アルバム感想(温)

My Favorite Music

「2020年上半期『月間ベストアルバムTOP10』から漏れてしまったベストアルバムTOP10」感想

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ランキング作るとさーーー「やっぱりこれもいいなー」が絶対に出てきてしまうよねーー嘆

 

2020年上半期の漏れ&逃しのベストアルバムTOP10の感想

(順番はあんまり意識してない) 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. Bibio - "Sleep On The Wing" (6月)

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情景描写スキルが半端ない

 ヨーロッパ民謡の世界観設定をもっとガチで極めたようなクラシックなフォーク・カントリー作品だと思うのだけど、前作Ribons(2019)よりも統一感のあるメロウでシリアスな曲調として仕上がってて、メロディーによる情景描写の尊さがもっと巨大になってるところがめちゃめちゃ最高。田舎と都会を行き来するアマツバメの生涯を描いたようなジャケットアートも素晴らしすぎてやばいのだけど、アルバム全体がクラシック・フォークの上品でノスタルジックな美しさを所持していて、本当に絶大なまでに心に沁みる。特にこのクラシック・フォークの音楽性については、メロディーによってヨーロッパ民謡のような文化的背景を演出するクオリティが本当にやばいと思う 笑。公式YoutubeチャンネルがアップしてるOakmossのセッションのライブとかも鳥肌級のよさなのだけど、ヨーロッパのその土地ならではの広大なアルプスとか、それらの美しい田園風景などが呼び起こされる。そういったようなケルト民謡・アイリッシュ音楽にも通ずるような牧歌的なストリングスセンスもあれば、ドリーミーでディープなエレクトロニカで音楽の物語にミステリアス性を付加しまくるCouple Swim(M2)とか、強烈なノスタルジーを引き起こす超ローファイのLightspout Hollow(M3)などもあって、ほのぼのとした気持さよさ以上に思い馳せるような深い感動があったり。私的インディーフォークとしてのツボ要素や文化的背景の描写スキルだけでなく、そういった奥深い味わいもあって本当に最高。

私はカントリーというジャンルの王道作品はほとんど聴かない...。強いて私が大好きなカントリー作品を挙げるとしたら、Fleet FoxesのSF(2008)かなと思う。ウエスタンなステーキ屋さんとかの店内BGMで流れるようなおちゃらけたカントリーとは異なるのだけど、Fleet Foxesは広大な大地を踏みしめるような美しい迫力の気持ちよさが本当にたまらない。私的に、カントリーにはそういった大地を感じさせるような広大な空間を生成する能力を秘めてると思う。Bibioの今作もヨーロッパ民謡的なカントリーっぽさを持ってると思うのだけど、私が本作で特に大好きなのは、メロディーによる情景描写スキルとカントリーによるその広大な空間生成の効果、それらの両方を持ち合わせているというところ。このダブルなセンスの感じが本当に最高だと思う。自然豊かなアルプスやそれらの美しい田園風景としてのワールドの体験をもっと充実させる感じ。ただでさえ作品の物語のイメージをより膨らませるジャケットの世界観補正効果がやばいのに、本当に本当に素晴らしい作風だと思う...笑。

フォーク・カントリー作品といえば、今年4月に前倒しリリースされたLaura MarlingのSong For Our Daughterとかも本当に素晴らしかった。そちらは歌パフォーマンスとしても抜群な作品だったと思うけど、アルバムとしての全体的なアート感の奥深さの魅力を詰め込んだBibioのこちらの作品も本当に素敵。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Mura Masa - "R.Y.C" (1月)

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新しいクラブカルチャー(ロックのリバイバル

 今作はClairoやGeorgia、さらにはWolf Aliceなどとフィーチャリング・コラボした曲など、Mura Masaのクールなトラックメイキングに実力派アーティストの魅力が組み合わさりまくった最高の楽曲達が用意されてる素敵なアルバム...、という時点でよさが問答無用に確立されてる感じがする 笑。何より私がこのアルバムに対して強く惹かれたところは、前作ST(2017)のように新しいクラブカルチャーを創造するスタンスを持ちながらも、そこに私の大好きなロックのリバイバルが含まれてるように感じられるというところ。今作は、純粋な和音ベースが超印象的なRaw Youth Collage(M1)のように、全体を通じてシンプルにレコーディングされたベースサウンドが強調されてる感じがする。それに、ギターをかき鳴らす刺激的なイントロのVicarious Living Anthem(M6)など、一般的なクラブミュージックにはないバンドの感じをよく所持していたり。チルアウトのR&BやEDMが充実してた2010年代のムーブメントに沿うような部分もありつつ、ギターとベースがよく聞こえるロックのオーラを持ってるところがめちゃめちゃ大好き 笑。中でもNo Hope Generation(M2)やDeal Wiv It(M5)なんかはSleaford Modsのグルーヴ感があったりして思わずフフってなる 笑。イケイケ度が高めのパリピ属性がある感じもとても楽しめる。そしてそして、シューゲイザーによってクラブミュージックのフロアをもっと熱くしたようなTeenage Headache Dreams(M10)とかも本当に最高すぎてやばい 笑。テンションがぶっ飛び上がるようなダンスの熱狂にドリーミーな轟音ギターの組み合わせが本当に完璧のよさ...笑。何度も聞きたくなる今作のお気に入りナンバーの一つ。

前作STでデビューしたMura Masaは、EDMのようなモリモリな迫力表現が発展していく昨今のエレクトロニカ・クラブミュージックに反して、Jamie xxやFour Tetのような繊細でクールなスタイルをメインストリームのクラブカルチャーにしっかり展開できた影響力の高いアーティストだと思う。今作もロックのユニークな発想で他とは違う新しいクラブカルチャーを創造してる感じが本当にすごいと思う。代表的なのだと、Clairoのスキルによって贅沢すぎるほどオシャレなダンスミュージックになったI Don't Think I Can Do This Again(M3)とか、Georgiaのヴァイタリティと歌詞のメッセージ性で死ぬほど素敵なフィーリングが溢れたLive like We're Dancing(M9)など...。これが今のクラブミュージックの最前線か...!と感じさせるようなクラブシーンの更新の瞬間と立ち会うみたいに本当にワクワクした。ちなみにI Don't Think I Can Do This AgainはClairo主張が最高なMVもめちゃめちゃ大好き。

Mura Masa氏、今年の1月のベストアルバムの中に入れられなくてごめん...笑。さりげなくスルーしてたけど、ちゃんとベストアルバム級だった。歳が近いというのもあるし、とても応援してる 笑。(私より360日だけ年下)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Hot Mulligan - "You'll Be Fine" (3月)

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感情発散のセラピー

 単位日数あたり再生回数でいえば断トツかもしれないOG Bule Sky(M1)を含んだ今年私が忘れられない思い出を凝縮しまくったアルバム。The World Is A Beautiful Place & I Am No Longer Afraid To DieとかI Love Your Life Styleとかと同じ、さっぱり爽快系のエモ・パンクなのだけど、爽快感とエモ要素、どちらもフルパワーで出力するような高い火力を誇ってるところが本当に最高だと思う 笑。喉を潰すように全力をぶつけてシャウトするようなボーカルと、感情を爆発させるように激しく演奏するエモ・パンクのスタイルなのだけど、楽器に込めた圧力が全て最高に気持ちよく発散していく広大で自由なフレッシュさがめちゃめちゃある。加えて、夜空に光るようなメランコリックな美しさを演出するギターが特徴的なGreen Squirrel in Pretty Bad Shape(M4)やAnalog Fade (New Bule Sky)(M6)など、爽快フレッシュなフィーリングとは別タイプの、心に沁みるような気持ちよさのエモーションもある。エモ・パンクとしてでなく、みなぎるエネルギーを復活させるようなハードなパワーポップしてもとても素敵な作品だと思う。

とにかく1曲目のOG Bule Skyが本当にたまらなくてやばい。高速のメロディーが入り混じるマスロック的なハイテクニックのアンサンブルを展開する曲なのだけど、爽快系エモ・パンクの今作の中で最も心をえぐるような痛みと切なさがある。マスロックのテクニックならでは桁違いの爆発力や、めまいが起きそうなほど勢いの激しい揺さぶりなどを利用して、爽快フレッシュな気持ちよさに痛み・悲しみのような負の感情を付加させてるのが本当にやばすぎる。ものすごく気持ちいい曲なのに、メンバー全員が悲しくて辛くて泣きじゃくりながら演奏してるような感じ。ラストのギターどドラムが交錯するパートではあまりのエモーションに心臓がはちきれそうになる。

~ここから少し思い出タイム~

私は今年4月に社会人デビューをしたのだけど、大学院まで6年間過ごした茨城の生活が本当に本当に楽しかった。週末は朝から映画館までドライブしながら音楽を聴いて、映画館で映画を2~3本ハシゴして、レイトショー後の夜の帰宅ドライブでまた音楽を聴いて...。フジロック資金を稼いだイベントスタッフのバイトや家庭教師のバイトの日々も本当に楽しかったし、大学の自分の時間の全てを自分の大大大好きなものに費やして、この上ないほど充実した幸せな学生生活だった。学業に関しても、他の国大でゼミに参加したり、オーストラリアの国際学会に一人で参加したり(←本当にウルトラスーパーハイパー神。。。。)、人生で一番幸せ時期だった。

新社会人で東京に引っ越す準備をしてた3月、もう二度と戻れない学生最後の春休みの時間がたまらなくエモーショナルだった。充実しまくりな今までの生活とのサヨナラ、新生活における期待と不安、もっというとコロナの影響とかも。嬉しさもあれば人生で1番楽しかった学生生活に二度と戻れないという強烈な切なさもあって、自分の感情を上手く発散できずにいた。

そんな人生の大転換期の3月に聴いてたから、1曲目のOG Bule Skyの心臓がはちきれそうになるほどのエモーションが、自分の内面に抑え込んでいたはちゃめちゃな感情とめちゃめちゃ深い共感を起こしてた。音楽が過度に大好きな人は感情を表現する人が苦手な人が多いのかなとか思うのだけど、感情を表現するのが苦手な私とかは特に、この曲で膨大な量の思いを発散することができて、一回ボロっボロになるまで泣いたことある...笑。桁違いの爆発力によって、感情が上手に吐き出せた。そういう体験・思い出が詰まってる曲。曲調も春休みの時期にウルトラなぴったり感じだし、マジで取り憑かれたようにリピートしてた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Houses Of Heaven - "Silent Places" (5月)

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ドロドロでブラッディーになっていこう

 アンダーグラウンド感が半端ないクラウトロック・インダストリアルのめちゃめちゃダークなやつなのだけど、そのダークなフィーリングをよりドロドロに、よりブラッディーに描いたような濃厚さがあって本当に最高…笑。音のキャラクター的には伝統的なクラウトロック・インダストリアルの諸作品のそれなのだけど、A Place Between(M4)やCanneling(M5)のように、シューゲイザー的轟音ギターのヘビーな存在感をもっと出してる感じ。当時のアンダーグラウンドの精神状態をそのままに、それらのダークなフィーリングをシューゲイザー・エモのアイディアで進化させてる感じが本当にかっこいい。こういうドロドロしてるブラッディーでダークな音楽、時々病みつきになるように摂取したくなる 笑。例を挙げるなら、Ellen AllienのNostとかZombyのUltra(←好きすぎて本当にやばい)とか。溜まったストレス抑止の制限を全部解除して、気持ちを完全なる悪に染めていくような最高のゾクゾク感。特にHouses Of Heavenの今作は、All Possible Obstacles Are Present(M3)のシンセのバッキングみたいに、These New Puritansのにも通じる神々しいアートロックの感じも含まれてるからとてもハマる。実際Houses Of Heavenもモデル体型のメンバーが革ジャンしてたり、バンドのアーティスト写真もめちゃめちゃイケメン感あると思う 笑。

ブラッディーな気持ちになりたい時があるということ、超個人的な意見だけど、どれだけ善人な人でも、どれだけ仏のような優しい人でも、人間は誰でも絶対的なダークサイドを持ってると思う 笑。(心を単位化・数値化するのは不可能で、正と負の両方向に対してフィーリングは無限に存在すると思うから)。たまにそういう作品を鑑賞して、自分の内面のダークネスにどっぷり酔いしれたくなる。そういった人間の内面のダークサイドを扱った作品の類だと、映画『RAW 〜少女の目覚め〜』とか本当に大好きでやばい。普段大人しい思春期のベジタリアンの女子がありえないほどに肉食に目覚めていくそのダークネスの描写は、衝撃的でありながらとても普遍的だと思う。さすがカンヌ映画祭で批評家の高評価を得ただけある、本当に共感できるダークネス。ちなみ私的にその映画で大好きなシーンは、鏡を見つめながらダンスするシーンです...本当にお見事すぎる。

話が少し脱線してしまってごめんなさい...笑。『RAW 〜少女の目覚め〜』が本当に大好きでつい...笑。ほんと、伝説の名言「緑になるまで戻ってくるな」とか本当に最高すぎるからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Blake Mils - "Mutable Set" (5月)

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色んな魔法を込めてるやばさ

 アコギだけでなくクラシックギターの起用など、メロウで上品な本格派フォークの作品として既に至高の仕上がりな感じなのに、そのフォークの形式を基本に、ニューエイジ・エクスペリメンタルの音楽性で人間の聴覚の感度を何倍にも高めるような特殊な感覚拡張をしてる感じが本当に素晴らしすぎると思う。Never Forever(M1)やMay Later(M2)など、現実味のあるフォークのバッキングにアンビエント〜エクスペリメンタルのアトモスフェリックで超常的なサウンドを混ぜてしまうようなセンス。意味分かんない感じで例えるなら、あまりの特殊性に人間で初期設定されてる聴覚のサンプリングレートでは情報処理ができなくなって、感覚器官としての機能がリミットを超えて神経にバグを起こしちゃうような感じ 笑。作品全体の雰囲気としてはThe Cinematic OrchestraDamien Riceのような死にたくなるくらい切なくて美しいアコースティックの感じがあると思うのだけど、ニューエイジ技術によってそれらに色んな魔法を込めてるから本当にやばい。ただでさえ心に沁みるフォークとしてのよさをめちゃめちゃ持ってるのに...本当に絶品のアルバムだと思う。

Blake Milsの今作で特に大好きなのは6曲目のVanishing Twin。陽だまりの中でくつろぐような癒し的な世界なのに、非現実的で神聖なニューエイジのニュアンスがある感じ。存在するのが嘘だと思ってしまうような神秘的で美しすぎる冒頭のサウンドなど、死にたくなるくらい切ない感情が引き立てられる曲なのだけど、ニューエイジの技術でそれらの死にたさレベルもめちゃめちゃ高められてる感じがする 笑。なんなら、「死にたくなるくらい切ない」とかもう通り越して、もっと不気味で怖いニュアンスも出てきてたり。ノイジーなギターも本当に素晴らしいし、影響力が絶大で本当に深い感動が得られる曲だと思う。

The Cinematic Orchestraを挙げたけど、"感覚拡張"がある今作は、視覚までも使用されるような映画のサウンドトラック的な味わいも持ってると思う。特にMirror Box(M8)とかのインストの曲とか、物語のイメージに思いふけるように聴いてみたり。The Cinematic OrchestraのMa Fleurが超大好きというのもあるけれど、映画的音楽という点でもとてもツボだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Melenas - "Días Raros" (5月)

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上半期ベストジャケ

 ガレージならではのロックの楽しさ、本格派ポストパンクの旨味、そして洗練されたドリームポップの美的センス....、主にこれらの3本槍を持ち味として取得してる感じが他のバンドよりも個性的で本当に最高だと思う。そんなMelenasのデビューアルバムで私が特に大好きなところは、メンバー達をめちゃくちゃ素敵に捉えたパーフェクトなジャケ写の影響力によって、それらの個性的な魅力・Melenasというバンドの存在感がもっと最強になっているというところ。今年でいうと、TennisのSwimmerとか、WilsenのRuinerとか、メンバーのジャケ写によって奏でられる音楽の特別感がもっと増すタイプの魅力的な作品ってあると思う。Melenasの今作も、マルチな特色を凝縮した個性的な音楽性だけでなく、素敵なメンバージャケによってバンドがさらにかっこよくなってる感じがする。私はジャケット大好き一族の人間なので、こういう作品はものすごく高評価したくなる...笑。本当にロケーション・シチュエーション・メンバーのファッションセンス・配置・角度・座り方・写真のフィルターのチョイス、全部全部ウルトラ最高だと思う 笑。

また、前にも触れたけど、今作はガレージロック・ポストパンク・ドリームポップの3つの接点に、オルガンシンセがセットされてるところがめちゃめちゃ秀逸だと思う。オルガンが持つ古典的なセンスはガレージロックの古風な部分によく合うし、Stereolab感のあるポストパンクの部分はトコトコかわいいキャラ像にもぴったりで、オルガンだからドリーミーな美しさも最大に発揮できる。今作の個性をつかさどるメインのエレメント、本当に最高のアイテムだと思う。そんなオルガンシンセを主題にしたようなEl Tiempo Ha Pasado(M5)とかは初めて聴いたとき美しすぎてびっくりした。

今作はいわばガールズのガレージロック・ポストパンクということだけど、Camp Copeみたいな愛おしい仲良し感も感じられるところもめちゃ大好き 笑(てかCamp Copeがやばいくらい大好き)。スペインという点だとMournとかHindsも連想する。MournとHindsに関しては下北沢のライブハウスに来てたと思うけど、Melenasも来る?笑

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Mumrunner - "Valeriana" (3月)

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他のドリームポップ作品にはないロック力

 めっちゃ久しぶりに優等生のドリーミー系インディーロック作品と出会った 笑。DIIV, Beach Fossils, Wild Nothingsなど、2010年代に発達した幻想性の高いネオアコ~サーフロックのそれなのだけれど、それらの諸作品よりもロックとしてのモチベーションがもっと最強で、ギターリフのかっこよさを主張するようなフレーズ力を持ってたりしてて本当によい。ドリーミーな優しさの裏に秘めた熱狂を間奏からラストスパートまで全力で繰り出していくようなFoe(M1)、浮遊感のやばい優しすぎるボーカルなのにアグレッシブに攻めるようなドラムの存在感が光るRemember Me(M2)、The DrumsのようなミニマルなポストパンクもやっちゃうEasy Life(M4)などなど、脳裏でぼんやりと輝く優しくてたまらないサウンドスケープを持ってるのに、モチベーションの高いロックを演っててめちゃめちゃ好感が持てる 笑。今まで自分の目に止まらなかったのが不思議なくらい、とても安定したレベルのよさがある作品だと思う。DIIVやWild Nothingsを大好物にしてる友達全員に布教しまくりたい 笑。

私的にはやっぱり、他のドリームポップ作品とは一味違うMumrunnerの個性的な印象を与えるFoeをアルバムの1曲目に用意しているところが本当に最高だと思う。2010年代ドリームポップ諸作品と同じようなドリーミーオーラを出しまくりながらも、それらとはどこか違いを感じさせるロック力のポテンシャル。光輝く優しい幻想を持ってるのに、間奏パートのギターソロから闇闇したカラーに変化させていく美しいコントラストなどがあってめちゃめちゃエモーショナル。そこで確実にリスナーをつかんだ後、本作メインなトラックともいえる2曲目のRemember Meでリスナーを完全に虜にする流れも本当に完璧...笑。Mumrunnerの個性を魅せるためのアルバムのストラテジーが大成功してると思う。

今年のドリームポップ作品でいうと、2月にリリースされたWilsenのRuinerとかも本当に素晴らしかった 笑。今の時代、よりリスナーの印象に残るドリームポップを作るのってなかなか難しいのかなとか思うけど、その中でも個性的な作品を作れるって本当に最高だと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Bad Moves - "Untenable" (6月)

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ヘビロテを約束

 初めて聴いたとき、本当に最高のメロディーメイカーすぎてやばいなって思った 笑。かわいくてハッピーなパワーポップなのだけど、Party with the Kids Who Wanna Party with you(M3)、Toword Crescent Park(M4)、Tides(M11)など、リスナーにヘビロテを約束させるようなキャッチー性の鬼高いメロディー。アグレッシブな性質を持つパワフルなロックのよさももちろん所持してると思うけど、どちらかといえばメロディー重視で音楽を作ったようなインディーポップの作風がメインの感じ。元気溢れるロックのテンション感を借りてメロディーのノリがハイクオリティになってる感じが本当に病みつきになる。Superchunk、Charly Bliss、The Bethsなど、大好きなパワーポップのバンドはたくさんあるけど、ここまでロックとポップの二刀流が上手にできてる感じもなかなか秀逸な気がする。あと私はLocal Radio(M1)やNight Terrors(M2)など、メンバー全員が本当に楽しそうに歌ってる感じもめちゃ大好き。アーティスト写真を見てもその雰囲気がよく出てると思うのだけど、めちゃくちゃ楽しそうなバンドだなって思う 笑。

私的には、特に3曲目のParty with the Kids Who Wanna Party with youが本当にやばい。パワーポップならではのポジティブさの中にほんのちょっぴり切ないテイストがミックスされてて、メロディックなよさ以上にエモーショナルな作用もあるところが本当にたまらない。シンプルなバンドの編成ながらもメロディー力がものすごく活きてると思う。このアルバムがベストアルバム級だったのはこの曲の存在がでかい。本当にずっとヘビロテしたくなる。(6月ベストから漏れてしまったけど...)

メロディー重視よりもロック重視を思わせる8曲目のFog Is a Funny Thingもとてもよい。声質的にもめっちゃSuperchunkにそっくりでちょっと笑ってしまう 笑。ギターのパワーコードだけで音楽が成り立ってる感じ、このくらい無駄が削られてるシンプルなロックもやっぱり大好きだな...笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. The Strokes - "The New Abnormal" (4月)

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来年のフジロックの待ち遠しさをもっとエモーショナルに

 「ストロークス新作!いつもウルトラ最高のヘビロテチューンを届けてくれるけど、スーパー期待してハードルを上げすぎるのもよくないし...心をニュートラルにして平常心で...」→1曲目再生→「いきなり最高かよーー!!」という流れでした 笑。とにかく私は1曲目のThe Adults Are Talkingの虜になりまくってやばかった。前作Comedown Machine(2013)でいうところのOne Way Triggerみたいなトコトコ・テケテケ感があるストロークスならではのチープなロックのやつ。音楽がかわいく進行していく無敵なまでに満たされるような最強のフィーリングスがあるのに、そこにJulian Casablancasの歌いこむようなかっこよすぎるボーカルで無敵感をさらに高めてしまうという...笑。ドラムのオープンハットによるスウィングのオシャレなダンサブル感もたまらなく好き。紛れもない2020年上半期のベストソング。

今作がとにかくスペシャルだったのは、At The Door(M6)やNot The Same Anymore(M8)など、バラード的な雰囲気や哀愁さえもを感じさせるようなロマンチックな作風の部分が、2020年のフジロックを最高に特別なものにさせる予感を十分に与えてしまったというところ...泣。名作・名曲だらけのストロークスのセトリを想像して楽しむのももちろん最高すぎるのだけど、今作をアルバムで通して聴いて、「あぁ...この曲のこの部分でギターの二人が...」とか「あぁ...苗場のあの空間でこの曲を聴いたら私は...」とか想像しまくったりするのもこの上ないほど充実してた。そこには、開催が厳しい中で本当に観れるのか、観れないのか、の狭間で揺れてたメランコリックな複雑なフィーリングも影響してたと思う。残念ながらフジロックは中s...延期になってしまったけど、このアルバムのロマンチックな作風や、Julian Casablancasの歌のメランコリーのそれらが、フジロックへの切ない感情をとっておきの思い出として保存し、来年のフジロックの待ち遠しさをもっとエモーショナルにした気がする。フジロックは"今のところ" 参加アーティストに変更なし...伝説のバンド、本当に死ぬまでにあのステージを、あのライブを、あのパフォーマンスを観たい...!!そしてまたThe Adults Are Talkingを再生するのである...笑。

今作を機に過去作を復習したらストロークスにめっちゃハマりだした 笑。機会があれば私的ストロークスベストソングとか作ってみたい 笑。(The Adults Are Talkingも絶対入る)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Porridge Radio - "Every Bad" (3月)

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情緒不安定の危なげな狂気に満ちた美しさ

 本気を出したロックにできること、私が大好きなもので例を挙げると、Radioheadによる魂が抜けるような強烈な現実逃避、My Bloody Valentineによる轟音ノイズ素材のベットで眠る気持ちよさ、Tame Impalaによる幸せホルモンを脳内分泌するエクスタシー、Real Estateによる純粋でリアルな夢の世界の創造......。ロックが持つシンボルは本当に色々あって、いつの時代もワクワクさせてくれる果てしない可能性を秘めてると思うのだけど、Porride Radioも、他のどのロックにも属さないような、「情緒不安定の危なげな狂気に満ちた美しいエモ」というような新しいシンボルのロックを提示してる感じが本当にたまらない。それは、昨今のオルタネイティブロックがエレクトロニカ技術を多用する傾向があるのに対して、もっとクラシック思考のシンプルなサウンドを意識したインディーロック。Sweet(M2)やCircling(M9)のように、美しいエモのフィーリングの中に暗くて湿ってるダウナー感とか、恨みや呪いのような狂気を含ませている感じがする。まるでインディーロックの形式のままサッドコアに接近するような不気味な感覚。明るい曲調があるBorn Confused(M1)やGive/Take(M7)のようなフィーリングも、それらの不気味な狂気に飲まれていくような危なさがある。情緒不安定で耐えがたい不安やフラストレーション、嘆き苦しみ、怒り震えるような負の感情のそれらを、シンプルでありのままに爆発させて描くようなところが本当に素晴らしいと思う。芸術性の観点からすれば、去年のblack midiとかに匹敵する感じがする。正直に言うとね!本当にごめん、よさが遅れてじわじわやってきた! 笑。3月ベストに入れられなくてほんとにすまん...笑。

新しいシンボル・芸術性というのは、言い換えればオリジナリティの高い作家性がよく表れてるということ。代表的なところだと、ただでさえ狂気じみた凄まじいエモーションなのに、緩急のあるフレーズでさらに勢いをプラスするようなSweetとか、中盤で不意に暴れまわるような攻撃性を発揮し出すDon't Ask Me Twice(M3)とか。不安定な危なさや真に迫る本気のエモーションを本当にユニークに表現できてると思う。中でも8曲目のLilacとか本当に最高すぎてやばい。絶望の悲痛な思い、夢想的な癒しの現実逃避、それらが入り混じるようなカオスに溢れた絶大すぎるエモーション。もう本当にありえないくらい感動する。Pop Song(M6)からのGive/Take(M7)でリスナーの調子を狂わせた後、襲い掛かるようにLilacを持ってくるところも本当に大好き。

新しいシンボルのロックということを言ったけど、そんな新しさという点だと、バンドのアーティスト写真の感じなんかもめちゃくちゃ好みなんだよね...笑。このベリーショートヘアのフロントマン、なんかアートポップバンドのAlaskalaskaの感じがする(大好き)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

プレイリスト🍎

温の「2020年上半期の漏れ&逃しのベストアルバム(温)」をApple Musicで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「2020年6月ベストアルバムTOP10」感想

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今月はロックがめちゃ強かった気がするけど、ベストアルバム選定してみたら民族音楽的なエキゾチックなやつも多かった 笑

ちょっと夏補正が入ってしまった感じは否めない

TOP10に収まらなかったのは後でフォローしたいなと思う

 

今月の大大大好きなアルバム、感想をランキングで

(上位3つは全部1位)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. Hinds - "The Prettiest Curse"

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最後までとことんパーティーを楽しむ!

 もう本当にめちゃめちゃ最高のサマーチューンだと思う 笑。従来のほのぼのとした温暖性のローファイ・ガレージロックよりも、今作はThe Go! TeamやSleigh Bellsのようなもっとハジけるエネルギーが溢れてるようなめちゃめちゃパワフルでポップなやつ。シンガロングな曲の盛り上がりで最強のワクワク感を提示するGood Bad Times(M1)や、テンションを高めまくる合いの手のアイディアが超有効なBoy(M4)など、オーディエンスを沸かせるようなボルテージが高いポップスの感じ。そして、もともと所持してた温暖性のガレージロックのセンスに加えて、チルさのあるシンセや、ハワイアンでトロピカルなフィーリング(Come Back And Love Me(M5))なども含まれてて、夏要素がバリバリに感じられるアルバムだと思う 笑。雰囲気としては、仲良しガールズならではのハッピーな元気全開でサマーパーティーを開催するような感じ。夏フェスにぴったりすぎるThe Go! TeamやSleigh Bellsのような音楽性が本当に大好きというのもあるからものすごくハマる。特に3曲目のRiding Soloとか熱量が本当にやばい...笑。最高にチルくてキャッチーなとっておきのサマーチューンだけど、後半でガレージサウンドがハードになりすぎたようなシューゲイザーにヒートアップしまくる 笑。最初聴いたときは耳が燃えそうになった 笑。本当にむちゃくちゃテンション上がる。

今作の本当に素晴らしいところは、それらの仲良しガールズのサマーパーティーな音楽を最後までとことん楽しむような盛り上がりの持続性、そしてパーティーが終わりに近づいていく微妙なニュアンスを上手に表現したアルバムのシーケンス...!。1曲目のGood Bad Timesからずっとパーティーしててエネルギーを全部出し切るように楽しめる作品なのだけど、ラストに差し掛かるTake Me Back(M7)から昼間のパーティーとは違うロマンチックなナイトパーティーみたいなパートが始まったりする感じ。フィナーレ近いWaiting For You(M9)ではパーティーがそろそろお開きになるようなめちゃくちゃ切ない雰囲気が出てくるのだけど、「それでもまだまだ楽しみたい!」というようなパーティーの継続願望が表れてる感じに嬉しさで泣きそうになってしまう。最高に楽しいパーティーのサマーチューンを存分に楽しんだ後だからこそ、センチメンタルでメランコリックなフィーリングが効いてくる。ラストのThis Moment Forever(M10)で、それらの美しい余韻を堪能しまくりながら素敵な夢を見る感じも本当にやばい。アルバムの流れが本当によくできてると思う。

個人的には、4月リリース予定だった今作は6月の夏に延期されて正解だった気がする 笑。(彼女たちは残念がってたけど。)それくらい完璧にサマーチューンだと思った 笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Clap! Clap! - "Liquid Portraits"

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命を捧げるように本気になって踊る

 アフリカンミュージックやシリア系の民族音楽を完璧にマスターしたようなハウス・フットワークの作品なのだけど、エレクトロニカの技術を利用して民族音楽が持つ不屈の精神や怒り・恐怖といった生々しい感情をよりリアル化させているところが本当にたまらない。呻くような重低音ベースによって民族音楽のダークな部分をより出現させたSouthern Dub(M4)とか、ディープな音響エレクトロニカによって野性的な音楽性に鮮やかな美しさをプラスしたようなRising Fire(M8)とか。土着的で原始的な民族音楽の本質的な感情源をエレクトロニックなハイビジョンのテクノロジーで描き出すような素晴らしさがある。クラブミュージックと民族音楽の双方の性質を失わず、両方の持ち味を本当に上手に発揮できてると思う。"民族音楽ワールドミュージックエレクトロニカ化"だとChancha Vía CircuitoのRío Arribaとか本当に大好きなのだけど、Clap! Clap!の場合、Liquid Mantra(M2)やRising Fireなど、多彩なサウンドと立体的な音像を取り入れた高級感のあるデザインが本当に美しい。その音響的な美しさを大迫力で感じるようにヘッドホンで思いっきり堪能して、生々しい感情が溢れた民族的なダンスに完全に酔いしれたくなるような、とても魅力の濃い作品だと思う。

私がこの作品をベストアルバムに選んだ絶対的な要因は、6曲目Mandragora。このトラックを聴いて一瞬理性を失ってしまったのだけど、本当に本当にやばい。もともと民族音楽の踊りには、自分たちの命を祝福をするような喜びの種類のものももちろんあると思うけど、地球や宇宙などのある巨大な存在に対して、自分たちの命を捧げる生贄の儀式のような種類のものもあると思う。文明人には理解できないような犠牲を厭わない狂気、自分たちの命を本気で捧げようとする覚悟、民族音楽の踊りに対して感じる恐ろしさのニュアンスはそういうところにある気がする。Mandragoraが本当にやばいのは、その真に迫る圧倒的な恐怖でさえ、エレクトロニカの技術を利用してリアル化させているというところ。初めて聴いたときの感覚を思い出しただけでももう怖くて苦しくなる。頭の中でうるさく鳴り響くような大量のパーカッションや、心臓にまで届く強力な低音、暗黒物質を纏ったようなシンセサウンド、そして理性を失うように没頭するハウスの音楽性...。何かに命を捧げるために本気になって踊る、というような血が騒ぎまくるエモーションを感じて思わず泣きそうになる。表現として、アイディアとして、本当に素晴らしくてやばい。

私的には、今作は2017年ベストのJLinのBlack Origamiに匹敵するよさだった。Black Origamiは民族音楽ダンスの狂気をリアルに描いたフットワークのワルツ。今作の場合、Liquid Mantraとかフットワーク~ダブステップの趣があったり。こちらの曲も、より内向的なエネルギーを感じさせる特殊なダンスを感じさせて本当によかった。雨音をサンプルした優しい出だし1曲目からの流れも本当によく効いてると思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Photay - "Waking Hours"

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贅沢すぎる二部構成

 Photayが本当に素晴らしいのは、Arca、Bon Iver、Nicolas Jaar、Oneohtrix Point Neverなどと同様、「どうすることで人間の感覚をもっと刺激することができるのか」ということを真摯に研究しまくったような音楽アーティストであるというところ。中でもPhotayは、クラシックとアフリカンミュージックをルーツに持つようなエクスペリメンタル・ハウスの音楽性が本当にめちゃめちゃ個性的。エレクトロニカとして妥協せず理想のサウンドを追及する精密なこだわりはもちろん、クラシック音楽の発想に着実な遊び心豊かなメロディーメイキング、民族音楽系のワイルドなノリを持ったパワフルなリズムワーク、さらには強弱をよく意識した音楽のダイナミクスの利用、もっというとそれらのアイディアを掛け算させて全体をまとめるような器用すぎるテクニックなど、他のアーティストとは違う特殊なアプローチでセンセーションを作り出す超凄腕のお方だと思う。前作Onism(2017)も管楽器とシンセをミラクルに調合させる天才的な発明などをしていて人生ベスト級に大大大好きなアルバムだったのだけど、今作も音色・メロディー・音量など、音楽を構築するための全部の要素に対して1から向き合って曲を作るような繊細さ・丁寧さを持っているところが本当に素晴らしい。巧妙なフェードインで音のセンシティブさを強調するIs It Right?(M3)や、打弦楽器と管楽器の音色をブレンドしたようなマジカルな音色が光るRhythm Research(M7)などなど。豊富な感情表現、もっと特殊な人間のエネルギー放出、それらが予測不能に時間変化していく様々な曲のパターン...感覚が刺激されまくるようなアイディア・工夫がめちゃんこ溢れてて、とても芸術的な仕上がりだと思う。

今作のめちゃめちゃ最高なところは、アルバムが効果的に展開されるような前半と後半がそれぞれ異なるテーマを持った二部構成の作りになっているというところ。前半5曲のA面と、後半5曲のB面。A面は、Photayならではのテクニックを駆使して神々しさの半端ない幻想を創造したWarmth in the Coldest Acre(M2)や、リスナーをゾクゾクさせる聖なるオーラを纏った超かっこいいFanfare for 7.83 Hz(M4)など、神聖でうっとりするほど美しさがよく表れたパート。それに対するB面は、効果音を利用したインパクトの強いダンスのThe People(M6)や、エッジを微妙に際立たせたストリングスの存在感の与え方が最高すぎるPressure(M8)など、ハウスのパワフルな影響力が色濃く表れた迫力の強いパート。(私的には特にこのB面が大好きすぎてやばい!)どちらも本当に素晴らしいパートなのだけど、うっとりするような美しいパートから迫力のあるパートにシフトする展開部分が本当に楽しすぎて...笑。メロディーもリズムワークも一つ一つが超最高なのに、アルバムの流れを大きく変えるストーリー構成力もあるから本当に贅沢すぎる作品だと思う。今作もめっちゃ力作。

今作のB面パート、特にThe PeopleとPressureのダンサブルすぎるリズムは本当に最高すぎてアゴの筋肉がおかしくなるくらい笑ってた 笑。やっぱり、Photayのアフリカンリズムはとてもとても楽しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Sports Team - "Deep Down Happy"

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ガレージパンクのアップデート

 古き良きガレージパンクのエッセンスを上手に吸収したような能天気型ハピネスのロックンロールなのだけど、従来のガレージパンクが持っていないようなメロディックなポップセンスが多く盛り込まれていたり、ボーカルが少し変態気質なところもあって、音楽で表現される楽しさレベルがめちゃめちゃハイクオリティなのが本当に魅力的 笑。ガツガツ突き進んでいく攻撃的でストレートなガレージパンクの性質だけでなく、どこかリスナーを励ましてくれるような和み系の暖かさのあるギターメロディー(Here It Comes Again(M2), Going Soft(M3))を含んでる感じ。Fountaines D.C.、Idels、Shameなど、ドス黒さの効いた反社会的なポストパンクのイメージとは正反対の存在感があって、ネガティブなフィーリングをスッキリ吹き飛ばしてくれるような清々しい快感があるから本当に最高 笑。そんなHere It Comes Again(M2), Going Soft(M3)もそうだけど、うねうね動く抑揚を効かせた愉快なギターフレーズが特徴的なFishing(M10)なども本当に楽しい。6人のメンバー達のフレンドリーな様子も伝わってくるのも微笑ましくて大好き 笑。

今作で私が1番最高だと思ったところは、古き良きガレージパンクの忠実な再現以上に、それらの音楽性を2020年の現代版としてアップデートして完成させているというところ。代表的なのだと、ラモーンズ的なダウンストロークの突破力を感じさせるようなリードトラックのHere's the Thing(M7)とかまさに。ロックンロール文化が発祥し始めたばかりのギスギスしまくってる当時の感覚をそっくりそのまま掘り起こしたのかと思うくらい、それらのコピー・アレンジのセンスが本当に秀逸で、今作はそういう再現がとても大成功してる作品だと思う。私は95年生まれだから80年代以前の作品は疎か、90年代の作品でさえ名盤界隈のマップを全然把握できてない。だからこそ、80年代のディスコ~フュージョンを新構築したNeon IndianのVega Intl. Night School(2015)とか、60~70年代のアコースティックソングを復興させたようなKevin MorbyのSinging Saw(2016)とか、過去の時代の音楽をリメイクによって今この瞬間に出会わさてくれる作品を本当に嬉しく思う。Sports Teamの今作の場合、過去のガレージパンクが持っていた当時の熱量やその激しさのリアルな再現の感動だけでなく、新しさを感じさせる新鮮でメロディックなポップセンスなどの新規性・アップデート要素もあるから本当にめちゃめちゃ心に響く。中でもCamel Crew(M4)なんかは本当に素晴らしすぎてやばい...笑。一種のガレージパンクに対する憧憬を含んでる感じも込み込みで、アルバム通して聴くと素敵な思いが炸裂して泣きそうになってしまう。今作で私が1番大好きなナンバー。

Camel Crew、コロナの自粛期間のときにたくさん聴けたらよかったな...笑。(Winter Nets - EP(2018)のバージョンよりも今作の方が好み)。「You say it's boring, but it's not」とか、「Just call a number, make it change」とか、リリックがめちゃめちゃ素敵だし、外出自粛のシチュエーションにマッチする部分もあるから本当にグッとくる。今後自分の人生に退屈さを感じたときに聴きまくりたい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Khruangbin - "Mordechai"

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リスナーに捧げる優しさをもっと高みに

 存在感の半端ない超かっこいいバンドがリスナーにありったけの優しさを捧げてくれるような作品が本当にたまらなく大好きなのだけど、Khruangbinの今作は、東南アジア・中東のイメージにリンクする神聖な動物たちをモチーフにした神々しいアートワークや、メンバーたちが「美しいから」というシンプルな理由で名付けたMordechai(モルデカイ)というタイトルなど、リスナーに捧げるありったけの優しさをもっともっと高みに上げるようなコンセプトがあるところが本当にやばい。東南アジア・中東の息吹を込めた珍しいタイプのエキゾチック性があるファンク・ロックという音楽性ももちろん、艶美な色気を放つフロントマンのローラを率いる個性的なトリオのオーラや、そしてそのメンバー達が夢心地で奏でる優しいアンサンブルといった特殊性、本当に超かっこいいバンドなのでどんな作品を作っても最高に魅力的だと思う 笑。中でも今作だと、パフォーマンス性の高いエモーショナルな演奏の中で生きることのメッセージ性を込めたTime(You and I)(M2)や、ローラの歌が泣きそうになるほど美しすぎてやばいSo We Won't Forgot(M9)など、珠玉のリードトラックが用意されてて本当に最高。今作は従来のインストゥルメンタルの作風よりもボーカルを導入したスタイルで話題を呼んでたけど、中でもこのSo We Won't Forgotのローラのボーカルは本当に素晴らしいと思う。Khruangbinならではの優しいファンクの気持ちいい躍動感の鮮やかさと、エキゾチックでビターなフレーバーのコントラスト。日本を舞台にしたMVも桜の雰囲気が超ぴったりでめちゃくちゃ最高!笑

私はドリームポップが大大大好きなので、幻想的な音楽は全てドリームポップの枠組みで捉えてしまう病気にかかってるのだけど 笑、Khruangbinの音楽についても、「エキゾチックな新しいドリームポップ」というようなよさをやっぱり感じる。前作Con Todo El Mundo(2018)もそういうドリーミーな音像をよく所持していた作品だったと思うけど、今作の場合、One to Remember(M7)のように、トリオのスタイル以上に装飾レベルで環境音・効果音を追加するようなアンビエントのアイディアもさりげなく起用されてる感じも大好き。Khruangbinの最高の優しさをより夢想的な味わいにさせるためのアイディア。Khruangbinの本質的な演奏精神を邪魔することにならない程度だったらどんどんモリモリにしてもOKです...、もっとやっていいよ 笑。

ボーカルの導入、私は思ったより従来通りの作風に感じたけど、If There is No Question(M5)とか聴くとローラのボーカル本当に最高だなと思う。浮遊感があって本当に気持ちいい。こういうのライブで観たいな...笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. HAIM - "Women In Misuic Pt. Ⅲ"

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豊かな陽エネルギーをよりチルアウトにコーディネート

 HAIMといえば、ロックだけでなくフォーク・カントリー・ソウル・ファンクとか、様々な方面の雑多なジャンルを天才的に消化した独自のプラットフォームがやばすぎるバンドだと思うのだけど、そのオリジナリティの濃い音楽性に追随して、メロディーの一つ一つがより特別な仕上がりになってるところも本当に至高だと思う。今作はアコースティックで落ち着いたカントリーや、夏に合いまくるポカポカのレゲエ(Another Try(M8))など、全体的にチルアウト系の和み要素が全面に表れた気持ちよさが半端ない作風だと思うのだけど、HAIMの特別で至高なメロディーセンスが全て気持ちよさのフィーリングに全振りされてるようなところが本当に最高すぎると思う。具体的には、気持ちいいコーラスをカントリーロックのアプローチで印象的にさせたようなThe Steps(M2)や、持ち前のファンキーなギターセンスが身体に優しく作用するDon't Wanna(M7)とか。3姉妹の豊かな陽エネルギーをよりチルアウトに気持ちよくコーディネートした感じ。中でも5曲目のGasolineとか本当に最高すぎてやばい...。綺麗にまとまった多様なサウンドの充実感、泣きそうになるほど癒し的で究極的に満たされるメロディー。サイケ的なギターサウンド一つ取っても本当に最高の味わい。あと、なんでボーナストラックなのか全然分かんない先行曲のNow I'm In It(M14)とかも本当に本当に素晴らしい。気持ちよさをベースにしながらも、刺激的なエレクトロニカで音楽のワクワク感を高めまくったような感じ。アルバムにおける最高のラストのFUBT(M13)後に用意されてるエンドクレジット的な存在感があって、アルバムの中で本当に最高に素敵な印象を残してる曲だと思う。そんな風に、この夏とっておきの曲たちが凝縮されたボリューミーな大傑作。

カントリーというところだと、チェンバロサウンドのクラシックなカントリー感が特徴的なLeaning On You(M9)とか、本当にめちゃめちゃフォークすぎてびっくりするHallelujah (Bonus Track)(M15)など、ポップとして大きく躍進した前作Something Tell You(2017)からは思いつかないほど古風なテーマが引用されてると思う。チルアウトR&Bのヒップホップな3am(M6)とか現代的な曲もあるけれど、ウエスタンで伝統的なカントリーを彷彿させるジャケ写のデザインであったり。そういったように今作は、HAIM3姉妹の音楽性のルーツをもっとクラシックなところまで深堀り・探求したようなある種の実験的で挑戦的な部分がある気がする。私が今作で本当に素敵だと思ったところは、そういった自分たちのルーツの深堀り・探求の部分に、彼女達の音楽愛のレベルアップ、そして自分たちでその音楽を演奏できるという最高の喜び、もっというとそこから滲み出る3人の仲良し感などが感じられるところ。音楽に溢れてる果てしない陽エネルギーのハピネスだけでなく、断固たる3姉妹バンドの音楽愛としてのハピネス。そんなことを感じながら改めてGasolineとか聴くと、またさらに泣きそうになる。本当に最高すぎてやばい。

HAIMに関してはデビュー作のDays Are Gone(2013)の頃からギターも本当に大好きなのだけど、今作でいうとUp Form A Dream(M4)のギターソロとかも超最高だった。HAIMのファンキーなギターのソロワークって他のハードロックとかにはない最強の楽しさがあるんだよね...笑。(Let Me Goのギターとか死ぬほど好き)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Phoebe Bridgers - "Punisher"

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Phoebeの人間味が最高の形で音楽化

 天使的な存在すらも感じさせるような愛情の深いハーモニアスなPhoebeの歌声がとにかく最高すぎてやばいのだけど、心がときめく丁寧なベッドルーム~ドリームポップの至福の味わいだけでなく、ローファイによるかわいいサウンドスケープや、トランペットなどカントリー楽器のキャラクターを効かせた明るいアクセントなど、Phoebeの温かい人間味をもっともっと感じさせるフィーリングが大量に含まれてるところが超絶に最高だと思う。心を穏やかにさせまくるサイレンスのローファイがどこまでも優しいGarden Song(M2)や、牧歌的なカントリーのアプローチで温かい人間味をもっと確実で強力なものに仕上げたようなGraceland Too(M10)など。前作のデビューアルバムStranger In The Alps(2017)も、重みのある幻想性をいっぱい繰り出したようなベッドルーム・ドリームポップソングの宝箱だったと思うのだけど、今作はほっこり系のリラックス効果が果てしないような安心感の幸福がたくさん味わえるところが本当に魅力的だと思う。特にGraceland Tooなどに関してはバンジョーやストリングスによる温もりのギブネスが本当にやばいし、リスナーを昇天させるレベルでソウルフルなメロディーが引き立てられてるコーラスパートとか、泣きそうになるほど心が暖まる。もともとPhoebeってお風呂でライブやったり、躊躇なく変顔を繰り出したり、Twitterでネタツイしたり、ユーモアが溢れまくってる素敵なキャラクターだけど、そういったパーソナリティも込みで彼女の温かい人間味が最高の形で音楽化されてるから本当にたまらない。

そういったPhoebeの新たな一面を見せてくれたアルバムだと思うのだけど、中でも前作にはなかったロックのナンバーが本当にやばい。代表的なのが今作屈指のリードトラックであろうKyoto(M3)。かわいくて優しいローファイの音色、全身に心地よい風を浴びるような好天気ロック、Phoebeの思いだけでなく日本愛も込められてる本当に素敵なリリック、そしてPhoebeの温かい人間味のリアリティを決定付けたようなトランペット......。"ドリーミーでシャイニーな満たされたフィーリングをPhoebeがロックする" という断固確実たるやばさがあると思う。また、祝福のオーケストラのようなパッセージを含んだChinese Satellite(M6)とかも迫力のあるロックでめちゃ最高。ラストのI Know the End(M11)とかに関しては、フェスとかで思い切り映えそうなさらに大きなスケール感を持っていて、ライブが本当に観たくなるから死にそうになる...笑。トランペットの装飾がアルバムのフィナーレ感をより演出してるところも超天才だと思う。

Punisher(M4)やMoon Song(M7)など、従来のベッドルーム~ドリームポップのナンバーも相変わらずめちゃめちゃよい。Punisherは静寂の中で音が微かに光るようなピアノのセンスがJulien Bakerっぽかったり、Moon Songは水面が波打つようなサウンドのイメージにアンビエントっぽさがあったり、あまりに美しすぎて昇天しそうになる。特にMoon Songはメロディーに深いエモーションが込められてるから本当にグッときまくる。

今作はPitchforkで8.7のスコアを獲ったけど、マネージャーが「8.7は悪くない」って言ったのに対して、「お前はクビだ、少なくとも9.5だろ」みたいにコメントしてたのめちゃめちゃ笑った 笑。本当にPhoebe大好き

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Sault - "Untitled (Black Is)"

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"Cover me with love"

 DJ ShadowのEndtroducng...のサンプリング要素みたいな古来のR&Bソウル・ジャズ・ヒップホップ、そしてゴスペル・アフリカンミュージック・ブラックコンテンポラリーなど、様々なブラックミュージックにアクセスするユニバーサルな作風だと思うのだけど、それらの古来の音楽が目を覚ましていくようなゴ-スト的サンプリングとか、バッキングの規模を最小限に収めたような落着いたリズム隊など、薄暗い空間の中でひっそりと明かりを灯すようなミステリアスな魅力を持っているところが本当に最高だと思う。また、2019作の5と7のマッチのジャケットと同様、暗闇の中に小さくオブジェクトを用意するジャケットの感じとか、Sault自身も怖いくらい謎に包まれてる人物であるところとか、音楽性以外の要素も含めてSaultはミステリアス性をめちゃめちゃ所有してるアーティストだと思う。今作が本当に素晴らしいのは、そういったミステリアスなセンスでより芸術的にブラックミュージックを復興し、黒人文化・種族をリスペクトするだけでなく、それらを深くから持ち上げて支えるようなスピリチュアルなパワーを発揮してるというところ。『Black Is 』というタイトルや、楽曲中のナレーションのリリックが簡潔に表してるように、本作は虐げられた黒人種族を守り、団結し、不屈の精神を訴えるような明快なコンセプトを持っていると思う。基本的でヒストリカルなブラックミュージックを総括してる作風だからこそ表現できる芸術的で特殊なリスペクトがあるから本当に素晴らしいと思う。「我々は死なない」というメッセージを発信した私的2017年ベストのIbeyiにも通じる作品で大好きだし、現在のBLMムーブメントに不可欠なテーマ性で無視し難いのももちろんそう。

ナレーションのトラック含めて20曲もあるボリューミーなアルバムだけど、私のお気に入りを列挙しまくると→→→、ソウルの優しい歌が絶大な癒しを与えるようなWildfires(M5)、摩天楼に響くような儚げな音像が美しいSorry Ain't Enough(M7)、穏やかな曲調の中で「私達は神」という内容が強烈なBlack Is(M8)、リフから掛け合いまでギターが本当に最高すぎるBow(M9)、ヒップホップのグルーヴ感がたまらなく楽しいBlack(M12)、オルタネイティブロック感がめちゃツボなMonsters(M16)、思いやりのフィーリングをたっぷり込めて締めくくるラストのPray Up Stay Up(M20)などなど....。本当にたくさん大好きな曲があるのだけど、今作の1番やばすぎてやばいところはUs(M13)とEternal Life(M14)のセット。Sault独自のブラックコンテンポラリーみたいなポップスの音楽性に、教会音楽のような神聖な祈りのニュアンスを追加したようなナンバー。ゆらめくように「Cover me with love」をリピートするパートが本当に美しすぎて死にそうになる。Usの「You are gold」「You are rubies」「You are diamonds」「Little black girl, you are exalted」とか、歌詞も全部やばすぎて目ん玉がもげそうになるし。余韻を残したOnly Synth in Church(M15)もめちゃ最高だと思う。

音楽の美しさ、内容の美しさ、作品のコンセプト、現在のムーブメント、全てが一体になった作品鑑賞ってこんなに心に響くんだなと思った。音楽に"大事"とか"大切"とかあんまりないと思うけど、現在におけるこの作品の鑑賞はやっぱり大事なのかなと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Braids - "Shadow Offering"

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「色を獲得する」

 無色半透明のフィーリングの繊細なシンセサウンドが奏でられるアートポップ、あるいはナチュラルでドリーミーな音像が溢れたメランコリックで綺麗なオルタネイティブロック。本作はそういった冷たい感触がある無機質でセンセーショナルな美しさが半端ない音楽アート作品だと思うのだけど、ボーカルのRaphaelle Standell-Prestonによるエレガントでソウルフルな歌のアプローチによって、それらの無機質で透明なサウンドたちが鮮やかに色を獲得していく感じが本当に本当に素晴らしすぎてやばい。シンプルなシンセサウンドなのに琴線に触れるような響きを持ち始めるYoung Back(M2)や、展開部でエネルギー密度を高めるような発色の変化を起こすFear of Men(M6)など。「色を獲得する」ということ、それはまるで、命の無いものに命が吹き込まれる瞬間。これがどれだけ芸術的で、魔法的で、感情的であるだろう...。しかもそれらの瞬間に、The NatuonalやLocal Nativesのようなクリーンでアコースティカルなロックの迫力などもプラスして、それらの生命的な感情・色彩の出現をもっと大胆に美しく見せるようなテクニックもあるから感動が本当にやばすぎる。無機質で無感覚のものが豊かさを手に入れていくような感情変化。"時間"を扱う音楽の芸術だからこそ成せる表現で、私達が死ぬほど愛してる音楽鑑賞の感情変化的な喜びが詰まりまくってる作品だと思う。音楽を聴いて泣くことは多々あるけど、私の場合、それらは感覚以上に自分の理性に働きかける何かの要因があるからだと思ってる。Braidsの本作では、そういった理性にアクセスすることなく、純粋なサウンドの美しさだけで泣いてしまった気がする。こんな体験、私的2010年代ウルトラハイパーベストアルバムのMr. Twin Sister(2014)以来かもしれない。

本作は、ポップスやロック、さらにはオーケストラのような壮大なスケール感などを活かして、それらの芸術的で感情的な美しさのインパクトをもっとグレードアップさせてるところが本当に秀逸だと思う。重さのあるピアノのバッキングがRaphaelleのエレガントなメロディーの存在感をより高めるようなHere 4 U(M1)、ロックのグルーヴ感でBraidsの繊細な美しさにパワーを付け足していくようなSnow Angel(M7)、オーケストラホールのようなステージのライブ感によってRaphaelleのエレガントさとエモーションをめちゃめちゃに拡張するOcean(M8)...。メロディー力のあるポップスやドラムやギターの熱量を発揮したオルタネイティブロックとして音楽の繊細な部分が表現されてる感じが本当に大好きすぎる。特にロック要素としては、The NationalやLocal Nativesのような空間を切り裂くジャキーン!というアクセント的サウンドがツボすぎてやばい 笑。音楽のセンセーショナルで繊細な部分に対して研ぎ澄まされたインパクトをぶつけるようなところに心がもぎ取れそうなほど感動する。そういったオルタネイティブロック・アートロックで、かつシンセポップ・アートポップ・ドリームポップ...もう私の大好物の塊みたいになってる 笑。

前前前作のNative Speaker(2011)は私の2011年のベストアルバム級に大好きな作品。BraidsよりもBlue HawaiiのTenderness(2017)が最初のRaphaelleのバンドだったのだけど、No One Like Youとか一時期は耳がもぎ取れるレベルでヘビロテしてた 笑。Raphaelleさん本当に最高でございます...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Rolling Blackouts Coastal Fever - "Sideways To New Italy"

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心がときめく真夏のRBCF

 Rolling Blackouts Coastal Feverの音楽がどこまでも無敵でやばいのは、「鉄壁のリズム隊によるキレキレでフォーマルなかっこよさのある最高のロックンロール」なのに、「アコギ・クリーントーンを多用したギターの丁寧な優しさをめちゃめちゃ所有してる」というところ。それはどれだけ無敵かと言うと、人間で例えるなら『容姿端麗でイケメンなのに優しくて性格も完璧』とかそういう感じ 笑。本当にやばくない???笑。最高にテンポよく繰り出されるロックンロールのグルーヴ感がめちゃめちゃかっこよくて、最高にノリノリで楽しくて、それでいながらReal Estate属性のサウンドの気持ちよさも最大に感じられるという...。そんな抜け目のない完璧なかっこよさを体現してまった前作Hope Downs(2018)のフルアルバムデビューから2年、インディーロックシーンで波に乗りまくっているRBCFの新作ということで本当に待望すぎてた 笑。実際に中を開けてみると、1曲目のThe Second of the Firstからアクセル全開でそれをかっ飛ばしていく感じ、今作をずっとずっと前から楽しみに待ってたというのもあって、初聴時には思わずテンションが上がりすぎて叫び出しそうになってた 笑。本当に嬉しすぎてやばい。

今作で特徴的な部分としては、気持ちよすぎる綺麗な青ジャケのデザイン然り、夏のイメージにぴったり合いまくるエネルギッシュでエモーショナルな作風だというところ...!うおーなんて素敵なんだー!笑。エネルギッシュ要素といえば、例えばギターのブラッシングでビートの躍動感を強調するShe's There(M3)やNot Tonight(M8)のアイディアなどがそうなのだけど、全体を通じてメロディーがもっと前に出るように感じさせるミキシングになってたり。また、従来のシンプルだったドラミングも変動パターンがさりげなく追加されてアクティビティを増やしていたり。従来のRBCFのよさだけでなく、夏に合いまくるエネルギッシュでエモーショナルなよさもプラスされてるから本当にめちゃめちゃ心がときめく。さらに今作は、エネルギッシュ・エモーショナルという部分だけでなく、リラックス効果の高いチル要素も多く含んでいるのも本当に夏...笑。冒頭の3連続リードトラック後の一服ソングのようなBeautiful Steven(M4)などが特にそうだけど、日が落ちて涼しくなった夕暮れの時間帯とかに聴きたくなるようなトロける音色があって、今作の夏のイメージを深く印象付けるのによく貢献できてると思う。アルバムのタイトルとかもロマンチックでオシャレだし、本当にめちゃんこ素敵なアルバム。

そんなRBCF特性のフル出力、夏的なイメージを持ったアルバムのコンセプトなど、本当に超最高な作品だと思うのだけど、今作で1番最高なのはやっぱり6曲目のCars in Space...笑。この曲1曲でアルバムの原価が取れると思うくらい、もう本当に力作トラックだと思う 笑。RBCFロックンロールの特性をバリバリ所持したスピード感のあるかっこよさ・楽しさ・気持ちよさが最大に表された上に、ツインギターソロパートを用意した超充実した間奏パート・展開を持ってる長尺ソング。かっこよさの上にかっこよさを重ねていくような倍増効果を持っていて、聴いてると感情が高まりすぎるあまり泣きそうになってしまう 笑。超超超傑作。MVでメンバーたちがノリノリで演奏してる様子もめっちゃお気に入り。今作を通じてRBCFのことが本当にもっと大好きになった。KEXPのライブも観返したりしてるのだけど、司会の人の「Rolling Blackouts Coastal Fever」の発音がかっこよすぎてウケる 笑(特に"Coastal Fever"のとこ)。もう本当に果てしなくラブです...。

RBCFのYoutube公式チャンネルがアップしたStella Donnellyとのコラボも尊すぎて死にそうになってた...。新作出してくれただけで本当に嬉しいのに、なぜそんな最高なことを連続するのか...笑。本当、選曲のセンス、アレンジ、相性のよさが神のレベルだと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

🍎プレイリスト↓

温の「2020年6月ベストアルバム(温)」をApple Musicで

 

 

その他とてもよかったやつ

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Arca - "KiCk i"

Bad Moves - "Untenable"

Bo Ningen - "Sudden Fictions"

GUM - "Out In The World"

James Krivchenia - "A New Found Relaxation"

Mountain Time - "Music for Looking Animals" 

No Age - "Goons Be Gone"

Patricia - "Maxyboy"

Pottery - "Welcom to Bobby's Motel"

Sofie - "Cult Survivor"

Westerman - "Your Hero Is Not Dead"

Yaya Bey - "Madison Tapes"

 

 

 

 

 

 

 

 

「2020年5月ベストアルバムTOP10」感想

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今月は私好みなものが大量でやばかった 笑。私は英語でいう"holy"なものがとにかく大好きなのだけど、そういうやつばっかり。

 

2020年5月にリリースされた新譜、感想をランキングで

(上位5つは全部1位 笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. The 1975 - "Notes On A Conditional Form"

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モチベーションのすごさにびっくり

 カラフルでヘヴンリーな1975サウンドの最高の味わいはもちろん、バリエーションをめちゃめちゃ拡張させた多ジャンルをぎゅうぎゅうに詰め込んだ豊富な内容、大切な人達との思い出などマシュー・ヒーリーの思いを反映させたグッとくるリリック、それに付随するエモーション、それらが80分あるというアルバムのボリューム...もうウルトラスーパー力作だと思う 笑。渾身の出来栄えのような2018年『ネット上の人間関係についての調査』も本当に素敵な作品だった。それから僅か1年強くらいのスパンでまた大作を連続するとか、モチベーションのすごさに本当にびっくり。音のクオリティからしてUKポップスの最高峰クラスのよさを感じる。また今作は、音楽的に1975らしさがよく表れたIf You're Too Shy(M16)などもあれば、バチバチのノイズ・パンクなPeople(M2)、トライバルで情熱的なダブステップ・ハウスまで発展するShiny Collarbone(M15)など、刺激的で力強いナンバーも含んでいるところもあって、エネルギッシュなかっこよさもあるところも魅力的だな思った。

今作で私が最も大好きだったところは、カラフルでヘヴンリーな1975サウンドを存分に利用したテクノ系ポップの楽曲たち。具体的には、心の弱さについて歌ったFrail State of Mind(M4)や、ダンスフロアに着実なYeah I Know(M7)など。私が人生ベスト級に愛してるSubiza(Delorean)を彷彿させるような透明感と清涼感が半端ないディスコパンク性があって本当にツボ...笑。テクノ系ポップというだけで既に大好きなのに、スーパー素敵なサウンドを奏でるThe 1975がそれをしたらもう最強だよね...笑。中でもFrail State of Mindは、楽曲に込められた"I'm sorry~"の思いが音楽の澄み渡った美しさにとても作用してる感じが本当に素晴らしい。閉じこもった空間の中で憂鬱な気持ちを見事に表現したMVもどこまでも美しくて本当に最高だと思う。

先日ツイートしたテンションの推移グラフのやつ、アルバム2周目以降だと全くあてにならなくて笑った 笑。GuysとかMVとセットで鑑賞したらもっともっと最高になるのに、テンション低すぎ...作り直したい...笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Kaitlyn Aurelia Smith - "Mosaic Of Transformation"

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ファンタジーのお祭り

 Bombay Bicycle ClubやM83など、童心がくすぐられるようにワクワクするファンタジーワールドへ誘い出してくれる作品が大大大好きなのだけど、それがちょっと行き過ぎてしまった奇矯じみたエクスペリメンタル全開のファンタジーワールドの作品もめっちゃ大好き 笑。Kaitlyn Aurelia Smisthの今作は、モジュールシンセを生楽器化させたような従来の自然派エクスペリメンタルの作風であるけれど、精神が完全に破壊してしまったような狂心じみた幻覚体験のそれ(The Kid(2017))を所有しつつ、Tim HeckerのKonoyoのような東洋系の宗教観がある神聖な幻覚作用のニュアンスを持っている。危険じみた薬物乱用系の幻覚が黄泉の国や宇宙の真理に接近するようなスピリチュアルな体験を含んでいる感じ。"Mosaic Of Transformation"というアルバムのタイトルや万華鏡のようなジャケットなどもそうなのだけど、そういった作品全体が持つテーマ性に、ドクターストレンジのマルチバーズ(アトラス次元・ミラー次元)のような世界観を連想させるところがあるからもうめちゃくちゃかっこいい...笑。個人的にドクターストレンジが大好きすぎるので、それに通ずる世界観を持ってる今作はとてもツボにハマる。

今作の本当に素晴らしいところは、リスナーに最強のインパクトを与えるような10分超えの大作Expanding Electricity(M9)。まるでメロディーそのものが発狂しているかのような振動エネルギーを持つエクスペリメンタルのメロディー。彼女が創造するスピリチュアルなファンタジーワールドに対しての幻覚的な陶酔がもっともっと大規模に展開されてて本当にやばい。精神は隅々まで破壊され、魂はあの世へトリップし、幻覚的で妄想的なファンタジーワールドの中で妖精たちとお祭りする......例えるならそんな感じ。そのくらいエキサイティングな音楽体験で本当に最高だし、それらのインパクトを高めるようなExpanding Electricityに辿り着くまでのアンビエントのプロセスもシリアス性が高くてとてもよい。

これを機に未聴だったらEuclid(2015)を買いました。ジャケットが私の好みすぎてやばい 笑。何気にEars(2016)も持ってないので買わなければいけない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. White Denim - "World As A Waiting Room"

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マイルドなサイケ

 中音域のネバネバを引き出すようにイコライジングされたマイルドな優しさのあるサイケデリック・ギターに表されているように、最高にノリノリでかっこいいロックンロールをめちゃめちゃ楽しくハッピーにやってる感じが本当にたまらない 笑。荒々しく攻撃的なまでに情熱的なサザンロック~ブルースロックの音楽性が濃いWorkout Holiday(2008)なども本当に最高なのだけど、今作は彼らのそういったバックボーンを失わず、サイケデリック・ローファイのぎらついたかっこよさを持ちながら、マイルドな気持ちよさやそれらの優しいフィーリングを大量に投入したような素敵な作品だと思う。ハピネスが増大するあまり錯乱状態になってしまった人みたいなジャケも最高すぎてやばいのだけど、Vampire Weekendや初期のClap Your Hands Say Yeahにも通ずる天然系のかわいさなどがあったり。かっこよさと気持ちよさのいいとこどり、よりパワフルなハピネスを作り出していて本当に最高だと思う。

そういったかっこよさと気持ちよさのいいとこどりをたっぷり繰り広げてる部分として、アルバム前半のWork(M3)までの3連続トラックが本当にめちゃめちゃ最高...笑。全体としてマイルドでさっぱりとした気持ちいい感触をキープしてるのに、前のめりのドライブがかかったアンサンブルでドラムとギターがぴったりハモるアクセントがあったり、気持ちよさとかっこよさが抜群で本当に超楽しい 笑。特に3曲目のWorkはノリノリの最高潮がいつまでも続くように展開するからニヤニヤが止まらなってもう苦しくなるる。ここまでの流れでテンションがめちゃめちゃに上がる。

そして私がもっとやばいと思うのは、それまでに蓄積したハピネスにもっと確実な愛を添えるようなフィナーレのKing Prospero(M9)。テンションが高まるノリノリなロックンロールの音楽性よりも穏やかなテイストにチェンジしてて、アルバムを通して聴くと蓄積した大量のハピネスのリアリティが想像以上に深まるから思わず泣きそうになってしまう。ブラス系の暖かい音色をバッキングで起用したアイディアが本当に最高すぎると思う。

本作はノリノリすぎてダンシング性が本当に高かったから、夕飯のクッキングタイムで毎日のように聴いてた 笑。(踊りながら自炊するのめちゃめちゃ楽しいからね)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. India Jordan - "For You"

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光と闇が衝突する異空間テクノ

 80~90年代に普及したフレンチタッチ・ディスコによるパラダイスと、ドラムンベースデトロイトテクノなどによるアンダーグラウンドの合体。光と闇が衝突しまくるようなめちゃくちゃ特殊な異空間を生成してる感じにゾクゾクが止まらなくなる。めちゃくちゃかっこよすぎるし本当に最高。もともとフレンチタッチ・ディスコのようなポップ系のダンスミュージックは、ハウスよりも少しルーズなテンポ感のダンス性があって、心の余裕を最大に表したような幸福感に着実な明るい音楽性を持っていると思う。それに対し、ドラムンベースデトロイトテクノなどのハイスピードなダンスミュージックには、我を失うほど没頭する集中力とそのダークネス、冷静沈着な激しい怒りの感情さえも含んだような音楽性。光と闇、喜びと怒りを織り交ぜた特殊性があるから、自分の感情が理解できなくなるくらい刺激的で情熱的な音楽体験だと思う。主に前半の2曲のI'm Just Waiting (Just 4 You)とFor You(M2)がそれなのだけど、ダンスミュージックとしてとても高品質だし、本当に素晴らしい。

また今作は、透明感のあるシャイニーな音像と興奮作用のある高速ビートを両立させた新しいトランスの制作とか、Stellar OM Sourceのように爽快にコンボしていくサウンドの組み立てとか、DJとしての技術が結晶されまってる点でもとても傑作だと思う。マキシマルなリズムと裏打ちビートを複合させたリズムワークのRave City(M4)、ドリーミーな音像で精神的なハイ状態を実現するWestbourne Ave(M5)...、シャイニーな美しさとダンサブルな激しさの両方を取り入れた上で、テクニカルにサウンドがハーモニーされていく感じ。様々なジャンルの特性をオリジナルに吸収しててめちゃすごいし、プロデューサー・コンポーザーとして秀逸なのがめちゃ分かる。

こうしてまた大好きな女性DJが一人増えました...笑。先月のLaurel Haloなんかも本当に大好きだったな。直近だと8月のKelly Lee Owensが楽しみすぎてやばい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Happyness - "Floatr"

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ある一定層の人たちがツボ死するやつ

 "ウルトラスーパーラブリーなElliott Smithボーカルのインディーロック"というチートすぎる音楽なのだけど、90年代に栄えたロックシーンのドストライク世代のようなエスケイピズム性の高い大好きなインディーロックのそれで、なおかつリスナーのことを深く愛してくれるようなハートウォーミングのフィーリングスを音楽にめちゃめちゃ込めてるというやばさ。1曲目からクライマックス級に涙腺を刺激しまくるような感動作のtitle track(M1)から、Elliott Smithにより似せてくるアコースティックスタイルのずるすぎるUndone(M7)、さらには眩しくて暖かい輝きを放つような優しさのあるロックのOuch(Yup)(M9)など、PavementとかDinosaur Jr.とかにも通じるような、永遠に色褪せることなく心に響き続ける、私たちにとって憧れの90sロックの音楽性がめちゃめちゃ濃厚なのが本当にやばい。本当、ある一定層の人たちがツボにハマりすぎて発狂しそうになってしまうのが手に取るように想像できる 笑。そのくらいドストレートなほど90sインディーロックのエッセンスが超詰まってると思う。

今作のよさは、アルバムの中で傑作トラックをいくつも含んでいるというところ。ただでさえtitle track、Undone、Ouch(Yup)などのめちゃ最高なナンバーを兼ね備えているのに、ラストを飾るSeeing Eye Dog(M11)もとびきりの傑作で本当にやばい。強い気持ちが反映されたようなノイジーなギターのエモーション、Elliot Smithのボーカル特性によるエモーション、そして心が温まりまくる無限の美しさを持ったようなメインのパッセージ...。「あれだけ最高なトラックらを用意しといて、ラストがそれ以上のクオリティかよ!?」とツッコミを入れたくなる 笑。本当に美しくてやばいし、全体として強トラックの取り揃えがとてもやばいアルバム。

今作は、先々月リリースされたJunk Drawerの作品と対になるような作品に感じる。Junk Drawerが陰で、こちらが陽。どちらもYo La Tengo的な夢想的センスを持った90s系インディー作品だと思う。(どちらも最高ですね。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Perfume Genius - "Set My Heart on Fire Immediately"

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革命の上に革命

 私にとってPerfume Geniusは、まるでルネサンスロマン主義のような古典的な芸術様式のイズムを体得したような革新的な性質を所持したアーティストだと思ってる。今作はそういった革新的な性質を、自分の大好きな"オルタネイティブロック"としてフォーマット化・再定義して、そのスタイルの上でオリジナリティの半端ない新ジャンルを確立したような音楽性だと思うのだけど、『古典的芸術のイズム(美しい)×革新的な音楽性(すごい)×ロック(大好き)』というように、大好きのメタ構造みたいなものができあがっててめちゃめちゃびっくりした 笑。ローマやギリシャ時代にルーツを持つような美術・アートの高貴なロマンスを"ロック"で表現するというか、ジェントルで華やかなクラシック感にロートーンでノイジーなギターをブレンドしたりする技術があまりにも天才すぎてやばい。それにイメージ的には、"美術・アート"と"音楽"の枠を超越したようなニュータイプの芸術感というのもあって、鑑賞するときに身体中の全ての感覚を研ぎ澄まして堪能したくなるような、鑑賞的価値がめちゃくちゃ高い作品だと思う。初めて聴いたときはちょっと理解が追い付かなかったくらい、自分の感受性が拡張されるような多重なよさを含んだ音楽性。天才すぎて本当に興奮する。

今作で神がかっている最強で最高のやばやばトラックは、なんといっても6曲目の『On The Floor』、、、もう本当に最高すぎる。高貴で果てしなく美しいPerfume Geniusの音楽に、クリーントーンの二パニパしたかわいさを強調したカッティングギターのバッキングを組み合わせるという、、、ねぇ、何それ????笑。どんな脳みその回路になってたらそんな奇怪なアイディア思いつくの?笑。しかもそれが後半で光沢のある瑞々しい音色に変色してたりとかが本当にやばい。Perfume Geniusの革新的な芸術性が、奇抜なアイディアでさらに革新的になった感じ。アイディアとしてめちゃめちゃ新しいしくてどこまでも素晴らしいし、本当に美しくてたまらない。

前作No Shape(2017)は、今作と同様のルネサンスロマン主義のような古典美術のイズムを持った大規模な音響エレクトロニカの音楽性があったと思う。(こちらもスーパー傑作。)私の場合、前作のそのエレクトロニカの作風の印象がめちゃめちゃ濃かったからこそ、ロックのキャラクターでまた新しく焼き直されたPurfume Geniusのそのセンスにまたさらに感動した。サブスクにはないフォークスタイルのPut Your Back N 2 It(2012)も触る程度に聴いたことがあるのだけど、もう本当、Perfume Geniusって引き出しのバリエーションどうなってるの??笑。すごすぎない?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Eve Owen - "Don't Let The Ink Dry"

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「純粋な感情の全てをずっと大切したい」

 西洋のスピリチュアルな宗教観を感じさせるような聖なるオルタネイティブロックから、純潔な思いを大事に保存したような祈りのベッドルームフォークまで、Eve Owenという人物のパーソナリティをとても多面的に表した作品だと思うのだけど、宗教観のある神聖な魂、感傷的なエモーション、純潔なるありのままの感情、それらの無垢な人間味など、作品を構成してる一つ一つのパーツが全部がウルトラハイパー級に大好きすぎてやばい。20歳の彼女がこれまでに貯め込んだアイディアのコレクションを感じさせるような様々なパターンの曲を含んだ作品なのだけど、最高にエモーショナルでソウルフルな美しいソングラインを根幹部分に持っていて、どの曲も本当にめちゃくちゃ素晴らしい。ピアノを多用してヘヴンリーなエモーションをダイナミックに拡張したフォークテイストのShe Says(M7)などもあれば、大規模な疾風を発生させるように迫力のある激しいロックのMother(M3)など。ソングラインという点だと、持ち前のメロディー力を発揮しためちゃめちゃ印象に残るパワーフレーズを含んだSo Still for You(M9)なども。まるで全曲がリードトラックであるかのようなシングル集みたいな作品になってると思う。

今作がマジで死ぬほどにやばいのは、頭の中で様々な色が混ざり合っている状態を示したジャケットと、「それらの色をいつまでも新鮮なまま大事にしたい」という意味が込められたようなアルバムのタイトルで表されている作品全体のコンセプト。これが本当に本当に死ぬほどツボでやばい...。ロックからフォークまで統一性のない自由なスタイルの今作には、宗教観のある神聖な魂を体現したような大人の側面もあれば、初々しいデビュー作としての純粋無垢なあどけなさの部分も持ってると思う。それはまるで思春期中のある種の通過点で、Eve Owenがこれからもっと大人になっていくことを示唆してるようにも感じる。だからこそ、Eve Owenのエモーショナルでソウルフルな美しい祈りの歌が、「過去の思い出やそれらの純粋な感情の全てを大切にとっておきたい」というような作品のコンセプトと直結する部分がある。それはもっというのであれば、A Lone Swan(M12)の世界観で示されてるような、"日常で感じる全て瞬間をいつまでも美しく愛おしく感じていたい"ということ。もう本当にやばすきて目ん玉がいくつあっても足りないくらい泣いてしまう。私が憧れてる理想の人生観と死ぬほどマッチしすぎててマジでやばい。もう共感しすぎて身体が消滅しそうになる。

他にも、宗教観の気高く立派な尊厳を体現したようなアルバム1発目のTudor(M1)や、残響を多用したマリンバの音がやばいほど美しいFor Redemption(M5)など、初めからずっとずっと最高。本当にやばすぎたからお父さん(Clive Owen)の映画も主要なやつは全部観た 笑。(クローサー、トゥモローワールド、インサイドマン、シューテムアップ、ラストナイツ、キラーエリートなど。)インサイドマンが一番好きなClive Owen 笑。まだ観てないルール・オブ・デス(Clive Owenのヒットのきっかけ)も絶対観る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Erik Hall - "Reich: Music For 18 Musicians"

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神の存在をリアルに感じるということ

 途切れることなく流れ超自然的な世界を創造し続けるミニマル、鑑賞者に何かを訴える小鳥のさえずりのような木管系楽器のメロディー、それらの謎に満ちた神秘的な世界の遠く奥で静かにゆっくりと動く低音の巨大な生命体...。まるで人類未踏の神秘的な森林地に迷い込んで誰も知らない未知の生物達と遭遇していくような、想像が果てしなく掻き立てられる奥行があると思う。またそれは、誰にも邪魔されない音楽の精神統一の世界の中で、この世の真理やありのままの自分と向き合うような瞑想的な体験も含んでると思う。私的には特に、音楽の超自然的な要素を司る巨大な低音に対して、深呼吸の概念を実体化したようなこの上ないほど極大なリラクゼーションのリアルを堪能して、死んじゃうじゃないかなと思うくらい感動した。Section Ⅸあたりでは涙腺が壊れて涙が止まらなくなってしまって、5分間以上ずっと泣きっぱなしだった。そのくらいやばい威力がある、とてつもなく素晴らしい作品。

巨匠Steve Reichが1978年にリリースした「Music For 18 Musicians」のエレクトロニカ版として制作された今作は、オーケストレーションが持つ多人数演奏形態のニュアンスが一切なくなって、センシティブな孤独の感覚とそれによる虚しく切ないエモーションをより掻き立てたような味わいを持っている。それらの強烈な感覚・エモーションをずっと抱えながら50分間のミニマルを展開し、超自然的な世界の無限の彼方までリスナーを運んでしまうのが本当にやばい。もともとミニマル・ミュージックには音が永遠に体内へ流れ込んでくるような特性があるけど、それはつまり、音楽が鳴らされる向こう側の世界へ自分が相対的にどんどん入り込んでいくということ。孤独の感覚も神秘的なフィーリングも瞑想的な体験も、それら全てが誰の手も届かないほどまで奥深さを持ち始めるから本当に凄まじい、本当にやばい。

「誰かに愛されたい」、「誰かに自分を認めてほしい」、もしそれらの願いを叶えてくれるような、ありのままの自分を受け止めてくれる存在がいるのなら、尚且つそれを心から信じることができるのなら、自分はどれだけ救われ、どれだけ幸せなのだろう。宗教・信仰には、それらを実現するため世界最強の力があると思う。無力でちっぽけな自分でさえも承認してくれる絶対的な存在。心の底から安心できるものを与えてくれるような断固確実たるもの。Erik Hallが今作で実体化した超自然的な世界とか、真実に永遠に辿り着けないような神秘性とか、深呼吸の概念を実体化したような巨大な低音のそれらは、人間の感性の範疇を超えたメタ次元的なもの、もしくは宗教で信仰されているような絶対的な存在のそれに感じられる。そういったものが、音楽によって確実にリアル化・実体化するということ。言い換えるのであれば、"神の存在をリアルに感じる"ということ。ちょっと頭おかしめなことを言ってるけど、私におけるErik Hallの今作はそういうことなんです、、、笑。低音の重々しさが本当に素晴らしいし、永遠に理解できない無限性が本当に美しい。だから死ぬほどにツボで、死ぬほどにやばくて、死ぬほどに感動する。

他にも、6拍子の組み立てのバリエーションとか、ミニマルによるシューゲイザー的音楽性の実現とか、セクションごとで微妙に変化するメロディーに込められた内容の考察とか、入口と出口に設置されたPulsesによる音楽のストーリ性の構築とか、なんかもう最高なところが鬼のように詰め込まれてて。。。本当に頭おかしいくらい好き。。。笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Moses Sumney - "græ"

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レベル100の状態にレベル100のアイテムを装備しまくる感じ

 本作が本当に頭がおかしいほど素晴らしいのは、「壮大なフォークオーケストラのバッキング」、「ネオソウル・ジャズ系のピアノ」、「音楽を神秘化させるエクスペリメンタルのセンス」など、一つ一つが半端なく素晴らしい効力を持ったアイテムらを、魂が壊れてしまいそうになるくらい心に響くMoses Sumneyの強大なエモーションに全部装備しているというところ。これがもう本当にめちゃんこハイパーやばすぎると思う。フォーク形態のオーケストレーションによる素朴で暖かい人間味を基調としながらも、ネオソウル・ジャズ系のピアノによるロマンチックな美しさや、音響エレクトロニカによる非現実的で神秘的なデザインを追加した感じ、ただでさえMoses Sumneyのボーカルそのものだけで十分すぎるほど圧倒的な感動を作り出せるのに、それらの美しいエモーションやシンパシーの伝達をさらにさらにスペシャルなものとして完成させるというやばさ...。Moses Sumneyの内面に秘めた思いがどれだけ強力なものであるか、ということをビシビシ感じるからとても激しく感動する。2枚組構成のパート1とパート2、それぞれ最強のトラックを所有していて本当に素晴らしい。

本作で目ん玉がズキズキするくらい泣きまくってしまう今年ベストソング第1位級の曲は、パート1の9曲目に収録されてるColouour。冒頭のサックスとピアノの完璧なまでに美しいハーモニー、思い返すだけで泣いてしまうレベルのやばさなのだけど、そこにMoses Sumneyの聖なる祈りや深い慈悲が反映されているようなところに涙が止まらなくなる。「Why don't you wear some color」という歌のパートが入ったとき、シンパシーが心臓にドスンと直撃してさらに一気に泣く。本当に大好きだから3分という短さが残念すぎる...笑。欲求が満たされるまで何度でもリピートしたい。

そしてパート1の12曲目のPollyもそう。年間ベストソングの1位クラスが一つの作品に2曲もあるということ、これがどれだけやばいか...笑。Moses Sumneyが自身の傷ついた心を治癒しようとするような願いのリアリティが半端ないほど感じられるようなメロディー、素朴でありのままの思いを強調したような飾り気のないシンプルなアコースティックスタイルが本当によく合う。心を込めて歌うことによって苦しみを解放するソウル・ミュージックの本質がとても詰まっている曲なので、これからめちゃくちゃお世話になると思う。

今作はグレーネスという白と黒の中間的な無彩色をコンセプトにしたということだけど、4位のEve Owenと同様、感情・色をテーマにしてる作品という点でここに関してもツボみが深い...笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Owen Pallett - "Island"

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神業

 Owen Pallettの音楽ことが本当に本当に大好きでたまらないのは、血の通ったカントリーポップ(ハート)と、厳格で神々しい交響曲(スピリット)の音楽性を融合させて、汚れなき純粋な命(ライフ)を創造しているということ。そしてさらにOwenの音楽には、クラシック音楽のスタイルを十分に吸収したストーリー・ドラマ性のある映画音楽的なニュアンスも持っている。Owenの音楽が本当に本当にやばいのは、そういった音楽のストーリー・ドラマに、その命を宿すというところ。本当に神業だと思う。メロディーに宿るその命が、アルバムの中で、曲の中で、途切れることなく流れ続ける。そしてそこにはストーリーがある。だから、音楽の一瞬一瞬が本当にやばくて、ずっと美しくて、本当に素晴らしくてたまらない。

一般的に"命"とは、生物的な観点でいう心臓・ハートに相当するものと、人知を超えた非肉体的である霊魂に相当するようなスピリット(ソウル)の両方があると思う。Owen Pallettの場合、木管やアコースティック系の楽器を多用した可愛くて愛おしいキャラクターによる血の通った暖かいハートの感覚がある。そしてそれとは別に、ものすごく厳格なストリングスの迫力が作り出す絶対的な力を手に入れたような高潔で神々しさの強いスピリットもある。暖かいハートと神々しいスピリット、肉体と非肉体の両方を兼ね備えたありのままの純潔な命。Owenの作り出す音楽やメロディーが私にとって完璧にツボな理由はそれ。暖かい人間味と神聖なニュアンスのダブル。それら二つによって音が鳴らされる度に命が宿るというのが本当にやばい。本作も本当にめちゃくちゃ素晴らしくて、ぶっちぎり年間ベスト、★×50個レベルです 笑。

今作のウルトラ最高ポイントは、冒頭の「- - -> (i)(M1)」が提示するように、音楽が持つ光と闇の両極をグッと深くして、静寂を際立たせるような深刻性、さらにはヘビーな衝撃波を音楽に持たせているというところ。深い悲しみの静寂の中でも音が微かに輝くThe Sound of The Engines(M5)や、地響きのような力強い低音によってリスナーの負の感情をドバドバと吐き出す作用を持ってるA Bloody Morning(M9)など。そのOwenの音楽のストーリーに深く入り込んだ私は、深刻性の高いインパクトのある感情体験により苦しみから解放され、Owenが込めた祈りに深く共感し、ありのままの現実を受け入れるために必要な強さを手に入れることができる。もう本当、Owen Pallettのことが大好きで大好きでたまらない。今作も本当にめちゃめちゃ心に響いた。

A Bloody MorningのMVもめちゃめちゃよかった。今作はサプライズリリースということだけど、フィジカル出たら電光石火で買う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

🍎プレイリスト🍎↓

温の「2020年度5月ベストアルバム(温)」をApple Musicで

 

来月はRolling Blackouts C.F.が楽しみすぎてやばい

 

 

 ★5月8日にリリースされたアルバムの感想・ランキング★

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「2020年4月ベストアルバムTOP10」感想

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今月もThe StrokesFiona Appleなど、ビッグな話題作があってめちゃんこ盛り上がった月だったなと思う。取り上げたいアルバムが10枚から溢れてしまったので、ベストソングTOP10枠もおまけで用意した。私的にはBraidsやThe 1975もスーパー楽しみにしていたのだけど、お楽しみはまた今度...。

2020年4月リリースの新譜のベストアルバムのTOP10、感想をランキングで

(上位2つは両方1位!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. EOB - "Earth"

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Radioheadのスピンオフバンド

 Ed O'brienのソロ、数々の大大大名作を生み出しまくったRadioheadの今までのキャリアを持ってるというだけあって、UKオルタナロックのめちゃめちゃ"いい音"がいっぱい鳴ってて最高...笑。それ以上に、カントリー・フォークやディスコパンクへもリンクするような多様性のある実験的なロックも本当に楽しい。正直に言ってしまうと、Colin Greenwood(Radioheadのベーシストでおなじみ)が参加してたり、Portisheadのギタリスト(Adrian Utley)や、その他キャリアのあるアーティストとコラボした "Radioheadのスピンオフバンドのアルバム"というオーラがあるので、その時点で無条件に高評価したくなる 笑。実際に中を開いてみると、00年代のガレージ感を取り入れたUKロックエッセンスの濃いShangri-La(M1)、コスミックなエレクトロニックサウンドが本当に美しいディスコパンクのBrazil(M2)、ドリーミーなフォークの中でブーミーなギターも混ぜちゃうMass(M5)、メロディーからグルーヴ感までRadiohead感がすごくてニヤニヤしちゃうBanksters(M6)、自由なアンサンブルが最高に魅力的なOlympik(M8)......などなど、よさ密度がめちゃくちゃ高かった 笑。私的には、Dave Grohl, Josh Homme & Trent ReznorのMantraのような、シンプルなバンドアンサンブルの持ち味が存分に表れたおもしろさを感じたのだけど、じっくりとハマっていくような中毒性があってとても大好き。

特にお気に入りなのが、BrazilとOlympik。ずっと聴いてられるようなクセのあるドラミングが本当にツボるし、怪しげな輝きを放つサウンドとかがネオンライトみたいなジャケットとよくマッチしてる感じも本当に最高。先月リリースのUltraístaもそうだけど、Radioheadに携わる人のドラムがとても大好きなんだと再認識した 笑

これを機にRadioheadのメンバーをググってたら検索候補のところに「Radiohead エド いらない」とか出てきた 笑。それはかわいそすぎる 笑(Earthめっちゃよかったぞ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Laurel Halo - "Possessed"

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リアリティの高い感情表現というレベルアップ

 フリージャズ的アプローチを取り入れた実験的で最高なハウス・エレポップの傑作Dust(2017)、これまでに築いたエクスペリメンタルなスキルをアンビエントに適応させまくったRaw Silk Uncut Wood(2018)、それらの経験でフロア・オリエンテッドなテクノ・ハウスの能力を爆発させたDJ-Kicksシリーズ(2019)...進化が止まらないスーパールーキーのエクスペリメンタル作曲家のネクストステージは、"感情表現のリアリティをとことん突き詰めた映画音楽"...!!もう本当に最高すぎる 笑。膨大な量のバリエーションを持つ彼女の表現技術が、絶望的な深い悲しみの感情に的確に応用されてる感じ、彼女のエクスペリメンタルな迫力で感情の深刻性が増大されまくっているのもあり、とても最高なことになってると思う。

今作で最も素晴らしいと思うところは、人間的な感情をより際立たせるようなピアノの配置センス。全体を通してみるとRaw Silk Uncut Woodのアンビエントまっしぐらな1曲目や6曲目に近い作風があって、あたり一面に立ち込める冷たい感触の濃霧をモクモク発生させている感じがあるのだけど、そこに亡霊のごとく出現するピアノの存在感が本当に美しい。ピアノという点でいうと、アルバムの節々に置かれてるめちゃめちゃクラシックなRome Theme(M2, M6, M9)もとても特徴的。深く立ち込める薄ぼんやりとした世界観の中で、背筋が凍るような怖さを与えるようなインパクトにもなっていて本当に素晴らしい。こういう部分からも、今作でLaurel Haloが完全に映画音楽家として確実にプロになったのだと感じる 笑。Trent ReznorやThom Yorkeのように、今後もいっぱい活躍してほしい。

このアルバムは、2018年にオランダのロッテルダム国際映画祭(ギルティが観客賞受賞に選ばれたやつ)の最優秀作品賞(Hivos Tiger Award)の候補になったPossessedという映画のサウンドトラック。日本では違法な手段でしか見れないっぽいのだけど、トレーラー見ただけでもかなりおもしろそう。Laurel Halo関係なしにめちゃ観たい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Kluster B - "B"

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エクスペリメンタルなのにめちゃめちゃロック!

 サイケデリック、ドリームポップ、シューゲイザー、もっというとアートロックへのアクセスもあったりして、天国から地獄まで様々なヴィジョンを見せてくれるようなめちゃくちゃロマンの溢れたエクスペリメンタル。それでいながら、ギターリフとか含めた基本的なロックの美味しさを凝縮した"王道オルタナロック"の主軸を持っているというところが本当に最高 笑。オルタナロックの新たな可能性を模索したような冒険性や実験性があって、ロックファンにとても突き刺さるものがあると思う。もともとオルタナロックっていうジャンルって超幅広くて、色々なタイプの作家性を持ったユニークなバンドがめちゃくちゃあると思うのだけど、本作はエクスペリメンタルで特異な作風を持ちながらも "めちゃめちゃロックしてる"というところが本当にたまらない。様々なジャンルを巡りながらも最終的に私たちの大大大好きなロックに帰還する感じ。インテリジェンスなかっこよさもあるし、新時代のバンドとしてもめっちゃ気に入ってる 笑。

私的には、初期のHundred Watersみたいな遊び心が溢れたサウンドメイキングとか、シンプルにぶれないモダンロックっぽさとか、大好きなところが本当にたくさんあるのだけど、何よりやっぱり、心霊的なニュアンスさえも生み出してしまうように美しいLinnea Hallのボーカルが本当に素晴らしい。PortisheadのBeth Gibbonsのような深い悲しみを背負ったものを感じるのだけど、Unicorn(M3)の後半の部分とか、曲によってはボーカルがやばいほどのよさを発揮してると思う。一般的なロックには出せない幻覚的なヴィジョンの生成に貢献していて本当に素晴らしい。

今作を通じてオルタナロックの定義みたいなものを改めて考えたのだけど、私的には"歌うドラム"なんかはオルタナロックの大きな特徴だと思う。例えるならBroken Social SceneDeath Cab For Cutie(Jason McGerr)、ちょっと外れるとGang Gang Danceとかも。そんなドラミングという点でいうと本作9曲目のWildなんかがめちゃくちゃ最高でやばい 笑。ちなみにWildは去年にシングルカットでリリースされているのだけど、キツネジャケがマジで神。(→これ)精神崩壊するくらい大好き。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Jerskin Fendrix - "Winterreise"

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まるで多重人格のサイコパス

 数回聴いても作品のキャラクターが全く把握できないほどカオスで異常すぎなエクスペリメンタル・ポップなのだけど、予期できないタイミングで急に心臓を掴まれるような爆発力のある感動があって本当に素晴らしい。EDM・トランスのようなハイテンションなエレクトロニカ(Onigiri(M2))を繰り出したかと思ったら暗黒にまみれたノイズ・スロウコア(Last Night in New York(M3))に転移したり、そこから気持ちの悪いダーク・ポップになったと思ったら真心を込めたシリアスな音楽を急に展開しだしたり...まるで多重人格のサイコパスなのかと思うくらい、一貫性の見えない恐ろしさとゾクゾク感がある。それでも、音楽の魔法性を高めるように伴奏の細部まで凝った音作りをしていたり、ふざけ倒すような音楽性とは正反対に真面目な音楽性もあったりして、油断してると感動しすぎてやばくなる 笑。私的には、音楽家としてかなりマニアックな領域に踏み込んだ"桁違いのオタク"という感じがあるからめちゃくちゃ好感が持てる 笑。

そして今作で私が最も心臓を掴まれるようにびっくりしたパートは、I'll Wait For It(M8)のサンプリング曲。ちょっとね...これは本当にせこすぎてズルすぎる...笑。初めて聴いたときは「え?!えぇ?!?!」みたいな驚きと、「こんな曲サンプリングされたら絶対に最高になるやん!!」みたいな怒りがこみ上げてきた 笑。(→ 50秒あたりから。)私達の人生に多大な影響を与えた人類屈指のあの大名作から、数あるテーマ曲がある内のここの部分を持ってくるなんて...泣(→ 答え(ネタバレ))。全体を通して聴いたときはあまりの不意打ちにめっちゃ泣きそうになった。最近だと(Sandy) Alex Gのインスタライブの予告ツイートでこのシリーズを見かけたけど、やっぱり海外の人もみんな大好きなんだよな(最高です)。

毎月いつもベストアルバムのブログのあとがきでプレイリストを作ってるけど、このアルバムに関してはどの曲を抜粋するかめっちゃ悩んだ 笑。どの曲も最高なのだけど、異常じみたポップを選ぶか、ダークで不気味なやつにするか、はたまた問題作のI'll Wait For Itにするか。このアルバムを初めて聴ける人が本当に羨ましい 笑。(I'll Wait For Itなんか尚更。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Empress Of - "I'm Your Empress Of"

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人間らしさの美しいコーディネート

 民族音楽系のR&Bで表現される情熱的でワイルドな人間性と、現代的なエレポップによるカラフルで綺麗な音楽デザインの両立。人間的なヴァイタリティを鮮やかに美しくコーディネートしたような感じがあって本当にたまらない。それはまるで、原始的でありのままの人間らしさを尊重したようなものにも感じられる。R&B・ソウル、エレポップとしても今までにないニュータイプな音楽に仕上がっているし、そういった音楽を容易く実現してしまったEmpress OfことLorely Rodriguezの存在感が本当にかっこいい...笑。ジャケットも含めて作品全体の彼女のスペシャルな魅力をたっぷり感じられる傑作だと思う。

今作はR&B・ソウル、エレポップに加え、グルーヴィーなハウスとしての音楽性も濃厚なのが特徴的。本作のリードトラックであるLove Is A Drug(M4)やGive Me Another Chance(M7)とかがそう。民族音楽R&Bの効果によって一般的なハウス・テクノよりも情熱的なダンスフロアを演出していて、心が熱くなるようなテンションの上がり方があるから本当に素晴らしい。

そんな充実した今作の私的ハイライトのナンバーが、3曲目のVoid。これが本当に最高。原始的な躍動とエレクトロニカならではのカラフルな装飾が、Empress Ofの音楽のソウルフルな部分にめちゃくちゃ作用してる感じ。今までに全く出会ったことのなかった"情熱的な幻想"というようなものを創造していて、心奪われるようめちゃめちゃ感動した。Lorely Rodriguezのボーカルがどこまでも美しいし、ダンサブルな感じも本当にかっこいい。

今作でみるみるEmpress Ofにハマり、過去作も改めて聴いてみたらめちゃめちゃよくてフィジカルが欲しくなった。特に2015年作のMeって本当に秀逸。今めっちゃ欲しい旧作アルバムの一つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Laura Marling - "Song For Our Daughter"

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フォークSSWとしての真骨頂

 飾り気のない正統派カントリー・フォークによるオーガニックな温もり、心に確実な安定を与えるようなアダルトな優しさ、その背後に静かに潜む儚い美しさ、それらによるディープなエモーション、そしてリスナーの心に響きまくる至高の歌...。世界観、感触、メロディー、どの部分にしても極上の深みがあって本当に素晴らしい。まるで心の傷を癒すような暖かい日差しと自然的で美しいヴィジョンを伴うようなそれは、Laura Marlingのとてもハイレベルな感情密度を実現していると思う。前作Semper Femina(2017)はオルタネイティブ・フォークによる楽曲構造の独自のアレンジがあったけど、正統派なフォークのスタイルで挑んだ今作は、Laura MarlingというSSWとしての真骨頂を最大に発揮したような傑作だと思う。2019年ベストフォークアルバムであるRosie CarneyのBare(マイベストフォーク作品)に匹敵するほど完成度を感じる。

私的には、Only the Strong(M4)後からのアルバム後半パートが特に大好き。ピアノがそっと残されるような静寂からエモーションを輝かせていくBlow By Blow(M5)や、強大な愛を高らかに歌うパッセージのあるThe End of the Affair(M8)など、心に沁みまくってめちゃくちゃ泣きそうになる。本当、リスナーに感銘を与える歌唱スキルが高すぎる。中でも今作のタイトルトラックであるSong For Our Doughter(M6)は、彼女の至高の歌と組み合わせるストリングスの活かし方が完璧すぎて本当にやばい。鳥肌が立ちすぎて皮膚がおかしくなるレベルで感動した。

今作は本来なら夏の時期だったところを4月に前倒しになったリリースということだけど、このアルバムの夏のイメージを想像したらますますエモーションが深まった。フォークならではのオーガニックな温もりがあるし、夏の時期にもウルトラぴったりな作品だと思う。(絶対聴く)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Yves Tumor - "Heaven To A Tortured Mind"

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ブルージーでスモーキーな魅力

 "エクスペリメンタルなサッドコア"というような画期的な大傑作の前作Safe In The Hands Of Love(2018)から一変、今作は70年代のソウルミュージックサイケデリック・ロックのハイクオリティなリバイバルを体現した作風に仕上がってると思うのだけど、ブルージーでスモーキーな魅力が本当にやばすぎてやばい...笑。色気とか臭いとか、当時の感覚が100%再現されてしまうような最上クラスのリアリティ。よさの系統としては、過剰なローファイによって昔ながらの非現代的なよさを最大に表現したUnknown Mortal Orchestraと同じ感じがする。そういった古風なセンスだけでなく、最新の音響による高精度なサウンドの質感を取り入れたエクスペリメンタルとしてのオリジナリティも健在...。フォロワさんがいってた"ぐわんぐわん"って表現が大好きなのだけど、アブノーマルな迫力に取り憑かれるような強烈な音楽体験ができるから本当に素晴らしいと思う。

新譜を追いかけるようになってから、LoticAngel-Hoなどといった恐ろしいほどに奇才なカリスマアーティストを目にするようになったのだけど、その中でも今作を聴いてYves Tumorのことが本当に大好きになった。前衛的な手段でカリスマ性を高めるのではなく、古き時代のロックとかを吸収して発展させながらカリスマ性を高める感じ。今まで誰も聞いたことがないような新しいロックサウンドを鳴らすのって本当にかっこいいと思う。今作だと特にKerosene!(M4)のギターソロワークとかめちゃくちゃ大好きで泣きそうになった 笑。(というかもともと、ブラックミュージック×ロックのスタイルのTV On The Radioとか、そういうのめっちゃ大好きだから...笑。)

今作の70年代感のめちゃ強い"ブルージーでスモーキーな魅力"は本当にやばかった。小さい頃、レコードまみれのタバコ臭い叔父さんの部屋で流れてたソウルミュージックサイケデリック・ロックのあの感じが本当にそのまま。前作も最高だったけど、ひょっとしたら今作のほうが好きかもしれない(そのくらい)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Junk Drawer - "Ready for the House"

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悲しくて眠れない夜はロックで夢を描く

 Yo La Tengoのような夢想的で最高に心地よいセンスを含んだオルタナ~インディーロックなのだけど、心を引き裂くような強烈なハートブレイクのサッドネスをものすごく大量に含んでいるという点で、他のインディーロックを凌駕するくらいむちゃくちゃ素晴らしい作品に仕上がってると思う。具体的には、清楚で綺麗な響きを洗練したクリーントーンのギターが儚く揺れるYears of the Sofa(M2)や、心が冷えてしまうような身を切るつらさがよく表現されたMumble Days(M4)などがそう。行き場のない悲しみを抱えながら夜空の星を眺めるように、美しくも死にたくなってしまうほど切ないキラキラしたエモーションが満天に繰り広げられていると思う。それはまるで、"悲しくて眠れない夜にロックで壮大な夢を描く"というような音楽性にも感じられる。ロックにはロックを奏でるためのトリガーとなるエモーションが必ずあると思うのだけど、Junk Drawerの場合、抜け出すことができない深い悲しみに沈んでしまい、どうすることもできなくなって、もがき苦しむようにして生まれたロックのように感じる。ロックの荒々しいエネルギーによって心にぽっかり穴が開いてしまうような虚無感がより引き立てられていて、胸がひどく痛むような圧倒的なダメージの感動があるから本当に本当にたまらない。

今作には00年代より前のインディーロックシーンに通ずるような、昔ながらのナチュラルなロックのサウンドスケープがあるところがめちゃめちゃ最高だと思う。途中で唐突に加速していくWhat I've Learned / What I'm Learning(M1)や、ポストロック形式のような自由なスタイルのあるInfj(M5)など。リードトラックであるYears of the SofaやMumble Daysのようなハートブレイクなテーマ性以前に、ロックとしてのクオリティがそもそもに高い。なんならWhat I'm Leavingだけを聴いたら、「ただただシンプルに良質なロック・パンク」という全く違う作品に感じると思う 笑(私も入口はそうだった...!)。ロック的にもテーマ的にも、"大好き"がめちゃめちゃ詰まっているとても愛おしいアルバム。

あと今作はMarnie SternのST(2010)と同じような手書きの部屋ジャケもものすごくお気に入り。色合いと言い緩さのバランスと言い、切ないエモーションがよく掻き立てられる最高のジャケだと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Lorenzo Senni - "Scacco Matto"

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情熱的すぎて死にかけるアート・レイヴ

 寿命が縮まりそうになるほど危険で激ヤバな興奮と、そこから一気にリスナーを揺さぶり意のままにコントロールしてしまうような巧みすぎるアルバムのシーケンス。理性がぶち壊れるほど脳みそがギタギタにされ、Lorenzo Senniの催眠術にかかり、情熱的で美しいアート・レイヴの波に飲み込まれて、しばらく何もできなるくらい感動しまくってやばくなる。とにかく恐ろしく完璧なまでにリスナーの感情のノせ方がうますぎる。精神がコテンパンに打ち砕かれて訳分かんなくなるくらい本当に凄まじい音楽体験だと思う。リリースの一週間前から先行曲を頭おかしくなるくらいリピートしてたのだけど、何度も何度も死にそうになるほどの興奮を得て体中の血管がバーストしそうになってた。本当、初めて聴いたときはめちゃくちゃ汗だくだくになって消費カロリーが半端なかったからね...笑。

今作の本当に本当に素晴らしいところは、アルバム4曲目のCanone Infinitoまで絶対的にリスナーのモチベーションを確保するような、ありえないくらい絶大な燃料エネルギーを生成する冒頭のDiscipline of Enthusiasm。この曲が本当にやばい。半端ないほど激しい曲なのだけれど、それは激化した感情やハードコアのような音楽性によるものではなく、"ただの音楽的な工夫"によるもの...!!ここで思わず叫びそうになる。「スマートすぎて!!やばいーー!!」笑。具体的には、17拍子という意味の分からない不規則なリズムのビートによる身体の破壊作用。サウンドインパクト自体も激しいのだけれど、サウンドの無い休符のパワーも本当に凄まじい。その17拍子のセクションを3分近く続け、とにかくリスナーの感情を活性化させまくる。体内にありえないほどの情熱が蓄積するような、とてつもなくエキサイティングすぎなナンバーだと思う。

それにより獲得したエネルギーを持って展開されるその後のシーケンスも本当に素晴らしい。緊張感が発散していくような燃えるダンスとメロディーを体現したようなMove In Silence(M3)や、夕闇に溶け込んでいくような美しさのあるCanone Infinitoなど、1曲目の圧倒的な興奮を引き継いで到達するオリジナリティの濃い世界観が本当にたまらない。そこには、イタリアやスペインなどといった南ヨーロッパ風の情熱的なヴィジョンがあると思う。(実際Lorenzoはイタリアのアーティストだし。)ラストのTHINK BIG(M8)のような子供みたいにかわいらしいフィーリングも本当に素敵で楽しい。

リリース一週間前から超聴いてたけど、これ絶対BleepのAlbum Of The Week(ロード長いけど→ここになるなってめっちゃ思ってたら、やっぱりそうだった 笑。Bleepさん最高に分かってらっしゃる...笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Trace Mountains - "Lost In The City"

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完全無欠の最高すぎる相乗効果

 Real EstateやThe Sea And Cakeのような優しさの天然成分が大量に配合されているインディーロック、まずその段階で大好きポイントを100億ポイントくらい稼いでる 笑。しかもその上で、宅録インディーポップ感のあるほのぼの系の和み要素とか、地味にシューゲイザーにまで発展しちゃうほどの轟音ギターなど、気持ちよさを高めまくる最高なアイディアが盛りだくさんに用意されていて本当に最高すぎる。自然的な美しさのある優しさの成分が、様々なルートからのアプローチによって何倍にも倍増しされてる感じ、アプローチの一つ一つが本当に大好きすぎるから、大好きポイントが無限大ポイントにまで膨れ上がって測定エラーを起こしちゃうくらい、例えるならそのくらい大好き。

今作の本当に最高すぎるところは、音楽が優しくてソフトなタッチを十分に含んでいるのに、それと対極的であるはずのロックのスキルが思わぬほどガッツリと適合しているというところ。具体例を挙げると、体の中で風が走っていくような爽快感がやばいRock & Roll(M1)や、フックの効いたグルーヴでノリノリが高まるCooper's Dream(M5)、シューゲイザー的な比重量のあるギターが巨大な快感を生むAbsurdity(M9)など。もともとロックにはテンションを高める効果がとてもあると思うけど、Trace Moutainsの今作の場合、ロックによるテンションの高まりと心地よくて優しいフィーリングの二つが、完全無欠の最高すぎる相乗効果を生み出していると思う。特にRock & RollやBenji(M6)みたいに、後半からグッとくる展開を用意してある曲とかに関しては、あまりの幸せを感じてめちゃくちゃに泣きそうになる。ロックにより自分の心が優しく動かされていくような感動。本当にどこまでも無敵すぎる。

Lost in the City(M6)やFallin' Rain(M8)のような、心に沁みる切ないナンバーも本当に最高。やっぱりこの自然的な世界観の奥深さの感じは、Real EstateやThe Sea And Cakeっぽさがあると思う。

Twitterでも指摘されていたように、Trace Mountainsの今作はインディーらしさが凝縮されたような作品だと思う。似たタイプだと、今年1月にアルバムをリリースしたPet Shimmersなんかも超インディー感があると思うけど、そちらも本当に最高だった。現時点ではPet ShimmersとTrace Mountainsが二大・大好きインディー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

今月のベストアルバムのプレイリスト🍎↓

温の「2020年4月ベストアルバム(温)」をApple Musicで

 

 

~2020年4月ベストソングTOP10~

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10. Fionna Apple - "Newspaper"

9. Minor Science - "Balconies"

8. Yaeji - "WHAT WE DREW 우리가 그려왔던"

7. Day Wave - "Starting Again"

6. Jeremy Zucker - "Julia"

5. Thundercat - "I Love Louis Cole (feat. Louis Cole)"

4. DE DE MOUSE - "Hello My Friend"

3. Black Dresses - "Damage Suppressor"

2. The Strokes - "The Adult Are Talking"

1. Bon Iver - "PDLIF"

ベストソングのプレイリスト🍎↓

温の「2020年4月ベストソング(温)」をApple Musicで

 

 

 

 

 

 

 

「2020年3月ベストアルバムTOP10」感想

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4月から新社会人だから茨城から東京に引っ越してきた。以前は高速バス&電車で3時間かけて新宿や渋谷のレコード店に行ってたけど、今はワンコインの運賃で30分以内に新宿や渋谷に行ける...やばい...笑。

今月の最高すぎる新譜たちも東京でめちゃくちゃに買ってやりたい、、、秩序が訪れるまでもう少し我慢、、、

今月リリースの新譜、スーパーよかったもの10枚の感想をランキングで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. The Wants - "Container"

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ギターフェチにたまらない

 古き良きポストパンクのシンプルにかっこいいところだけが抽出されまくったような作品だと思う。陰鬱とした雰囲気でありながら音楽への熱量はたっぷりあって、モチベーションの高いアンダーグラウンド的ロックの感じが本当にかっこいい。メンバーがBodegaの片割れというのもあって、変に難しいことに取り組まないようなシンプルでスマートな構成を保っているのも魅力的。スタイリッシュな王道的ポストパンクの飾り気のないかっこよさが最高なアルバムだと思う。

私的に特にお気に入りなのは、Ramp(M1)やThe Motor(M5)などで顕著に表れているハイトーンのギターサウンド!切り裂くような刺々しいサウンドでありながらダークな低音域の影をまとってる感じ...本当にお見事すぎる 笑。ダークになりすぎない微妙な明るさの調整になっているのがめちゃくちゃクセになる。しかも、スタイリッシュな構成だからこそギターの存在が際立っているからめちゃくちゃおいしい 笑。何回聴いてもニヤニヤが止まらなくなるし、ギターフェチにとってはたまらないサウンドだと思う。

ツイッターの影響もあって、去年あたりからポストパンク~ニューウェーブにどんどんハマっていってる感じがする。2019年だとAutomaticとかよかったし、Dry CleaningのViking Hairとか2010年代ベストソング級に大大大好きだった。ちなみに今年でいうとThe Homesickがマジでやばいです...笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Soleima - "Powerslide"

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萌声的R&Bポップ

 ベストアルバムにヒップホップ系R&Bポップがランクインすることは滅多にないのだけど、Soleimaの今作は自分でもびっくりするほどハマった...笑。よさポイントでいうと、「純粋にポップとして良質」という点や、「ミステリアスでクールな色気」、そして「中毒性のやばい萌声的声質」などが挙げられる(あくまで萌声的~であって萌声ではない 笑)。もともとLet's Eat Grandmaのお二人のような甘くてトロトロしたような声質が好きなのだけど、Soleimaが展開する色気のあるクールなミステリアスポップは、その声質のポテンシャルがとても魅力的に発揮されてると思う。Grind(M2)ではSoleimaのソウルフルな歌声がアトモスフィアなバッキングと組み合わさってめちゃくちゃ癒し的になってたり、Hustlin(M4)ではSoleimaの甘い歌声がヒップホップ系のタフな音楽性とのギャップでめちゃくちゃかっこよくなってたり。Soleimaの声質が色んな要素によって多様なよさを引き出しているからとてもいい。純粋にポップとしてのキャッチー性も高いので、何度聴いても飽きないようなリピートしたさもある。

フォロワさん含め信頼できる音楽メディアがおすすめする音楽は、気になったらどれでもジャンルレスでチェックするけど、「ギャングスタ・ラップ」というジャンルだけは異様に聴かない...笑(実は1ミリも聴いたことないくらい苦手意識ある。)でももしかしたらSoleimaのような入り口からヒップホップにハマりだして、ギャングスタ・ラップにも手を出す未来が来るかもしれない...笑(Soleimaすごい)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Four Tet - "Sixteen Ocean"

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天使の降りるフォークトロニカ

 Four Tetといえば、人工的で無機質なエレクトロニックサウンドと自然的で有機的なフォークサウンドのハイブリットが絶妙すぎるフォークトロニカ...!今作も、人間の血が通っていないような冷血なハウスに自然味のある優しい生音を織り交ぜたFour Tetのめちゃくちゃユニークな幻想がよく発揮されてて本当に美しい。

今作の場合、DJセットのようなダンスフロアを強調した激しめのハウスの音楽性と、非ダンスフロアなアンビエント系のフォークトロニカの音楽性にメリハリが大きく出ていて、アルバムの中でダイナミクスがよく表れてる仕上がりになってると思う。例えばSchool(M1)、Baby(M2)、Love Salad(M6)、Insect Near Piha Beach(M7)など、今までのFour Tetの作品の中でも比較的ハードなダンストラックな感じだったり。中でも今作のリードトラックであるBabyに関しては、激しめのダンストラックでありながら、天使を召喚したような神秘性のあるボーカルのサンプリングが本当に素晴らしい。2020年におけるFour Tetの集大成のような傑作トラックだと思う。

私的にFour Tetで最も好きなところは、This Is for You(M15)や、Mama Teaches Sanskrit(M16)のように、リスナーに対して思いを込めて幻想を提供してくれるところ。Four Tetは優秀なエレクトロニカのコンポーザーであるけれど、どんなアルバムに対しても必ず人間味の感覚を忘れない人だと思う。何より嬉しいのは、本気でそれを伝えようとしているのが楽曲の重みからリアルに感じられるというところ。アーティストとして、人として、本当に大好き。

人生で最初に購入したハウス・テクノの作品がFour TetのThere Is Love In You(2010)なので、良し悪し関係なくFour Tetの全ての作品に対してサブリミナル効果的に無条件に大好き反応をしてしまう...笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Ultraísta - "Sister"

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リズム隊で魅せる...!

 アルバム前半の連続リードトラック(M1, M2)の最高っぷりが本当にやばい...笑。リズム隊で魅せるような情熱的でかっこいいアンサンブルや、そのかっこよさにぴったりフィットするシックなボーカル(Laura Bettinson)の存在感など、最高すぎて聴く度にテンションが爆上がりになってしまう 笑。キャラの濃いメンバーたちやスーパーバンド的な風格ももちろん最高なのだけど、特にRadioheadIn Rainbows(2007)やAtomos For Peaceの作風に特徴的だったようなテクニカルなドラミングが私的にとてもツボ。本当にめちゃくちゃワクワクする。

そんなテクニカルなドラミングという点で今作のベスト級に大好きな曲がアルバム冒頭のTin King。アップテンポな16ビートの最高にかっこいいリズムワークで、ハイハットのオープンクローズのサウンド一つだけでもめちゃくちゃに最高だから本当にびっくりする 笑。それに伴ってうねるように動くベースラインのゾクゾク感も本当に楽しい。

4拍子と2拍子で構成されるHarmony(M2)も最高...。リズムの感覚的には5拍子で展開されるRadioheadの15stepに似てるのだけど、夢中になれるような病みつきのリズムワークだと思う。ここまでの1,2曲目が大好きすぎるからめちゃリピートしてアルバムが先に進まない 笑。

他にも、Laura Bettinsonの美しさを助長するようなストリングスが特徴的なAnybody(M3)や、Tin Kingとは違うタイプの16ビートが楽しめるOrdinary Boy(M5)など、Ultraístaの最高にかっこいいアンサンブルがたくさん堪能できる作品だと思う。私の場合、Tin KingとHarmonyの2曲だけでめちゃくちゃお腹いっぱいになるのだけど...笑

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Sorry - "925"

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"人間的な弱さ"

 ポップスとしてのノリを持ったキャッチーなメロディーなのに不健康気味で憂鬱なロックという一風変わった音楽性、聴くとこちらの調子が狂ってしまうような気持ち悪い魅力(超褒めてる)があって本当にすごい。その音楽性は例えるならKing Kruleのような悲観的で絶望的なものにも似てるのだけど、気怠さMAXの男女ボーカルによく表れてるように、もう少し体調不良のような不快感のあるどんよりしたフィーリングの感じがある。今までに出会ったことのない毒々しいようなタイプのダークなかっこよさがあるからとてもハマる。細かいところでいうと、Starstruck(M4)で反吐を吐くような合いの手とか 笑。曲中に咳き込んだりする表現よりも反抗的な態度が出ててめっちゃおもしろい。それもポップスとしての枠に収まるような過激すぎないバランスが保たれてるから安心 笑。

Sorryの今作で1番好きなところは、"悲観的で憂鬱としたロックの中に人間的な弱さが垣間見られる"というところ。Sorryは憂鬱なロックでありながらポップスとしての側面も持っているので、"ポップスのセンスに残された絶望の中の希望"みたいなものが感じられる。具体的にはRosie(M5)やOde to Boy(M12)などがそう。それはまるで、全てがどうでもよくなるほどウンザリする最低な世界の中でもまだ何かを諦めきれないような葛藤。Sorryのそういった人間的な弱さの瞬間を感じると思わず泣きそうになってしまう。RosieとOde to Joyみたいな曲が本当に本当に大好き。

black midiSquidなど、ロンドンの新鋭ロックバンドが続々登場している感じ、とても最高である...笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Lyra Pramuk - "Fountain"

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抽象画のようなアート作品

 不明瞭な感覚を与えるアンビエントのアプローチがあるLyra Pramukの今作には、色鮮やかでロマンチックなペイントアートの抽象画のようなものを感じる。音楽のカラーがとても濃厚で華々しくもあるけれど、同時に少し不安定で危なげなものも含んでいて、正確に理解ができないような謎めいた魅力を放っている感じなどがそう。それらのカラーやサウンドが感覚器官にじわじわとインパクトを与え続け、慎重にじっくりと動きながら脳内で反響を繰り返し、リスナーを深くまで引きずり込んでゆく。心に重く響くように強力で、僅かに刺激的でありながら、ため息が出るように美しい。表現力の高い歌声を存分に効かせた今までに聴いたことのない種類のアンビエント・エクスペリメンタルなのだけど、とても夢中になれるアート作品だと思う。

特にスタートのWitness(M1)とラストのNew Moon(M7)の2曲が本当に素晴らしい。音楽のカラーや温度が大きく変動するようなパッセージがあって、心が激しく揺さぶられるように感動する。凄まじいオーラを放つLyra Pramukの歌唱力が最大限に発揮されているし、今作最高のトラックに仕上がってると思う。New Moonに関してはアルバムのラストというのもあって感動のスケールがとても大きい。『New Moon』という楽曲のタイトルのセンスも本当にやばすぎる...。

今作がデビューアルバムということだけど、調べたら全てのサウンドが声のみで制作されてると知ってめっちゃびっくりした。どことなく不安定な感じはそういうところから出てるのかな。本当に秀逸な作品だと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Nicolas Jaar - "Cenizas"

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さすが新鋭のサウンドアーティスト

 暗闇の中を無限に漂い続けるような怪しげなホラー的世界観、繊細な感覚が刺激されるように研ぎ澄まされたサウンドメイキング、ストーリー構成があるような充実したアルバムとしての内容度...どこをとってもスーパー大好き...!笑。ダークな世界観設定も鼻血出そうなくらいかっこよくて最高なのだけど、さすが新鋭のエレクトロニカサウンドアーティストというだろうか、耳が喜ぶような音の旨味がめちゃくちゃ詰まってる感じなのも本当にすごい 笑。さらには楽曲たちのシークエンスがよく整っているよさもあったり。アルバムのアクセントとして配置されたようなMud(M6)やSunder(M8)とか、そこまでの過程とか、ラストスパートの感じとかの流れが全部よい。アルバム50分間で映画のような鑑賞的内容度を持ってると思う。

中でもMudに関してはあまりのかっこよさにほっぺたがおかしくなるくらいニヤニヤしてしまう...笑。怪しげな雰囲気を強調した民族系パーカッションとか、繰り返される邪悪そうなメロディーのフレーズなど、ダークでホラーな魅力が全開で本当にかっこいい。中盤の展開でビートが加速されるラストのFaith Made of Silk(M15)なんかも抜群のかっこよさ。

ArcaやOneohrtrix Point Neverといった独創性のめちゃ高いエレクトロニカ・コンポーザーのサウンドって本当に最高だと思う 笑。あのFKA twigsのMagdalene(2019)をプロデュースしたNicolas Jaarもそういった分野のスーパーアーティストだと思うのだけど、いつも予想に反するような新しい出会いや驚きを提供してくれる。Nicolas Jaarの今作も期待以上に大好きなやつだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Nap Eyes - "Snapshot of a Beginner"

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チルアウト的インディーロック

 「ギラギラ輝く真夏のインディーロック」という感じがあって本当に大好きなのだけど、太陽が燦々と輝くようなパワフルでアクティブな音楽性というよりかは、昼下がりの穏やかなサーフポップ系の音楽性に近いロックの感じ。それは言い換えれば"チルアウト的インディーロック"みたいにも呼べるのかもしれないけど、ギターワウを効かせたようなマイルドな味わいのサウンドとか、とにかく気持ちよさが半端ない 笑。真夏のビーチで日光浴をするように、陽気でリラックスするムードをめちゃくちゃ体感できる作品だと思う。これらの心地よさをインディーロックの音楽性を保ちながら実現してる感じなのが私的にとても大好きなところ。

さらにNap Eyesで大好きな部分は、そういったチルアウト的インディーロックという音楽性から表現されるメンバー達の人柄 笑。イメージでいうと一昨年にフルアルバムをリリースした和みインディーロックバンドのForth Wanderersとかに似てると思う。何かに対して反抗的な態度を示すロックの特性を持ちながらも、陽気で穏やかなキャラクターがよく表れたバンドの感じ、めちゃくちゃ楽しい 笑。こういうバンドはメンバー達をもっとダイレクトに感じたいからライブとかめっちゃ観たくなる。

リリースの3/27より前から先行のSo Tired(M1)を聴いてた。昨今の大変な状況の中の私たちにとてもぴったりな感じがする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Empty Country - "Empty Country"

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私的激アツ案件

 もし私が音楽を全く知らない人に「ロックって何?」と聞かれたらCymbals Eat Guitarsを差し出すくらい、Cymbals Eat Guitarsのことをめちゃくちゃロックだと思ってる。Empty CountryはそのフロントマンのJoseph D'Agostinoによるソロプロジェクト。バンドスタイルの制限から解放されたソロならではの試みが見られるけど、従来のCymbals Eat Guitarsに特徴的だった最高にロックな楽曲もめちゃくちゃ残してるところが本当にたまらない。それはまるで、2017年に解散してしまったCymbals Eat Guitarsの続編のようなもので、私的にめちゃくちゃ激アツな案件なのである...笑

Ultrasound(M3)、Untitled(M4)、Emerald(M6)などがそういった激アツなロックなのだけど、ヤバ級に大好き。胸が熱くなるようなロックの情熱と、現実逃避や理想追求といった思いをドリーミーに昇華させるテクニック。そこには「どうしてロックを奏でるのか」という問いに対する答えのそのものがあるような気がする。中でも3曲目のUltrasoundはタイトル通りウルトラ級のよさ。心臓が破裂しそうなくらいエモーショナルで思わず泣きそうになってしまった。本当に最高すぎる。

ソロならではの試みというと、Marian(M1)やSwim(M10)といったフォーク・カントリーなアコーステックの曲とかあるけど、Diamond(M2)なんかはアコーステックのセンスがThe War On Drugs的になってたりしてめっちゃ最高だと思った。Cymbals Eat Guitarsにはなかったロックの新しい引き出しが増えた感じでとても嬉しい。解散前にCymbals Eat Guitarsを観れなかったのが死ぬほど悔しいのだけど、Empty Countryが来日したら絶対観るぞ...笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Waxahatchee - "Saint Cloud"

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エモーションを搔き立てる涼しさ

 Waxahatcheeの今作のやばすぎるところは、寄り添ってくれるように温かいフォークロックであるのに、音楽のトーンが低くデザインされたような涼しい感触を常に所持しているというところ。この"涼しさ"で表現されるフィーリングの奥深さとか、それらの温度感覚というのが本当に素晴らしすぎてやばい。それは例えるなら、物思いにふけっているときのように、日々の中で美しい瞬間を感じてるときに似ているものだと思う。寂しさや悲しみのような感情にすらも満たされるような、とても愛おしい瞬間だと思うのだけど、心打たれるように圧倒的にエモーショナルで本当に素敵だからやばい。あまりのやばさにFire(M3)では思わずめちゃくちゃ泣いてしまった。アルバム11曲の全曲に対してそういったエモーショナルな瞬間をめちゃくちゃ感じる。本当に大大大傑作。

もうすべての部分が超絶に大好きなアルバムなのだけど、中でも特に大好きなところは、FireのMVやジャケットで提示されたような夕方直前の涼しい空気感。その美しい時間帯の澄み渡った空の情景とか、窓を開けてドライブしたときに感じる心地よい風とか、アルバムを聴いてそういった瞬間を目いっぱい想像するのだけど、それらの一つ一つに感じるありったけのエモーションが本当に美しくて、夢中になるほど思いを馳せてしまう。音楽を聴かずに部屋で1人レコードを手に取ってジャケットを眺めてるだけでもめちゃくちゃそう。本当に大好きすぎる。

4月から新社会人で初めて東京に引っ越してきて、周りに友達がいない状況の中、昨今の大変な情勢に不安を煽られまくったりで、とても心細く感じていたけど、その中でWaxahatcheeの音楽がこれでもかというほど刺さった。ラストのSt. Cloudのように、じっくり自分と向き合うような時間の中で究極的に満たされて、エモーションがずっと止まらなくなる。これからも、自宅待機の間にめちゃくちゃお世話になると思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

プレイリストまとめ↓

温の「2020年3月ベストアルバム(温)」をApple Musicで

 

~その他3月リリースのよかったもの~

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Daniel Avery & Alessandro Cortini - "Illusion of Time"

Horse Loads - "The Common Task"

Hot Mulligan - "You'll Be Fine"

Jordana - "Classical Notions of Happiness"

Lauren Auder - "two cave in EP"

LEYA - "Flood Dream"

MinaeMinae - "Gestrüpp"

Porridge Radio - "Every Bad"

portable - "The Transit of Mercury"

Sufjan Stevens & Lowell Brams - "Aporia"

U.S. Girls - "Heavy Light"

Yumi Zouma - "Truth or Consequences"

 

 

 

「2020年2月ベストアルバムTOP10」感想

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今月の14(金)と15(土)は妹たちと泊まりでディズニーリゾートに行っていたので、14日リリースのTame Impalaは素敵なディズニーランドのホテルでお酒飲みながら聴いてた 笑。学生最後の最高な思い出の1つになったと思う。

2020年2月リリースの新譜のベストアルバムTOP10、感想をランキングで

(上位3つは同率1位)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. Soccer Mommy - "color theory"

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寂しくなりすぎないというベスト

 Soccer Mommyのベッドルームポップ的インディーロックの素晴らしさは、「内に閉ざしていたベッドルームポップのありったけの感情を、ロックによって外の世界へ存分に解放する」というようなところにあると思う。今作も、ロックの音楽性を利用して、夢を描いたようなベッドルームポップのありったけのエモーションを思い切り解き放ってる感じがして本当にたまらない。加えて今作は、エレクトロニックなアプローチによる多種多様なサウンドの拡張や、それによる明るくてキラキラしたエモーションの強化など、前作よりダイナミクスが増したポップスとして仕上がりが強くなっていると思う。具体的にはcircle the drain(M2)やclawling in my skin(M5)など、空間系のエフェクトを充実させたような豊かなサウンドスケープになってたり。私的には、寂しさを引き立てまくったようなシンプルなバンドスタイルが特徴的なClean(2018)よりも、寂しくなりすぎないレベルまでエモーションが調整されている感じなのがとても好きだった 笑。本当、前作のCleanは切なすぎて死にたくなってたからね...笑

そういった、ありったけのエモーション、インディーロックの音楽性、充実したサウンドによるポップスの強化など、Soccer Mommyの今作の特徴がよく表れたyellow is the color of her eyes(M6)が本当に最高。前作のような胸が引き裂かれそうになるくらいエモーショナルな切なさを引継ぎつつ、サウンドがより豊かにかつダイナミックにデザインされた素敵なポップチューンになってると思う。後半で繰り出されるノイジーなギターの存在感も本当にたまらない。

洋楽好きな後輩君とよく一緒にドライブするのだけど、ドライブにおける車内音楽で後輩君がSoccer Mommyを選曲してたときがあった。めちゃくちゃびっくりしたけど超テンション上がったよね 笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Caribou - "Suddenly"

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ブラックミュージック的センスのかっこよさ

 前作Our Love(2014)では、妖しさの半端ないドライでミステリアスな幻想ワールドを全開に繰り広げていたと思う。今作はその世界観にも通じるような色気のある美しさを利用しながらも、ダンスビートを大胆に強調した鬼かっこいいハウスミュージックを展開していると思う。具体的には、ブレイクビーツに似たアプローチのあるSunny's Time(M3)や、ダンスフロアを最高潮にまで盛り上げるような激しい裏打ちビートのNever Come Back(M7)など。あまりかっこよさに思わず脳みそが爆発しそうになってしまった 笑。

前作Our Loveの濃密な幻想ワールドの印象からは想像できないほど、今作はヒップホップやジャズといったブラックミュージックの原始的な躍動がよく表れた作品になってると思う。New Jade(M4)では高速なリズムワークが特徴的なフットワーク系の音楽に仕上がってるし、Home(M5)に関してはヒップホップそのままな感じだし。サンプリングしたカットボイスの1つ1つからもR&Bやソウルの面影をめちゃくちゃ感じる。そういった原始的でエネルギッシュな躍動感にCaribou特有の色気のある美しさがめちゃくちゃ反映されているわけだから、それは凄まじくかっこよくなるよね...って思う 笑。

私的には、アルバム3曲目のSunny's Timeが本当にめちゃくちゃ大好き。ブラックミュージックの原始的な躍動、CaribouことDan Snaithによるボーカルの色気、そしてジャジーなピアノのアルペジオによる半端ない美しさ...!!もう本当にかっこよすぎてベタベタになるまで惚れる 笑。新譜リリースのアナウンス時にジャケを確認したときは、正直もっと地味な音楽を想像してた 笑。まさかこんなにかっこいいとは...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Arca - "@@@@@"

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62分にも及ぶ巨大なスケール

 (シングルだけどボリュームがアルバム級だからアルバム扱い。)Arcaの今までのキャリアの中でもクラブミュージックのダンス性がはっきり表れている作品で、62分にも及ぶスケールの中で、感情を加速させるようなダンスビートを利用しながら迫力をどんどん高めるような作品になってると思う。さらには、従来の不安感を煽るようなグロテスクで攻撃的なサウンドワークや、痛み・喪失感といった激しい悲しみの感情以外に、極上のエクスタシーを求めるような神経麻痺に似た幻覚のニュアンスがあったり。そういったように、巨大なスケール・迫力を利用しながら、真の憎しみ・怒り・悲しみを解放し、魂の救済を求めるという意図がよりはっきり感じられる作品だと思った。

Mutant(2015)で特徴的だったように、リスナーの細胞を破壊するような暴力性の高いサウンドが今作でも多く見られる。何もかも破壊したいような怒りに満ちたグロテスクで、まるで音そのものが苦しくて悲鳴を上げているように。そこには倫理的に許されないような圧倒的なヘイトと、底知れない痛みと悲しみが含まれている。負の感情を残さず全て吐き出したような芸術作品はたくさんあると思うけど、Arcaは多様化したエレクトロニカIDMの現代技術のアイディアを駆使した前衛的な作品を創造していて、ダイナミクスやリアリティがとても強く伝わる作品になってると思う。

個人的に、そういった作品を鑑賞できるということはとてもありがたく思える。ミッドサマーのラストシーンにおける主人公の気持ちに共感できるように、人間は誰でも絶対的な負の側面をめちゃくちゃ抱えていると思うから。それらを思う存分に吐き出し、苦しみや痛みを解放・共有することで、日常で溜まった不安を全て解消するような強力な安らぎを得ることができるのだと思う。今作の場合、62分にも及ぶ長いストーリーで得られるその安らぎレベルが本当にやばい(特にラスト)。本当に、鳥肌が最大になるまで半端ないほど感動した。一般的な音楽に比べて1曲62分という聴きづらさのネックはあるけれど、今作も本当に素晴らしいアート作品だと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Wilsen - "Ruiner"

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"大好き of 大好き"

 スピリチュアルで神聖なワールドを展開するフォークロック作品としてスーパーツボなのに、サウンドの質感がとても特殊で本当に最高。心地よく涼し気なフォークの感触を持ちながら、同時にとてもドリーミーでもあるという。まるで自然的なアウトドアの空間とベッドルームの空間が融合しているような、とても新しい音楽空間を創造していて、初めて聴いたときは「うおーなんだこれはー」ってなった 笑。最近では宅録ベッドルームポップのアーティストが数多く輩出されているし、インディーポップのニューカマーJordanaがドリームポップ系の音楽性にガレージノイズを取り入れるなど、ここ10年くらいでドリーミーサウンドのインフレが起きていると思う。その中でも、Wilsenのドリーミーサウンドは、質感を巧妙に設定したような高級感のある仕上がりで、本当に見事でとても美しい。(レコードとかでじっくり堪能したい。)
さらに今作の場合、Wilesnのフォークロック&ドリームポップというような作風をよく表したアルバム前半の3曲連続リードトラックがとてもよい。自然的で美しい聖なるフォークロックでありながら、心のときめきを誘うドリームポップの高揚が少し混ざってる感じ。私的に"ツボ×ツボ"でめちゃくちゃハマる...笑。

また、6曲目から8曲目にかけて展開されるBirdsとWeddingの大きなシーケンスは、聖なる幻想の創造に多大な精神力を費やしたような今作の最高パートだと思う。神聖なエモーションを深く重く体現している時点で既にめっちゃ最高なのに、高級感のあるサウンドの質感とも相まって本当にグッとくる。

美しくて素敵なメンバージャケも本当に最高…笑。聖なる幻想を示した音楽ワールドの切なさとめちゃくちゃ最高なマッチングをしていると思う。もう何もかも大好きだ...笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Tennis - "Swimmer"

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高級デザートのような幸せみ

 感覚的に言うのであれば、このアルバムを鑑賞するひと時は高級レストランにおけるデザートタイムに匹敵すると思う 笑。それくらい音楽が所持する大人のスウィートな味わいが極上な感じがする。具体的には、アダルトな気品のあるAlaina Mooreのボーカルとクラシカルなサーフポップのコンビネーションがもたらす絶品のほろ甘さ。メロウでありながらスウィーティーでほろ甘さが本当にやばい。それは大人のラブストーリーのような甘酸っぱい切なさもあるし、懐かしいような美しいレトロの風情もある。アルバム30分間が常にそのムードとほろ甘さを持っているので、私にとっては贅沢すぎるデザートのフルコースのような幸せみがあるよ...笑

実は今作で初めてTennisを聴いたのだけど、フォロワさんが言っていた"カーペンターズみ"という例えが分かりすぎてやばい 笑。実際にメンバーのAlaina MooreとPatrick Rileyは家族(夫婦)だし、オールドムービーのような70年代ポップの雰囲気や、トロトロに蕩けてしまうようなハワイアン系の暖かい音像とか本当にぴったり。そういったオールドムービー感といえばWeyes Bloodに通じるところもあるし、トロトロな暖かさと言えばBeach House感が強かったり、大好きなアーティストの大好きエッセンスが地味に詰まっている作品だった。さらに私的には、Tobias Jesso Jr.のようなシンプルなバラードだったり、大人のジェントルなラブロマンスを炸裂しまくるEmm Louise(Lilac Everything)などを連想させる作風もあったりして、ツボみがとても深かった。気軽に聴けてしまうポップアルバムではあるけれど、1曲1曲じっくり堪能したいアルバム。

周りの人が絶賛しまくっている影響で聴いたのだけど、ツイッターをそこまで使用していなかった昔の私なら、変な偏見で完全にスルーしていたと思う 笑。(昔はあんまりこういうの聴かなかった。)来月の引っ越しで荷物減らしたいのに、ハマりすぎたから我慢できずレコードも買っちゃったよね...笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Tame Impala - "The Slow Rush"

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"脳内トリップ × タイムトリップ"

 今作の最高なところは、最高に気持ちのいいインパラ・サイケデリックの陶酔が、過去の世界へのタイムトリップとしての効果も強く発揮し出したというところ。前作Currents(2015)よりもサイケデリアの感触に対してバリエーション豊かな変更を丁寧に施していて、結果として濃厚な味わいだった前作のサイケデリアよりも全体的にあっさりとした感じになったと思う。それによって、もともとインパラが所持していた60s~70sの大人びたアンティークな気品がより露わになって、過去への憧憬としてのイメージをより強く持ち始めている感じがする。気持ちよくラリるサイケデリアとしての脳内トリップだけでなく、現在よりもずっと遠い時代への異世界トリップでもあるということ。ただでさえ絶妙に気持ちよく酔うことができるサイケデリックサウンドとしてめっちゃ最高なのに、それが快感以上にワールドの創造としても意味を持っていて、本当にめちゃくちゃ素敵...笑。1枚のアルバムでとても濃密なワールドを展開していると思う。

前作Currentsは、サイケデリック・ロックというか、一種のロックアルバムとして大大大傑作だったと思う。「ここぞ!」というタイミングで発揮するギターソロや、エキセントリックなセンスで魅せるかっこよすぎなリフのフレーズなど、ロックらしい "リフ力" がひときわ輝いたような作品。今作のLost In Yesterday(M8)は、Currentsで獲得したその"リフ力"を継承しているリードトラックで、今作における最高の1曲だと思う。心地よく踊りまくれるグルーヴとも相まって最高なハマり方をするベースのフレーズになってるし、途中で炸裂するシンセギターのパートも本当にかっこよくて痺れる。ストーリー性のあるMVの完成度もハイレベルで本当に大好き。

去年リリースされたシングルPatienceが収録されていなくて残念だという声を聞いたけど、国内版CDのボーナストラックには収録されてるんだよね。ということは国内版を買えばもうめちゃくちゃ最高だということ 笑。私はボートラいらない派一族の人間だけど、アルバム未収録シングルをボートラとして取り入れる日本の文化は好きだよ 笑。(助かります。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4. Real Estate - "The Main Thing"

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カラフルで賑やかなワールド

 Real Estateといえば、素材本来の新鮮な質感を存分に引き出したようなエレキギターの珠玉のクリーントーン。そしてそのギターサウンドナチュラルな優しさが溢れた美しいインディーロックのワールド。バンドとして既に大大大好きなのだけど、今作は80年代初期のフュージョン系のギタープレイや、程よく踊れるディスコパンクの感覚など、カラフルで賑やかな雰囲気が表れた楽しい作風になっていると思う。そこには、昔私が叔父の部屋で聴かされていた大好きな80sジャズ・フュージョンに通じる懐かしい趣があったりとかで、結局私的にめちゃくちゃツボなやつだった 笑。Real Estateのアイデンティティでもある透明感の果てしない自然的で幻想的なヴィジョンをそのままに、テンションを程よく高めるような楽しいフィーリングがよく発揮されてる感じ。楽しすぎないちょうどいいバランスを保っていてとても最高だと思う。

中でも、そのカラフルで賑やかな性質がめちゃくちゃ表れた今作のメイントラックのPaper Cup(M2)が本当に本当に最高...。フューチャリングしてるSylvan Essoとのコラボによる楽曲の充実感がやばいし、ストリングスによる少し派手な音楽の装飾があったり、パーティー的ダンスフロアのカラフルな世界観の演出が本当に素晴らしい。まさかReal Estateの音楽でこんな賑やかなワールドを堪能できるとは思ってなかった...笑。素敵すぎて本当にやばい。

前作In Mind(2017)のときから感じてたけど、今作で確信したことは、私はReal Estateの珠玉のギターサウンドがずっと大好きであり、それが今後どれだけ多様に進化していっても結局ずっと大好きだということ。今作の場合、The Main Thing(M8)やSilent World(M11)など、コーラスのギターエフェクトが強調されたアレンジとか、カラフルな雰囲気によく似合う鮮やかなサウンドにデザインされたりしてるけど、そういうサウンドもやっぱり大好き 笑。なんか、Real Estate愛がより確実なものになった気がする 笑。また日本来てください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. The Homesick - "The Big Exercise"

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窒息しそうになるレベルで笑う

 真面目なのかふざけているのか全く分からないものなど、人は全然意味の分からないものに直面したとき、どうすることもできずただただ笑ってしまうのだと思う。The Homesickが繰り出すガレージロック~ポストパンクは、陽気で穏やかなフィーリングの状態から突然激しさを増してめちゃくちゃかっこよくなったり、置いてけぼりにされすぎて思わず笑ってしまうそのお笑いのロジックがよく働いてる音楽だと思う。最初聴いたときは思わず声が出るほど笑った 笑。大好きすぎて何周も聴いてるけど、全部ずっとめちゃくちゃ笑ってる 笑。本当に死ぬほど楽しい。

具体的には、A面とB面の1曲目に相当するWhat's In Store(M1)やThe Small Exercise(M6)において穏やかな音楽性をイメージさせるアルバムの印象操作と、そこから唐突にかっこいいポストパンク的アンサンブルを展開するというギャップ効果。南国のバカンスでのひと時のような暖かくのんびりとした音楽性を提示しておきながら、激アツのポストパンクも演奏しちゃうという。Children's Day(M2)やThe Big Exercise(M7)が本当にめちゃくちゃそれで、のんびりとした音楽性からは想像できない激しいロックのグルーヴにギャップが出まくり。特にThe Big Exerciseの中盤以降のズンズンドコドコパートは最高すぎて本当にやばい...笑。ギャップの効果でフレーズのアップテンポ感がより強調されていて、下手すると楽しすぎて窒息しそうになる 笑。

それだけでなく、7拍子が特徴的なI Celebrate My Fantasy(M4)、シンプルながら楽器の持ち味を100%発揮したようなLeap Year(M5)、最後まで激アツな盛り上がりを見せるMale Bonding(M10)など、メロディーの組み立て、アンサンブル、曲構成といったバンドのテクニック面も本当に最高。特にLeap Yearにおけるベースのキャラクターの活かし方や音の配置の仕方とか、本当にかわいくて大好きすぎる。

オランダのバンドということだけど、この音楽性が暖かくてのんびりとしたオランダの海洋性気候に由来してるのなら納得する。予想より音楽メディアでの取り上げが少なくて「なんでだー!!」という気持ち 笑。レーベルSub Popだぞ??すごくない??笑

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Nada Surf - "Never Not Toghther"

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光属性ロック・切なさ最大

 美しい輝きを放つNada Surfのロックは、様々な内容を包含していると思う。キラキラしたフレッシュな気持ちを呼び起こす最高の開放感、ネガティブな感情を吹き飛ばすような力強さ、そして透明感のある綺麗なサウンドによる切ないフィーリング、もっというと純潔な音像による祈りに似た聖なるエモーションなども。日常において精神状態をコーディネートする音楽としても、テンションを高めたいときに聴きたいロックとしても、感情を美しく記述した芸術作品としても、どの視点から捉えてもとても優秀だと思う。何より、パワフルなロックを奏でる音楽のモチベーションが、「美しい輝きを生成すること」というような、バンドが目指している方向性とかバンドとしてスタンスが本当にめちゃくちゃかっこいい 笑。私の中ではDeath Cab For Cutieに匹敵するロックヒーローの存在感がある。今作で初めてNada Surfのことを知ったのだけど、私のロックバンド・ヒーローリストが新たに更新されました...笑

前作You Know Who You Are(2016)も、空ジャケ含め光輝く開放感が最高の作品だった。今作の大大大好きなところは、儚い印象を与えるアートワーク、美しくも切ない詩的なニュアンス、Just Wait(M4)やCrowded Star(M7)など、光輝く開放的なフィーリングだけでなく、音楽のイメージに対してメランコリックな趣がよく表れているところ。もともとのNada Surfが所持している開放的でパワフルなロックの作用によって、切ないフィーリングがより倍増されている感じなのが本当にたまらない。中でもCrowded Starの切なさは本当に格別。パワフルなNada Surfのロックの輝きがこれでもかと言うほど切ないフィーリングに作用する。今でも思い返すだけで泣きそうになる。本当に最高の1曲。

私がスーパー積極的に洋楽をディグり始めたのは今からちょうど4年前(大2の冬)。それまでは高校の友達SJ君から色々な大御所洋楽バンドを教えてもらっていたけど、これまでの洋楽ライフでNada Surfに出会わなかったのが驚き...笑。これからもアンテナを広げて色々なロックヒーロー見つけたい 笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Grimes - "Miss Anthropocene"

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混沌とした今を生きる私達へ

 Massive Attack(Mezzanine)やThe Haxan Cloakのような深みのあるダークネス、ハードロック系のギターサウンド、さらにはThe Prodigyのようなエレクトロ・ロックなど、前作からは想像もつかないほどのブラックなタイプへのモデルチェンジに成功していると思う。もともと独創性あふれる存在感の強いポップアーティストだったのに、さらに暗黒面のパワーを獲得した感じのゾクゾクする迫力が表れていて、本当にめちゃくちゃかっこいい。

今作で特徴的なダークな音像に関しては、ポップらしからぬホラー系の雰囲気も醸し出しているところがあり、アルバム全体がよりカオスチックなバランスになってると思う。そしてそこには、昨今の現代社会にも通じるような複雑で心苦しいフィーリングにも似た心理状態が含まれてると思う。実際、ゲームキャラクターのデザインを重視したようなジャケットや、創作的な神々をモチーフにした楽曲タイトルなど、非現実感の強い混沌とした世界観がよく表れていると思う。

今作の素晴らしいところは、そういったカオスチックな世界の中で提示する本作のリードトラックのDelete Forever(M3)。Grimesなりのポップセンスで、そのカオスの世界にも愛を見出そうとする彼女の想いが溢れていて、心が張り裂けそうになるほど感動する。その音楽はまるで、混沌とした世界を生きている私達の苦しみの解放を願う祈りのよう。バンジョーやストリングスといった生楽器の温かい響きが本当に心に沁みる。このDelete Foreverの世界観に対しては、MVで提示したGrimesの神格化されたキャラクター像や、アルバムのタイトルである「Miss Anthropocene(人新世)」という部分などから色々な想像が楽しめると思う。私の場合、「Grimesという超人的な存在から絶対的で強大な愛を享受する」というような構図をイメージするのだけど、不安で心苦しい現在の状況下で圧倒的な安らぎを得るように、今の私達に死ぬほどハマリまくる感じがする。本当に、今年ぶっちぎりのベストソング。実際、ダークなエレクトリックサウンドが目立つアルバムの中でアンプラグドなこの曲だけ絶妙に調和しているし、とても印象に残るナンバーで本当に本当に素晴らしい。

Grimesは音楽・美術・ダンスを全て一人でこなしてしまうスーパー一流のアーティストだと思うのだけど、楽曲を聴いて彼女のダンスを想像するのもGrimesの作品鑑賞における楽しみの一つ 笑。今作でいうとアップテンポなナンバーの4ÆM(M5)とかめちゃくちゃ独特なダンスをするんだろなーって想像してた 笑(今は妊娠中だから激しく踊れないと思うけど...)。もっとGrimesが踊りまくるMVをバンバン作ってほしいし、ライブもめちゃくちゃ観たい。アジア近辺なら日本飛び出しても観に行きたいレベルなので、ひと段落したら是非お願いします...笑

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

今月はスーパー最高すぎたので順位を付けにくかった。年末の年間ベストのランキングときには順位が少し変わっちゃうかもしれない 笑。他にもShopping、Kevin Krauter、Wasted Shirt(Ty Segall & Black Pus)とかとてもよかった。

プレイリスト↓ 

温の「2020年2月ベストアルバム(温)」をApple Musicで

 

 

 

「2020年1月ベストアルバムTOP10」感想

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1月は去年からずっとBombay Bicycle Clubの新譜をウルトラスーパー楽しみにしていたのだけど、その他もとてもよい作品とめっちゃ出会えた。

本当は1月終わってすぐベスト作りたかったけど、修士論文の作成でまとめるのが遅れてしまった。(大学院生)

 

 

2020年1月リリースの新譜のベストアルバムTOP10、感想をランキングで。

(1位は何かな...!!?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10. Georgia - "Seeking Thrills"

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ただのメインストリームポップではない!

 このアルバムの最高なところは、「王道ポップにロックのエッセンスをしっかり実装して "Seeking Thrills"というワクワクするテーマに情熱的なニュアンスを付加している」というところ。キャッチーでキラキラしたフィーリングを記述したポピュラー音楽の本質的なところをエキサイティングなエモーションから捉えたテーマ性があって、世にあふれているメインストリームポップとは少し違う作家性がある。具体的には楽曲の1つ1つから表現される"ロックのグルーヴ感"。ノリのよいダンサブルなビートだけど、もっとドラムの情熱的なニュアンスが強く表現されてる感じ。Never Let You Go(M4)とかめちゃくちゃそれだと思う。ポピュラー音楽のキャッチ―なハピネスにロックのビートの興奮がしっかり作用する最高の1曲。

 個人的には、そういった"メインストリームポップ+ロック"という作風を100%発揮したようなパーティー風のジャケと、それによる音楽に対しての強力な世界観補正がもうめちゃくちゃに大好き...笑。「ポップスでノリノリになっていたのに、気持ちが高まるあまり最高にエキサイティングな状態になっちゃった」みたいな 笑。Never Let You Goを聴いたときの私もその状態になった 笑。そういうフィーリングを実現してしまうあたり、やっぱりとてもいい作品だと思う。(ジャケとNever Let You Goが特に)

 その他にもR&Bのテクニックを発揮した実験的なトラックがあったり、割と充実している作品だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9. Ethan Gruska - "En Garde"

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 オシャレMAXでチルチルしながらお酒飲む

 メロディーがキャッチーなインディーポップと、ジャジーで大人なR&B・ソウルを組み合わせたような音楽で、The 1975からNick Hakimまで、様々なオシャレサウンドを融合してておもしろい 笑。フェスやライブで映えそうなダイナミックさもあるけれど、一般的なインディーポップよりもアダルトな雰囲気が強くて、全体的にオシャレ度がめちゃくちゃ高い作品だと思う。中でもローファイ・チル系の音像を含んだ心地よい感触が本当に大好き。オシャレなフィーリングMAXな状態でチルチルしながらお酒とか飲みたくなる 笑。

 そういったハイレベルなオシャレを体現したアルバムとしてもよいのだけれど、楽曲単位で見ても強トラックが勢ぞろいな作品だなと思う。特にPhoebe BridgersをフィーチャリングしたEnough for Now(M4)はやばい...。初めて聴いたときはめちゃくちゃグッときてビビってしまった。まるで映画の主題歌やアニソンに抜擢されるんじゃないかと思うくらい完成されたコーラス。好きすぎて友達とかいろんな人に自信を持ってオススメしてる 笑(そのくらいいい曲)。フィーチャリングがPhoebe Bridgersなのがよいよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8. Andras - "Joyful"

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気持ちよく踊るために必要なものだけ

 環境系のアプローチを持つハウス・ミュージックの中でも、気持ちよく踊るために必要なもの以外を極力排除していてとてもよい。もともと私はCall SuperやFour Tetなど、アンビエント系の音像を利用したミステリアスで切ない味わいのハウス・ミュージックが大大大好きなのだけど、Andrasの本作はそういった作品でありながら、無駄のないシンプルな音構成が意識されていて、終始ダンスの気持ちよさがよく強調されてると思う。ミステリアスで切ない気品が漂いながらも、ダンスとしてのモチベーションとその気持ちよさがよく表れてる感じ。特にお気に入りのトラックはPoppy(M3)とSaga of Sweethert(M6)。最近正統派のクラブミュージックを聴けていなかったのもあって、久しぶりにめちゃくちゃハマった。

 特にPoppyは本作における最高なリードトラックだと思う。シンセとカットボイスとピアノによるメロディーの応酬。様々なキャラクターや感情が入れ替わりながらミステリアスで切なくも最高に気持ちいいダンスミュージックを演出している。初めて聴いたときから何度もリピートしてるし、2020年のベストトラックだと思う。

 1曲目聴いたときはそこまでハマらなかったけど、途中からじわじわ来た。シンプルなので作業用BGMとしても優秀かもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7. Frances Quinlan - "Likewise"

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見えそうで見えなかったHop Alongの新しい一面

 フォークとロックの二つの衝突により凄まじいエモの爆発を生み出すHop Along(めっちゃ大ファン)のフロントマンFrances Quinlanによるソロアルバム。エモの概念を100%具現化してしまうような彼女の恐るべしエモーションを残しつつ、今作は従来のバンド形態にとらわれないようなオリジナリティに富んだ多彩なサウンドワークがある。そこには今までのHop Alongが持っていたセンチメンタルな音楽性だけでなく、おとぎ話のような可愛らしさやファンタジックな純粋さが表れたサンドスケープもあったり。そういうおとぎ話チックな世界観がめちゃツボだし、今まで見えそうで見えなかったHop Alongの新しい一面に出会えたことが何よりめちゃくちゃ嬉しい...!笑。あと単純に「Frances Quinlanってこんなに豊かなワールドを持ってたんだ」ってめっちゃ感動した 笑。

 Hop AlongのGet Disowned(2012)は2010年代ベストアルバムでも15位圏内に入るレベルでウルトラスーパー好きなのだけど、Frances Quinlanが作り出すメロディーってどれも即興的な多様性があると思う。だからこそ、アルバム1枚にたくさんの歌が詰まっているのだけど、聴けば聴くほど身体に馴染んでいくような深みのある味わいがある。本作もきっとそういう作品であり、これから春にかけてますます味が出てきそうだ...笑。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6. Dan Deacon - "Mystic Familiar"

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キャリアの集大成『Arp

 Dan Deaconの音楽には未知のジャンル「お笑い」が含まれてると思う 笑。ハイペースでわちゃわちゃしたカオスを繰り広げる激しいエレクトロニカでありながら、ハウス・テクノのような冷淡さは全くなく、フットワーク/ジュークのようなスピーディーなダンス要素もない。そこには、チルドレンミュージックを間違えて暴発させてしまったようなコメディの要素がある 笑。そういうはっちゃけた音楽性によって、子どもらしさが全開な感じの桁違いのピュアネスとハピネスを表現してるのがDan Deaconの大きな特徴だと思う。今作もその音楽性が色濃く表れてて、とても大好きなアルバムだった。

  今作の素晴らしいところは、そんなDan Deaconのキャリアの集大成のような4曲構成の大作Arp。前作Gliss Riffier(2015)で磨き上げたような可愛らしいファンタジーの世界観と、今まで以上に激しくて過激なピュアネスの両方を合体させたような大傑作だと思う。(中でもArp Ⅱ: Float Away(M5)。)人間って幸せの感情が高まりすぎると、体内の幸せフィーリングがギューッと凝縮されていくような感覚に陥ると思うのだけど、Arpを聴いた私はその状態になり、感動しすぎて死にそうになってた 笑。可愛いらしいファンタジーな世界観と激しくて過激なピュアネス、これは最高にやばい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. Destroyer - "Have We Met"

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ブルーアイドソウルの輝きを放つノイジーなギター

 正直なところ、Dan Bejar氏による"ブルーアイドソウル的ギターロック"とういうのは全て最高だと思う 笑。今作もKaputt(2011)のような美しい響きを持つギターロックの作風だけど、今作のノイジーなギターは本当にかっこいい...!!笑。いちいち全部最高のギターなのに、ブルーアイドソウル系の透き通った輝きを放っているから本当にたまらない。その他も、スラップベースによるR&Bの大人なグルーヴや、透明感の半端ないアダルト・コンテンポラリーなピアノの味わいなど、Destroyerならではの美しいブルーアイドソウル的ロックアルバムとして完成されていると思った。単純に、アダルトな味わいを堪能できるブルーアイドソウル系の音楽としても優秀だし、ギターだけ堪能するギターロックアルバムとしても聴けると思う 笑。

 それでいながら、2020年代の始まりを感じさせるような新しい発想もいっぱいあって大好き。アダルト・コンテンポラリーやブルーアイドソウルの透明感・清涼感を保ちながらも、よりサウンドを多様に拡張したようなアイディア。特にノイズによる音楽のダイナミックな強調とか、アダルト・コンテンポラリーの色気を崩さず美しいバランスになってて本当に素敵だと思う。これを機にフィジカル持ってないDestroyer's Rubies(2006)とか今度買おうかなって思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 4. Andy Shauf - "The Neon Skyline"

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さりげない日々を綴った詩のような趣

 Andy Shaufの今作の本当に最高なところは、私達の日常に何気なく存在する情緒的な瞬間を捉えているようなところ。メロウでありながらも満たされたようなちょっとだけポップなフィーリング。それはさりげない日々を綴った詩のような趣があるし、さりげなく美しい映画のワンシーンのようでもあるかもしれない。それらの豊かな感覚を音楽として丁寧に体現していて、とても最高の作品に仕上がっていると思う。

 フォロワさんも指摘していたように、Andyの歌含め、全体的に音楽が豊かな響きを持っているのも大きな魅力の一つ。フォーキーな気品の漂うギターやピアノといったアコーステックの楽器達、それぞれが丁寧に奏でられていて余韻の残るような美しい響きを生成している。それでいながら心弾むような楽しいメロディー、ソングラインを持っていたりして、本当、めちゃくちゃ充実してると思う。

 あと個人的に!やっぱり!クラリネットを取り入れた古典的なサウンドデザインにツボりました!笑。基本的にインディーロックの分野でフルートやクラリネットなどの木管を使用しているバンドのサウンドは全部大好き(もちろんオーボエも)。そういった可愛い音像も所持した、美しくも楽しい豊かなバロック・ポップALだと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. Bombay Bicycle Club - "Everything Else Has Gone Wrong"

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夢の世界に誘う催眠的なアプローチ

 ワクワクを促進させるようなファンタジーのワールドを提示し、「一緒に行こうよ!」と誘ってくれる音楽のことがどれほどに大好きか...笑。ファンタジックなアートポップ~オルタナロックってもう目ん玉がもげてしまうくらい大好きなのだけど、今作もIs It Real(M2)やI Can Hardly Speak(M4)など、前作So Long, See You Tomorrow(2014)と同様、ファンタジックなワールドに向かっていく行進曲のようなアプローチがいっぱいあって本当に最高...。さらに今作は、Good Day(M5)やEat, Sleep, Wake(Nothing But You)(M6)など、初期の頃のBombay Bicycle Clubに特徴的だったような、リスナーを夢の世界に誘う催眠的なアプローチもたくさん詰まってる。この催眠的なアプローチとは、ドリーミーな音像によるものではなく、サウンド自体が所持しているリラックス効果によるもの。アートポップ風のバンドサウンドや、フロントマンのJack Steadmanの魔法性の高いボーカルワークなど、眠りにつく感覚をもたらすような特殊なサウンドスケープを持っている。だからこそ、夢のようなひと時を堪能できるようなロマンの溢れた素敵な世界観を所持していて、もう私はめちゃくちゃにツボ&大好きなのだ...笑。

 全部大好きなのだけど、特に今作のリードトラックEat, Sleep, Wake(Nothing But You)はもうむちゃくちゃ大好き...。リリックが死ぬほど素敵なのに、その世界観を体現しながら魔法性の高い幻想的なギターが炸裂してる感じ...。ファンタジック性をダイナミックに表現していて、本当に素敵なトラックだと思う。

 Clockenflap行けなかったの死ぬほど悔しい。。。今年こそ観たい。。。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. Pet Shimmers - "Face Down in Meta"

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オススメしてくれた人全員ありがとう

 凄まじくエモーショナル。サイケロックやドリームポップならではの陶酔するような快感や、ローファイが醸し出すセンチメンタルなフィーリング、それにインディーポップならではの豊かなメロディーセンスなど、多様な音楽性を一つに凝縮したような圧倒的なエモーションを含んでいてめちゃくちゃ感動する。サイケやドリーミー、ローファイといった要素なら他のバンドでも色々表現されているけど、Pet Shimmersはそれだけでなく、メロディックで豊かなインディーポップのセンスが強いのが特徴的だと思う。Mortal Sport Argonaut(M3)やNobody: Me:(M9)など、アップテンポでアクティブな曲とか特に。だからこそ、心地よくも切ないエモーションと相まって深みが半端なくなってるように感じられる。

 例えるなら、Superorganismと(Sandy) Alex Gがコラボしたような感じ。サウンドをぐちゃぐちゃにしたようなのドラッグ作用の強いサイケ・ドリーミーな快感に、センチメンタルな気分を引き立てるAlex G的なローファイのセンスをプラスした みたいな。快感と切なさとポップの味わいがそれぞれ入り混じり、ほろ甘くて美しくもある。本当に素晴らしすぎる音楽だと思う。

 Pet Shimmersをオススメしてくれた全ての人にありがとう 笑。これは年間ベストの有力候補であります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1. Pinegrove - "Marigold"

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嗅覚までもが侵される

 Pinegroveの音楽の何がやばいかと言うと、音楽の中にいつも心地いい風を発生させているということ。もうそのサウンドメイキングの段階で大好きすぎる 笑。それに加えて今作は、"Marigold"というテーマを持っていて、風の発生と同時に春めいた温かさを伴っているから本当に本当に素晴らしい。具体的にはDotted Line(M1)やMoment(M5)など、風の臨場感がよりダイナミックになって、音楽のカラーをより明るくしている感じとか。私たちはずっと春の訪れを待っている。それゆえこのアルバムが想起させる色彩豊かで春めいたヴィジョンを感じられたとき、心がときめく深い喜びを得ることができるのだと思う。

 そしてさらにやばいのは、Marigoldという明確なカラーイメージとその温かい香りをアルバム自体が常に持っていて、通気性の鬼高いPinegroveのバンドサウンドによる風の生成によって、嗅覚までもが侵されるというところ 笑。春特有の温かい自然の香りまでをも呼び覚ますような臨場感がある。あまりの美しさに何度も泣きそうになるし、春が本当に恋しくて愛おしくなる。

 前作Skylight(2018)や前々作Cardinal(2016)のようなめっちゃ切ないテイストのPinegroveもスーパー大好きだけど、今作の温かいカラーのPinegroveも本当に最高であったよ。マリーゴールドというテーマに本当にツボった。

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 最後にはなりますが今回の2020年1月ベストアルバムTOP10のプレイリストを載せてよう。2月は修士論文を出し終わったので事実上春休みである (۶•̀ᴗ•́)۶笑。

温の「2020年1月ベストアルバム(温)」をApple Musicで