくて、胸がいっぱいになって満たされまくる。本当に素敵で果てしなく愛してる。

そんな今作における私の超絶お気に入りトラックが、3曲目のAll Time Glow、7曲目のMadonna's People、10曲目のThe Mouth Ofの3つ。どの曲も迫力を作ってそのファンタジーワールドがダイナミックに繰り広げられてる。サイケデリックでドリーミーな癒しも、最高にセンチメンタルなエモーションも全て濃密になってて、顔面がぐちゃぐちゃになるように泣きそうになってしまう。中でもAll Time Glow (M3)に関しては胸が締め付けられまくる泣きメロが本当にやばすぎる。このAll Time Glowに関しては、Face Down in Metaの曲らと同等かそれ以上に好きかもしれない。Madonna's People (M7)のテンションが最高潮に達する感動的なパッセージとかも本当に最高。

今作は、前作と比べるとロックよりインディーポップな気色が強い作品かなと思った。前作Face Down in Metaは3曲目Mortal Sport Argonaut、9曲目Nobody: Me:、10曲目Post-Dick Circle Fuckなどのようなアップテンポで激しいビートの曲が特徴的だったから。Nicolas JaarやSaultもそうだけど、年間ベストでダブルランキングが避けられない作品かなと思う 笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Loma - "Don't Shy Away"

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"遠慮しないで"

 私の中で伝説級に大好きなあのCross Record(Emily Cross, Dan Duszynski)と、Okkervil RiverやShearwaterでお馴染みのJonathan Meiburgによるコラボ。Cross RecordのホーリーなエモーションとShearwaterの広大でパワフルな音楽性をクロスオーバーさせて、それらの相互的な反応で様々な魔法を生成していくようなスーパーすぎるバンド、もう本当に死にそうになるくらい私のツボに刺さりまくる...泣。今作も前作ST (2018)と同様、サウンド・メロディー・世界観、アルバムの中に存在する魔法の数が本当にすごい。例えば1曲目のI Fix My Gaze。霧がかったシンセの電子音とクラリネットのまろやかな音色をミックスし、Lomaにしか描けないような未知の世界へリスナーを導いていく。そこには、エレクトロニカの世界とクラシックの世界の狭間に落ちていくような深い謎に包まれた怖い感覚がある。もうこの1曲目の時点ですごくLoma!笑。そこから展開されるOcotillo (M2)は、クリアで綺麗なギターフレーズを聴かせつつ、それらの聖なる魔法性を高めていくようなJonathan Meiburgのパワーをよく発動するナンバー。リードトラックのHalf Silences (M3)では、Lomaで特徴的な宗教的なダークネスをオルタネイティブロックとして強化させてたり。(この曲はMVも大好きすぎる)。他にも、東洋系の民族楽器としてのシンプルな魔法(Elliptical Days (M4))、心をかき乱すスリルを演出するピアノメロディーとしての魔法(Breaking Waves Like a Stone (M7))なども。サウンドそのものがとても洗練されてて美しいし、何よりEmily Crossの解放的な聖なる歌が本当に半端ない。魔法的な感情に溢れたメロディーを奏でるLomaの音楽ならでは喜びが本当に溢れてる。新譜リリースのアナウンスから超超超楽しみにしてたけど、今作もバッチリ最高だった。

今作で忘れられないほど強烈なインパクトを残してるのが、タイトルトラックのDon't Shy Away (M10)。こちらは今作の中で最もEmily Crossとしての思想が反映されてる曲だと思う。ホーリーなエモーション、宗教的なダークネス、それらに圧倒的なグラビティを付加して実現する究極的なリラクゼーション。音楽の魔法のリアリティを高めるために、繊細な音の一つ一つに魂を込めたような音楽。"遠慮しないで" という印象的なフレーズには、死に逝く人に寄り添うデス・ドゥーラのボランティア活動をしてるEmilyの祈りの意思が浮き彫りになっている。Lomaの渾身が注がれた今作屈指の大名曲、私がCross RecordやLomaのことが果てしなく大好きな理由がここにある、もう喉から手が出るほどその思いを欲していた。本当に大好きすぎてやばい。

前作ST (2018)との異なる点でいうと、今作はGiven a Sign (M5)のようなオルタネイティブロック系の楽曲が強いかなと思う。この曲だけでも本当に色んな魔法が込められてると思うし、アップテンポで勢いのあるロックとしてのかっこよさもあってめちゃめちゃいい。こういう曲はCross RecordにはないLoma独自のナンバーだと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Adrianne Lenker - "songs / instrumentals"

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鈍感でいることが不可能になる

 今まで出会ってきた音楽の中でも、素朴なフォークのテイストの音楽でここまでリスナーの感受性を拡張していくような多感なアーティストは他にいなかったと思う。「嬉しい」とか「悲しい」とかの単純な感情の次元では全く表せないような多次元的な感情。そしてその複雑で美しい感情を巧みに表現するテクニック。心躍る楽しそうな雰囲気もビターなテイストで描いたり(two reverse (M1))、安らぎの中にも僅かに痛みを生じさせたり(ingydar (M2))、それらのとても繊細な感情を微妙に時間変化させて流動させていったり(not a lot, just forever (M9))。普段の日常では感じることがない未体験な領域のフィーリングの瞬間が本当にたくさん存在していて、自分が血の通った生身の人間であることを認識させるような生々しい感覚の特別なリアリティがある。鈍感でいることが不可能になるくらい、本当にとつてもなくセンセーショナル。前作Abysskiss (2018)も本当に素晴らしかったけど、今作もとてもとても美しかった。

今作はリードトラックのanything (M3)が本当にやばすぎると思う。Adrianneの多次元的でこの上ないほどセンセーショナルな歌の魔法で、愛おしくてかけがえのない大切なフィーリングを呼び覚まし、そこに色鮮やかな輝きを宿していく。"I don't wanna talk about anything"、"I wanna kiss, kiss your eyes again"...、ただでさえAdrianneのセンセーショナルな歌のメロディーが神がかったよさなのに、リリックが死ぬほど刺さって涙がボロボロ零れる。この歌を聴くと、自分の感情や命がいかに豊かで素晴らしいものなのかを思い知らされる。なんて嬉しい作品なのだろう。

そして本作の場合、zombie girl (M8)のように、環境音楽を引用したアルバムのコンセプトも本当にたまらない。Adrianenが感じた自然の情景、芳醇な香り、それらのありったけの美しさをリスナーと共有してくれる。私的には、そういう世界の中でAdrianneが弾き語りをするという世界観の設定がもう本当に大好きすぎてやばい。ギター一本で無限の感情を創造してしまう彼女の存在感をもっと特別にしてる感じ。そういう点でinstrumentalsも本当に素晴らしかった。

Masterpiece (Big Thief) (2016)、Capacity (Big Thief) (2017)、Abyskiss (Adrianne Lenker) (2018)、U.F.O.F. (2019)、Two Hands (2019)、そしてsongs / instrumentals (2020)...傑作の連発マジですごい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Jónsi - "Shiver"

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"こんな今の時代でも生きててよかった"

 刺激的で鋭いサウンド、胸が張り詰めるような恐ろしい緊迫感、凄まじいダークネス...。そんなカオスな世界の中でも、生きてることが嬉しくてたまらなくなるような祝福を与えてくれる。世界がどれだけ残酷になっても、人間は人間の心を永遠に失わないんだって教えてくれる。初めて聴いたときには思わず号泣してしまった。私の中で世界最大の喜びと愛と希望と夢と天国を恵んでくれるSigur Rósの感動が、2020年以降の未来になってもずっと続くのだということを感じて、目ん玉の神経がぶち切れてしまいそうになるくらい泣いた。今の時代も捨てたものではないって、心の底から思えた。こんな今の時代でも生きててよかったって本当に思った。

今作は、今までのJónsiやSigur Rósが持っていたオーケストレーションシューゲイザーのネイティブなテクスチャが無くなり、コンピューターグラフィックスやVFXのようなテクノロジーによる表現様式に依存した作品。ソフトでフローラルな空気が充満していた前作Go Do (2010)からは考えられないくらいサウンドがメタリックで、自然的なものやアナログ的なものが全て滅亡したような未来の世界が繰り広げられてると思う。それでも、人間の心に触れるJónsiの命のメロディーが溢れてる。音響エレクトロニカのアプローチでJónsiのエモーションにもっと臨場感をプラスしたExhale (M1)、心奪われるイルミネーションの絶景を見せてくれるようなCannibal (M3)、デジタル処理の効果で祈りの思いをより大胆に強調するエレクトロニック教会音楽のSumarið sem aldrei kom (M5)...、どの曲も先進的でサイバネティックな感覚すら含まれてるけど、血が通った生々しい人間としての感覚、熱を伝える心臓の鼓動、心を満たす圧倒的な多幸感、絶対的な優しさ、従来のJónsiやSigur Rósに特徴的だった歌のエモーションは健在。というか、今作の未来的で非人間的な音楽性によって、それのJónsiの生々しいエモーションの存在感がもっと強烈になった感じがする。4曲目のWildeyeとか、動物的な質感が死んだ硬くて冷たいサウンドのエネルギーが恐ろしくて異常じみてるけど、そこにJónsiの生々しい歌声を加えて、感情や愛をもっと濃い存在にさせるようなコントラスト・魅せ方があったり。

極めつけは9曲目のSwill、、、今月私のぶっっっちぎりベストアルバムな今作におけるベストオブベストなトラック。先進的で未来的なエレクトロニカの世界でJónsiの愛を力強く確立するような曲。ロボティクス、仮想空間、人工知能...、自然的なものやアナログ的なものが全て滅亡してしまう時代で、身体がどれだけ機械的になり、人類がいくらサイボーグ化したとしても、人間は人間の感情をずっと維持し続ける。技術がどんどん進化して新しい時代になっていっても、新しい人間らしさが生まれるだけ。そこには絶望ではなく、胸がいっぱいになるようなワクワクする希望がある。そういうことを力強く象徴したJónsiのこの曲にはもう本当に打ちのめされてしまった。本当にボロボロになるまで泣いた。2020年忘れられない名作中の名作、本当に本当に素晴らしい。

Jónsiがまさかここまで前衛的なエレクトロニカをやるなんて思ってなかった。Salt Licorice (with Robyn) (M7)とかちょっと異色ポップナンバーすぎて未だに飲み込めてない...笑。それでも、各アルバムに絶対的な名曲を必ず用意するSigur Rós・Jónsiの伝統はそのまま。2020年になっても心から愛してるJónsiの音楽と出会えて本当に感無量だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

プレイリスト Spotify

2020年10月ベストアルバム(温) on Spotify

プレイリスト Apple Music↓

温の「2020年10月ベストアルバム(温)」をApple Musicで

 

★その他・よかったもの

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Auteche - "SIGN / PLUS"

Future Islands - "As Long As You Are"

Goldmund - "The Time It Takes"

Jeff Tweedy - "Love Is The King"

Katie Melua - "Album No. 8"

Kevin Morby - "Sundowners"

Mary Lattimore - "Silver Ladders"

METS - "Atlas Vending"

Oneohtrix Point Never - "Magic Oneohtrix Point Never"

Slow Pulp - "Moveys"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

来月11月はEmily A. Spragueがめちゃ強そう(あとダープロの5EPs) 

 

 

「2020年9月ベストアルバムTOP10」感想

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今月はセンチメンタルな曲を摂取しすぎたせいでメンタルバランスが崩れてめちゃ死にそうになってた、、、笑

そういった点で、IDLESやOSeesのようなハードなロックに助けられたな 笑

 

今月の最最最高だったアルバム10枚、感想をランキングで

(全部1位です) #ランキングとは

全然10枚に収まらなかったから漏れたやつは後で絶対フォローする(T_T)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. The Flaming Lips - "American Head"

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カラフルにロマンチックに染め上げるサイケポップのバラード

 ピアノを強調したようなバラードのスタイルをメインに、テキサス系カントリーの風味(Kacey Musgraves)のメロウなテイストもプラス、そしてそこに鮮やかな花を満開に咲かせるようなThe Flamings Lipsの派手やかなサイケポップを応用させるという...。もう間違いなく最高だと思う 笑。極上のゆらゆらワールドへ導いてくれるThe Flaming Lipsのサイケポップの素晴らしさはもちろん、ロマンチックで大人びたバラードの景色をよりカラフルにドラマチックに染め上げてて本当に流石だと思う。1曲目のWill You Return / When You Come Downからもう傑作、The Soft Bulletin (1999)のときからお馴染みのオーケストレーションを取り入れたような大規模のサイケポップバラード。ゆらゆらしててキラキラしててメロメロが止まらなくなるめちゃめちゃ素敵なやつ。そんな感じで1曲目のスタートから感動がでかすぎるから思わずびびってしてしまう 笑。そこから一貫してサイケポップバラードのやつが展開されるわけだけど、Kacey Musgravesをフィーチャリングした今作一押しの一つであるWatching the Lightbugs Glow (M2)やFlowers of Neptune 6 (M3)もまた素晴らしい。夏の情景を映し出すようなカントリーの世界観の中でサイケデリアを濃いめに調整するようなテクニック。ロマンチックな大人のサイケポップバラードとしてのよさだけでなく、サイケ要素によってカントリー系の味わいの深みをよりトロトロにアレンジしてるのが本当に上手だと思う。中でもWatching the Lightbugs Glowは楽曲中のロマンスを高めまくるKacey Musgravesの上品さもかなり効いてるし。

そんなアルバム前半で既にお腹いっぱいになれる最高の大作だと思うけど、私的には7曲目のBrother Eye以降におけるアルバム後半のプロットがものすごくやばいと思う。Brother Eyeで6曲目までのトーンを少し暗めに変えて、8曲目You n Me Sellin' Weedで本作の特徴的な要素であるカントリーの音楽性をサンプリング的に取り入れるユニークさなどを発揮しつつ、9曲目のMother Please Don't Be Sadではストリングスのバッキングをより大胆に実装したゴージャスな感動大作ソングを繰り出していく。曲調を徐々に変化させていく流れがおもしろくてよくできてるし、M9のそれに関してはYoshimi Battles The Pink Robots (2002)のDo You Realize?みたいなライブ感も彷彿させるところもあってグッとくる。ここの段階でもうめちゃ満足できるのに、そこから10曲目When We Die When We're Highでよりダークでエクスペリメンタルなサイケロックのやつに転移するという...。2010年代っ子である私はThe Terrror (2013)も本当にお気に入りでよく聴いているのだけど、Yoshimi~だけでなくTerrorの作風まで網羅してしまうというこの充実っぷり!笑。心満たされるような感動系からダーク系のゾクゾク感まで内包されてて本当に素晴らしいと思う。

そんな風に10曲目まででさえこんなに強トラックが取り揃えてあるのに、、、その後にラスボスみたいな12曲目のGod and the Policemanが待ち構えているのがね、、、笑。今までのThe Flaming Lipsでは味わったことがないくらい強力な神秘性・幻想性があるナンバー。それまでのサイケポップバラードの印象がぶっ飛んでしまうくらいのシリアスな重たさがあって、まるでアルバムの最後の最後で全身全霊の思いをぶつけるような強い精神が感じられる。そこには繊細なところまで気を配ったThe Flaming Lips渾身のサイケ技術もあるし、Kacey Musgravesのボーカルもさらに聖なる存在感を放ってたりで、本当にめちゃめちゃ感動する。歌詞、MV、それらのメッセージ性もすごくツボ。

The Flaming Lipsって20作も作品を出してるとは知らなかった。他のアルバム聴いてみたら直近だとAt War With the Mystics (2006)とかものすごく最高だった。ディスクユニオンですぐさま買った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Devi McCallion & Katie Dey - "Magic Fire Brain"

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混沌の世界の中で築き上げる自分だけのファンタジー

 情報社会を中心に生きてきたようなデジタルネイティブ的作家性が強いエレクトロニカポップ、音圧の高いトランス・EDM系のサウンドを濃厚なドリームポップの音楽として昇華(Circumstances (M6))したり、今までに出会ったことのないカオスな発展性をたくさん含んでるところにめちゃめちゃゾクゾクする。まずカオスという点だと、耳の中でいきなり大災害が発生するみたいに攻撃的すぎるポストハードコア(Plant Matter (M1))、低音を思い切り強調したトラップミュージック属性のエクスペリメンタルポップ(Plastic (M2))、怒りや憎しみの暗黒な感情がメラメラ燃え盛るように恐ろしいハードコアテクノ(Milk (M8))などがそう。特にハードコア系の音楽性は本当に過激すぎて危なさが度を越してると思う 笑。それなのに、それらの間にMirror (M3)やCircumstances (M6)など、天に昇るほど解放的で眩しいエモーションが溢れたポップのナンバーを用意してたり。もう本当にハチャメチャだと思う。そしてこのMirror (M3)やCircumstances (M6)といったポップスの楽曲群が本当に最高でやばい...笑。Mirrorはシンセポップのカラフルな世界観の中でセンチメンタルなメロディーの愛おしさが本当によく際立ってるし、Circumstancesは目まぐるしく暴走していくようなテンポ感を活用したエモーションの高密度化が本当に素晴らしい。ハチャメチャなアルバムで、ハチャメチャに振り回されながら、ハチャメチャに感動するという。新世代の作家性がよく表れてる傑作のアルバムだと思う。

私が今作で最も心打たれたところは、ハードコアによるストレスの発散が、心を病ませる現代の混沌とした情報社会に対してのものとして感じられたところ。そして、それらのありったけの感情の解放によって、自分だけのファンタジーを築き上げ、天国に昇るような多幸感を獲得するという意図を感じたところ。アルバムの展開の仕方が本当に大好きでたまらない。個人的に、今作のEDM・ポストハードコア系の音楽性のところには、ネットゲームやアニメなどのサブカルチャーがよく発達した世界観の現代性をよく感じる。そういった現代世界の主なイメージって、私だとデジタル化・IT・インターネットとかがモリモリになった世界のイメージなのだけど、情報過多の疲れとか、物事がどんどん複雑に分かりづらくなっていく気持ち悪さとか、現代ならではの苦しみ・ストレスをよく連想してしまう。Devi McCallion & Katie Deyの音楽は、そういった世界観の中で生じている激しい怒りのハードコアだということ。私はそういうイメージを持ったからこそ、激しい怒りをぶつけた後に訪れる、解放的で心満たされるフィーリングを目指した楽曲(MirrorやCircumstancesなど)に対して、本当に感動しまくった。私自身、従来よりネットを使うことが多くなってるし、情報にまどわされることも多くなって心がどんどん不健康になってたわけだけど、ハードコアによるストレスの発散も、その後に訪れる心満たされる解放感も、音楽の持つ世界観に対して全部にめっちゃ共感できる。ほんと、心を揺さぶりまくるとても刺激的な音楽体験。

Devi McCallion & Katie Dey、新世代のカオスなアーティストという点だと、別次元の未来的ポストパンクを提示したCrack Cloudとも似てるなと思った。どちらも、新時代における進化の過程で変異を遂げている最中の化け物な感じ 笑。(めちゃめちゃ褒めてます...!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Osees - "Protean Threat"

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ツインドラムのレパートリーがやばい

 ドラムの存在感がよく強調されたローファイ・ガレージロックのおちゃめなアンサンブル、、、とにかく楽しすぎてやばい..!!笑。まずそもそもとして、King Gizzard & The Lizard WizardとかGodspeed You! Black Emperorとか、ツインドラムの曲の充実感やパフォーマンス性ってもう間違いないのかなって思う 笑。Scramble Suit II (M1)の猛スピードで刻みまくるビート、Dreary Nonsense (M2)の小動物みたいなかわいいロールがあるトコトコ感、Mizmuth (M8)の不規則的にアクセントがずれたりするテクニカル性、どの曲もドラムのダブルな存在感がより前面に出てると思うのだけど、楽曲のノリとか勢いがもっと強化されまくってて絶えず楽しい...そしてめちゃめちゃかっこいい...笑。そんなドラムの特異性が目立つ今作の中でも、If I Had My Way (M9)のグルーヴとか特徴的だと思う。ベース込みの総合的なリズムワークにモダンロック・ジャズのようなオシャレなステップの動きが含まれてるやつ。必然的にタッチが多くなるツインドラムならではの効果によって、オシャレなリズムの動きがより大胆に派手になってる感じが本当におもしろいなと思う。ドラムが連続的に繰り出される気持ちよさのところも〇。Gong of Catastrophe (M11)のドラムフレーズとかも本当に最高すぎる。こちらはOseesらしいビターな味わいのある暗めのロック。ドラムのフレーズだけを強調するように曲の密度が調整されてて、Oseesの最高に美味しいツインドラムをたくさん堪能できる仕様なってるのが私得すぎる...笑。Josh Homme(Queens of the Stone Age)のロックンロール・ブルース感っぽいところもあって、ギターとかとてもメロディックなのも最高。そして私が今作でウルトラスーパー1番大好きなドラムが!5曲目のTerminal Jape...!これはもう本当にやばい 笑。パフォーマンス性が鬼高いOseesのツインドラム連打ビート。ガレージロックとしての攻撃力も全開でアドレナリンがドバドバに出まくる。あまりに楽しすぎてマジで笑いが止まらない。こういう曲を期待してたので、Oseesの今作は私にとってもう満点の作品でした 笑。

ドラム要素なしに楽曲的に見てもやっぱり最高...。例えば11曲目のCanopnr '74、私的に今作のベストトラックだと思う。Osees(Thee Oh Sees, Oh Sees)ってアルバム何個もリリースしてる(調べたら22作品だった)くらいには超メロディーメイカーのバンドだと思うのだけど、この曲はそのソングライティングのスキルがめちゃめちゃ発揮されてる感じ。Oseesのロックのクールな曲調も相変わらずかっこよすぎるし、自分も歌いたくなってしまうような耳に残る格別のフレーズ(はっはっはっは)があったり。曲構成のバランスとかも上手。その後にテンション高まるアンサンブルで締めくくるラストのPersuaders Up! (M12)もバッチリ最高 笑。ギターのブラッシングワウワウとドラムのドコドコのアンサンブル。この人たち本当に愉快で楽しい 笑。

今作を聴いて、2019年のフジロックのキンギザの楽しさを思い出した。Oseesもライブめちゃめちゃ楽しそう 笑。曲を予習するのは絶望的だけど...。(今まで2~3作品しか聴いたことない)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Deradoorian - "Find the Sun"

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死の世界にアクセスするインディーロック

 心霊的で宗教的で瞑想的。Cross Recordと同じようなスピリチュアルな意思が音楽に込められまくってる。メロディーが神秘的でどこまでも引き込まれまくるし、クラウトロックやポストパンクのアンダーグラウンド感に似たダークネスのパワーが超超超かっこよくて大好き。Cross Recordだけでなく、最近だとKatya YonderのMultiply Intentions(←大好きすぎてやばい)とか、スピリチュアル思想の音楽作品ってもうめちゃんこ大量にあると思うけど、その中でもDeradoorianの今作は、なんといってもスタイルが超シンプル...!!エレクトロニカ的表現の装飾が一切ない、正統派インディーロックのみで創造するスピリチュアル性がめちゃめちゃ特殊で本当に素晴らしいと思う。例えば、Red Den (M1)やCorsican Shores (M2)など、人影のないホールのような静寂に包まれた世界で演奏される音楽。その静けさの中でギターやボーカルの存在がゴースト的に浮き彫りになるわけだけど、ミステリアスな性質のある魔法的なニュアンスもあるために、メロディーがリスナーのマインドに対して深く食い込みまくる特殊性があるのがやばい。シンプルなバンドスタイルだからこそ成せるメロディーの神秘性の強調、そしてありのままに剝き出しになったダークネスの演出。それは、GrouperのRuins (2014)とかと同じ、音を取り除く引き算の発想によるインパクトの与え方だと思う。飾られていないメロディー一つで勝負できてるところがかなりハイセンスだと思うし、純粋に正統派インディーロックが大好きというのもあるので、めちゃめちゃツボに刺さった。

ありのままのダークネスの演出というところだと、私は3曲目のSaturnine Nightとか大好きすぎる。気迫を無限に高め続けていくような儀式的音楽。もともとDeradoorianの音楽は心霊的で宗教的な世界観が濃いと思うけど、この曲は特に心霊的なダークネスのレベルが高くて、まるで死の世界にアクセスするような恐ろしさがある。シンプルでスタンダードなインディーロックのスタイルでそういう恐ろしさを表現できるって本当に最高...笑。Dirty Projectorsの頃からかっこよかったけど、今作のこのダークさは特にかっこいいと思う。他にも、ラストの展開でバリバリに教会音楽に発展するMonk's Robes (M4)とかもスピリチュアルなダークオーラがあってめちゃ最高だった。

私が今まで出会ってきたスピリチュアルな音楽作品は、ほとんどエレクトロニカ的表現を借りてたかな?と思う。やっぱり、Owen Pallettのような厳格なオーケストラのシンフォニー技術とかがない限り、スピリチュアルな音楽って多分エレクトロニカの表現を使いたくなるよね。それをせずしっかりよさを確立したDeradoorianさん本当に流石だな思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Shabason, Krgovich & Harris - "Philadelphia (feat. Joseph Shabason, Chris Harris & Nicholas Krgovich)"

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"ヒーリングプラネタリウム"

 まるでPat Metheny Groupのジャズ・フュージョンのような心臓がぎゅっと掴まれるほど綺麗な景色を見せてくれるポストロックの作品。音が果てしなく流れていくようなアンビエント特性の安らぎ、歌うことの喜びで満たされているようなとても自由なメロディー、臨場感のある立体的なサウンドの高級感、滑らかな質感、澄み切った透明感。ものすっっっごく美しい。現実を圧倒的に撃破してしまうような幻想へのトリップ性が本当に半端ないと思う。例えば3曲目のI Don't See The Moon。現代の音響技術を可能な限り駆使して実現するような究極的に癒し的なドリーミーワールドのやつ。鳥の鳴き声をサンプリング利用した自然描写とか最強すぎるのに、そこにピアノやトランペットの歌を重ねて音楽の世界をもっともっと豊かに広げていく。即興的なピアノのメロディーはまるで命が宿ってるようにソウルフルでやばすぎるし、トランペットに関してはBon IverのST (2011)みたいに非現実的なニュアンスの存在感があったり。ギターソロもSandro Perriみたいに超繊細でうますぎる。

ラストのOpen Beauty (M8)も超やばい。自然の恵みを享受するような天然の癒しに満ちたワールド、空を飛んでいくようなふわふわのシンセのメロディー、そしてピアノのバッキングに込められてるありったけの愛情。まるで夕日のように美しく心を温めてくる、本当にヒーリングミュージックとして完璧だと思う。あとフルートにDestroyerのKaputt (2011)のような洗練された輝きを感じるところにもめちゃめちゃ惹かれた。

そして1番美しすぎて死にそうになったのが、4曲目のFriday Afternoon。音響効果をダイナミックに使用したヒーリングプラネタリウムのような世界観があると思うのだけど、本当に癒されまくってやばいことになる。夜空の星々が輝くような情景の中で、メランコリックな歌のコーラスがこの上ないほど合いまくる。そして3:30あたりから出てくるピアノが死にそうになるほど美しい。夜空の背景に溶け込んでいくようなグラデーションを持っているところが本当に素晴らしすぎると思う。このピアノセンス、本当にやばいから誰にも真似できない気がする。

今作を聴いたらオーディオオタクに目覚めそうになってしまった。これを聴いてると、自宅の環境では満足できず、お金をかけてオーディオをもっとグレードアップしたくなってくる。今までオーディオ環境とか別に気にしてなかったけど、こんなに欲望が沸いてきたのは初めてだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Sault - "Untitled (Rise)"

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自分たちのこと愛し、祈り続ける

 3ヶ月前にリリースされた前作Untitled (Black Is)の続編的作品、前作も思いがボリューミーに込められまくったBLMムーヴメント音楽の大傑作だったのに、「自分たちの民族性に対するリスペクトや愛はまだまだこんなものではない」と言わんばかりに今作も超傑作...。思わず泣きそうになってしまう。前作(Black Is)では、虐げられる自分たちの種族に対して、「それでも自分たちを愛することを止めない」という思いを強く提示したようなUs、Eternal Life (Cover me with love)、Only Synth in Churchがめちゃくちゃ特徴的だったと思う。今作(Rise)では、そういった前作の励ましや祈りのテーマ性に、さらにオーケストラ系の華々しさやパレード系の祝福的なニュアンスをプラスしたような派手やかさがあるアルバムになってると思う。代表的なところだと、2曲目のFearless。従来のSaultのカラフルなR&B・ソウルの中で、ストリングスの豪快さもパーカッシブなダンサブル性も両方同時に全力で炸裂してる。Riseという副題らしいSaultの祈り・祝福の思いが注がれまくってて最高だと思う。そして、4曲目のI Just Want to Dance。こちらはヒップホップタイプのグルーヴ感があるナンバーだと思うのだけど、シンセのオーロラを織り交ぜたストリングスの流れ星みたいなメロディーが本当にロマンチック。心満たされるようなときめきを抱きながら踊るようなシーンを描き出してて本当に素晴らしいと思う。他にも、Saultならではの怪しげな美しさを秘めつつ、ギターのファンキーなグルーヴやエキゾチックなパーカッションのかっこよさを主張したStrong (M1)とかもとてもよかった。

個人的に今作(Rise)の素晴らしすぎてたまらないところは、前作(Black Is)に込めた祈りを引き継ぎ、さらに延長し、祝福のテーマも追加してもっと拡張したというところ。それをビシビシ感じるのが本作6曲目Son Shine。 前作(Black Is)のEternal Lifeのようなコンテンポラリー的エレクトロニックの美しさが大好きでめちゃツボだったのだけど、Son Shineはそれと同系列の作風の曲。エモーションを余すことなく解き放つソウルミュージックならではの幸せを、カラフルに、グルーヴィーに、ドリーミーに、ロマンチックに表現してる感じが本当に最高すぎてやばい。前作(Black Is)の忘れられないEternal Lifeの印象も込みで、Saultというアーティストが、自分たちの音楽を深く深く愛していることが心から伝わってくる。誰にも負けず祈り続けるような強い信念、自分たちのこと愛する熱い思い、もう感動しないなんてありえない...。本当にむちゃくちゃ素晴らしいと思う。前作(Black Is)とセットで大傑作。どちらもめっちゃ大好き。

ストリングスもそうだけど、ストリート系ヒップホップなFree (M9)、ほろ苦い味わいが最高なUncomfortable (M11)、リラックス効果が抜群なジャズのLittle Boy (M15)など、歌のメロディーもめちゃめちゃよかった。10月はもうRough Tradeが年間ベストアルバムを発表する頃だし、そろそろそういう時期に入っていくと思うけど、私は年間ベストアルバムにSaultの(Black Is)と(Rise)をダブルランクインさせたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Fenne Lily - "BLEACH"

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田舎のおばあちゃん家みたいな馴染みやすさ

 Fenne Lilyの今作は、デビュー作のOn Hold (2018)のときからの甘くて儚いドリーミーなフォークをメインにしつつ、ギターリフも取り入れたメロディックなフレーズがある。そしてシューゲイザー的轟音サウンドの最高の気持ちよさもある。愛おしいピュアネスもある、哀愁もある、メロウな香ばしさもある...。もう最高じゃない理由が見つからない...笑。本当にめちゃめちゃ素敵な作品だと思う。Phoebe Bridgersのように天使みたいなメロディーライン、Lucy Ducusのような上品でメロウな声質、並びにLaura Marlingのようなエモさ・歌唱スキル、そしてSoccer Mommyのようにキラキラ輝くポップネス、Land Of Talkのような陽だまりの温かさなど、多くのよさが含まれてる感じがする。まるでFenne Lily一人の中にインディー女子SSW↑のネットワークが構築されてるような多様性のやばさがある。そんなにも最高な作品なのに、メロウな哀愁を引き立てるクラシカルなバイオリン族楽器など、オリジナリティ要素も本当に素晴らしい。具体的にはElliott (M5)とBirthday (M6)の二曲。Elliottはフォークテイストの素朴な曲調の中で、バイオリンによる大人びた雰囲気がよく演出されてるけど、Fenne Lilyの甘いメロディーに含まれてあるピュアネスも強力。この大人びた雰囲気とピュアネスのバランス、まるで田舎のおばあちゃん家みたいな馴染みやすさがあってやばい。思いやりのフィーリングが溢れてると思うけど、感覚的には、お母さんが子供に絵本を読み聞かせるようなものを連想する。半端ないほどツボすぎる。そしてBirthday (M6)も超傑作。こちらはバイオリンが楽曲の盛り上がり部分で感動的な華やかさを生み出してるタイプの曲。センチメンタルになりすぎてしまう今の季節に抜群にちょうどいいポジティブさが本当にたまらない。今の私にはこういうやつが必要なんです...!!笑。他にも、大胆にロックの方向性にターンしたFenne LilyのネクストレベルソングのAlapathy (M2)やSolipsism (M8)などももちろん最高。Fenne Lilyの甘くて儚いメロディーセンスでロックするという間違いなしの安定感...笑。MVもめちゃめちゃ大好きだし、ライブもものすごく観たくなる。

1曲目から最高の曲の連続で抜け目がなさすぎるアルバムだと思うのだけど、私が今作で1番大好きで気絶しそうになった曲が、間奏パートの'98 (M10)。誰か分からない子どもの声をサンプリングした愛おしさのやばすぎるアコースティックのインスト。1分程度しかない短い曲だけど、この曲でFenne Lilyが考えていること、思っていることをまるまる察することができた。「そういうものを深く愛しているのね、そういう思いを表現したいのね。」......私もそう、"それ"が本当に大好き。。。そういう感情を心から愛しまくってる。。。この'98を聴いて、Fenne Lilyに対する信頼度・好感度が限界突破した 笑。Lilyさん好きすぎて死ねる、、、というかもう死にます、、、(ダメだ)(生きろ)

ジャケットの雰囲気など、今作は聴く前からもう絶対最高のアルバムだって予想してた。実際本当に最高、特にM2からM6までの流れとかが私的に超やばかった。他にも、後半で転調するドリームポップのI Used To Hate My Body But Now I Just Hate You (M9)とかもめちゃよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Fleet Foxes - "Shore"

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どんな方向に転んでも全部最高でウケる

 Fleet Foxesといえば、大地を踏みしめるように力強く、自然豊かで広大なワールドを描き出すようなカントリー。聴くと心が晴れ晴れしくなるような開放感、神秘的で幻想的なものさえ生み出してしまうような美しい情景描写、もうこれ以上に大好きなカントリーありません(T_T)って思うくらいFleet Foxesのカントリーがウルトラスーパー大好きなのだけど、今作のように作風が軽やかなポップのやつにシフトされてもよさが不変すぎてた 笑。例えば、今までにはなかったような女性ボーカルのカットアップが導入されてるJara (M4)とか。Fleet Foxes元来の豊かなカントリーでありつつ、それとは一味違うコンテンポラリーなアレンジでヘヴンリーなポップ感が創造されてるような曲。新しい発想の試みだと思うけど、Fleet Foxesの音楽性ととても素敵な相性でめちゃめちゃ大成功してると思う。あとは6曲目のA Long Way Past The Pastもすごくポップ。とてつもなく最高に気持ちいいFleet Foxesのボーカルやコーラスをより目立たせるような曲構成とミキシング。Fleet Foxesの歌が大活躍しまくっててこれもまた素晴らしい...笑。やっぱりFleet Foxesの歌要素はどんな風に変化しても安定して最高なんだって確信付いた。9曲目のYoung Man's Gameのコーラスパートでいきなり幼げな子ども達が登場してくるハピネスの演出も最高 笑。1曲目のWading In Waist-High Waterからそうだけど、今作における女性や子どもたちとのコラボ要素はとてもよかったと思う。

ポップス的な新しい魅力がある今作、その中で私が最も大好きなベストソングは3曲。ピアノが神秘的すぎて鳥肌が立ちまくるようなQuiet Air / Gioia (M11)と、冒険へ旅立つ船出のようなエモーショナルさがあるGoing-to-the-Sun Road (M12)と、金管が楽しすぎてニヤニヤが止まらなくなるCradling Mother, Cradling Woman (M14)。Going-to-the-Sun Road (M12)は、Fleet Foxesのカントリーならではのグッとくる感動的なパッセージ・展開を含んでる曲で「待ってました!!泣」ってなった 笑。その2曲後に来るCradling Mother, Cradling Woman (M14)も本当にやばい。ドラムが回転していくような激しい渦があるリズムの中で、祝祭的な金管パートが奏でられまくる感じの曲。神秘性も幻想性も高いのに、喜びのフィーリングで満たされたような美しい歓喜も込められているところに自分の中のエモさが止まらなくなる。もう本当に傑作ソングだと思う。このM12とM14、スピーディーに流れていくような果てしない心地よさ・かっこよさがあるところもめちゃハマる。

今作はギターも最高だったな...。A Long Way Past The Past (M6)とか、高速のアルペジオで神秘的な模様を描き出すようなテクニックがあったりして芸術的だと思った。1番好きだったギターのフレーズはMaestranza (M8)あたり。ザラザラしたテクスチャなのにドリーミーなサウンドスケープがある感じが本当にお見事だと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Lomelda - "Hannah"

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秋との相性が犯罪レベル

 Lomeldaの本作は、日々を生きていく中で時折感じる感傷的で情緒的な瞬間に溢れてる。Gregory And The Hawkのように淡く霞んだアコースティックの色褪せた深み、憂いに沈んだ響きを持ったメロディー。その音楽の感情は、何かが恋しくて寂しさがマックスになっているような心理状態に似てると思う。憧れを強く抱いたり、求めてるものに手が届かない切なさに心を痛めたり。それらの感傷的で情緒的なフィーリングを、フォークの愛おしい響きにのせて奏でるようなインディーロック系の作品。心がぐしゃぐしゃにかき乱されたり、死にたくなってしまうようなつらさが引き出されたり、でも同時に傷ついた心を慰めるようにして癒してくれたり。どう考えても素晴らしいと思う。それはまるで、人生の中で最もセンチメンタルな気分になれる瞬間、心に残りまくるような特別でとっておきな体験。似た系統の作品だと、自身の孤独にまつわる心情について忠実に描き出したFlorist (Emily A. Sprague)のEmily Alone (2019)とかがあると思うけど、個人的にはセンシビリティの高いエレキギター(Wonder (M4))や、記憶に焼き付くインパクトのレベルでいうとJay SomのEverybody Works (2017)にも通じるところがある。Jay Somのそれは私が死にほど愛してる人生TOP5レベルのベストアルバムなのだけど、Lomeldaの今作におけるリードトラックのHannah Sun (M2)を聴いたときは、それと同一の感覚を得た。感傷的で情緒的な瞬間の感動をギュッと噛みしめるような曲。まるで、時を止めてこの瞬間をずっと味わっていたいと思うほど愛おしいフィーリング。ありえないほど美しい。Twitterで見た「泣きそうになった」「泣いた」のコメントがきっかけで即座に今作をチェックしたのだけど、このHannah Sunって曲は本当に泣けると思う。私にとって今季超絶必須のキラートラック。他にも、チェロの温かい音色がLomeldaと相性がよすぎるPolyurethane (M5)や、身体に気持ちよく伝わる音楽のフローがあるTommy Dread (M13)なども本当にめちゃめちゃ最高だった。

私的に今作が本当に犯罪レベルで反則すぎるなと思ったところは、今作のリリース時期が9月という秋のシーズンだったいうところ。。。今作の感傷的で情緒的な音楽性は、ウルトラスーパーずびずばめっちゃんこハイパー秋とぴったりマッチしてると思う。もうほんと、秋という季節のためだけに用意されたのではないかと錯覚を起こすくらい。具体的にいうと、フォークテイストの音像的にオーガニックな香りが漂う暖色のカラーが感じられるところや、憂いに沈んでいるメロディーが少し死の感覚に近づいているような印象を与えるところ。それは、夏のエネルギーが消滅している今の季節の感覚そのもの。気候、香り、情緒、風情、全身で感じる全ての秋の要素がLomeldaの感傷的で情緒的な音楽性に作用するという...。そんなの反則級に美しくなるに決まってる、、、もうダメです、ずるいです、、、笑。この季節の効果によって、音源から得られる情緒的な瞬間の感動がもっともっと巨大なものになった。

私は、昔聴いてた音楽を聴き返すと当時の思い出が蘇る現象のやつをこの上なく愛している。2020年の秋はLomeldaの今作によって完全に保存されたので、数年後に2020年の秋のメモリーをロードするときは絶対にLomeldaの音楽を使う 笑。だから、来月も再来月もめちゃくちゃに聴きまくりたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Sufjan Stevens - "The Ascension"

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ニューエイジの魔力を聖なる思いにぶつける

 記憶の奥深くに触れるような究極的なメンタルタイムトラベルを実現してしまったCarrie & Lowell (2015)、愛の感情と真摯に向き合って完成された『君の名前で僕を呼んで』のMystery of Love、Visions of Gideon (2017)...。Sufjan Stevensというアーティストは、人間の心や感情のことを深く愛している人物の一人だと思う。私にとってSufjan Stevensが永久的にベストアーティストであるのは、彼の音源からそういった人間の心や感情に対しての聖なる思いを感じられるから。そんな彼の新作は、Aporia (2020)の制作を経て手に入れた宇宙を創出するようなニューエイジの魔法力を、命を削るように全身全霊でその聖なる思いにぶつけたような作品だと思う。フロアを振動させるほどの燃えるようなエネルギーが含まれてるMake Me an Offer I Cannot Refuse (M1)、音を粉々に破壊するようなFKA Twigs(Arca)技術が発揮されたGilgamesh (M10)、宇宙のような無限の世界の中で漂流していく冒険性があるSugar (M13)、絶望や悲しみも愛してくれるスフィアンの思いがドリーミーに表れたようなThe Ascension (M14)、そして集大成的クラマックスの超大作なAmerica (M15)...、音の爆発力、臨場感の拡張、大規模なステージで演奏するような白熱のライブ感、あまりにも生々しい躍動。壮絶なほど感動する。インディーフォークからニューエイジまで、ここ数年でSufjan Stevensが生み出してきた作品群が結集されてるというか、点と点が一つに繋がるように生まれた傑作の傑作だと思う。

まずは1曲目のMake Me an Offer I Cannot Refuse。今作における私の1番のお気に入り、本当に死ぬほど好きな曲。コーラスが残響の中で共鳴し合い、この上ないほど神秘的な反応を起こしまくる。音響的な迫力とダンスミュージックなビートを組み合わせ、Sufjan Stevensの聖なるメロディーのインパクトを信じられないほど絶大に高める感じ。生命力がみなぎるような美しさが本当にやばくて、聴くと泣きすぎて吐きそうになる。5拍子によるカオスのエネルギーを見事に応用したあのI Want To Be Wellより何倍も情熱的だと思う。今年のベストオブベストすぎるナンバー。

タイトルトラックのThe Ascensionも本当に本当に素晴らしい。こちらは、リア王のコーディリアが引用された心打たれまくる曲。Carrie & LowellやVisions of Gideonのような夢想的で美しいサウンドに包まれる。残念ながら、人生は絶望的だと思う。生まれたその瞬間から理想は打ち砕かれ、理不尽な暴力を受け、大切なものは粉々に破壊される。喜びの裏には必ず悲しみが潜んでいて、無垢で純粋な心が負った傷は一生、二度と治らない。それでも、感情が存在することは美しいと思う。死にたいと思う中でも、命はメラメラと燃えていて、ずっとずっと美しいと思う。The Ascensionを聴くと、そんな風に、悲しみの感情を持っていることがいかに美しいことなのかを思い知らされる。Sufjan Stevensの音楽によって得られるその感覚を本当に心の底から愛してる。...ごめんなさい、「何言ってんだコイツ」と思ってしまったかもしれないけど、感傷的な気分に浸るとポエミーモードになってしまう気持ちは分かってほしい...笑。

今作は、リードトラックのVideo Tape (M3)など、今まででは考えられないほどメインストリームのポップの方向に舵を切った異色な作風だったと思う。それでも!私は!大好きです!!笑。この感じ、例えるなら「初期の頃も大好きだけど、Mylo Xylotoみたいに思い切りポップに振り切ったやつも大好き」みたいなColdplayの感覚に似てる気がする。中でも今作は音像の豊かさに驚いたけど、まるでBon Iverのようなシンパシーの伝達技術も感じた。ライブ絶対最高だと思うし、もう本当にいい加減日本に来てほしい(怒)(マジで死ぬまでには絶対1回観たい、、、)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

↓ プレイリスト🍎

温の「2020年9月ベストアルバム(温)」をApple Musicで

↓ Devi McCallion & Katie Dey - "Magic Fire Brain" の音源

https://blacksquares.bandcamp.com/album/magic-fire-brain

 

 

 

その他・とてもよかったもの

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Avalon Emerson - "DJ-Kicks (Avalon Emerson) [DJ Mix]"

Bill Callahan - "Gold Record"

Blue Hawaii - "Under 1 House - EP"

Freak Heat Waves - "Zap the Planet"

IDLES - "Ultra Mono"

Michael Rother - "Dreaming"

Sad13 - "Haunted Painting"

Seth Bogart - "Men on the Verge of Nothing"

Sylvan Esso - "Free Love"

Thurston Moore - "By The Fire"

Zora Jones - "Ten Billion Angels"

 

 

 

★9月3週目リリース作品の感想・ランキング★

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「2020年8月ベストアルバムTOP10」感想

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今月のベストアルバムTOP10の厳選はとても困難だった、、、ジャンル的にいうとインディーフォーク系が多かったかもしれない。あと夏のしんどさを弱化してくれる水ジャケが強かった 笑。

2020年8月リリースの新譜、スーパー最高だった10枚の感想をランキングで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. Disclosure - "ENERGEY"

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カーニバルのレベルまでダンスフロアを発展

 Daft PunkThe Chemical Brothers、それらの偉大なアーティストに継ぐ次世代のダンスシーンを提示してしまったようなやばい兄弟デュオ、今作はダンスフロアに収まらず、もっと人類のバイタリティを沸き起こしていくようなアフリカンミュージック系のルーツも引用し、ダンスミュージックとしての躍動を地球規模で伝達させるような壮大な作風のやつ!うおーー!(歓喜)。『ENERGY』というアルバムタイトル、スケールの巨大な大陸のジャケット、そして世界を震撼させた1stアルバムのときと同じ手ごたえを想像させるようなフェイスマスクのアイコン...!リリース前から大作のオーラをビシビシ放っていたと思うけど、その期待を裏切らないような完成度レベルだと思う。

まずは単純に曲のクオリティ。1曲目のWatch Your Step (M1)では、跳ねるグルーヴが特徴的で最高にダンサブルなやつだけど、テンションの高さが0の状態でも否応なく身体が反応してしまうほどダンサブルなのが本当にすごい 笑。Disclosure特有のハイなサウンド感を取り入れつつ、コテコテになりすぎような丁寧な調整で安定してるのも本当に上手だと思う。2曲目Lavenderからは、クラブミュージックとしてのクールさを保ちながらも徐々にバイブスを上げていく...。私の場合、もうこの時点でかっこよすぎ&楽しすぎでニコニコが止まらなくなってた 笑。さらに3曲目My Highでは、Slowthaiのパワーも借りてさらにリスナーを熱狂させまくっていく。どんどん攻めの態勢にチェンジしていくのだけど、それでも音の詰め方とかはとても綺麗だったり、リスナーの盛り上げ方みたいなのがすごく計算されてて本当に丁寧だと思う。そういう丁寧さという点だと、Kehlaniをボーカルに起用したBirthday (M10)も本当にめちゃめちゃ最高。Kehlaniそのものが所持してる おしとやかさみたいなのに、ぽわぽわシンセのかわいさまで応用させてしまうというセンス。クラブミュージックとしてのダンス性だけでなく、音の使い方も本当に素晴らしいということ。さすが200曲の中から厳選しただけある 笑。

そして今作のネクストステージ要素でいうと、マリ南西部やカメルーンの伝統音楽SSWとタッグを組んだアフリカンミュージック系のニュアンスの付加(Douha (Mali Mali) (M5), Ce n'est pas (M7), ENERGY (M8))。伝統音楽ならではの原始的な音楽性で、ハウス・テクノのダンスの躍動感をもっと深いところから掘り起こすような新しい試みがあると思うのだけど、巨大な大陸のジャケットによる印象操作も込みで、バイタリティ・エネルギーがもっと強烈に感じられる仕様になってるのが本当に素晴らしい。その中でもタイトルトラックのENERGY (M8)は今作のウルトラスーパーハイパーベストソングだと思う。Disclosureの電気ショックを与えるようにハイなサウンドのダンストラックで、サンバのようなカーニバルを実現してしまうという...。このカーニバル感によるダンスフロアの表現、クラブハウスの閉じた空間よりももっと全人類が一体となったような莫大なスケールの拡張みたいなのがあって、初めて聴いたときは本当に感動しまくってた。それはまるで、大地を揺らすほどに強力なダンスの"ENERGY"、Disclosureが追い求めた壮大なコンセプトを本当に見事に達成できてると思う。「Where your focus goes, your energy flows, Are you hearing me!?」って歌詞もものすごくいいんだよね...笑。

8曲目のENERGYも本当に大好きだけど、でももしかしたら4曲目のWho Knewの方がもっと好きかもしれない 笑。サイダーみたいにシュワシュワな音像のやつ。ジャケットが持ってる海(?)のクリアな美しい色のイメージも込みで、すごくフレッシュなサウンドでハイになれる感じが本当にたまらない。ほんと、コラボしてるアーティストも豪華で好きな曲だらけだった。ちなみに今作でコラボしてるアーティストの中で私が一番好きなのはコモン兄さんです。(最近見た映画だとTHE INFORMER/三秒間の死角とかよかった)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Bully - "SUGAREGG"

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高校生の夏休みのあの感じ 泣

 グランジロックのようなぎらついた熱エネルギーを満タンにチャージして、メロディー感の半端ないスーパー元気なパワーポップを最後までかっ飛ばして行く感じ!WeezerとかOso Osoとかと同じくテンションが高まりまくる安定したハピネスが供給される最高なやつ...!!笑。ロックとしての熱いエモーションを心がときめくメロディー感に影響させるような、もう揺るぎないよさが保証されてるタイプのやつだと思うのだけど、ジャケットに示されてる圧倒的な清涼感・爽快感の品質とかもやばいし、BullyことAlicia Bognannoの持ち味が多様な歌のスキルもすごい。激しくパンクさせていくようなシャウト系(Where to Start (M3), Stuck in Your Head (M8))も見事にこなすし、ソウルフルに歌い込むようなテクニックも持ち合わせつつ、ファルセット系のソプラノもマスターしちゃってるような感じ。さらに言えばそのそれぞれを瞬間的に切り替えてミックスさせるような歌い方とかも。パワーポップとしての音楽性抜きにしても歌のパートがめちゃめちゃ強いと思う。特に私的には2曲目のEvery Tradition (M2)の反則級に気持ちいい対旋律的なコーラスとか本当にめちゃめちゃ大好き 笑。シャウト系のアグレッシブなボーカル要素も特徴的だけど、その中で透き通った高音域ボーカルとしてのギャップを効果的に見せてて素晴らしいと思う。というか今作、パワーポップの音楽性としても、そういうロックとしての切れ味とインディーポップ系の甘さを上手に並列できてると思う。特にその甘さという部分だと、Come Down (M9)とかSoccer Mommyレベルでキュンキュンするし 笑。リリース前からSub Popが激推ししてただけある、とても良質。

今作のパワーポップ性が呼び起こす恥ずかしいくらいの心のときめき!それはなんといっても!高校生の夏休みの感覚のような青春のど真ん中すぎるあの感じの感じです!!!(大号泣)。この感覚が本当に素敵で愛おしくてたまらない。1曲目のAdd It Onから元気MAXで爽快に駆け抜けていくのだけど、そのはじける元気・駆け抜けていくガムシャラ感というか、ストレート性というか、そしてパワーポップとしてのメロディックな甘さとか、もっというとジャケットの夏休み感とか、全ての因子が中高校生だった頃の恥ずかしいくらい真っ直ぐだった感覚を呼び起こす性質を持ってると思う。青春ど真ん中のサマーチューンというところだと、今年6月にリリースされたHindsのThe Prettiest Curseとも通じる部分があると思うけど、どちらかというとHindsのホームパーティー感よりもBullyの今作の方が日本の中高生向けの趣があると思う 笑。SCHOOL OF ROCK!とか、ティーネイジ層に刺さる邦ロックの感じとかもそう。私の妹とかそういう文化に根付いた人なので、さりげなくオススメしていきたいなと思う 笑。

Sub Popの激推しの今作、他にもハイクオリティな部分だと、シューゲイズっぽさとAliciaのボーカルの甘さが極上に溶け合っていくようなLike Fire (M7)、パワーポップから少し離れたメランコリーな情緒さえ描いていくようなHours and Hours (M11)、ラストで少しドライに仕上げて締めくくるような感動があるWhat I Wanted (M12)など。ちなみに私が1番大好きなのはStuck in Your Head。今作で1番かっこいいナンバーだと個人的には思ってる...笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Drugs - "Episodic"

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サイケと泣きメロの相性のよさを改めて開花

 例えるなら、"センチメンタルな泣きメロを贅沢に用意しためちゃめちゃエモーショナルなガレージロック×サイケポップ" という感じだと思うのだけど、ロックとしてのかっこよさも涙を誘うメロディックな美しさも両方備えてる最強っぷりが一般的なインディーロック作品よりもすごくて本当に素晴らしいと思う。サウンドのキャラクター的にはKing Gizzard & the Lizard WizardとかOsees(Thee Oh Sees, Oh Sees)に近いクラシカルでアシッドなハードロック系のやつだけど、その中でロマンチックにキラキラ輝く切ないメロディーをしっかり歌う感じ。1曲目のTry Meでエンジンが点火するように突き進んでいくロックを始めたと思ったら、2曲目のJoyrideでポップの甘酸っぱいテイストが出てきて、3曲目のParalyzedになると中盤で昇天しそうになるほど神聖なファルセットのコーラスまで出現したり。そんな風にロック要素と泣きメロ要素がアルバム全体に巡らされているのだけど、二つの要素を同時に取り入れる音楽性のよさ以上に、それらがびっくりするくらい良質なところが本当に充実してると思う。例えば、Positive Feedback Loop (M6)とかがそう。1発目から胸キュンを発生させるような切ないポップで始まるのに、中盤パートになったら心が熱くなりまくるようなギターロックをぶちかましたり。ロック要素と泣きメロ要素を両方モリモリに取り入れるだけでなく、それぞれを最高に魅せるような曲作りに細工されてる感じ。しかもこの曲、ロックと泣きメロの二つの要素が相乗的に一体化するような性質もあるから、それぞれのコンビネーションでエモーションが大変なことになる...笑。ほんと、大好きな曲だからもっと長尺でやってほしい。身体がもっともっとその音楽を求めてる。

私的に、今作がめちゃめちゃ最高だなと思ったところは、サイケデリックの音像が持つキャラクターと泣きメロの相性のよさを改めて開花させたというところ。代表的なところだとアルバム5曲目のMirageサイケデリックの陶酔・目眩の感覚にDrugsならではのめちゃ強い泣きメロを組み合わせて、切なさの感情にえぐい幻覚をプラスさせるようなやばさ。ただでさえ心に沁みる泣きメロとしての質が高いのに、それらの感情をもっとキツくさせるようなサイケならではのエモーションの強化。それは言い換えれば、メロディーが充実したサイケポップだからこその醍醐味でもあると思うのだけど、今までにこれほど強い泣きメロのサイケに出会ったことがなかったから本当に感動した。あと、8曲目のPulling Tissue from the Lobeに出てくるサイケの泣きメロも本当に最高。めちゃくちゃロマンチックで心が掻き乱されまくる。惚れるほどにかっこいいハードロックも演奏するのに、どうしてここまで音楽性を急転移したりして極上の泣きメロを引き出せるのか...笑。本当に素晴らしくて泣きそうになる。

泣きメロ要素じゃなくてロック要素のところだと、7曲目のEvidentialが本当に最高すぎて笑っちゃう 笑。泣きメロを奏でるサイケポップの面影が潰れてしまうくらい、ボーカルが暴走するように喚きまくるパートが用意された曲。本当にはちゃめちゃで激アツで桁違いに興奮する 笑。泣きメロもそうだけど、エモーションの起伏が激しくて全然予測できないから本当に楽しい。ロックパートも本当に最高だと思う。

サブスク・インターネットの発達で音楽にびっくりするくらい気軽にアクセスできるようになってしまった時代。昔のように(私今25だけど)、アルバム一つ一つの出会いが貴重だったような頃に比べると、出会う作品数が膨大になってしまって、どれもありきたりな作品に感じてしまうリスナーが多くなってしまっているのかもしれない(It's me)。そんな中でも、Drugsの今作は流し聞きしてても「むむ?」となるような光るものをたくさん持ってると思う。実際、彼らは自宅で数年前から音源を貯め込んでたみたいで、デビューアルバムの今作はラインナップの全曲が本当に強い。インディーロック勢の中でも類い稀な才能を持ったバンド的な。すごく期待してる、応援してる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Katya Yonder - "Multiply Intentions"

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ポケモンでいうエスパー・ゴースト・フェアリータイプあたり

 神秘的な尊さの果てしないエクスペリメンタル的ベッドルームポップ。妖精が出現するような温かいファンタジー(Invented Journey (M6))から、Cindy Leeのような背筋の凍るクラシック系ホラーの世界観、さらには もののけ姫ラピュタのようなジブリ的ワールドまで、幻想性について幅広く追求されたような作品、なのでもう問答無用に私のどストライクです...笑。先月リリースされたTrevor PowersのCapricornやNicolas JaarのTelasのように、エレクトロニカならではの自在なサウンドメイキングで幻想性を創造する作品群ももちろん大好きなのだけど、Katya Yonderの今作は特に、Summer of '84のようなコスミックな音像を多用したホラー系の世界観としての幻想性が本当に秀逸だと思う。アナログシンセのめちゃめちゃレトロな雰囲気が怖さをより強調するSpinning Olimpia (M3)、不協和音のベルで不穏な空気を演出しまくるPeering into the Distance (M4)、亡霊を復活させる儀式のように本気の恐ろしさすら感じさせてしまうInterlude (M13)など。それぞれの曲が宗教音楽にもコネクトするように心霊的な重さを持ってるのがめちゃ最高だし、オルガンなどの鍵盤楽器によるアルペジオのフレーズ感も本当に美しくてたまらない。ジャケットのロウソクのアイテムによるイメージも本当に素晴らしく絶妙。それらはまるで、現代のベッドルームポップの音楽性で創造する新しいレクイエムとも言えるかもしれない。もともとKatya YonderことKatya Prokinaは、ロシアのシューゲイザー・ドリームポップバンドのTip Top Tellixの人だけど、今作Multiply Intentionsはシリアスでホラーな曲調の中にそのTip Top Tellixのポップ感が適応されてる感じが本当に最高だと思う。(ちなみにTip Top Tellixの音源もかなり好き。)

ホラー系の世界観もゾクゾクするほど本当に最高なのだけど、Вновь и вновь (M8)のようなジブリ的ワールドのところもめちゃめちゃ心惹かれた。ここでいうジブリ的ワールドとは、例を挙げるならMotion GraphicsのMezzotint Glissとかそういうやつ。トトロの楠木とか、もののけ姫で描かれてる太古の森とか、深みのある緑と強い自然をイメージさせるような木製楽器のサウンド。木琴楽器やフルートみたいに生楽器本来の神秘的な音色を味わえるだけでなく、童心に返ってミステリアスなものに対する純粋なときめきが呼び起こされる感覚も本当に大好き。そういうところにKatya Prokinaのドリーミーな歌がブレンドされてるのもまた最高なんだよね...笑。

相変わらずですが、こういう神秘的な作風のやつに私本当にザコすぎるので月間ベストにランクイン。直近だとMusic For 18 Musiciansを再解釈したErik Hallとか、Jenny Hval、Emeraldsっぽさもあったと思う。ポケモンでいうところのエスパー・ゴースト・フェアリータイプあたり。フェアリータイプは新しく出たタイプなので、ポケモンを全くやったことがない私は全然知らない。(知らないのかよ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. JOBS - "endless birthdays"

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90年代のポストロックシーンにも直撃

 現代で新しく生み出されたどの芸術作品も、様式・ジャンル・メソッドなどの点で、先人の作家が古くから開拓した何かしらの方向性に囚われてしまうような運命が常にあるのかもしれないと思う。でもJOBSのアルバムは、その運命から大きく外れるようにものすごく突飛で奇怪な作風のやつ。「こういうの待ってました!泣」ってものすごく興奮する 笑。表面上の分類的にはステレオタイプエレクトロニカって感じだけど、その中で常識を打ち破りまくるような混沌と崩壊が多く含まれてる感じ。冒頭のA Toast (M1)では、表打ちと裏打ちを複雑に織り交ぜていくような2拍子のリズム体系で不安定感を煽りながら、脳みそを刺激するような強い低音でリスナーをショックさせる。また、意識を放心させるような気持ち悪さと美しさを両方実現する電子音のメロディーも導入してたり。アルバムの1発目から恐ろしいくらい前衛的な作品であることを予感させる最高のワクワクが感じられる。Striped Cotton Blanket (M3)に関しては、17拍のトリッキーなフレーズを休憩なしに連射しまくってリスナーを思い切りぶっ飛ばしたり 笑。不規則の拍感で作り出す圧倒的な興奮の感じでいったら、今年4月にリリースされたLorenzo SenniのScacco Matto (Discipline of Enthusiasm)にも通じるぐらい、とてもパワフルでエネルギッシュなナンバーだと思う。Planned Humans (M7)なんかは、音像をより鮮やかに魅せるための音響利用の爆発力を発揮したエクスペリメンタルのテクノを繰り出したり。アルバムの楽曲がそれぞれ、予想を裏切るどころか、あまりに未体験すぎてパニック状態みたいになるくらいよい。初めて聴いたときの喜びが忘れられないくらいずっと心に残る素晴らしさ。前にも言ったけど、この壮絶なワクワク感・ゾクゾク感、数年前(いやもっと昔の高校生とか、)洋楽オタクに目覚めたての頃以来の感覚かもしれない...。特にThe Booksとか、DJ ShadowのEndtroducing...とかあたり(どういう括り??)2020年代に入ってもこういう作品と出会えるということが本当に嬉しい...泣。

今作がなんといっても素晴らしいと思うのは、混沌と崩壊のショッキングな印象を残す過激な音楽性の裏に、それと対極に位置する安定したオアシスのワールドを同時に所有しているというところ。それの代表例がOpulent Fields (M4)、1曲目から3曲目までで提示した混沌・崩壊の世界が逆転するようなユートピア。まるでこの世の向こう側に到達するようにヘヴンリーな平安を取り戻していくのだけど、Gastr Del Solのような謎に満ちた深いファンタジーさえ想起させる果てしない美しさがあって本当にたまらない。プラス、それまでの崩壊した世界で残っていた混沌の残骸を感じさせるようなボロボロの装飾音を活用してたりで、本当にロマンが掻き立てられまくる。Gastr Del Solに似てるやつ、まさかこんなところで90年代のポストロックシーンのプチリバイバルに直撃することになるなんて...笑。他にも、Words About Shapes (M6)とか、混沌と平安の狭間で揺れ動くような楽曲もすごくいいのだけど、1番ツボすぎてやばいのがアルバム2曲目のBrain。エレキの弦楽器におけるハーモニクスを利用しまくったような楽曲だと思うのだけど、混沌・崩壊のワールドの中でこんなにもハーモニクスの浮遊感をミステリアスに魅力的に演出しまくる音楽は他にない気がする。しかもそれらのハーモニクスだけでメロディーを構築するとか、あまりにツボすぎてもう笑うしかない 笑。本当に素晴らしいいハーモニクスサウンド

2020年、大学院の修士論文が終わったのをきっかけに月間ベストアルバムを作り始め、それが8月まで続いてるけど、いざ月々でベストアルバムを作ってみると本当に最高の作品ばっかりでちょっと戸惑ってる 汗。年間ベストアルバム級の作品が多すぎて50位とか絶対収まらなさそう 笑。(年間ベストは『大好き of 大好きアルバム 頂上決戦』みたいになると思う)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Siv Jakobsen - "A Temporary Soothing"

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ジャケット負けしない気持ちよさ・美しさ

 ぷかぷか浮いてて快適すぎるジャケットの印象に全く劣らず、水面に輝く光のようにゆったりとした気持ちいい美しさがたっぷり感じられまくるフォーキーなオルタナロック。BibioやSóleyにも通じるような北欧系の民謡的なアプローチを取り入れつつ、Hundred Watersのようなメロウなファンタジーを発揮していくボーカルが特徴的だと思うのだけど、インディーフォーク、オルタナロック、どのサイドから捉えても本当に最高でめっちゃ大好き。じっくりと重みのあるフォークのFear the Fear (M1)、曲の後半で音の存在をマジカルに魅せるギミックが素晴らしいFight or Flight (M2)、2拍子に身を任せて気持ちよさを強調するようなShine (M3)、アイリッシュ音楽のようなストリングスで音楽に神聖なテーマを付加するFraud, Failure (M5)などなど...。インディーフォークとしての自然的なサウンドのテクスチャも最高だし、音の存在をよりマジカルにさせるための装飾が散りばめられたオルタネイティブロックとしても豊かで、かつトラディショナルな童謡のように聖なる世界観の深みもやばいという。"好き+好き+好き"みたいな作風でとことん突き刺さりまくるし、ボーカルの声質が大ファンのNicole Miglis(Hundred Waters)やWaxahatcheeに近いところもあって無条件に最高評価をしてしまう...笑。実際、今作はフォーク、ロックとしてだけでなく、Siv Jakobsenの透明感が至高な歌声を魅せまくった一種の歌モノとしてのよさもめちゃめちゃあると思う。9曲目のOnly Lifeとか、その至高のボーカルでエモーション密度を高めまくるように歌い込むのだけど、もう本当にめちゃめちゃよすぎて超感動する。シンプルなピアノの伴奏による方法で歌の存在感を全面に出すようなI Call It Love (M12)とかも本当に強い。よさが多面的に用意された良曲揃いのアルバムだと思う。

こんなにたくさん最高の曲があるのだけど、6曲目のA Temporary Smoothingがその中で「マジかよ...」と思わせるくらい本当にやばい 泣。フォークのテクスチャ、マジカルな音の装飾、窓の外を眺めながら真夏の夜に聴いたりしたら、あまりのエモさに気絶するんじゃないかと思うくらい、夕闇に溶け込んでいくようなSiv Jakobsenの美しいフォーキーな音楽の魔法が込められてる。そもそも今作は、気持ちよさが半端なさすぎるジャケットのイメージの時点でもうとびきりに最高なわけだけど、そのジャケットの気持ちよさのパワーをも借りてしまうところが本当に恐ろしい。何回鑑賞しても鳥肌がバーストする。アルバムのタイトルトラックでもあるし、本当に絶大な特別感を持ってる曲だと思う。そこから一連の流れで展開される7曲目のAny Whereも歌モノとしての最高に完成されてる。すごくやばいセクションだと思う。

今作の気持ちいいジャケット、BullyのSUGAREGGもそうだけど、キンキンに冷えてる水のイメージってこの季節だと本当にたまらない 笑。特に今作はSiv Jakobsenの音楽性的にもこのジャケット感と強くリンクする部分があると思う。さらに言えば、ジャケットの湖のような水面のモチーフのところに、揺らめくような穏やかさが含まれてるのも本当に最高。その点だと、ワルツの美しい揺らぎ方をする4曲目のA Feeling Felt or a Feeling Madeとか、ジャケットにめちゃめちゃぴったりでやばい。ほんと、気持ちよさが半端ない作品だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Young Jesus - "Welcome To Conceptual Beach"

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マニアックなポストロックってめちゃかっこいいからね...

 3曲目まで聴いたら疑いようがないくらい傑作のアルバムだって納得させられてしまうようなポストロック作品...笑。ノイジーなギターを鳴らしていくようなロックとしてのエッセンスをしっかりコアに搭載しつつ、バンドアンサンブルのインストメロディーを充実させるテクニックも所有していれば、モダンジャズ風のサックスメロディー(Pattern Doubt (M2))でエレガントな華を添えたりするものだけど、ボーカル自体はオペラみたいにめちゃめちゃ高貴な属性だったり...。色んな種類の美しさを同時に取り揃えたような唯一無二のバランス感が本当に絶妙だし、それらのバラバラな複雑性を巧みにオリジナル化させていく美的センスとかも含めて、本当にめっちゃ傑作のアルバムだと思う。7曲収録されてるけど、1曲1曲がスケールの大きいストーリー性を持ってるところもとても高密度ですごい。アルバム出だしの1曲目のFaithから、そのYoung Jesusの高い技術力が十分に提示されてると思う。ネジが飛んでしまったように狂ったツインギターソロを演奏したと思ったら、そこからピタッと縦をそろえた変則的なアクセントをキメていったり、徐々に音楽を盛り上げていったところにオペラ特性のある高貴なボーカルを全開させたり。ポストロックとしておもしろさも満点だし、ギターロックとしても本当にかっこいい。そこから移行する2曲目のPattern Doubtでは、ポストロックよりもジャズ風の色気が一気に舞い込んできて、音楽がたまらないほど鮮やかな色を帯びていく。とにかくサックスのエレガントでジェントルなメロディーが素敵すぎてやばい...笑。1曲目のかっこよさからは思いつかないほど上品で、ギャップを効かせて感情を大きく揺さぶるようなエネルギーも感じられるから本当に素晴らしい。ただでさえ1, 2曲目の流れがそんな感じで既に超最高なのに、今作一のベストトラックである3曲目(un)knowingがその次に用意されてるという、、、笑。高貴なボーカルの存在をメインで置いたような圧倒的に温かくて切ない曲調、そこにMogwaiみたいに痛烈なギターを当てはめてクライマックス級にド派手なシーンを繰り広げるようなコンビネーション。感動が巨大すぎて思わず号泣しながら叫びそうになってしまう。Microphones In 2020もそうだけど、もしかしたら楽曲最大の見せ所でシューゲイズ系の轟音ギターを繰り出す曲は全部最高だって決まってるのかもしれない 笑。ほんと、一曲一曲がめちゃ大作、全く抜け目がない。

ロック要素、アンサンブル、エレガントさ、今作は色々な技術をコレクションしたような実験的な音楽だと思うけど、それらによる豊かでカラフルな感情たちを最終的にはロックさせる方向に向かっているのがたまらない。1曲目のFaithのラストとか、7曲目のMagiciansのラストとか、インスト・ポストロックとしてのフレーズ感を大事にしてる感じ。フリーセッションっぽい長尺トラックが目立つのも、そういう精神が表れてるからだと思う。やっぱりマニアックなポストロックバンドとしてのキャラクターモデルというか、そういうのめちゃめちゃかっこいいからね 笑。個人的はそういうマニアックなバンド感の部分でいうと、4曲目のMeditationsの後半とかOughtっぽい異端児のガレージロックのインディー感があったり。そういうところもすごく気に入ってる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Angel Olsen - "Whole New Mess"

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"All Mirrorsの反動"

 【問題】天性の歌唱力を持った最高のSSWが自身のすごくいい曲をすごくいい感じにセルフカバーしたらどうなるでしょう? → 【答え】すごくよくなる。......「だよねーーー!!」ってなった 笑。ストリングスを大活用する豪快なアプローチで神々しい存在感すら放ってた力作の前作All Mirrors (2019)、今作はそれらの楽曲をデビュー当時のように原点回帰した弾き語りの形式でオリジナルレコーディグしたわけだけど、前作が巨大なパワーを外向的に発散させてた分、今作はそれらのパワーが内向的に向かっていくようにエモーションの反動をもたらしてるところが私的に凄まじくグッとくる。それは言い換えれば、音楽が鳴らされていた空間がより閉じたものになって、Angel Olsenの歌に含まれる悲しみや切なさのフィーリングにもっと寂しさや空虚なニュアンスが加わった感じ。個人的には例えば今作3曲目の(New Love) Cassetteとかめちゃめちゃそういう味わいがする。もともとAll Mirrorsに収録されてるNew Love Cassetteの原曲がめっちゃ大好きというのもあるけど、あのド派手な威力のあったストリングスのアレンジがなくなるだけで、こんなにも心をえぐられそうになるなんて...。そもそもAngel Olsenの神がかった繊細さは、空間が静寂になればなるほどその真価を把握できると思うのだけど。今作はレコーディング環境が100年もの時を経た古びた教会というのもあって、Angel Olsenのその至高の繊細さがより剝き出しになって表れてると思う。もちろんダイナミックなアレンジのAll Mirrorsの作風もとても感動的なのだけど、もっと生々しさの表れた今作も本当に素晴らしい。前作とセットでお得、Angel Olsenのことがもっともっと大好きになる。

今作の最大の特徴といえば、セルフカバー以外に新しく用意されたオリジナルの2曲、Whole New Mess (M1)とWaving, Smiling (M6)。これらの曲が本当に素晴らしくて鳥肌がもげそうになる。Whole New Messは、Angel Olsenの得意とするビブラートでリスナーの心を震わせまくるやつ。外向的に働いてたAll Mirrorsの反動も活かされてるし、リスナーをそっと抱きしめてくれるような圧倒的な温もりが込められてて本当にめちゃめちゃ泣きそうになる。こんなにリスナーの心を直に暖めてくれるような癒しを歌えるアーティスト、なかなかいないと思う。またWaving, Smiling (M6)は、Angel Olsenのルーツとなっているような和やかなカントリーの曲。音粒の輪郭はっきり表れたカントリー系のギターの音色、高らかに歌う高音の歌のパッセージ、こちらも本当に温かくてめちゃめちゃたまらない。もうほんと、この2曲だけが収録されたカップリングのシングルだけでもベストアルバム認定したくなる 笑。

それらのオリジナル曲がめちゃめちゃ素晴らしいのだけど、ライブバーションだとその素晴らしさがもっと強化されてて本当にやばい。(→ Angel Olsen: Whole New MessAngel Olsen - Waving, Smiling (Live at the Masonic Temple))。ライブならではの臨場感が現れて、低音域の音響もより強くなって、Cigarrets After Sexみたいな濃厚さすらも発生する感じ。原曲の圧倒的な素晴らしさだけでなく、身体がトロトロに溶けていくような恍惚も体感できてしまうという。この人弾き語りライブ、本当に最高なんだよね...。お願いです!!!!来日してください!!!!(爆死)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Keely Lee Owens - "Inner Song"

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か゛っ゛こ゛よ゛す゛ぎ゛る゛ーーー(失神)

 Kelly Lee Owensといえば、フロアオリエンテッドでストイックなテクノと、耳に優しく浸透するふわふわのベッドルームポップのダブル。まるでパラレルワールドみたいに非現実的で不思議なフィーリングスが溢れてて、我を忘れてしまうくらい本当に魅惑的な世界観なのだけど、今作はモダンテクノとしてクールなダンス性がより主張されてる作風のやつ...。テクノならでは集中力を燃料にして作品に対しての中毒性をより高めまくってる感じ、かっこよすぎるあまり思わず膝から崩れ落ちそうになった 笑。本当に超超超かっこいい。まずはアルバム1曲目のAreggi (Radiohead)、憂鬱なオーラ持つ原曲が彼女ならではのミステリアス&クールなセンスで雰囲気がガラリ、スピード感のあるテクノに大変身。本当にかっこよすぎるのでテンションがぶち上がってしまうのを抑えられない...笑。そこから勢いに乗って展開される今作リードトラックのMelt! (M3)は、前作よりももっとバチバチにテクノテクノしてるやつ。Meltというタイトル通り、脳みそが攻撃されるようなサイケデリックな感触もあって、ものすごくゾーンに入っていくエネルギーがある。もうこの時点で完全に虜なのだけど、ゾーンに入りまくったMelt!の後に用意されてるRe-Wild (M4)も凄まじいよさ...。ドリーミーな音像の濃いダブステップだけど、彼女が影響を受けたBjörkトリップホップみたいなダウナー感・ホラーっぽさみたいなのもよく反映されてる感じ。従来からのミステリアスでふわふわの深いエレクトロニカの持ち味が強化されてる感じで本当にたまらない。そこからまだまだ波に乗っていくJeanette (M5)。Melt!の激しいテクノとRe-Wildのふわふわなエレクトロニカが交錯していくように合体するパート。ここで絶頂に到達してもう泣いちゃう。ミステリアスでクールでふわふわだけどキレッキレ。めちゃめちゃかっこいい。前作ST (2017)のデビュー時からこの人かっこいいなとは思ってたけど、まさかここまでツボに刺さりまくることになるとは...笑。

そんなアルバム前半でもう大満足してるのだけど、後半パートも素晴らしい。印象的なのが7曲目のCorner of My Sky、フィーチャリングがThe Velvet UndergroundJohn Caleなのがインパクトある。こちらは前半パートのエネルギッシュなテクノとは対極的に、Kelly特有のミステリアスなオーラの生成に精力が注がれてる曲。恐ろしいくらい取り憑かれてしまうような不思議さに満ちてるのだけど、内容的にも7分ととてもボリューミーだし、Melt!に並ぶ今作のメイントラックの一つだと思う。これからも、オタッキーで風変りなアーティストとどんどんコラボしてほしい 笑。

前作よりも進化してる部分、ラストのWake-Upの存在も見逃せない。Kellyのボーカルを強調したフックのあるフィナーレ。ソフトなシンセオルガンのサウンドが輝き出して迫力を作っていく感じとか本当にめちゃめちゃ感動する。テクノ・エクスペリメンタルだけでなく、ポップとしての引き出しも見せてくれる曲。もっとブレイクしてほしい!日本にも是非是非来てほしい!泣

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. The Microphones - "Microphones In 2020"

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自伝を音楽のアートとして完成させるということ

 The Microphonesの今作が素晴らしくて素晴らしくてたまらないのは、音楽による感情の創造性を強く信頼し、人生の中で心に深く残っているかけがえのない瞬間を蘇生しようとするというところ。その創造性による感情増幅の効果を用いて、永遠に愛おしい過去への憧れを可能な限り引き出していくような試み。ずっと昔の若き頃の自分と対峙するように現在を超越していくトリップの素晴らしさはもちろん、自伝として構築されるその音楽のボリューミーなストーリー性や、それぞれのシーンに固有のビジョンを与えるような多彩なアレンジなど、コンセプトから内容まで何もかもが本当に素晴らしすぎると思う。そもそも私的には、The MicrophonesことPhil Elverum(Mount Eerie)という人物の自伝を44分にも及ぶスケールで1曲に落とし込むという超大作の作風だけでもう大勝利してると思う 笑。音楽を再生したその瞬間からその物語が始まって、断片的に残された記憶の感覚を頼りに脳内のイマジネーションを深く掘り下げて没頭していく。押し寄せては引いていく波動のような揺らぎのコードフレーズが本作の基盤になっているけど、リスナーに与える安らぎが本当に絶大で格別なフレーズだし、その揺らぎによる増幅によって音楽のワールドに対しての没頭性がどんどん深くなる効果があるのも本当にお見事すぎると思う。特に本作は、歌い出しまでのイントロでその絶大な安らぎのフレーズを7分間も継続させてる。アコースティックの音色、フレットノイズ、ありのままのギターコードの存在だけで成り立っているパート。私はこのイントロの安らぎの味わいが本当に大好きで、1音目から本当に心奪われるのだけど、このイントロの部分だけで本作がいかに圧倒的に最高の作品であることが伺えると思う。44分間も没頭したくなるほど、Phil Elverumが愛してるメロディーだってすごく共感できる感じ。7分を経た後の歌い出しの感動もより大きくなるし、本当に圧倒的なイントロだと思う。

44分のストーリーにおけるそれぞれのシーン固有のビジョン・多彩なアレンジというところだと、やっぱりノイジーなギターサウンドが提示する灼熱のエモーションの要素は本当に絶大なよさだと思う。それはまるで、永遠に愛おしい過去の感覚を求める過程で、残されていた当時の記憶が破壊されてしまいそうになるような感覚。本当にめちゃめちゃエモーショナルで胸が締め付けられまくるほどたまらない。果てしなく思い馳せるような憧れが溢れた世界の中で、シューゲイザーの破壊的な轟音を起用してるのが本当に大好きすぎる。ビートの強いドラムと組み合わせて感情を激化させるようなパッセージも同様。それは、Microphones In 2020という自伝をコンセプトとした詩のよさだけでなく、純粋にインディーロック作品としてもめちゃめちゃ最高だということ。アコースティックの魅力が満ちたイントロだけでなく、そういう方面のよさを兼ね備えてるとか、本当にツボすぎてやばい。その他にも、ピアノを強調したクラシック・バロックな趣だったり、心が満たされるドリーミーなアンビエントの感動だったり、音楽表現の演出が極められてる。超超超傑作だと思う。

ただでさえ音楽的にもよさが鬼のように詰まりまくってる作品だけど、詩的な部分でいうと私的には雨の描写がものすごく心に響く。私が覚えた感触的に、Microphones In 2020という自伝の思い馳せるような愛おしさの部分は、"雨"という神秘的なファクターと本当にぴったり一致するから。特に車の中から感じる雨の匂いとか、とても繊細な感覚まで蘇生しようとしてるのが本当にやばい。実際に、曲を聴いてそういう雨の匂いを感じる瞬間が何回かあるのだけど、そういうマニアックな情景の部分まで深く共感できるって本当に最高すぎると思う。私はあまり音楽に歌詞のよさは求めない派の人間だけど、流石に今作に関しては自伝としての密度がやばすぎて、歌詞を無視するのは無理だった 笑。

"I decided I would try to make music that contained this deeper peace" (この深い安らぎを含んだ音楽を作ろうと思った)、私が今作で最も好きな歌詞の部分。記憶・体験・思い出・それらの愛おしい感覚を芸術として表現し、作品化させ、永遠に保存するという行為はこの上なく崇高なことだと思う。甘酸っぱくて恥ずかしいほどの青春をベッドルームポップとして保存したYouth LagoonのThe Year Of Hibernation(2011)然り。こういう作品本当にツボすぎる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

プレイリスト🍎↓

(The Microphonesは長いので除去、Katya Yonderはサブスクなかった 泣)

温の「2020年8月ベストアルバム(温)」をApple Musicで

Katya Yonder → https://metronrecords.bandcamp.com/album/multiply-intentions

 

その他とてもよかったアルバム・EP

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Another Sky - "I Slept On The Floor"

Black Marble - "I Must Be Living Twice- EP"

Bright Eyes - "Down In The Weeds, Where The World Once Was" 

Dan Deacon - "Well Groomed"

Duval Timothy - "Help"

Jason Molina - "Eight Gates"

The Magic Gang - "Death Of The Party"

Sam Prekop - "Comma"

Son Lux - "Tommorws Ⅰ"

Victoria Monet - "Jaguar"

Washed Out - "Purple Noon"

Whitney - "Candid"

 

★8月1週目リリースの新譜 感想・ランキング★

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9月の1位はSufjan Stevens。。。(予言)

 

 

 

「2020年7月ベストアルバムTOP10」感想

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私的に、今月はR&Bとかジャズが強かった気がする 笑。大好きなアーティストのサプライズリリースも多くて、とてもウキウキしました。

ベスト10枚に収まらなかったので 泣、また今月もベストソングTOP10枠も別途で用意した。果たしてTaylor Swiftは何位でしょうか。

2020年7月リリースの新譜、感想をランキングで

(上位4つは全部1位)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. E^ST - "I'M DOING IT"

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「やりたいことはやりたいだけやる」という強い意思

 新感覚のポップスと出会ったときのワクワク感って本当に最高だと思うのだけど、E^STもその"新感覚"をめちゃめちゃ感じさせるような最高に楽しいインディーポップ作品だった 笑。それは、ただでさえポップというジャンルそのものにワクワク性が十分含まれてるのに、"未体験"という領域の巨大なワクワク感がさらにプラスされてるということ。E^STの今作の場合、トライバルっぽい迫力のキックが特徴的なFLIGHT PASS (M2)とか、情熱的でワイルドな作風のポップなのかと思いきや、そこからMAYBE IT'S ME (M3)でまさかの現代的なゲームミュージック風のワールドに一気に転換したり、型破りで未体験な領域に連れてってくれるおもしろさがよく感じられる。流行りのサウンドを取り入れたメインストリーム系のポップ(FOUND SOMEBOY (M4))などもあれば、弾き語りのみで構成されるしんみり系のバラード(I'M NOT FUNNY ANYMORE (M6))まで、様々なカルチャー・世界観が取り込まれたとても自由な形態。特に3曲目のゲームミュージック風のMAYBE IT’S MEに関しては、その自由なスタイルであることの嬉しさ・喜びみたいなものが楽曲中でよく炸裂してる感じが本当に最高 笑。ハウストラック系のダンサブルなノリの高品質さだけでなく、ベースのアップダウンの抑揚とかもめちゃめちゃ楽しい。その他、自由すぎて笑っちゃうポイントだと、5曲目のFRESH OUT OF LOVEなんかもそう。チルアウト系のR&Bに属する曲だと思うのだけど、楽曲後半のファルセットがクラシックのオペラみたいなってるのが予想外すぎてめっちゃ笑う 笑。序盤4曲目までバリバリの超ポップだったのに、いきなりエレガントでめちゃ大人びた雰囲気になるからね...笑。そんな風に、ジャンルレスなアイディアがたくさん詰まってて自由で楽しくて新感覚、めちゃ魅力的なインディーポップだと思う。

私がE^STに対して強く好感を持てたのは、ジャンルレスで自由なスタイルの「やりたいことはやりたいだけやる」というところの主張がとても強く感じられたというところ。それはいわば、音楽制作の束縛に対する強力なアンチテーゼで、インディーポップの精神でありながら、根っこのところからはすごくロックっぽいスタンスさえも伝わってくる 笑。具体的には、リードトラックのMAYBE IT’S ME (M3)、TALK DEEP (M8)、GET THROUGH (M11)、I WANNA BE HERE (M12)の4曲。どれもポップとして確立されていると思うけど、EDMに近いくらい強いダンス要素のクラブミュージック性がある。GET THROGHに関してはもうエレクトロロックだし、メインのトラックの力強い仕上がりの部分に、それらのポジティブな意思がよく表れてるのが本当に大好き。ラスト12曲目のI WANNA BE HEREの感動的なパッセージとか本当にめちゃめちゃそんな感じで、一般的なポップよりずっと心に響く仕様になってると思う。リリックがとてもストレートなのがいい。

フジロックが延期の今年ですが、、、スパソニももちろん覚悟してる、、、(そもそもこの状況下じゃ心から楽しめない...)夏フェスが恋しい分、写真とか見返えしまくったり、フェスの感覚を蘇生させて楽しんでいる(つらい)のだけど、E^STのI WANNA BE HEREとかはものすごく夏フェスソング感があって、聴くと思わず死にそうになってしまう、、、笑。フジロックに行けなーい。(吉高由里子)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Cloud Nothings - "The Black Hole Understands"

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今までのクラナシにはなかった心に沁みる切なさ

 Cloud Nothingsといえば、激しいロックを利用してメロディックなエモーショナルさを生々しくありのままに表現するスキルが本当に素晴らしいバンド。泥臭さすら素直にさらけだすような純粋さが愛おしいし、たくさんの人間味をストレートに表現するようなメロディー感とかが本当に大好き。そんなロック・ポップスの特色を活かして数々の名曲(名アルバム)を生み出してる一流なロックバンドだと思うのだけど、そんなCloud Nothingsの作品の中でも、今作はOso OsoやPinegroveすら彷彿させるような通気性の高いフレッシュなロックのやつ!リードトラックであるStory That I LIve (M1)やThe Mess Is Permanent (M7)、ラストのThe Black Hole Understands (M10)などなど、荒っぽくてパワフルなJayson Gerycz氏のドラムの最高の持ち味は健在だけど、エレキギターの尖ったサウンドはよりクリーンに落ち着いてる感じ。フロントマンDylan Baldiのメロディックな歌も気持ちよさ重視なスタイルに感じられたり。そんな風に、今作は今までにはなかった異色の作風だけど、Cloud Nothings特有の人間味がよく溢れたメロディー感が、通気性の高いフレッシュなロックのやつに適応されているという新しさが私的に大好物だった 笑。特に私はもともとCloud Nothingsのめちゃめちゃ荒々しいドラムワークが本当に大好きなのだけど、今作のドラムは力を込めれば込めるほどより気持ちよくなっていくおかしなエネルギー変換があるところが本当に楽しい 笑。例でいうとThe Mess Is Permanentのシンバル連打とかそう。荒々しくて過激なはずなのに、ずっとフレッシュでめちゃめちゃ気持ちいいからウケる。

そんな異色な作風だけど、今作における特別感は、リードトラックのStory That I LIveや3曲目のAn Average Worldのように、他の作品にはなかった物悲しくてメランコリックなフィーリングの美しさがあるというところ。特徴的なのだと、Dylan Baldiのボーカルの脱力系の歌い方とかがそうで、音色的なフレッシュさとは別の穏やかな心地よさが感じられる。私的にはやっぱり、特にStory That I LIveの曲調が本当にたまらない。今までのCloud Nothingでは味わえなかった心に沁みる切なさが本当に素敵だと思う。なんならばそれのよさと同様、WaxahatcheeのSt. Cloud (2020)のような夕方に差し掛かる時間帯のジャケット空間とかも本当に最高。さらに言うと、7月~8月の季節感との相性のよさもめちゃめちゃある 笑。もう8月に入って夏も後半戦、またまた手持ちの夏ソングが増えて強くなりました。

リードトラックの他にも、ボーカルを取り除いたインストゥルメンタル形式でCloud Nothingsのバンドアンサンブルだけを魅せたTall Grey Structureもめちゃアツくてかっこいい。ベースがこれまでにないほど攻めてる感じなのにちょっと笑ってしまう 笑。あと、An Average Worldのラストスパートとかもめちゃめちゃ大好き。Cloud Nothingsの大大代表曲であるWasted Daysレベルで怖いくらい火力が高まるやつ 笑。もうWasted Daysみたいな曲はどんどん演らなくなってきてしまっているのかもしれないけど、激アツで激アツなクラナシのそれ、多分ファンはいつも求めてると思いますよ。(私🙋‍♀️笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Thanya Iyer - "KIND"

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感情を豊かにしまくる内向的な影響力

 Thanya Iyerの本作が私にとって最高にツボなのは、ストリングス・フルート・ホルンなど、充実したフォークオーケストラの大規模な自然エネルギーが全て内向的に働いて、Thanya Iyerの感情の豊かさを高めまくっているというところ。そもそもとして私、Sufjan StevensのIllinoise (2005)とか、最近でいうと魔法性の高いMoses Sumneyのgræ (2020)とか、優しさの塊のようなフォークオーケストラアレンジのサウンドに弱すぎてやばいのだけど 笑、Thanya Iyerの本作の場合、それらのオーケストレーションが決して大胆に派手になることがなく、落ち着いたテンションをずっとキープしているような丁寧な調整になっている。そのテイストによって、美しい音の一粒一粒の豊かさが全て内向的に影響してくような印象を感じさせるのだけど、この、『誰にも解らない自分だけの特別な感覚』というとっておきの味わい、本当に心から愛してる 笑。それは、音楽という魔法の本質である、目には見えない己の内側のみで生じる感情反応の喜びとものすごく直結していると思う。例えば、2曲目のI Forget to Drink Water (Balance)。"water"のモチーフそのものであるかのような零れ落ちる感覚をメロディーで見事に描写していて、感受性の深いところまで美しく刺激されるようなすごさがある。曲のラストで締めくくるハープの豪快なメロディーさえも、全部自分の豊かな感情として作用していくから本当に素晴らしい。中でも、今作屈指のリードトラックすぎるPlease Don't Hold Me Hostage for ~ (M4)とかは本当にスーパー傑作ソングだと思う。管楽器のフォーク系アイテムだけでなく、エレキピアノのカラフルなサウンドも多用したようなナンバー。Thanya Iyerならではの丁寧で落ち着いたテイスティングでありながら、気持ちが昇っていくようなファンクロック系の楽しさ・かわいさを少しプラスさせてる感じ。その音楽の内向的な心理体験は、まるでおとぎ話の夢を見るような心が満たされまくる素敵なフィーリングのそれと等価なのだけど、そういった優しさたっぷりのハピネス、自分の内側だけで生じる感情反応のとっておきな魅力、それらのファンタジー的要素、どれもこれも全部本当にツボすぎる...笑。それでありながら、前作Do You Dream (2016)のときからのR&B・ソウルのボーカリストとしての強みもプラスされているという......本当にめちゃめちゃ最強だと思う。

「豊かな感情」というところ、感情表現的な点で言うと、1曲目のI Woke Up (In The Water)も本当にやばすぎてやばい。悲しみがポロポロと落ちていくようなストリングスの歌、アルバム「KIND」という物語の冒頭の部分なのに、いきなり主人公が泣いているシーンから始まるというようなシナリオ構成。「どうして泣いているのか分からない」というミステリアスさが強調される曲調の効果もあって、心がかき乱されるような圧倒的なロマンを感じさせる演出になっているのが本当に本当に素晴らしい。アルバムの一曲目でそのアルバムが傑作だと確信させるくらいのパワーソングってやっぱりあると思うのだけど、私における今作のI Woke Upはまさにそんな感じだった 笑。Thanya Iyerの高音域ボーカルの心地よさもとても絶品、本当に心に残る。

初めて今作のジャケットを見たとき、イメージ的には中村佳穂っぽさを少し思い浮かべた 笑。中村佳穂はそんなに詳しくないけど、ジャズ・ポップの両方を吸収したようなオルタネイティブR&Bって感じは、今作のThanya Iyerの作風ともリンクする部分がある気がする。もしかしたら昨今のR&Bのトレンドにもよく当てはまる作品なのかなって思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Secret Drum Band - "Chuva"

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こんなにかっこいいディスコパンク、今までに聴いたことない

 私が今まで聴いてきたどのディスコパンクの作品よりもぶっちぎりのかっこよさ、、、とにかくシビれてシビれてシビれまくる、本当に超絶に激ヤバ級にかっこいい...!!泣。それはなんといっても、主旋律やコード進行など、リズム以外の音楽構成要素を削られるだけ削って、「ドラム・パーカッションのみで歌いまくる」というスタイルで仕上げた実験的な音楽性!もともとPrimal ScreamのKill All Hippiesとか、Oh SeesのSentient Oonaとか、ドラムが"歌"とか"フレーズ"を持ってる感じの曲が最高にかっこよくてたまらなく大好きなのだけど、Secret Drum Bandの今作は、アルバムの100%がそういったドラムの歌で成り立ってるやばさがある 笑。しかもこのSecret Drum Band、Bandcampにドラムスコアをアップするくらいのドラム・パーカッションオタクのバンドで、とにかくドラム・リズムのパターンに対する歌の多様性・こだわりみたいなのが本当にやばい。Antifa Fuchsia (M1)、Alaka'i Swamp (M2)、Robert Plants (M7)などなど、表打ち・16ビートのパターンが最高に美味しくなるように組み立てるハイセンスなリズムワーク。欲しいところにピンポイントで音が届いていくようなその快感は、まるで「太鼓の達人」の達人プレイヤーが激ムズの楽曲を余裕でフルコンボしていくような楽しさにも似てるかもしれない。Ka'ena Point (M4)ではそのドラム・パーカッションのみのバンド形式で人力テクノを実現してるようなすごさがあったり。また、全体を通してドラムが即興的でジャズのような華麗なプレイスタイルなのも魅力的なのだけど、Multispecies (Ants) (M5)みたいにサウンド的にズシンとくるロックぽさもあったりするのもめちゃ最高。極め付きでやばいのは、3曲目のSurface of Abyss at Ducke。この曲はシンバルのミュートによる音響の変化を利用してメロディーを奏でるという荒業を披露しているのだけど、これも本当に最高すぎて笑いが止まらなくなる 笑。あくまでドラム・リズム楽器単体としての扱いでシンバルの音の魅力をめちゃめちゃ引き出すようなすごさ。ほんと、ドラムのプロフェッショナルすぎてめちゃめちゃぶっ飛んでると思う。そんな風に、1枚のアルバムがドラムのコンサート、ドラムのバラエティーショーのようなパフォーマンス性を炸裂させまくってる。興奮がずっと冷めないむちゃくちゃに最高のダンスミュージックだと思う。

さらにSecret Drum Bandの今作が特別にかっこいいのは、従来のダンスフロア・ライブハウスのようなディスコパンクの空間とは全く異なる神秘的な世界観を持っているというところ。それは、民族音楽系の打楽器で表されているようなオーガニックで自然的な空間で、まるで非現実的で謎めいた秘境のような世界のイメージを思い起こさせる。その自然的な世界観の影響で、ハットとかシンバルの音が実際に空気中を振動してる繊細なところまで強調される表現になってるのだけど、この音像が本当に美しくてやばい。これによって、ドラムの音・ドラムの存在そのもののかっこよさが段違いに魅力的になってると思う。そしてさらに、ドラム・パーカッションだけで構成されるというSecret Drum Bandの超絶にかっこいいディスコパンクが、謎めいた神秘的な世界におけるある種の儀式みたいな演奏になってるところもやばい。中でも2曲目のAlaka'i Swampとかはクールなディスコパンクとしての鬼高い集中力があって、まるでドラムの演奏に命を懸けてるみたいな強い熱狂があるのだけど、神秘的な世界観でそれをやるというシチュエーションがもう抜群にかっこよくて...笑。本当にめちゃめちゃ泣きそうになる、史上最高にかっこいいディスコパンクだと思う。

私はいつも、平日の夜に次の日のお弁当を作っているのだけど、そのタイミングで音楽を聴きながらめちゃめちゃ踊りまくってるのが日課になってる 笑。今作は特にダンスミュージックとしての質が高すぎてやばくて、料理に全く集中できないレベルで踊りまくってた 笑。7曲目のRobert Plantsとか、後半の変則リズムのパターンでお腹痛くなるくらい笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Nicolas Jaar - "Telas"

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インスピレーション・精神力をありったけ注ぐ

 前作2012-2017同様、ソウルミュージックなどのサンプリングによって特殊なアツさを生み出した秀作ハウスの2017-2019(Against All Logic)、そしてダークな世界に美しく堕ちていくような魅力が半端なさすぎるCenizas(Nicolas Jaar)、それぞれの制作を経て研ぎ澄まされたインスピレーションが抑えられなくなったのか、今作はもっと大胆に実験音楽としての方向で創造性を極めた魔物のようなアルバム。1曲約15分を4曲用意した1時間の作品だけど、まるで交響曲の4楽章構成みたいに並々ならぬ精神力を注ぎ込んだ作品に感じられる。実際にCenizasとかと比較すると、音楽空間の多様性、そこへ複雑にワープしていくカオス、それらが持つ大規模な音楽のイメージ・ストーリー性など、もっともっと味わいが濃密な内容になっていると思う。Kaitlyn Aurelia Smithのような幻覚・瞑想のアンビエントによるスピリチュアル空間、リングモジュレーターの電子音によって表現される星々の無重力空間・コスモス、さらにはノイズインダストリアルのようなハードな精神すら想起させるアンダーグラウンドなど、Nicolas氏の引き出し・アイディアが超たくさん発揮されてるめちゃめちゃ巨大なスケールの仕上がりになってると思う。Nicolas Jaarのサウンドが本当に大好きなので、彼のその技術・表現力をさらにもっと大スケールで堪能できるって本当に私得でやばい 笑。特に今作は1曲目の1発目から「Nicoalas Jaar、開 幕 !」デデン!みたいな強烈な出だしがあったり、初めて聴いたときは大好きの感情がバーストするようにテンション上がりまくった 笑。本当、1音目で持ってかれる、超超超かっこいい。

まず1曲目のTelahoraで本当に素晴らしいところは、後半10分50秒頃からの鐘のサウンド。このサウンドの採用は本当に秀逸だと思う。1曲15分超えレベルの長尺な実験音楽というのもあるけれど、Telahoraは開始早々から異世界への門口をダイナミックに示してるというのもあり、リスナーに対して先の展開の興味を強く感じさせる働きを持ってると思う。そういった効果もある中、楽曲後半に差し掛かるタイミングで不穏な予感を掻き立てまくる鐘のサウンドを用意して、その先の展開に対するワクワク感と緊張感を両方同時に強調しまくってる。その鐘はまるで、迷い込んだ異世界の中で異常の事態を知らせるような合図。音楽が非現実的な未知の世界というのも相まって、何かを知らせようとする鐘のサウンドに対する恐怖がもっと煽られるような演出になってると思う。とても怖くて魅力的なサウンドだし、後半にそれを準備しておく音楽のストーリー構築という点でも本当に素晴らしい。ラストで重力を失ったのごとく闇の世界に堕ちていき、魂がこの世を去るように死の体験をするゾクゾク感も本当にやばい。

2曲目のTelencimaもほんとにほんとに最高。リングモジュレーターを掛けたコスミックな電子音、ふわふわ漂う無重力感、本当にめちゃくちゃ宇宙をイメージさせるパートだと思う。前半ではFloating Pointsのようなクラシックな生ピアノとエレクトロニカなエレキピアノを融合させてて、懐かしさと新しさの感覚が脳内で美しく衝突するようなこの上ないほど鮮やかなカラーを放っている。それは、宇宙の中で遭遇する未知の惑星に対する感情かもしれないし、またはその未知の惑星そのものの表現であるかもしれない。本当に素晴らしすぎてやばい。

そして私が今作で本当に最高でやばいと思うのは、3曲目Telahumoの後半11分10秒頃からの本作最大級な見せ所。Nicolas Jaarというサウンドアーティストとしての本気がこれでもかというくらい炸裂しまくったような超絶に神秘的なパッセージのやつ。3曲目まで実験音楽環境音楽としての形式がメインだったのに、この部分でそれまでにはなかったような明確な"歌"を持ち始める。その存在はこの上ないほど神々しいエネルギーを纏っていて、本当に力強く圧倒的で、想像を遥かに超えるように美しい。それは、長い長い異世界のトリップで辿り着いたような新世界。2曲目Telencimaで表現されていた無重力のふわふわな宇宙ワールドの反動も効いてて、アルバムを通して聴くとメロディーの存在感・破壊力が半端ないほど感じられる。Nicolas Jaarのインスピレーション・才能・精神力がありったけ注がれたような創造物。初めて通して聴いたとき、鳥肌立ちすぎてもう皮膚が剥がれるかと思った 笑。本当に頭がおかしくなるほど感動する。本当にめちゃくちゃ美しい曲。

Cenizasと今作、どっちが好きかと言われるとめちゃ悩む...笑。正直どっちも同じくらい大好き。A. A. L.の2017-2019はどうなのかと聞かれると、やっぱりそっちも大好き 笑。実はこの2012-2017、「2020年上半期『月間ベストアルバムTOP10』から漏れてしまったベストアルバムTOP10」の候補でした 笑。結果として漏れベストから漏れてしまった。(なんだそれ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Trevor Powers - "Capricorn"

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型にはまらない新時代のアート

 Trevor Powersの今作は、Youth Lagoon時代から育ててきた最強のイマジネーションを原料に、"やぎ座"という神話・伝説にまつわるコンセプトをメインとして制作したような作品だと思う。そのコンセプトを表現するためのアイディアとして、過去の物語へタイムトリップするためのローファイ・アンビエントと同時に、神話の世界にアクセスするための宇宙みたいな実験音楽をミックスさせているのが本当に素晴らしい。古びたレコードがノイズ混じりに再生されるような懐古のトリップ体験(Ghosts Of Shanghai (M5))、宇宙のような大スケールを想起させるドラマチックなニューエイジ(Earth To Earth (M2))、それら両方を組み合わせて表現する型にはまらない新時代のアート。それはただのローファイ・アンビエントでもなく、ただの聖なるニューエイジでもなくて、神話的なコンセプトを引用しながらも現代的な新しさを付与したような作家性。音楽の呼吸を丁寧に意識するアンビエントニューエイジとしてのテクニックを開発してるようなすごさだけでなく、Youth Lagoonのようなメロディックで美しい鍵盤楽器のポップ感もあれば、前作Mulberry Violence (2018)で培った音圧の高いバイオレンスなエレクトロニカ技術なども利用してたり、才能が本当にたっぷり発揮された大傑作だと思う。大大大好きなアーティストがアルバムをサプライズで投下するという喜びももちろんあったし、前作Mulberry Violenceよりも内容や作品のモチーフが私の大好物すぎてテンションが超上がる 笑。1曲目のFirst Rainからその作家性・才能が溢れてて止まんなくて、本当にめちゃめちゃ酔いしれる。こんなに傑作なんだから、カセットテープだけでなく、ヴァイナルのフィジカルとかもリリースしたらいいのに...と思った。(自分が欲しいだけ 笑)

本アルバムは、私的に"大好き中の大好き"みたいな曲をいくつも含んでいるところが本当に魅力的。1曲目のFirst Rainだけでなく、ピアノのメロディーで神話を再生していくようなThe Riverine (M3)、飲み込まれて抜け出せなくなるほどの深いミステリーを感じさせるA New Name (M4)、色褪せた古風な音像に鮮やかな現代的エレクトリックサウンドを対比させる美しさがやばすぎるBlue Savior (M6)など。中でもコンテンポラリー系のエレキピアノ含めて、Trevor Powersの今作は鍵盤楽器のメロディーの美しさを引き出すのが本当に上手だと思う。もともとYouth Lagoonのベッドルームポップの頃から、ピュアで人間味のよく表れた鍵盤メロディーの美しいセンスがあったと思うけど、神話のコンセプトがある大人びた作風の今作でも、そのメロディー力がとても活かされてる感じで本当にたまらない。特に今作だと、ラストの2166 (M8)とか本当にめちゃんこそれで、初めて聴いたときは鳥肌が立ちまくって本当に感動した。鍵盤楽器のメロディー力というだけでなく、ニューエイジアンビエント、バイオレンスなエレクトロニカ、ベッドルームポップ、Trevor Powersの全才能が注ぎ込まれてた素晴らしいナンバーだと思う。それの一個手前の曲が、Aaron Dillowayみたいに超怖いホラーな曲で、そのギャップがめちゃめちゃ効いてるのもずるい 笑。

私が本格的な洋楽オタクに目覚めたのは2016年の3月からなのだけど、Youth Lagoonもその時期に出会ったアーティストで、気が付いたときにはYouth Lagoonはもう存在しなかった...泣。The Year Of Hibernation (2011)とか、人生超ベスト級のアルバムなのだけど、Trevor PowersのライブでYouth Lagoonの曲を観るのが密かに私の夢です...笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Fontaines D.C. - "A Hero's Death"

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完全に信者🙋‍♀️

 鼻血が止まらなくなるくらいとにかく鬼かっこよすぎて発狂してしまうほどにやばいFontaines D.C.、前作Dogrel (2019)のときが「ポストパンクバンドのルーキー」という位置付けであったのだとしたら、今作A Here's Deathの本物感でいったらもう「ポストパンクバンドの神の子」とかそういうランクになりますけど...それでいいですか?笑。って確認したくなるくらい、Joy Divisionが象徴した正真正銘のロックンロールの完全形態として極められてると思う。ポストロック・クラウトロック・インダストリアル、精神の奥底まで徹底的に真っ黒なアンダーグラウンド音楽の超本格的なそれ。聴くと痺れてしまうようなベースのフレーズ1発目でその本物感の確証を得るようなTelevised Mind (M3)、静かに燃え盛るような熱狂が込められたドラムのA Lucid Dream (M4)、そしてダークに染まりきって狂気じみた笑みさえ浮かべるような恐ろしさのあるA Hero's Death (M7)などなど...。70~80年代のガレージ特性を利用した本格的なサウンドデザイン、ストレートなまでに突き進んでいく本格的なポストパンクな演奏、イギリスのダブリンの労働階級を彷彿させる本格的なテーマ、もっというと本格的なメンバーの風貌(なにそれ)、作品を構成してる全ての要素に対して本物感が本当にやばい。(Televised MindのMVにその"本物感"の感じが集約されてると思う。)まるで、Joy Divisionらのポストパンクの遺伝子を継承しただけに収まらず、Fontaines D.C.の中でそれらの信念がもっともっと強化されて、Fontaines D.C.そのものが現代における新しいポストパンクの主になってしまったみたい。前作Dogrelの時点で多くのファンを獲得したと思うけど、ここまでの存在感になると私なんかはもう完全にFontaines D.C.信者になってしまうよ...笑。本当に本当に激アツ。この愛は誰にも止められない。

今作でFontaines D.C.の進化が顕著に表れてる部分は、フロントマンGrian Chattenの歌声が夜空に響くような美しさがたまらないYou Said (M5)や、今までにはないジェントルでディープな雰囲気すら感じさせるSunny (M10)など、反抗的なロックンロールのナンバーとは対極的なセンチメンタルな感情に溢れた曲。前作Dogrelにおける6曲目Roy's Tuneとかでも同じようにセンチメンタルなテイストの楽曲はあったけれど、今作のパートの場合は、もっとサッドネスの感情のリアリティが伝達するような重々しさを重視して表現されてる感じ。それは、Fontaines D.C.のメンバー達が愛している詩的な美しさをより強調する、Fontaines D.C.のもう一つの一面だと思うのだけど、この部分で「彼らが抱えてる思い、彼らが背負っている思いがいかに本物であることか」ということをリスナーに証明するような圧倒的なインパクトがあるのが本当に素晴らしい。ただガムシャラにパンクを演奏するだけでなく、それらの感情源にあたるもっと根本的なエモーションを映し出すような深み。You Saidとか完成度が本当に別格で、空にまで轟くようなギターのメロディーが本当に美しくてたまらない。私的にはこのYou Saidが本作におけるFontaines D.C.の本物感を高めまくるキートラックな1曲だと勝手に思ってる。

私は前作Dogrelでいうところ1曲目のBigみたいなやつが本当に超超超大好きなのだけど、今作は9曲目のI Was Not Bornがそれに相当してた 笑。私がFontaines D.C.に求めてためちゃめちゃノリノリなパンクのグルーヴのやつ。こういうやつが本当に大好きでたまらない。今作はリリース前から、そういうBigみたいな超かっこいい曲が1曲でもあればもう満足だったのだけど、その期待以上にバンドとしてのかっこよさがとてつもないことになっていた...笑。Televised MindのMVとか、もう何もかもが本当にかっこよすぎる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Julianna Barwick - "Healing Is A Miracle"

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その願いが届いたとき、癒しは本領を発揮する

 今作の本当に圧倒させられるところは、黄泉の国を創造するアンビエント作家の中でも指折りの実力者であるJulianna Barwickが、アンビエントの癒しによる救済の奇跡Healing Is A Miracleを心から信じて、それを今までにないくらい力強く作品にぶつけているというところ。ノイズ未使用なのに本格的なシューゲイザーにまで匹敵しそうな極上の快感サウンド、冒頭Insprit (M1)のように重低音のグラビティを利用した最強の浮遊感とか、前作までの作風よりも大迫力なヒーリングミュージックの仕上がりで、「絶対に絶対にお前を癒してやるからな!」というようなものすごく強い気合が感じられる 笑。もともとJulianna Barwickというお方は、多層的な歌声で音のオーロラを生成したり、キリスト教音楽のような光り輝く希望を環境音楽として新構築したり、リスナーを昇天させるような極上の安らぎを巧みに完成させたアーティストの一人だと思う。ただでさえそんな人なのに、今作は今まで以上に迫力のある仕上がりで、リスナーへの癒しをもっと確実に、もっと徹底的にぶつけているというやばさがある。自分のありったけの思いを伝えようとする音楽家としての態度というか、音楽に込める思いや願いのリアリティみたいなのが深く伝わってくるところがあるから本当に泣きそうになる。Mary LattimoreとフィーリングしたOh, Memorry (M2)とか、JónsiをフィーチャリングしたIn Light (M4)とか、一つ一つの楽曲の強さからその意思がよく見てとれると思う。特にこのIn Lightは本当に最高すぎてやばい。鳥の鳴き声のサンプリングで映し出す美しい木漏れ日、その中で現実をしっかり破壊する神秘性。Jónsiのコラボとは近似的に言えばSigur Rosとのコラボ。Julianna Barwickの徹底的な癒しが、心から満たされるSigur Rósの人生最大級の感動と組み合わさるという、、、そんなのありえなくない???笑。このIn Lightは2020年ベスト贅沢ソングだと思う 笑。

そんな今作で私が最も大好きでたまらないところは、Nosaj ThingとフィーリングしたエンディングソングのNod (M8)。この曲は今作の中で最もポピュラーソング的なメロディーのフックを含んだ曲だと思う。アルバムを通じてそれまでに蓄積した徹底的な癒しをさらに高みに上げるような幻想性の強調。フルハイビジョン的なサウンドの美しさが強みのエレクトロニカコンポーザーであるNosaj Thingとコラボレートしてるというところが本当に鬼すぎる。。。こんなことされたらマジでひとたまりもない。。。笑。本当に恐ろしいくらい美しいと思う。Nosaj Thingがめちゃ大好きというのもあるけど、比較的ナチュラルめのサウンドが印象的なJulianna Barwickが、バリバリにエレクトロニカのNosaj Thingと手を組むっていうところのインパクト・ギャップがいいなって思う。ラストソングとしての深みも本当によく出てる。

このアルバムが本領を発揮する瞬間、それはJulianna Barwickが信じた癒しによる救済が、実際にリスナーの中で本物になる瞬間。悲惨的な状況の世の中、息苦しいしんどさが増殖していくような毎日、死にたくなるような憂鬱な感情、この音楽の癒しがそれを克服したとき、自分の中でその癒し・その願いが届いたと感じたとき、それこそがこの作品の最大の価値だと思う。それは、自分の中で求めていた真実に辿り着くような巨大な達成感にも似てる気がする。本当に果てしない感動だと思う。Julianna Barwickの徹底的な癒しを感じとれたその瞬間、その音楽を鑑賞しているときのとっておきの瞬間、心の底から安らぎを得て、身も心も満たされて、誰にも負けないような強い精神力を手に入れられるのだと思う。それがこの作品の本質的な部分、癒しによる奇跡だと思う。もちろんそれはただの一時的な瞬間ではなく、自分の感情の中で履歴として、記憶として残り、自分にとって永遠の存在になるもの。私におけるNodの体験とかは本当にめちゃそれで、徹底的なまでに打ちのめされてしまった。ほんと、In LightとNodがとりわけにやばい。

このアルバム、スタイリッシュに30分でまとめてあるのもナイスワークだと思う。一曲一曲が10分越えの1時間越えのアンビエント作品とかよりもお手軽に摂取できるよさがあると思う 笑。(1時間越えクラスの作品群も最高だけど)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Lianne La Havas - "Lianne La Haves"

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素敵すぎてもう人生ベスト級のR&B・ソウル

 R&B・ソウルに対するこだわりに加えて、そこに込められたハート溢れるメッセージ性、そこから浮き彫りになるLianneのピュアネス、さらに言うとライブ・MVなどからも滲み出る人懐っこさ......アーティストとして総合的にツボすぎて本当にやばい 笑。音楽もめちゃめちゃ大好きだし、Lianne La Havasという一人の人間としても本当に尊敬レベルが高い。特に今作における音楽性に関しては、コンテンポラリー系の丁寧なサウンドが意識されたような極上の味わいのR&B・ソウルだと思うのだけど、"オルタネイティブ"って概念の自由意思みたいなのがもっと投影されまくってて、R&B・ソウルとしての音楽表現・エモーションをめちゃめちゃ豊かにデザインしてる感じ。ただでさえR&B・ソウルという音楽自体が上品なムードの豊かな味わいを十分に持ってるのに、Radioheadカバー然りオルタネイティブロックにもアクセスするようなジャンル的制限の解除もあって、従来のR&B・ソウルにはなかった新しい豊かさ・充実感がある。この芸術的な表現が本当に素晴らしくてたまらない。曲で具体例を挙げると、Crumbのようなジャズ・コンテンポラリーの中にほんのちょっぴりローファイ・サイケデリック感の恍惚をアレンジしてるRead My Mind (M2)とか、ジャジーでありながら同時にドリーミーな音像を合わせたようなGreen Papaya (M3)とか、ギターのカッティング奏法がファンクっぽいけどクラシックギター風のサウンドとして昇華されてるようなCan't Fight (M4)とか。R&B・ソウルの持ち味であるスモーキーな魅力とかビターな美しさのよさをもっと贅沢に感じさせるような特殊なテクニックで本当にやばいと思う。その表現の贅沢化・上品なムードのスケールアップが1曲目のBettersweetからずっと続いてて、アルバムとしての出来栄えがかなりハイレベルなものに感じられる。R&B・ソウルの守備範囲がスーパー狭い私でもノックアウトされまくったよ...笑。

今作で私が最も心奪われたのは、リードトラックの一つであるCan't Fight (M4)。これが本当に大好きでリピートしまくってる(特にMV)。『諦めるべきなのは分かってる。逃げようとしたけどダメだった。この愛には逆らえない』、どこまでも真っ直ぐで純粋な愛が表れたリリックで、とてもとても強力な愛の表現なのに、そこにLianneの豊かで贅沢な音楽のエネルギーが作用して、それらの思いの深みが究極的になってるのが本当にやばすぎる。何回聴いてもめちゃめちゃ心奪われる。MVの一瞬一瞬も本当にやばくて、このビデオでLianneの超絶大ファンになった 笑。(特に最後お辞儀するところが死ぬほどにツボ。)系統的には、私のエターナルベストヒーローのStella Donnellyに相当するような憧れのキャラクター性を感じる。ピュアネスと優しさとユーモア、私もそういうLianneみたいな人間を目指してる 笑。

今作におけるもう一つの傑作ソング、5曲目のPaper Thinもリリックの共感がやばい。"あなたの痛みは本物だって知ってる。自分自身を愛して。でないと誰も愛せない" というストレートな励まし。音楽の和やかな雰囲気もメッセージ性にものすごくマッチしてると思う。この歌詞の内容でLianneの人間性に対する信頼・リスペクトが確信的なものになった 笑。この内容、本当にすごく分かる、めちゃくちゃ友達になりたい。

私的ベストブラックミュージック(ワールドミュージック)は、Janelle Monáe, Ibeyi, Meshell Ndegeochello(←人生ベストソング), Sampha, serpentwithfeet(←ほんとにほんとに死ぬほど好き)Xenia Rubinosなどなど。でもアルバム的にいったらLianneの今作は私的人生ベストブラックミュージック1位の作品かもしれない。私的2010年代ベストアルバムのコメントでもいただいたように、そもそもとして私、R&B・ヒップホップなどの引き出しが本当に少なくてスーパーすみませんって感じなのだけど 泣、ブラックミュージック界隈でStella Donnellyに相当するレベルの大ファンのアーティストを知れたのが本当によかった。話題のRadioheadカバーも本当に素晴らしい。R&B・ソウルによる全く違う現実逃避、本当に新しい景色を見せてくれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Crack Cloud - "Pain Olympics"

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絶望と闘うアーティスト集団

 Crack Cloudのこのアルバムが何よりも優れてると感じられるところは、生きづらさ・精神的な苦痛など、病気的な不健康のリアリティが前衛的に、衝撃的に、ものすごく芸術的に表現されているというところ。アンダーグラウンドで発達したような重苦しくダークなインダストリアル・ポストロック、そしてTVラジオ・ストリート・自然などあらゆる文化・空間を映し出すサンプリングによる未来都市的イメージのニューエイジ、さらには殺意さえ感じられるほどの怒りと不満の暴動を起こすようなハードコアヒップホップ(Favor Your Fortune (M5))...、それらが不安定に合体し、リスナーが絶対に予測できないように繰り出される。その苦痛に満ちた衝撃的な音楽性は、まるで人間が破滅してしまうギリギリのところで耐え抜いているようなとてもしんどい精神状態を想起させられる。自らを癒すためのアプローチとして芸術を生み出すアーティストは多く存在すると思うけど、その中でもCrack Cloudの苦しみのリアリティ表現には本当に本当に感動させられる。(もちろん、他人の不幸で蜜を得る感動ポルノ的な意味合いではなく、純粋に世に生み出された芸術作品としての素晴らしさという意味で。)とても高い才能が感じられるのだけど、特に"Pain Olympics"というアルバムタイトルとか、そのネーミングからだけでもアーティストとしての天才的な素質が確認できるように感じられる。朽ち果てた未来都市のイメージをバックにしたメンバー集合のジャケット写真もそう。演奏メンバーは7人だけど、音楽活動をサポートするチーム全体で考えるとメンバーは総勢約20人、それらの大規模な集団組織としての存在感の魅力もプラスで、世界観が本当に素晴らしい作品だと思う。このCrack Cloudの世界観に対して、大好きなBIG LOVEが商品レビューでAKIRAのネオ東京を引用してたのが印象的だったけど、本当にめちゃめちゃ共感する 笑。あるいは、世界が滅びる寸前の未来からやって来たようなシリアス系のSF的作品の着想の感じも。そんな風に、作品固有のワールドの観点から見ても本当に素晴らしいと思う。

私がこの作品で死にそうになるほど感動したのは、なんといってもキラートラックのThe Next Fix (M4)。ギターリフは濁っていて気持ち悪く、ラップのメロディーは暴力的で腐敗したストリートを演出するよう。それらの苦しみはまるで、人間として必要な何かを失っているような病気的な状態に似ているもので、そこから永遠に抜け出せないようなものすごく深い絶望が感じられる。それでも、仲間達と一緒に騒いだり、一緒に歌を歌たったり、生きることの喜びを知っている。それでも、心が温まる安らぎの感覚をずっと覚えている。病気のように毎日苦しいけれども、その中で一生懸命にもがいてる。それは、生きる気力を失うほど理不尽なまでに残酷で悲しい世界の中で生きている、永遠に癒えない心の傷を抱えた者たちに死にほど響くと思う。私自身、楽曲が物語っているそのエモーションに対して、心に突き刺さりまくって死にそうになるほど感動する。今この文章を書きながら泣くのめちゃめちゃ堪えてる。本当に本当に本当に素晴らしい。MVもそのような意思がよく表現されててやばい、2020年におけるウルトラスーパーベストソングだと思う。

あと今作がとりわけ心に響いたのは、コロナ時代で私達が痛感している社会に対しての生きづらさみたいなフラストレーションを、Crack Cloudが上手に代弁してくれたような部分も大きいと思う。情報が錯綜し、不安は極端に煽られ、精神的な疲労が募っていくばかりの毎日の中、Crack Cloudの音楽が溜まりに溜まった憎しみ・不満の感情と深いシンクロ反応を起こす感じ。私的には、特にハードコアヒップホップのFavor Your Fortune (M5)とか本当にそれで、聴くと身体中が熱くなるような最高の興奮を発散できてめちゃめちゃスッキリした。疲れを取り除く癒し的な音楽もいいけど、爆発力のある音楽も効果的なんだなって改めて感じた。

去年に2010年代の総括をしてるときから、2020年の音楽はどんな風になるのかをずっと楽しみにしてた。だけど、例えばエレクトロニカ技術による音響クオリティのこれ以上の発達なんて全然想像できなかったし、未来の音楽のイメージなんて全然分からなかった。Crack CloudのPain Olympicsは、そんな未来の音楽を感じさせる2020年代の第一歩な作品な気がする。それくらいの衝撃度、そのくらいの爆発力、本当に感動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

7月ベストアルバムのプレイリスト↓

温の「2020年7月ベストアルバム(温)」をApple Musicで

 

 

 

 

★7月ベストソングTOP10

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10. My Morning Jacket - "Climbing the Ladder" (The Waterfall Ⅱ)

9. Jessy Lanza - "Face" (All The Time)

8. Skullcrusher - "Trace" (Skullcrusher - EP)

7. Protomartyr - "Processesd By The Boys" (Ultimate Success Today)

6. Madline Kenny - "Sucker" (Sucker's Lunch)

5. Kaammal Williams - "One More Time" (Wu Hen)

4. Beckey And The Birds - "Wondering" (Trasslig)

3. Land Of Talk - "A/B Futures" (Indistinct Conversations)

2. Taylor Swift - "this is me trying" (folklore)

1. The Beths - "Dying To Believe" (Jump Rope Gazsrs)

 

プレイリスト↓

温の「2020年7月ベストソング(温)」をApple Musicで

 

 

 

 

 

★7月3週目リリースの感想・ランキング

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2020年上半期ベストアルバムまとめ

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順不同で2020年上半期ベストアルバム36枚と月間ベストアルバムのまとめ、あと追加でその他の私の中で話題になった問題作についても少し述べる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2020年上半期ベストアルバム

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1行目

Andy Shauf - "The Neon Skyline"

Bombay Bicycle Club - "Everything Else Has Gone Wrong"

Braids - "Shadow Offering"

Destroyer - "Have We Met"

Empty Country - "Empty Country"

Erik Hall - "Reich: Music For 18 Musicians"

Eve Owen - "Don't Let The Ink Dry"

Grimes - "Miss Anthropocene"

HAIM - "Women In Misuic Pt. Ⅲ"

2行目

Happyness - "Floatr"

The Homesick - "The Big Exercise"

Junk Drawer - "Ready for the House"

Khruangbin - "Mordechai"

Lorenzo Senni - "Scacco Matto"

Lyra Pramuk - "Fountain"

Moses Sumney - "græ"

Mumrunner - "Valeriana"

Nada Surf - "Never Not Toghther"

3行目

Nap Eyes - "Snapshot of a Beginner"

Nicolas Jaar - "Cenizas"

Owen Pallett - "Island"

Perfume Genius - "Set My Heart on Fire Immediately"

Pet Shimmers - "Face Down in Meta"

Phoebe Bridgers - "Punisher"

Pinegrove - "Marigold"

Real Estate - "The Main Thing"

Rolling Blackouts Coastal Fever - "Sideways To New Italy"

4行目

Sault - "Untitled (Black Is)"

Sorry - "925"

Sports Team - "Deep Down Happy"

Tame Impala - "The Slow Rush"

Tennis - "Swimmer"

Trace Mountains - "Lost In The City"

Waxahatchee - "Saint Cloud"

Wilsen - "Ruiner"

Yves Tumor - "Heaven To A Tortured Mind"

 

 

 

 

月間ベストアルバム(ランキング)

(感想一覧→)https://t.co/LYM4yaLf2g?amp=1

1月ベストアルバム

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10. Georgia - "Seeking Thrills"

9. Ethan Gruska - "En Grade"

8. Andras - "Joyful"

7. Frances Quinlan - "Likewise"

6. Dan Deacon - "Mystic Familiar"

5. Destroyer - "Have We Met"

4. Andy Shauf - "The Neon Skyline"

3. Bombay Bicycle Club - "Everything Else Has Gone Wrong"

2. Pet Shimmers - "Face Down in Meta"

1. Pinegrove - "Marigold"

 

2月ベストアルバム

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10. Soccer Mommy - "color theory"

9. Caribou - "Suddenly"

8. Arca - "@@@@@"

7. Wilsen - "Ruiner"

6. Tennis - "Swimmer"

5. Tame Impala - "The Slow Rush"

4. Real Estate - "The Main Thing"

3. The Homesick - "The Big Exercise"

2. Nada Surf - "Never Not Toghther"

1. Grimes - "Miss Anthropocene"

 

3月ベストアルバム

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10. The Wants - "Container"

9. Soleima - "Powerslide"

8. Four Tet - "Sixteen Ocean"

7. Ultraísta - "Sister"

6. Sorry - "925"

5. Lyra Pramuk - "Fountain"

4. Nicolas Jaar - "Cenizas"

3. Nap Eyes - "Snapshot of a Beginner"

2. Empty Country - "Empty Country"

1. Waxahatchee - "Saint Cloud"

 

4月ベストアルバム

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10. EOB - "Earth"

9. Laurel Halo - "Possessed"

8. Kluster B - "B"

7. Jerskin Fendrix - "Winterreise"

6. Empress Of - "I'm Your Empress Of"

5. Laura Marling - "Song For Our Daughter"

4. Yves Tumor - "Heaven To A Tortured Mind"

3. Junk Drawer - "Ready for the House"

2. Lorenzo Senni - "Scacco Matto"

1. Trace Mountains - "Lost In The City"

 

5月ベストアルバム

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10. The 1975 - "Notes On A Conditional Form"

9. Kaitlyn Aurelia Smith - "Mosaic Of Transformation"

8. White Denim - "World As A Waiting Room"

7. India Jordan - "For You"

6. Happyness - "Floatr"

5. Perfume Genius - "Set My Heart on Fire Immediately"

4. Eve Owen - "Don't Let The Ink Dry"

3. Erik Hall - "Reich: Music For 18 Musicians"

2. Moses Sumney - "græ"

1. Owen Pallett - "Island"

 

6月ベストアルバム

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10. Hinds - "The Prettiest Curse"

9. Clap! Clap! - "Liquid Portraits"

8. Photay - "Waking Hours"

7. Sports Team - "Deep Down Happy"

6. Khruangbin - "Mordechai"

5. HAIM - "Women In Misuic Pt. Ⅲ"

4. Phoebe Bridgers - "Punisher"

3. Sault - "Untitled (Black Is)"

2. Braids - "Shadow Offering"

1. Rolling Blackouts Coastal Fever - "Sideways To New Italy"

 

その他ベストアルバム

worried10fire.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その他 私の中で話題になった問題作

春ねむり - "LOVETHEISM"

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 友達が「amazarashiとでんぱ組を足した感じ」と例えていたのだけど、amazarashiもでんぱ組も全然好きじゃない私...笑。でも今作のRiotという曲だけは今年上半期の超絶ベストソングだった。耳が焼き焦げるような熱エネルギーを持ったギターのバッキングがとにかく神なのだけど、その絶大なエネルギー、暴動(Riot)そのものが、「音楽に命を宿す」という歌詞のテーマにとてもリンクしてて死ぬほど泣きそうになる。「私が音楽を奏でるのはあなたの心を目覚めさせるため、そしてそれによって私が生きるため」。やっぱり歌い方とかメロディーは好きじゃないのだけど、『君の命になる』というリリックの部分と、それに組み合わせたバッキングに関してはめちゃめちゃ大好き。まさかアイドルみたいにキュートなボーカリストのアニソン風な邦楽でここまで感動するとは思わなかった...笑。(それがよさだと思うけど)

 

 

 

 

 

 

 

Fiona Apple - "Fetch The Bolt Cutters"

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 私が最高に大好きなPaste Magazineの上半期ベストアルバム50で、1位は当然Waxahatcheeになるだろう~と思ってたら、、、笑。メディアの高評価に目をつむって可能な限り心をニュートラルにして、何も期待せずフラットに聴いても、やっぱり海外の人レベルでよさを感じることができてない...笑。特にPitchforkの10点がノイズになりすぎてる 笑。(人生ベスト1位のGY!BEの2012年作に9点以上つけてるからPitchforkは結構信頼してる)。強いていうのであれば、極力アナログなやり方でもっと人間の動物的な衝動・ワイルドネスを表現してるところはいいなぁと思う。特に7曲目のNewspaperとかは、そのワイルドネスがホラーに差しかかるレベルで表現されてたり。微妙なニュアンスでアップテンポに音楽を加速させて気迫を作っていくようなところも好き。このNewspaperに関してはよさが理解できた、、、気がする、、、笑

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベストソング

The Strokes - "The Adults Are Talking"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベストアーティスト写真

Retirement Party

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あとがき

7月の1位はFontaines D.C.かなぁ...笑(予想) 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「2020年上半期『月間ベストアルバムTOP10』から漏れてしまったベストアルバムTOP10」感想

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ランキング作るとさーーー「やっぱりこれもいいなー」が絶対に出てきてしまうよねーー嘆

 

2020年上半期の漏れ&逃しのベストアルバムTOP10の感想

(順番はあんまり意識してない) 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. Bibio - "Sleep On The Wing" (6月)

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情景描写スキルが半端ない

 ヨーロッパ民謡の世界観設定をもっとガチで極めたようなクラシックなフォーク・カントリー作品だと思うのだけど、前作Ribons(2019)よりも統一感のあるメロウでシリアスな曲調として仕上がってて、メロディーによる情景描写の尊さがもっと巨大になってるところがめちゃめちゃ最高。田舎と都会を行き来するアマツバメの生涯を描いたようなジャケットアートも素晴らしすぎてやばいのだけど、アルバム全体がクラシック・フォークの上品でノスタルジックな美しさを所持していて、本当に絶大なまでに心に沁みる。特にこのクラシック・フォークの音楽性については、メロディーによってヨーロッパ民謡のような文化的背景を演出するクオリティが本当にやばいと思う 笑。公式YoutubeチャンネルがアップしてるOakmossのセッションのライブとかも鳥肌級のよさなのだけど、ヨーロッパのその土地ならではの広大なアルプスとか、それらの美しい田園風景などが呼び起こされる。そういったようなケルト民謡・アイリッシュ音楽にも通ずるような牧歌的なストリングスセンスもあれば、ドリーミーでディープなエレクトロニカで音楽の物語にミステリアス性を付加しまくるCouple Swim(M2)とか、強烈なノスタルジーを引き起こす超ローファイのLightspout Hollow(M3)などもあって、ほのぼのとした気持さよさ以上に思い馳せるような深い感動があったり。私的インディーフォークとしてのツボ要素や文化的背景の描写スキルだけでなく、そういった奥深い味わいもあって本当に最高。

私はカントリーというジャンルの王道作品はほとんど聴かない...。強いて私が大好きなカントリー作品を挙げるとしたら、Fleet FoxesのSF(2008)かなと思う。ウエスタンなステーキ屋さんとかの店内BGMで流れるようなおちゃらけたカントリーとは異なるのだけど、Fleet Foxesは広大な大地を踏みしめるような美しい迫力の気持ちよさが本当にたまらない。私的に、カントリーにはそういった大地を感じさせるような広大な空間を生成する能力を秘めてると思う。Bibioの今作もヨーロッパ民謡的なカントリーっぽさを持ってると思うのだけど、私が本作で特に大好きなのは、メロディーによる情景描写スキルとカントリーによるその広大な空間生成の効果、それらの両方を持ち合わせているというところ。このダブルなセンスの感じが本当に最高だと思う。自然豊かなアルプスやそれらの美しい田園風景としてのワールドの体験をもっと充実させる感じ。ただでさえ作品の物語のイメージをより膨らませるジャケットの世界観補正効果がやばいのに、本当に本当に素晴らしい作風だと思う...笑。

フォーク・カントリー作品といえば、今年4月に前倒しリリースされたLaura MarlingのSong For Our Daughterとかも本当に素晴らしかった。そちらは歌パフォーマンスとしても抜群な作品だったと思うけど、アルバムとしての全体的なアート感の奥深さの魅力を詰め込んだBibioのこちらの作品も本当に素敵。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Mura Masa - "R.Y.C" (1月)

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新しいクラブカルチャー(ロックのリバイバル

 今作はClairoやGeorgia、さらにはWolf Aliceなどとフィーチャリング・コラボした曲など、Mura Masaのクールなトラックメイキングに実力派アーティストの魅力が組み合わさりまくった最高の楽曲達が用意されてる素敵なアルバム...、という時点でよさが問答無用に確立されてる感じがする 笑。何より私がこのアルバムに対して強く惹かれたところは、前作ST(2017)のように新しいクラブカルチャーを創造するスタンスを持ちながらも、そこに私の大好きなロックのリバイバルが含まれてるように感じられるというところ。今作は、純粋な和音ベースが超印象的なRaw Youth Collage(M1)のように、全体を通じてシンプルにレコーディングされたベースサウンドが強調されてる感じがする。それに、ギターをかき鳴らす刺激的なイントロのVicarious Living Anthem(M6)など、一般的なクラブミュージックにはないバンドの感じをよく所持していたり。チルアウトのR&BやEDMが充実してた2010年代のムーブメントに沿うような部分もありつつ、ギターとベースがよく聞こえるロックのオーラを持ってるところがめちゃめちゃ大好き 笑。中でもNo Hope Generation(M2)やDeal Wiv It(M5)なんかはSleaford Modsのグルーヴ感があったりして思わずフフってなる 笑。イケイケ度が高めのパリピ属性がある感じもとても楽しめる。そしてそして、シューゲイザーによってクラブミュージックのフロアをもっと熱くしたようなTeenage Headache Dreams(M10)とかも本当に最高すぎてやばい 笑。テンションがぶっ飛び上がるようなダンスの熱狂にドリーミーな轟音ギターの組み合わせが本当に完璧のよさ...笑。何度も聞きたくなる今作のお気に入りナンバーの一つ。

前作STでデビューしたMura Masaは、EDMのようなモリモリな迫力表現が発展していく昨今のエレクトロニカ・クラブミュージックに反して、Jamie xxやFour Tetのような繊細でクールなスタイルをメインストリームのクラブカルチャーにしっかり展開できた影響力の高いアーティストだと思う。今作もロックのユニークな発想で他とは違う新しいクラブカルチャーを創造してる感じが本当にすごいと思う。代表的なのだと、Clairoのスキルによって贅沢すぎるほどオシャレなダンスミュージックになったI Don't Think I Can Do This Again(M3)とか、Georgiaのヴァイタリティと歌詞のメッセージ性で死ぬほど素敵なフィーリングが溢れたLive like We're Dancing(M9)など...。これが今のクラブミュージックの最前線か...!と感じさせるようなクラブシーンの更新の瞬間と立ち会うみたいに本当にワクワクした。ちなみにI Don't Think I Can Do This AgainはClairo主張が最高なMVもめちゃめちゃ大好き。

Mura Masa氏、今年の1月のベストアルバムの中に入れられなくてごめん...笑。さりげなくスルーしてたけど、ちゃんとベストアルバム級だった。歳が近いというのもあるし、とても応援してる 笑。(私より360日だけ年下)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Hot Mulligan - "You'll Be Fine" (3月)

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感情発散のセラピー

 単位日数あたり再生回数でいえば断トツかもしれないOG Bule Sky(M1)を含んだ今年私が忘れられない思い出を凝縮しまくったアルバム。The World Is A Beautiful Place & I Am No Longer Afraid To DieとかI Love Your Life Styleとかと同じ、さっぱり爽快系のエモ・パンクなのだけど、爽快感とエモ要素、どちらもフルパワーで出力するような高い火力を誇ってるところが本当に最高だと思う 笑。喉を潰すように全力をぶつけてシャウトするようなボーカルと、感情を爆発させるように激しく演奏するエモ・パンクのスタイルなのだけど、楽器に込めた圧力が全て最高に気持ちよく発散していく広大で自由なフレッシュさがめちゃめちゃある。加えて、夜空に光るようなメランコリックな美しさを演出するギターが特徴的なGreen Squirrel in Pretty Bad Shape(M4)やAnalog Fade (New Bule Sky)(M6)など、爽快フレッシュなフィーリングとは別タイプの、心に沁みるような気持ちよさのエモーションもある。エモ・パンクとしてでなく、みなぎるエネルギーを復活させるようなハードなパワーポップしてもとても素敵な作品だと思う。

とにかく1曲目のOG Bule Skyが本当にたまらなくてやばい。高速のメロディーが入り混じるマスロック的なハイテクニックのアンサンブルを展開する曲なのだけど、爽快系エモ・パンクの今作の中で最も心をえぐるような痛みと切なさがある。マスロックのテクニックならでは桁違いの爆発力や、めまいが起きそうなほど勢いの激しい揺さぶりなどを利用して、爽快フレッシュな気持ちよさに痛み・悲しみのような負の感情を付加させてるのが本当にやばすぎる。ものすごく気持ちいい曲なのに、メンバー全員が悲しくて辛くて泣きじゃくりながら演奏してるような感じ。ラストのギターどドラムが交錯するパートではあまりのエモーションに心臓がはちきれそうになる。

~ここから少し思い出タイム~

私は今年4月に社会人デビューをしたのだけど、大学院まで6年間過ごした茨城の生活が本当に本当に楽しかった。週末は朝から映画館までドライブしながら音楽を聴いて、映画館で映画を2~3本ハシゴして、レイトショー後の夜の帰宅ドライブでまた音楽を聴いて...。フジロック資金を稼いだイベントスタッフのバイトや家庭教師のバイトの日々も本当に楽しかったし、大学の自分の時間の全てを自分の大大大好きなものに費やして、この上ないほど充実した幸せな学生生活だった。学業に関しても、他の国大でゼミに参加したり、オーストラリアの国際学会に一人で参加したり(←本当にウルトラスーパーハイパー神。。。。)、人生で一番幸せ時期だった。

新社会人で東京に引っ越す準備をしてた3月、もう二度と戻れない学生最後の春休みの時間がたまらなくエモーショナルだった。充実しまくりな今までの生活とのサヨナラ、新生活における期待と不安、もっというとコロナの影響とかも。嬉しさもあれば人生で1番楽しかった学生生活に二度と戻れないという強烈な切なさもあって、自分の感情を上手く発散できずにいた。

そんな人生の大転換期の3月に聴いてたから、1曲目のOG Bule Skyの心臓がはちきれそうになるほどのエモーションが、自分の内面に抑え込んでいたはちゃめちゃな感情とめちゃめちゃ深い共感を起こしてた。音楽が過度に大好きな人は感情を表現する人が苦手な人が多いのかなとか思うのだけど、感情を表現するのが苦手な私とかは特に、この曲で膨大な量の思いを発散することができて、一回ボロっボロになるまで泣いたことある...笑。桁違いの爆発力によって、感情が上手に吐き出せた。そういう体験・思い出が詰まってる曲。曲調も春休みの時期にウルトラなぴったり感じだし、マジで取り憑かれたようにリピートしてた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Houses Of Heaven - "Silent Places" (5月)

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ドロドロでブラッディーになっていこう

 アンダーグラウンド感が半端ないクラウトロック・インダストリアルのめちゃめちゃダークなやつなのだけど、そのダークなフィーリングをよりドロドロに、よりブラッディーに描いたような濃厚さがあって本当に最高…笑。音のキャラクター的には伝統的なクラウトロック・インダストリアルの諸作品のそれなのだけど、A Place Between(M4)やCanneling(M5)のように、シューゲイザー的轟音ギターのヘビーな存在感をもっと出してる感じ。当時のアンダーグラウンドの精神状態をそのままに、それらのダークなフィーリングをシューゲイザー・エモのアイディアで進化させてる感じが本当にかっこいい。こういうドロドロしてるブラッディーでダークな音楽、時々病みつきになるように摂取したくなる 笑。例を挙げるなら、Ellen AllienのNostとかZombyのUltra(←好きすぎて本当にやばい)とか。溜まったストレス抑止の制限を全部解除して、気持ちを完全なる悪に染めていくような最高のゾクゾク感。特にHouses Of Heavenの今作は、All Possible Obstacles Are Present(M3)のシンセのバッキングみたいに、These New Puritansのにも通じる神々しいアートロックの感じも含まれてるからとてもハマる。実際Houses Of Heavenもモデル体型のメンバーが革ジャンしてたり、バンドのアーティスト写真もめちゃめちゃイケメン感あると思う 笑。

ブラッディーな気持ちになりたい時があるということ、超個人的な意見だけど、どれだけ善人な人でも、どれだけ仏のような優しい人でも、人間は誰でも絶対的なダークサイドを持ってると思う 笑。(心を単位化・数値化するのは不可能で、正と負の両方向に対してフィーリングは無限に存在すると思うから)。たまにそういう作品を鑑賞して、自分の内面のダークネスにどっぷり酔いしれたくなる。そういった人間の内面のダークサイドを扱った作品の類だと、映画『RAW 〜少女の目覚め〜』とか本当に大好きでやばい。普段大人しい思春期のベジタリアンの女子がありえないほどに肉食に目覚めていくそのダークネスの描写は、衝撃的でありながらとても普遍的だと思う。さすがカンヌ映画祭で批評家の高評価を得ただけある、本当に共感できるダークネス。ちなみ私的にその映画で大好きなシーンは、鏡を見つめながらダンスするシーンです...本当にお見事すぎる。

話が少し脱線してしまってごめんなさい...笑。『RAW 〜少女の目覚め〜』が本当に大好きでつい...笑。ほんと、伝説の名言「緑になるまで戻ってくるな」とか本当に最高すぎるからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Blake Mils - "Mutable Set" (5月)

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色んな魔法を込めてるやばさ

 アコギだけでなくクラシックギターの起用など、メロウで上品な本格派フォークの作品として既に至高の仕上がりな感じなのに、そのフォークの形式を基本に、ニューエイジ・エクスペリメンタルの音楽性で人間の聴覚の感度を何倍にも高めるような特殊な感覚拡張をしてる感じが本当に素晴らしすぎると思う。Never Forever(M1)やMay Later(M2)など、現実味のあるフォークのバッキングにアンビエント〜エクスペリメンタルのアトモスフェリックで超常的なサウンドを混ぜてしまうようなセンス。意味分かんない感じで例えるなら、あまりの特殊性に人間で初期設定されてる聴覚のサンプリングレートでは情報処理ができなくなって、感覚器官としての機能がリミットを超えて神経にバグを起こしちゃうような感じ 笑。作品全体の雰囲気としてはThe Cinematic OrchestraDamien Riceのような死にたくなるくらい切なくて美しいアコースティックの感じがあると思うのだけど、ニューエイジ技術によってそれらに色んな魔法を込めてるから本当にやばい。ただでさえ心に沁みるフォークとしてのよさをめちゃめちゃ持ってるのに...本当に絶品のアルバムだと思う。

Blake Milsの今作で特に大好きなのは6曲目のVanishing Twin。陽だまりの中でくつろぐような癒し的な世界なのに、非現実的で神聖なニューエイジのニュアンスがある感じ。存在するのが嘘だと思ってしまうような神秘的で美しすぎる冒頭のサウンドなど、死にたくなるくらい切ない感情が引き立てられる曲なのだけど、ニューエイジの技術でそれらの死にたさレベルもめちゃめちゃ高められてる感じがする 笑。なんなら、「死にたくなるくらい切ない」とかもう通り越して、もっと不気味で怖いニュアンスも出てきてたり。ノイジーなギターも本当に素晴らしいし、影響力が絶大で本当に深い感動が得られる曲だと思う。

The Cinematic Orchestraを挙げたけど、"感覚拡張"がある今作は、視覚までも使用されるような映画のサウンドトラック的な味わいも持ってると思う。特にMirror Box(M8)とかのインストの曲とか、物語のイメージに思いふけるように聴いてみたり。The Cinematic OrchestraのMa Fleurが超大好きというのもあるけれど、映画的音楽という点でもとてもツボだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Melenas - "Días Raros" (5月)

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上半期ベストジャケ

 ガレージならではのロックの楽しさ、本格派ポストパンクの旨味、そして洗練されたドリームポップの美的センス....、主にこれらの3本槍を持ち味として取得してる感じが他のバンドよりも個性的で本当に最高だと思う。そんなMelenasのデビューアルバムで私が特に大好きなところは、メンバー達をめちゃくちゃ素敵に捉えたパーフェクトなジャケ写の影響力によって、それらの個性的な魅力・Melenasというバンドの存在感がもっと最強になっているというところ。今年でいうと、TennisのSwimmerとか、WilsenのRuinerとか、メンバーのジャケ写によって奏でられる音楽の特別感がもっと増すタイプの魅力的な作品ってあると思う。Melenasの今作も、マルチな特色を凝縮した個性的な音楽性だけでなく、素敵なメンバージャケによってバンドがさらにかっこよくなってる感じがする。私はジャケット大好き一族の人間なので、こういう作品はものすごく高評価したくなる...笑。本当にロケーション・シチュエーション・メンバーのファッションセンス・配置・角度・座り方・写真のフィルターのチョイス、全部全部ウルトラ最高だと思う 笑。

また、前にも触れたけど、今作はガレージロック・ポストパンク・ドリームポップの3つの接点に、オルガンシンセがセットされてるところがめちゃめちゃ秀逸だと思う。オルガンが持つ古典的なセンスはガレージロックの古風な部分によく合うし、Stereolab感のあるポストパンクの部分はトコトコかわいいキャラ像にもぴったりで、オルガンだからドリーミーな美しさも最大に発揮できる。今作の個性をつかさどるメインのエレメント、本当に最高のアイテムだと思う。そんなオルガンシンセを主題にしたようなEl Tiempo Ha Pasado(M5)とかは初めて聴いたとき美しすぎてびっくりした。

今作はいわばガールズのガレージロック・ポストパンクということだけど、Camp Copeみたいな愛おしい仲良し感も感じられるところもめちゃ大好き 笑(てかCamp Copeがやばいくらい大好き)。スペインという点だとMournとかHindsも連想する。MournとHindsに関しては下北沢のライブハウスに来てたと思うけど、Melenasも来る?笑

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Mumrunner - "Valeriana" (3月)

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他のドリームポップ作品にはないロック力

 めっちゃ久しぶりに優等生のドリーミー系インディーロック作品と出会った 笑。DIIV, Beach Fossils, Wild Nothingsなど、2010年代に発達した幻想性の高いネオアコ~サーフロックのそれなのだけれど、それらの諸作品よりもロックとしてのモチベーションがもっと最強で、ギターリフのかっこよさを主張するようなフレーズ力を持ってたりしてて本当によい。ドリーミーな優しさの裏に秘めた熱狂を間奏からラストスパートまで全力で繰り出していくようなFoe(M1)、浮遊感のやばい優しすぎるボーカルなのにアグレッシブに攻めるようなドラムの存在感が光るRemember Me(M2)、The DrumsのようなミニマルなポストパンクもやっちゃうEasy Life(M4)などなど、脳裏でぼんやりと輝く優しくてたまらないサウンドスケープを持ってるのに、モチベーションの高いロックを演っててめちゃめちゃ好感が持てる 笑。今まで自分の目に止まらなかったのが不思議なくらい、とても安定したレベルのよさがある作品だと思う。DIIVやWild Nothingsを大好物にしてる友達全員に布教しまくりたい 笑。

私的にはやっぱり、他のドリームポップ作品とは一味違うMumrunnerの個性的な印象を与えるFoeをアルバムの1曲目に用意しているところが本当に最高だと思う。2010年代ドリームポップ諸作品と同じようなドリーミーオーラを出しまくりながらも、それらとはどこか違いを感じさせるロック力のポテンシャル。光輝く優しい幻想を持ってるのに、間奏パートのギターソロから闇闇したカラーに変化させていく美しいコントラストなどがあってめちゃめちゃエモーショナル。そこで確実にリスナーをつかんだ後、本作メインなトラックともいえる2曲目のRemember Meでリスナーを完全に虜にする流れも本当に完璧...笑。Mumrunnerの個性を魅せるためのアルバムのストラテジーが大成功してると思う。

今年のドリームポップ作品でいうと、2月にリリースされたWilsenのRuinerとかも本当に素晴らしかった 笑。今の時代、よりリスナーの印象に残るドリームポップを作るのってなかなか難しいのかなとか思うけど、その中でも個性的な作品を作れるって本当に最高だと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Bad Moves - "Untenable" (6月)

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ヘビロテを約束

 初めて聴いたとき、本当に最高のメロディーメイカーすぎてやばいなって思った 笑。かわいくてハッピーなパワーポップなのだけど、Party with the Kids Who Wanna Party with you(M3)、Toword Crescent Park(M4)、Tides(M11)など、リスナーにヘビロテを約束させるようなキャッチー性の鬼高いメロディー。アグレッシブな性質を持つパワフルなロックのよさももちろん所持してると思うけど、どちらかといえばメロディー重視で音楽を作ったようなインディーポップの作風がメインの感じ。元気溢れるロックのテンション感を借りてメロディーのノリがハイクオリティになってる感じが本当に病みつきになる。Superchunk、Charly Bliss、The Bethsなど、大好きなパワーポップのバンドはたくさんあるけど、ここまでロックとポップの二刀流が上手にできてる感じもなかなか秀逸な気がする。あと私はLocal Radio(M1)やNight Terrors(M2)など、メンバー全員が本当に楽しそうに歌ってる感じもめちゃ大好き。アーティスト写真を見てもその雰囲気がよく出てると思うのだけど、めちゃくちゃ楽しそうなバンドだなって思う 笑。

私的には、特に3曲目のParty with the Kids Who Wanna Party with youが本当にやばい。パワーポップならではのポジティブさの中にほんのちょっぴり切ないテイストがミックスされてて、メロディックなよさ以上にエモーショナルな作用もあるところが本当にたまらない。シンプルなバンドの編成ながらもメロディー力がものすごく活きてると思う。このアルバムがベストアルバム級だったのはこの曲の存在がでかい。本当にずっとヘビロテしたくなる。(6月ベストから漏れてしまったけど...)

メロディー重視よりもロック重視を思わせる8曲目のFog Is a Funny Thingもとてもよい。声質的にもめっちゃSuperchunkにそっくりでちょっと笑ってしまう 笑。ギターのパワーコードだけで音楽が成り立ってる感じ、このくらい無駄が削られてるシンプルなロックもやっぱり大好きだな...笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. The Strokes - "The New Abnormal" (4月)

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来年のフジロックの待ち遠しさをもっとエモーショナルに

 「ストロークス新作!いつもウルトラ最高のヘビロテチューンを届けてくれるけど、スーパー期待してハードルを上げすぎるのもよくないし...心をニュートラルにして平常心で...」→1曲目再生→「いきなり最高かよーー!!」という流れでした 笑。とにかく私は1曲目のThe Adults Are Talkingの虜になりまくってやばかった。前作Comedown Machine(2013)でいうところのOne Way Triggerみたいなトコトコ・テケテケ感があるストロークスならではのチープなロックのやつ。音楽がかわいく進行していく無敵なまでに満たされるような最強のフィーリングスがあるのに、そこにJulian Casablancasの歌いこむようなかっこよすぎるボーカルで無敵感をさらに高めてしまうという...笑。ドラムのオープンハットによるスウィングのオシャレなダンサブル感もたまらなく好き。紛れもない2020年上半期のベストソング。

今作がとにかくスペシャルだったのは、At The Door(M6)やNot The Same Anymore(M8)など、バラード的な雰囲気や哀愁さえもを感じさせるようなロマンチックな作風の部分が、2020年のフジロックを最高に特別なものにさせる予感を十分に与えてしまったというところ...泣。名作・名曲だらけのストロークスのセトリを想像して楽しむのももちろん最高すぎるのだけど、今作をアルバムで通して聴いて、「あぁ...この曲のこの部分でギターの二人が...」とか「あぁ...苗場のあの空間でこの曲を聴いたら私は...」とか想像しまくったりするのもこの上ないほど充実してた。そこには、開催が厳しい中で本当に観れるのか、観れないのか、の狭間で揺れてたメランコリックな複雑なフィーリングも影響してたと思う。残念ながらフジロックは中s...延期になってしまったけど、このアルバムのロマンチックな作風や、Julian Casablancasの歌のメランコリーのそれらが、フジロックへの切ない感情をとっておきの思い出として保存し、来年のフジロックの待ち遠しさをもっとエモーショナルにした気がする。フジロックは"今のところ" 参加アーティストに変更なし...伝説のバンド、本当に死ぬまでにあのステージを、あのライブを、あのパフォーマンスを観たい...!!そしてまたThe Adults Are Talkingを再生するのである...笑。

今作を機に過去作を復習したらストロークスにめっちゃハマりだした 笑。機会があれば私的ストロークスベストソングとか作ってみたい 笑。(The Adults Are Talkingも絶対入る)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Porridge Radio - "Every Bad" (3月)

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情緒不安定の危なげな狂気に満ちた美しさ

 本気を出したロックにできること、私が大好きなもので例を挙げると、Radioheadによる魂が抜けるような強烈な現実逃避、My Bloody Valentineによる轟音ノイズ素材のベットで眠る気持ちよさ、Tame Impalaによる幸せホルモンを脳内分泌するエクスタシー、Real Estateによる純粋でリアルな夢の世界の創造......。ロックが持つシンボルは本当に色々あって、いつの時代もワクワクさせてくれる果てしない可能性を秘めてると思うのだけど、Porride Radioも、他のどのロックにも属さないような、「情緒不安定の危なげな狂気に満ちた美しいエモ」というような新しいシンボルのロックを提示してる感じが本当にたまらない。それは、昨今のオルタネイティブロックがエレクトロニカ技術を多用する傾向があるのに対して、もっとクラシック思考のシンプルなサウンドを意識したインディーロック。Sweet(M2)やCircling(M9)のように、美しいエモのフィーリングの中に暗くて湿ってるダウナー感とか、恨みや呪いのような狂気を含ませている感じがする。まるでインディーロックの形式のままサッドコアに接近するような不気味な感覚。明るい曲調があるBorn Confused(M1)やGive/Take(M7)のようなフィーリングも、それらの不気味な狂気に飲まれていくような危なさがある。情緒不安定で耐えがたい不安やフラストレーション、嘆き苦しみ、怒り震えるような負の感情のそれらを、シンプルでありのままに爆発させて描くようなところが本当に素晴らしいと思う。芸術性の観点からすれば、去年のblack midiとかに匹敵する感じがする。正直に言うとね!本当にごめん、よさが遅れてじわじわやってきた! 笑。3月ベストに入れられなくてほんとにすまん...笑。

新しいシンボル・芸術性というのは、言い換えればオリジナリティの高い作家性がよく表れてるということ。代表的なところだと、ただでさえ狂気じみた凄まじいエモーションなのに、緩急のあるフレーズでさらに勢いをプラスするようなSweetとか、中盤で不意に暴れまわるような攻撃性を発揮し出すDon't Ask Me Twice(M3)とか。不安定な危なさや真に迫る本気のエモーションを本当にユニークに表現できてると思う。中でも8曲目のLilacとか本当に最高すぎてやばい。絶望の悲痛な思い、夢想的な癒しの現実逃避、それらが入り混じるようなカオスに溢れた絶大すぎるエモーション。もう本当にありえないくらい感動する。Pop Song(M6)からのGive/Take(M7)でリスナーの調子を狂わせた後、襲い掛かるようにLilacを持ってくるところも本当に大好き。

新しいシンボルのロックということを言ったけど、そんな新しさという点だと、バンドのアーティスト写真の感じなんかもめちゃくちゃ好みなんだよね...笑。このベリーショートヘアのフロントマン、なんかアートポップバンドのAlaskalaskaの感じがする(大好き)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

プレイリスト🍎

温の「2020年上半期の漏れ&逃しのベストアルバム(温)」をApple Musicで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「2020年6月ベストアルバムTOP10」感想

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今月はロックがめちゃ強かった気がするけど、ベストアルバム選定してみたら民族音楽的なエキゾチックなやつも多かった 笑

ちょっと夏補正が入ってしまった感じは否めない

TOP10に収まらなかったのは後でフォローしたいなと思う

 

今月の大大大好きなアルバム、感想をランキングで

(上位3つは全部1位)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. Hinds - "The Prettiest Curse"

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最後までとことんパーティーを楽しむ!

 もう本当にめちゃめちゃ最高のサマーチューンだと思う 笑。従来のほのぼのとした温暖性のローファイ・ガレージロックよりも、今作はThe Go! TeamやSleigh Bellsのようなもっとハジけるエネルギーが溢れてるようなめちゃめちゃパワフルでポップなやつ。シンガロングな曲の盛り上がりで最強のワクワク感を提示するGood Bad Times(M1)や、テンションを高めまくる合いの手のアイディアが超有効なBoy(M4)など、オーディエンスを沸かせるようなボルテージが高いポップスの感じ。そして、もともと所持してた温暖性のガレージロックのセンスに加えて、チルさのあるシンセや、ハワイアンでトロピカルなフィーリング(Come Back And Love Me(M5))なども含まれてて、夏要素がバリバリに感じられるアルバムだと思う 笑。雰囲気としては、仲良しガールズならではのハッピーな元気全開でサマーパーティーを開催するような感じ。夏フェスにぴったりすぎるThe Go! TeamやSleigh Bellsのような音楽性が本当に大好きというのもあるからものすごくハマる。特に3曲目のRiding Soloとか熱量が本当にやばい...笑。最高にチルくてキャッチーなとっておきのサマーチューンだけど、後半でガレージサウンドがハードになりすぎたようなシューゲイザーにヒートアップしまくる 笑。最初聴いたときは耳が燃えそうになった 笑。本当にむちゃくちゃテンション上がる。

今作の本当に素晴らしいところは、それらの仲良しガールズのサマーパーティーな音楽を最後までとことん楽しむような盛り上がりの持続性、そしてパーティーが終わりに近づいていく微妙なニュアンスを上手に表現したアルバムのシーケンス...!。1曲目のGood Bad Timesからずっとパーティーしててエネルギーを全部出し切るように楽しめる作品なのだけど、ラストに差し掛かるTake Me Back(M7)から昼間のパーティーとは違うロマンチックなナイトパーティーみたいなパートが始まったりする感じ。フィナーレ近いWaiting For You(M9)ではパーティーがそろそろお開きになるようなめちゃくちゃ切ない雰囲気が出てくるのだけど、「それでもまだまだ楽しみたい!」というようなパーティーの継続願望が表れてる感じに嬉しさで泣きそうになってしまう。最高に楽しいパーティーのサマーチューンを存分に楽しんだ後だからこそ、センチメンタルでメランコリックなフィーリングが効いてくる。ラストのThis Moment Forever(M10)で、それらの美しい余韻を堪能しまくりながら素敵な夢を見る感じも本当にやばい。アルバムの流れが本当によくできてると思う。

個人的には、4月リリース予定だった今作は6月の夏に延期されて正解だった気がする 笑。(彼女たちは残念がってたけど。)それくらい完璧にサマーチューンだと思った 笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Clap! Clap! - "Liquid Portraits"

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命を捧げるように本気になって踊る

 アフリカンミュージックやシリア系の民族音楽を完璧にマスターしたようなハウス・フットワークの作品なのだけど、エレクトロニカの技術を利用して民族音楽が持つ不屈の精神や怒り・恐怖といった生々しい感情をよりリアル化させているところが本当にたまらない。呻くような重低音ベースによって民族音楽のダークな部分をより出現させたSouthern Dub(M4)とか、ディープな音響エレクトロニカによって野性的な音楽性に鮮やかな美しさをプラスしたようなRising Fire(M8)とか。土着的で原始的な民族音楽の本質的な感情源をエレクトロニックなハイビジョンのテクノロジーで描き出すような素晴らしさがある。クラブミュージックと民族音楽の双方の性質を失わず、両方の持ち味を本当に上手に発揮できてると思う。"民族音楽ワールドミュージックエレクトロニカ化"だとChancha Vía CircuitoのRío Arribaとか本当に大好きなのだけど、Clap! Clap!の場合、Liquid Mantra(M2)やRising Fireなど、多彩なサウンドと立体的な音像を取り入れた高級感のあるデザインが本当に美しい。その音響的な美しさを大迫力で感じるようにヘッドホンで思いっきり堪能して、生々しい感情が溢れた民族的なダンスに完全に酔いしれたくなるような、とても魅力の濃い作品だと思う。

私がこの作品をベストアルバムに選んだ絶対的な要因は、6曲目Mandragora。このトラックを聴いて一瞬理性を失ってしまったのだけど、本当に本当にやばい。もともと民族音楽の踊りには、自分たちの命を祝福をするような喜びの種類のものももちろんあると思うけど、地球や宇宙などのある巨大な存在に対して、自分たちの命を捧げる生贄の儀式のような種類のものもあると思う。文明人には理解できないような犠牲を厭わない狂気、自分たちの命を本気で捧げようとする覚悟、民族音楽の踊りに対して感じる恐ろしさのニュアンスはそういうところにある気がする。Mandragoraが本当にやばいのは、その真に迫る圧倒的な恐怖でさえ、エレクトロニカの技術を利用してリアル化させているというところ。初めて聴いたときの感覚を思い出しただけでももう怖くて苦しくなる。頭の中でうるさく鳴り響くような大量のパーカッションや、心臓にまで届く強力な低音、暗黒物質を纏ったようなシンセサウンド、そして理性を失うように没頭するハウスの音楽性...。何かに命を捧げるために本気になって踊る、というような血が騒ぎまくるエモーションを感じて思わず泣きそうになる。表現として、アイディアとして、本当に素晴らしくてやばい。

私的には、今作は2017年ベストのJLinのBlack Origamiに匹敵するよさだった。Black Origamiは民族音楽ダンスの狂気をリアルに描いたフットワークのワルツ。今作の場合、Liquid Mantraとかフットワーク~ダブステップの趣があったり。こちらの曲も、より内向的なエネルギーを感じさせる特殊なダンスを感じさせて本当によかった。雨音をサンプルした優しい出だし1曲目からの流れも本当によく効いてると思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Photay - "Waking Hours"

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贅沢すぎる二部構成

 Photayが本当に素晴らしいのは、Arca、Bon Iver、Nicolas Jaar、Oneohtrix Point Neverなどと同様、「どうすることで人間の感覚をもっと刺激することができるのか」ということを真摯に研究しまくったような音楽アーティストであるというところ。中でもPhotayは、クラシックとアフリカンミュージックをルーツに持つようなエクスペリメンタル・ハウスの音楽性が本当にめちゃめちゃ個性的。エレクトロニカとして妥協せず理想のサウンドを追及する精密なこだわりはもちろん、クラシック音楽の発想に着実な遊び心豊かなメロディーメイキング、民族音楽系のワイルドなノリを持ったパワフルなリズムワーク、さらには強弱をよく意識した音楽のダイナミクスの利用、もっというとそれらのアイディアを掛け算させて全体をまとめるような器用すぎるテクニックなど、他のアーティストとは違う特殊なアプローチでセンセーションを作り出す超凄腕のお方だと思う。前作Onism(2017)も管楽器とシンセをミラクルに調合させる天才的な発明などをしていて人生ベスト級に大大大好きなアルバムだったのだけど、今作も音色・メロディー・音量など、音楽を構築するための全部の要素に対して1から向き合って曲を作るような繊細さ・丁寧さを持っているところが本当に素晴らしい。巧妙なフェードインで音のセンシティブさを強調するIs It Right?(M3)や、打弦楽器と管楽器の音色をブレンドしたようなマジカルな音色が光るRhythm Research(M7)などなど。豊富な感情表現、もっと特殊な人間のエネルギー放出、それらが予測不能に時間変化していく様々な曲のパターン...感覚が刺激されまくるようなアイディア・工夫がめちゃんこ溢れてて、とても芸術的な仕上がりだと思う。

今作のめちゃめちゃ最高なところは、アルバムが効果的に展開されるような前半と後半がそれぞれ異なるテーマを持った二部構成の作りになっているというところ。前半5曲のA面と、後半5曲のB面。A面は、Photayならではのテクニックを駆使して神々しさの半端ない幻想を創造したWarmth in the Coldest Acre(M2)や、リスナーをゾクゾクさせる聖なるオーラを纏った超かっこいいFanfare for 7.83 Hz(M4)など、神聖でうっとりするほど美しさがよく表れたパート。それに対するB面は、効果音を利用したインパクトの強いダンスのThe People(M6)や、エッジを微妙に際立たせたストリングスの存在感の与え方が最高すぎるPressure(M8)など、ハウスのパワフルな影響力が色濃く表れた迫力の強いパート。(私的には特にこのB面が大好きすぎてやばい!)どちらも本当に素晴らしいパートなのだけど、うっとりするような美しいパートから迫力のあるパートにシフトする展開部分が本当に楽しすぎて...笑。メロディーもリズムワークも一つ一つが超最高なのに、アルバムの流れを大きく変えるストーリー構成力もあるから本当に贅沢すぎる作品だと思う。今作もめっちゃ力作。

今作のB面パート、特にThe PeopleとPressureのダンサブルすぎるリズムは本当に最高すぎてアゴの筋肉がおかしくなるくらい笑ってた 笑。やっぱり、Photayのアフリカンリズムはとてもとても楽しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Sports Team - "Deep Down Happy"

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ガレージパンクのアップデート

 古き良きガレージパンクのエッセンスを上手に吸収したような能天気型ハピネスのロックンロールなのだけど、従来のガレージパンクが持っていないようなメロディックなポップセンスが多く盛り込まれていたり、ボーカルが少し変態気質なところもあって、音楽で表現される楽しさレベルがめちゃめちゃハイクオリティなのが本当に魅力的 笑。ガツガツ突き進んでいく攻撃的でストレートなガレージパンクの性質だけでなく、どこかリスナーを励ましてくれるような和み系の暖かさのあるギターメロディー(Here It Comes Again(M2), Going Soft(M3))を含んでる感じ。Fountaines D.C.、Idels、Shameなど、ドス黒さの効いた反社会的なポストパンクのイメージとは正反対の存在感があって、ネガティブなフィーリングをスッキリ吹き飛ばしてくれるような清々しい快感があるから本当に最高 笑。そんなHere It Comes Again(M2), Going Soft(M3)もそうだけど、うねうね動く抑揚を効かせた愉快なギターフレーズが特徴的なFishing(M10)なども本当に楽しい。6人のメンバー達のフレンドリーな様子も伝わってくるのも微笑ましくて大好き 笑。

今作で私が1番最高だと思ったところは、古き良きガレージパンクの忠実な再現以上に、それらの音楽性を2020年の現代版としてアップデートして完成させているというところ。代表的なのだと、ラモーンズ的なダウンストロークの突破力を感じさせるようなリードトラックのHere's the Thing(M7)とかまさに。ロックンロール文化が発祥し始めたばかりのギスギスしまくってる当時の感覚をそっくりそのまま掘り起こしたのかと思うくらい、それらのコピー・アレンジのセンスが本当に秀逸で、今作はそういう再現がとても大成功してる作品だと思う。私は95年生まれだから80年代以前の作品は疎か、90年代の作品でさえ名盤界隈のマップを全然把握できてない。だからこそ、80年代のディスコ~フュージョンを新構築したNeon IndianのVega Intl. Night School(2015)とか、60~70年代のアコースティックソングを復興させたようなKevin MorbyのSinging Saw(2016)とか、過去の時代の音楽をリメイクによって今この瞬間に出会わさてくれる作品を本当に嬉しく思う。Sports Teamの今作の場合、過去のガレージパンクが持っていた当時の熱量やその激しさのリアルな再現の感動だけでなく、新しさを感じさせる新鮮でメロディックなポップセンスなどの新規性・アップデート要素もあるから本当にめちゃめちゃ心に響く。中でもCamel Crew(M4)なんかは本当に素晴らしすぎてやばい...笑。一種のガレージパンクに対する憧憬を含んでる感じも込み込みで、アルバム通して聴くと素敵な思いが炸裂して泣きそうになってしまう。今作で私が1番大好きなナンバー。

Camel Crew、コロナの自粛期間のときにたくさん聴けたらよかったな...笑。(Winter Nets - EP(2018)のバージョンよりも今作の方が好み)。「You say it's boring, but it's not」とか、「Just call a number, make it change」とか、リリックがめちゃめちゃ素敵だし、外出自粛のシチュエーションにマッチする部分もあるから本当にグッとくる。今後自分の人生に退屈さを感じたときに聴きまくりたい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Khruangbin - "Mordechai"

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リスナーに捧げる優しさをもっと高みに

 存在感の半端ない超かっこいいバンドがリスナーにありったけの優しさを捧げてくれるような作品が本当にたまらなく大好きなのだけど、Khruangbinの今作は、東南アジア・中東のイメージにリンクする神聖な動物たちをモチーフにした神々しいアートワークや、メンバーたちが「美しいから」というシンプルな理由で名付けたMordechai(モルデカイ)というタイトルなど、リスナーに捧げるありったけの優しさをもっともっと高みに上げるようなコンセプトがあるところが本当にやばい。東南アジア・中東の息吹を込めた珍しいタイプのエキゾチック性があるファンク・ロックという音楽性ももちろん、艶美な色気を放つフロントマンのローラを率いる個性的なトリオのオーラや、そしてそのメンバー達が夢心地で奏でる優しいアンサンブルといった特殊性、本当に超かっこいいバンドなのでどんな作品を作っても最高に魅力的だと思う 笑。中でも今作だと、パフォーマンス性の高いエモーショナルな演奏の中で生きることのメッセージ性を込めたTime(You and I)(M2)や、ローラの歌が泣きそうになるほど美しすぎてやばいSo We Won't Forgot(M9)など、珠玉のリードトラックが用意されてて本当に最高。今作は従来のインストゥルメンタルの作風よりもボーカルを導入したスタイルで話題を呼んでたけど、中でもこのSo We Won't Forgotのローラのボーカルは本当に素晴らしいと思う。Khruangbinならではの優しいファンクの気持ちいい躍動感の鮮やかさと、エキゾチックでビターなフレーバーのコントラスト。日本を舞台にしたMVも桜の雰囲気が超ぴったりでめちゃくちゃ最高!笑

私はドリームポップが大大大好きなので、幻想的な音楽は全てドリームポップの枠組みで捉えてしまう病気にかかってるのだけど 笑、Khruangbinの音楽についても、「エキゾチックな新しいドリームポップ」というようなよさをやっぱり感じる。前作Con Todo El Mundo(2018)もそういうドリーミーな音像をよく所持していた作品だったと思うけど、今作の場合、One to Remember(M7)のように、トリオのスタイル以上に装飾レベルで環境音・効果音を追加するようなアンビエントのアイディアもさりげなく起用されてる感じも大好き。Khruangbinの最高の優しさをより夢想的な味わいにさせるためのアイディア。Khruangbinの本質的な演奏精神を邪魔することにならない程度だったらどんどんモリモリにしてもOKです...、もっとやっていいよ 笑。

ボーカルの導入、私は思ったより従来通りの作風に感じたけど、If There is No Question(M5)とか聴くとローラのボーカル本当に最高だなと思う。浮遊感があって本当に気持ちいい。こういうのライブで観たいな...笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. HAIM - "Women In Misuic Pt. Ⅲ"

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豊かな陽エネルギーをよりチルアウトにコーディネート

 HAIMといえば、ロックだけでなくフォーク・カントリー・ソウル・ファンクとか、様々な方面の雑多なジャンルを天才的に消化した独自のプラットフォームがやばすぎるバンドだと思うのだけど、そのオリジナリティの濃い音楽性に追随して、メロディーの一つ一つがより特別な仕上がりになってるところも本当に至高だと思う。今作はアコースティックで落ち着いたカントリーや、夏に合いまくるポカポカのレゲエ(Another Try(M8))など、全体的にチルアウト系の和み要素が全面に表れた気持ちよさが半端ない作風だと思うのだけど、HAIMの特別で至高なメロディーセンスが全て気持ちよさのフィーリングに全振りされてるようなところが本当に最高すぎると思う。具体的には、気持ちいいコーラスをカントリーロックのアプローチで印象的にさせたようなThe Steps(M2)や、持ち前のファンキーなギターセンスが身体に優しく作用するDon't Wanna(M7)とか。3姉妹の豊かな陽エネルギーをよりチルアウトに気持ちよくコーディネートした感じ。中でも5曲目のGasolineとか本当に最高すぎてやばい...。綺麗にまとまった多様なサウンドの充実感、泣きそうになるほど癒し的で究極的に満たされるメロディー。サイケ的なギターサウンド一つ取っても本当に最高の味わい。あと、なんでボーナストラックなのか全然分かんない先行曲のNow I'm In It(M14)とかも本当に本当に素晴らしい。気持ちよさをベースにしながらも、刺激的なエレクトロニカで音楽のワクワク感を高めまくったような感じ。アルバムにおける最高のラストのFUBT(M13)後に用意されてるエンドクレジット的な存在感があって、アルバムの中で本当に最高に素敵な印象を残してる曲だと思う。そんな風に、この夏とっておきの曲たちが凝縮されたボリューミーな大傑作。

カントリーというところだと、チェンバロサウンドのクラシックなカントリー感が特徴的なLeaning On You(M9)とか、本当にめちゃめちゃフォークすぎてびっくりするHallelujah (Bonus Track)(M15)など、ポップとして大きく躍進した前作Something Tell You(2017)からは思いつかないほど古風なテーマが引用されてると思う。チルアウトR&Bのヒップホップな3am(M6)とか現代的な曲もあるけれど、ウエスタンで伝統的なカントリーを彷彿させるジャケ写のデザインであったり。そういったように今作は、HAIM3姉妹の音楽性のルーツをもっとクラシックなところまで深堀り・探求したようなある種の実験的で挑戦的な部分がある気がする。私が今作で本当に素敵だと思ったところは、そういった自分たちのルーツの深堀り・探求の部分に、彼女達の音楽愛のレベルアップ、そして自分たちでその音楽を演奏できるという最高の喜び、もっというとそこから滲み出る3人の仲良し感などが感じられるところ。音楽に溢れてる果てしない陽エネルギーのハピネスだけでなく、断固たる3姉妹バンドの音楽愛としてのハピネス。そんなことを感じながら改めてGasolineとか聴くと、またさらに泣きそうになる。本当に最高すぎてやばい。

HAIMに関してはデビュー作のDays Are Gone(2013)の頃からギターも本当に大好きなのだけど、今作でいうとUp Form A Dream(M4)のギターソロとかも超最高だった。HAIMのファンキーなギターのソロワークって他のハードロックとかにはない最強の楽しさがあるんだよね...笑。(Let Me Goのギターとか死ぬほど好き)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Phoebe Bridgers - "Punisher"

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Phoebeの人間味が最高の形で音楽化

 天使的な存在すらも感じさせるような愛情の深いハーモニアスなPhoebeの歌声がとにかく最高すぎてやばいのだけど、心がときめく丁寧なベッドルーム~ドリームポップの至福の味わいだけでなく、ローファイによるかわいいサウンドスケープや、トランペットなどカントリー楽器のキャラクターを効かせた明るいアクセントなど、Phoebeの温かい人間味をもっともっと感じさせるフィーリングが大量に含まれてるところが超絶に最高だと思う。心を穏やかにさせまくるサイレンスのローファイがどこまでも優しいGarden Song(M2)や、牧歌的なカントリーのアプローチで温かい人間味をもっと確実で強力なものに仕上げたようなGraceland Too(M10)など。前作のデビューアルバムStranger In The Alps(2017)も、重みのある幻想性をいっぱい繰り出したようなベッドルーム・ドリームポップソングの宝箱だったと思うのだけど、今作はほっこり系のリラックス効果が果てしないような安心感の幸福がたくさん味わえるところが本当に魅力的だと思う。特にGraceland Tooなどに関してはバンジョーやストリングスによる温もりのギブネスが本当にやばいし、リスナーを昇天させるレベルでソウルフルなメロディーが引き立てられてるコーラスパートとか、泣きそうになるほど心が暖まる。もともとPhoebeってお風呂でライブやったり、躊躇なく変顔を繰り出したり、Twitterでネタツイしたり、ユーモアが溢れまくってる素敵なキャラクターだけど、そういったパーソナリティも込みで彼女の温かい人間味が最高の形で音楽化されてるから本当にたまらない。

そういったPhoebeの新たな一面を見せてくれたアルバムだと思うのだけど、中でも前作にはなかったロックのナンバーが本当にやばい。代表的なのが今作屈指のリードトラックであろうKyoto(M3)。かわいくて優しいローファイの音色、全身に心地よい風を浴びるような好天気ロック、Phoebeの思いだけでなく日本愛も込められてる本当に素敵なリリック、そしてPhoebeの温かい人間味のリアリティを決定付けたようなトランペット......。"ドリーミーでシャイニーな満たされたフィーリングをPhoebeがロックする" という断固確実たるやばさがあると思う。また、祝福のオーケストラのようなパッセージを含んだChinese Satellite(M6)とかも迫力のあるロックでめちゃ最高。ラストのI Know the End(M11)とかに関しては、フェスとかで思い切り映えそうなさらに大きなスケール感を持っていて、ライブが本当に観たくなるから死にそうになる...笑。トランペットの装飾がアルバムのフィナーレ感をより演出してるところも超天才だと思う。

Punisher(M4)やMoon Song(M7)など、従来のベッドルーム~ドリームポップのナンバーも相変わらずめちゃめちゃよい。Punisherは静寂の中で音が微かに光るようなピアノのセンスがJulien Bakerっぽかったり、Moon Songは水面が波打つようなサウンドのイメージにアンビエントっぽさがあったり、あまりに美しすぎて昇天しそうになる。特にMoon Songはメロディーに深いエモーションが込められてるから本当にグッときまくる。

今作はPitchforkで8.7のスコアを獲ったけど、マネージャーが「8.7は悪くない」って言ったのに対して、「お前はクビだ、少なくとも9.5だろ」みたいにコメントしてたのめちゃめちゃ笑った 笑。本当にPhoebe大好き

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Sault - "Untitled (Black Is)"

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"Cover me with love"

 DJ ShadowのEndtroducng...のサンプリング要素みたいな古来のR&Bソウル・ジャズ・ヒップホップ、そしてゴスペル・アフリカンミュージック・ブラックコンテンポラリーなど、様々なブラックミュージックにアクセスするユニバーサルな作風だと思うのだけど、それらの古来の音楽が目を覚ましていくようなゴ-スト的サンプリングとか、バッキングの規模を最小限に収めたような落着いたリズム隊など、薄暗い空間の中でひっそりと明かりを灯すようなミステリアスな魅力を持っているところが本当に最高だと思う。また、2019作の5と7のマッチのジャケットと同様、暗闇の中に小さくオブジェクトを用意するジャケットの感じとか、Sault自身も怖いくらい謎に包まれてる人物であるところとか、音楽性以外の要素も含めてSaultはミステリアス性をめちゃめちゃ所有してるアーティストだと思う。今作が本当に素晴らしいのは、そういったミステリアスなセンスでより芸術的にブラックミュージックを復興し、黒人文化・種族をリスペクトするだけでなく、それらを深くから持ち上げて支えるようなスピリチュアルなパワーを発揮してるというところ。『Black Is 』というタイトルや、楽曲中のナレーションのリリックが簡潔に表してるように、本作は虐げられた黒人種族を守り、団結し、不屈の精神を訴えるような明快なコンセプトを持っていると思う。基本的でヒストリカルなブラックミュージックを総括してる作風だからこそ表現できる芸術的で特殊なリスペクトがあるから本当に素晴らしいと思う。「我々は死なない」というメッセージを発信した私的2017年ベストのIbeyiにも通じる作品で大好きだし、現在のBLMムーブメントに不可欠なテーマ性で無視し難いのももちろんそう。

ナレーションのトラック含めて20曲もあるボリューミーなアルバムだけど、私のお気に入りを列挙しまくると→→→、ソウルの優しい歌が絶大な癒しを与えるようなWildfires(M5)、摩天楼に響くような儚げな音像が美しいSorry Ain't Enough(M7)、穏やかな曲調の中で「私達は神」という内容が強烈なBlack Is(M8)、リフから掛け合いまでギターが本当に最高すぎるBow(M9)、ヒップホップのグルーヴ感がたまらなく楽しいBlack(M12)、オルタネイティブロック感がめちゃツボなMonsters(M16)、思いやりのフィーリングをたっぷり込めて締めくくるラストのPray Up Stay Up(M20)などなど....。本当にたくさん大好きな曲があるのだけど、今作の1番やばすぎてやばいところはUs(M13)とEternal Life(M14)のセット。Sault独自のブラックコンテンポラリーみたいなポップスの音楽性に、教会音楽のような神聖な祈りのニュアンスを追加したようなナンバー。ゆらめくように「Cover me with love」をリピートするパートが本当に美しすぎて死にそうになる。Usの「You are gold」「You are rubies」「You are diamonds」「Little black girl, you are exalted」とか、歌詞も全部やばすぎて目ん玉がもげそうになるし。余韻を残したOnly Synth in Church(M15)もめちゃ最高だと思う。

音楽の美しさ、内容の美しさ、作品のコンセプト、現在のムーブメント、全てが一体になった作品鑑賞ってこんなに心に響くんだなと思った。音楽に"大事"とか"大切"とかあんまりないと思うけど、現在におけるこの作品の鑑賞はやっぱり大事なのかなと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Braids - "Shadow Offering"

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「色を獲得する」

 無色半透明のフィーリングの繊細なシンセサウンドが奏でられるアートポップ、あるいはナチュラルでドリーミーな音像が溢れたメランコリックで綺麗なオルタネイティブロック。本作はそういった冷たい感触がある無機質でセンセーショナルな美しさが半端ない音楽アート作品だと思うのだけど、ボーカルのRaphaelle Standell-Prestonによるエレガントでソウルフルな歌のアプローチによって、それらの無機質で透明なサウンドたちが鮮やかに色を獲得していく感じが本当に本当に素晴らしすぎてやばい。シンプルなシンセサウンドなのに琴線に触れるような響きを持ち始めるYoung Back(M2)や、展開部でエネルギー密度を高めるような発色の変化を起こすFear of Men(M6)など。「色を獲得する」ということ、それはまるで、命の無いものに命が吹き込まれる瞬間。これがどれだけ芸術的で、魔法的で、感情的であるだろう...。しかもそれらの瞬間に、The NatuonalやLocal Nativesのようなクリーンでアコースティカルなロックの迫力などもプラスして、それらの生命的な感情・色彩の出現をもっと大胆に美しく見せるようなテクニックもあるから感動が本当にやばすぎる。無機質で無感覚のものが豊かさを手に入れていくような感情変化。"時間"を扱う音楽の芸術だからこそ成せる表現で、私達が死ぬほど愛してる音楽鑑賞の感情変化的な喜びが詰まりまくってる作品だと思う。音楽を聴いて泣くことは多々あるけど、私の場合、それらは感覚以上に自分の理性に働きかける何かの要因があるからだと思ってる。Braidsの本作では、そういった理性にアクセスすることなく、純粋なサウンドの美しさだけで泣いてしまった気がする。こんな体験、私的2010年代ウルトラハイパーベストアルバムのMr. Twin Sister(2014)以来かもしれない。

本作は、ポップスやロック、さらにはオーケストラのような壮大なスケール感などを活かして、それらの芸術的で感情的な美しさのインパクトをもっとグレードアップさせてるところが本当に秀逸だと思う。重さのあるピアノのバッキングがRaphaelleのエレガントなメロディーの存在感をより高めるようなHere 4 U(M1)、ロックのグルーヴ感でBraidsの繊細な美しさにパワーを付け足していくようなSnow Angel(M7)、オーケストラホールのようなステージのライブ感によってRaphaelleのエレガントさとエモーションをめちゃめちゃに拡張するOcean(M8)...。メロディー力のあるポップスやドラムやギターの熱量を発揮したオルタネイティブロックとして音楽の繊細な部分が表現されてる感じが本当に大好きすぎる。特にロック要素としては、The NationalやLocal Nativesのような空間を切り裂くジャキーン!というアクセント的サウンドがツボすぎてやばい 笑。音楽のセンセーショナルで繊細な部分に対して研ぎ澄まされたインパクトをぶつけるようなところに心がもぎ取れそうなほど感動する。そういったオルタネイティブロック・アートロックで、かつシンセポップ・アートポップ・ドリームポップ...もう私の大好物の塊みたいになってる 笑。

前前前作のNative Speaker(2011)は私の2011年のベストアルバム級に大好きな作品。BraidsよりもBlue HawaiiのTenderness(2017)が最初のRaphaelleのバンドだったのだけど、No One Like Youとか一時期は耳がもぎ取れるレベルでヘビロテしてた 笑。Raphaelleさん本当に最高でございます...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Rolling Blackouts Coastal Fever - "Sideways To New Italy"

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心がときめく真夏のRBCF

 Rolling Blackouts Coastal Feverの音楽がどこまでも無敵でやばいのは、「鉄壁のリズム隊によるキレキレでフォーマルなかっこよさのある最高のロックンロール」なのに、「アコギ・クリーントーンを多用したギターの丁寧な優しさをめちゃめちゃ所有してる」というところ。それはどれだけ無敵かと言うと、人間で例えるなら『容姿端麗でイケメンなのに優しくて性格も完璧』とかそういう感じ 笑。本当にやばくない???笑。最高にテンポよく繰り出されるロックンロールのグルーヴ感がめちゃめちゃかっこよくて、最高にノリノリで楽しくて、それでいながらReal Estate属性のサウンドの気持ちよさも最大に感じられるという...。そんな抜け目のない完璧なかっこよさを体現してまった前作Hope Downs(2018)のフルアルバムデビューから2年、インディーロックシーンで波に乗りまくっているRBCFの新作ということで本当に待望すぎてた 笑。実際に中を開けてみると、1曲目のThe Second of the Firstからアクセル全開でそれをかっ飛ばしていく感じ、今作をずっとずっと前から楽しみに待ってたというのもあって、初聴時には思わずテンションが上がりすぎて叫び出しそうになってた 笑。本当に嬉しすぎてやばい。

今作で特徴的な部分としては、気持ちよすぎる綺麗な青ジャケのデザイン然り、夏のイメージにぴったり合いまくるエネルギッシュでエモーショナルな作風だというところ...!うおーなんて素敵なんだー!笑。エネルギッシュ要素といえば、例えばギターのブラッシングでビートの躍動感を強調するShe's There(M3)やNot Tonight(M8)のアイディアなどがそうなのだけど、全体を通じてメロディーがもっと前に出るように感じさせるミキシングになってたり。また、従来のシンプルだったドラミングも変動パターンがさりげなく追加されてアクティビティを増やしていたり。従来のRBCFのよさだけでなく、夏に合いまくるエネルギッシュでエモーショナルなよさもプラスされてるから本当にめちゃめちゃ心がときめく。さらに今作は、エネルギッシュ・エモーショナルという部分だけでなく、リラックス効果の高いチル要素も多く含んでいるのも本当に夏...笑。冒頭の3連続リードトラック後の一服ソングのようなBeautiful Steven(M4)などが特にそうだけど、日が落ちて涼しくなった夕暮れの時間帯とかに聴きたくなるようなトロける音色があって、今作の夏のイメージを深く印象付けるのによく貢献できてると思う。アルバムのタイトルとかもロマンチックでオシャレだし、本当にめちゃんこ素敵なアルバム。

そんなRBCF特性のフル出力、夏的なイメージを持ったアルバムのコンセプトなど、本当に超最高な作品だと思うのだけど、今作で1番最高なのはやっぱり6曲目のCars in Space...笑。この曲1曲でアルバムの原価が取れると思うくらい、もう本当に力作トラックだと思う 笑。RBCFロックンロールの特性をバリバリ所持したスピード感のあるかっこよさ・楽しさ・気持ちよさが最大に表された上に、ツインギターソロパートを用意した超充実した間奏パート・展開を持ってる長尺ソング。かっこよさの上にかっこよさを重ねていくような倍増効果を持っていて、聴いてると感情が高まりすぎるあまり泣きそうになってしまう 笑。超超超傑作。MVでメンバーたちがノリノリで演奏してる様子もめっちゃお気に入り。今作を通じてRBCFのことが本当にもっと大好きになった。KEXPのライブも観返したりしてるのだけど、司会の人の「Rolling Blackouts Coastal Fever」の発音がかっこよすぎてウケる 笑(特に"Coastal Fever"のとこ)。もう本当に果てしなくラブです...。

RBCFのYoutube公式チャンネルがアップしたStella Donnellyとのコラボも尊すぎて死にそうになってた...。新作出してくれただけで本当に嬉しいのに、なぜそんな最高なことを連続するのか...笑。本当、選曲のセンス、アレンジ、相性のよさが神のレベルだと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

🍎プレイリスト↓

温の「2020年6月ベストアルバム(温)」をApple Musicで

 

 

その他とてもよかったやつ

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Arca - "KiCk i"

Bad Moves - "Untenable"

Bo Ningen - "Sudden Fictions"

GUM - "Out In The World"

James Krivchenia - "A New Found Relaxation"

Mountain Time - "Music for Looking Animals" 

No Age - "Goons Be Gone"

Patricia - "Maxyboy"

Pottery - "Welcom to Bobby's Motel"

Sofie - "Cult Survivor"

Westerman - "Your Hero Is Not Dead"

Yaya Bey - "Madison Tapes"